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世界的インフレは株価暴落を引き起こす 2022年株式市場見通し
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/1325.html
投稿者 中川隆 日時 2021 年 11 月 24 日 09:46:28: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 株式投資の方法 投稿者 中川隆 日時 2020 年 12 月 12 日 10:52:08)

世界的インフレは株価暴落を引き起こす 2022年株式市場見通し
2021年11月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17503


そろそろ2022年の株式市場について予想を立てる時期だろうと思う。これまでも断片的には書いてきたが、この記事で一度纏めておきたい。結論から言えば、それは物価高騰から株価暴落までの過程である。

遂に来たインフレ

テーマはインフレである。物価高騰はアメリカが大規模な現金給付を行うと発表した頃から懸念され、筆者を含む一部のファンドマネージャーらが警告していたが、リーマンショックを予想したジョージ・ソロス氏の警告が無視されたように、これらの警告は無視された。

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判 (2020/3/29)
しかしその後、金融市場では金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ銘柄が高騰した。インフレはまず金融市場で先に織り込まれるからである。主要なコモディティの中で一番上がったのは銅だろう。


そして現金給付によるコモディティ高騰に追い打ちをかけたのがリベラル派の人々が社会全体に強要した脱炭素政策である。

彼らが化石燃料の供給を無理矢理抑え込んだので、化石燃料が高騰しているのである。天然ガスの高騰は脱炭素を強行したヨーロッパで特に酷く、裕福なリベラル派の政治的な遊びのせいで貧困層は暖房なしの冬を迎えようとしている。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
フランス、インフレ対策で現金給付へ
こうした状況は徐々に日用品全般に波及し始めた。原油価格高騰は化学繊維やプラスチック製品の価格に影響を与える。こうしてインフレは社会全体の現象となったのである。金融家には去年から分かりきっていたことに、一般人や政治家や中央銀行家などの素人たちは今更慌て始めているということになる。

10月の米インフレは年率12%近い高騰、来年は物資不足か
ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ
インフレの株式市場への影響

現金給付と脱炭素の悪影響がインフレだけだったならばまだ良かっただろう。貧しい人たちが飢えたり凍えたりするだけで、リフレ派の人々からすれば「インフレは問題ない」ということになるのだろう。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
しかしわれわれはまだインフレの株式市場への影響を議論していない。

株式市場はどうなるだろうか? 注目されるのは中央銀行の動きである。

「インフレは一時的」であると長らく主張(この時点で矛盾ではないか?)していたFed(連邦準備制度)だが、緩和を止めたくないパウエル議長を無視して他のメンバーがテーパリング(量的緩和縮小)の開始を押し切った。

Fedは更にパウエル氏を置き去りにしながらテーパリングを加速しようとしており、その後には当然利上げが控えている。

アメリカ、テーパリング加速を示唆 株価暴落に向けて加速へ
こうして中央銀行は金融引き締めを余儀なくされている。アメリカ経済は決して良い状態ではないが、物価上昇を抑えるために金利を上げざるを得ない。

第3四半期のアメリカGDPは大幅減速、スタグフレーションへ秒読み
これは2018年の世界同時株安と似た状況である。当時の株価チャートを掲載しよう。


当時、パウエル議長は金融引き締めを強行し、株価が暴落を始めた後も株価の下落は自分のせいではないと言い張っていた。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
中央銀行の言うことはほとんど常に間違っている。

今回も同じように金融引き締めがある水準まで強くなると株価が下落を始めるだろう。しかし2018年とは違うことが1つある。それはインフレである。

インフレにおける金融政策

2018年の世界同時株安が最終的に収まったのは、株安の原因が金融引き締めであり、最後の最後にパウエル議長が金融引き締めを撤回したことで、株安の原因が取り除かれたからである。

しかし今回、中央銀行は自分の意志で引き締めようとしているのではなく、物価が高騰しているから引き締めを強いられているのである。したがって引き締めを途中で止めることは出来るかもしれないが、そうすると今度は物価高騰が止まらなくなるのである。

ということで、中央銀行は引き締めを続けて株価を暴落させるか、引き締めを止めて誰も日用品を買えなくなるか、どちらかを選ばなければならなくなる。インフレへの対策を迫られれば、株価が下落していても金融引き締めを止められない状態に陥るだろう。株価はどうなるだろうか。

インフレにおける株式市場

アメリカが前にこの状況に陥ったのは1970年代のことである。ニクソンショックに始まる紙幣印刷(それはいつも紙幣印刷である)によってインフレが止まらなくなり、中央銀行はやむを得ず厳しい金融引き締めを強いられた。

レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
株価はどう反応しただろうか? 株価は1971年8月のニクソンショックを受けて上昇した。読者もよく知っているように、紙幣印刷は短期的には株価の上昇要因である。しかしその後1973年に入ると物価上昇が止まらないということに人々が気付き始める。当時のインフレ率のチャートを掲載しよう。


この物価の高騰(10%を超えているが、これは当時インフレの始まりに過ぎなかった)を受けて中央銀行は金融引き締めを余儀なくされた。ドルの切り下げから金融引き締めへの転換である。

そして株価はどうなったか? 同じ期間の米国株のチャートを掲載しよう。


半値以上の暴落となっているが、ちなみにこれは当然ながらドルで表記された株価そのままなので、インフレによってドルの価値が年10%下落していることを考えれば、投資家の実質的損失はこれ以上に大きなものであることは言うまでもない。

例えば日本の投資家が為替ヘッジをせずに米国株を保有していれば、株安とドル安のダブルパンチを食らうということである。

世界最大のヘッジファンド: ドルが下落したらアメリカは終わり
結論

長くなったが、これが長らく人々が楽しんだリフレ政策の末路である。インフレが止まらなくなっている現在の状況と1970年代の類似は甚だしく、同じように金融引き締めを強いられ、同じように株価は暴落してゆくだろう。

反論としては「インフレは収まるかもしれない」というものもあるかもしれない。そうしたことについては既に記事を書いているのでそちらを参考にしてほしい。

サマーズ氏: パウエル議長は間違っている
投資家にとって一番大きな問題は、厳密にいつ暴落が始まるかということである。これについても詳しく書きたいが、すでに長くなってしまったので別の記事を書くこととする。しかし大枠に関しては多くの著名投資家は筆者と同じ意見だろう。彼らはすでに撤退を始めている。

ジョージ・ソロス氏、インフレトレードを継続 ハイテク株は一部利益確定
ドラッケンミラー氏、やはりインフレ懸念でハイテク株を利益確定


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17503  

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コメント
1. 2021年11月25日 12:51:42 : sEqKPZ8ybM : aXRwS3RoVDZsdzY=[15] 報告
世界的インフレで株価暴落が起きるのはいつか
2021年11月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17570


前回の記事ではインフレを懸念した来年の金融引き締めが2018年や1970年代と同じ種類の株価下落を引き起こすということを説明した。

世界的インフレは株価暴落を引き起こす 2022年株式市場見通し


今回の記事ではその時期が具体的にいつなのかを考えてみたい。

止まらないアメリカのインフレ

前回の話はインフレを抑制するために中央銀行が金融引き締めを強いられ、株価が暴落するという話だったので、まずはインフレの状況を確認したい。これがアメリカの最新のインフレ率(前月比年率)である。

10月の米インフレは年率12%近い高騰、来年は物資不足か

インフレ率は前月比年率で11.9%となっており、これは前月からの上昇が1年続いたと仮定した場合の数字だが、単に昨年10月から1年間の物価上昇を見た場合も6.2%とかなり高い数字になっている。その余波はすでに日本にも来ており、ガソリン価格などで実感している読者も多いだろう。

このインフレ率は今後どうなるだろうか。考えなければならないのは、この数字は金融市場における燃料価格上昇をフルには織り込んでいないということである。原油価格のチャートを見てみよう。


原油価格は脱炭素な人々が化石燃料の産出を減らしたために上がり続けている。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
そして金融市場における価格が日用品に反映されるまでに数ヶ月のラグがあるということを忘れてはならない。つまり、10月のインフレ率は10月の原油価格上昇分をまったく織り込んでいないのである。

そしてそれはアメリカにおける住宅高騰も全然まだ織り込んでいない。以下はインフレ率のうち住宅価格上昇分を反映するはずの要素のチャートなのだが、既に2桁パーセントの上昇を見せているアメリカの住宅価格を何故か全然織り込んでいないのである。


アメリカの住宅価格の上昇は絶対に5%では済んでいない。これは債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏や経済学者のラリー・サマーズ氏らが指摘していた。

インフレで金融引き締め

これらの要素がこれから織り込まれることを考えれば、1年間で6.2%という現在のアメリカのインフレ率がまだまだ始まりでしかないということが分かる。そもそもインフレの原因である脱炭素政策は明らかに短期要因ではない。

では中央銀行の対応はどうだろうか? アメリカでは現在テーパリング(量的緩和縮小)が行われており、量的緩和は現在の予定では6月末に終了するとされているが、このペースは一部の当局者によって加速が提案されている。

アメリカ、テーパリング加速を示唆 株価暴落に向けて加速へ
パウエル議長は反対するかもしれないが、元々テーパリングも他のメンバーに押し切られて開始したことである。インフレがかなり高い水準に来ていることを考えると、テーパリング加速についても押し切られ、量的緩和は春頃には終了するのではないか。

そうなれば次の段階は利上げとなる。金利先物市場は来年末までに3回の利上げを織り込んでいるが、これは多いだろうか? 少ないだろうか?

