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観光大国スペインに見る「旅行者排斥」の深刻度 観光立国を目指す日本も同じ轍を踏んでしまうのか 
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投稿者 うまき 日時 2018 年 9 月 20 日 06:06:41: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

観光大国スペインに見る「旅行者排斥」の深刻度
観光立国を目指す日本も同じ轍を踏んでしまうのか
2018.9.20(木) 宮下 洋一
2017年にテロ事件のあったランブラス通り。ヨーロッパで最も観光客密度が高い場所と言われている(筆者撮影)
 観光立国を目指す日本。2020年の東京オリンピックはまさにその起爆剤としての役割も期待されている。ところが、世界第2位の観光大国であるスペインは、”観光客疲れ”とも呼ぶべき深刻な社会問題が起こっているという。スペインやフランスを拠点に活躍し、著書『安楽死を遂げるまで』で講談社ノンフィクション賞を受賞した気鋭のジャーナリスト、宮下洋一氏が観光大国化の負の側面を報告する。(JBpress)

町中にあふれる”外国人排斥”の落書きや抗議行動
 年間8200万人の外国人観光客数を誇る国、スペイン。2017年、その数はついにアメリカを抜き、フランスの年間8600万人に次ぐ世界第2位の観光大国となった。

 スペイン国立統計局(INE)によると、外国人観光客が昨年1年間に消費した合計金額は868億2300万ユーロ(約11兆3000億円)で、日本のおよそ3倍。10年前に始まった金融恐慌を引きずるスペインにとって、観光産業は国内経済を支える重要な柱となっている。

 格安航空のライアンエアーやイージージェットの利用者も欧州内で急増し、スペイン港内の就航地は2002年の1都市から現在は25都市にまで拡大。ライアンエアーは、同国内だけで年間3500万人の旅行者を乗せることから、今や空路の利便性も鍵を握る。バルセロナだけでも、こうした格安航空などを利用して訪れる外国人観光客数は年間1100万人に上るという。

 ところが、ここ数年、地元住民らが外国人観光客に対し、不満を募らせている。町中の至るところに「排斥」とも受け止められる落書きや、実際に彼らを追い出すための抗議運動も多発している。

 そう。スペイン人は「外国人観光客疲れ」してしまっているのだ。

 なぜこうした現象が起きてしまうのか。海外生活25年目になる私には、そうなってしまう事情に理解できる部分がいくつかあるが、ここでは、人気都市バルセロナで起きている2つの出来事を中心に取り上げてみたい。

地元民が住めない町に
「ツーリスト、ゴー・ホーム(旅行者は出て行け)!」「あなたの贅沢な旅 私の残酷な毎日」などの落書きがバルセロナ市内の建物の壁に散見される。2016年には、外国人旅行客に対する市民の排斥感情がピークに達し、観光名所のグエル公園や聖家族教会(サグラダ・ファミリア)周辺には、こんなことが書かれていた。

《Gaudi hates you(ガウディはあなたを嫌っています)》

 バルセロナ観光局によると、当地での五輪が開催される2年前の1990年、同都市にはスペイン人と外国人を合わせた旅行客が173万2000人と小規模だったが、2000年には300万人に上った。それが17年も経つと、外国人だけで1100万人という爆発的な伸びを見せるに至った。

 英紙ガーディアンによると、同市内のホテルには7万5000台のベッド、ホテル以外の宿泊先と違法宿泊施設にはそれぞれ5万台のベッドが設けられているという。また、国内外からの年間訪問者の数は3200万人で、ホテルの利用客数は、そのうちの800万人のみとのデータもある。つまり、バルセロナを訪問する大半の人々は、ホテル以外の宿泊施設を利用しているということになる。

 ホテルを利用しない旅行客が流れている先は、主に観光客用の民泊施設だ。そこで圧倒的な存在感を誇っているのが、世界最大の民泊仲介サイト「Airbnb」(エアビーアンドビー。以下、エアビー)だ。

 日本人の感覚では、まだ民泊施設よりもホテルを利用するほうが一般的かもしれないが、欧米ではエアビーなどを通じて民泊するスタイルはかなり浸透している。実は私もこのサービスを海外出張の際に「ゲスト」として頻繁に利用している。それだけに、「ホスト」がこれを一攫千金の好機と捉えるのも当然の帰結だ。実際、私の周りのスペイン人にも、支払う家賃の2倍を稼ぐ仲間がザラにいて、これを利用しないほうが損するという“巷の一般常識”が蔓延している。

