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「原油100ドル超え」はあるか?先高観に覆われる相場の正体(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan128/msg/614.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 9 月 28 日 09:25:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

「原油100ドル超え」はあるか?先高観に覆われる相場の正体
https://diamond.jp/articles/-/180756
2018年9月28日 ダイヤモンド・オンライン編集部 


原油価格が堅調な上昇トレンドに入り、ガソリンや灯油が軒並み値上がりしている。原油は過去100ドルを大きく超えたときにように、再び暴騰するのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA


ガソリン、灯油も軒並み高騰
原油価格はどこまで上がるか


「正直、これ以上は厳しいですね」

 先日、東北地方に出張した石油元売り企業の関係者は、地元の中小企業経営者や住民から、切実な声を聞いた。彼らが嘆いているのは、東北や北海道などを主な消費地域とする灯油価格の高騰だ。「灯油の需要期が始まる10月にさしかかり、1リットルあたり95円を突破して4年ぶりの高値となった灯油に『生活を圧迫される』と不安を覚える人が増えている」(元売り関係者)という。

 灯油ばかりではない。国内のガソリン小売価格は1リットルあたり150円を超え、こちらも4年ぶりの高値水準となっている。

 石油製品が値上がりしている背景には、原料となる原油の価格が世界的な上昇トレンドに入ったことがある。原油取引の代表的な指数であるWTI、北海ブレント、中東ドバイ価格は、昨年央の1バレルあたり40〜50ドル台を底値とし、今年前半にかけて堅調に上昇。足もとでは70ドル台を推移している。

 原油の需要国である日本にとって、価格の上昇は経済のマイナス要因となることが多い。輸送コストや原材料費の上昇により、航空・物流・化学業界などで企業収益の悪化が懸念されている。家計圧迫への不安も広がるなか、個人消費の減退も気がかりだ。原油高がジワジワと「痛手」になりつつある。

 このままいけば、100ドルの大台を突破するのではないか――。投資家からはそんな声も聞こえて来る。多くの商品がそうであるように、原油相場は需要と供給のバランスで動く。独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・首席エコノミストは、「原油の供給が減り需給が逼迫するという見通しにより、価格が下がりにくい状態が続いている」と解説する。

 需給逼迫で「先高観」がどうにも消えない背景には、何があるのか。最大の懸念材料は、突発的とも言える地政学リスクだ。米トランプ大統領が制裁を行おうとしているイラン、政情不安と経済崩壊で混乱が続くベネズエラの2大産油国で、原油生産が大きく減る見通しとなっている。「これまで考えていたより状況は深刻」と指摘する専門家は少なくない。

 トランプは大統領選時の公約に従い、5月にイラン核合意から離脱。核合意に基づき経済制裁が解除されていた同国に対して、最大級の経済制裁を再発動すると表明した。それに伴い、米国の同盟国にもイランへの制裁強化を要請している。

 エネルギーに関する制裁の猶予期限は11月4日。それ以降、イランから世界への原油輸出は大きく落ち込む見通しだ。原油・天然ガス生産において世界有数の資源エネルギー大国であるイランの原油が市場に出回らなくなる影響は大きい。野村證券 経済調査部の大越龍文・シニアエコノミストは、「当初、『今回は米国単独だから影響は限定的だろう』と見られてきた制裁だが、足もとではすでに影響が出始めている」と語る。

イラン制裁再開の
影響は前回を上回る?


 米国の大手情報サービス企業・ブルームバーグによると、イラン制裁の表明から8月までの間に、米国の同盟国によるイラン産原油の輸入制限が顕著になっているという。はじめは制裁に反対していた各国も、「米国内で事業を続ける自国企業が、トランプ政権によって不利益を被るリスクを避けたい」と考えているようだ。

 たとえば、EUの輸入は日量50万バレルから20万バレルまで低下しており、11月の制裁発動でさらに10万バレル程度落ち込む見通しだ。イランから安く原油を買っていたインドも、同40〜50万バレルから20万バレルまで急減する見通し。韓国と日本は同10万バレルがゼロに。イランの友好国で輸入を継続する見通しの中国を除いても、主要取引先だけで原油輸入は70〜80万バレルも減る見通しだ。

