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新しいチンパンジー学 わたしたちはいま「隣人」をどこまで知っているのか?
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/635.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 9 月 21 日 08:54:13: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 人類進化史 投稿者 中川隆 日時 2019 年 8 月 20 日 07:46:33)


2019年09月21日
Craig Stanford『新しいチンパンジー学 わたしたちはいま「隣人」をどこまで知っているのか?』
https://sicambre.at.webry.info/201909/article_48.html


 クレイグ・スタンフォード(Craig Stanford)著、的場知之訳で、2019年3月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2018年です。


https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%BC%E5%AD%A6-%E2%80%95%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%BE%E3%80%8C%E9%9A%A3%E4%BA%BA%E3%80%8D%E3%82%92%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%BE%E3%81%A7%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%9F%E2%80%95-%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89/dp/4791771516

本書はまず、チンパンジー観察の難しさと、この分野におけるグドール(Dame Jane Morris Goodall)氏の功績を強調します。今では当然のように考えられている、チンパンジーが道具を使い、狩りを行ない、集団で攻撃するといった行動のグドール氏による報告は、当時のチンパンジー観を大きく変え、それを現代の若者が想像するのは困難である、というわけです。

 チンパンジーは狩りも行ないますが、本質的に熟した果実のスペシャリストだと本書は評価しています。チンパンジーは父系的な社会を形成しますが、同じコミュニティの雄の血縁度はさほど高くなく、ただそれでも雌よりはやや高いそうです。最近では再検討も進められているものの、一般的に雌は雄ほど社会的ではなく、複数のコミュニティに所属している可能性があり、雄は雌を支配するために同盟する、と本書はチンパンジー社会の構造を把握しています。チンパンジーのパーティーサイズを決定するのはおもに食料と雌の繁殖サイクル)で、後者の方が影響力は大きいようです。チンパンジーの社会行動については、広い分布域全体で他の霊長類よりも一様と評価されています。

 グドール氏の大きな功績というか、以前のチンパンジー観を変えたのは、チンパンジーの暴力性でした。本書は、チンパンジーの暴力を、さまざまな環境条件において恒常的に生じるという意味で、きわめて「自然」と評価しています。チンパンジーのコミュニティ間の暴力は、勢力が不均衡な場合に起きやすくなっています。一般的にチンパンジーは、他のコミュニティよりも数で優勢な時には攻撃を仕掛けますが、互角な時には暴力行使に慎重になります。コミュニティ間の暴力で雌が雄に殺されることもありますが、これは、食資源との兼ね合いから、コミュニティにおいて順位の高い雄にとって、新たな雌を迎えるよりも縄張りを拡大して食資源を充実させる方が、適応度を上げられることと関連しているだろう、と本書は指摘します。チンパンジーの暴力性の表れとされる狩りには季節性があり、それは初期人類と同じく、乾季に集中しているそうです。しかし、乾季には葉が落ちて観察しやすいという偏りが生じている可能性も指摘されています。狩りの中心は雄です。

 チンパンジーの雌はおおむね11歳前後で最初の性皮膨張を経験し、1〜2年後に出生コミュニティを出ていきますが、隣接コミュニティで数ヶ月過ごした後、出生コミュニティに戻る場合もあります。しかし、13歳頃までには出生コミュニティとは別のコミュニティに落ち着き、そこで一生を過ごします。チンパンジーの雌はゴリラの雌とは異なり、最初の移住の後に再度移住することは稀です。最初の子が成熟する確率は50%未満です。雌はおおむね5年間隔で出産し、高齢になるほど妊娠しにくくなりますが、ヒトのような突然の閉経を迎えることはありません。ただチンパンジー社会では、時として出生コミュニティから離れない雌も存在しますが、それは高順位の家系だからと推測されています。

 チンパンジーの選択については、雌が注目されてきましたが、近年では雄の側も注目されています。チンパンジーの雄は、ヒトとは異なり、年長の雌を好む傾向を示します。その理由について完全に解明されているわけではありませんが、チンパンジーの雌の地位は高齢個体の方が若い個体よりも高いことと関連している、との見解が提示されています。乱交的とされるチンパンジーですが、近年、特定の異性間の長期の絆が確認されるようになってきており、ヒトとの類似性が指摘されています。

 チンパンジー研究は人類進化研究に有益である、と本書は強調します。もちろん本書は、チンパンジーが初期人類とそっくりと主張しているわけではなく、チンパンジーは初期人類の進化の適切なモデルとなり得る、と指摘しているわけです。また本書は、そもそも一夫一妻制は霊長類において他の哺乳類より多く見られるとはいえ、珍しい特徴であり、最初期人類も一夫一妻ではなかっただろう、と指摘します。そもそも、本書も指摘するように、現代人も厳密には一夫一妻とは言えなさそうです。人類進化史における配偶形態の変遷について、決定的な証拠を得るのは難しいでしょうが、今後も研究は進展していくでしょうから、注目しています。

