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スコットランド人の遺伝的構造
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/731.html
投稿者 中川隆 日時 2019 年 11 月 26 日 10:22:43: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: イタリア半島の人口史 投稿者 中川隆 日時 2019 年 9 月 15 日 11:43:49)


2019年11月26日
スコットランド人の遺伝的構造
https://sicambre.at.webry.info/201911/article_47.html


 取り上げるのが遅れてしまいましたが、スコットランド人の遺伝的構造に関する研究(Gilbert et al., 2019)が報道されました。ブリテン島とアイルランド島およびその周辺の島々では、移住と侵略により現代人集団が形成されてきました。ブリテン島に人類が移住してきたのは更新世で、完新世になると、紀元前4000〜紀元前3000年頃に農耕民が移住してきて、銅器時代〜青銅器時代には鐘状ビーカー複合(Bell Beaker Complex)の拡散により大規模な人口置換があった、と推測されています(関連記事)。

 ブリテン諸島集団の遺伝的構造はここでほぼ確立し、その後の移住も遺伝的影響を及ぼしたものの、置換は起きませんでした。青銅器時代以後の遺伝的影響として、400〜650年頃のアングロサクソンの侵攻が、イングランド南部におけるより高いゲルマン関連系統と関連していることや、8〜11世紀のヴァイキングの侵略が、オークニー諸島とアイルランドにおけるノルウェー人関連系統の増加と関連していることなどが挙げられます。さらに、アイルランド北東部では、おもに17世紀においてスコットランドとイングランド起源の集団との混合がありました。

 ブリテン島とアイルランド島の集団遺伝学の以前のゲノム規模調査では、イングランド・ウェールズ・アイルランドと比較して、スコットランドとその近隣地域のデータが少ない、という問題がありました。本論文はこの問題に対処するため、既知のデータとシェトランド諸島・マン島・スコットランド西岸の遺伝的データを組み合わせて、ブリテン島とアイルランド島およびその周辺の島々の計2544人のゲノムデータセットを作成し、包括的に分析しました。さらに本論文は、2225人のスカンジナビアの人々のデータセットも比較しました。本論文はこの統合されたデータを用いて、スコットランドとその周辺の島々における、遺伝子構造、ヴァイキングの遺伝的影響、古代アイスランドの創始者集団の遺伝的起源を検証しました。

 これらのデータセットに基づく地理的集団の系統樹では、まずシェトランド諸島およびオークニー諸島集団とその他の他集団に分岐します。後者では、イングランドおよびウェールズ集団とその他の集団が分岐します。さらに後者では、アイルランド集団とスコットランド集団が分岐します。スコットランド集団は、ヘブリディーズ諸島集団とスコットランド北東部および南西部集団が分岐します。ブリテン島およびアイルランド島とその周辺の島々では、遺伝地理的構造がかなりの程度明確に示されています。

 これらの集団の遺伝的構成は、イングランド・ウェールズ・スコットランド・デンマーク・スウェーデン・ノルウェーの6系統の混合モデルでも分析されました。このうち、ウェールズはケルト、イングランドはサクソン、ノルウェーはノースという古代集団をほぼ表しています。ノルウェー系統はヘブリディーズ諸島集団で約7%と低く、スコットランド北部および南西部(アーガイル)とマン島でも約4%と低くなっています。アイルランドでもノルウェー系統の割合は平均7%と低くなっています。スコットランド東部とマン島では、イングランド系統の割合が比較的高くなっています。

 これらのゲノムデータは古代集団とも比較されました。アイスランド古代集団は遺伝的にはゲール人系統とノース人系統とに二分されます。ゲール人系古代アイスランド集団は、スコットランドとアイルランドのゲール人系集団と最大の類似性を示します。ノース人系統古代アイスランド集団と最も低い遺伝的類似性を示すのは、ドニゴールとヘブリディーズ諸島とアーガイルで、これらは、ヴァイキングの激しい活動があったブリテン諸島北西部地域とアイルランド島です。こうした現代人集団の遺伝子的構造は、アイスランドの創始者集団が、ブリテン島北西部もしくはアイルランド起源だったことを示唆します。

 本論文は、ブリテン諸島において、北部ではノース人系統が、南東部および西部ではサクソン人およびケルト人系統が強いことを明らかにしています。とくにオークニー諸島とシェトランド諸島集団は、スカンジナビア外ではノルウェー系統を最高水準で有しています。本論文が示す現代のスコットランドの地域的な遺伝的構造は、明らかな自然障壁がないにも関わらず、暗黒時代(西ローマ帝国が崩壊した476年〜1000年頃)の王国の分布と地理的によく一致します。産業革命以後の流動性の増加にも関わらず、過去1000年ほど、スコットランドでは人類集団の大きな移住・遺伝子流動がなかったことを表しているのでしょう。

 また、ヘブリディーズ諸島とスコットランド高地とアーガイル地方とアイルランドのドニゴール州とマン島の集団は、他の地域集団と比較して遺伝的孤立の特徴を示します。ヨーロッパ北部からのヴァイキングの影響は、アイルランドでは以前の推定よりずっと低くなりました。本論文は、この新たな推定が、ヨーロッパ北部系がほとんど見られないアイルランドのY染色体データともよく一致している、と指摘します。また本論文は、これらの遺伝的知見がブリテン島とアイルランド島における地理的に異なる病気発生率の解明にも役立可能性も指摘しています。