 過去、オバマ政権による制裁時にイランの原油生産量は約25%、日量100万バレル減少して280万バレルとなったが、こうした状況のなか、今回の制裁では前回に匹敵するか、それを上回る減り方になる可能性がある。8月のイランの原油生産量は、OPEC総会で定められた日量約380万バレルの生産上限枠を、すでに30万バレル程度下回っている。

 一方、実質的な国家破綻を迎え、生産の落ち込みに歯止めがからないベネズエラの状況も予断を許さない。ブルームバーグ調べでは、日量約197万バレルの生産枠に対して8月の生産は133万バレルと、落ち込みが激しい。長引く米国の経済制裁の影響もあり、当局のアナウンスによれば、年末までに100万バレル近くまで落ち込みそうだ。

 そんななか注目が集まるのが、盟主サウジアラビアをはじめとするOPEC(石油輸出国機構)加盟国、非OPECの大国ロシアが、イランやベネズエラの減産分を穴埋めできるかどうかである。それができないと、世界の原油供給はおぼつかないだろう。

 原油価格の上昇を受け、OPEC産油国は今年6月の総会で、2017年初頭から続けてきた協調減産の緩和を決めた。実施中の減産措置につき、今年7月から年末まで、これまで150%程度だった減産順守率を100%へ引き下げるという「事実上の増産」に合意したのだ。とはいえ、石油収入確保のため原油の値崩れを嫌う加盟国の足取りは重く、増産目標は市場予想より小幅となった。

OPECの原油増産余力は
実はそれほどない


 加えて、OPECの生産能力には不安がある。ブルームバーグによると、イラン制裁が本格化していない8月時点でも、加盟国全体の生産量は日量約3241万バレルと、生産上限枠約3273万バレルを達成できていない。また、OPECには日量300万バレル強の余剰生産能力があると言われるが、実は不透明要因が多い。増産の本丸はサウジアラビアで余剰生産能力が日量200万バレル強あるものの、減産に参加していないリビアとナイジェリアがそれぞれ持つ30万強の余剰御生産能力は、インフラの制約や内乱による政情不安によって見込めない状況だ。

 ロシアは2017年からOPECの協調減産に参加する直前、駆け込みで生産を増やしているが、当時の水準を考慮すると、余剰生産能力は日量20〜30万バレル。現在は西側諸国から経済制裁を受けており、原油生産のための資金・資材を調達できないため、当時と比べて能力は上がっていないと見られる。

 つまり現状では、サウジとロシアを合わせても余剰生産能力は日量200万バレル台半ばが限界。イランとベネズエラで前述の生産が減ると仮定すれば、「余力」はいくらもないことになる。

 原油価格は2008年前半に150ドル近くまで高騰した。「当時、OPEC産油国の余剰生産能力が世界の石油需要に占める割合は2.6〜2.7%程度だったが、このまま余剰生産能力が減っていくと、当時の水準に近づいていく」(野神エコノミスト)。需給の逼迫度は想像していたよりも強いと言える。

 こうした事態を、当初、市場関係者はいくぶん楽観視していた。OPECによる減産緩和への合意や、トランプ大統領が中国やカナダに仕掛けた貿易戦争で世界経済が減速するという見通しから、市場では一時、需給の逼迫感が緩んでいた。その反動もあり、足もとでイランやベネズエラの原油輸出がいよいよ減り始めると、逼迫感が一気に高まったのだ。

眠れるシェールオイル勢の
増産再開はいつになるのか


 隘路にはまった既存プレーヤーたちに替わり、供給サイドの新たなリーダーになれる存在は他にいないのか。いるとすればそれは米国シェールオイル勢(以下、シェール勢)だろう。

 振り返れば、ここ数年の原油市場は、価格を支配するOPECと新興シェール勢との攻防の舞台でもあった。「両者を取り巻く環境は2013年前後で大きく変わった」(野神エコノミスト)。2012年頃まで、原油市場の主なドライバーは需要だった。非OPEC勢の生産がなかなか立ち上がらないなか、リーマンショック後の景気刺激策で大きく伸びた中国需要の穴埋め役をOPECが一手に担い、高値安定が続く見通しが醸成されていた。

 ところが2013年以降に状況は一変、供給が市場のドライバーとなる。中国経済の減速に加え、大きかったのが非OPEC勢の台頭だ。彼らの生産は伸びないだろうという見通しが崩れ、シェール勢の大増産が始まった。市場には「OPECの価格決定権が弱まる」という見通しが広まり、需給に緩みが生じて原油価格は下落。前述のように、OPECは2017年初頭から「シェール潰し」を目的に協調減産を始めたものの、原油価格は2017年央まで40〜50ドル台と上値が重い展開が続いたのである。

