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「ショック・ドクトリン」としての9月入学
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/879.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 08 日 23:32:40: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 監視社会 _ 危険人物に接触した人を追跡するシステムが導入されようとしている 投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 07 日 08:27:58)

2020年5月8日
「ショック・ドクトリン」としての9月入学
From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学
https://38news.jp/politics/15833


9月入学の議論が結構、登場してきましたね。
大阪の吉村洋文大阪府知事などが強く主張しているようです。

吉村知事ら推進派の主な論拠は、「9月まで休校にし、そこからあらためて新しい学年を始めた方が余裕をもって学習の遅れを取り戻せるし、地域間格差なども生じない」ということ、および「9月入学が欧米先進国では多い。グローバル・スタンダードであり、それに合わせるべきだ」ということのようです。

私は9月入学には反対です。9月入学への制度変更の主張って、これ、一種の「ショック・ドクトリン」ではないでしょうか。

「ショック・ドクトリン」は、カナダのジャーナリストのナオミ・クラインが同名の著書で描き出したものです。地震や津波、水害などの大災害や戦乱など多くの人々が混乱に陥っているときに、それに乗じ、混乱からの復興を装いつつ、新自由主義的な大規模な社会改造をどさくさ紛れに進めてしまうという新自由主義者がよく使う手法です。

https://www.iwanami.co.jp/book/b262196.html

今回の9月入学も、少し前によく議論されていた大学の秋入学と同様、国内外の経済界からよく出てくる要望です。9月入学になれば、米国などの学校に日本人の児童・生徒・学生が留学しやすくなります。(本当にそうなのかどうか私は疑問に思っていますが、少なくともそういう印象を一部の児童・生徒・学生やその親に与えることはできます)。
ですので、米国の大学業界や日米の教育産業(受験産業)、留学産業には、新たなビジネスチャンスが数多く生まれます。

吉村知事にそういう意図があるかどうかはわかりませんが、9月入学の議論には、今後、内外の教育産業、留学産業から強力な後押しがあるのではないでしょうか。

ですが、「国家100年の計」であるべき教育の問題に経済的利権が絡むと判断を誤り、ロクなことにならないのは、昨年、急遽中止された大学入試への英語民間試験導入の件で日本の教育関係者は身に染みてわかったはずです。同じような過ちを繰り返し、教育現場をさらに混乱させてしまうのは避けるべきでしょう。

そのほかにも、9月入学に反対の論拠はいくつもあります。

(1)コロナ禍で、教育現場はただでさえ混乱し仕事が山積している。ここで9月入学開始ということになれば(たとえ今年ではなく来年9月から正式に開始するとしても)、学校内の行事や制度から、各種法令の改正、会計年度と学校暦がずれることへの対処などに至るまで様々な事柄を変えなければならない。そのため膨大な事務作業が発生する。コロナで疲弊している教育現場の仕事をさらに大幅に増やすのは問題である。

(2)大規模な変革をする際は、各種の教育現場や業界、地域社会など多種多様な集団や団体の声に真摯に耳を傾け、慎重に意見を集約していかなければならない。(大学入試での英語民間試験導入はこれができていませんでした…)。コロナで混乱している現在では、そういう作業はいつにもまして行いにくい。今は大きな変革をする適切な時期ではない。

(3)コロナ禍の行方はまだわからない。約100年前のスペイン風邪のように、いったん収まったように見えたとしても秋や冬に第二波、第三波と再び感染が広がる恐れも否定できない。9月入学を進めれば、丸く収まるというものではない。

(4)多くの大学ですでに学期は始まっているし、青森や鳥取などではすでに一部の小中学校や高校でも学期を始めている。9月から一斉に再開というのはすでに現状に即さない。

(5)推進派の論拠である「教育の地域間格差の是正」は、9月入学にどのようにつながるかは不透明。9月入学により推進派の望む「教育のグローバル化」がさらに進むことになれば、学校教育への受験産業などの進出が進み、教育費が高騰する可能性が高い。かえって教育格差は大きく広がり、国が調整できる範囲を大きく超えてしまうのではないか。

また、これらに加えて、いやこれら以上に私が重要だと思う9月入学反対の論拠は、「9月入学が国民の絆を弱めてしまうのではないか」ということです。
今回のコロナ問題で明らかになったことの一つは、コロナ禍のような難局に対処するには、国民の結束や協調が何より重要だということです。

