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トランプの“報復”が始まった「ロシアとの共謀なし」とモラー報告 トランプ勝利宣言が意味するもの ロシア疑惑5つのポイント
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投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 26 日 20:57:49: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

トランプの“報復”が始まった「ロシアとの共謀なし」とモラー報告書

2019/03/25

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 バー米司法長官は24日、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査報告書の概要を議会に送り、ロシアとトランプ陣営との共謀を認定できなかったこと、トランプ大統領の司法妨害の十分な証拠がなかったことを明らかにした。大統領は「完全かつ全面的な潔白」と勝利宣言。今後報告書の全面開示を要求する民主党との攻防が激化する一方、大統領の反撃が始まった。


トランプ大統領から出された声明(AP/AFLO)
大統領専用機のコックピットに陣取る
 バー長官が議会に送った4ページの報告書概要によると、大統領選に勝利するためロシアと共謀したという「ロシアゲート」について、トランプ氏や側近らがロシア側と「合意」した証拠はなかったと結論付けた。この点に関し報告書は「ロシア関係者からトランプ氏の選挙を支援しようという複数の申し出があった」ことを指摘している。

 バー長官は概要の中で、「共謀」という言葉を使用せず、「合意」という表現を使った。トランプ大統領に配慮を見せたのではと受け取られている。また、ロシア疑惑よりも、立件の可能性が高いとされた大統領の司法妨害疑惑について、報告書は「大統領が罪を犯したと結論付けないが、潔白が証明されたわけではない」と“黒白の判断”を避けた。

 長官はこの点に関し、ローゼンスタイン副長官と協議した結果、「モラー特別検察官は大統領の犯罪を証明するのに十分な証拠を見つけることができなかった」と判断したことを明らかにした。司法妨害疑惑は大統領が当時のコミー連邦捜査局(FBI)長官に、フリン大統領補佐官(当時)に対するロシア疑惑の捜査をやめるよう要求したというものだった。

 米メディアによると、トランプ大統領は概要の内容を休養先のフロリダ州マール・ア・ラーゴの別荘で同行していた2人の弁護士から聞いた。この日も朝からゴルフを楽しんだ大統領は説明に「完全かつ全面的な潔白」と手放しで喜んだ。ワシントンへの帰任の直前、大統領は「こうした捜査が行われねばならなかったのは米国と、大統領にとって恥辱だ」と語った。

 大統領の支持者らはホワイトハウスを2年間覆ってきた暗雲が取り除かれたとお祝いムード。サンダース報道官は「捜査はいかなる共謀も、いかなる司法妨害も見つけることができなかった」と語った。だが、司法妨害の「潔白が証明されたわけではない」という指摘は無視した。

 トランプ大統領は「最高の気分」(副報道官)のようで、ニューヨーク・タイムズによると、エアフォース・ワン(大統領専用機)がフロリダからワシントンに着陸した時、コックピットに陣取っていたという。ホワイトハウスに戻った際も「米国は地球上で最高の場所だ」と短くコメント、気持ちを吐露した。

捜査は税金の無駄遣い
 大統領は28日にミシガン州グランド・ラピッズで「米国を再び偉大に」集会に登場し、ロシアゲートの“無罪放免”を受けて勝利宣言し、20年の再選に向けて大きく踏み出す考えだ。その一方で、自分を苦しめてきた敵対勢力への報復にも乗り出す構え。

 大統領はワシントン帰任前の発言で「捜査で多くの人間がひどく傷ついた」「誰かが相手側も調べてほしい」「相手側では多くのひどいことが起きた」などと攻撃のトーンを高めた。大統領はこの“相手側”が誰かについては言及していないが、司法省やFBI、“影の政府”と批判するヒラリー・クリントン氏らを差しているものと見られる。

 ワシントン・ポストによると、大統領の当面の攻撃の標的は具体的には、モラー特別検察官チーム、事情聴取などで大統領に不都合な情報を漏らした元当局者や元側近、大統領の疑惑を暴き立ててきたメディアの3つだ。特に、かねてより税金の無駄遣いと批判してきた特別検察官の捜査費用を取り上げていくのは間違いないだろう。

 共和党全国委員会は捜査費用について、1日5万230ドルを675日間も浪費したと具体的に発表した。またトランプ再選本部は「共謀でっち上げ」と名付けたビデオを公表するなど、報告書の結果が新鮮なうちに政治的に利用しようと迅速に動いている。ちなみに、モラー・チームは弁護士19人、FBIの捜査官40人などから構成されていた。

 こうしたトランプ大統領らの攻勢に対し、野党民主党は戦略の練り直しに迫られている。ペロシ下院議長と上院のシューマー院内総務は報告書の全面開示を要求するとともに、「バー長官が捜査に公然と反対した過去を考えると、中立的な立場から報告書の内容を判断できない」と批判した。

 バー長官は報告書の内容の一部に大陪審の証言や証拠などが含まれていることを指摘。こうした証言などは法律で公表することが禁じられていると警告しており、全面開示については否定的だ。このため、下院司法委員会のナドラー委員長はバー長官を早速証人喚問する考えだ。

 だが、最近の世論調査では特別検察官の捜査が政治的な意図に基づいて行われていると考える国民が50%に達しており、「共謀なし」という今回の結果は民主党にとっては強い逆風だ。ホワイトハウスと民主党との対立は法廷闘争を含め、一気に先鋭化する雲行きだ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15744


 

トランプの勝利宣言が意味するものとは?

