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コロナで各国が食糧輸出規制、日本は農政のつけで生産困難
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/773.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 4 月 14 日 13:34:16: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: アメリカの食料戦略 投稿者 中川隆 日時 2020 年 2 月 14 日 20:20:18)


2020年04月14日
コロナで各国が食糧輸出規制、日本は農政のつけで生産困難


欧米の農家は政府から金を貰い、日本の農家は政府に金を奪われている

だから欧米の農業は発展し日本農業は衰退している


コロナで各国が食糧不足になっている

新型ウイルスで各国が食糧危機に陥るという見方が強まっている。

意外なことに先進国で真っ先に品切れを起こしたのはパスタで、あまり食べない日本でも店頭から消えている。

最初にパスタの本場イタリアで外出禁止や都市封鎖されたため、市民はスーパーであらゆるパスタを買い占めた。

するとパスタ買い占めは欧州諸国やアメリカに波及し、なぜか日本でもパスタ買い占めが起きた。




トイレットペーパー買い占めの時と同じ流れで、一国で買い占めが起きると世界中に拡散している。

欧米ではレトルト食品やほかの麺類が多くなく、保存食がパスタとシリアルくらいしかないという事情もあった。

パスタの弱点は世界的な商品であることで、生産国から消費国まで何か国も経由している。


そのうちの一国でもトラブルが起きると流通経路が遮断されてしまい、すべての店頭からパスタが消えてしまう。

パスタの小麦はカナダで生産してイタリアで加工し欧州各国に輸出していたので、イタリアの感染拡大で工場が止まってしまった。

一国の国内で生産し国内で消費するものは天候さえ良ければ消費者に届かないことはない。


日本メーカーのパスタは国内工場で製麺しているが、危機感を煽られた消費者が買い占めて売り場から消えた。

各国の農地では去年と同じく作物が育っているが、労働者不足や流通・輸送網が打撃を受けている。

不足している一方で膨大な作物が余って廃棄され、都会のスーパーマーケットや日本で並ぶ事は無い。

各国が食糧輸出制限

インドの農産地では都市が封鎖されてしまったため作物を出荷できず、ブドウやイチゴを廃棄している。

労働が禁止されたため世界中の農地から労働者がいなくなり、農地の手入れや収穫ができなくなった。

アメリカ農業は中南米からの移民労働者に依存していたが、労働者不足に陥り作付けや収穫が止まっている。


日本国内ではすべての学校が休校になったため牛乳が売れなくなり、このままでは全国すべての牛乳農家が経営破綻する。

日本政府は以前乳製品の需要が大幅に減少するという誤った予測から大量の牛乳農家を廃業させ、バター不足を引き起こした。

一度減らした乳牛を増やすことはできず、新たに酪農を始める人はいないので日本は長期的な牛乳不足に陥る。


世界で食糧不足が懸念されているため、輸出を制限して自国の消費分を確保する動きが強まっている。

インドやロシアは小麦やコメなどの輸出量を制限し、東南アジアや東ヨーロッパも制限を始めている。

カロリーの60%以上を輸入している日本では、輸入に頼っている一部の原料が不足しやすい。


日本は生鮮食料品や米が余っているが、小麦や家畜肥料のほとんどを輸入に頼っていて、生産国が不足すればもう輸入できなくなる。

長期契約を交わしていたとしても自国の国民が飢え始めたら、生産国は契約書なんか破り捨てるでしょう。

ここで問題になるのが日本のカロリー食糧自給率の低さで、日本政府は意図的に自給率を下げてきた。


世界各国は農家の収入の50%から100%もの直接給付金を出してきたのに、日本はゼロです。

この結果アメリカや欧州は国の補助金で安く生産して日本に輸出攻勢をかけ、日本の農作物生産は減るばかりです。

日本の農作物は高く欧米は安いというのは政府の補助金の違いで、目の錯覚にすぎません。


補助金ゼロで計算すると日本の大半の農作物価格は欧米と同程度なので、輸送費を考えれば十分に競争力がある。

すべては政府のやる気の問題で、欧米並みの補助金を出して日本農業を支援すれば競争に勝てるのです。
http://www.thutmosev.com/archives/82685366.html
 

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コメント
1. 中川隆[-12864] koaQ7Jey 2020年4月29日 13:01:19 : ivljIUpnCM : Zm44Z3NMaklOZ00=[6] 報告
コロナ禍、深刻な野菜不足の兆候…1〜2月の輸入激減、じゃがいもは9割減(Business Journal)
http://www.asyura2.com/20/hasan134/msg/406.html
https://biz-journal.jp/2020/04/post_154221.html
2020.04.28 06:10 文=垣田達哉/消費者問題研究所代表 Business Journal

 食料不足は生鮮品にまで及ぶ可能性がある。4月15日付本連載記事で述べたように、1月〜2月累計で、野菜は数量ベースで前年同期比20.8%減、魚介類は同17.7%減である。まず野菜を見てみよう。

 ばれいしょ(じゃがいも)の輸入が激減している。昨年1月〜2月累計で数量ベースで3564トン、金額ベースで2億1295万円輸入されていたが、今年は122トン、786万円である。輸入先は米国アイダホ州のみで、日本国内ではポテトチップス用にしか使用されない。

 ポテトチップスも9割以上が国産じゃがいもを使用しているので、たとえ輸入がゼロになっても日本にはほとんど影響はない。ただ、この数字を見て推測できるのは、米国での新型コロナウイルスの影響がかなり深刻だということだ。アイダホ州は4月15日現在、新型コロナウイルス感染者が1464名、死亡者数が39名である。ニューヨーク州に比べれば、感染者も死亡者もかなり少ない。アイダホ州は、米国でもじゃがいもの生産量がトップの州だ。日本へのじゃがいもの輸出額は、昨年2カ月間で2億円以上になる。経済面でもかなり大きな数字のはずだ。

 それが、今年は輸出がほとんどできないということは、新型コロナウイルスの影響がかなり甚大で、サプライチェーン(生産から販売=輸出)がほとんど機能していないからではないだろうか。政府は、輸入は順調だと言っているが、この連載で筆者は何度も指摘しているが、本当に米国のサプライチェーンの実態を把握しているのだろうか。

 たまねぎも輸入量が数量ベースで30%ほど激減している。輸入先の約96%が中国である。昨年は1〜2月の2カ月間で5万1767トン、24億5885万円相当を輸入している。スーパーマーケットなどの小売店では国産品しか販売しないので目立たないが、飲食や中食、弁当・惣菜などでは、ほとんど中国産たまねぎが使われている。食材のなかでも、たまねぎは非常に重宝される野菜だ。新型コロナウイルスの影響で飲食店需要は激減しているだろうが、中食や弁当・惣菜は売上が伸びているはずだ。

 中国の農業生産や輸出産業は元通りになっているのだろうか。中国からの輸入が今後も増えなければ、国産たまねぎの争奪戦が起きるだろう。

■日本、輸入で中国依存のリスク鮮明

 その他の野菜では、結球キャベツ、ごぼう、乾燥しいたけ(干し椎茸)、冷凍ほうれん草、たけのこ調整品は、輸入の大半を中国が占めている。キャベツ、ごぼうは、ほとんどが産地表示義務のない飲食、中食、弁当・惣菜用、冷凍ほうれん草は冷凍食品に多用されている。干し椎茸はスーパーなどの小売店でも多く販売されている。たけのこ調整品は、たけのこの水煮やメンマ等である。ラーメンに欠かせないメンマは、ほとんどが中国産だ。このまま輸入が減少し続ければ、ラーメンからメンマが消えることもあるかもしれない。

