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マルクスの貨幣論
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1119.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 10 月 18 日 18:34:00: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 信用貨幣論に基づく信用創造 投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 29 日 10:48:14)

マルクスの貨幣論


経済原論概説 第2回 貨幣論
ト・アペイロン 2020/03/30
https://note.com/scienta_est/n/n452b753965e8

物々交換から貨幣へ

 マルクス経済学における労働価値説を巡って、「価値」というものを考える。なぜ貨幣に価値を見いだすのか、資本とはいかなるものか、経済の主体が商品→貨幣→資本へと"発展"していったプロセスを辿りながらマルクスの思想になぞらえて解説する。


 物々交換では、商品と商品を直接交換するため、例えばある商品a100gを別の商品bと交換するときは、aを100g生産するために必要な労働量で生産できる量のbと交換することになる。ここで仮にaを100g生産する労働力で、bを200g生産できるとするならば、a100gはb200gと交換されることになる。商品が二つだけならば問題は無いが、無数の商品をこの方法で交換する場合、無数の交換比率が存在する。(n個の商品にはn(n-1)/2個の交換レートが存在する。)そこで、取引を容易にするために商品貨幣として一般的等価物が使われるようになった。実例としては米や家畜、塩などがこれにあたり、これを基準としてその他の商品を交換するようになった。般的等価物の条件として、耐久性、保存性、等質性、希少性があり、分割や結合、移動に便利であることが挙げられるが、これを満たしているのは貴金属である。貴金属の中でもイオン化傾向が最も低く、王水以外には溶けず、展性、延性に優れる金が貨幣という形で役割を果たすようになった。 

貨幣には三つの役割がある。@商品の価値を図る価値尺度としての機能、A交換機能、B腐敗や劣化がないことで可能となった価値保存の機能である。また、貨幣の登場により、生産と消費が統一されるようになった。

 ここで貨幣(金貨)をG、商品をWとする。

a) G → W¹
b) W¹ →  G → W²
      c)W² → G


aはW¹をGで買ったことを意味する。bはW¹をGで売り、そのGを用いてW²を購入したことを意味する。cはW²をGで売ったことを意味する。

画像1
https://note.com/scienta_est/n/n452b753965e8


そうすると、黒い線の左側を生産面、オレンジ色の線の右側を消費面であるということになる。中心のG、貨幣に着目すれば、2回の取引に必要となったGは、取引一回分のGのみである。これを流通必要貨幣量と呼ぶ。具体的な数値を当てはめると、Gが10ポンドならば、この10ポンドで20ポンド分の取引が行われたことになる。つまり、流通必要貨幣量は10ポンドである。

 ここで、価格をP、商品の量をq、流通速度(回数)をF、必要貨幣量をMとすると、P×q/F=Mということになる。必要な貨幣量(右辺)は、流通するものの価格と量(P×q)が増えれば増加するが、貨幣が還流する速度(別の人の手に渡る速度,F)が早ければ減少するという意味である。

 マクロ経済学では、価格をP、取引量をT、貨幣残高をM、回数(速度)をVとして、P×V/T=M、整理してMV=TPとなる。これはフィッシャーの交換方程式と呼ばれる。これを基に、物価を上昇させるには通貨量を増やせばよいといったような貨幣数量説も唱えられた。
 他にも、貨幣量と国民所得の関係を唱えたマーシャルのケンブリッジ現金残高方程式や、貨幣量は物価水準に影響するだけで所得水準には影響を与えないという貨幣ヴェール観という考え方もあるが、本旨からそれるためここでは名前だけの紹介に留める。

 さて、金が貨幣として扱われるようになると、流通によって金が減少していくという問題が発生し、貨幣の持つ価値と減少を考慮した実際の価値との分離が起こるようになった。例えば、金10g分の貨幣が実際は摩耗して8gしか無い、といった具合である。そこで金の代替物として、金80%、鋼20%で造られた鋳造貨幣が使われるようになった。これがさらに発展して、無価値な紙幣を国家紙幣として流通させるに至った。国家紙幣として、金との交換が保証された金券を流通させることで、金本位制を樹立したのである。金本位制の下では、紙幣の発行量は金の保有量内に制限されていた。金の保有量を超えて紙幣を発行した場合、紙幣は信用を失い、インフレーション(物価高、紙幣価値の下落)が発生してしまう。