基準になるのは金融引き締めで株価が暴落した2018年の事例である。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
この時、アメリカの政策金利は9回の利上げを経て、耐えきれなくなった株式市場は崩壊した。以下は当時の政策金利のチャートである。


今回も株式市場は9回の利上げに耐えられるだろうか? ここでレイ・ダリオ氏の言葉を思い出したい。

世界最大のヘッジファンド: アメリカはテーパリング後に量的緩和を再開する
中央銀行はテーパリングを行おうとしているが、1980年以降、金利の引き締めは常に1つ前の引き締めよりも規模の小さいものとなっている。金利の天井は常に1つ前の天井より低くなり、そして金利はゼロになった。その後量的緩和を行うようになったが、量的緩和は常に1つ前の量的緩和より大きくなっている。

中央銀行はどんどん金融引き締めが出来なくなっている。量的緩和によって増えた借金が経済にのしかかっているから当たり前なのだが、それで更に緩和をするから状況がどんどん悪くなる。

新型コロナで借金が実体経済に影響を与える仕組みを分かりやすく説明する
ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶
2018年の時にアメリカ経済が9回の利上げに耐えられたのは、利上げの開始が親ビジネス的なトランプ政権の経済政策と重なったからである。一方で今回はアメリカ経済は既に死にかけている。

第3四半期のアメリカGDPは大幅減速、スタグフレーションへ秒読み
この状況を考えると、恐らく5回程度の利上げでもかなり難しいのではないか。一方、現在3回織り込まれている2022年の利上げは、インフレがここから更に加速すれば5回や6回の織り込みに比較的すぐ変わるだろう。

結論

したがって金利だけを考えれば、利上げに耐えられずに株式市場が崩壊するタイミングは来年後半と考えられそうである。

しかし世界経済にはここまでの考察でまだ一切考えていない時限爆弾が存在することを読者は覚えているだろうか? 恒大集団を筆頭とする中国の不動産バブル崩壊である。

サマーズ氏: 中国恒大集団のデフォルト危機は日本のバブル崩壊と同じで極めて深刻
恒大集団は今のところ子会社や創業者の個人資産を切り売りしながら利払いは行なっているが、来年前半には利払いではなく元本を返済しなければならない償還がある。

また、中国の不動産市場の崩壊は恒大集団のデフォルトとは別に着々と進んでおり、一部の地域では駐車場の価格が「白菜並み」になっているという現地の報道もある。中国的な面白い表現ではないか。

よってアメリカ経済だけを考えれば株価の崩壊は来年後半になりそうだが、中国の不動産バブル崩壊の進捗によってはそれがある程度早まることもありそうだというのが結論である。

こうした状況における筆者の投資方針については既に記事を書いているので、そちらを参考にしてもらいたい。2018年の時もそうだったが、ここでは事前に記事を書いているのである。

恒大集団倒産と中国不動産バブル崩壊で空売りすべき銘柄リスト
長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想
ヨーロッパのインフレ悪化でユーロ下落、スイスフラン上昇


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17570

2. 2021年11月27日 10:06:54 : hdSO61JJFU : amRXTUs4ZG00RnM=[20] 報告
インフレで株価暴落の兆候はどこに出るか
2021年11月26日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17624

ここでは昨年から記事にし続けていることだが、アメリカでは消費者の間でもインフレが止まらないということが共通認識となってきたようだ。

投資家として気になるのはそれが株価にどう影響するかだろう。アメリカの株式市場が下落すれば日本株も下落するので、アメリカの問題も日本の投資家にとっては大問題なのである。

上昇続ける米国株

インフレが止まらなければ、中央銀行は金融引き締めをせざるを得ない。それはいずれ株価暴落を引き起こす。それがここまでの話である。

世界的インフレは株価暴落を引き起こす 2022年株式市場見通し
しかし米国株は、インフレが問題になりながらも史上最高値付近で推移している。以下は主要株価指数のS&P 500のチャートである。


ここの読者ならば周知のことだろうが、暴落が起きる時には先ず周辺のリスク資産から下落し、米国株の主要株価指数は最後まで下落しないことが多い。今回も同じだとは限らないが、今のところ米国株は上昇を続けている。

よって世界的な株安の兆候が出るとすれば、それはS&P 500ではなく他のチャートである可能性が高い。

実際、前回アメリカの金融引き締めによって引き起こされた2018年の世界同時株安では、リスク資産が順番に下落を開始してゆく様子を逐次ここでお伝えしたが、最初に落ちたのは、株式市場の中でも高リスク資産とされる新興国株だった。

リスクオフになれば高リスク資産から下落してゆき、安全資産(と見なされているもの)は最後まで落ちないのである。しかし今回の場合、残念ながら前回指標になった中国株は恒大集団のデフォルト危機で元々下落している。以下は香港のハンセン指数のチャートである。


これをアメリカのインフレおよび金融引き締めと同じ問題と見なして良いかどうかは微妙である。

よって今回は、中国株の次に下落したもの、米国以外の先進国(日本やヨーロッパ)の株式や、米国の主要株価指数以外の小型株指数などを炭鉱のカナリア(炭鉱に毒ガスが充満し始めると人間より先に死んで毒の存在を教えてくれるもの)として使うのが良いだろう。

炭鉱のカナリアの現状

物価高騰からの金融引き締めによる株価暴落の時期については、以下の記事で利上げがいつ株価の耐えられない水準に達するかという観点から、2022年後半と予想した。

世界的インフレで株価暴落が起きるのはいつか
しかし一方で中国の恒大集団の危機などアメリカ以外の要因によっては早まる可能性があるとした。

その他に考えなければならないのが、炭鉱のカナリアがどうなるかである。この3つの指標を頼りに株式市場の状況を見ていけば、暴落のタイミングをある程度は掴めるはずである。

では炭鉱のカナリアは今どうなっているだろうか? 以下はドイツの株価指数DAXのチャートである。


なかなか悪くないが、アメリカのS&P 500に比べると頭打ちしている感がある。

しかもユーロ圏ではインフレにもかかわらずECB(欧州中央銀行)が緩和を続けると宣言しており、ラガルド総裁が「マダム・インフレーション」と揶揄される状況に陥っており、株価は下落していないがユーロは下落している。物価高騰時に緩和をすれば当たり前である。

ヨーロッパのインフレ悪化でユーロ下落、スイスフラン上昇
フランス、インフレ対策で現金給付へ
ということでヨーロッパの状況はそれほど良くはない。

次の炭鉱のカナリアは日本だろう。日経平均のチャートは次のようになっている。


年初めから横ばいが続いており、下落トレンドに入れば炭鉱のカナリアの調子が悪くなってきたということだ。

最後にアメリカの小型株指数、Russell 2000を取り上げよう。この指数は2018年の世界同時株安では最後の砦となり、この砦が陥落した次の瞬間から世界の株式市場は暴落へと突入していった。当時、この指数の下落について以下のように書いたことを覚えているだろうか。

遂に米国株にも減速の兆し (2018/10/8)
筆者は、これを弱気相場が遂に米国市場に到達した証拠であると見ている。

そして実際にそうなった。当時、世界同時株安を教えてくれたRussell 2000は今どうなっているだろうか? チャートは次のようになっている。


S&P 500が上昇する中で横ばいとなっている。微妙に怪しい。

結論

これらの指数が下落トレンドに入り始めた時、暴落のタイミングがいよいよ来たと考えるべきだろう。

日本株を炭鉱のカナリアにしてしまっては日本株に投資している日本の投資家には参考にならないではないかという声も聞こえてきそうだが、これから世界同時株安がいつ起こるかというタイミングで炭鉱のカナリアになりうる資産クラスを保有すること自体全然お勧めできない。

筆者は株を持ってはいるが、ほとんどがコモディティ関連株であり、普通の株は既に僅かである。それに加えて中国の不動産バブル崩壊と、米国債のトレードの2つを軸にしている。

恒大集団倒産と中国不動産バブル崩壊で空売りすべき銘柄リスト
長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想
ということで、著名投資家が徐々に撤退を始めているのも理解できることだろう。あとはタイミングの問題である。

ジョージ・ソロス氏、インフレトレードを継続 ハイテク株は一部利益確定
ドラッケンミラー氏、やはりインフレ懸念でハイテク株を利益確定


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17624

3. 2021年11月29日 04:28:21 : BUydzCKMAI : VG1mMEdiT1NFTjY=[3] 報告
日米株価「12月の大調整」に要警戒。ついにインフレ抑制へと踏み出すパウエルFRB=藤井まり子
2021年11月22日
https://www.mag2.com/p/money/1126350


米国でインフレが止まりません。10月消費者物価指数は30年ぶりの高い数値となりました。中銀はこのインフレを「一時的」と言っていますが、むしろ「加速」しているのではないでしょうか? 12月のFOMCでは、パウエル議長がインフレ抑制策を出すと思われます。この時、そこそこ大きな調整が訪れそうです。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