 実はこのシェール勢も、足もとで増産を活発化させていない。そのことは市場において、「先高観」の要因の1つにもなっている。

 昨年12月に米ダラス連銀がシェール企業に対して行った調査によると、「彼らは増産に動ける原油価格帯を60〜70ドル台と見ている」(大越エコノミスト)ことがわかった。つまり、彼らの損益分岐点となる価格は現在の原油価格と同水準で、さらに価格が上向かないとリグ(油田の掘削装置)の稼働数を増やすことは難しいと見られる。実際、米国エネルギー省の統計によると、シェールの中心地であるテキサス州西部のパーミヤンをはじめ、主要7地区で生産は鈍化している。

 これまでも言われてきたように、シェール企業の生産効率は上がり続けている。既存の油井(原油を採掘するための井戸)を長く掘り進めてシェール回収率を増やす技術革新に加え、大きいのは探索能力の向上だ。同じ採掘法でも、原油の含有率がより高いシェールの岩石層を見つけて集中的に掘り、1バレル当たりの生産コストを安く抑えることができるようになった。

 一方、生産した原油を輸送するパイプラインの能力には限界がある。たとえば、パーミヤンで開発される原油は日量約350万バレルで、これはパイプラインで運べる量とほぼ同じ。たとえ増産が可能でもこれ以上の市場への供給は難しいことがわかる。タンクローリーや鉄道などの代替手段で運ぶこともできるが、コストが高くつく。こうした採算性の問題により、足もとのシェール勢には増産を見合わせるトレンドが強い。主要なパイプラインの増強が行われるにしても、早くて来年半ば以降の見込みという。それから増産が始まるとしたら、原油市場でのインパクトは向こう1年ほどは小さいだろう。

原油価格が暴騰していた時代と
足もとの「決定的な違い」とは


 さて、そうなると原油市場はいったいどこへ向かうのだろうか。ここまで見て来た状況を考えると、今後、価格が大きく上ぶれする可能性は否定できない。現状を過去の原油高騰時になぞらえて、危ぶむ向きもある。

 しかし、「原油価格が100ドルを大きく超えた時代と現在とでは、状況が違う」と、大越エコノミストは指摘する。以前の高騰は、新興国の旺盛な需要や世界的な金融緩和の中で、投機マネーの市場への流入を主因として起きた異常なケースだった。それに対して現在の市場は、おおむね現実的な需給を反映しながら推移している。OPECの協調減産などにより緩んだ市場が引き締まる過程で、突発的に発生したイラン・ベネズエラ問題という不確定要素が価格を押し上げているのだ。そうなると今後の需給は、短期要因と中期要因の2段階で考えるほうがわかりやすい。

 まずは、不確定要素が演出する短期的な需給動向だが、先行きはトランプ大統領の出方にかかっていると言えよう。

 トランプはこの10月と11月に、約1100万バレルの戦略石油備蓄(SPR)を取り崩し、市場へ放出すると表明した。原油に連動して上昇を続けるガソリン価格は、消費が鈍ると言われる1ガロンあたり3ドルに達する勢いだ。11月の中間選挙を控え、国民の反発で支持基盤を弱めたくないトランプの思惑が見える。しかし、手始めに放出するのは日量で18万バレル程度の予定。一時的な鎮静効果はあっても、イランやベネズエラで見込まれる水準の減産が起きれば追いつかず、さらなる放出を迫られるだろう。

 また、危機感を募らせたトランプは、9月下旬、OPEC産油国に対して原油増産による価格の引き下げを求めたが、これを拒否されている。それを受け、原油価格は一時80ドル台まで急伸してしまった。

 まさに待ったなしの状況なのだが、こうなると予測不能なのが「トランプ流」。強硬路線から融和路線へと転換し、二度目の首脳会談を目論む北朝鮮との「ディール外交」で見せたように、実利をとってイランへの制裁を緩和する可能性もある。「同業者の間でもそのような見方は少なくない」と、石油元売り企業の関係者は語る。そうなれば、原油需給は一転して緩み始めるだろう。

 むろん、選挙が終わってしまえば原油市場への興味を失い、自ら「原油の独占組織」と批難するOPECに責任をなすりつけ、放り出すというリスクもあるが――。果たしてどうなるだろうか。

