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シンガポールの人間扱いされない「外国人メイド」 冤罪、暴行、タダ働きの深い闇
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1091.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 10 月 08 日 13:01:50: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 東南アジアでみんなに嫌われているベトナム人の民族性とは 投稿者 中川隆 日時 2020 年 3 月 11 日 18:46:49)

シンガポールの人間扱いされない「外国人メイド」 冤罪、暴行、タダ働きの深い闇
2020年10月8日掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/10080601/?all=1&page=1


雇用主の子供を世話する外国人メイド(著者撮影)(他の写真を見る)



 東南アジアの優等生として知られるシンガポールで、今、ある判決が波紋を呼んでいる。経済界の大物として知られる人物が、雇用していた外国人家事労働者(以下メイド)を窃盗の容疑で訴えていた裁判で、メイドに逆転無罪の判決が下されたのだ。事件からは、シンガポール社会が抱える闇も浮き彫りになってくる。東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏がレポートする。

 ***

 インドネシアからシンガポールに出稼ぎに来ていたメイドのパルティ・リヤニさん(46)が、約270万円相当の財産を盗んだとして逮捕されたのは、2016年末のことだった。

 パルティさんから“被害”を受けたと訴えたのは、リュー・ムンリョン氏(74)の一家だ。リュー氏は、チャンギ国際空港を始め、中国、イタリア等で国際空港を運営する政府系大企業「チャンギ・エアポート・グループ」会長ほか、その親会社でシンガポール政府が100%出資し、リー・シェンロン首相夫人が最高顧問を務める投資会社「テマセク」上級顧問、さらには政府系都市計画コンサルト会社「スルバナ・ジュロン」の会長や「テマセク財団」の理事も兼任するという、シンガポール政府機関の重鎮である。

 9月4日に下された高裁判決を受け、リュー氏は10日にこれらの要職を辞任した。事件には司法の公平性を揺るがしかねない“疑惑”があり、10月5日から始まった国会で、野党が政府を追及することは必至と、国政を揺るがす事態となっているのだが……裁判の過程で明らかになったことのあらましはこうだ。

契約違反を訴えたら…
 パルティさんは2007年からリュー氏の自宅でメイドとして働いていた。解雇時点での給与は月給600シンガポールドル(約4万6500円)だった。“億万長者の家で働く貧しき外国人労働者”だったようだ。

 発端は16年3月、リュー氏の息子が、親元を離れ実家近所に引っ越したことだった。リュー氏の妻は、自宅と共に息子の家、さらに彼の事務所の清掃をパルティさんに命じた。が、シンガポールでは「外国人メイドは登録された住所でしか就労できない(当然、パートタイムや副業も禁じられている)」と定められている。にもかかわらず、リュー一家は幾度もパルティさんを息子宅で働かせた。そのため彼女は契約違反だと一家に訴えていたという。すると16年10月28日、パルティさんは突如として解雇されてしまうのだ。

 クビを言い渡されてから「2時間で荷物をまとめて出ていくよう」指示されたパルティさん。しかし、彼女もタダでは引き下がらず、管轄の人材開発省にこの件を訴えるとリュー一家に告げた。そして持ち物をまとめた段ボールを、母国であるインドネシアに、一家の負担で送るよう依頼したという。そしてパルティさんはインドネシアに帰っていった。

 ところが、翌日、リュー一家がパルティさんの荷物を開けたところ、その中に家族の所有物があるのを“発見”。盗品とされたのは、プラダやグッチなどの高級ブランドのバッグやサングラスなどに、ジェラルド・ジェンダの高級腕時計、iPhone4、パイオニアのDVDプレーヤー、高級ベッドシート、英国製のピンクナイフ、女性用高級服飾品など、115品目の計3万4000シンガポールドル(約270万円相当)相当だった。これを受けてリュー一家は、10月30日、警察に盗難届を提出した。