インフレに火が付いたアメリカ
とうとう、アメリカでは高インフレが火を噴き始めました。

11日発表の「10月の消費者物価指数(CPI)」は、総合では前年比6.2%、コアでは前年比4.6%。市場予想を上回って、大きく上昇です。なんとなんと30年ぶりの高さ。さらに、前月比の総合CPIは0.9%もの高さ。

総合は、年率になおすと「二桁の伸び」。さらにさらに、5日発表の「アメリカの10月の雇用統計」では、平均賃金の上昇率は4.9%もの高さ。

賃金とインフレのスパイラル的上昇は、もうすでに始まっている模様です。

「高めのインフレは一時的」どころか、「高めのインフレは加速している」のです。そして、このインフレは放っておくと「長く続くしつこいもの」になりそうなのです。

これでは、もう「高めのインフレは一時的」とか「市場のインフレ懸念は行き過ぎ」とかを、中銀たちが悠長に大合唱している場合ではありません。

バイデン支持率急降下、インフレ抑制策を取るしかない?
バイデン大統領の支持率はここのところ40%へと急落しています。

インフレをなんとかしなければ、来年の中間選挙では民主党は大敗してしまいそうです。政治面からも、パウエルFRB議長はインフレ抑制政策へ動かざるを得なくなってきています。

12月14〜15日のFOMCでは、パウエルFRB議長は「インフレ抑制」へと動くことでしょう(この時、そこそこ大きな調整が訪れそうです)。

債権市場は乱高下、信用を失った中銀
さて、今の債券市場は、「口裏合わせの大合唱」までするようになった中銀たちをまったく信用していません。

国債市場では、ヘッジファンドたちが集まって「インフレ自警団のようなもの」が結成されているような気配さえあります。

今の国債市場は乱高下が激しくて、普通のトレーダーたちは近寄れなくなっていて「極端な薄商い」に陥っているのです。「極端な薄商い」の中では、ちょっとした衝撃でも金利はさらに大きく乱高下しやすくなります。

12月FOMCでは、パウエルFRBは、「インフレ自警団のようなもの」に追い詰められるかのように「テーパリングの加速」と「利上げ見通しの前倒し」を発表してくることでしょう。

この日、FRBがインフレ抑止に動けば、長期金利は急騰して、アメリカ株はそこそこ大きな調整へ向かう可能性があります(もし仮に、この日FRBがインフレ抑止に動かなければ、市場のインフレ懸念はますます高まり、長期金利は暴騰、株価は大暴騰の末に大暴落となる懸念もあります)。

「S&P500」は12月FOMC後に暴落する?
ザックリ目安として、S&P500は、2021年11月末日には4,700ポイントを目指す…つまり、もう横ばいで進むと見ています。

12月末日に向けても、S&P500は、12月FOMCまでは4,800ポイントを目指すのではないでしょうか。その後、4,300ポイントあたりまで調整するのでは?と考えています。

ただし、その後の2022年末には、5,100〜5,200ポイントを目指すと見ています。

4. 中川隆[-15048] koaQ7Jey 2021年11月29日 05:13:49 : BUydzCKMAI : VG1mMEdiT1NFTjY=[4] 報告

ジム・ロジャーズ氏: コモディティが物価高騰から守ってくれる
2021年11月27日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17648


ジョージ・ソロス氏とともにQuantum Fundを立ち上げたジム・ロジャーズ氏がThe Economic Timesのインタビューで物価高騰について語っている。

紙幣印刷がもたらしたインフレ

ロジャーズ氏を含め、著名投資家はほとんど全員が金融緩和に反対だった。

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判
ドラッケンミラー氏: 金融緩和こそがデフレの元凶


彼らは筋金入りの資本主義者であり、紙幣印刷から利益を得ることが出来、実際筆者も含めてそうしたのだが、投資家にとって金銭は大した問題ではない。彼らは既にそれを十分持っているからである。

インフレを続ければまずは金融資産、次にエネルギー資源や農作物などのコモディティ、そして最後に日用品の価格が高騰し、社会に酷い混乱をもたらす。一番被害を受けるのは金融市場を使ってインフレから身を守る術を知らない普通の人々である。

それが分かっていたから筆者も含め金融家は中央銀行を痛烈に批判していたのだが、面白いことに量的緩和を支持したのは株式などほとんど持っていない、金融資産ではなく給与所得に依存する普通の人々だった。自民党が過半数を維持した件も含め、彼らはどうやれば政治家を利するために自分を害することが出来るかを本当によく知っている。見事なものである。

こうした人々が現金給付も支持した。そして当たり前のように物価が上昇している。日本では今はガソリン価格ぐらいだが、来年にはスーパーの日用品から電力価格まであらゆるものが上がっているだろう。

ポール・チューダー・ジョーンズ氏: インフレはどんどん酷くなる
中央銀行の問題

インフレは紙幣印刷する政権に投票した人々の自業自得である一方で、政治家や中央銀行の問題でもある。ロジャーズ氏は次のように述べている。

中央銀行家が自分のやっていることを理解していると信じてはならない。世界中どこでも彼らは紙幣を印刷し、資産の買い入れを行なっている。歴史を通してこれがインフレに繋がらなかったことはない。

リーマンショックから十数年、リフレ派の人々は紙幣印刷しても物価高騰や通貨暴落は起きないと言っていたが、事実アメリカではインフレになり、ヨーロッパではユーロの下落が始まっている。

10月の米インフレは年率12%近い高騰、来年は物資不足か
ヨーロッパのインフレ悪化でユーロ下落、スイスフラン上昇
ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁はいまだにインフレは一時的で緩和を緩める必要はないと言い張っているが、金融市場はそれを無視してユーロを下落させている。一方で比較的浪費をしない先進国スイスは勝者となるだろう。

紙幣印刷によってインフレは発生した。単に国の経済が大きいために、人々が困窮するレベルのインフレにまで発展するのに時間が掛かっただけの話なのである。大きいものは少しずつしか動かない。しかし動き始めれば止まることもないのである。リフレ派の人々は巨石を転がしてしまった。

大英帝国のポンドやオランダ海洋帝国のギルダーが紙幣印刷で基軸通貨地位を失うまでにどれだけの膨大な時間が掛かったかを考えれば、リーマンショックからの十数年のあいだインフレなしに紙幣印刷を続けられたことなどインフレ発生までの短期的なラグに過ぎなかったのだと、人々は物価高騰が本当に酷くなってから気付くだろう。

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨


インフレから身を守る方法

ロジャーズ氏は次のように続ける。

現在、中央銀行は「インフレは来ない」「インフレは長期化しない」と主張し続けているが、彼らは単に自分がやっていることを理解していないだけだ。インフレはどんどん酷くなる。

アメリカでは一般の人々もインフレを懸念し始めている。これまでは金融市場で懸念されていただけだったインフレに、一般の人々のパニックが加わるようになるわけである。

インフレから身を守るためには何が出来るだろうか? 金属や農作物などのコモディティについて書籍も出しているロジャーズ氏の答えは次のようなものである。

シルバーやゴールドのようなものはいつもインフレから人々を守ってきた。他のコモディティも同じことができる。

ロジャーズ氏が以前から推してきたのは農作物である。例えばこれから物価高騰が酷くなるとすれば、とうもろこしの価格はこれくらいの上昇では済まないだろう。


一方で、コモディティに賭けるとすれば注意しなければならないのが中国の不動産バブルの崩壊である。とうもろこしも含め、多くのコモディティの主要な買い手は中国であることが多く、中国の不動産バブル崩壊に賭けるポジションを持たずにコモディティに賭けることは危険である。

ロジャーズ氏は中国については次のように述べている。

中国は不動産市場が過熱したためにそれを抑制しようとしている。中国の多くの都市で大きな不動産バブルが形成されていたため、それを抑えるのは正しいことだと思う。

しかし中国政府はそれを軟着陸させられるだろうか、それとも巨大なバブル崩壊となってしまうのか? 分からないが、歴史上バブルを軟着陸させられた政府はほとんど存在せず、崩壊は制御不能なものになることが多い。

よって中国の不動産バブル崩壊にも賭けておくことがやはり必要である。

恒大集団倒産と中国不動産バブル崩壊で空売りすべき銘柄リスト

結論

インフレに対処しようと思えば単にコモディティを買えば良いという状況でもないということが言えるのではないか。複雑なポジションを組める投資家はともかく、一般の人々にはどうしようもない状況である。

しかしそうした状況は紙幣印刷や現金給付を行う政治家を支持した彼ら自身の責任である。筆者を含め投資家は元々これが酷い状況を生むと分かっており、警告していたが、誰も聞かなかったのである。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/17648

5. 2022年1月07日 12:28:06 : Mn2VeO2Opg : UE9lTzVVT0NYclU=[7] 報告
2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
2022年1月6日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18367


この話はここの読者には何もニュースではないのだが、一度今年の株式市場の見通しを纏めておくのも良いだろう。

コロナ相場の終わり

株式市場はコロナ以後非常な勢いで上昇してきた。以下は金融市場の中心である米国株のチャートである。この上昇が終わる時、日本株を含めたすべての市場が終わる。


人は上がっているものは上がり続けると考えるもので、最近「株を始めました」の声を聞くことが多いように思う。金融家は当然ながら、そうした声を天井のサインとして受け取っている。株を始めたばかりの人には有難くない話だろう。