 本書はアフリカ南部で発見されたホモ・ナレディ(Homo naledi)について、最初期ホモ属であるハビリス(Homo habilis)とよく似ており、アウストラロピテクス属に分類する研究者さえいることから、ナレディによる遺骸「埋葬」の可能性を全否定しています。もちろん、ただ、本書はナレディの年代について100万年前頃の可能性が高いとしていますが、じっさいには335000〜236000年前頃で、現生人類(Homo sapiens)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)系統に見られる派生的特徴も見られることから、系統的にも単純にハビリスと関連づけることはできないように思います(関連記事)。また、ナレディの存在した年代には初期現生人類もしくは現生人類の直近の祖先系統がアフリカ南部に存在したと考えられることから(関連記事)、ナレディが遺骸を洞窟の奥深くに運んだのではなく、初期現生人類が関与していた可能性もあると思います。もちろん、これはまだ思いつきにすぎず、可能性は低いかもしれませんが、1ヶ所の空洞に少なくとも15個体分のナレディの遺骸があることから、本書の想定するような偶然の蓄積の可能性も低いのではないか、と思います。

参考文献:
Stanford C.著(2019)、的場知之訳『新しいチンパンジー学 わたしたちはいま「隣人」をどこまで知っているのか?』(青土社、原書の刊行は2018年)


https://sicambre.at.webry.info/201909/article_48.html
 

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コメント
1. 中川隆[-15237] koaQ7Jey 2019年12月02日 07:09:37 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2308] 報告

2019年12月02日
母系制で平和的なボノボ社会
https://sicambre.at.webry.info/201912/article_3.html


 検索していたら、表題の発言を見つけました。リンク箇所を除いて全文を引用すると、
母系制で平和的なボノボ社会と、男性優位で争いの絶えないチンパンジー社会。生まれ変わるならどっちがいい?

となります。さらに検索してみると、ボノボ(Pan paniscus)が母系社会だという認識はそれなりに浸透しているようです。たとえば、

ボノボの喩え、私も良く使います。
チンパンジーとの比較で。
生存戦略として、チンパンジーは強い雄を中心に、戦って群を作る。
ボノボは母系の集団を作り(数年前まではセックスを手段とする、などと身も蓋もない言い方されてましたが)平和的に争いを避ける。
でも人間はそれ以下だと。

との発言や、

ボノボは母系社会で雌は誰とどのようにしてもOKだし、雄も雄同士でまぁ色々したり、雌も雌同士としたり、ほぼバイセクシャルばっかりで、生まれた子供は群れの中で育てるので特に区別しないっていう、なんかもうおおらかをそのまま生き様にしたような生き方してて水龍敬ランドはボノボなのかって思った

との発言や、

哺乳類であれば同じ行為をする事によって、子が産まれ命が続いていくって事に気付いた後に、年がら年中発情期ってのは人間だけかいな?ってな疑問も浮かんでのも小学生の最後の頃だった。ボノボってのが、母系社会で若手の性処理をおばさん系が行い群の平安を保ってたりするっての知ったのはかなり後。

との発言や、

チンパンジーはオスが優位な社会で、他集団との争いも多く、子殺しやレイプなども行ないます。一方のボノボは母系社会ですが、オスとメスはほぼ対等で、力ではなく「性」でコミュニケーションを図って相手との緊張を取り除き、喧嘩が起きないようにしています。

との発言です。最後の発言はnoteの記事なのですが、Twitter上で、

ボノボは母系社会というのはガセで、他のヒト科の動物同様、メスが育った集団を出て嫁に行く父系社会である。

と批判されているように、ボノボは最近縁の現生種であるチンパンジー(Pan troglodytes)と同様に父系社会を形成しています。ボノボ社会が母系だと誤解されるのは、おそらくチンパンジーと比較して雌の社会的地位が高いからなのでしょう(関連記事)。それを反映して、ボノボの雌はしばしば、息子を発情期の雌に接近できるような場所へと連れて行き、他の雄による干渉から息子の交配を保護し、息子が高い支配的地位を獲得して維持するのを助ける、と報告されています(関連記事)。一方、ボノボ社会でも稀に雌が出生集団に留まりますが、その母親は娘を息子ほどには熱心に支援しないようです。これは、ボノボ社会が父系であることをよく反映している、と言えるでしょう。

 現代人(Homo sapiens)も含む現生霊長類では母系社会の方が優勢ですが、現代人も含まれるその下位区分の現生類人猿(ヒト上科)では、現代人の一部を除いて非母系社会を形成します。これは、人類社会が、少なくとも現生類人猿との最終共通祖先の段階では、非母系社会を形成していた、と強く示唆します。さらに、現代人と最近縁の現生系統であるチンパンジー属(チンパンジーおよびボノボ)は父系社会を形成し、次に近縁な現生系統であるゴリラ属は、非単系もしくは無系と区分すべきかもしれませんが、一部の社会においては父親と息子が共存して配偶者を分け合い、互いに独占的な配偶関係を保ちながら集団を維持するという、父系的社会を形成しています(関連記事)。