 貨幣取引、商品交換の発展により、信用取引も発展した。その一例として、取引で建て替えを為すという意味の為替制度が誕生した。ある商品の代金を支払うときに、その金額分の送金依頼を記した銀行券を渡すことで、遠隔地で商売をする負担が軽減された。期日に支払うことを約束する約束手形や、銀行へ持参することで当座預金から金額が支払われる小切手も、信用通貨の一種である。また日本銀行券も信用通貨の一種である。紙幣とは、政府が発行したものを指す言葉である。

https://note.com/scienta_est/n/n452b753965e8  

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コメント
1. 中川隆[-10786] koaQ7Jey 2020年10月18日 19:10:22 : WKyPV5eFRY : WDdzVVpPcGZjT1U=[20] 報告
経済原論概説 第3回 貨幣から資本への転化
ト・アペイロン 2020/04/01
https://note.com/scienta_est/n/n747c2214cbd3?magazine_key=m75824ff6e6c2


貨幣によってもたらされる商品交換のプロセスは

W - G - W - G - W - G -…

となり、商品Wを売って貨幣Gと交換し、その貨幣で新たな商品を購入することが可能となった。このような形式が発展すると、

G-W-G* G*=G+ΔG  (Δは増加を表す)

例えば、G=100円、W=100円、ΔG=20円とすると、上記式は100円で仕入れたWを120円で販売していることになる。つまり、購入時よりも高値で売ることで利潤が生まれているということである。この時Gは元手=資本として機能することになるのである。

 しかし、全ての人が安く買って安く売ることは不可能である。そんなことをすれば商品の値段は際限なく高騰してしまうし、そもそも高すぎる商品は売れない。これは日常的な感覚で考えればわかりやすいだろう。

 では、利潤はどこから発生するのだろうか。式を見ると、最終的にGが増加しているが、Gそのものの価値がひとりでに上昇したわけではない。そこに置いておいた100円が何もしないのに120円に増えるのはおかしな話である(このような考え方は唯物論的であると言えるだろう)。

 また原論的な考えに則せば、単純な物々交換や買った商品に高い値段を付けて販売する方法では、社会の利潤は恒久的に0である(20円高く売りつけて得をした人がいても、20円損する人がいるため、社会全体の利潤は相殺される)。

 価値が上昇したのはWの過程においてであると考えるのが合理的であろう。つまり、商品に付加価値が加えられたと解釈するのである。生産(過程)Pを考慮に入れて上記式を書き直すと次のようになる。

G - W ⋯ P ⋯ W' - G' G'=G+ΔG

 先の例と同様に考えると、G=100円、W=100円だが、ここでWに生産活動=労働が加わることで、100円のWがW'となり、その価値を金額で測ると120円となった結果として、ΔG=20円が創出されると考えることができる。

 ΔGの部分を、マルクス経済学では剰余価値と呼び、これが利潤の源であると考える。WにPを加えること、つまり生産的労働によって商品を加工あるいは創造することによって、価値を高めることが可能になるのである。ΔGは、貨幣の価値尺度機能を用いてその価値を金額で測ったものに過ぎないのである。このようにマルクス経済学は、価値を生み出すものは労働であるという、労働価値説に基づいていのである。

次回は労働(P)に着目し、資本主義社会の解析を行う。

https://note.com/scienta_est/n/n747c2214cbd3?magazine_key=m75824ff6e6c2

2. 中川隆[-10771] koaQ7Jey 2020年10月19日 13:09:13 : wkiRvIykcQ : aFFBREwzUFlhM28=[17] 報告
経済原論概説 第4回 資本主義社会
ト・アペイロン 2020/04/05
https://note.com/scienta_est/n/n610b9a00d9a8

生産の細分化
労働価値説に基づいて資本主義社会の解析を進める為に前回の式

G - W ⋯ P ⋯ W' - G'