 結球レタスの大半は台湾からの輸入で、スーパーなどの小売店以外で使われる。新型コロナウイルスの感染拡大を最小限に防いだことで話題となったが、サプライチェーンは通常の状態に戻っているのだろうか。

 中国は他国に比べ、新型コロナウイルス問題が終息に近づいているようだが、サプライチェーンの回復はいつになるのだろう。日本は、食料品もそうだが輸入全体で第1位の国が中国である。米国の2倍以上の輸入金額になっている。中国の産業経済が正常に戻らなければ、日本全体の産業経済にも大きな影響を与えるだろう。

■肉類は大きな減少はないが…

 輸入量に大きな変動がない畜産品も見てみよう。

 畜産品で減少しているのは、鶏肉調整品が数量ベースで▲8.3%、金額ベースで▲7.8%。輸入先の第1位がタイ、順に中国、ベトナムである。2桁減少の天然はちみつは、ほとんどが中国である。シェアは数量ベースで約68%ある。

 牛肉(くず肉含む)は1〜2月累計で全体で8万9479トン、567億7451万円と巨大な輸入量である。輸入先は第1位から順に、米国(3万9961トン、253億2403万円)、豪州(3万6427トン、237億4091万円)、カナダ(6545トン、33億3057万円)。豚肉(くず肉含む)は全体で13万9365トン、741億4202万円。輸入先は第1位から順に、米国(4万2480トン、223億1969万円)、カナダ(3万6337トン、191億8195万円)、スペイン(1万6840トン、90億2659万円)。

 鶏肉は全体で8万5539トン、211億8710万円。輸入先は第1位から順に、ブラジル(6万2606トン、140億8076万円)、タイ(2万784万トン、66億3538万円)、米国(1684トン、3億2988万円)。

 牛肉、豚肉、鶏肉については、2月時点では大きな減少はない。数字でわかるように、肉類は取引額が膨大な金額になる。米国は3種の肉類合わせて2カ月間で約480億円である。その他の国も数十億円から数百億円の規模だ。各国とも日本への畜産品の輸出が大幅に減少すれば、畜産産業に大きなダメージとなる。どの国も、畜産品だけは輸出は守りたいはずだ。逆に、肉類の日本への輸入が激減するようなことがあれば、新型コロナウイルスの影響が計り知れないものだという証になる。

 次回は、これも大きな影響を受けている水産物について考察する。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

2. 中川隆[-12789] koaQ7Jey 2020年5月02日 22:53:14 : BWiRjVKTE6 : OUh1RC8xSi9HMEU=[29] 報告
コロナ禍が炙り出す食の脆弱性と処方箋〜ショック・ドクトリンは許されない〜 東京大学教授・鈴木宣弘 2020年5月2日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/16951


はじめに

 新型肺炎の世界的蔓延への対処策で、物流(サプライ・チェーン)の寸断や人の移動の停止が行われ、それが食料生産・供給を減少させ、買い急ぎや輸出規制につながり、それらによる一層の価格高騰が起きて食料危機になることが懸念されている。日本の食料自給率は37%、我々の体を動かすエネルギーの63%を海外に依存している。輸入がストップしたら、命の危険にさらされかねない。

 輸出規制は簡単に起こりうるということが、今回も明白になった。FAO・WHO・WTOは共同で、輸出規制の抑制を要請した。しかし、輸出規制は国民の命を守る措置であり、抑制は困難である。かつ、3国際機関は、いっそうの食料貿易自由化も求めている。自由化しすぎて輸出規制も起こりやすくなり、自給率が下がって輸出規制に耐えられなくなっているのに、もっと自由化しろ、とは論理破綻も甚だしい。コロナ・ショックに乗じた「火事場泥棒」的ショック・ドクトリン(災禍に便乗した規制緩和の加速)であり、看過できない。
 過度の自由化への反省と各国の食料自給率向上こそが解決の処方箋である。

輸出規制の抑制はナンセンス
 〜自給率向上策とともに国民を守る正当な行為

 すでに、小麦の大輸出国ロシア、ウクライナ、コメの大輸出国ベトナム、インドなどが輸出規制に動き出している。輸出規制は簡単に起こりつつある。これを受けて、4月1日、FAO・WHO・WTOの事務局長が連名で共同声明を出し、輸出規制の抑制を求めた。しかし、これは無理だ。

 2008年の食料危機に際しても、筆者は指摘した。「輸出規制を規制すればよいだけだ」との能天気な見解もあるが、国際ルールに、かりに何らかの条項ができたとしても、いざというときに自国民の食料をさておいて海外に供給してくれる国があるとは思えない。もしあったとすれば、むしろその方がおかしい。

 食料確保は、国家の最も基本的な責務だ。同様に、最低限の食料自給率を維持するための措置も、当然のことであり、他国から非難されるべきものではない。(鈴木宣弘・木下順子『新しい農業政策の方向性〜現場が創る農政』全国農業会議所、2010年など参照)

原因は自由化なのに解決策は自由化だと言うのは狂っている

 しかも、FAO・WHO・WTOのトップの共同声明では、九州大学の磯田教授が指摘しているとおり、食料貿易を可能な限り自由にすることの重要性も述べている。輸出規制の根本原因は貿易自由化の進展なのに、解決策は自由貿易だというのは狂っている。2008年の食料危機の経験から何も学んでいない、情けない提言である。

 2008年の食料危機、輸出規制について、筆者は次のように解説した【図も参照】。

 米国は、自国の農業保護(輸出補助金)は温存しつつ、「安く売ってあげるから非効率な農業はやめたほうがよい」といって世界の農産物貿易自由化を進めて、安価な輸出で他国の農業を縮小させてきた。それによって、基礎食料の生産国が減り、米国等の少数国に依存する市場構造になった。そのため、需給にショックが生じると価格が上がりやすく、それを見て高値期待から投機マネーが入りやすく、不安心理から輸出規制が起きやすくなり、価格高騰が増幅されやすくなってきたこと、高くて買えないどころか、お金を出しても買えなくなってしまったことが今回の危機を大きくしたという事実である。つまり、米国の食料貿易自由化戦略の結果として今回の危機は発生し、増幅されたのである。

 米国などが主導する貿易自由化の進展が、少数の輸出国への依存を強め、価格高騰を増幅し、食料安全保障に不安を生じさせると考えると、「2008年のような国際的な食料価格高騰が起きるのは、農産物の貿易量が小さいからであり、貿易自由化を徹底して、貿易量を増やすことが食料価格の安定化と食料安全保障につながる」という見解には無理がある。(鈴木宣弘『食の戦争』文春新書、2013年参照)

 ハイチ、エルサルバドル、フィリピンで2008年に何が起こったか。コメの在庫は世界的には十分あったが、不安心理で各国がコメを売ってくれなくなったから、お金を出してもコメが買えなくてハイチなどでは死者が出た。米国に強要されてコメの関税を極端に低くしてしまっていたため、輸入すればいいと思っていたら、こういう事態になった。原因は貿易自由化にある。

正しい処方箋は各国の食料自給率向上

 コロナ・ショックにおいても、またしても、自由貿易が原因なのに、うまくいかないのは貿易自由化が足りないのだ、というショック・ドクトリン(人々の苦しみにつけ込んで規制緩和を加速して自分たちが儲ける)のような議論になってしまっているのは、まさにショックである。