 おそらく、現代人・チンパンジー属・ゴリラ属の最終共通祖先の時点で、父系にやや傾いた無系社会が形成されており、チンパンジー属系統ではその後に明確な父系社会が形成されたのだと思います。人類系統においても、現生人類ではない絶滅人類で父系社会を示唆する証拠が得られています(関連記事)。人類系統においては、父系に傾きつつも、所属集団を変えても出生集団への帰属意識を持ち続けるような双系的社会がじょじょに形成され、さらに配偶行動が柔軟になっていき、母系社会も出現したのだと思います。おそらく人類史において、母系社会の形成は父系社会よりもずっと新しいと思います。ただ、そうした変化が現生人類の形成過程と関連しているのか、それともさらにさかのぼるのか、現時点では不明ですし、将来も確証を得るのはきわめて困難でしょう。
https://sicambre.at.webry.info/201912/article_3.html

2. 中川隆[-14972] koaQ7Jey 2020年1月01日 13:33:23 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1986] 報告
黒い暴君


チンパンジーを知らない人は殆どいないだろう。黒くて腕がそれなりに長く、とても愛嬌のある顔をしている。頭もとても賢く様々な芸をする事が出来、人間に最も近い類人猿の一種とされている。

そんな彼等だが、実は今述べた特徴は生態の一部に過ぎず、子供達に教えてしまうと恐怖する事間違いなしな事実が山ほど存在する。

順番に挙げていこう。まず1つは非常に凶暴であると言う事だ。テレビで見ているチンパンジーだけを知る人は、この一面を知るとドン引きする事間違いなしだろう。

確かに、幼少の頃は非常に愛らしく、芸も覚えるし人にも懐く。人を襲うなんて事は滅多にない。しかし、チンパンジーが10歳くらいを超えると急に凶暴になる。彼等が元々生息するアフリカ辺りでは、人間が襲われて死亡するという事件が相次いでいる。人間の子供を襲ってそのまま食べたという報告もあるそうだ。類人猿の代表格でもあるゴリラでさえ、彼等には恐怖を感じると言うのだから相当なものだろう。

これの原因については、自身の縄張りを壊滅させるために本能的にそれを行っているという事らしい。また、彼等には"子殺し"という習慣がある。他のオスの群れの子供を殺して食べるのだ。この話を聞いただけできっと吐き気を催してくるだろう。

この凶暴性に拍車をかけているのが、チンパンジーの驚異的な身体能力である。

握力は平均200〜300kg、腕力も100kg、脚力は350kgと全てが規格外。人間はおろかその他類人猿でさえ腕と腕力を使って引きちぎり、垂直飛び3.5m出来る等人間相手ではまず勝つ事は不可能である。

これが彼等の現実。これが遺伝子に刻まれた本能である。

そんな彼等がいるこの『チンパンジー館』に今私はいる。人間に最も近いとされる彼等は一体何を考えているのか、私は興味があった。だから、この動物園に来た時は必ずここに寄る事にしているのだ。

「よう兄ちゃん、また来たかい」と野太い声が私の頭に響き渡ってくる。

彼の名前はマイク。ここの館のボスである。粗暴で生意気かつ自信家。自分以外の奴は全て見下し逆らう者は即制裁。喧嘩の強さはここにいるチンパンジーの中ではトップクラスの悪逆非道の黒い暴君である。

彼はこの動物園で生まれたのだが、小さい頃からあまり飼育員に懐かずに噛み付いたり引っ掻いたりする事が頻繁にあったらしい。動物園生まれの動物では珍しい、野生の本能が色濃い存在である。

「毎度毎度俺の所に来て、何だい小僧。そんなに俺の傘下に入りたいのか?なあ、どう思うよお前ら」と彼は取り巻きに意見を求めた。

「「「そんなひょろい奴、入れる必要なんかねえですぜボス!!」」」と三匹綺麗にハモってボスに進言した。

彼等はそれぞれジャック・デップ・ブルームといい、マイクの手下的な存在である。ジャックはマイクの右腕的存在であり、三匹の中では一番冷静で喧嘩も強い。デップはお調子者かつマヌケでこのメンバーの中では一番格下扱いである。ブルームは喧嘩の強さならマイクと同等の実力の持ち主だが、デップ以上に頭の回転が悪くとてもキレやすい為、ここのボスになれなかった元ボス候補のチンパンジーである。

「お前、俺らの事羨ましいんだろ?そうだよなあ、お前ら人間は俺らみたいに立派な筋肉もねえし弱っちいし体もひょろひょろだし。お前らの良い所何て、所詮そのちっけえ頭を動かすくらいだろ?お前みたいな奴はな、外に出たらすぐに殺られちまうネズミ以下野郎だよ」とブルームが言い放つ。毎回こいつは私に喧嘩を吹っ掛けないと気が済まないのだろうか。