上昇相場を終わらせるものは多くの場合、中央銀行による金融引き締めか、実体経済のバブル崩壊である。2018年の世界同時株安は前者、2008年のリーマンショックは後者だった。

そして2022年にはその両方が訪れようとしている。警戒していない人は何を考えているのだろうか。

インフレが金融引き締めを強制する

そもそもコロナ相場はアメリカで行われた莫大な現金給付と量的緩和によって上昇してきた。日本株の上昇はそれに従ったに過ぎない。米国株が上がれば他の国の株も上がる。相場が怪しくなってくればまず他の国の株が下落し、最後に米国株が落ちる。2018年のケースを思い出してほしい。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
今のところ米国株は急落していない。それはまだ金融引き締めが本格化していないからである。アメリカで3回行われた現金給付は2021年3月を最後に行われていないが、金融引き締めはと言えば、中央銀行は利上げに向けて動き始めたばかりだ。

そもそもアメリカがコロナ以後の金融緩和を撤回して利上げに動かなければならなくなったのは、インフレを抑えるためである。

現金給付で1人あたり最大3200ドル(およそ36万円)もの現金をばら撒けば物価が高騰するのは当たり前の話で、人々はインフレは良いものだというリフレ派の妄想を熱心に信仰していたのだが、実際に物価が高騰して初めてようやく「物価が上昇する」(インフレーション)という言葉の意味を理解し始めたようである。

ポール・チューダー・ジョーンズ氏: インフレはどんどん酷くなる
人々はずっとインフレを支持していた。筆者は何度も疑問を投げかけた。しかし「物価上昇」という4文字はそれほど理解が難しいことだろうか? もう一度繰り返すが、物価上昇とは物価が上昇するという意味である。リフレ派を支持した皆さん、お分かりだろうか。自分が何を支持したのか本当に分かっているのだろうか。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信


脱炭素によるエネルギー価格高騰

この現金給付によるインフレという人災を更に悪化させたのが脱炭素政策である。

脱炭素政策で筆者が想像するのは雪に埋もれたソーラーパネルや無風の中に静かな佇まいを見せる風力発電である。

しかしそれだけではない。ヨーロッパでほとんど信仰のレベルに達している脱炭素な人々は、頼りにならない風力・太陽光発電に膨大な税金を投入する一方で化石燃料の採掘を強制的に減少させた。

その結果どうなったか、こんなことをわざわざ説明する必要もないと思うのだが、エネルギー価格が高騰した。脱炭素を無理に強行したヨーロッパでは状況は特に酷く、天然ガス価格が一時10倍以上になるなど、貧困層は日本より厳しい冬を暖房なしで過ごすことを余儀なくされかねない状況である。

脱炭素を強行しているリベラル派は大抵は高所得層なので、脱炭素は貧困層を犠牲にした上流階級の偽善と言うほかない。少なくとも彼らは冬の間暖房を使うべきではないだろう。暖房を使えなくなるのは他人ではなく、彼らであるべきである。

フランス、インフレ対策で現金給付へ

一方で中国人はろうそくという解決策を発明した。

中国、電力不足深刻化でろうそくが大人気
対照的に、どう考えても安定供給が不可能な風力や太陽光などには莫大な税金が投入された。そしてその対価に国民が受け取るものはインフレである。

人々の稼ぎは所得税と社会保険料と消費税でまず半分以上が消え、そしてインフレで実質的価値が更に削られることになる。そうして作られたソーラーパネルは今雪に埋もれている。

本当に有権者は政治家とそのおこぼれを頂戴する業者に人生の大半をわざわざ献上する自発的な奴隷だと言うほかない。彼らは好きでやっているのだから、心からの応援を贈るべきだろう。

インフレが引き起こす金融引き締め

さて、こうした政策の結果国民が受け取るのはインフレだけではない。中央銀行はインフレを抑制するために金融引き締めを行おうとしている。

12月FOMC会合結果: 利上げ3回示唆でタカ派に転換も株価は上昇
これまではデフレがあったお陰で無尽蔵に金融緩和をしていられた。2018年の世界同時株安も、金融引き締めを撤回して緩和に移行できたことによって収まっている。

しかし今回はインフレがある。金融引き締めを行わなければ更に物価が高騰する。中央銀行にはもう選択肢がないのである。引き締めを強行すれば株価が暴落し、しなければ物価が高騰する。これがまさにインフレ政策によって引き起こされるこの世の終わりである。あとはもう落ちるしかない。もう詰んでいるのである。

緩和によって上昇してきたコロナ相場からまず現金給付がなくなり、次に金融緩和がなくなろうとしている。どう考えても上昇相場の土台はもうないのだが(反論があれば教えてほしい)、バブルとはいつもこういうもので、人々がそれに気付くのには時間がかかる。

前回金融引き締めがあった2018年のケースでは利上げは9回行われた。そしてその後、株価は金融引き締めに耐えられず暴落した。以下はアメリカの政策金利のチャートである。


金融引き締めで株価は暴落する。実際そのようになった。しかし当時の株式市場が9回も利上げに耐えたということは驚くべき事実である。その原因は利上げの進行がトランプ政権の親ビジネス的政策と重なったからで、コロナで傷んだ今の実体経済に同じ体力はないだろう。筆者を含め、多くの専門家は4回程度の利上げが限界だと見ている。

サマーズ氏: 市場を急落させても4回の利上げが必要
中国の不動産バブル崩壊

現在、金融市場では今年中に3回か4回の利上げを織り込んでいるから、利上げだけ見れば暴落のタイムリミットは年内か、もしかすると来年初めということになる。

しかしそこに更に火に油を注ぐのが中国の恒大集団のデフォルト危機に端を発する不動産バブルの崩壊である。あまり報じられていないから周知の事実ではないが、中国の不動産市場は既にかなり崩壊が始まっている。

公式統計では不動産価格の下落は0.3%ということになっているが、天津市などでは15%以上の値下げが禁止されており、15%以上の値下げが禁止されるということは実際には15%以上下落しているということである。

不動産バブル崩壊の中国、値下げ禁止令で価格暴落に対抗
何度も述べているように不動産は中国人の資産形成の中核になる資産である。不動産は下落しないものだと思い込んでいる中国の人々は、高価な不動産を無理して買ってその価格上昇で老後の生活を賄うという人生設計をしている人も少なくなく、その不動産が暴落した場合(もうしているのだが)その人の今後の消費がどうなるか、言うまでもないのではないか。

これは最終的にはアメリカや日本にも大きな影響を及ぼす。中国はこれまで世界経済における巨大な買い手であったわけで、中国の消費が滞ればいずれ世界経済にもダメージが及ぶ。

サマーズ氏: 中国恒大集団のデフォルト危機は日本のバブル崩壊と同じで極めて深刻

しかし市場はまだそれを無視したままである。金融業界の人間から言わせれば、これはいつもの話なのである。

リーマンショックの時、株式市場が一定期間無視していたのは、既に始まっていた住宅価格の下落だった。以下は当時の株価と住宅価格を並べたものであり、住宅価格が下落を開始しているにもかかわらず、一定期間株価が下落していないことが分かる。2007年後半の部分を見てほしい。


筆者はジョージ・ソロス氏の著書『ソロスは警告する』における当時のコメントを思い出している。

2007年春、ついに終わりのはじまりがやって来る。住宅ローン大手のニュー・センチュリー・ファイナンシャル社が、サブプライム問題が原因で倒産したのだ。そこから先は、私のバブルのモデルでいう「黄昏の期間」である。住宅価格が下がりはじめているにもかかわらず、ゲームの終了が読み取れない参加者が、まだ大勢残っている段階だ。

まさにこれから1年ほどの話だと筆者は考えている。

結論

2022年の世界経済のキーポイントは以下の3つである。

インフレ
金融引き締め
中国の不動産バブル崩壊

そして良いニュースが何1つないということがもう1つのポイントだろうか。株を買っている人は、自分が何故株を買っているのかもう一度考えた方が良い。少なくとも筆者には今株を買うべき理由が何1つとして見当たらない。

また、株価の暴落は景気後退をもたらし、インフレは一時的にデフレに戻るだろうが、インフレはコロナのようにまた舞い戻ってくるだろう。以下の記事で書いたように、ここでは株価暴落後のことも既に説明している。

現在のアメリカの物価高騰はインフレ第1波に過ぎない
これからの株の暴落シナリオは著名投資家の中ではコンセンサスになりつつある。しかし上に述べたようにすぐに暴落するとは限らないことから、まだ勝負から降りていないスコット・マイナード氏のような短期投資家もいる。

マイナード氏: 来年の利上げは株価にとって危険


暴落の厳密なタイミングについては中国のバブル崩壊の進行状況や利上げの速度によって前後する可能性があり、最新情報を逐次ここでアップデートしてゆきたい。また、ジェフリー・ガンドラック氏が暴落のタイミングを当てる方法を伝授しているので、そちらも参考にしてもらいたい。

ガンドラック氏: 株価急落のタイミングはジャンク債が教えてくれる


面白い1年になりそうである。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18367

6. 中川隆[-14282] koaQ7Jey 2022年1月08日 20:48:51 : bqPVjibXF2 : SGtOQXNyWEVOWEk=[13] 報告
ガンドラック氏の2022年の経済見通し
2022年1月8日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18430

