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マティス国防長官訪日の意義:彼の日本・韓国訪問に誰よりも安堵し喜んだのは中国
http://www.asyura2.com/17/senkyo220/msg/451.html
投稿者 あっしら 日時 2017 年 2 月 09 日 18:19:03: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


 安倍政権の提灯持ちが主要な仕事だとはいえ、日本のメディアや評論家が報じたマティス国防長官訪日に関する評価や解説には、ポピュリズムと並んで今はやりの言葉である“フェイクニュース”レベルと言えるほどの胡散臭さが漂っている。

 ここでは、マティス国防長官に示した「防衛力の質的量的強化」の問題は触れずに、トランプ政権米国と日本の関係を窺うものについて思うところを書きたい。


■マティス訪日の意義

 まず、政権や主要メディアは、マティス国防長官の韓国・日本訪問がトランプ政権閣僚すべてのなかで最初の外遊であったことから日本重視の現れと高く評価している。

 しかし、トランプ政権は、閣僚級を含む政治任用人事がこれまでにないレベルで停滞しており、未だ日本を含む対アジア政策のみならず対外政策全般について包括的な方向性や方針を定まっていない。
 国防総省や国務省の副長官以下のスタッフが決まっておらず、対アジア政策チームさえできていない(長官がようやく上院の承認を得たレベル)状況なのである。このようななかでの日米防衛相会談にどれほどの意味があると言えるのか。

 精一杯高く評価するとしても、トランプ政権に予測不能性や真意がわからず不安感を覚えている韓国や日本の政治的指導層(官僚機構や軍組織を含む)に安心感を与えるというもので、それを超える意義を今回の訪問から見出すことはできない。

 対欧州や対中国そして対露のように、有能なスタッフ達が方向性や戦術を慎重かつ具体的に検討する必要はないと軽く見ているからこそ、就任早々で自前のスタッフさえいない状況でマティス国防長官が軽い気持ち韓国・日本を訪問したとも言える。


■尖閣諸島への日米安保条約第5条適用表明の意味

 うれしそうに政権サイドやメディアが広めている尖閣諸島への日米安保条約第5条適用“確認”も、安倍政権側がトランプ政権に適用の言質を求めた結果という経緯はともかく、それは、日米安保条約第5条の条文解釈に沿うものでしかなく、米国政権にとっては従来からの見解(国策)を再表明したにすぎない。

 むろん、トランプ氏という青天の霹靂的大統領が米国に誕生した事実を踏まえれば、適用の再確認は日本にとってそれなりの意義があるという見方を否定はしないが、これまでも説明してきたように、日米安保条約第5条は、北大西洋条約(NATO)第5条と違い、日本の防衛を米国に義務付けるものではない。


日米安全保障条約第五条は、

「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。〈後略:UN憲章重視の表現〉」

という内容である。

 まず、「日本国の施政の下にある領域」という適用範囲の表記があることから、領有権はともかく施政権はある(ここ4年半ほど施政権が揺らいでいるが)尖閣諸島にこの第5条が適用されることは言うまでもないことである。

 それはともかく、この条文を要にして肝のレベルでまとめると、

“日本にある米軍基地が攻撃されたとき、日本政府は自国の平和と安全が冒されたと認識し対応する”

というものである。

(より具体的に説明すると、日本にある米軍基地が攻撃(外国のみならず国内反体制勢力を含む)されたとき、日本政府は、自衛隊及び警察力を駆使し排撃に努めるというものである)

 このような規定は、日本が自国領土に世界戦略を軍事力で具体化しようとする米国に軍事基地を提供しているツケではあるが、露骨に(誰でもわかるように)、日本が否応なく「米国の戦争」に巻き込まれるような一方的“片務”的規定というわけにはいかないので、米国(米軍)とは無関係に日本が武力攻撃を受けたケースも、大統領府及び連邦議会が判断し軍事的外交的対応を行うこともあると解釈できるものにはなっている。

(「共通の危険に対処するように行動する」という規定なので、日本に攻撃を仕掛けている国に米国政権が外交的な働きかけを行うことでも条約を遵守したことになる)

 日米安保条約は“片務条約”と言われているが、このような条文解釈に依拠すると、巷間言われているような「米国は日本を防衛する義務を負うが日本は米国を防衛する義務を負わない」という片務性ではなく、「軍事基地を提供している日本は米国の政策に巻き込まれたとき米軍基地を防衛する義務を負うが、米国は軍事基地以外の日本を防衛する義務を負わない」という日本だけが義務を負う(負わざるを得ない)片務性ということができる。

 ともかく、日米安保条約第5条は、北大西洋条約(NATO)第5条と違い、日本が武力攻撃を受けたときに米国が参戦の義務を負うものではない。

(トランプ氏がNATOを古くさいものと言い忌み嫌っている背景には、欧州諸国によって米国が戦争に引きずり込まれる危険性を指摘できる。NATOができるときに米国で大論争が起きたテーマでもある)

※参照

[1949年に発効した北大西洋条約の第五条]