「まあまあブルーム。そう言ってくれるなって。こいつはそれしか取柄無いんだからそこ否定されたら悲しいだろ?なあ人間。俺は結構人間の頭の良さは買ってるんだぜ」

「ジャック、お前そんな事絶対思ってないだろ。まだブルームの方が共感持てるぜ。お前はボスに気に入られようとしすぎで若干腹が立つぜ?もうちょい自分に正直にだな」

「そうだぞジャック。お前みたいのはな絶対に嫌われるタイプだって。何か媚び売ってるみたいでよ」

「実際頭悪いだろお前たち?脳筋て言うらしいぞそういうの」

「ああ、何だとジャック。てめえ頭少しいいからって調子乗ってんじゃねえぞ」

「全くだぜ、ブルームの言うとおりだ」

この会話で見られるように、取り巻きの3匹は決して仲がよろしい訳では無い。ボスのマイクに忠実なだけであって群れの中はこんな感じなのである。

「お前ら、少しうるさいぞ」とマイクが彼等を威嚇した。3匹はたちまち静かになったが、この一言だけで周りを戒められるのはカリスマ性がどこかにあるのだろう。人間にもこういう部類の奴は身分が高くなるほど多い気がする。

「兄ちゃんよ、お前さんの望みは何だい?聞いたからと言って特に何もしてやれないけどな。この檻がまず邪魔くせえし、仮に檻を壊せたところであんたん所まで行く事はおそらく出来ねえしな。だが話だけは聞いてやる、どうしたいんだ?」

「別に、私は貴方達からは何か物が欲しい訳ではありません。弟子にもなりません」

「だったら何なんだ?ますます訳分からねえ奴だな」

「特に何も求めませんよ、普段通りに生活してもらえればそれでいいのです。それをただ私は見ているだけです」

そう、私は彼等の生活ぶりを見られればそれでいいのだ。何かを欲したりはしない。強いて言うなら、人間に最も近い彼等がどのような思考回路なのかを知りたいくらいだ。

「・・・・・。やっぱお前気持ち悪いわ、さっさと消えてくれねえかな。何か具合悪くなりそう」

「大丈夫ですかボス。おい兄ちゃん、さっさとここから失せろ!!これ以上ボスを不機嫌にさせたら、俺がお前を・・・・」

「そうだぜそうだぜ、早く失せろ!!」

「失せなきゃどうなるか、分かってるだろ?喧嘩なら俺が一番何だぜ?」

「ブルーム、余計な事は言わなくていい。この中だったら俺が2番目だ」

「何言ってんだ、一番強い俺が2番だろうが!!調子に乗ってんじゃねえぞこら!!」

「2人とも、今は追っ払うのが先じゃ・・・・」

「「てめえは黙ってろデップ!!!」」

「お前らが喧嘩してどうすんだ馬鹿!!!何ちゅう醜態晒してくれてるんだ・・・・」

哀れなりチンパンジー諸君。大丈夫だ、君らに言われずとも私はもうここを去る。十分いいものは見させてもらった、有難う暴君達。


時間は丁度お昼の12時を回った。

今私は、売店で買った110円のホットドッグをベンチで座って食べている。ここの動物園で販売している食事は本当に美味しい。貧乏人の私にとっては少し痛い出費ではあるが、限られたお金を支払ってでも食べる価値があるくらいに美味なのである。

そんなホットドッグを食べながら、私は先程の暴君達の事を考えていた。

あれだけ知性の高いチンパンジーが、本来はあのような姿な訳だ。凶暴で獰猛、自らが頂点に立つ為には手段を選ばない。このような自然の摂理は私達に大きな恐怖を与える。

しかしだ、人間の中にもそのような事をする輩は存在する。直接暴力に訴えて自身の願いを叶えようとする者や他人を騙して物や人の信頼を奪う者、他人に罪を擦り付けて自分はのうのうと日常生活を送る者等等。人間も大して彼等と変わらないのではないか。

人間も一種の"動物"だ。他の動物とは一線を画す程の知能を持ち合わせ、理性が大きく発達して言葉や道具も自由に操る事が出来る私達だが、所詮私達も自然の一部だ。

私達が犯罪と呼ぶ行為は、野生では生き残る為に行う行為だ。他の動物を捕食し、ライバルを殺し、よりよい子孫を残す――そうしなければ種は絶滅してしまう。人間だってこの"野生の本能"は持ち合わせている。それを理性が制御しているだけの話で合って、制御が利かなくなれば前述のような事になる。

私達はチンパンジーのような存在を反面教師にするべきなのだ。理性のたがが外れてしまうとああなるんだよ、絶対にあんなことしてはダメだよ――と。動物園はただ楽しむためだけにあるのではない、彼等の生活を見る事で私達は何かを学ばなくてはならないのだ。

そんな事を考えながら食べたホットドッグはあまり美味しくなかった。私は美味しく昼食を頂けなかった分、ある動物を見て気分をキラキラお星さま状態にしようと考え、ベンチを後にした。
https://ncode.syosetu.com/n6801dv/4/

3. 中川隆[-14971] koaQ7Jey 2020年1月01日 13:34:50 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1985] 報告
2018年12月29日
好戦的なチンパンジーと、平和的なボノボの違いはどこから生じたのか?
http://bbs.jinruisi.net/blog/2018/12/3398.html

