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東芝を追い詰めた、日本式「意思決定」プロセスの弊害(まぐまぐニュース)
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/653.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 3 月 02 日 20:29:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


東芝を追い詰めた、日本式「意思決定」プロセスの弊害
http://www.mag2.com/p/news/241178
2017.03.01 中島聡『週刊 Life is beautiful』 まぐまぐニュース


ネットや雑誌などで連日報道されている、東芝の巨額損失問題。そのきっかけとなったのが、海外企業との不利な契約条件を見破れなかったことによるものと言われています。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは、今回の東芝問題は「日本式意思決定プロセス」が原因となった可能性を指摘。日本人であれば「一旦社に持ち帰って検討します」という言葉に何の違和感も覚えませんが、海外でその常識は通じなかったようです。この記事では、東芝側の担当者が追い込まれたギリギリの心理状態についても分析しています。

日本企業と契約社会

先週号で、東芝の抱える原発問題の経緯を書かせていただきました。ウェスティングハウスへの投資そのものが大きなリスクを抱えるものだった、というのもありますが、共同出資者に万が一の時には東芝に株を押し付けて逃げる権利(プットオプション)を与えてしまったり、ウェスティングの債務を親会社の東芝が保障しなければならない契約を結んでしまうなど、会社にとってとても不利な契約をいくつも結んでいるために、逃げるに逃げられなくなっているのが大きな問題なのです。

私はこれまで仕事の上で日米の会社間の契約にいくつか関わったことがありますが、毎回思うのは、日米の交渉力の差です。米国側は、経営陣から全権を委任された責任者がその場でギリギリの交渉をしてくるのに対し、誰がものを決めているのかが曖昧な日本側は、難しい話になるといつも「持ち帰って相談」になってしまいます。日本側は社内のコンセンサスを取るために莫大な資料が必要で、一見慎重に見えますが、逆に一度「やる」と決めてしまうと、後には引けなくなるので、米国側に足元をみられてしまいます。

先日、この話を知り合いとしたところ、「戦後だけ見ても、日本企業は、何十年も米国企業とビジネスをしているのに、なぜいつまでたっても対等な交渉ができないの?」と質問されました。

これに関しては、私なりの答えを持っています。大雑把に言えば「文化の違い」、もう少し具体的に言えば「契約書に関する意識の違い」と「意思決定プロセスの違い」にあります。

日本人にとってみれば、契約書作りは企業間で同意した取り決めを書類に落とし込む作業でしかありません。日本国内におけるビジネスは、一応契約書は交わすものの、お互いの信頼関係をとても重視して行われるため、「契約書に書いてあること」よりも、「お互いに同意したこと」が重視されるのです。そのため、契約書を交わす前からプロジェクトをスタートしてしまったり、(途中で仲違いしてしまうなどの)想定外の事象が起こった時にどうするかを前もって決めておかなかったりします。たとえ契約書に明記されていないことでも、企業間の約束は守るのが日本でのビジネスの常識です。

米国は全くの逆で、企業は契約書を交わす前に(コストのかかる)実作業を始めることを極端に違うし、想定外の自体が起こった時にどうするかを前もって決めておくことこそが、契約書の役割だという認識で、一字一句にものすごくこだわって交渉してきます。

ウェスティングハウスの買収の際に、東芝と共同出資をしたショーグループは、原発ビジネスのリスクを知った上で、万が一の時に売り抜けられるように、ショーグループの要求に応じて東芝は株式を(買値で)買い取らなければならないという「プットオプション」を(交渉の結果)手に入れました。これにより、ショーグループは、ウェスティングハウスが成功した時には、その恩恵を受けるけれども、(原発事故などで)窮地に追い込まれても損は東芝がかぶる、という非常に有利な出資をすることになったのです。

これこそが、典型的な「(契約書の)細部に神は宿る」例で、出資比率や出資額などの大きな数字だけを見ただけでは、決して分からない「不平等な契約」だったのです。

そして、こんな「不平等な契約」を結んでしまう根本の原因は、日本企業の(特に大企業の)意思決定プロセスにあります。

米国の企業では、企業間の交渉の際には、経営陣から「最低限守らなければならない条件」が与えられた上で、全権が担当者に与えられます。例えば、買収の場合であれば、「最大限払って良い金額」だとか「買収後に数年間は会社に縛り付けておくべきメンバーのリスト」などが、その条件です。

担当者は、その条件の範囲内であれば、全権を持って交渉できます。経営陣に相談しなければならないのは、その条件を変更しなければならない場合のみです。そのため、交渉の場で色々なことがスピーディに決められるのです。

逆に、日本の場合、多くの場合、担当者は全権を持っておらず、交渉の場で相手から出てきた要求に対する返事は「持ち帰って検討する」ことが一般的です。

そんな意思決定システムを持つ日本の会社が米国の会社を買収する場合、全権を持たない担当者は、契約の細かな条件を決める際には、単に相手の企業と交渉するだけでなく、経営陣からの承諾を取るための「社内交渉」に大幅な手間と時間をかける必要があります。

その結果、担当者は、買収相手に対しては「買り手」でありならも、社内の経営陣に対しては「売り手」というとても微妙な立場に自分を置くことになります。さらに、社内のコンセンサスを取るための努力をしている過程で、「買収を成功させること」が自分のキャリアにとって重要、という状況にまで追い込まれてしまうことがしばしばあります。自分が担当している買収を成功させるために、社内の様々な人に協力してもらって「借り」を作ってしまった結果、「今さら後には引けない」という状況になってしまうのです。

東芝で、ウェスティングハウスの買収を進めていた担当者も、ある時点で、そんな立場に追い込まれてしまったのだと思います。そもそもウェスティングハウスを買収して原発事業に乗り出すべきかどうか、そしてそれに必要な資金、共同出資者の選択、などの大きな部分で社内調整をして経営陣を説得した結果、「今さら引くに引けない」状況にまで追い込まれていたのだと思います。

そして最後の最後になって、ショーグループが「プットオプションをもらえない限りは共同出資はできない」と言い出したとすれば、それに東芝側の担当者が NO というのは非常に難しかっただろうことが容易に想像がつきます。

そして、なんとか買収を成功させたかった担当者は、「ショーグループが、プットオプションを要求しているのは、万が一のための保険に過ぎません。原発産業はこれから大きく伸びるので、ショーグループがプットオプションを行使することなど決してないので心配ありません」と経営陣を説得したのだと思います。

結局は、その万が一のこと(=福島第一原発での事故)が起こったために、ショーグループはプットオプションを行使し、東芝はさらに1000億円超のお金を支払って、(事故の結果、事業が低迷することが目に見えていた)ウェスティングハウスの株式を買い増さなければならなかったのです。

image by: Flickr

週刊 Life is beautiful
著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

 

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コメント
 
1. 2017年3月03日 20:16:42 : hUkJW5PNLO : vS5oQ06@H3c[129]
外国に 通用しない はぐらかし

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