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ロシアの航空産業を潰しにかかった米国 経済制裁でロシアの新型旅客機が開発やり直しの危機
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/282.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 22 日 21:58:30: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 「日本からサイバー攻撃」、ロシア外務省が名指し   投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 22 日 21:30:21)

ロシアの航空産業を潰しにかかった米国
経済制裁でロシアの新型旅客機が開発やり直しの危機
2019.1.22(火) 渡邊 光太郎
MC-21(写真出所:UAC/イルクート社)
 ロシアが開発していた新型旅客機「MC-21」が制裁の影響で製造不能に陥っている。

 MC-21の製造に参加していた企業が制裁リストに載り、米国製の素材が入手できなくなったからだ。

 ロシアはこれまで、MC-21が軍事と関係ない旅客機であるとして制裁対象から外してもらうよう求めていた。ロシアの航空業界でも、対外的には制裁の影響は小さいというのが基本スタンスだった。

 しかし、2019年に入り、いよいよどうにもならなくなり、ロシアの航空産業は慌ただしくなってきた。

 MC-21はロシア航空産業で主力を担う予定の機種である。制裁によって製造不能になれば、米国によってロシアの航空産業が潰されたと表現しても決して大げさではない。

新型旅客機が受けた制裁
 「MC-21」は日本の三菱飛行機が製造する「MRJ」よりも一回り大きく、ボーイング「737」やエアバス「A320」と同規模の旅客機である。

 このサイズの旅客機は年間1000機以上生産され、旅客機の中では最も売れ筋である。

 ロシアの旅客機と聞くと、遅れていると想像されるかもしれないが、MC-21は新製法の複合材主翼を持ち、ライバル機よりも先進的である。

 また、胴体が広く快適であることや価格の安さを売り物にしている。

 新製法の複合材主翼は、業界では国際的に評価された。ロシアの航空産業が可能な限りの新技術を盛り込み、最も売れる市場で勝負をする機体である。

 ロシアの航空産業復活を懸けた旅客機として、期待されていた。

 MC-21は2017年に初飛行を行い、型式証明取得に向けた試験飛行を行っているところであった。

 ところが、2018年9月26日に米商務省の制裁リストに追加された12社に、MC-21の製造に参加する企業が3社含まれていた。

 3社とは、アエロコンポジット社、テフノロギヤ社、アヴィアドヴィガーチェリ社である。

 アエロコンポジット社は主翼、テフノロギヤ社は尾翼、アヴィアドヴィガーチェリ社はエンジンを製造する。

アエロコンポジット社製主翼の外板 炭素繊維複合材で作られているため黒い。米国旧サイテック社の材料を使用(出所:イルクート社)
テフノロギヤ社製尾翼の外板 米国ヘクセル社の材料を使用(出所:テフノロギヤ社)
 この3社に対しては、米国からの輸出許可が出なくなった。突然、米国製品を調達できなくなったのだ。

 このうち、アヴィアドヴィガーチェリ社は影響が少ないと推察される。しかし、米国製の材料を使って炭素繊維複合材の主翼や尾翼を製造するアエロコンポジット社とテフノロギヤ社にとっては致命的である。

 ちなみにアエロコンポジット社は、米国の旧サイテック製のTX1100という炭素繊維のテープとEP2400というエポキシ樹脂を使用する。

(サイテックはベルギーのソルベイ社に買収されているが、これらの材料は米国の旧サイテック社の工場で生産)

 テフノロギヤ社は米国ヘクセル社のプリプレグを使用する。

 なお、炭素繊維を供給するメーカーとして、一部の報道で日本の東レの名が挙がった。航空機の主力となる材料以外で、米国メーカーが東レ製品を原材料にしていることはあり得えるかもしれない。

旧サイテック社製TX1100 炭素繊維をテープ状に加工したもの。制裁によるこの材料の入手不能がMC-21を製造停止に追い込んだ(出所:アエロコンポジット社)
 しかし、東レが主要材料を直接納入していることはない。ロシアのメディアの誤解であろう。

 これまで使っていた米国製素材が全く入手できなくなり、MC-21の主翼や尾翼は生産できない状況になった。

 すでに試験機が完成しているので、試験飛行は継続できなくはない。しかし、このまま開発をやり遂げ型式証明を取得しても、同じ設計で量産ができないため試験飛行や開発を進めても意味のない状況である。

結局開発やり直しか
 2019年1月に入り、入手できなくなった米国製の材料をロシア製の材料で置き換え、開発・生産を継続するというロシアの航空産業幹部の発言が報道されている。

 しかし、これは極めて困難である。

 炭素繊維複合材は、炭素繊維をエポキシ樹脂で固めて作る。炭素繊維とエポキシ樹脂の相性が合わないと製品にならない。

 炭素繊維、エポキシ樹脂、製造条件、設備のすり合わせが必要で、どこかを代えるとその炭素繊維複合材製部品の開発はほぼやり直しになる。この時点で、年単位の開発が追加で要求されることになる。