「締約国は、ヨーロッパ又は北アメリカにおける一又は二以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。したがつて、締約国は、そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が、国際連合憲章第五十一条の規定によつて認められている個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するためにその必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を個別的に及び他の締約国と共同して直ちに執ることにより、その攻撃を受けた締約国を援助することに同意する。〈後略〉 」


■マティス氏の言動にいちばん安堵し喜んだのは中国というワケ

 日本の主要メディアが流し続けている「フェイクニュース」の代表は、米中関係に対する評価である。
 酷いメディアになると、「米中軍事衝突」は目前というような危険な雰囲気の醸成に注力する。

 米中が米英や日米の関係のように表立って仲良くふるまったり同盟関係を誇示するようなことはないが、それぞれが、相手の必要性と有益性を理解し、相手から得られる恩恵を最大化したいと考え関係性の強化を図ってきた。

 それが21世紀に入って続いている経済・軍事における戦略対話であり、それをベースにした高度な投資サービス金融協定でありリムパックなどの合同演習である。

 米中関係を解説しているメディアや評論家から大きく欠落している事実は、中国こそが日米安保=米軍日本駐留を望んでいるという視点である。

 米中が敵対的関係にあれば、中国は、対中前哨基地の役割を担える日本に米軍が基地を持っていることに反対するが、米中がお互いに関係の戦略的意義を確認し合っている一方で、日本の世論傾向は反中ないしは嫌中といった現状では、逆に米軍が日本に駐留しているほうが望ましいと考える。

 なぜなら、ただでさえ、戦後世界を政治的軍事的にリードしてきた覇権国家米国とのあいだで厳しく重たい外交を展開しなければならないのに、何かと中国を敵視する言動が政治家・メディア・世論のあいだで見られる日本と直接向かい合うのは負担が大きく、現状のように、米国と話を付けてしまえば、「日本問題」も同時に解決するという構図は実にありがたいからである。

(むろん、中国は、米国の媒介なしでアジア全体の問題を率直に話し合える日本との関係が確立することを望んではいる。上位に立つのは中国だが...)

 訪日したマティス国防長官が記者会見で語った「日米同盟は恒久的なもので、アジア太平洋地域の平和と安全の礎」という考えも、中国が日本を抑制するための手段として日米安保体制を考えていることを踏まえれば、より深く理解できるだろう。


 マティス国防長官の言動にいちばん安堵し喜んだのは中国と考えるワケに移る。

 マティス国防長官は、4日に行われた日米防衛相会談後の共同記者会見で、記者から、

「Q:マティス長官に伺います。アメリカはあまり進展を期待していないところもあるのですね。中国に対して活動をスローダウンせよ、特に建設作業を南シナ海で止めようと強く出ておられないのですけれども、強く中国に対して南シナ海に出て行くおつもりでありますでしょうか。例えば、どういった軍事的な措置みたいなものを取り得るのでありましょうか」

と質問され、

「A(マティス国防長官):我々は南シナ海において、見てきたわけです。中国が信頼を踏みにじったわけです、この地域において。そして拒否権のようなもの、経済、安全保障、外交上のものについて、近隣諸国に対して発動しようとしているようなイメージであります。国際的な秩序をベースにして何が重要か、それはルールに基づいて履行するということです。それが破られた場合には仲裁にかけるということです。軍事的な手段を使うとか、領土を占領するといったことはやらないわけです。公海の場合もあるし、また、土地の領有権などはさておいてということなんです。何しろ外交的な努力に訴えるということです。適切にオープンなコミュニケーションラインを維持して いくということの方が重要であるというふうに思います。軍事的なスタンスということは、我々はその外交団をまず強化しようと思っているわけです、現段階において、別に軍事的な作戦は必要ないと思っております。それに類似したものも全然必要ありません。それは解決になりません。外交官に任せたいです。それから航行の自由はもちろん絶対的に重要であります。商船であろうと、アメリカの海軍の船舶であろうと、ということであります。公海で演習をやります。また通過も行います、公海については適切ですから。ということで現段階において別に何か劇的な軍事的な動きをする必要は感じておりません。全くないです」

と答えている。

「日米防衛相共同記者会見概要」プレス向けペーパーより
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2017/02/04.pdf


 国際法的に領有権が定まっていない南シナ海の島嶼(岩礁や暗礁が中心)で埋め立てを行い軍事施設を構築してきた中国を批判しているが、肝心な内容は、「(ルールが)破られた場合には仲裁にかける」「軍事的な手段を使うとか、領土を占領するといったことはやらない」。「何しろ外交的な努力に訴えるということです。適切にオープンなコミュニケーションラインを維持して いくということの方が重要」で、「現段階において、別に軍事的な作戦は必要ないと思っております。それに類似したものも全然必要ありません。それは解決になりません。外交官に任せたい」と説明していることである。

 この説明は、まさにオバマ政権の対中南シナ海政策の踏襲である。

 トランプ政権は、オバマ政権と違い対中強硬策を採るという見立ても行われているが、そう判断できる根拠は今のところ見当たらない。

 メディアや評論家などは、台湾との関係や「一つの中国」政策の棚上げ的発言をもって、対中強硬策の証としているようだが、トランプ氏の台湾関連言動は、これまで米国政権が行ってきた“裏表外交”“二枚舌外交”を白日に晒したもので、対中強硬策の証とは言えない。

