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新元号「令和」切り替え、“最悪の”システム大障害の恐れ…4割近くの企業が調査中・未調査
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27410.html
2019.04.09 文=佃均/フリーライター Business Journal
■ガラパゴス日本の象徴になるかも
4月1日、平成に代わる新しい元号「令和」が発表された。過去247の元号はすべて中国の古文献に由来していたが、今回、初めて日本の古典(最古の歌集『万葉集』)に依拠したという。ただ、「令和」の出典となった『万葉集』巻五の「梅花の歌三十二首」の序文は、後漢王朝前期に学者・張衡が著した『帰田賦』からとられたものだという指摘もある。
日本人の寿命が延びたので、大正、昭和、平成、令和と4つの元号を生きることになる人も少なくない。その親、祖父・祖母世代を考慮に入れると、戸籍や土地台帳の手続きでは、慶応、元治、文久、万延といった江戸末期の元号は、まだ完全に「過去」になりきっていない。
21世紀に入って20年、社会・経済がグローバル化したネット時代、本家本元の中国も廃止した元号を日本だけが使い続けることの是非について議論は深まらないまま、メディアでは「祝改元」騒ぎが満ちている。「和を令する」という響きに違和感があると言う人もいるようだが、時間がたてば耳に馴染むだろう。
企業や行政機関にとってやっかいなのは、和暦を西暦に置き換えなければならないことだ。例えば、明治元年は今から何年前か、その答えを出すには、
(1)明治元年=1868年
(2)2019−1868=151
という2段構えの計算をしなければならない。大正、昭和、平成も同様だ。また「承久の変」「建武の中興」のように、元号を冠した歴史上の出来事も、「いつ起こった事件か」と尋ねられたら西暦で答えるのが一般的だ。「世界のどこにもないユニークな伝統」と胸を張っているうちに、世界から見たらガラパゴス日本の象徴に映るかもしれない。
■システム改修の難度は高くないが……
ITが社会・経済、生活の隅々に浸透している現在、本来であれば西暦で統一するのが望ましい。なぜなら、コンピュータは年を西暦で記録・管理しているためだ。古いシステムは西暦の下2けたで動いていたので、2000年を迎えるに当たって、多くのシステム・エンジニアは戸惑った。コンピュータは「00年」を1900年と認識するので、行政手続きでも民官の取引でも大混乱が起こる。データを並び替え、検索、抽出した結果がまったくの間違いになってしまう。銀行の利子計算もできなくなる。
「00年」を「1900年」、「01年」を「1901年」と認識するだけならともかく、コンピュータの多くは「異常値」が連続して入力されると自動的に処理を停止するように設定されている。3度連続でパスワードを間違うと、4回目以後は受け付けてくれなくなるのと同じだ。情報システムはネットワークで相互に連携しているので、どこかのシステムが停止すると全体が動かなくなってしまう可能性がある。
今回の改元は、和暦と西暦の照合・置き換えの問題だ。コンピュータが内蔵しているCPUのクロック周波数やOSの時刻管理機能を変更する必要はない。和暦を扱っている業務とそれに対応するプログラム、データファイルを洗い出し、当該部分に修正プログラム(パッチ)を当てていけばいい。技術的な難度はさして高くない。
ただ、西暦2000年(Y2K)問題の頃と違って、現在はさまざまなシステムが旧来のオンライン、インターネットのウェブサイトなどを介して相互にリンクしている。しかもIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やWi-Fiで無数のセンサーや携帯端末のデータがシステムを駆動させる「データ・ドリブン」型だ。
さらにいえば、システム全体の時刻管理がセンターのメインサーバーで行われているとは限らない。NTP(Network Time Protocol)、GPS(Global Positioning System)、電波時計用の長波JJY、テレビ放送や携帯電話の電波、FM波ということもある。プログラムとデータの改修がどこに影響するかを確認する作業が重要だ。
■新元号を入れた本番テストで大忙し
経済産業省が行った「改元に伴う企業等の情報システム改修等への対応状況に関するアンケート」という調査がある。約900の業界団体に協力を求めたというのだが、有効回答は大企業739件、中小企業2,058件の計2,797件だ。1団体当たり3件強というのはいかにも少ない。調査期間が短かったせいなのか、あまり関心がないためか、簡単な作業と軽く見ているのか。
2,797件を集計すると、「和暦を使用している部分の特定が完了している」が877件で31.4%、「和暦は使っていない」が899件で32.1%、「調査・確認中」が458件で16.4%、「調査・確認はこれから」が563件で20.1%だった。
和暦使用部分を「特定済み」「調査・確認中」の企業に改修の度合いを聞くと(有効回答1289件)、「改修は必要ない」が185件で14.4%、「対応が必要」が497件で38.6%、「導入しているパッケージ製品のアップデートなど改修作業は軽微」が422件で32.7%、「改修の必要性は今後判断する」が185件で14.4%だった。