2019/03/26

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは、「トランプの勝利宣言と民主党の対策」です。ウィリアム・バー米司法長官は3月24日、ロシア疑惑に関してトランプ陣営とロシア政府の共謀は認定できなかったと米議会に報告しました。ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書は、司法妨害を巡っては判断を示しませんでした。

 本稿では、ドナルド・トランプ米大統領に対するロシア疑惑の捜査結果の意味及び議会民主党の対策について述べます。


24日、ニューヨークのタイムズスクエアに集まったトランプ支持者たち( REUTERS/AFLO)
論争を呼ぶバー長官の結論
 バー司法長官は上下両院の司法委員会委員長並びにランキング・メンバー(最古参議員)に提出した4ページの書簡で、2016年米大統領選挙においてトランプ陣営のスタッフが選挙に影響を与えるために、ロシアの陰謀に加わった証拠は確認できなかったと結論づけました。

 書簡によれば、ロシアの「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」という企業は、偽情報をネット上に拡散して米国社会に不和の種をまき、大統領選挙に影響を及ぼそうとしました。しかし、トランプ陣営とIRAの共謀を裏づける証拠は確認できなかったと明記しています。

 加えて、ロシアのハッカー集団がクリントン陣営と民主党本部の電子メールを窃盗し、内部告発サイト「ウィキリークス」に公開した件に関しても、トランプ陣営とロシア政府が共謀した事実は見つからなかったと記しています。

 一方、トランプ大統領の司法妨害に関しては結論に至りませんでした。モラー特別検察官のチーム内で、司法妨害の対処を巡ってもめたことを窺わせます。

 モラー特別検察官は、報告書の中で司法妨害に関して「トランプ大統領は犯罪を犯したと結論づけていないが、このことが大統領の容疑を晴らすものでもない」と指摘しています。つまり、無罪とは断定していないわけです。

 にもかかわらず、バー司法長官は「私とロッド・ローゼンスタイン司法副長官は、(トランプ大統領が)司法妨害の犯罪を犯したと立証するには不十分だと結論づけた」と米議会に対して説明しました。

 モラー特別検察官が司法妨害について判断を示さなかった理由に関して、米国の専門家の間で見解が分かれています。

 1つはモラー特別検察官は司法妨害に関して、司法妨害に相当する場合としない場合の双方の見方を示し、司法長官と司法副長官に判断を委ねたという考え方です。もう1つは、米議会に判断を任せたという見解です。後者を支持する専門家は、バー長官とローゼンスタイン副長官の判断は、「単なる意見に過ぎない」と批判しています。

 議会民主党は、司法妨害についてモラー特別検察官が示した双方の見方を記述した箇所を精査することを強く望んでいます。今後、バー長官とローゼンスタイン副長官の司法妨害に関する解釈の仕方が、争点となることは間違いありません。

 さて、モラー特別検察官はトランプ大統領の弁護士チームの抵抗に遭い、同大統領を対象にヒアリング調査を実施できませんでした。

 弁護士チームはヒアリングに応じた場合、トランプ大統領が「偽証罪」の罠に嵌ることを恐れたからです。その結果、トランプ大統領はモラー特別検察官の質問に対して、書面回答で応じ、逃げ切ることができました。ここが分岐点でした。

 司法妨害罪に相当すると判断するには、同大統領に対するヒアリングは不可欠だからです。モラー特別検察官が司法妨害に関して結論に至らなかった要因として、この点は看過できません。

トランプの「政争の具」
 トランプ大統領は、「共謀はなく司法妨害もなかった。完全かつ潔白が証明された」と自身のツイッターに投稿し、「勝利宣言」を行いました。トランプ大統領を応援する保守系のFOXニュースの司会者ショーン・ハニティー氏は、番組の中で「共謀も司法妨害もなかった。何もなかった。魔女狩りは終わった」と語り、トランプ大統領よりも早く勝利宣言をしています。

 さらに、トランプ大統領は記者団に対して「大統領がこのような捜査を受けなければならないのは国家の恥だ」と語気を強めました。自分はロシア疑惑の捜査で22カ月間も、不当に扱われてきたといいたのでしょう。

 20年米大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、モラー報告書を最大限活かして、議会民主党を攻撃し、支持者に対して「モラーの捜査は魔女狩りで、ロシア疑惑はでっち上げだったことが証明された」と、強くアピールするでしょう。今後、民主党からの批判を封じ込めるための「攻撃材料」として報告書を活用する可能性は極めて高いといえます。