 パルティさんは、自分が窃盗の容疑者になっているとは知るべくもない。12月2日、新たな仕事を探すべく、インドネシアからシンガポールに再入国したところを空港内で逮捕されてしまう。以降、実に4年間、母国に帰ること叶わず、法廷闘争の日々を送ることになる。2019年3月に地裁で開かれた第一審では、2年2カ月の禁固刑が下された。これに控訴し、今年9月の高裁でようやく無罪を勝ち取ったのだ。

 これには「プロボノ」と呼ばれる、無料で弁護を引き受けた弁護士がいたからこそ勝ち得た勝利だった。弁護士費用は実に15万シンガポールドル(約1200万円)に上ったともされているから、パルティさんに払える額ではなかった。


過酷な労働の合間の貴重な休日。同胞の友人らと過ごすのは故郷、家族と離れている彼女らの生き甲斐になっている(オーチャードにて、著者撮影)(他の写真を見る)



検察が不正?
“盗んだ”とされた品々について、パルティさんはいずれも自らの私物、またはリュー一家が捨てた品やプレゼントだと主張していた。実際、裁判の過程で、高級時計のベルトが切れていたり、DVDプレーヤーが故障し、殆ど使用不可能の状態にあることが明らかになっている。普通、わざわざこんなものは盗まないだろう。

 にもかかわらず、当初、検察は壊れたDVDプレーヤーを「使用可能」と判断し証拠に採用していた。さらにこうした“盗品”を調べたのは、リュー一家が被害を訴え出てから5週間も経ってからだったりと、杜撰な対応を行っていた。無罪を下した高裁の裁判官は、検察が第一審で証拠品が“不良品”でなく使用可能だと虚偽の立証をしていた疑惑を指摘している。

 この事件の根が深いのは、検察トップであるルシエン・ウォン検事総長が、リュー氏と近しい間柄であることだ。リュー氏がアジア太平洋地域最大級の不動産開発会社で日本でも事業展開する「キャピタランド」の社長を務めていた時期、ウォン総長は同社の取締役だった。パルティさんに無罪判決が下されたその日、検察は「ウォン総長とリュー氏は個人的に親しい関係にない」と、弁明ともとれる発表を行っている。

 晴れて無罪となったパルティさんは「4年間、母国・インドネシアにも帰れず、自分に強く、権力にひるむことなく闘ってきた甲斐があった」「リュー一家を恨んではいない。むしろ、許したいと思っている。ただ、2度と、私が経験したようなことが誰にも降りかからないことを願うばかりだ」とコメントしている。彼女は現在、捜査に関わった2人の検察官の懲戒処分を求める訴えを起こし、リュー一家には16年の解雇から今年9月の無罪判決までの期間に相当する給与の支払いを求めている。

 国の重鎮に、警察や検察は忖度したのか――シンガポールの司法システムの公平性そのものが問われかねないこの事件に、「パルティさんの事件は、格差社会のシンガポールでは誰にでも起こりえる恐ろしいできごと」と国民からは激しい怒りの声が上がっている。先述の通り、リュー会長は無罪判決から1週間後の9月10日、すべての要職を辞任することを明らかにした。ただし、

「私と家族は警察に全面的に協力し、必要に応じ証拠提出や証言を行った」

 と、不正行為については否定している。弁護士で外相も歴任したシンガポールのシャンムゲム法務・内務大臣は「判決を真摯に受け止め、関係当局は再調査を行う」としており、11月中に政府見解としての発表が行われる見通しだ。

メイド残酷事例集
 パルティさんの事件は、シンガポールにおけるメイドが置かれた不条理な状況を浮き彫りにしているともいえる。

 人口570万人のシンガポールは、外国人労働者の積極的な受け入れで急成長を果たしてきた。メイドは、外国人労働者の20%以上を占め、その数は25万人にも及ぶ。中間層から超富裕層まで、5世帯に1世帯が、月給相場400〜600シンガポールドル(約3〜5万円)でメイドを雇っている。彼女たちは家事や育児、介護要員として求められ、インドネシアを筆頭に、フィリピン、ミャンマー、タイ、スリランカ、中国、インドといった国々から、シンガポールにやってくるのだ。

