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金融政策の最重要事項は2%物価目標を「形骸化」させることだ(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/617.html
投稿者 赤かぶ 日時 2019 年 1 月 17 日 12:12:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

金融政策の最重要事項は2%物価目標を「形骸化」させることだ
https://diamond.jp/articles/-/191074
2019.1.17 門間一夫:みずほ総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト ダイヤモンド・オンライン


Photo:PIXTA


政策修正の第一歩を
踏み出した日銀だが


 2019年は株価急落で幕を開けたが、金融政策は難しいかじ取りを迫られる年になる。

 日銀は、「2%物価目標」の実現には時間がかかるという認識を、遅ればせながらではあるが、強めてきた。

 昨年4月の展望レポートでは、先行き3年程度の「見通し期間」のうちにはインフレ率が2%に達しない、という見方を初めて示した。

 7月には、物価見通しをさらに下方修正し、それに伴う金融緩和の長期化が国債市場に与える悪影響を軽減するため、政策の「微修正」を行った。

 現状の金融緩和は「当面の間」続けるとしながら、長期金利の誘導幅を広げて一定の金利上昇を容認し、今後、国債やETF(上場投資信託)の買い入れ減額の可能性があることも示した。

 日銀は、2016年の「総括的な検証」以来、異次元緩和策にひたすら突き進むというスタンスから、効果と副作用のバランスを考えながら政策を最適化する、という方針に転換している。昨年7月の「微修正」は、そうした思考基盤に立った政策修正の第一歩だった。

 しかし、ゼロインフレが根強いことに対する認識は、徐々に強まってきているとはいえ、なお不十分だ。

 日銀は今後も、毎回のように物価見通しの下方修正を重ねていく可能性が高い。いずれ日銀は、2%物価目標は実現困難という「不都合な真実」に向き合わざるを得なくなる。

 そして、物価が2%にならないからと言ってマイナス金利のような極端な政策を延々と続けてもいいのか、という葛藤をさらに強めることになる。

 ただし、2019年の少なくとも前半は、政策修正の第二歩、第三歩への動きはいったん停止せざるを得なくなりそうだ。

世界経済は調整局面に
予断許さない米国経済の行方


 それは同時拡大を続けてきた世界経済の勢いが既に衰え、2019年前半はさらに調整色が強まる可能性があるからだ。昨年末からの株急落はそれを暗示している。

 世界経済が減速した背景として、(1)中国における過剰債務への取り組み、(2)欧州経済の強過ぎた2017年からの反動、(3)半導体サイクルのピークアウトなどがある。

 今後はそれに加えて、(4)米中摩擦の悪影響が強まる可能性があるし、(5)英国のEU離脱問題を巡る不確実性もある。

 最も気になるのは、ここまで「ひとり勝ち」を続けてきた米国経済の先行きだ。

 米中摩擦の影響は、米国企業にも不確実性の増大やコストの上昇などの形で跳ね返る。人手不足が成長の制約となりつつある点は日本と同じだし、これまでの金利上昇やドル高の影響も徐々に出てきている。

 これらの減速要因は、トランプ政権による大型減税によって、これまでは覆い隠されてきた。しかし、株式市場やクレジット市場の調整に加えて、実体経済面でも減速を示す証拠が増えてくれば、企業や家計のマインドが低下し、それがさらに景気拡大の勢いをそぐというメカニズムが働く。

 米国経済が景気後退にまで至る可能性は低いと思うが、それなりのマグニチュードで減速すれば、2019年は前半を中心に世界経済の調整色は強まる。

 グローバル市場でリスクオフが強まり、米国の利上げ継続が困難となれば、円高進行の可能性が高くなる。

 日銀は、必要に応じて追加緩和の措置を採るというスタンスを公式には崩していないが、実際のところ有効な緩和手段は残されていない。

 昨年7月の「微修正」によりいったん上昇した長期金利も、すでに元の水準まで低下している。

 何らかの景気対策が必要となれば、財政に頼ることは一応は可能だ。消費税率引き上げの3回目の延期は、さまざまな対策を新年度予算案に盛り込んだ以上、ハードルが高いにせよ、補正予算を別途、組むことなどはできる。