「ボノボ」という類人猿をご存じでしょうか。
チンパンジー属に分類され、アフリカ中央部の赤道付近に広がるコンゴ盆地に住んでいます。ボノボとチンパンジーは外見こそそっくりですが、まったく異なる性質をもっています。ボノボの特徴を一言で言えば「平和的」ということです。チンパンジーは発情したメスを巡ってオスが争います。オスによる子殺しや共食い、集団内での殺し合い、集団間の殺し合いがよく見られますが、ボノボにはそういう争いがほとんどありません。

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平和的なボノボ集団の特徴をまとめると、以下のようになります。
(1)メスがオスと同等以上の高い社会的地位についていること
(2)メスが対等というだけでなく、社会関係ではメスがイニシアティブを握っていること(一番強いメスの息子が第一位のボスになる)
(3)メスたちが非常にコンパクトな集団をつくること
これら3つの特徴はいずれもメスがらみです。なぜこのような社会が出来上がったのか?「るいネット」の記事から探ります。

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性の問題を力で解決するチンパンジーと、力に関わる問題をセックスで解決するボノボ (リンク)

コンゴ川の左岸だけに生息し、「セックスと平和を愛する」といわれる類人猿ボノボ。近年の研究で、その意外な素顔が見えてきた。
人間に最も近いといわれる類人猿、ボノボは「セックスと平和を愛する」ユニークな生態で有名だ。他集団との争いや子殺しも辞さない好戦的なチンパンジーと近縁でありながら、なぜボノボはこんな風になったのか? コンゴ川の左岸にボノボ、右岸にチンパンジーとゴリラが暮らす現在の分布が、進化の謎を解く鍵とみる説も出ている。

ボノボとチンパンジーの大きな違いは行動にある。なかでも目に付くのは性に関連した行動だ。飼育下でも野生でも、ボノボは驚くほど多様な性行動を行う。
「チンパンジーの性行為はあまり代わり映えしないが、ボノボは古代インドの性愛の指南書『カーマ・スートラ』を読んだのかと思うほど、多様な体位でさまざまな行為を行う」とドウバールは報告した。たとえばボノボはあおむけになった雌の上に雄が乗る、いわゆる正常位で交尾することがあるが、チンパンジーではこの体位はほとんど観察されたことがない。ボノボの性的な活発さは、生殖目的の性交に限定されない。

それ以外の、いわば社会的な性行動が実に多様なのだ。おとなの雄同士や雌同士、おとなと子ども、子ども同士など幅広い組み合わせで、キス、オーラルゼックス、性器の愛撫、二頭の雄がペニスをぶつけ合うペニスフェンシング、雄が雄の上に乗るマウンティング、発情期の雌同士が性器をこすり付けあうホカホカなどの行動が観察されている。

こうした行動は通常オーガズムには至らず、コミュニケーションが主眼のようだ。敵意がないことを伝える、興奮を静める、挨拶する、緊張を和らげる、絆を深める食べ物を分けてもらう、仲直りをするといった目的で行うこともあれば、単に快感を求めて行う場合や、こどもの遊びが性交の練習になっている場合もある。
頻繁に、たいていは無造作に行われる多様な性行動は、さまざまな場面で社会の潤滑油の役割を果たす。ドウバールによれば、「チンパンジーは性の問題を力で解決するが、ボノボは力に関わる問題をセックスで解決する」というわけだ。

豊富な食料が、ボノボをセックス好きで平和を愛する種に進化させた (リンク)

ボノボとチンパンジーには、ほかにも大きな違いがある。ボノボの集団では雄ではなく、雌が社会的序列の最上位を占めるのだ。チンパンジーでは若い雄が一時的に同盟を結び、上位の雄を倒してその地位を奪うといった策略がよく見られるが、ボノボの雌の地位は互いの友好関係を通じて確立されるようだ。
ボノボたちは、縄張りが近接する他の集団に攻撃をしかけることはない。昼間はチンパンジーよりも安定した、規模の大きな集団で採食行動を行う。ときには15〜20頭がまとまって食べ物を探しながら移動し、夜は安全のためか一ヶ所に固まって、樹上にねぐらを作って眠る。

食べるものはチンパンジーとほぼ同じで、果実や葉を主食とし、たまに狩に成功すると動物性たんぱく質も摂取する。チンパンジーと明らかに異なるのは、ボノボは年間を通じて、林床の植物を多く食べることだ。クズウコンなどのでんぷん質の地下茎やみずみずしい茎、栄養のある新芽や若葉。茎の内側の髄の部分も、たんぱく質や糖分たっぷりのごちそうだ。

つまり、ボノボはいつでも豊富な食べ物にありつけるということだ。チンパンジーのように食料不足や飢えに苦しんだり、食料をめぐって争ったりすることは少ない。こうした食性が、ボノボの進化に大きな影響を与えてきたようだ。
ボノボとチンパンジーは、私たち現生人類(ホモサピエンス)と最も近縁な動物だ。約700万年前、アフリカの赤道地方の森林にはボノボ、チンパンジー、ヒトの共通の祖先が暮らしていた。そこからまずヒトの系統が枝分かれし、約90万年前までにはボノボとチンパンジーの進む道も分かれた。