 つまり、モラー報告書は「政争の具」と化する運命にあるのです。

議会民主党の対策
 では議会民主党は、バー司法長官のモラー報告書の概要を記した書簡に対して、どのような対策を講じるのでしょうか。

 民主党のキーパーソンは、下院司法委員会のジェロッド・ナドラー委員長です。ナドラー委員長には「召喚状」という切り札があります。

 司法妨害に関して「証拠不十分」と判断したバー司法長官に「召喚状」を送り、宣誓の上で議会証言をさせるでしょう。そのうえで、モラー特別検察官にも召喚状を出し、双方の矛盾を突きます。

 仮にバー司法長官とモラー特別検察官の議会公聴会が実現すれば、公聴会は「政治ショー」となり、来年の大統領選挙に向けて、民主党が政治的得点を稼ぐ舞台に変わることが予想されます。特に、民主党左派の議員は公聴会において、トランプ大統領に対する弾劾を進めるための「判断材料」を探すでしょう。

 民主党はモラー報告書の全面公開を求めています。今回のロシア疑惑に関する捜査には、2500万ドル(約25億5000万円)の費用がかかりました。米国民の税金です。従って同党は、「米国民には全面的な捜査報告書の内容を知る権利がある」と主張しています。

 そこで、ナンシー・ペロシ下院議長は「バー長官による米議会に対する非公開の捜査結果の報告を拒否する」と声明を出しました。20年米大統領選挙を視野に入れて、ペロシ議長には全面的公開を望む世論を民主党の見方につける意図があるとみて間違いありません。

 結局、トランプ大統領と同様、議会民主党もモラー報告書を政争の具にします。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15744

 
2019年3月26日 The Wall Street Journal
ロシア疑惑報告書の概要、5つのポイント
モラー特別検察官
Photo:Reuters
 米トランプ政権のロシア疑惑に関するロバート・モラー特別検察官の捜査報告書の4ページにわたる概要が24日

議会に提出された。概要は、2016年の大統領選挙へのロシアの介入、選挙期間中のトランプ陣営の関与、大統領

による司法妨害の有無について結論を示している。ただし報告書そのものは依然秘密扱いだ。

 捜査報告書の概要を示したウィリアム・バー司法長官の書簡のポイントは以下の通り。

特別検察官の捜査は徹底的に行われた
 ロシア疑惑については、二つの議会特別委員会と複数の米情報機関も調査を実施してきた。ただモラー氏の報告

書は2800件の召喚状、500件近い捜索令状、証人約500人への聴取で集められた資料に基づいており、この問題に

関してこれまでで最も徹底的に調べた内容となった。

ロシアは2016年大統領選に介入した
 米情報機関は2017年1月、ロシアが米国内で対立の種をまき2016年の大統領選に影響を及ぼす目的で、ハッキ

ングしたり偽情報を流したりするキャンペーンを展開したとの結論を出した。モラー特別検察官はこの結論を追認

し、ロシア政府による二つの活動を特定した。一つは「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」と

して知られる組織によって行われたソーシャルメディアを利用した偽情報活動、もう一つはロシアの情報機関によ

る民主党を標的にしたハッキング活動だ。

トランプ氏の共謀は判明せず
 モラー氏の捜査では、トランプ大統領や関係者が、2016年大統領選に影響を及ぼそうとするロシアの陰謀に加

担したことを示す証拠は見つからなかった。司法長官が公表した概要によれば、モラー氏は、ロシアと連携してい

れば犯罪となるが、「トランプ陣営あるいはそれに関係する人物が2016年の米大統領選に影響を及ぼそうとする

ロシアと共謀あるいは協力した事実は判明しなかった」と述べた。

司法妨害については判断せず
 トランプ氏とジェームズ・コミー前連邦捜査局(FBI)長官、ジェフ・セッションズ前司法長官やその他の人々

とのやりとりが司法妨害とみなされるかについて、モラー氏は結論を出さなかった。捜査報告書は「この報告書は

大統領が罪を犯したと結論づけるものではないが、潔白を証明するものでもない」とした。これを受けてバー氏は

ロッド・ローゼンスタイン司法副長官と相談し、自ら判断を下した。トランプ氏の行動は同省の訴追の基準に達し

なかったという判断だった。

報告書全体をそのまま公表することはできない
 モラー氏は捜査の一環として大陪審を用いたが、これが報告書の完全な公開を難しくするだろう。バー氏は議会

に対し、裁判手続きにより「特定の大陪審情報の公開は一般に制限される」と述べた。1990年代に当時のクリン

トン大統領を捜査したケン・スター氏のような特別検察官は、大陪審を用いたものの、最終的に報告書を公表した

。バー氏は今後の進め方を決めるため、報告書内の大陪審情報を特定するうえで特別検察官の支援を求めている。

一方で、報告書の情報で継続中の捜査に関わるものは全て保護しなくてはならないと述べた。「特別検察官の報告

書のうち、私に可能な限り多くの情報を公表する」ことを目指すと述べたが、自身の精査が終わる時期については

明言しなかった。

(The Wall Street Journal/Byron Tau)
https://diamond.jp/articles/-/197872  

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