「他社とのシステム連携テスト」について(有効回答508件)は、「システム連携はしていない」が98件で19.3%、「実施する」が282件で55.5%、「連携テストは不要」が97件で19.1%、「今後検討する」が31件で6.1%だった。
今回の調査で留意しなければならないのは、「やっている」企業の割合ではなく、「やっていない」の割合だ。すべての企業が「やっている」なら問題は起こらない。1社でも(1システムでも)対応しなければ、問題は全体に広がっていく。
情報処理推進機構(IPA)が今年3月に作成した資料「改元への対応〜あなたの会社は⼤丈夫?〜」では、改元に伴うシステム改修のモデルとして、以下のスケジュールを示している(下図参照)。
(1)3月初めをメドに、和暦にかかわるプログラムとデータの特定、取引先との調整、改修計画を策定
(2)3月末までに、プログラムを改修、本番移行のリハーサル、ダミーデータを使ったテストなどを終了
(3)4月いっぱいで新元号「令和」を使ったテスト
ただ3月は年度末、年度始めの人事異動や組織改編で企業のIT部門やシステム受託会社は、それどころではない。4月に入ってプログラムとデータの改修、本番テストというのが現実的なところだろう。経産省がアンケート調査を実施したのは今年1月28日〜2月13日なので、多くの企業が和暦のプログラムとデータを特定する作業に集中していたときだ。20.1%だった「調査はこれから」が現在は1桁台に減少しているだろうし、新元号に対応するプログラム改修作業がいよいよ本格化しているに違いない。
情報処理推進機構(IPA)作成資料「改元への対応〜あなたの会社は⼤丈夫?〜」より
■合字やフォントの問題もある
では何をテストするのかというと、まずは今年5月1日以後の年次表記だ。「令」も「和」も当用漢字なので外字問題は起きないが、書類に表示する合字(「平成」などを一文字として表記)の問題がある。Unicodeで新元号の合字は「U+32FF」が割り当てられることになっているが、フォントメーカーから「令和」の合字が出そろうにはしばらく時間がかかりそうだ。
サーバーが処理したデータの年月日をWindows系のPCやプリンタがきちんと表示するか、文字化けが起きないかなどを確認する必要があるのだが、企業のIT部門やプログラム改修を受託するITベンダーは、ソフトウェア・パッケージ製品の新元号対応や合字フォントのスケジュールに合わせるしかない。ITの世界では、「テストに一発OKはない」と言われるので、IT関係者は改元実施ギリギリまでテスト、テストに追われることになる。
もうひとつは、コンピュータが「2019年」「平成31年」「令和元年」「令和1年」を同じ年と認識するかどうかだ。M/m、T/t、S/s、H/h、R/rを明治、大正、昭和、平成、令和と識別するかも要チェックだ。ここをちゃんとクリアしないと、ビッグデータは雑音だらけになって、使いものにならなくなる。
アンケートを実施した経産省に取材すると、「大きなトラブルが発生する可能性は高くない」と言う。「Y2Kのときのように、大山鳴動して……になってほしいのが本音」と言う。システム改修のせいで電車が止まったりすればテレビの情報番組は大騒ぎするだろうが、常識的な人はトラブルの発生を期待するはずがない。何も起こらないに越したことはないのだが、対策を講じるには「最悪の事態」を想定しなければならない。
■給料や年金が振り込まれない?
では、どのような事態が想定されるかを探ってみよう。
経産省やIT系業界団体の話を総合すると、ひとつはネットワークを介したデータの受け渡しで問題が生じるケースだ。新元号対応済みのシステムと未対応システムとの間でデータの受け渡しができなくなる。データが届いても、「昭和31年」や「平成元年」の「処理済み」データに格納されてしまうかもしれない。発注データの未達で部品や材料が届かなければ、メーカーは生産できなくなり、店舗は開店休業を余儀なくされる。
情報処理推進機構(IPA)作成資料「改元への対応〜あなたの会社は⼤丈夫?〜」より
もうひとつは、代金の決済や給与の振り込みで問題が生じるケースだ。金融機関の多くは通帳を西暦で印字するようになっているが、資金振替のシステムは意外にも和暦で動いている。踏み込んで調べていくと、全国の銀行、信用金庫などをネットワークで結んで資金決済を行う全国銀行データ通信システム(全銀システム)が和暦で動いているらしいことがわかった。
経理システムから取引先金融機関に送信した振替・振込依頼のデータが、全銀システムでリジェクト(差し戻し)されたり誤読されたら、代金の決済ができなり、モノも動かず、カネも動かずとなる。
これと並んで「ヤバい」のは、年金保険料の徴収と支給だ。金融機関の決済システムだけでなく、年金システムの誤動作が重ならないとも限らない。永田町関係者は、「そうなれば、政権に激震が走る」と言う。そのあたりは内閣官房に設置された「新元号への円滑な移行に向けた関係省庁連絡会議」がチェックしているのだが、「消えた年金」「データ入力業務の中国流出」が記憶に新しい。国民の信頼回復に向けて、厳重・厳密な運営に努めてほしい。
(文=佃均/フリーライター)
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