 日本であれば開発のやり直しで、元々の主翼や尾翼と同等なものを作れるかもしれない。しかし、ロシアではそれではすまない。

 ロシアの報道では可能とされているようだが、現実的にはロシア製では、同等の材料を揃えることは不可能だ。

 主翼や尾翼の1次構造部材を作るのに必要な炭素繊維の引っ張り強度は5.5GPa(1ギガは10億、パスカルは圧力の単位)程度。ロシアではこの強度の炭素繊維を安定して量産した実績がない。

 また、主翼は「VaRTM法」という最新の方法を使用している。VaRTM法に用いる炭素繊維のテープは日本企業でも手を焼くものだと言う。

 ロシアの技術力は、平均点は低いが稀に局所的に世界の業界関係者を驚かせる高度な開発をすることがある。世界最先端のVaRTM法を使用して、MC-21の炭素繊維複合材製主翼を製造したことがまさにそうであった。

 しかし、ロシアで米国製材料と同じものを作ることは、東レが何十年もかかったようなことを数年でやり遂げることが必要となる。

 VaRTM法で主翼を作ることよりも、VaRTM法で使用する材料を作ることの方がはるかに難しい。さすがのロシアでもできないだろう。

 材料をロシア製のもので置き換えなければならないのであれば、現在のMC-21と同等の旅客機を作り上げることはすでに絶望的と言ってよい。

 そうなると、主翼も尾翼もロシア製の強度の低い炭素繊維で従来のプリプレグ積層・オートクレーブ硬化法で生産することになる。

 ロシアの炭素繊維は、パフォーマンスが低いだけでなくコストも高いので、性能低下・コストアップが生じる。

 または、炭素繊維複合材をあきらめてアルミ合金で作る手もある。こちらの方が現実的ではないかと思われる。

 しかし、いずれにしても、MC-21は大幅な開発のやり直しを強いられることになる。1年や2年でやり直せるものではない。

 改造後のMC-21がどのような名前を名乗ったにせよ、すでにそれはMC-21ではなく新しい機種である。そして、残念ながらパフォーマンスの低下が予想される。

 さらに、これまでの設備投資のうち、特にVaRTM法を前提とした部分は完全にムダになる。追加の設備投資と開発費がかさみ、時間だけでなく、コスト的な優位性も失われる。

 制裁は、MC-21の開発を潰し、多くの技術的・コスト的不利の下で、新機種の開発を一から始めるのに近い状況に追い込んだのである。

ロシアからの反撃はあるか
 2014年の制裁発動以降、世界の航空業界ではロシアの反撃に一抹の不安を感じている。ボーイングもエアバスもロシアのチタンに依存しているからだ。

 特にボーイング787は主翼と胴体の繋ぎ目にロシアのチタンを多用している。このような重要な部分で、材料のメーカーを簡単に変えられないのはボーイングも同じである。

 もっとも、ロシアが製造するようなチタン材の製造は、米国とフランスで可能である。また、日本でも日本アエロフォージ社が育ちつつある。技術的には代替は可能である。

 しかし、ロシア製チタンの代替作業を強いられれば、短くても何か月間のレベルで、ボーイング787やロシアのチタンを使用している機種の生産に大きな影響が出るだろう。

 MC-21を潰されたことにロシアが本気で怒り、チタンの供給を止めれば米国の航空産業に打撃を与えることができる。

 これまで、民間機の分野では、ロシアは米国から複合材の素材や機械類を調達し、米国はロシアのチタンを使うという良い協力関係があった。

 しかし、旅客機であるMC-21が潰されるような制裁が発動されたことで、こうした協力関係は困難になった。民間のビジネスでもいつどこでどのような制裁が始まるか分からないからだ。

 米国商務省が発表した制裁の理由は、上記の3社が軍事的なロシアの航空宇宙プロジェクトに関わっているからだとしている。

 しかし、MC-21は旅客機である。テフノロギヤ社とアヴィアドヴィガーチェリ社は軍用機の仕事もするが、民間機関連の部分だけ独立させることは可能であろう。

 アエロコンポジット社は100%民需の会社であり、そもそもVaRTM法の技術は軍用機に適さない。

 にもかかわらず、ロシアの航空関係者が苦労して開発してきたMC-21が、政治に巻き込まれて潰されてしまうのは、あまりに気の毒である。ものづくりに関わったことがある人であれば、皆そう感じるのではないか。

 こうした制裁では米国の産業界も売り上げが減るし、仮にロシアが反撃してくれば、ボーイングも無傷ではすまない。

 ロシア製材料を代替できても時間がかかり、コストもアップする。さらに、そんなことになれば、そのとばっちりはボーイング向けの仕事をしている日本メーカーにも及ぶ。

 刻々とソフトランディングが難しい雰囲気になりつつあるが、できれば元の場所に収まってほしいと願っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55221  

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