両者が分かれる直前の祖先が体や行動の面で、現在のチンパンジーとボノボのどちらに近い動物だったのかはわからない。この謎に迫れば、人間の起源についても何らかのヒントが得られそうだ。
私たちはどちらの系統に連なるのだろう。平和を愛し、セックス好きで、雌が主導権をとる類人猿か、それとも好戦的で赤ん坊殺しも辞さない、雄優位の集団を作る類人猿か。
http://bbs.jinruisi.net/blog/2018/12/3398.html

4. 中川隆[-14775] koaQ7Jey 2020年1月07日 10:27:56 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1755] 報告

2020年01月07日
チンパンジーにおける雄による子殺しへの雌の対抗戦略
https://sicambre.at.webry.info/202001/article_11.html

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、チンパンジー(Pan troglodytes)における成体の雄による子殺しへの雌の対抗戦略に関する研究(Lowe et al., 2019)が報道されました。哺乳類では雄による乳児殺しが一般的です。これは、授乳中は月経が止まり、妊娠しなくなるため、雄が乳児殺しにより母親の授乳を止めてその出産間隔を短縮し、自身の子を儲ける可能性が高くなるため、雄の適応度を上昇させるからと考えられています。そのため、乳児でも幼い個体ほど、その虚弱性もあって狙われやすくなります。乳児殺しは大きな選択圧になるので、雌の側の対抗戦略が予測されます。

 乳児殺しはチンパンジーの複数集団で起きており、ほとんどの場合加害者は雄です。チンパンジーにおける雌の乱交は、乳児殺しへの対抗戦略の一つと考えられています。ここで重要なのは、雄の集団内順位から父親を予測できる、ということです(1〜3位の雄の子は集団の約60%)。もっとも、チンパンジーは乱交社会で、そのため父性の混乱により、乳児殺しへの保護は充分には期待できませんが、これは乳児殺しの重要な背景となります。低順位の雄は一般に、子を儲ける可能性が低く、乳児殺し戦略により失うものは少ないのですが、乳児殺しの最大の危険性は、順位上昇中の雄から生じる、と予測されています。現在は自身の子が少ないものの、次に子を儲ける可能性が高いところまで順位を上げた雄は、失うものが少なく、得るものが多くなる、というわけです(ローリスクハイリターン)。

 そのため、乳児殺しは、子を儲ける機会の低い雄にとって、順位が上昇する時にはとくに適応的戦略となります。雌は体力的に雄の攻撃に対抗できず、乱婚社会で雄からの保護が充分は期待できないため、乳児殺しの危険性に対抗するには、乱婚に追加するか、もしくは代替する戦略が必要となります。なお、現時点での研究では、雄が父性を直接的に識別できている、と仮定できるだけの証拠は提示されていません。また、チンパンジーは柔軟に分裂して融合するので、雌はこれを乳児殺しへの対抗戦略として用いている可能性がある、と指摘されています。

 本論文は、成体の雄による乳児殺しの危険性に対する雌の対抗戦略について、ウガンダのブドンゴ森林のソンソ(Sonso)集団のチンパンジーの調査結果から、3通りの非排他的な可能性を検証しています。一つは、雌が子をより多く儲けている可能性の高い高順位雄からの保護を求める、というものです。次に、雌が乳児殺しの可能性のある雄への乳児の接近を避ける、というものです。最後に、雌が他の母親と提携して乳児の保護を求める、というものです。

 本論文の検証結果は、乳児の母親が集団内順位で急速に上昇している雄に最も強く反応する、と示します。乳児の母親は、そうした乳児殺しの危険性の高い雄との接触を減らしているわけですが、また同時に、高順位の雄との接触を増やそうとすることも明らかになりました。雌は雄の順位変動に敏感で、乳児殺しの危険性を減少させるよう適応的に反応する、というわけです。本論文は、こうしたチンパンジーの雌の乳児殺しの危険性への対抗戦略は、他のチンパンジー集団でも一般化できる、と予測しています。雄のチンパンジーについては、高順位の雄と競争するため複雑な同盟を用いる「策略家」と言われますが、本論文が示すように、雌もまた乳児殺しの危険性を減少させるため、雄の順位変動に敏感になり、集団内順位を急上昇させているような雄との接触を避けるという対抗戦略を採用する、「策略家」というわけです。


参考文献:
Lowe AE, Hobaiter C, and Newton‐Fisher NE.(2019): Countering infanticide: Chimpanzee mothers are sensitive to the relative risks posed by males on differing rank trajectories. American Journal of Physical Anthropology, 168, 1, 3–9.
https://doi.org/10.1002/ajpa.23723

https://sicambre.at.webry.info/202001/article_11.html

5. 中川隆[-14395] koaQ7Jey 2020年1月18日 09:39:08 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1309] 報告
2020年01月18日
ボノボとチンパンジーの集団内および集団間の雄同士の血縁度の比較
https://sicambre.at.webry.info/202001/article_28.html

