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政府統計「失業率急低下」は本当なのか? エコノミストが検証 滅多に起きない極めて稀な出来事(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/18/hasan126/msg/355.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 3 月 08 日 13:19:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 


政府統計「失業率急低下」は本当なのか? エコノミストが検証 滅多に起きない極めて稀な出来事
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54755
2018.03.08 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス


失業率が急低下。インフレ率はどうか

3月2日に総務省が発表した1月の労働力調査では、完全失業率が2.4%と、2017年12月の2.7%から急低下した(失業率が前月から0.3%ポイントも低下するというのは滅多に起きるものではない)。

このところ、いわゆる「リフレ派界隈」では、多くの人が口をそろえたように、「日本のNAIRU(インフレ率を加速させない最低の失業率の水準)は2%台半ば程度」と言っていたので、「リフレ派信者」の中には、「いよいよ日銀が目標とする2%に向けてインフレ率が本格的に上昇し始める局面が来た」と喜んでいる方々もかなりいらっしゃるのではなかろうか。

ちなみに筆者は、やや定義は異なるが、「均衡状態(経済の需給ギャップがゼロ)」での失業率(均衡失業率)は2.1%と試算している(ご関心がある方は、2017年5月25日付の当コラム『日本経済は本当に「完全雇用」に近づいているのか?』をご参照いただきたい)。

とにかくNAIRUが2.1%であれ、2.5%近傍であれ、1月の失業率の数字だけをみれば、そろそろ日本のインフレ率の上昇局面を迎えてもいい頃合いだと考えるのは当然といえば当然である。

それでは、インフレ率の動向はどうだろうか。その前に最近のインフレ関連のメディア報道について気になっていることがあるので一言付け加えさせていただきたい。

一般的なインフレ指標は、消費者物価指数の(対前年比)上昇率であるが、筆者が最近の経済ニュースを目にする時に疑問なのは、いつの間にか、「生鮮食品とエネルギー価格を含む総合指数」が一般的なインフレ指標として用いられている点だ。

本来、インフレ率の趨勢をみる場合には、天候などの外部要因による変動が激しい食品やエネルギーを控除した「コア・コア消費者物価指数」をみるべきである。そして、実際にそのような問題意識から、総務省や日銀は、独自に計算した様々なインフレ指標を発表している。

だが、最近、メディアのニュースでは、コア・コア消費者物価指数の数字はほとんど見かけなくなり、食品やエネルギー価格を含む総合でインフレ率が上昇している点を強調することが多くなっている(そちらを用いたほうがよりデフレが解消している感が出る)。

筆者はその点についてはかなり強い違和感を持っているので、ここでは、あらためて「生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数」をみる。すると、1月は前年比+0.4%の上昇にとどまっている。

確かに上昇過程にはあるものの、上昇ペースは極めて緩やかであり、これまでのインフレ率の動きから「加速度的な上昇」が始まる気配は感じられない(日銀は「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」としてその他、様々なインフレ率指標を公表しているが、ほぼ同様の解釈が可能であると考える)。

急上昇する気配は、ない

このインフレ率の動きをどのように解釈するかは、今後の金融政策だけではなく、日本経済の行方を考える上でも極めて重要である。

もし、本当に失業率がNAIRU近傍まで低下しているのであれば、まもなくインフレ率は加速度的に上昇する可能性が高く、現在(1月)は「嵐の前の静けさ」なのかもしれない。そして、その場合、日銀による追加緩和は不要で当面はインフレ率の状況を見守るだけでよいということになる。

一方、何らかの理由で現状のペースでのインフレ率上昇が今後も続く場合、2019年にインフレ目標の2%に到達し、かつ、2%近傍で安定的に推移する可能性は極めて低い。すなわち、「2019年中の出口政策」の可能性は低いということになる。

もし、本当に日銀が2%のインフレ目標にコミットしている(しかも2019年中のどこかで出口政策を行うことに)のであれば、何らかの手段でインフレ率の上昇ペースをさらに引き上げていく必要がある(もし、何らかの「構造要因」でインフレ率が世界的に上昇しにくい時代に入り、せいぜい上昇しても1%近傍であるならば、2%の目標自体を変更しなければならない)。

ちなみに、より直近(週次で2月19日時点まで公表)のインフレ指標としては、2月中旬の東京都区部の消費者物価指数と一橋大学経済研究所の「経済社会リスク研究機構」が無料で公開している「SRI一橋大学消費者購買価格指数」があるが、どちらとも加速度的に上昇する気配は全くない。