 数年前だが、ホテルの受付で働く友人は、「エアビーの収入が、僕の給料をだいぶ上回った。いくら値段を高くしても旅行客が僕のアパートに集まってくる」と話していた。

 私が大学院生だった2000年、まだ通貨がペセタだった時代に借りていたアパートの家賃は、当時で6万ペセタ、ユーロ換算で約361ユーロだったが、現在では800ユーロ前後に跳ね上がっている。それに対してスペイン人の給料に大きな変化は見られない。となれば、エアビーを利用して金儲けに走りたくなるのも無理はない。

 一方で格安旅行をする若者は、エアビーの存在ほどありがたいものはない。旅先で馬鹿騒ぎをし、酔っ払い、ナンパした相手をチェックが緩いエアビー物件に連れ込んで一夜を堪能する。おそらく最高のバカンスで、最高の思い出になることだろう。その行為自体に反対するつもりはないが、こうした若者はたいがいマナーの悪さが目立つため、同じ建物の中に暮らす地元住民にとっては迷惑以外の何物でもない。もちろん、エアビー物件をもっとスマート、かつ丁寧に利用している旅行者もいるだろうが、これが欧米の人気都市でエアビーが引き起こしている現実の一面であるのは間違いない。

 問題は地元民が被る迷惑だけではない。さらに深刻な問題がある。地元に住んでいた人々が、住まいを奪われかねない事態に直面しているのだ。

長期賃貸より旅行客に短期で貸した方が大きい儲け
 アパートの家賃が跳ね上がっていると書いたが、バルセロナの物件の賃料は、5年前に比べ、1.5倍になっている。不動産オーナーとしては、賃貸住宅として特定の人に長期的に貸し出すより、高い賃貸料金で旅行客に短期で貸し出したほうが、断然儲けられる。結果として、長年、住み続けてきた地元民が立ち退きを強いられるという最悪の事態が発生しているのだ。

Airbnbへの警戒を呼びかけるバルセロナの建物(筆者撮影)
拡大画像表示
 この動きに怒りを見せる住民が2016年、ついに「外国人排斥運動」を起こした。報道では人種差別行為のごとく扱うものもあったが、冷静に事態を眺めてみれば、それが人種差別でないことは明らかで、自らの生活を守るために必死の抵抗だった。なにしろ私のスペイン人の友人たちも家賃が払えなくなり、アパートのシェアを余儀なくされているのだ。

 今年(2018年)6月、東京では観光庁や観光業界によるエアビー物件の”一斉排除”が行われた。民泊新法(住宅宿泊事業法)施行を前に、観光庁はエアビーなどの仲介業者に対して、届け出が行われていない違法物件の仲介を行わないようにすることなどを通知。それを受けてエアビーは、届け出のない4万件ほどの物件を一斉に削除、それらの物件を予約していた利用者には返金をするという騒動が勃発した。

 観光庁の通知は、エアビー側にとってみれば突然の出来事で、やりすぎだった面もなくはない。私もその余波を受け、東京滞在時に何回も利用してきた大田区の物件にしわ寄せが来て、空きがなくなるというハプニングに見舞われた。ただ、観光庁のこの取り組みが必ずしも間違っていたとは思はない。

 エアビーの登場で既存のホテル業界が打撃を受けるということは当然起こりえることだろうが、その問題とは別に、“エアビーバブル”で東京の不動産価格がバルセロナのように、日々高騰することは避けるべきだろう。放っておけば、2020年の東京オリンピックを前に日本人が観光客アレルギーになってしまい、お互いの関係に溝が生じてしまうという最悪のシナリオも現実味を帯びてくる。そのような意味において、地元民とエアビーとの折り合いは早い段階でつけておいたほうがいいかも知れない。

全国のタクシー運転手が一斉スト
 バルセロナに話を戻すと、外国人観光客に対する嫌がらせとして、最近こんな事件が起きている。今年7月25日から8日間、総勢1万500人のタクシー運転手が大規模ストを行ったのだ。そればかりか、配車サービス「ウーバー」や「キャビファイ」などの営業停止を求め、路上封鎖や配車破壊行為を繰り返し、市内は大混乱をきたした。

 実は私も、スト初日に出張があり、地下鉄やバスが動かない早朝にタクシーを使う予定だった。空港バスは長蛇の列で乗れず、結局、この日の出張をキャンセルせざるを得なかった。午後になると、タクシー運転手の集団が、キャビファイの車を囲み、蹴りつけるなどし、車両を破壊。ドライバーを負傷させる事件も発生した。

 しかし、実はこの事件、タクシー運転手だけが配車の破壊行為を行ったのではなかった。後に警察の捜査で発覚したのだが、市内を走る配車を叩き壊したのは、主に外国人旅行者嫌いの反資本主義グループで、彼らはメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」を通じて破壊行動を呼びかけていたようだ。つまり、タクシー運転手らの抗議運動を利用して、配車サービスの運転手たちにではなく、むしろ外国人旅行者たちに対し、若者たちは怒りを爆発させたのだ。