特に、日本ではそうではないでしょうか。中国のようにプライバシーに関する情報もすべて集めハイテクを用いて国民の行動を国家が監視・統制するという手は、日本では使えません。また、欧米諸国のように外出規制などを厳しい罰則で徹底するというわけにも、日本は行きません(法整備上も日本では難しいでしょうし、おそらく多くの国民がそうした厳しい統制を好まないでしょう)。

ですので、日本では特に、難局に対処するためには国民相互の絆が必要です。
国民相互の絆を形作っているものはいろいろあるでしょうが、特に「記憶や体験の共有」が挙げられます。

大きなところでは災害や戦争の記憶ですが、ほかにもお祭りや季節の行事、生活様式の共通性などから得られる記憶も重要です。

多様化した現代社会では、学校教育がもたらすさまざまな共通の経験や感覚から生じる記憶も大切です。

実際、最近、「東大王」など、学校で習う事柄を題材としたクイズやバラエティのテレビ番組が増え、人気もあるようです。これは、学校で習ったようなことであれば、日本の多くの人々が、世代を超えて持っている知識であり体験であるということに由来しているのだと思います。

ですので、学校教育の制度を大きく変えることは、変更以前と以後の世代間に大きな分断を生じさせてしまう恐れがあります。

よく「9月入学や秋入学がはじまったら、桜の下での入学式や卒業式がなくなってしまう」という意見、および、それに対する「情緒的な意見に過ぎない」という反論をしばしば耳にします。

私は、9月入学になったら桜がない卒業式や入学式になってしまうというのは「情緒的だ」という具合に簡単に片づけられない重要な問題だと思います。現代日本では「桜と卒業式や入学式」という結びつきは、世代を超えた国民を結び付ける記憶の絆、イメージの絆だからです。

例えば、卒業を題材にしたこれまでの多くの音楽や小説、映画なども、9月入学が決まれば、その後の世代はあまり楽しめなくなる可能性も出てきます。

9月入学になってしまえば、卒業式や入学式だけではなく、各種の学校行事や部活動、受験などの記憶もこれまでとは異なるものになってしまうでしょう。

例えば、甲子園の高校野球も様変わりします。3年生が参加できなくなるので「夏の甲子園」の盛り上がりはなくなるでしょう。甲子園を題材とした多数の小説や映画、マンガなども新しい世代には親しみが感じられないものとなってしまいます。

国民の絆は、こういう一見、些細な事柄、日常の事柄の積み重ねでできています。9月入学は、そうした絆の弱体化を招くことにつながる恐れが大きいのではないでしょうか。

今回のコロナ禍がいつまで続くか、まだよくわかりません。第二、第三の波がくる恐れは否定できません。国民の一体となった対処は、今後もますます求められるはずです。

コロナが幸いにして鎮静化するとしても、同様の感染症、災害、国際紛争の高まりなど日本が今後も、さまざまな難局を経験することは間違いありません。

「国民の絆」はどのようにできているか、それはいかに大切であるか、それを強く保っていくためには何が必要か。政治や経済を論じるときに、こうした観点は非常に重要です。今回、9月入学を議論するとしても、大いに考慮すべき事柄なのです。

https://38news.jp/politics/15833  

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コメント
1. 中川隆[-12711] koaQ7Jey 2020年5月11日 13:15:54 : ZFPKQ6yhyA : VnB4VFpVWUR4ZEE=[7] 報告
9月入学に日本教育学会「問題多い」 吉村知事らを批判

朝日新聞社 2020/05/11

 新型コロナウイルスの感染拡大による休校が長引く中、政府が検討を始めた「9月入学・始業」について、3千人近い研究者らでつくる日本教育学会(広田照幸会長)は11日、「時間をかけた丁寧な社会的論議が必要であると考え、政府に対して拙速な導入を決定しないよう求める」との声明を発表した。22日に論点・問題点を整理した提言書を発表するという。

 声明では、9月入学論が浮上した背景に、休校による学習の遅れや行事の削減への子どもや教師らの不安があるとして、「こうした声や心配には真摯(しんし)に耳を傾ける」ことが必要とした。

 その上で、仮に今年9月から導入すると▽来年度の義務教育開始(小学校入学)年齢が最高で7歳5カ月と世界でも異例の高年齢になる▽4〜8月までの学費は誰が負担するか▽企業の採用時期とのずれなど多くの問題が生じると指摘。「『コロナウイルス禍で生じている問題』」の解決策として性急に実施することに問題があると主張した。