このように、失業率が歴史的にみてもかなりの低水準であるにもかかわらず、インフレ率の加速度的な上昇がみられない場合、、1)そもそもNAIRU自体の水準が間違っている(もっと低い水準にある)、2)NAIRUという概念自体が疑わしい、3)失業率の数字をそのまま信じるべきではない、という3つの可能性がある。

そのうち、1)は、例えば、NAIRUが1%未満ということになってしまうが、これはデータをどう扱っても出てこない。

2)は、リーマンショック以降、「主流派のマクロ経済学(ニューケインジアン)の欠陥」として指摘されていることの一つである。

以前にも当コラムで紹介したが、UCLAのロジャー・ファーマー教授らが主な提唱者だが、これは、「そもそも米国ではフィリップス曲線自体を描くことができない」という基本的な事実が出発点となっている。だが、日本の場合、「フィリップス曲線を描くことができない」とまではいえないため、今回は取り扱わない。

そこで、残るは、3)「失業率の数字をそのまま信じるべきではない」ということになる。

この「失業率の数字をそのまま信じるべきではない」という大きな理由は、日本においては、金融危機が本格化した1990年代終盤以降、「完全失業者」の定義から逸脱した「無業者(事実上の失業者)」が急増し、現時点においても彼らがそのまま「無業者」としてとどまっている可能性が高いためだ(米国では、「Discouraged Workers」といわれることが多い)。

日本の場合、「完全失業者」というのは、一定期間に、「ハローワーク」等で求職活動した人のことである。つまり、何らかの機会に職を失って以降、家に引きこもってしまった人は失業者としてカウントされない。

このような「Discouraged Workers」がどの程度いるかは不明であるが、労働力統計から「労働参加率」を試算してみるとおおよその傾向がつかめると考える。

潜在失業者を調整した失業率をみてみると

図表1は日本の「労働参加率(ただし、高齢者の雇用者を加味するために分母は全人口を用いている)」の推移を示したものである。これをみると、日本の労働参加率は1998年頃から急低下していることが分かる。



確かに高齢化の進展という人口動態的な要因もあるかもしれない。だが、15歳以上人口の変化率をみると、人口動態と労働参加率は必ずしも相関性は高くない。

そこで、ここでは、「仮定計算」として、労働参加率が1983年から1997年までの平均である約63%でほぼ一定であるとし、実際の労働参加率との差分だけ「無業者(潜在失業者)」が存在するとみなし、彼らを失業者として換算し直した場合に、失業率はどの程度になるかを試算してみた(労働参加率自体を推定する有効なモデルを見つけることができなかったため、デフレ前の平均値をとった)。

図表2がその結果である。1月の完全失業率は2.4%であったが、潜在失業者を調整した失業率は6.2%となった。すなわち、実際の失業率と潜在失業者を調整した失業率の水準の間にはかなりの開きがあるということになる。より人口動態の要因を加味したとしても結果は大きく変わらない。



この「潜在失業者を調整した失業率」をみると、その水準はともかく、全体の動きは実際の失業率とほぼ同じである。だが、リーマンショック後、2012年までは実際の失業率は低下しているにもかかわらず、「潜在失業者を調整した失業率」は上昇している。

これは、この期間は確かに見かけ上の失業率は低下したものの、その理由の大部分が、「完全失業者」が「無業者」に振り替わったためであり、無業者を加味した場合には、逆に雇用環境は悪化していたことを示唆する。そして、「潜在失業者を調整した失業率」が急激に低下していくのは2013年以降である。

このことは、無業者を加味することで、失業率自体の水準は大きく上昇したものの、「アベノミクス」によって、雇用環境が劇的に改善したという構図はなんら変わりがないことを意味している。

次に、この2つの失業率でフィリップス曲線を描いてみたのが図表3である。両方とも、インフレ率がマイナスの、いわゆる「デフレ局面」では失業率がまちまちである。



確かに実際の失業率で描いたフィリップス曲線は2%半ばでインフレ率が加速度的に上昇するような形状になっている。一方、潜在失業者を調整した失業率で描いたフィリップス曲線は、傾きも緩やかであり、加速度的なインフレ率への転換点は見出せない(すなわち、NAIRUがどこにあるのか見当たらない)。