 大通りのグランビアを封鎖するタクシー運転手の1人は、私にこう言った。

「ギリ(スペイン語で「外国人」を意味する蔑称)が増えすぎたせいだよ。バルセロナの問題はタクシーだけじゃない。周りを見渡せばギリばかりで、闇ビジネスがあちこちに横行している。あなたは飛行機に乗れずに仕事を諦めたというが、私だって仕事を毎日、奪われているんだよ」

 このストは数日後、マドリードや地方都市にも波及。配車サービスに対抗しようと、全国のタクシー会社が連帯し、一斉にストを決行した。

 結局、8月1日になって政府が「配車サービスの規制を強化する」と発表したことを受け、タクシー会社は一時的にストを解除した。

日本人観光客おもてなしマニュアル
 これほどまでにスペインの地元住民は、外国人旅行客に疲弊し、嫌悪感を抱くようになってしまっている。その原因は端的に言えば、旅行客の「地元民の迷惑を顧みない態度」にあると思う。「郷に入っては郷に従え」とは言うものの、なかなかそうはいかないのも現実。結局、旅行者は自らの楽しみ・快楽を優先する。もちろんそれも十分理解できる。

 ただスペインに住み慣れた私は、現地であまりにもマナーを守れない外国人旅行客を見るたびに、地元住民の気持ちを気にしてしまう。率直に言わせてもらえば、スペインの法や秩序、習慣を尊重できない旅行者は地元の人たちから嫌われてしまっても仕方ないとさえ思っている。

 もちろん、訪問国に敬意を払える旅行者には、それに見合った待遇が現地の人々から自然と施されるはずだ。お互いに気持ちよく触れ合えれば、これ以上の国際交流はない。最初から外国人旅行者に悪気を持つ人など、そうはいない。その負の感情は、時間とともに作られてしまうのだ。

 そんな中、テレビで興味深いニュースを目にした。

 スペイン東部アラゴン州が今年7月、「日本人観光客おもてなしマニュアル」なる冊子を1万部発行したという。このマニュアル本は、同州の観光業界関係者に配られたもので、今後の日本人観光客へのサービス向上を模索するものだ。

 そこには、「日本人には、中国語のように抑揚のある喋り方をしてはならない」、「空手の仕草を見せてはいけない」、「日本人は、静けさを好む」といったマナーのほか、状況に応じたお辞儀の仕方や箸の持ち方などが示されている。

 早速、私はアラゴン州に足を運び、ホルヘ・マルケタ観光局長に話を聞いた。なぜ、このようなマニュアル本を発行したのかと聞くと、「なるほど」と頷ける答えが返ってきた。

「アラゴン州は、スペインの中でも、あまり知られていない地域です。しかし、洞窟や森林といった自然やグルメにも恵まれ、旅をじっくりと味わいたい人には向いています。日本人は、多くの旅行客と異なり、単純に見たり食べたりするだけでなく、その歴史やプロセスに興味があると思うのです。われわれは、日本人にそれを提供したい。(旅行者の)量だけが重要なのではありません。質こそを大切にしたいのです」

 やや固定観念に縛られた内容のマニュアル本だが、マルケタ観光局長の戦略と目標は間違っていないと思った。確かに、アラゴン州を訪れる外国人の数はスペインの他都市と比べると、圧倒的に少ない。

 しかし、大都市が外国人観光客疲れを見せる惨状を知る私は、たとえ数が少なくても、現地の住民と旅行者がお互いに協力し合い、最高の思い出を残してもらうことが理想的な観光の在り方だと考える。その意味では、「量より質を大切にしたい」というアラゴン州の取り組みは大いに注目に値するだろう。

 観光客増加で、観光業界が発展したり雇用が増加したりすることに反対する者はいないだろう。だが、今の時代、あまりの速さに人間のモラルが追いつかないITビジネスが続々と生まれ、そこで人々の衝突が生まれている。

『安楽死を遂げるまで』(宮下洋一著・小学館)
 外国人観光客が増えること自体に問題はないと思う。新興ビジネスによって倫理を超えた現象が起こるとき、人は反抗精神をむき出しにする。それを避ける方法はあるのか。

 私は、何百年と続いてきた伝統スタイルに急激な変化や刺激を与えないことではないかと思う。多言語・多文化の人々が突然押し寄せてくれば、誰もが対応に困惑するのは当然で、時には、批判や軋轢を恐れず、一定の規制を設けることも正しい判断とは言えないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54144  

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コメント
1. 2018年9月20日 19:00:02 : bqSxumkiHM : ojact308L1k[289] 報告
観光に 頼って沈む 経済は

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