 貿易自由化も含めた徹底した規制緩和を強要して途上国農村の貧困を増幅させて、グローバル企業が儲け、貧困が改善しないのは規制緩和が足りないせいだ、もっと徹底した規制緩和をすべきだ、と主張しているのと同じである。

 我々は、このような一部の利益のために農民、市民、国民が犠牲になる経済社会構造から脱却しなくてはならない。食料の自由貿易は見直し、食料自給率低下に本当に歯止めをかけないといけない瀬戸際に来ていることを、もう一度思い知らされているのが今である。

畳みかける貿易自由化と規制緩和にストップを

日米貿易協定(FTA)を合意した日米首脳(昨年9月)
 TPP11、日EU、日米協定と畳みかける貿易自由化が、危機に弱い社会経済構造を作り出した元凶であると反省し、特に、米国からの一層の要求を受け入れていく日米交渉の第2弾はストップすべきである。

 食料だけではない。医療も、米国は日本に対して米国型の民間保険の導入、営利病院の進出を追求し続けている。米国では、今回、無保険で病院から拒否された人、高額の治療費が払えず、病院に行けない人が続出した。こんな仕組みを強要されたら大変であることはコロナ危機で実感された。

 国内的には、一部の企業的経営、あるいは、オトモダチ企業に農業をやってもらえばいいかのように、既存農家からビジネスを引き剥がすような法律もどんどん成立させてしまった。

 「国家私物化特区」でH県Y市の農地を買収したのも、森林の2法で私有林・国有林を盗伐して(植林義務なし)バイオマス発電するのも、漁業法改悪で人の財産権を没収して洋上風力発電に参入するのも、S県H市の水道事業を「食い逃げ」する外国企業グループに入っているのも、MTNコンビ企業である。有能なMTNは農・林・水(水道も含む)すべてを「制覇」しつつある。

 一連の種子法廃止→農業競争力強化支援法8条4項→種苗法改定を活用して、公共の種をやめてもらい→それをもらい→その権利を強化してもらうという流れで、種を独占し、それを買わないと生産・消費ができないようにしようとするグローバル種子企業が南米などで展開してきたのと同じ思惑が、企業→米国政権→日本政権への指令の形で「上の声」となっている可能性も指摘されている。

 すでに、メガ・ギガファームが生産拡大しても、廃業する農家の生産をカバーしきれず、総生産が減少する局面に突入している。今後、「今だけ、金だけ、自分だけ」のオトモダチ企業が儲かっても、多くの家族農業経営がこれ以上潰れたら、国民に安全・安心な食料を、量的にも質的にも安定的に確保することは到底できない。

種や労働力も考慮した自給率議論の必要性

 今回のコロナ・ショックは、自給率向上のための課題の議論にも波紋を投げかけた。日本農業が海外の研修生に支えられている現実、その方々の来日がストップすることが野菜などを中心に農業生産を大きく減少させる危険が今回炙り出された。メキシコ(米国西海岸)、カリブ諸国(米国東海岸)、アフリカ諸国(EU)などからの労働力に大きく依存する欧米ではもっと深刻である。

 折しも、新しい基本計画で出された食料国産率(鶏卵の国産率は96%だが飼料自給率を考慮すると自給率は12%)の議論とも絡み、生産要素をどこまで考慮した自給率を考えるかがクローズアップされたところである。例えば、種子の9割が外国の圃場で生産されていることを考慮すると、自給率80%と思っていた野菜も、種まで遡ると自給率は8%(0.8%×0.1)となってしまう。同様に、農業労働力の海外依存度を考慮した自給率も考える必要が出てくる(九州大学・磯田教授)。

 海外研修生の件は、その身分や待遇のあり方を含め、多くの課題を投げかけている。一時的な「出稼ぎ」的な受入れでなく、教育・医療・その他の社会福祉を含む待遇を充実させ、家族とともに長期に日本に滞在してもらえるような受入れ体制の検討も必要であろう。また、フランス、ドイツなどEU諸国では、政府がマッチングサイトを運営して、国民への「援農」の呼びかけを強化している(北海道大学・東山教授)。日本でも、こうした対応が国全体としても、各地域でも必要になっている。

水産業界の技能実習生
和牛商品券の波紋〜コロナ・ショックは追い打ち

 もう一つ波紋を広げたことがあった。
 コロナ・ショックによる外食需要などの激減で和牛やまぐろの在庫が積み上がったので、経済対策の一環として「和牛券」や「お魚券」が提案されたが、それが報道されるやいなや、それだけがクローズアップされ、世論を「炎上」させてしまった。

 全国民が大変なときに贅沢品に近い特定の分野だけの消費にしか使えない商品券を出すとは利権で結びついた族議員と業界の横暴だという非難だ。苦しむ農水産業界を何とか救いたい思いが、大きな非難の的にされるという極めて残念なことになってしまった。

 長年、日本の農家は農業を生贄にして自動車などの利益を増やそうとする意図的な農業悪玉論に苦しめられ、我々はその誤解を解こうと客観的なデータ発信に尽力してきたが、これでは、やはり農水産業は利権で過保護に守られているのだという誤解を増幅してしまう。努力が水の泡だ。

 過保護どころか、農林漁家からビジネスを引き剥がす法律が立て続けに成立し、かたや畳みかける貿易自由化とで、いま日本の農林水産業界は苦しめられている。直近では、日米貿易協定が発効するや、1月だけで米国からの牛肉輸入が1.5倍になるなど、輸入牛肉の想定以上の増加で国産が押しやられている。

 コロナ禍の影響の前に、こうした打撃が積み重なり、そこにコロナ禍が上乗せされたことを忘れてはならない。

 消費者を支援する形で生産者も支援するのは有効な手段だ。だが、このタイミングで、特定分野が優遇されている誤解を与えたら、国民理解醸成に完全に逆効果である。

 米国でも農業予算の64%も食品購入カードの支給で一定所得以下の食費支援に使っている。米国は価格低下時の農家への差額補填システムも充実している。生産・消費の両面から徹底的に農家を支えている。米国は、今回も、追加的に2兆円規模の食肉・乳製品の買い上げ、農家の所得補填などを打ち出した。

 日本の牛肉農家の所得の30%程度が補助金なのに対してフランスでは180%前後、赤字(肥料・農薬などの支払いに足りない分)もすべて税金で補填している。農業全体でも、日本の農家の所得の30%程度が補助金なのに対して、英仏が90%以上、スイスではほぼ100%、日本の水産にいたっては所得に占める補助金は2割に満たない。諸外国に比べたら極めて保護されていない【表参照】。

 「所得のほとんどが税金でまかなわれているのが産業といえるか」と思われるかもしれないが、命を守り、環境を守り、地域を守り、国土・国境を守っている産業を国民全体で支えるのは欧米では当たり前なのである。それが当たり前でないのが日本である。

 世界的にも最も自力で競争しているのが日本の農林漁家。牛肉券の想いはわかるが、過保護と誤解され、国民を敵に回したら元も子もない。何とか、これを農林水産業への正しい国民理解醸成の再構築の機会に反転させなくてはならない。

量だけでない、質の安全保障も

 米国産の輸入牛肉からはエストロゲンが600倍も検出されたこともある。エストロゲンは乳がんを増殖する因子として知られる。米国でもホルモン・フリー牛肉が国内需要の主流となり、オーストラリアは日本にはホルモン牛肉、禁止されているEUにはホルモン・フリー牛肉を輸出している。つまり、米国やオーストラリアから危ないホルモン牛肉が輸入規制の緩い日本に選択的に仕向けられている。