ボトルネックと一時的なリスクが
複合的に顕在化した状態か


 次に、中期にわたる需給動向だ。需要面で見ると、2013年以降、世界の実質経済成長率とそれに連動する原油価格は、比較的安定して推移している。IEA(国際エネルギー機関)や野村證券の見通しによると、成長率は毎年1%程度伸びていくのに対し、原油需要は2013年以降の平均で毎年日量150万バレル程度増えて行く。このペースだと、今後も需給は引き締まり気味で推移しそうだという。

 EV(電気自動車)やスマートエネルギーへのシフトはまだ道半ばであり、原油需要が伸び続けるトレンドはしばらく変わらないだろう。そんななか、もしもインドなどの新興国需要が急激に立ち上がるようなことがあれば、価格は上ブレしそうだ。「大幅な省原油化が進むか、世界経済が大きく落ち込まない限り、原油の需要は増え続ける可能性がある」(大越エコノミスト)。

 一方で供給面を見ると、最も増産を期待できる米国シェール勢が、パイプラインの整備や生産効率の改善を経て、これから原油供給を本格的に増やしてくるはずだ。原油価格の高止まりは、彼らに加えて、カナダのサンドオイルや海底油田の開発も後押しする。それは将来の供給増へとつながり、結果的に原油需給を今より緩和させる効果がある。

 このように考えると、折からの価格高騰は、供給サイドの新たなプレーヤーが目覚める前のアクシデントよってもたらされたものとも言える。言うなれば、ボトルネックと一時的なリスク要因が複合的に顕在化した状態だろうか。ならば、これから一過性の価格高騰はあったとしても、相場水準が大きく切り上がることは考えづらいかもしれない。先行きは依然として不透明だが、目先の価格上昇が一旦どこで落ち着くのかを、冷静に見守りたい。

 ガソリンや灯油が値上がりして生活が苦しくなりそう――。我々が日々感じているリスクは、こうした想像もつかないほど巨大なグローバル市場の思惑によってもたらされているのだ。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 小尾拓也)




 

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コメント
1. 2018年9月28日 12:57:25 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[1566] 報告
主要産油国の増産見送りは何を意味するのか
市場の「強気」の見方に反して台頭する下落リスク
2018.9.28(金) 藤 和彦
アルジェリアの首都アルジェ(資料写真)
 米WTI原油先物価格は、主要産油国が増産の決定を見送ったことで2カ月ぶりの高値で推移している(1バレル=72ドル台)。

 主要産油国による「共同閣僚監視委員会」(JMMC)は昨年(2017年)1月の協調減産の開始以降、1〜2カ月に1回のペースで開催されている。9月23日にアルジェリアで開かれたJMMCには、市場の注目が集まっていた。それはトランプ大統領のツイートのおかげである。トランプ大統領は20日、「米国は中東諸国を守っており、我々なしでは同地域は長い間安全ではいられない。それにもかかわらず原油価格をますます引き上げている。独占OPECは原油価格をすぐに引き下げるべきだ」とツイートした。このツイートにより、「23日のJMMCで主要産油国は日量50万バレル程度の増産の決定を行うのではないか」との噂が広がっていたのだ。

 だが事前の予想に反し主要産油国は増産を見送ったため、「原油需給の逼迫が続く」との観測が強まり、市場は強気の見方が優勢となっている。

増産を見送った主要産油国の胸の内
 なぜJMMCで増産は見送られたのか。主要産油国の胸の内を見てみたい。

 サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は9月23日に記者団に対し「我が国には日量150万バレルの増産余力があるものの、非加盟国の増産が世界の需要の伸びを上回ることが見込まれているため、現時点で増産の必要性はない。必要な原油を入手できない状況にある石油会社を私を知らない」と述べた。

 OPEC事務局は23日、「2019年は米国など非OPEC産油国の生産量が日量240万バレル増加する一方、世界の需要の伸びは日量150万バレルにとどまる」との予測を示している。

 ロシアのノヴァク・エネルギー相も「原油需要は今年第4四半期と来年第1四半期に減少することから、現時点で主要産油国は6月の合意(協調減産合意以上の規模に達していた減産量を目標水準に戻す)を維持することを決定した」と説明した。ノヴァク・エネルギー相は18日、「原油価格の上昇は制裁を反映した一時的な現象であり、長期的な価格は1バレル=50ドル付近である」との見解を示していた。