 トランプ氏は、台湾は中国の一部という「一つの中国」政策を掲げながら、台湾関係法を制定し年間1億ドル以上の武器を台湾に売ってきた歴代米国政権を二面性や不誠実性を揶揄したとも言えるのである。

 北朝鮮及び韓国THAAD配備問題についても、マティス国防長官は、ソウルで、「THAADは我々の連合国および米兵の安全保障のために存在しているため、仮に北朝鮮からの煽動的行動がないとすれば、THAADの必要性もなくなる」と語っている。

 意訳すれば、中国(や日本・韓国)が北朝鮮の軍事力強化の動きを抑制してくれるのなら、韓国にTHAADを配備する必要性はなくなると言っているのである。

 ともかく、「米国第一」を標榜するトランプ大統領にとって(経済的観点で言えばどの国でも)、日本より中国のほうがずっと魅力的で有益な相手なのである。
 経済成長過程の中国は、米国との関係を維持するためなら、ボーイング製の航空機を大量に発注するだろうし、米国資本に対し金融・保険・サービスの市場を他国より広く深く解放するだろう。(半分冗談だが、米国が最新鋭の武器を売ってくれるのなら、喜んで買うだろう)

 中国の対米貿易黒字が巨大だと言っても、その6割は中国に生産拠点を築いた米国系資本によるものだとされる。
 競争力が低いこともあるが中国の対米自動車輸出は微々たるもので、先々は米国での生産を志向しているから、自動車を標的にしているトランプ氏との衝突も日本に較べると小さい。

 余談だが、トランプ氏がもっともかわいがっていると言われるイバンカさんと上級顧問クシュナー氏がもうけた娘は2歳になる前から中国語を学んでいる。つい最近の春節期間には在米中国大使館での催しに母娘揃って出席している。


 悪意がないとしたら、日本のメディアや評論家は、自分の願望や期待に染めて現実を見過ぎているのである。


 

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コメント
 
1. 新共産主義クラブ[3160] kFaLpI5ZjuWLYINOg4mDdQ 2017年2月09日 18:28:22 : ydM5ODCTe6 : klwuy9V5dcM[2]
 
 トランプ政権は、対中強硬策ではなく、対中東強攻策を採るでしょう。
 
 マティス国防長官は、南シナ海問題での中国よりも、イランに対して、将来的には非常に厳しい対応をとることを示唆しています。 
 
 当然ですが、マティス国防長官は、トランプ大統領の方針を日本に伝えに来たのです。
 
 
「A(マティス国防長官):イランについての話でありますけれども、これが最大の国家が主導のテロなんですね。世界で。
今の状況を見ますとイランの状況なのですけれども、ルールベースの国際秩序に対して、果たして守っていく気があるのかどうかということで疑いがあるということなのですね。
いろんな不正な行為も目立つと、レバノンとシリアとかイエメンとかバーレーンとか、ということでこの問題はどこかでちゃんと決着をつけないとならないのです。」
「日米防衛相共同記者会見概要」プレス向けペーパーより
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2017/02/04.pdf

2. 2017年2月09日 21:24:11 : Uth8eW5rTM : nMv1Hu096QY[102]
> マティス国防長官訪日の意義:彼の日本・韓国訪問に誰よりも安堵し喜んだのは中国
> ■マティス氏の言動にいちばん安堵し喜んだのは中国というワケ

「彼の日本・韓国訪問に誰よりも安堵し喜んだのは中国」は大嘘。
中国は米国防長官の「尖閣防衛」宣言に対して批判の声明を出している。 

中国、批判の声明 米国防長官の「尖閣防衛」宣言
http://www.cnn.co.jp/world/35096075.html
(CNN) 訪日中の米国のマティス国防長官が尖閣諸島(中国名・釣魚島)への日米安全保障条約第5条の適用を明言した問題で、中国外務省の報道官は4日までに、同長官の言動は地域の不安定化につながると批判する声明を発表した。
長官発言を受け中国側が迅速な反応を示した格好となっている

> それから航行の自由はもちろん絶対的に重要であります。商船であろうと、アメリカの海軍の船舶であろうと、ということであります。公海で演習をやります。また通過も行います、公海については適切ですから。

「公海で演習をやります。また通過も行います」の公海は、中国が自国領だと主張する人口島の領海内。
当然、中国は領海侵犯だと抗議する。
それにも拘わらず、「彼の日本・韓国訪問に誰よりも安堵し喜んだのは中国」と書くのは大嘘。


3. 2017年2月10日 19:59:09 : q931E3NW4E : Xao0gDyXwoc[683]
>>トランプ政権は、オバマ政権と違い対中強硬策を採るという見立ても行われているが、そう判断できる根拠は今のところ見当たらない。

その通り。融和策に徹する事は間違いがない。
トランプは常に優位な立場からビジネスの話を持ち出す。世界はいまや誰も損をしたく無いという状況にある。
これまで形式ばかりの外交だけが行なわれて来た事を考えれば、きちんとした外交とは今ここから始まるのだ。そこに明らかな違いがでるのは間違いがない。


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