 農民連の分析センターが調べたら、ほぼすべての食パンから発がん性のある除草剤が検出された。国産、十勝産、有機小麦のパンからは検出されていない。輸入小麦には、日本で禁止されている収穫後農薬の防カビ剤(米国がかけるのは「食品添加物」と日本が分類してあげている)も輸送時に振りかけられている。米国農家は「これは日本人が食べるからいいのだ」と言っていたという。トウモロコシ、大豆の遺伝子組み換えの不安だけではない。日本人は、世界で一番、遺伝子組み換え、除草剤の残留、防カビ剤の残留の不安にさらされている。

 米国では乳牛にも成長ホルモンを注射する。米国内では消費者運動が起きて、大手乳業などがホルモン・フリー宣言をした。やはり、危ない乳製品は日本向けになっている。国産シフトを早急に進めないと、自分の命が守れない。さらに、輸入依存を強めて、こんな危機になったら、お金を出しても、その危ない食料さえ、手に入らないかもしれない。

 もう一度、確認しよう。成長ホルモン、除草剤、防カビ剤など発がんリスクがある食料が、基準の緩い日本人を標的に入ってきている。国産には、成長ホルモンも、除草剤も、防カビ剤も入っていない。早く国産シフトを進めないと、量的にも、かつ質的にも、食の安全保障が保てない。つまり、「国産は高くて」という人には、安全保障のコストを考えたら「国産こそ安いんだ」ということを認識してもらいたい。

 現時点で、小麦、大豆、とうもろこしなどの国際相場に大きな上昇はない。コメはかなり上昇している。コメの輸入依存度が大きい途上国には2008年の危機の再来が頭をよぎる。日本は、今もコメは過剰気味なので、かりに小麦などが今後逼迫しても、当面はコメで凌ぎ、いざとなれば、農水省の不測の事態対応にもあるように、もっとも増産しやすいさつまいもを校庭やゴルフ場にも植えるといった措置が選択肢となる。しかし、これでは「戦時中」になってしまう。

自分たちの命と食を守ろうという機運

牛舎でエサを食べる乳牛(北海道)
 現時点で、日本国内で顕在化している影響は「まだら模様」である。業務用野菜の中国からの輸入減少、家庭内食の増加による小売店及び生協経由での野菜需要の増加で、野菜需要は増加し、特に、生協を通じた購入の増加は、有機野菜などの価格の高い野菜への需要の増加となって表れている。

 一方、中国からの海外研修生の減少による作付け減少などの要因で生産は伸びず、価格が上昇している。野菜の生産が追いつかなくなっている。農家の人手が足りないから、消費者も近所の農家に出向いて一緒につくるくらいの産消連携が必要になっている。

 牛乳、乳製品などは、外食や給食需要の減少で在庫が増え、生乳の廃棄の懸念すら出ており、農水省も先頭に立って、消費を呼びかけている。牛肉は、ここにきて、海外産が敬遠され、国産が伸びているとの情報もある。

 ネットなどのコメントでも、これを機に生産者とともに自分たちの食と暮らしを守っていこうという機運が高まってきていることがうかがえる。
 それが購買行動にも表れてきているとしたら、明るい兆しである。

 「戦後初めてであろうこのような国難の時だからこそ、本当に我が国を支えている第一次産業の重大さや自国で生産したものを食べることができるという有り難さ、そして農家の底力をすごく感じます。私事ですみませんが、父や母が一生懸命汗を流し愛情込めて作ってくれたお米、野菜、肉、卵で育ちました。世界一美味しかったです。亡くなってしまった今になって、もっと食べたかったなと本当に思います。農家の方々、それに携わるすべての方々、コロナウイルスに負けず、体に気をつけて頑張って下さい! よろしくお願いいたします。」

 「今の我が国は、エネルギーも食糧も海外頼みでは、首根っこを押さえられているも同然。我が国のように両方海外に多くを依存している先進国はないのでは。このコロナ問題をいい機会にして、エネルギー、食糧、工業部品等の生産のあり方を時間をかけてでも見直す必要が更に深まったと考える。未知のウイルス・細菌は、益々人類の脅威となるのは間違いないし、その感染スピードは更に増して行く。その時にエネルギー、食糧が海外頼みでは、心もとない。」

 「農家は日本の宝です。政権は効率や貿易のカードとしてどんどん食料自給率を下げていますが、コロナが長引けば食料の輸入が減って食べ物もなくなるのではと不安です。」

 「私達を支えている第一次産業。厳しい今だからこそ基本に立ち返る事を考える良い機会。何不自由なく過ごせているのも農家さんのお陰です。本当にお陰様と有り難う。」

 「国内の農家を守ってこそ、日本の家庭は守られます。農民の作った食べ物を食べて人間は生きている。農民が人間を生かしている。農民の生活を保障すると人間の命も保証できる。今は農民の生活が保障されていない。」

 厳しいコロナ禍の中で、このような機運が高まっている今こそ、安全・安心な国産の食を支え、国民の命を守る生産から消費までの強固なネットワークを確立する機会にしなくてはならない。

 農家は、自分達こそが国民の命を守ってきたし、これからも守るとの自覚と誇りと覚悟を持ち、そのことをもっと明確に伝え、消費者との双方向ネットワークを強化して、安くても不安な食料の侵入を排除し、自身の経営と地域の暮らしと国民の命を守らねばならない。消費者は、それに応えてほしい。それこそが強い農林水産業である。

 特に、消費者が単なる消費者でなく、より直接的に生産にも関与するようなネットワークの強化が今こそ求められてきている。世界で最も有機農業が盛んなオーストリアのPenker教授の「生産者と消費者はCSA(産消提携)では同じ意思決定主体ゆえ、分けて考える必要はない」という言葉には重みがある。全国各地域で、行政・協同組合・市民グループ・関連産業などが協力して、住民が一層直接的に地域の食料生産に関与して、生産者と一体的に地域の食を支えるシステムづくりを強化したいところである。

 政策的には、慌てて緊急対策ではなく、危機で農家や中小事業者や労働者が大変になったら、最低限の収入が十分に補填される仕組みが機能して確実に発動されるよう、普段からシステムに組み込んでおく。国民の命と暮らしを守れる安全弁=セーフティネットのある、危機に強い社会システムの構築が急がれる。危機になって慌てても危機は乗り切れない。

アジア、世界との共生に向けて

 今回のコロナ・ショックは、世界の人種的偏見もクローズアップさせた。アジアの人々が欧米で不当な扱いを受けるケースが増えたことは残念だ。逆に、アジアの人々の間に助け合い、感謝し合う連帯の感情が強まった側面もある。

 「山川異域、風月同天」(山河は違えど、天空には同じ風が吹いて同じ月を見て、皆つながっている)

 この機会を、日本の盲目的・思考停止的な対米従属姿勢を考え直す機会にし、アジアの人々が、そして、世界の人々が、もっとお互いを尊重し合える関係強化の機会にしたいと思う。対米従属を批判するだけでは先が見えない。それに代わるビジョン、世界の社会経済システムについての将来構想が具体的に示されなくてはならない。