 両氏のコメントから「原油価格は米国のイラン制裁の影響で上昇しているのになぜ我々が尻ぬぐいをしなければならないのか。今後の原油需要が軟調に推移するのに増産したら原油価格は大幅に下落してしまう」との思いが伝わってくる。

 また具体的な数値目標を示さないことで、両国の増産に反発していたイランに一定の配慮を示した可能性がある。主要産油国が「憎き米国」の要求を退けたことに安堵したイランのOPEC代表は「サウジアラビアとロシアには余剰生産能力はなく、原油価格は今後上昇する」との見方を示した。

 だが、各国の記者発表を総合すると、サウジアラビアの日量150万バレルを筆頭に、アラブ首長国連邦(UAE)は60万バレル、クウェートは40万バレル、ロシアは10万バレル、主要産油国全体で約260万バレルの増産が可能であることが判明した。260万バレルという数字は、イランの今年4月の原油輸出量に相当する。イランの8月の原油輸出量は日量190万バレルまで減少したが、9月に入り増加に転じたとの報道がある(9月19日付OILPRICE)。米国はイラン産原油の輸出量を限りなくゼロにしようと躍起になっているが、イラン産原油の輸出量が前回と同様の規模(日量100万バレルの減少)であれば、市場の見方が「需給逼迫」から「需給緩和」に転ずる可能性がある。

米国の原油在庫減少も「強気」材料に
 足元で強気の見方が出ているもう1つの要因は、ドライブシーズンが過ぎても米国内の原油在庫が減少を続けていることである(2015年2月以来の4億バレル割れとなった)。

 WTI原油先物と北海ブレント先物の価格差が拡大したことから米国産原油の輸出が再び増大するとともに、石油製品需要が引き続き高水準で推移していることから原油在庫は減少を続け、強気派の背中を押している。

 ただし、米国の原油生産量は増加傾向にある。米国では石油掘削装置(リグ)稼働数が860基、原油生産量が日量1100万近辺で推移しているが、米エネルギー省が9月17日に公表した月報によれば、米国の10月の原油生産量は9月に比べて増加する見通しである。シェールオイル生産の半分を占めるパーミアン地域では相変わらず輸送インフラが不足しているものの、原油増産の動きが再び始まっており、シェールオイル全体の生産量が日量759万バレルまで拡大するからである。

 OPECも前述の予測で「OPEC産原油の生産量は2017年の日量3260万バレルから2023年に同3160万バレルに減少するのに対し、米国のシェールオイル生産量は2017年の日量740万バレルから2023年には同1340万バレルに増加し、米国の原油生産量は同2000万バレルに達する」としており、今年の米国の原油生産量は年間平均で世界一になる見通しである(国際エネルギー機関(IEA))。

 このように米国は年を追うごとに「原油消費国」から「原油生産国」へと軸足を移しつつあるが、急速に変化する構造にトランプ大統領自身がまったく理解していないことをツイッターにより図らずも露呈してしまった感が強い。

低迷する中国とインドの原油需要
 8月の世界の原油生産量は日量1億バレルを突破し(IEA調べ)、世界の原油市場は既に供給過剰気味となっている。では、原油需要はどうなるのだろうか。

 IEAは9月13日、「世界の原油需要は今後3カ月で日量1億バレルを突破するが、主要新興国について潜在的リスクがある」との認識を示した。

 世界最大の原油輸入国である中国は米国との貿易戦争が激化の一途をたどっている。米国は24日、中国からの輸入品6000品目近くに10%の追加関税を課した(来年以降は税率を25%に引き上げる)ことにより、中国は月内に予定されていた米国との通商協議を取りやめた。中国側が関税対象を1100億ドルに拡大したことから、トランプ大統領は全輸入品に対して制裁関税発動を辞さない構えを見せており(9月24日付ブルームバーグ)、事態の収束はますます見通せなくなっている。

 マクロ経済の変調を反映してか、中国の8月の原油需要は9カ月ぶりの不調となっており、今後、両国の対立が続けばその傾向は強まることだろう。原油高が続いていることから低迷していた中国国内の原油生産も8月に底を打ったことで、今後原油輸入量の伸びが鈍化するのは必至の情勢である。