 だがいずれにせよ、そうした状況になれば、金融政策を正常化する方向の議論は封印される。

物価目標をどうするか
基調的なインフレ率はゼロ近傍


 ただ、世界経済の減速が緩やかなものにとどまる限り、日本経済も景気後退入りは回避できるのではないか。消費税率引き上げの影響は、前述の手厚い対策もあって、さほど心配する必要はないだろう。

 そうだとすれば、日銀が政策修正の議論を再開できる環境になるまでにそう時間はかからない可能性も十分ある。

 金融政策を正常化していく際のポイントは「2%物価目標」をどうするかだ。

 日銀としては、物価が2%目標に近づいているという成果を強調しながら、政策修正の議論を本格化したいところだろう。だが、物価の動きが実際にそうした展開になる可能性は低い。

 物価が上がらなくても、それが携帯料金の引き下げや教育の無償化で公共サービス料金が下がるなどのせいであれば、大した問題ではない。

 日銀にとって厳しいのは、そうした一時的な要因を除いた基調的な物価が上がっていかない可能性が高い、ということだ。

 日本では、90年代後半以降、過去20年以上にわたり、基調的なインフレ率はおおむねゼロ近傍にあり、それは今でも変わっていない。

 1995年以降、現在までで、振れの大きいエネルギー価格を除くと、インフレ率は1%に達したことさえ、2度しかない。

 1度目は2008年の世界的な食料価格の高騰局面、2度目は、2012年後半、それまでの超円高局面から円安に転じて以降の円安が累積で約5割に達した2015年である。

 つまり、国際商品市況の大暴騰や5割の円安によって、やっと一瞬だけ物価上昇率が1%を超える、というのが、この20年余りの日本の物価変動の性格なのである。

 日銀は、それは、人々や企業に物価は上がらないという考えが定着してしまっている「デフレマインド」によるものなので、粘り強い金融緩和で変えることができると考えている。しかしそうした考え方は仮説の域を出ない。

 ゼロインフレは、もっと中立的な意味で、「日本人の常識」として定着しているのであって、人々の「弱気」や経済の「弱さ」とはあまり関係がない、という可能性も大いにある。

 少なくともこの6年で明らかになったのは、日本ではゼロインフレ・レジームと、完全雇用の下で、持続的な成長が両立する国だ、という事実である。

 もちろん、景気後退への備えとしての「のりしろ」を確保する観点からは、中長期的に2%程度のインフレが実現することに越したことはないが、ただ、そのためだけに、極端な政策をどこまで続けるのが良いかは、程度問題だ。

 日本経済は実力相応の成長を続けており、労働市場は外国人材の受け入れが急務とされるほどひっ迫している。

 実体経済の面からみれば、マイナス金利やイールドカーブ・コントロール、株式ETFの買い入れ、といった危機対応のような政策を続ける理由は何一つ存在しない。

 現在の経済にとって不要で、将来の経済に対するリスクを否定できないなら、そのような政策はやめるのが合理的である。

本来なら2%物価目標は
撤廃するのが合理的だ


 そうした合理的な判断が2%目標のゆえに阻害されているのであれば、本来なら、2%目標を撤廃すべきなのだ。

 だが、日銀がそうする可能性は極めて低いだろう。

 その理由は、異次元緩和の失敗を認めることになり、メンツにこだわってできないといった次元の低い話ではない。

 いまの米国を中心とする経済論壇の考え方は、「中長期的に2%程度のインフレを維持することが望ましく、かつ金融政策でそれは実現できる」という点で基本的に変わっていないからだ。

 経済学で“主流”とされ、他の中央銀行もおおむね支持している考え方に、日銀だけが正面から異を唱えても生産的でない。筆者自身も、2%目標の撤廃が必ずしも良いとは思わない。