 筆者が参加した多くのFTAの事前交渉でも、米国に対しては「スネ夫」の日本がアジア諸国には「ジャイアン」よろしく自動車関税の撤廃を強硬に迫り、産業協力は拒否し、「自己利益と収奪しか頭にない日本はアジアをリードする先進国としての自覚がない」と批判されるのを情けなく見てきた。

 まず、日本、中国、韓国などのアジアのすべての国々が一緒になって、アジアの国々の間でTPP型の収奪的協定ではなく、お互いに助け合って共に発展できるような互恵的で柔軟な経済連携ルールをつくる。

 農業の面でいえば、アジアの国々には小規模で分散した水田農業が中心であるという共通性がある。そういう共通性の下で、多様な農業がちゃんと生き残って、発展できるようなルールというものを私たちが提案しなくてはいけない。

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すずき・のぶひろ 1958年三重県生まれ。東京大学農学部卒業。農学博士。農林水産省、九州大学教授を経て、2006年より東京大学教授。専門は農業経済学。日韓、日チリ、日モンゴル、日中韓、日コロンビアFTA産官学共同研究会委員などを歴任。『岩盤規制の大義』(農文協)、『悪夢の食卓 TPP批准・農協解体がもたらす未来』(KADOKAWA)、『亡国の漁業権開放 資源・地域・国境の崩壊』(筑波書房ブックレット・暮らしのなかの食と農)など著書多数。

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/16951

3. 中川隆[-12705] koaQ7Jey 2020年5月08日 08:21:26 : EIjh7CCywc : RFRGdXFIdUF6OEU=[2] 報告
「COVID19が問う貿易・食料問題ー日本と世界の農業、自由貿易協定の行方は?」アジア太平洋資料センター(PARC)が公開講座
2020年5月7日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/17054


 自由貿易の問題点について警鐘を鳴らしてきたアジア太平洋資料センター(PARC)が5月1日、「COVID―19が問う貿易・食料問題―日本と世界の農業、自由貿易協定の行方は?」と題してオンライン公開講座を開催した。新型コロナ感染防止のため、ウェブ会議システム「Zoom」(オンライン上での複数人同時配信)でおこなわれた講座では、PARC共同代表の内田聖子、東京大学教授の鈴木宣弘の2氏が講演した。日本国内ではほとんど報道されていない新型コロナウイルス拡大の下での貿易措置の世界的動向や食料危機の可能性についてデータに基づいて認識を共有し、食料自給率が低い日本がそれにどのように対処するべきかについて問題提起をおこなった(掲載する図表は内田氏による作成・提供)。

今後のオンライン講座の予定(PARC自由学校)
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 はじめに「COVID―19が問う貿易・食料問題」として内田聖子氏が、新型コロナのパンデミックのなかで世界各国の貿易体制、とくに食料、農産物の国境をこえたサプライ・チェーン(生産から供給に至る物流体制)でなにが起きているのかについて概略以下のように報告した。

内田聖子氏の報告

 WTOは世界164カ国が加盟する世界貿易機関だが、最近は個別の二国間による貿易協定や地域貿易協定が増えている。日本では、TPP11(環太平洋経済連携協定)、日EU、日米FTA(貿易協定)などがこの数年で加速してきた。

 二国間での自由貿易協定は、世界を一つの市場とし、モノやサービスを自由に行き交うようにすることを目指している。関税をなくし、サービス、金融、知的財産などについて定められている国内ルールを「ビジネスの障壁」と見なし、このルールを限りなくとり除いていくグローバルな規制緩和だ。そのなかで政府は役割を縮小し、市場に介入しないというスタンスをとる。したがって国家は力を弱めていく。

 ところが、新型コロナ感染が広がるなかで、貿易を含む世界経済はかつてなく大きな打撃を受けている。WTOは2つのシナリオで今後の経済の見通しを示している【上グラフ参照】。悲観的な方は、2009年の金融危機をさらに下回るマイナス31・9%と見込んでいる。これは各国の産業、投資家にとっても大問題だろう。

 これは新型コロナによってもたらされたのではなく、それ以前からの自由貿易によって生じていた問題がよりクリアに顕在化したにすぎない。

 世界の物品貿易とGDP成長率の比較【下グラフ参照】を見ると、世界の物品貿易の成長率は金融危機が起きた2009年に急激に下がった後、V字回復をするものの、そこからは横ばい(スロートレード)を続けてきた。このスロートレードを問題にして、先進国は数々の貿易協定を進めた。しかし、推進側が思っている以上に進まなかった。そして現在、COVID―19のまん延によって、WTO自身が史上最低に落ち込むと予想するような事態を迎えている。

 自由貿易の何が問題なのか。推進側の思惑以上に進まないのはなぜか。

 グローバリゼーションとは、社会的あるいは経済的な関連が、国境や国家の役割をとことん消して繋がり、地球規模に拡大していくことだ。物品、食料、金融などの国境をこえたサプライ・チェーンをつくっていくわけだが、ひとたび金融危機が発生すると連鎖して世界中に被害が拡大するという弱点を持っている。今回の新型コロナの感染拡大でも同じことが起きた。

 米中貿易戦争を見ても、トランプ政権になって米国の方針が変わり、第二次世界大戦後の多国間主義は崩れ、一つの強国のやりたい放題を誰も止められないという問題が起きている。中国が2001年にWTO入りし、めきめきと経済力を伸ばし、米国と対峙するまでに台頭したことが背景にある。

 そして、途上国・新興国の産業構造が変化し、工業製品の輸出入が停滞する一方で、デジタル化や3Dプリンター、電子商取引、AI技術などのサービス貿易が増加した。もはや90年代とは産業構造そのものが変化しており、同じやり方が通用しない。

 そのなかでWTOが機能不全となり、ガバナンス(統治)が崩壊し、貿易も二国間の個別交渉へとシフトしていった。さらに交渉の範囲が広がり、先進国が要求するものは物品に止まらず、知的財産や投資、公共サービス、補助金などあらゆる分野が対象になり、相手国との間で交渉が難航している。また、民主主義に反する秘密主義、気候危機や食料主権、SDGsなどに対応できない。各国の国内政策の欠落などによって中間層が没落している。このような矛盾と限界が既に明らかになった貿易システムのうえに、COVID―19が発生した。

 40年来、世界は自由貿易を進めてきたが、COVID―19の感染拡大について考えると、このように猛威をふるう感染症が世界的に拡大する条件を40年掛けてつくってきたという皮肉がある。労働力、観光インバウンドなどを通じて人の移動が活発化し、グローバリゼーションによって公共サービスまで市場化した。イタリアでは緊縮財政で公的医療を縮小したことが、医療崩壊を起こす原因となった。環境破壊・都市化・工業型農業による生態系の破壊、野生生物(食用、違法なものを含む)の貿易など、いろいろな要素が感染拡大の条件を作り出している。核心の問題は、この構造を変えなければならないということだ。

 現在、政府は“GoTo”キャンペーンなど、COVID収束後のV字回復について論議しているが、量的な回復ではなく、持続可能で平等な回復へと質的に変わらなければならない。

89カ国が輸出規制措置 医療品や食料

 新型コロナ禍のなかで各国がどのような貿易措置をとっているか。

 グローバリゼーションは国境や国家の役割を縮小させたが、COVID―19の感染拡大を抑止するうえで、これほどまでに国家や国境措置の役割が重要になったことは特筆すべきことだ。40カ国が医療関連製品の輸出に何らかの制限を課し、150カ国以上が渡航制限をとった。