 だが、メイドが被害者となる問題は噴出している。オーストラリアの民間コンサル会社「リサーチ・アクロス・ボーダーズ」の調査報告(2017年11月)は、シンガポールの外国人メイドの約60%が雇用主から搾取されているという実態を報告している。

 2017年3月には、40代のフィリピン人のメイドに十分な食事を与えなかった夫婦が収監された。高級住宅街オーチャード・ロードのマンションに住み込みで働いていた彼女は、少量のインスタントラーメンとパン数切れといったと食事を1日2食しか許されなかった。そんな生活を1年3カ月強いられた結果、49キロあった体重は29キロにまで減ったという。

 昨年3月には、30代のミャンマー人のメイドを虐待したとして、夫婦に実刑判決が下されたケースもあった。裁判資料によると、メイドは夫婦から殴る蹴るの暴行を受けており、下着姿で家の掃除も強要されていた。食事もほとんど与えられず、トイレの使用も制限。「虐待を通報したらミャンマーの両親を殺す」と脅されてもいたという。食事を要求すると、砂糖と米を混ぜた物をじょうごで無理やり流し込まされた。吐くためにトイレに駆け込むと、夫人から平手打ちを受け、さらに自分の吐しゃ物を食べるよう強要されたという。

 今年になってからも、ミャンマー人のメイドの顔などをガラスのビンで殴ったシンガポール人女性が、14カ月の収監を言い渡された事件があった。マグカップをメイドに投げつけて鼻に障害を与え、再教育矯正訓練を言い渡された20代のシンガポール男性もいる。

 NPO団体「Home」は、そうした不当な扱いを受けたメイドを保護する活動を行っており、2018年には約900人のメイドを保護したという。保護されたうちの一人であるインドネシア人メイドは、10年間も無賃金無休で働かされたという。「Home」の関係者は次のように語る。

「個人の家庭という極めて密室化された場所で起こる問題は、外から確かめることが難しい。また、メイドのほとんどが、母国に残してきた家族の稼ぎ頭であることが多い。だから告発をためらう場合も少なくなく、効果的な防止策をとることが簡単ではないのです」

 あくまで“臨時の労働力”と位置付けられているメイドに対する、制度上の問題もある。例えば、勤務時間。「家事労働の時間や日数を規制するのは実用的でない」と、労働時間は定められていないのが実態だ。さらにシンガポールは先進国の中でも異例なことに、最低賃金が制定されていない。シンガポール人ら労働者の賃金低下につながっている、と7月の総選挙でも争点となり、最低賃金制度の制定を政府に求めた野党が大躍進した。(記事『シンガポール「リー首相」が総選挙中に兄弟ゲンカ 弟が野党入党、兄の独裁を大批判』参照)

「パルティさんはいきなりクビを宣告されたが、“解雇の事前通知”を定めた法律も、メイドは対象外になっている。シンガポール人および外国人永住者と結婚するには政府の許可が不可欠であり、彼ら配偶者以外との間で子どもをつくれば、帰国させられることになる

「賃金の外国人労働者を厳格に管理することで、シンガポールでの定住化や社会保障費の増大を防ぐ意図があるのです。そこに人権保護の意識は抜け落ちています」(先述のNPO「Home」の関係者)

 シンガポールはメイドなしには成り立たない国である。しかし、彼女たちの置かれた状況は、雇い主である“一般国民”と比べて極めて過酷だ。イタリアのジョン・カボット大学やシンガポール経営大学で准教授を歴任し、現在は台湾大学上級研究員などを務める東南アジア情勢の専門家、ブリジット・ウェルシュ博士は次のように筆者の取材に答えた。

「シンガポールは、今、分断された社会になった。格差問題には政府の対応が迫られており、国を大きく揺るがす深刻な事態だ」  

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