 そうであるなら、日銀がとり得る現実的な最善策は、2%目標を維持しつつも、その実現の確率が極めて低い日本の現実を踏まえて、緩和長期化に伴う「リスク」をできるだけ小さくすることだ。

 そのリスクというのは、一言で言えば、金融面の不均衡である。

 いまの日本では派手な資産バブルは起きにくいかもしれないが、超低金利の長期化は、収益性の低い企業活動を結果的に長く支え、日本経済の足腰を弱める方向に作用する懸念がある。

 貯蓄などで暮らす高齢世帯が増え、超低金利が家計の将来不安をむしろ強めている可能性もある。

 これらのことはいまはリスクにすぎないにしても、そうしたリスクをあえて取るべき経済情勢ではないのだから、それはできるだけ減らした方が良い。

 自覚症状が乏しく潜伏期間の長いリスクに対しては、ある程度、保守的な姿勢で臨む必要がある。

 海外の中央銀行でも、物価目標の在り方が巡る議論が高まっている。

 米国FRBは今年、金融政策の枠組みに関するレビューを行う。その中では、金融政策の運営で、物価目標と金融面の不均衡をどう扱っていくかも、おそらく論点になるだろう。

 パウエル議長は昨年8月、ジャクソンホールの講演で、「過去2回の景気後退に至る局面では、調整圧力の増大はインフレではなく金融面に表れた」と語り、物価情勢の点検を超えたリスク・マネジメントの重要性に言及した。

 欧州中央銀行(ECB)は、昨年末でネットでの国債などの資産買い入れ増を停止するところまでは来たが、今年、そこから利上げを開始できるかどうかは、予断を許さない。

 基調的なインフレ率が1%程度のまま上がらない状態が続いているからである。このままだと欧州でも、物価目標の在り方を巡るレビューが必要になるかもしれない。

 金融政策運営上、物価を重視する度合いを下げ、潜在的な副作用への目配りの度合いを上げるという議論が、国際的に活発になれば、日銀もその流れに乗りやすい。

 2%目標の撤廃は無理でも、金融面に配慮した2%目標の柔軟化は、国際世論とむしろ整合的なものになる。

 実は、日銀自身も、昨年10月の「金融システムレポート」でそうした流れを意識したかのような分析をしている。

「GDP at Risk」という新しい手法を用いて、「現在の緩和的な金融環境は、当面の経済にはプラスに作用するが、行き過ぎた金融活動がいずれ調整圧力となり、3年後の経済をかえって下押しするリスクがある」ことを示した分析だ。

 結果は幅を持って見る必要があるが、こうした分析を日銀が公式のレポートで公表したこと自体、日銀の意識の変化をうかがわせる。

物価目標は長期的な目安に
2019年後半以降が好機


 以上のように、(1)金融不均衡に関する日銀の意識や国際世論は徐々に変化しつつあること、(2)2%物価目標の実現の困難さを、日銀もより強く意識さぜるを得なくなることを考えれば、日銀は異次元緩和の本格的な修正を模索することになるだろう。

 2%目標を撤廃するのに制約があるとすれば、それを上手に形骸化することこそ、日銀がその真価を発揮すべき知恵の出しどころなのだ。

 つまりは、長く緩和が続いてきたことのリスクへの対応を優先し、2%物価目標は、「長期的な目安」として位置付け直すことになるだろう。

 おそらく日銀は、「2%目標へ向けた政策の持久性を強化する観点から、副作用が累積するリスクを軽減する」という論理で、マイナス金利を解除するだろう。

 イールドカーブ・コントロールやETF買い入れも、大幅に柔軟化ないし停止する方向で議論が進むとみられる。

 ただし、そのタイミングは、経済情勢からみて今年前半は難しそうだ。今年後半以降、景気の下振れ、円高、物価下落、などのリスクが小さい局面を、うまく捉えたいところだ。

(みずほ総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト 門間一夫)


















 

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