 輸入を見ると、一時的な輸入規制(6カ国)に対して、自由化措置(85カ国)をとる国も一定数ある。中国からの物品の輸入を禁止する一方で、どの国も医療用品がまったく足りない。マスク、防護服、シールド、人工呼吸器、消毒液、洗浄機、検査キットに至るまで、急速に高まった需要に供給が追いつかない。だから関税を撤廃したり、下げたりして、これらの医療品を自国に集めようとしている。

 輸出【地図参照】では、農産品を含むすべての産品について、輸出規制や禁止措置をとっている国は89カ国にのぼる。ほとんどは医療用品が対象だ。感染者が増えるなかで、どの国も自国で製造した医療用品を自国で確保したいと考えるのは当然といえば当然だ。食料危機に備えて農産物や食品の輸出制限も複数の国ではじまっている。トレードとしての「貿易」と、自国を守るための「防疫」は相対立するものになっている。

 WTOは貿易自由化を推進する枠組みだが、例外規定がある。WTOの「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」では、他の締結国の領域の産品の輸入や販売について「いかなる禁止又は制限も新設し、又は維持してはならない」とする一方で、「食糧その他の不可欠な産品の危機的な不足を防止する」「食糧安全保障に及ぼす影響」「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」については例外規定として認めている。医療や食料など国民の生命にかかわるものの輸出規制は許されている。

 ちなみに日本のマスクの自給率は現在20%だ。8割を海外からの輸入に依存している。2010年は37%だったが、2012年に突然使用量が増加し、そのほとんどを中国からの輸入に頼るようになった。今回の医療危機を教訓にするなら、マスクも国内メーカーを育てて緊急時に備えることが必要だ。

食料輸入依存の脆弱性  途上国並みの日本

 またCOVID―19は、グローバルなフード・システムの問題を映し出した。

 FAOの資料を見ると、穀物を大きく輸入に依存している国として、アフリカやエジプトと同レベルに日本がある。食料に関して非常に脆弱だ。一方、カナダ、アメリカ、ロシア、フランス、東南アジア、オーストラリア、アルゼンチンなどは穀物の輸出力が強く、二極化が進んでいる。

 現在、農産物や食品の輸出制限をしている国は、ロシア、カザフスタン、ウクライナ、セルビア、ベトナム、タイなどの穀倉地帯や農業国で、世界約20カ国にのぼる。とくに人口の多い国や地域は、自国の食料確保のために輸出を規制する。コメや小麦、卵など主食でその動きが顕著だ。

 「COVIDで死ぬか、さもなくば飢餓で死ぬか」――WFP(国連世界食糧計画)は、COVID―19の感染拡大は急性栄養不良に苦しむ人々の数をほぼ倍増させ、2020年末までに2億5000万人がその被害にあう可能性があると指摘している。

 グローバルな食料のサプライ・チェーンを守るために、FAOや先進国の首脳が声明を出しているが、自由貿易を加速させることが解決策というのは疑わしいといわざるを得ない。

自由化で崩される日本の食 鈴木宣弘氏が指摘

 つづいて東京大学教授の鈴木宣弘氏が「コロナ禍が炙り出す食の脆弱性と処方箋〜ショック・ドクトリンは許されない〜」と題して、日本の食料を巡る問題について講演した

【詳細内容は本紙既報】
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/16951

 鈴木氏は「日本の食料自給率はカロリーベースで37%。体のエネルギーの63%を外国に依存している。もはや日本人の体の六割は日本産ではないという状態だ。今回の新型コロナによって、輸出規制は簡単に起こり得るし、国民は命の危険にさらされるということがわかってきた」とのべ、WTO、FAO(国連食糧農業機関)、WHO(世界保健機関)が声明を出して輸出規制の抑制を呼びかけていることについて、「いざというときに自国民が飢える状態で食料を確保するのは国家の役割だ。それを非難することはできない」と、その矛盾を指摘した。

 「WTOなど三機関は同時に自由貿易をもっと進めろともいうが、なぜ輸出規制が増えているのかを考えるべきだ。それは自由貿易を進めた結果、食料を米国などの少数の輸出国に頼る市場構造ができたからだ。今回のようなショックが起きると価格が上がりやすく、そこには高値期待で投機マネーが入ってくる。さらに不安心理によって輸出規制が起こり、高くて買えないどころか、お金があっても買えなくなる可能性が高まる。これを是正するには、過度の貿易自由化を抑制し、各国が自給率を上げることを問わなければならないのに、まったく逆のことをいっている。人々が困っているときにつけ込んで規制を緩和し、一部の人間たちがもうける“ショック・ドクトリン”が進むことが危惧される」とのべた。

 また「食料だけでなく、医療でも米国は日本に対して米国型の民間保険の導入、営利病院の進出を追求している。米国では、今回、無保険で病院から拒否された人、高額の治療費が払えず、病院に行けない人が続出している。このような仕組みを強要されたら大変なことになることがコロナ危機で実感された」とのべた。

 食料自給の鍵を握る種子をめぐっても「種苗法改定で、種を独占し、それを買わないと生産・消費ができないようにしようとするグローバル種子企業が南米などで展開してきたのと同じ思惑で乗り込んでくる」と指摘し、それが「企業→米国政権→日本政権」という形の指令で日本の政治を操る「上の声」となっている可能性を指摘した。

 また、発がん性物質を含むホルモン剤エストロゲンを注入した米国産やオーストラリア産の肉牛が、輸入品への規制が緩い日本に大量に輸出される一方、米国内やEUではホルモン剤フリー(不使用)の牛肉が伸びている現状に触れ、「日本人が世界で最も遺伝子組み換え食品を食べているといわれる。国産シフトを早急に進めないと、自分の命が守れない。さらに輸入依存を強めて、今回のような危機になったら、お金を出しても、その危ない食料さえ手に入らなくなる可能性もある」と警鐘を鳴らした。

 対談では、はじめに内田氏が「先進国のフード・システムは、移民労働者に依存している。世界の農作業の25%を移民労働者が担っている。ヨーロッパの収穫期には、約60万人が北アフリカ、中央・東ヨーロッパの労働者によって担われ、そのほとんどが低賃金・長時間労働だ。このシステムがコロナ対策の移動制限によって麻痺している。これは外国人実習生に頼る日本の食料生産にも重なる問題であり、輸入食料品に頼っている私たちの食にも関係している」と提起し、米国の食肉処理工場でコロナ感染が爆発的に拡大・クラスター化し、サプライ・チェーンが崩壊している現状を報告した。

 「米国では、3月末に食肉加工場で最初の感染者が出てから、最大で700人規模の集団感染が起きている。その後、スミスフィールド・フーズ、タイソン・フーズ、JBS、カーギルなど、米国屈指の巨大食品加工企業で数千人の労働者の感染が明らかになり、各地の食肉処理工場が閉鎖した【図4参照】。従業員の多くはメキシコなど各国からの移民であり、狭い空間で数百人が長時間労働を強いられ、数百人が大皿で同時に食事をとる。劣悪な環境であり、感染の条件がすべて揃っている。工場閉鎖は全米の加工肉の量にも影響し、豚肉加工量が25%下がったというデータもある。労働者側は、安全が確保できるまでの工場封鎖を要求しているが、企業は生産性を重視するためすぐに再開する。いつまでも労働者は過酷な状態におかれ、防護服もなく、家族までも感染していくというすさまじい状況にある」。