 互いに最近縁の現生種である、ボノボ(Pan paniscus)とチンパンジー(Pan troglodytes)の集団内および集団間の雄同士の血縁度の比較に関する研究(Ishizuka et al., 2020)が公表されました。血縁関係は動物の理解にたいへん重要ですが、異なる集団における個体間の血縁パターンは、とくに大型哺乳類ではほとんど調査されておらず、それは野生での調査が困難だからです。ボノボとチンパンジーは、父系で複雄複雌集団を構成し、集団は分裂と融合を繰り返すといった点で、共通の社会システムを有しており、集団間の相互作用と異なる集団の個体間の血縁度を調査するのに効果的です。なお、最近の研究では、ボノボの雌はしばしば近隣集団に移動する、と示されています。

 しかし、集団間の関係は、チンパンジーでは基本的に敵対的で、雄がしばしば群れで攻撃し、異なる集団の雄を殺すこともあるのに対して、ボノボではより穏やかな集団間関係が見られます。ボノボでも集団間の雄同士の関係は敵対的ですが、雄のボノボは異なる集団の雄を攻撃して殺すようなことは滅多にありません。またボノボでは、雌が主導しての集団間の非敵対的な遭遇も起きることがあり、集団間の交尾さえしばしば観察されます。したがって、隣接集団間の繁殖は、チンパンジーよりもボノボの方が高頻度と予想されます。これは遺伝的研究でも示唆されており、集団外の雄の子かもしれない個体が、チンパンジーでは4ヶ所の生息地のうち1ヶ所でしか見つかっていないのに、ボノボでは3ヶ所全てで見つかっています。

 さらに、集団間の雄の移動は、チンパンジーよりもボノボの方で多く観察されています。これらの違いから、集団間での雄の遺伝子流動はチンパンジーよりもボノボの方が高頻度であり、チンパンジーよりもボノボの方が雄の血縁関係では集団間の差異は小さい、と予想されます。以前のいくつかの研究では、集団内の雄間の血縁度は、ボノボとチンパンジーでは近隣集団の雄間よりも高い傾向にある、と部分的に示されています。しかし本論文は、まだデータが不足している、と指摘します。本論文は、常染色体とY染色体のデータを用いて、ボノボとチンパンジーの雄の、集団内と集団間の血縁度の違いを検証しました。

 チンパンジーでは調査対象の5集団のうち3集団で、ボノボでは3集団すべてで、雄の平均血縁度は近隣集団間よりも集団内部の方が高い、と示されました。これは、両種が父系社会であることからの予想と矛盾しません。また、ボノボの方がチンパンジーよりも集団内の雄の平均血縁度が高いことも明らかになりました。しかし、全集団を対象とすると、集団内の雄と集団間の雄との平均的血縁度の違いは、ボノボのみで有意な差が示されました。チンパンジーで有意な差が見られないのは、5集団のうち2集団の特異な理由に起因するかもしれません。この2集団のうちの一方では雄は2頭のみで、血縁関係にない可能性があります。この集団は1982〜1996年にかけて規模が劇的に減少しました。もう一方の集団には15頭の雄がいました。以前の研究では、集団内の雄の数が少ない場合のみ、雄の平均的血縁度が高いと予想されています。一方の集団は雄が15頭と比較的多いため、平均血縁度は、集団内の雄間で低く、近隣集団とさほど変わらない可能性があります。そのため、集団内の雄と集団間の雄との平均的血縁度が、チンパンジーでは有意な差として示されなかったかもしれません。

 これまでの研究では、雄の繁殖の偏りはチンパンジーよりもボノボの方で高い、と示唆されてきました。これは、ボノボでは雄の繁殖成功がその母親の影響を大きく受けるのに対して、チンパンジーではそうではないからです(関連記事)。そのため、ボノボの集団内においてはチンパンジーの集団内よりも雄間の血縁度は増加する、と予想されます。一方、ボノボの方が頻繁に発生するかもしれませんが、ボノボでもチンパンジーでも、集団間の雄の遺伝子流動は稀です。ボノボやチンパンジーのような父系的社会の種で集団間の雄の遺伝子流動が稀である場合、異なる集団の雄間の平均血縁度は低いと予想されます。じっさい、ボノボとチンパンジーの両種で、隣接集団の雄間の平均血縁度は集団内の雄間の平均血縁度よりも低い、と示されています。したがって、集団内の雄間の血縁度はチンパンジーよりもボノボの方で高くなり、近隣集団の雄間の血縁度は両種ともに集団内よりも低くなります。そのため、集団内でも近隣集団間でも、雄間の平均血縁度はチンパンジーよりもボノボの方で顕著に大きい、と予想されました。