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がアメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)の金融政策と2022年の経済見通しについて語っている。

利上げの2022年

今年、金融市場にとって最大の懸念は何かと言われ、ガンドラック氏は間髪入れずにこう答えている。

Fedだ。Fedの政策と株価の間には長らく否定の余地のない関係が存在してきた。政策金利だけではない。債券を買い入れる量的緩和もだ。

投資家にとって金融市場とは長年中央銀行の次の行動を予測するゲームとなっている。金融緩和なしでは株価が支えられなくなって以来、金融緩和があれば株価が上がり、それがなくなれば株価が下がるということを繰り返してきたからである。

個人投資家は保有株が上がっているのは自分の株式の選択が良いからだとか、インデックスを持っているから安定して上がっているだとか思っているかもしれないが、本当の原因の大半は緩和である。ガンドラック氏は次のように続ける。

債券購入は毎回株式市場を支えてきた。

しかしそれが変わったのが去年の後半である。

予測できたインフレ、無視し続けた人々

現金給付と脱炭素政策によってアメリカやヨーロッパで物価が高騰し始めたのである。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
そうすると中央銀行は緩和が出来なくなる。緩和を続ければ物価高騰が本当に止まらなくなってしまうからである。フランスのような愚かな例外はあるが、それがどういう道を辿るか、ここの読者ならば分かるだろう。

フランス、インフレ対策で現金給付へ
インフレ懸念は2年前からあった。最初に反応したのは筆者や著名投資家のような一部の人間だった。ガンドラック氏は驚くべきことに2020年3月の時点でばら撒きの危険性を警告している。

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判 (2020/3/29)

そしてそのリスクはまず貴金属や農作物などのコモディティ価格が金融市場で上昇を始めるという形で明らかになった。

金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
しかしFedのパウエル議長はその後1年にわたり既に存在していたインフレの証拠を無視し続けた。未だに10万円給付などと言っている日本人は本当に馬鹿ではないのかと思うが、第2時世界大戦で植民地政策の罪を被せられた日本人の真骨頂は泥舟に遅れてやってくることである。そしてイギリス人はいつものように一番最初に脱出している。いつものことである。

イギリスがいち早く利上げ実行 早期インフレ撃退なるか


無視できなくなったインフレ

結局、インフレはアメリカで前年比6%まで上昇し、中央銀行はそれを無視出来なくなった。金融市場はそれを事前に見透かしており、政策金利の先行きを織り込む短期国債の金利は先に上昇していた。以下は2年物国債の金利チャートである。


上がり始めたのは去年の夏であり、その時パウエル議長はまだインフレは一時的だと言い張っていたが、結局債券市場の判断が正しいことが証明された。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ


ガンドラック氏は次のように述べる。

Fedは今、いつものように債券市場に従おうとしている。債券市場に強いられて、Fedは利上げについて話し始めなければならなくなった。量的緩和は3月には終了させなければならなくなった。これはかなり急だ。

こうした急展開は量的緩和によってゼロ金利を今後何年かの未来にわたって保証してきた完全にハト派なFedの態度からの転換だった。しかし2年物や5年物の国債の金利が上がり始めると、Fedはいつものように債券市場に従うことを急に強いられる。

金融家にとってこれはいつものことである。中央銀行は常に間違っており、金融市場はもう何年もの間、彼らがいつ間違いを訂正するかを予測するゲームなのである。

債券市場が示唆する景気後退

ではパウエル議長よりも正しかった債券市場が今後の経済について予想していることをより詳しく見てみよう。ガンドラック氏は次のように続ける。

今、イールドカーブ(訳注:短期から長期までの金利の並び)は間違いようのない景気後退のシグナルを発している。短期国債においては金利が上昇し、長期国債の金利は下がっている。投資家はこのシグナルを本当に注視しなければならない。

短期金利が今後の利上げを見越して上昇していることについては既に説明した。一方で長期金利(10年物国債の金利)がどうなっているかと言えば、次のようになっている。


最近急上昇したものの、ピークは去年の春であり、一本調子で上昇を続ける短期金利とは対照的となっている。

長期金利が上がらないのは、長期金利は政策金利以上に経済成長率を織り込むからである。債券市場が景気が後退すると予想すれば、長期金利は下落する。

実際のところ、ここではこの動きを去年9月の時点で予測しているので、少し長いが当時の記事から説明部分をすべて引用しよう。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想 (2021/9/5)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/15210


テーパリングが強行され、利上げが行われる場合、アメリカ経済は高い確率でそれに耐えられない。短期金利が利上げに連動して上がる一方で、長期金利はそれほど上がらないか、むしろ下がってゆくだろう。

ではテーパリングと利上げがそれほど進まず、緩和的な環境が続く場合はどうか? この場合は物価の高騰が進み、短期的には長期金利は上昇するものの、最後には中央銀行は利上げでインフレに対応しなければならなくなり、その引き締めは今すぐ引き締めした場合よりも苛酷なものになるだろう。

こうした場合、債券投資家によく知られている結末は、長短金利差の縮小である。つまり、利上げによって短期金利は上がらざるを得ないが、長期金利は利上げと景気後退の両方の影響を受けるので、短期金利ほどは上がることが出来ないのである。

ほぼ完璧な予測と言え、この米国債のトレードはここ1年の筆者のポジションの中で一番の利益を上げてくれている。

今年の利上げと株式市場

債券市場はこのように金利の動向を予想しているが、利上げが行われるのはこれからである。今年の利上げが景気後退を引き起こすかどうかを聞かれ、ガンドラック氏は次のように答えている。

間違いなく。債券市場は既に景気後退を示唆している。それはまだ致命的な水準ではないが、1年前には無視出来たものが今は無視できなくなっている。

また、ガンドラック氏は米国株の評価水準が高いと主張する。

株価の水準も心配だ。

米国株はこれまであまりにも強かった。このような水準は、以前にもあったが、通常良い終わり方をしない。それに加えてFedは引き締めを行おうとしている。投資家にとっては向かい風になるだろう。

投資家は少し前に自分がどういう水準に投資をしていたかをすぐに忘れてしまう。米国株は1年前には20%安かった。その上に中央銀行はインフレを否定して緩和を続けると約束していた。

しかしそこから株価は20%上昇し(それは上昇の余地が20%減ったということだ)、しかも中央銀行は金融引き締めを行おうとしている。

当時と今で株式市場に対して同じように強気な投資家がいるとすれば、何かが明らかに間違っているだろう。

もう一度見返すべきは、2018年の金融引き締めによる世界同時株安である。当時の株安を経験していない読者があれば、当時の記事を是非読んでもらいたい。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18430

7. 2022年1月11日 07:33:27 : oY1LNLle9o : emVhbVdPZ1BWZms=[2] 報告
ガンドラック氏: 次の株価暴落はドルの終わり
2022年1月10日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18513


DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がYahoo! Financeのインタビューで次の下げ相場とドル相場の見通しについて語っている。

利上げで景気後退へ

先週の記事でガンドラック氏は2022年の最大の懸念はFed(連邦準備制度)の利上げだと主張していた。

ガンドラック氏の2022年の経済見通し


ガンドラック氏は次のように繰り返す。

これまで述べたように、債券市場は景気後退のシグナルを十分に発している。2023年までに景気後退入りをする可能性が高いと言っている。

彼はアメリカ経済にとって危険水域となる利上げの回数を具体的に挙げている。

たった4回利上げをするだけで景気後退の香りがそこら中にし始めるだろう。今年中に景気後退入りする可能性もゼロではない。それはFedがどれだけ利上げを強行するかによる。

金融市場は今年中に3回か4回の利上げを織り込んでいるが、今後の物価上昇率によっては更に急激な利上げを強いられる可能性もある。

ガンドラック氏を含む多くの著名投資家が見込んでいるのが、そうした利上げが株式市場と実体経済を墜落させるというシナリオである。

マイナード氏: 来年の利上げは株価にとって危険
サマーズ氏: 市場を急落させても4回の利上げが必要


何故ならば、利上げを行わずに緩和を続ければ、既に6%を超えているアメリカの物価上昇率がトルコのように青天井になってゆくだろうからである。

物価高騰と金融緩和でトルコリラが暴落中
ついにドル暴落へ

つまり、アメリカは株価が暴落することを承知で利上げを行わなければならなくなる。

しかしアメリカにとって崖っぷちなのは株価だけではない。利上げによって引き起こされる次の景気後退において本当に危険なのは、ついにドルが暴落するだろうということである。ガンドラック氏は次のように述べている。

ドルが基軸通貨であるというストーリーも終わりを迎えようとしている。

次の景気後退でドルは下落相場になる。ドルは双子の赤字にもかかわらず大きく過大評価されている。

アメリカは財政という意味ではこれまでかなり好き勝手にやってきた。量的緩和によって無尽蔵に紙幣を印刷し、財政赤字と貿易赤字を垂れ流し、アメリカから資金は流出し続けているのに、それでもドルは暴落しなかった。