 さらに「4月28日、トランプ政府は国防生産法を適用し、すべての食肉加工場の操業を続けろと命じた。労働者は命を犠牲にして、工業化した食を作らされ続ける。それがフード・サプライチェーンの末端の状況だ。これらの肉が、日米FTAによって豚や牛の関税が縮小された日本にどんどん入っている。メディアは“安い肉が入ってくるから消費者メリットがある”というが、安全性はもちろん、労働者を犠牲にしてしかできない食料がスーパーに並んでいる。テキサス州では、コロナに感染しながら仕事を続けて死亡した労働者の妻が工場閉鎖を訴えているが、企業側は応じていない。このようなフード・システムに依存することは、輸出元でも輸出先でも働く人々を犠牲にするものであり、持続性があるものとはいえない。公平・公正なフード・システムを地域からつくっていく必要がある。“独占された富と権力”から、“共有された繁栄”を目指さなければいけない」とのべた。

米ダコタ市にあるタイソンフーズの食肉加工場で働く労働者
 これに対して鈴木氏は「食品衛生面の心配もあるが、このように働く人を酷使することによって安くなっている商品は、環境規制を守らないことと同じであり、消費者にも“買わない”という意志表示が必要だ。労働者を人間扱いせず、食の安全性を無視しているから安いのだ。米国の食肉加工業界は非常に巨大化し、政治力も強い。まさに、今だけ、カネだけ、自分だけの世界で、農家からも肉牛を安く買い叩くので、米国内の農家も反発している。日本では、米国産輸入牛肉のBSE(狂牛病)規制の条件をすべて撤廃した。米国産牛は脊髄(危険部位)が除去されておらず、非常に危うい。そのような実態をきちんとクローズアップして対応することが必要だ」と指摘した。

両氏が対談  食料主権を守る政策を

 両氏は、日本の食をめぐって今後予測される動向について論議した。以下、概略を紹介する。

 内田 これまで日本は外側では自由貿易を推進し、国内には安い肉を流通させてきた。“国民が喜ぶだろう”という一方で、神戸牛など付加価値の高い牛肉は海外の富裕層向けに輸出したり、インバウンドでくる観光客向けに販売するという二極化が進んできた。それがコロナ危機で輸出やインバウンドが途絶え、高級肉の行き先がなくなっっている。

 鈴木 良質な国産の需要を支えているのが、高級レストランやインバウンドだったが、それは非常に限られた市場だった。今は在庫が積み上がっている。この状態を見直して、国民全体にそれなりにいいものを提供するという役割を果たしたうえで、輸出について考えるべきであり、どこをみて仕事をするのかを考え直す機会にしなければならない。

 内田 供給先を失った国内農産物について、日本政府は個人に消費を呼びかけているが、それでは足りない。韓国では、給食に有機農産物を使っている学校も多いが、これが休校でストップした。そこで自治体が農産物を買いとって、家庭にいる子どもたちに直接配る政策をやっている。日本でも国がもっと積極的に買いとって配るなどの措置をすべきだ。


 鈴木 諸外国では、生産者側にも消費者側にも還元されるように具体的にやっている。日本は呼びかけるだけで、それにともなう財政措置がない。危機のさいには機動的に財政出動する必要があるのに、出し渋っている。今回の補正予算も真水(政府の支出)がほとんどない。農業予算も、TPP対策や日米貿易協定の国内向け対策費に3000億円というが、農家が困っているときにその差額を補てんするところには100億円くらいしか行かない。手続きが煩雑なうえに、予算が分散化し、ダイレクトに役に立つものが出てこない。農水省に「予算を有効に」というと「うちではなく財務省が悪い」という。いろんな条件をつけて出さないようにしているのだ。結局、予算を使い勝手が悪いものにして戻ってくるようにしている。東北被災地の復興予算と同じだ。

 参加者の質問 食料自給率を上げることは一国主義に陥り、農産物を生産する途上国の経済に影響を与えないか?

 鈴木 日本だけは例外的に少ないが、先進国はかなりの予算をかけて食料の国産化を推進している。確かに途上国では、農産物の輸出で外貨収入の大部分を得ている国もある。そのような国の経済にはマイナス面があるだろうが、一方で、米国が関税を撤廃させて自国で食料をつくらなくなったハイチなどの国では、食料危機で飢饉による死者が出ている。カロリー(穀物)については、それぞれの国が自給する方が、途上国の食料安全保障にとっても必要なことだ。途上国の輸出農産物は、果物やコーヒー豆など付加価値の高い商品作物が多い。例えば東南アジアや南米原産のコーヒー豆などは、他国と競合することはない。むしろネスレなどのグローバル食品企業が買い叩くわけだ。途上国の経済を守るためには、こういうことにこそメスを入れる必要がある。

 内田 一番の食料難が懸念されるのは途上国だ。FAOも指摘しているが、そもそも圧倒的な貧困があり、水や医療が保障されず、今後はイナゴの大群や他の感染症の問題もあり、COVID対策だけをやっておれないというのが現状だろう。そのうえで輸入に依存しているという構造上の問題を解決しなければいけない。単純に先進国とは比較できないこともある。

 日本では現在、種の自家採取を禁止することを含む種苗法改定の国会審議が連休明けに迫っている。これがどのような問題を持ち、自給率にどのように関係するだろうか。

 鈴木 日本の野菜の自給率は80%といわれるが、種子の9割は外国の圃場で生産されている。種まで遡って考えると野菜の自給率は8%になってしまう。だが、種苗法改定によって公共種子や農民種子を企業の特許種子に置き換え、コメ、麦、大豆の種までもグローバル種子企業が握る可能性が出てくる。

 種苗法については、農水省自体は日本の種苗が海外で勝手に複製されることを抑止するという考え方でやっている。担当部局は誠意をもってやっているが、もっと上の方で別目的が動いている。

 種子法廃止とセットで、「試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進する」という農業協力強化支援法八条4項を定めて「公共の種」をなくして差し上げ、種苗法の改定で農家の自家採種を禁止し、種をグローバル種子企業から買わなければならないものにする。南米で吹き荒れた「モンサント法」とまったく同じ方向に動かされてしまっている。

 本来誰のものでもない種子を、一握りの育成者の「知的財産権」として登録し、その権利を独占させるものだ。「登録品種はわずかだから大丈夫」という議論もあるが、そこでもうけようとするグローバル種子企業は、在来種などの非登録品種を勝手に登録して自分たちのものにしていくインセンティブが働く。「登録品種であっても許諾を受けるなら使える」という論調もあるが、農研機構(農水省所管の独立行政法人)がもっていた権限をグローバル企業に渡しなさいといっているわけだから、農研機構も海外から人が入ってきて公的機関とはいえない状態になって行く。だから「大丈夫だ」という議論は成立しない。営利企業の恣意的な判断が動き、いろんな形で影響が出てくる。

 内田 なぜ今そこまで知財を強化するのかという合理的な説明がない。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の協議のなかでも、日本が育成者権という種の所有権を強化しようとしていることが警戒されている。アジアでの互恵的な関係をつくっていくうえでも、先進国が知財を強化することは受け入れられない。

 第1ラウンドを終えた日米貿易交渉(FTA)の第2ラウンドの行方も懸念される。1月に発効した協定は基本的には物品に限ったもので、農業の分野で譲歩をしているわけだが、さらに広い分野を対象にした交渉がおこなわれることが予想される。