 ボノボとチンパンジーとの比較では、集団間の雄の遺伝的距離は、常染色体でもY染色体でも有意な違いがありませんでした。そのため、雄の血縁度における集団間の違いがボノボとチンパンジーのどちらでより大きいのか、不明なままです。ただ、集団間の雄の遺伝的距離では、ボノボの方がチンパンジーよりも平均値は高く、ボノボにおいて集団内の雄間の平均血縁度と近隣集団の雄間の平均血縁度とで大きな違いがある、という観察結果と矛盾しません。また、ボノボの1集団では雄間のY染色体の遺伝的距離の値がひじょうに低く、これは集団の雄の低い遺伝的多様性の影響を受けているかもしれません。

 本論文の結果は、ボノボではチンパンジーよりも集団間の雄の攻撃が少ない、という観察からの、ボノボでは集団間の雄の血縁度がチンパンジーよりも有意に高い、という予想とは一致していません。これまでの研究では、雄間の同盟形成や協調的相互作用のパターンは、父系社会の種の集団における血縁度では説明されない、と提案されていました。父系社会の種では、血縁度は基本的に、同じ集団でも異なる集団でも、雄間の社会的相互作用のパターンを説明しないかもしれません。

 ボノボとチンパンジーで異なる集団の雄への攻撃性の説明としては、ボノボにおける発情期間の延長があります。チンパンジーが隣接集団から交尾相手の雌を略奪するために攻撃するのに対して、ボノボの雄にはそうした必要性が低いのではないか、というわけです。また、ボノボが異なる集団の雄とも採集できる、という事実との関連も指摘されています。ボノボはチンパンジーよりも地上の草本に依存しており、果実への依存度が低いと考えられることから、縄張りを守る必要性がチンパンジーよりも低いのではないか、というわけです。また、チンパンジーはボノボよりも採集に出かける構成員の数のバラツキが大きく、遭遇した集団同士の数が大きく違っている可能性を高めるので、激しい攻撃を誘発しているかもしれない、とも指摘されています。

 本論文は、大型哺乳類の精細な遺伝的構造がほとんど明かされていない中で、これらのデータは貴重である、とその意義を指摘します。本論文は、集団間の雄の血縁関係に関して、ボノボはチンパンジーと同等か、あるいはもっと異なっている、と示しました。上述のように、これは両種の行動からの予想とは異なります。ボノボとチンパンジーにおける、集団間の相互作用と集団間の雄の血縁度のパターンとの関連に関しては、さらなる研究が必要になる、と本論文は指摘します。


参考文献:
Ishizuka S. et al.(2020): Comparisons of between-group differentiation in male kinship between bonobos and chimpanzees. Scientific Reports, 10, 177.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-57133-z

https://sicambre.at.webry.info/202001/article_28.html

6. 中川隆[-13205] koaQ7Jey 2020年3月29日 10:55:12 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1699] 報告
2020年03月29日
チンパンジーとボノボの分岐
https://sicambre.at.webry.info/202003/article_46.html


 チンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)の分岐について、2020年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)で報告されました(Zihlman et al., 2020)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P 319)。チンパンジー属のチンパンジーとボノボは、250万〜80万年前頃に分岐した、と推定されています(関連記事)。両種の分岐に関しては、チンパンジーが母集団となってボノボが派生した、との見解が広く支持されています。これは、おもに社会性・道具使用・狩猟といった行動的証拠に基づいており、ボノボの解剖学的証拠は無視される傾向にあった、と本報告は指摘します。

 本報告は、チンパンジー属の成体18頭の解剖体骨と、20頭のボノボおよび2亜種25頭のチンパンジーの骨格データに由来する、骨格および軟組織両方の証拠に基づき、チンパンジーとボノボの分岐を検証しています。一部の頭蓋顔面および歯の特徴は、チンパンジーとボノボを統計的に区別しますが、体重および頭蓋容量では区別されませんでした。チンパンジー属の体組成(骨・筋肉・皮膚など)は、雌もしくは雄の間での種内変異をほとんど示しません。年齢と体重の一致したボノボとチンパンジーの雌の比較は、いくつかの統計的に有意な程度が体幹と四肢の比率における違いを反映している、と示します。同種の雄と比較した比較した雌は、ボノボでは骨格の程度で統計的な違いを示さないのに対して、チンパンジーの雄は雌から離れます。

 これら解剖学的比較の結果はチンパンジーの雄を外れ値として示し、ボノボではなくチンパンジーが分岐した種である、という仮説を支持します。これらの比較をゴリラとアウストラロピテクス属に拡張することで、分岐したチンパンジーの解剖学と行動に関する進化史と潜在的選択圧がより明確に見えてくる、と本報告は指摘します。チンパンジー属の化石はほとんど発見されていないので、チンパンジーとボノボの分岐に関する問題の解明には、現時点では現生種の形態とゲノムの比較が有効となりそうです。


参考文献:
Zihlman A.(2020): Pan paniscus or Pan troglodytes? The case for a divergent Pan troglodytes. The 89th Annual Meeting of the AAPA.


https://sicambre.at.webry.info/202003/article_46.html

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