 4月末に東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事らが「グローバルスタンダード」などを理由に導入を強く主張し、安倍晋三首相も「前広に検討」と発言したことについて、同学会の広田会長は「はっきり言って、教育の制度も実態もあまりご存じない方がメリットだけを注目して議論されている」と厳しく批判した。(宮崎亮)

2. 中川隆[-12688] koaQ7Jey 2020年5月14日 20:46:52 : GrdHVrkjxE : N1ZMb0QuOWt4R2s=[2] 報告
「9月入学推進派の3つの大罪」コロナを利用したメディアの悪徳商法


3. 2020年7月12日 10:45:27 : 9xC4spK28g : OFNOTTJva0VYdVk=[4] 報告
消えた「9月入学」論争 グローバリズムに振り回される賛成派の浅はかさ
週刊新潮 2020年7月9日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/07120603/?all=1



 コロナ禍で急に盛り上がり、一気に萎んだのが「9月入学」の議論である。あの騒ぎは一体何だったのか。背景に透けて見える、浅はかな企み。

 ***

速報コロナに隠れた「富士山噴火」驚愕シミュレーション 首都圏に予測不能の大被害

「ショック・ドクトリン」という言葉がある。戦争や災害といった混乱状態のドサクサに紛れて、新自由主義的な“改革”を推し進めようとする手法だが、

「今回の『9月入学』を勧める声は、まさにその典型だったと思います」

 と評するのは、九州大学大学院の施光恒(せてるひさ)教授である。

「これは、もともとカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインが同名の書籍で示したもの。『賛成派』もコロナ禍に乗じてちゃっかりと進めようと思ったのでしょうが、逆に人々も外出自粛などで考える時間があった。冷静な判断が下された、と思います」

 ごり押しされそうになっていた「9月入学」の声が止まったのは、現場からの反対意見が相次いだことが大きい。実際、コロナ禍で混乱の渦中にある教育現場に今、更なる課題を持ち込めば、より疲弊するのは目に見えている。

「大規模な変革をする際には、現場やさまざまな団体の声に真摯に耳を傾け、慎重に意見を集約しなければならない。『国家百年の計』と言われる教育についてなら尚更ですが、コロナ禍でそんなことはできるはずがない。政府は、これも短慮で失敗した昨年の英語入試改革の教訓を、何も生かしていなかった気がしますね」

世界の流れは…
 そもそも、「9月入学」とは誰が望んでいるのか。

「財界でしょう。彼らが叫ぶ論理は『グローバル化』です。“世界に合わせた方が効率的だ”と。しかし現在のグローバル化の実態とは、各国それぞれの違いを無視し、制度やルール、言語、文化まで画一化しようとしているだけの『多国籍企業中心主義化』に他なりません」

 そして、そもそも今回のコロナ禍で問われたことは、その「グローバリズム」そのものの是非ではなかったのか、と言う。

「グローバル化に伴う人や物の移動がパンデミックを誘発して被害を拡大させ、イタリアなど合理主義を追求して人員削減を行っていた国の病院で『医療崩壊』が起こった。むしろ今の世界の流れは“過度なグローバル化や合理主義は見直すべきではないか”というもの。『9月入学』賛成派は、グローバル化を謳いながらグローバルの流れをちっともわかっていない。あまりにみっともなく、情けないことだと思います」

 そもそも、経済的利益がすべてに優先されるべきだという考えそのものが、一つのドグマである。

「導入された明治時代から100年が経ち、『4月に新しい生活をスタートさせる』ということは、もはや世代を超えた日本人のひとつの共通感覚、言わば、土地に根差した風土ともなっている。経済的な効率だけを理由に一刀両断に切り捨てるべきものではありません」

 続けて言う。

「“そんな情緒的で感情的なものに意味があるのか”という反論もありますが、今回、日本でコロナの感染爆発を防ぐことができたのはなぜか。中国のようにプライバシーを無視し、国民をデジタルで監視・統制することもせず、罰則を設けて行動を制限することもできない国がコロナに対応できたのは、国民の世代を超えた、自発的でゆるやかな“まとまり”があったゆえではないのでしょうか」

 金がすべてに優先される、というのは浅慮の最たるもの。「9月入学」にそれ以外の依るべき価値観がないとしたら、そんな教育制度で学ぶ生徒こそ不幸である。

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