「第2の中国」と期待されているインドも最近の原油高と米国の金利正常化がもたらす悪影響から原油需要の低迷が鮮明になってきている(9月24日付OILPRICE)。

原油需要のピークが前倒しに?
 米国の原油需要は原油高にもかかわらず引き続き好調だが、原油価格が下落すると、むしろその需要は減少するリスクがある。以前のコラムで指摘したように、米国経済の好調さを体現する高株価は原油価格の好調さに下支えされているからだからだ。

 高株価の要因は、信用スプレッド(10年物国債とジャンク債の利回り差)が拡大しないことにある(市場アナリストの市岡繁男氏)が、米国の10年物国債の利回りが3%を超えてもジャンク債発行体の約15%を占めるシェール企業の財務内容が原油価格の上昇傾向で改善されるとの期待から、信用スプレッドが拡大していない。トランプ大統領は、米国株式市場の好況を「自らの政策のおかげだ」と豪語するが、株価の急落というリスクを承知の上で主要産油国に対して「原油価格引き下げ」を要求したのだろうか(「トランプ大統領は増産を見送った主要産油国に対し感謝すべきである」との皮肉も言いたくなる)。

 2016年から2017年にかけて「原油需要のピークが近いうちにやってくる」との議論が盛んに論じられた。しかし、9月に入ると「原油需要は今後5年以内にピークを迎える」との予測が相次いでいる(9月11日付OILPRICE)。

 昨年までの議論では「電気自動車などの台頭で運輸用の需要は先細りになるが、プラスチックなど石油化学の需要は大幅に拡大することから、ピークは2030年以降である」と石油関係者一同が安堵するという結論だった。だが、今年に入り世界の海洋プラスチック廃棄物が世界的に問題視されるようになり、米国やEUはもちろんのこと、インドなど新興国でもプラスチックの使用制限の動きが高まっている。プラスチックに対する風当たりの高まりが原油需要のピークを前倒しするのではないだろうか。

米国は世界の安全な原油供給を確保し続けられるか
 米国のシェールオイルの台頭に加え、需要の伸びが先細りするとなれば、主要産油国は「泣き面に蜂」である。窮地に追い込まれ、特に中東地域での地政学リスクが高まる。

 JMMCの開催前日に当たる9月22日、イラン南西フゼスタン州の州都アフワズで行われた軍事パレードが武装グループに襲撃され、多数の犠牲者が出た。同州はイスラム教スンニ派が多数を占める大規模なアラブ人コミュニティーがあり、イラン・イラク戦争(1980〜1988年)で主戦場となったが、こうした攻撃が起きるのはまれである(9月22日付AFP)。その後、イスラム国が犯行声明を発出したが、イラン側はサウジアラビアやUAEに加え、米国やイスラエルも襲撃に関与したと反発を強めている。

「米国は中東諸国を守っている」とトランプ大統領がツイートしたように、米軍は少なく見積もっても年間810億ドルの経費をかけて世界の原油供給の安全確保に努めている(9月24日付OILPRICE)。イラン核合意からの一方的な離脱に加え地政学リスクを高めるような行為を続けていれば、米軍予算がいくらあっても足りないだろう。

サウジで「反体制派」王子が海外逃亡
 最後にサウジアラビア情勢について触れておきたい。

 JMMCやイランでの武装組織の攻撃の影に隠れ世間の耳目を集めていないが、サウジアラビアが主導するアラブ連合軍は9月17日、イエメン西部のホデイダ港の奪還作戦を再開した。イエメンでの軍事介入を終結させるため6月からホデイダ港への攻撃を開始していたが、多数の犠牲者が発生し、7月に入ると膠着状態に陥っていた。

「今回の攻撃は前例のない激しいものだ」とアラブ連合軍の司令官は豪語しているが、その背景にはムハンマド皇太子の「焦り」が透けて見える。毎月50〜60億ドルの軍事費を浪費しても大きな勝利が得られない状況下で、サウジアラビア国内での反発が高まり、サルマン国王とムハンマド皇太子を名指しで批判したアフマド王子(元内相、国王の実弟)が18日に海外(英国か?)に逃亡する事態が発生した。

 サウジアラビア国民に敬愛され次期国王の呼び声もあるアフマド王子が、海外で拠点を築き反転攻勢に出れば、ムハンマド皇太子の地位は一層不安定になってしまうのではないだろうか。 

[18初期非表示理由]:担当:要点がまとまってない長文orスレ違いの長文多数により全部処理

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