 鈴木 「4カ月後に協議開始」の通りであれば、すでに始まるところだが、コロナ・ショックで延期になっている。トランプ大統領としては、大統領選前にとるべきものはとったという状態かもしれないが、米国全体としてはTPPでUSTR(米国通商代表部)が示した22項目すべてを狙っている。それぞれの企業が狙っている。農産物でも先送りになったコメや乳製品の枠など前回はやらなかったものが33品目残っている。

 食の安全基準でも、BSEでは米国に対して全面的に条件撤廃している。BSEの月齢制限だけでなく、発がん性が高い防カビ剤「イマザリル」も、日米レモン戦争(1975年に米国産輸入レモンから防カビ剤が多量に検出され、日本側が海洋投棄したことに米国側が激怒。自動車輸出を制限した事件)以後、日本はイマザリルを農薬ではなく「食品添加物」に分類して検査基準を緩和した。それでも米国は表示されることに怒り、食品添加物の表示義務そのものをやめさせろといっている。この安全基準も農薬や添加物についても項目が出てくるだろう。

 医療分野も心配だ。薬価が不当に釣り上げられ、一部の医薬品企業がジェネリック(後発医薬品)の権利を独占することが予想される。

 本丸は国民健康保険だ。医療・保険の企業チェーンが日本に進出するというのが米国の究極目標だ。どこまで進むのかを考えたときに、コロナ・ショックで米国の医療がどれだけたいへんな状況であったかが顕在化している。国民皆保険がないため、無保険者が多く、高額の医療費を支払えず、治療どころか検査も受けられないままたくさんの人が亡くなっている。日本もすでに国内医療が効率主義で苦しめられているが、これ以上、日米間でこれを進めては絶対にいけないという思いを強くしている。

 内田 また現在、COVID―19のワクチンや治療薬の開発をめぐり、世界の企業が争って研究開発をしている。これは必要なので開発が急がれることではあるが、これが企業特許となって、グローバル製薬会社が丸抱えし、高値で売りつける可能性がある。これにWTOのルールの下で強い保護が与えられたら、それにアクセスできる人や国は限られてくる。この世界的パンデミックに対して、開発国の権利は保護されるべきだが、薬があるのに手に入らずに死んでいくことが危惧される。エイズのときの二の舞になりかねない。とくに途上国に対しては特例的な措置をすべきだ。

 また、FTAなどの貿易協定に含まれるISDS条項(日本ではTPPのみに含まれる)は、投資国の法律改定などで利益が損なわれた場合に、外国企業や投資家が相手国政府を提訴できる制度だが、今回のCOVID感染対策として各国がおこなったロックダウンなどの緊急措置によって企業活動が制限されたとして、外国企業側がそれらの国を提訴することが予想される。欧州では、すでに損害賠償を求める準備を進めている企業もあるようだ。

 COVID下の各国の輸出制限に対する報復措置についても、WTOやRCEPではテレビ会議での交渉会合が予定されている。
 この動きが進めば、公衆の衛生を守るという権利さえも、私企業の利益のために歪められてしまう恐れがある。

https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/17054

4. 中川隆[-7314] koaQ7Jey 2021年2月16日 20:27:26 : 2Rqleo9YRc : OFhWL1kxNk5ZblU=[12] 報告
2021年2月16日
【室伏謙一】日本の農業の「植民地農業化」を進める菅政権
https://38news.jp/economy/17625


 2月13日土曜日の夜、東北地方を震源地とする大きな地震がありましたね。最大震度は6強で、マグニチュードは7.1。この地震により常磐道で法面が崩落したり、東北新幹線の架線柱が一部区間で折れたりする等のインフラに関する被害が発生しました。今年で東日本大震災から10年、あれだけ国土強靭化の必要性が説かれ、政府の重要政策の一つになったにも関わらず、掛け声倒れだったということが明らかになりました。別の言い方をすれば、言葉ばかりが踊っていて実を伴っていなかったということです。

 さて、そのインフラ、なにも土木構造物に限った話ではなく、我々の、国民の生活や生命に必要不可欠なものが含まれると言っていいでしょう。その一つが農業です。人間は食べ物を食べていかなければ生きていくことができません。しかも食うに困らないようにするためには、海外から買ってくるのではなく、自国で国民全員に食わせるのに十分な食料を生産する必要があります。このことは今回の新型コロナショックによる食料流通の寸断や、十数年前にあった旱魃による農産物生産国による輸出規制を想起すれば自ずと分かることでしょう。

 その我が国の農業に関し、菅総理大臣が施政方針演説の中でこんなことを述べていました。

「我が国の農産品はアジアを中心に諸外国で大変人気があり、我が国の農業には大きな可能性があります。昨年の農産品の輸出額は、新型コロナの影響にも関わらず、過去最高となった2019年に迫る水準となっています。
 2025年2兆円、2030年5兆円の目標を達成するため、世界に誇る牛肉やいちごをはじめ二十七の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地を支援いたします。農業に対する資金供給の仕組みも変えていきます。
 さらに、主食用米から高収益作物への転換、森林バンク、養殖の推進などにより、農林水産業を、地域をリードする成長産業とすべく、改革を進めます。美しく豊かな農山漁村を守ります。」

 いくつも指摘すべき点はありますが、ここでは重要なポイントを2つ指摘しておくと、まず、@我が国の農業を輸出中心に考えているということ、しかも目標額を定めたり、輸出用の重要品目を選定したりしていること。次に、A主食用米から高収益作物への転換を推進するとしていること。

 @の問題点は、輸出で儲かるから成長産業だとし、市場を国外に求めて、外需に頼る農業に作り替えようとしていること。農業はまずは国内需要を満たすことが必要で、輸出に回すのはそれを上回る部分です。実際、農産物の大輸出国は自給率は100%を超えています。しかしそれでも旱魃等により生産量が落ちることがあれば、輸出を禁止するか制限して、まずは自国民に食わせる分を最優先で確保しようとします。それが国家としては当然なのです。しかし菅政権は輸出を最優先にしようとしているのです。

 Aの問題点は、これも@と共通しますが、主食用の米の栽培を止めさせて、輸出用の高収益作物を作らせようということであり、外需依存の農業に作り替えるのみならず、国民に食わせること、内需を満たすことを後回しというより蔑ろにしようとしているということです。

 端的に言って、日本の農業破壊を進めようということであり、これは日本の農業の「植民地農業化」と言っていいでしょう。つまり、植民地人の食は蔑ろにされ、宗主国や輸出先の需要を満たす作物に特化して生産させることと同じということです。そして儲かるのは、貿易会社や食料会社とごく一部の農家、金融投機家だけで、国民の多くはひもじい思いをするか、海外からの安くて危険な農産物を食べざるを得ない状況に追い込まれることになるでしょう。

 農産物の輸出拡大、小泉政権から進められてきており、一瞬聞こえはいいですが、その実態はこのように恐ろしいことなのです。

 そして更に恐ろしいことに、この事実はほとんど報じられていませんし、問題として提起されることもほとんどありません。菅総理の施政方針演説をじっくり読んだ際に私は気づき、驚愕し、直ぐにFront Japan 桜等でこの話をするようにしました。(三橋経済塾の会員で、日本富民安全研究所の松本社長との対談動画でも解説しています。 https://www.youtube.com/watch?v=FBaz1ZC1CAk&t=3s

 しかし、まだまだ広まっていません。是非、この事実を拡散していただき、農家さんたちにも教えてあげて、反対の声を強めていきましょう。

https://38news.jp/economy/17625

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