その理由は、以下の記事で説明したように、放漫な財政から為替レートの暴落までの間にはタイムラグが存在するからである。

ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争


事実、ドル円のチャートもむしろインフレを原因とする利上げ観測で上がっている。


しかし考えてみてほしいのだが、インフレとは貨幣価値の下落である。それで何故ドルが上がるのだろうか? インフレ率が6%だということは、ドルが6%減価したということである。

それが利上げという短期的な事情でドル高に繋がっているのだが、このインフレに起因するドル高はどう考えても持続可能ではない。何処かのタイミングでこの上昇相場は転換せざるを得ないのである。

そのタイミングはいつか? 筆者もこれまでに述べてきたように、ガンドラック氏も転換点となるのは次の株価暴落と景気後退だと考えているらしい。リスクオフがこれまで着々と溜まってきたドル安要因を一気にすべて吐き出すだろう。

ガンドラック氏はラクダの背に背骨が折れるまで1本ずつ藁を載せてゆくたとえを用いて次のように述べている。

次の景気後退で政府が経済を救済しようとするとき、それがラクダの背骨を折る最後の藁になるだろう。それでドルは下落する。

そしてBridgewaterのレイ・ダリオ氏も同じことを考えている。

世界最大のヘッジファンド: ドルとユーロと円は暴落する
ドルと株価の暴落はもはやそうなるかどうかの問題ではない。単にタイミングがいつかという問題なのである。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
ガンドラック氏: 株価急落のタイミングはジャンク債が教えてくれる


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18513

8. 中川隆[-14274] koaQ7Jey 2022年1月11日 07:35:26 : oY1LNLle9o : emVhbVdPZ1BWZms=[3] 報告
ダリオ氏とサマーズ氏のドル下落に関する論争
2021年6月23日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14160


前回の記事ではBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のインタビューについてお伝えしたが、このインタビューにはもう1人優れた頭脳が参加している。経済学者のラリー・サマーズ氏である。

過熱するアメリカ経済

世界最大の運用資金を抱えるダリオ氏がヘッジファンド業界のトップなら、サマーズ氏は経済学者のトップであると言えるだろう。

この2人はコロナ相場における緩和バブルが何らかの危険な帰結をもたらすということでは同意している。サマーズ氏はアメリカ経済の状況を次のように表現している。

今、経済は時速100マイル(時速150キロ程度)で走っている。道は今は空いているが、常に空いているとは限らない。

事故がどのような形になるかは分からないが、時速100マイルで走ることは必ずしも目的地に辿り着く最速の方法とは限らない。そういう走り方では何らかの問題が生じるからだ。

サマーズ氏は事故がどういう形になるかは分からないと言う。

一方でダリオ氏の主張は幾分明快のように思える。ダリオ氏は前回の記事で、中央銀行が金利上昇を抑えるために緩和を拡大せざるを得ず、ドルが下落するというシナリオを明確にしている。

世界最大のヘッジファンド: 市場下落なしに緩和縮小はできない
ダリオ氏はドルの代わりに金利の高い人民元建ての資産に資金が集まると主張している。

ドルは下落するのか?

サマーズ氏の方は明確な予想をすることに慎重である。

問題が生産性や労働市場に起こるのか、金利高騰として起こるのか、ドルの価値が下落することで起こるのか、予想しようとは思わない。しかし経済は問題のあるコースを走っており、あらゆることが起こり得る。

金融市場を正確に予想することは誰にも出来ない。だが過剰な資金が市場に注ぎ込まれており、それを前提としたリスクテイクが過熱していることは確かなように見える。

特に興味深いのは、サマーズ氏が必ずしもドルが下落するとは思っていない部分である。彼はこう補足している。

1980年代には巨額の財政赤字が経済成長を促し、資本市場に流れ込んで強いドルに繋がった。

だから短期的な動きについては分からないが、わたしはレイほどは中国や諸外国の資本市場が長期的にドルよりも魅力的になるかどうかについては確信できない。

1980年代は1970年代に始まる物価高騰と引き締めのサイクルの後に大幅な利下げと財政出動が行われた時代である。

この期間にドルはどうなったか? 以下はドルマルク(ドイツの通貨ドイツマルク)のチャートにアメリカの政策金利を並べたものである。ドルマルクは上方向がドル高マルク安となる。


財政出動と利下げはともに1981年頃から行われているのだが、この期間においてドルは大幅に上昇している。1985年からは下落に転じているのだが、緩和とドル安の時期は一致しておらず、ドル安に向かったのは緩和開始から4年が経過した後である。

サマーズ氏は次のように続ける。

ドルの下落リスクは確かに高い。人々の言うことの中で一番奇妙なのは、今はグローバル化の時代で、インフレトレンドは急激には動かない、グローバル化のお陰で急激なインフレにはならないというものだ。

わたしは正反対だと思う。グローバル化のお陰でアメリカは以前よりいわば小国のようになっており、ドルはより困難に陥りやすく、ドル安の影響は数十年前よりも急激にインフレ上昇に反映されるだろう。

だからレイの言うような懸念も分かる。だがタイミングについては不確実性が存在するだろう。

市場で何らかの方向に賭けなければならないダリオ氏と、学者として様々なリスクを考えなければならないサマーズ氏の違いだと言うことも出来るだろう。

しかしサマーズ氏の指摘する1980年代において、緩和にもかかわらずドルは何故下落しなかったのだろうか? この辺りの事情については別に記事を書いて説明する必要があるだろう。

袋小路に陥るアメリカ経済

経済回復を祝うかのような中央銀行に対して、サマーズ氏の見通しは暗い。彼は次のように述べる。

金融政策が本当に難しいのは、リーマンショックの後や去年の春のように大幅な資金不足があり市場が暴落していて、資金を供給すべきだという風に金融政策の行われるべき方向性が完全に明らかな状況ではない。

金融政策における本当に難しいジレンマは、どちらに行くべきか明確ではない時だ。国債が大量に発行されており通貨が下落している一方で、経済は弱体化していて貧富の差が拡大し、景気後退の懸念がある時には、利下げをして後者に対応すべきなのか、引き締めをして前者に対応すべきなのか分からない。

そのように方向性が明確にならない時こそが金融政策にとって難しい時なのだ。そして今経済はそういう状況に向かっているのではないかということを恐れている。

利上げをしても利下げをしても問題が生じる。利上げをすればドルは救えるが経済は暗転し、利下げをすれば経済は救えるかもしれないがドルは暴落してゆく。

ダリオ氏の言い分もサマーズ氏の言い分も両方理にかなっているだろう。しかも興味深いのは、短期的な値動きについてサマーズ氏に分がありそうな点である。ダリオ氏は過去の基軸通貨の運命にドルも従うと主張しているが、それはもっと長期のトレンドだろう。

世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
サマーズ氏の主張は本当に興味深く、時にはヘッジファンドよりもヘッジファンド的である。

アメリカ経済がどちらに行っても袋小路という懸念は債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏も詳しく説明しているので、そちらも参考にしてもらいたい。

ガンドラック氏: 追加緩和が来る恐怖、追加緩和が来ない恐怖


1980年代のドル下落のタイミングについてはまた別に記事を書くことになるだろう。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14160

9. 2022年1月11日 09:42:09 : oY1LNLle9o : emVhbVdPZ1BWZms=[4] 報告
ガンドラック氏: 追加緩和が来る恐怖、追加緩和が来ない恐怖
2021年6月9日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13981


米国時間6月10日に公開されるアメリカの5月分の消費者物価指数(CPI)を前に、インフレと債券の専門家であるジェフリー・ガンドラック氏のツイートを取り上げたい。

刺激策の亡霊

これは5月22日のツイートだがガンドラック氏が興味深いことを呟いている。

過去の刺激策の亡霊がアメリカ経済と金融市場の周りに集まっている。露骨な投機、供給不足、経済のゆがみ。追加刺激が来ることへの恐怖と追加刺激が来ないことへの恐怖との結婚は離婚に終わるしかない。

露骨な投機とは、例えばゲームを実店舗で小売販売する、悪く言えば前時代的なGamestopの株式がグロース株のような水準まで暴騰したことだろう。ガンドラック氏は以前これを政府の現金給付が招いた投機だとして批判していた。

ガンドラック氏: Gamestop株が暴騰した本当の理由


供給不足とは、例えば金融市場で金属や穀物の価格が高騰して様々な分野でコスト高に繋がっていること、そして手厚過ぎる失業保険が労働者に失業したままでいるインセンティブを与えていることだろう。彼は以前次のように述べていた。

ガンドラック氏: 現金給付と失業保険が失業を悪化させる


家でNexflixで動画を見ている方が働くよりも儲かると一定数の人が気付いた。だから職場に帰ろうとしない。

こうした要因が材料費と人件費を高騰させ、インフレを起こしている。アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)のパウエル議長はインフレは一時的なものだと主張しているが、ガンドラック氏がそうではないと主張しているのはそういう理由による。

4月FOMC会合結果: パウエル議長のインフレ無視は続く コモディティバブル継続へ
ガンドラック氏、インフレ無視の中央銀行を痛烈批判


行くも地獄、帰るも地獄

一番興味深いのはツイートの最後の部分だろう。インフレへの恐怖が金融市場で金属や穀物の価格を高騰させている。これは刺激策が過剰であることへの恐怖だが、一方で株式市場と実体経済は追加の刺激策が来ないことへの恐怖を表明するだろう。現金給付などの刺激策がなければ株価は間違いなくここまで上がらなかった。