を労働力A、生産手段Pmを用いて細分化する。生産手段とは生産に用いる原料、機械などを指す。

画像1
https://note.com/scienta_est/n/n610b9a00d9a8


W’=W+ΔW  G’=G+ΔG 

 ここではG=100円、A=30円、Pm=70円、ΔW=20円と考える。上式におけるAとは、労働者に支払われる賃金と同義である。また、期末(取引の最後)におけるGは元手あり、G’から元手100円を差し引いたΔGが利潤である。生産者の立場から見ると、利潤はWに生産的労働がなされたことで発生している。よってマルクス経済学では、A(賃金)とΔGの部分を付加価値と捉える。

 近代経済学においての付加価値はΔG部分のみである。なお、近代経済学においてはこれらの記号は使用されておらず、全要素生産性(技術力)をA、労働をL、資本をKとしてこれらの関係式から生産量をYを導出する。総生産高から総費用を引いた金額を利潤と捉えるのである。

 話が少しそれたが、ここで一歩引き返してまた別の道に寄り道をしよう。仮に、元手の100円を貨幣資本家、投資家に借りた場合、元手の返済と共に利潤のうち一部を合わせて支払う。これが利子である。例えば上記の例の場合、借りた元手の100円の70円で生産手段を購入し、30円を労働者に支払うことで120円分の価値を有する商品が生産される。その商品を売ると120円が手に入るが、貸し手に102円(2円の利子を付けて)返すと18円が生産者に残る。その生産を借りた土地で行なった場合、更に土地代を払うことになるだろう。地主は自分の土地を一定期間貸し出すだけで金銭をせしめることが可能になるのである。先ほどと同様、生産者の立場から見ると利潤はWに生産的労働がなされたことで発生しているが、貸し手や地主の視点のみを考えれば、貨幣や土地(資本)が利潤を生みだしたように見える。近代経済学に労働価値説が継承されなかった大きな原因がここにある。

労働の細分化
 労働と生産の関係を詳細に見るため、労働力(A)部分を、量的変化(人をどれだけ雇うか、どの位働かせるかの調整)が可能であり、(価値の)創出効果のある可変資本(v)とし、ΔG部分を可変資本(v)によって生み出された利潤(m)と呼ぶ。一方でPmを量的変化のない、創出効果を生み出さない不変資本(c)とする。すると、

付加価値生産=v(可変資本)+m(利潤)

となる。

 ここで、労働者に支払われる賃金はvであるためvを必要労働(生産物)、mを剰余労働(生産物)と解釈することが可能である。技術が発展するほどm/v(賃金に対する剰余労働の割合)が大きくなる、つまり剰余生産物が多くなると考えられる。原始時代には自分が生きていくための生産で手いっぱいだったが、農耕の発達により剰余生産物が増えることで、農奴制や封建社会を維持することが可能になったのである。産業革命が起こり、生産技術が飛躍的に向上したことでmも飛躍的に増加したことによって、資本主義社会が形成されるようになったのである。m/vについては、次回より詳しく説明する。


 さて、先ほどの生産者が自分のお金でW’を生産し販売すると、G’(120円)を獲得する。原論では120円の中に元本の100円が含まれていると考えるが、とにもかくにも生産者は新たに獲得した貨幣を使うことで再び生産活動をすることができる。このようなGの循環を資本循環という。Aは労働者に対する賃金として支払われているが、労働者はAをG(30円)という形で受け取っている。労働者はGを用いて生活必需品を消費することになる。労働者が受け取った賃金を用いて消費活動をすることでもGは循環している。このような循環を賃金労働循環と呼ぶ。

 このような労働と資本の循環による再生産によって社会は存続しているが、貨幣交換で成立している社会では本来社会を維持しているはずの生産労働が見落とされ、貨幣や資本によって社会が維持されているという考え方に陥りやすい。さらにそれが進むと、貨幣や資本が神格化され、貨幣や資本ですべてを解決できるというような、物神性論に陥ってしまう。
 商品価値をwとおくと、

w=c+v+m

と表すことが出来る。本来mは、vがcを用いて生み出した、換言すると、人が労働によって生み出したものである。しかしながら表象(経営)的には、c+vというコストで利潤mが生みだされたと捕らえられる。mを増加させることばかりを重要視すると、利潤第一主義や拝金主義に陥り、さらにそれが進めば社会的モラルは退廃してしまう。    

次回は必要労働と剰余労働の関係について詳述する。

https://note.com/scienta_est/n/n610b9a00d9a8

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