また、足元(2018年1月)の位置をみると、実際の失業率で描いたフィリップス曲線(図表3の(A)点)では、インフレ率は加速度的に上昇し、いつ目標である2%まで上昇してもおかしくない状況にあると思われる。

その一方、潜在失業者を調整した失業率で描いたフィリップス曲線(図表3の(B)点)では、インフレ率は上昇過程にあるものの、上昇ペースは緩やかである可能性を示唆している。

そして、目標である2%のインフレ率が実現するのは、2%近傍であり、現状から考えると、潜在失業者の多くが労働市場に再参入するような状況が整った後になることが示唆される結果となっている。

筆者の実感としては、現状の日本のフィリップス曲線上の位置は(B)点であるといったほうがしっくりくるが、真相はわからない。今後、3ヵ月程度のタイムスパンでインフレ率が加速度的に上昇し始めた場合には、実際の失業率で考えたフィリップス曲線の方が正しかったということになる。

ただし、この場合には、「無業者」分だけNAIRUは上昇していないとおかしいのだが、2%前半のNAIRUというのは、80年代後半から90年代前半から大きく変わっておらず、その問題は一種の「パズル」のままである。

ちなみに、両者のフィリップス曲線を元に計算すると、1月時点のインフレ率では、前者のケース(通常の失業率)では前年比+1.8%となり、後者(潜在失業者を調整)では、同+0.2%となった(実際の数値は+0.4%)。

読者のみなさんは、どちらのフィリップス曲線を用いるのがより適切だとお考えだろうか。

滅多に起きない極めて稀な出来事

最後に、今回の労働力統計だが、多くの指標で1月の改善度があまりにも大きく不自然である。

例えば、完全失業者は、前月から23万人減少したが、統計発表開始以来の完全失業率の対前月比の増減の平均値は0.1万人で、標準偏差は5.8万人であった。

完全失業者の統計量をみると、ほぼ正規分布に近いが、23万人減という数字は、標準偏差の4倍以上であり、逆算すると、このような失業者の減少が実現する確率は0.003%に過ぎないという結果になった。

昨今、政府の統計の精度(管轄の省庁は異なるが労働関連の統計)が話題になっているが、1月の失業者の減少は、起きようがないというところまではいかないが、「滅多に起きない極めて稀な出来事」であったということになる。

1月の結果をみて、「ますます雇用環境の改善が加速してきてデフレ脱却はもうすぐそこ」と過大評価しないほうがよいのではなかろうか。



 

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コメント
 
1. 2018年3月08日 19:07:18 : xMV64IZxWY : EyNU@Q2K7lE[286]
意欲など 失せて外れた 定義から

喜べぬ 見せかけだけの 改善を


2. 2018年3月08日 19:35:58 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[4849]

>完全失業率が2.4%と、2017年12月の2.7%から急低下
>リフレ派界隈 日本のNAIRU 2%台半ば
>リフレ派信者」の中には、「いよいよ日銀が目標とする2%に向けてインフレ率が本格的に上昇し始める局面

いや、大体、皆、今回の急落は特殊要因が大きいと見ているんじゃないかw

ま、日銀は、NAIRUを3.5%程度と、かなり高めに見ているから

反リフレ・ハイパーインフレ恐怖派の期待に応えて、出口を模索し始めているし

(もちろん反リフレ派は、いくら企業が潰れ、失業が増えても、常に緩和拡大は否定だがw)


>均衡状態(経済の需給ギャップがゼロ)」での失業率(均衡失業率)は2.1%と試算している 

これは、かなり下限に近い見積りだから、これに従って、高圧経済を続けると

資産インフレ加速後の、強烈な反動リスクも無視できなくなるだろう

いずれにせよ、まだかなり余裕はあるのが現状だな

>潜在失業者を調整した失業率で描いたフィリップス曲線は、傾きも緩やかであり、加速度的なインフレ率への転換点は見出せない(すなわち、NAIRUがどこにあるのか見当たらない

明らかに、これはフィッティングのアーティファクトだろう

http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/769.html?c1#c1


http://diamond.jp/articles/-/162429 2018年3月8日 高橋洋一 :嘉悦大学教授
失業率2.4%でも、金融緩和の「出口」論が時期尚早

筆者は、NAIRUを「2%台半ば」と推計
日銀は物価レポート等で構造失業率を「3%代半ば」としているが、間違っている
1月には大雪があり、職探しを中断した人が増えて、結果として失業者が減った可能性
0.3%もの下落というのは、100回に1回、8年程度で1回 統計的に異常値


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