そして追加の刺激策がなければ維持も不可能だろう。

ガンドラック氏が言っているのは、どちらかの恐怖は実現しなければならないということである。2018年に金融引き締めで株価を暴落させたトラウマのあるパウエル議長はぎりぎりまで引き締めを躊躇うだろうが、躊躇えば躊躇うほど物価高騰は進み、中央銀行はより急激にブレーキを踏まざるを得なくなる。

物価の安定を取れば株価が下落する。株価を取れば物価が高騰する。中央銀行はいずれ選ばなければならない。CPIは中央銀行に選択を迫る時限装置のような役割を果たしている。

5月のCPI

インフレはどうなるだろうか。5月のCPIが米国時間の10日に発表される。これについてガンドラック氏は最近のツイートで次のように述べた。

6月10日は次のCPIの公表日だ。上方向に賭ける。

ガンドラック氏の以前の予想では短期要因によるインフレ加速は7月まで続くとのことだったから、今回のCPIが加速方向になるのは彼にとって既定路線だろう。

しかし加速の度合いによってはサプライズになる可能性もある。恐らく今市場が一番注目している指標がCPIだろう。ガンドラック氏はインフレが行き過ぎれば株価の下落に繋がるという予想をしている。

ガンドラック氏: インフレが止まらなければ株価急落へ


CPIはどうなるだろうか。コモディティ相場全体への影響については、代表して銅相場を分析した記事に書いてあるのでそちらを参考にしてもらいたい。

銅相場とテーパリング: 価格の推移予想、金との比較


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13981

10. 2022年1月11日 10:17:08 : oY1LNLle9o : emVhbVdPZ1BWZms=[5] 報告
ガンドラック氏: インフレが止まらなければ株価急落へ
2021年5月18日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13593

前回に引き続きYahoo! Financeによるジェフリー・ガンドラック氏のインタビューである。

ガンドラック氏のインフレ予想

コロナ禍における現金給付などの景気刺激策で市場経済に多額の資金が注ぎ込まれたことで、アメリカでは物価高騰の初期症状が始まっている。

インフレ懸念についてはここでは去年から報じてきたことであり、筆者を含め多くの機関投資家たちが金属や穀物の価格上昇に賭けて既に儲けている。

金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
ドラッケンミラー氏が物価高騰を予想、米国債を空売り、コモディティを爆買い
ジム・ロジャーズ氏: 日本は買い、コモディティはほぼ全部上がる


しかし株式市場は今になってようやくインフレが懸念材料だと気付き始めたようであり、今後アメリカの物価がどうなるのかが投資家の注目を集めている。前回の記事で報じたように、ガンドラック氏は今後のインフレについて次のように述べていた。

ガンドラック氏、インフレ無視の中央銀行を痛烈批判


インフレ率は今後数ヶ月上昇を続けるだろう。7月にピークとなるかもしれないが、もしそこからも上昇を続けるようなことがあれば、経済にとって深刻な懸念となるだろう。

7月が分水嶺となる理由については前回解説したのでそれを参照してもらいたい。今回論じるのは7月以降インフレが止まらなかった場合株式市場がどうなるのかである。

インフレと株式市場

インフレは金利上昇を通じて株式市場に影響を与える。株式市場は長年低金利によって支えられてきたからである。しかし低金利は中央銀行が国債を買い入れる量的緩和によって実現してきた。

ガンドラック氏によれば、その他の買い手は米国債の保有に及び腰になっているという。ガンドラック氏は国債の金利は保有のリスクに見合っていないと説明する。

アメリカの超長期国債は去年ちょうど1.00%まで下がったが、今では2.4%まで上昇している。(訳注:金利上昇は債券価格下落を意味するので)どれだけの資金が失われたか投資家は分かっていない。

去年の3月か4月に投資家が超長期国債に殺到した時の買い手がその後の価格下落で被った損失は30%とかなり大きい。株式を保有した場合に覚悟するような損失だ。一方でリワードは1%の金利を30年貰い続けることだ。

コロナ以後、国債のリスク・リワードはかなりおかしなことになっている。

そのような状態で国債を保有したい投資家は果たしているだろうか。ガンドラック氏は次のように続ける。

金利が上がった時、米国債を買いたい投資家は多くない。外国の投資家はもう何年も米国債を売っている。国内の投資家も国債保有を減らしつつある。もう中央銀行しか残っていない。

だから現在上がっている金利については中央銀行がどう動くのかによって今後の見通しが変わってくる。アメリカの長期金利は次のように推移している。


この金利がどうなるかによって株式市場の命運が決まる。ガンドラック氏は次のように予告している。

インフレが夏以降も上がり続けた場合、金利上昇が中央銀行の覚悟を試すような展開になるだろう。中央銀行は無制限の量的緩和を行うと主張している。どうなるか見てみよう。

買い手が減り続けている米国債を中央銀行が吸収できず金利が上昇してしまった場合、これまで低金利に依存してきた株価にとって大きな問題となるだろう。

結論

ガンドラック氏に限らず、金利が上がってきたことで株価の水準に危機感を持っている著名投資家が増えてきた。同じく債券投資家のスコット・マイナード氏も同じ理由で2021年の株式市場は下落すると予想していた。マイナード氏の方が今後の推移を詳しく説明しているのでこちらも参考にしてもらいたい。

マイナード氏の2021年株式市場の推移予想


実際に株価は上値が重たくなっているようである。2人の債券投資家の予想は当たるだろうか。インフレ指標には今後も注目である。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13593

11. 2022年1月12日 10:23:32 : XfqJ2Ny5s6 : UGwwMDh5Wi9OQ0U=[19] 報告
持ち株が下がっている方必見!成長株投資の真髄を伝授します!
2022/01/07



つばめ投資顧問
12. 2022年1月12日 11:30:53 : XfqJ2Ny5s6 : UGwwMDh5Wi9OQ0U=[20] 報告
サマーズ氏: 中央銀行と市場はインフレを過小評価、政策金利は2.5%以上まで上がる
2022年1月11日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18538


アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューでインフレと今年の金融市場の見通しについて語っている。

利上げ織り込みは不十分

ここの読者には去年からずっと明らかだった話だが、2022年は市場も経済も暗雲だらけである。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
しかし問題がもう1つある。サマーズ氏によれば、暗雲はまだ十分に織り込まれていないということである。彼は次のように述べる。

Fedと市場はこれから必要になるであろうことをまだきちんと認識していない。Fedと市場の想定は、政策金利が2.5%より上に上がらなくてもインフレが何とか収まるというものだ。

アメリカではインフレは止まらない状況となっており、市場は今年中に3回か4回の利上げを想定している。しかし考えてみてもらいたいのだが、それはこれから半年経過した時点で政策金利は0.5%程度までしか上がっていないということだ。

それでインフレが止まるだろうか? 今のアメリカのインフレ率は6%以上である。0.5%程度の金利では消火出来ないことは明らかであるどころか、これほどのインフレの中でむしろ低金利を継続している状態となり、本当に市場の想定通りに今年の前半が進めばインフレ率は更に上昇する可能性が高い。

6%のインフレとは、0.5%の金利で借金してものを買えば6%価格上昇し、5.5%儲かるということである。誰でも借金してものを買うだろう。それが今の数回の利上げという「金融緩和」の状態である。

このままではインフレは治まらないだろう。しかし市場もFedも少し考えれば誰でも分かる現実を織り込んでいない。サマーズ氏は次のように続ける。

市場やFedの想定が的中する可能性はあまりない。あるいは、彼らの想定が唯一的中するシナリオは少しの利上げで経済が崩れてデフレになる場合で、どちらにしても問題が生じる。

アメリカ経済はもう詰んでいるのである。

物価高騰か株価暴落か

実際にはどちらのシナリオになるだろうか。サマーズ氏は次のように説明する。

利上げに対して経済がどれほど脆弱かはじきに明らかになるだろう。

利上げに対する脆弱さがこれまでと同じ程度であれば、2%程度の金利水準でインフレを制御できると考えるのはまったく現実的ではない。

一方で一部の人が主張するように積み上がった負債や高騰した資産価格のために経済が金融引き締めに対してこれまでより脆弱であれば、インフレを制御しながら経済を傷つけないことは簡単ではない。

恐らく実際には、金利をある程度上げたところで市場や経済が動揺するというケースになるのだろう。サマーズ氏は次のように述べている。

Fedにとっての困難は、現在の劇的なインフレが落ち着くよりも先に市場の下落や景気後退の懸念を目にするだろうことだ。

明らかに、利上げを続けてゆくとインフレが落ち着くより先に市場や経済が動揺を始めるだろう。それでFedは利上げを続けるのか、市場に配慮して利上げを止めるのかを決めなければならなくなる。

結論

筆者の意見では、今市場があまり織り込んでいないのは今後半年間のインフレ加速の可能性である。

市場は前々から分かっていた利上げの必要性に動揺しているが、今の利上げペースではインフレを抑えられるどころか、利上げのペースが本当にあと半年で2回程度ならば半年後にはインフレ率はかなり上がっているだろう。しかしコモディティ市場は必ずしもその方向には反応していないか、一部の銘柄はむしろ下がっている。