参考文献:
Gilbert E. et al.(2019): The genetic landscape of Scotland and the Isles. PNAS, 116, 39, 19064–19070.
https://doi.org/10.1073/pnas.1904761116

https://sicambre.at.webry.info/201911/article_47.html  

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コメント
1. 中川隆[-15142] koaQ7Jey 2019年12月14日 10:27:57 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-2195] 報告

2019年12月14日
イギリスにおける移住と遺伝子の差との関連
https://sicambre.at.webry.info/201912/article_22.html


 イギリスにおける移住と遺伝子の差との関連についての研究(Abdellaoui et al., 2019)が公表されました。イギリスでは、ヒトのDNAは先祖の違いを反映すると知られており、また人々が伝統的に生まれた土地に留まってあまり移動しないため、数世紀にわたって維持されてきました。しかし、DNAの構成が産業革命や後の移住などの国内移動によってどのように影響を受けているかについてはよく分かっていませんでした。

 この研究は、イギリスバイオバンクに登録されたヨーロッパ系の45万人以上を対象に、約120万の遺伝的変異を使って、多遺伝子スコア(特定の形質に関する人の遺伝的素因の推定値)を計算しました。その結果、解析した33の遺伝形質のうち、21の形質に明瞭な地域的偏りが認められました。また、参加者の多遺伝子スコアは、年長の遺伝的祖先の影響を取り除くと、遠くに住む他の参加者の多遺伝子スコアよりも、近隣に住む人々の多遺伝子スコアに近い、と明らかになりました。このパターンはとくに、学業達成度に関するスコアについて強く認められました。低学歴と関連する遺伝的変異は、炭鉱町などの経済的に苦しい地域でより多く認められました。この研究は、参加者が学業達成度に関して高い遺伝的素因を有している場合、貧しい地域を去っている可能性が高いのではないか、と示唆しています。

 さらにこの研究は、選択的な移動が、遺伝的変異だけでなく、究極的には投票傾向などの集団的な態度と一致する可能性のある、社会的および経済的な問題の地域への偏りと関連する可能性がある、と見いだしています。たとえば、選挙結果にみられる地域差は、地域の社会経済的状態、ならびに学業達成度と相関する遺伝的変異の両方と関連しています。社会的成層は、イギリスにおける遺伝的変異の地域分布に影響を及ぼしている可能性が高く、健康や不平等に関連する政策、さらには遺伝子と行動変化の関係に関する今後の研究に重要な意味を持つ、との結論をこの研究は提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝学】英国における社会経済的要因による移住は遺伝子の差と関連する

 英国では、メンタルヘルス、個性、学業達成度などのさまざまな形質と関連する遺伝的変異が地域によって偏っていることを報告する論文が掲載される。この研究で、この傾向はおそらく祖先の違いによるものではなく、社会経済的に駆動された近年の移動によるものであると考えられることが示唆されている。

 英国では、ヒトのDNAは、先祖の違いを反映することが知られており、また人々が伝統的に生まれた土地に留まってあまり移動しないため、数世紀にわたって維持されてきた。しかし、DNAの構成が、産業革命や後の移住などの国内移動によってどのように影響を受けているかについてはよく分かっていなかった。

 今回、Abdel Abdellaouiの研究チームは、英国バイオバンクに登録されたヨーロッパ系の45万人以上を対象に、約120万の遺伝的変異を使って、多遺伝子スコア(特定の形質に関する人の遺伝的素因の推定値)を計算した。すると、解析した33の遺伝形質のうち、21の形質に明瞭な地域的な偏りが認められた。また、参加者の多遺伝子スコアは、(年長の遺伝的祖先の影響を取り除くと)、遠くに住む他の参加者の多遺伝子スコアよりも、近隣に住む人々の多遺伝子スコアに近いことが判明した。このパターンは特に、学業達成度に関するスコアについて強く認められた。低学歴と関連する遺伝的変異は、炭鉱町などの経済的に苦しい地域でより多く認められた。研究チームは、参加者が学業達成度に関して高い遺伝的素因を有している場合、貧しい地域を去っている可能性が高いのではないかと示唆している。

 さらに研究チームは、選択的な移動が、遺伝的変異だけでなく、(究極的には投票傾向などの集団的な態度と一致する可能性のある)社会的および経済的な問題の地域への偏りと関連する可能性があることを見いだしている。例えば、選挙結果にみられる地域差は、地域の社会経済的状態、ならびに学業達成度と相関する遺伝的変異の両方と関連している。

 社会的成層は、英国における遺伝的変異の地域分布に影響を及ぼしている可能性が高く、健康や不平等に関連する政策、さらには遺伝子と行動変化の関係に関する今後の研究に重要な意味を持つと、研究チームは結論している。


参考文献:
Abdellaoui A. et al.(2019): Genetic correlates of social stratification in Great Britain. Nature Human Behaviour, 3, 12, 1332–1342.
https://doi.org/10.1038/s41562-019-0757-5


https://sicambre.at.webry.info/201912/article_22.html

2. 中川隆[-15052] koaQ7Jey 2021年11月28日 17:25:39 : buDTBzriJk : RjBUa0dYTlkueS4=[27] 報告
【ゆっくり解説】ケルト神話はケルト神話じゃありませんでした【神話】
2021/11/27


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