しかし繰り返しになるが、インフレか市場暴落か、市場暴落ならばそれがいつかの当て物をするのは賢明な投資方法ではないだろう。はっきりと分かっているのは、インフレ率を差し引いた経済成長と資産価格が下がるだろうということである。インフレになるにせよ、市場暴落でデフレになるにせよ、実質的な成長率はどのビジネスも駄目だということである。

こうした状況で投資する方法はいくつかある。一番分かりやすいのは以下の記事を含め何度も説明している米国債のトレードである。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/15210


しかしその他にもやりようはあるので、それについてもまた記事を書いて説明したいと思っている。とりあえず、株を買っている人にはジャンク債の空売りが良いヘッジになるだろうし、事実そうなっている。そちらもまた読んでおいてもらいたい。

ガンドラック氏: 株価急落のタイミングはジャンク債が教えてくれる
ジャンク債の空売りは安全なヘッジになるか

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18538

13. 中川隆[-14258] koaQ7Jey 2022年1月12日 11:31:59 : XfqJ2Ny5s6 : UGwwMDh5Wi9OQ0U=[21] 報告
長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想
2021年9月5日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/15210


アメリカではテーパリング(量的緩和縮小)が始まろうとしている。金融緩和と財政出動で株価と経済を押し上げた流動性相場が終わり、別の新たな相場が始まろうとしている。

催促相場の始まり

この新たな相場の1つの特徴はドルが上がりにくくなることである。直ちに下がるとは言わないが、以下の記事ではトランプ相場の例を挙げ、流動性相場ではドルが上がるがその後の催促相場(市場が「緩和なしでは駄目だ」と言い始める相場)ではドルが上がりにくいことを説明した。

ドル円見通し: 景気回復相場から追加刺激の催促相場へ


では金利はどうなるだろうか? アメリカの長期金利はテーパリングが噂された春頃から下がり始めたものの、8月からは小反発している。


これまで金利を低く抑えてきた量的緩和を縮小するテーパリング予想で金利が下がった。しかし最近の経済統計で経済活動が鈍化している状況が確認されるとテーパリングが先延ばしにされると観測され、金利は逆に上昇した。

予想通り7月インフレ率は急減速、数ヶ月のデフレ相場へ
低調な雇用統計、テーパリング懸念後退で金利上昇となった理由


実体経済の様子

これが現在の状況である。テーパリングが行われるのは、当然ながらコロナ禍で行われた現金給付などの刺激策がアメリカで物価高騰を引き起こしているからである。

米住宅は価格上昇で販売数減少、インフレ激化の兆し
一方で個人消費などの経済活動は、刺激策がなければアメリカ経済は成長しないというシナリオを支持している。個人消費は今年3月の現金給付で跳ね上がって以降、横ばいを続けている。


4月以降の横ばいのチャートが、緩和がない場合のアメリカ経済の姿である。

米国政府はどうするだろうか? 緩和がなければ、実体経済は恐らく2022年には横ばいか、悪ければマイナス成長となるだろう。

しかし現金給付などの緩和を行えば、ただでさえ高騰している住宅価格は手が付けられないほど上昇し、アメリカ国民はインフレに苦しむだろう。

金利の推移見通し

長期金利がテーパリングで下がっているのはそれが理由である。債券市場は緩和を撤回すると実体経済が沈むということを理解している。そして緩和を続けるとインフレが止まらなくなることも理解している。だからテーパリング懸念で金利低下、テーパリング延期で金利上昇なのである。

だからその両方のシナリオを考えてみよう。テーパリングが強行され、利上げが行われる場合、アメリカ経済は高い確率でそれに耐えられない。短期金利が利上げに連動して上がる一方で、長期金利はそれほど上がらないか、むしろ下がってゆくだろう。

ではテーパリングと利上げがそれほど進まず、緩和的な環境が続く場合はどうか? この場合は物価の高騰が進み、短期的には長期金利は上昇するものの、最後には中央銀行は利上げでインフレに対応しなければならなくなり、その引き締めは今すぐ引き締めした場合よりも苛酷なものになるだろう。

こうした場合、債券投資家によく知られている結末は、長短金利差の縮小である。つまり、利上げによって短期金利は上がらざるを得ないが、長期金利は利上げと景気後退の両方の影響を受けるので、短期金利ほどは上がることが出来ないのである。

長短金利差の縮小

上記の考察により、どちらの場合にも最終的には長期金利は短期金利よりも上がらない、つまり長短金利差が縮小するという結論が得られた。これはインフレシナリオにもデフレシナリオにも対応できる投資戦略である。

典型的なのはアメリカで物価が高騰した1980年前後の状況である。インフレ率が15%以上を記録する中で長期金利も高騰した時代だが、短期金利と比較すると長期金利はむしろ大幅に下がった。つまり、長短金利差は縮小した。


チャートを見ての通り、1980年前後には長短金利差は縮小するだけでなくマイナスになり、長期金利より短期金利の方が高い状況が続いている。

つまり、インフレシナリオになる場合、(金利と債券価格は逆相関なので、)短期国債を売って長期国債を買えば、短期金利上昇と長期金利低下の恩恵を受けられるということである。この場合、恐らく1980年と同様の長短金利差逆転が起きると筆者は推測している。

では引き締め政策でデフレシナリオになる場合はどうだろうか? その場合はこれまで投資家が長らく慣れてきた相場、つまりゼロ金利相場に戻ることになるだろう。短期金利も長期金利もゼロになる。現在の長短金利差は1%なので、金利差の下落余地は大いにあるということである。

結論

短期的には考えることが様々あるが、中長期的にはこのシナリオは不可避であるように思える。そしてこのシナリオは市場にまだ織り込まれていない、投資家に利益のチャンスがあるシナリオである。

現在、金融市場は緩和をして経済が浮揚して何の副作用もないという夢のようなシナリオを信じている。しかしその夢が崩れる時は確実に近づいている。

レイ・ダリオ氏やジェフリー・ガンドラック氏であれば、その副作用とは将来のドル下落だと言うだろう。

世界最大のヘッジファンド: ドル下落の時は近い
ガンドラック氏: ドル暴落は何年かの内に 米国株から避難せよ
あるいはスコット・マイナード氏であれば金価格の高騰だと言うかもしれない。

マイナード氏: インフレ懸念で金価格は最大5倍になる
しかし著名投資家もあまり注目していない第3の副作用が存在する。長短金利差の縮小である。

このトレードはもはやあとはタイミングだけの問題であるように思える。ドルの推移予想についても以下の記事で書いているので、そちらも参考にしてもらいたい。

ドル円見通し: 景気回復相場から追加刺激の催促相場へ


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/15210

14. 中川隆[-14226] koaQ7Jey 2022年1月13日 12:54:30 : 46PFDOQUKI : SS55N2NlU0xZMGc=[23] 報告
世界最大のヘッジファンド: 金融資産から現物資産への怒涛の資金逃避が起こる可能性
2022年1月12日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18576

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで金融バブルとその結末について語っている。

金融資産とは何か

人々はいくらでも金融資産を増やすことが出来る。例えば紙幣は印刷できる。あるいは新たに会社を立ち上げて、その会社に中身がなかったとしても、金融バブルの状況下ではその会社の株式が非常な高値で取引されることも有り得る。

しかし世界中の金融資産の量を増やすことと人々が豊かになるということは別のものだということをダリオ氏は常に主張してきた。ダリオ氏は以前、次のように述べている。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

しかしダリオ氏の警告も虚しく人々は紙幣を無尽蔵に印刷し、金融資産を膨張させてきた。その結果どうなったか? ダリオ氏は次のように述べている。

金融資産の量が現物資産の量に比べてあまりに多過ぎる。これは銀行への取り付け騒ぎのようなタイプの、金融資産から現物資産への資金逃避に繋がる可能性がある。

現物資産よりも金融資産の方がはるかに多いという状況がどういうことかお分かりだろうか? ダリオ氏は次のように説明する。

資産に投資をする目的はたった1つしかない。その資産を売り払った時に現金を得て実際の商品やサービスを入手することだ。

だがその商品やサービスの量が足りなければどうなるだろうか?

例えばここにリンゴが1個あるとしよう。そしてリンゴが1個買えるはずの現金を持っている人が3人居るとする。

3人がリンゴを食べたいと思わない間は何の問題も起きない。現金は銀行口座に眠ったままである。しかし3人ともがお金を払えばいつでもリンゴが買えると思っている。しかし実際にはリンゴは1個しかないのである。

これがリーマンショック後の紙幣印刷から今までの状態である。豊かである間は人々はお金が銀行口座にあるだけで満足しているので、お金に対してリンゴが足りなくても問題にならない。だからこれまでインフレになっていなかったのである。

コロナの経済的意味

しかし疫病の蔓延や戦争や飢餓などの経済的問題が何らかのきっかけでひとたび発生し、人々が生活のために預金を切り崩し始めると問題が生じる。お金はリンゴ3個分あるのにリンゴは1個しかないからである。

これがまさに今のアメリカの状態である。

サマーズ氏: 中央銀行と市場はインフレを過小評価、政策金利は2.5%以上まで上がる
紙幣印刷は問題を引き起こすまでに上記のようなタイムラグがある。それを無視してリフレ派の人々は量的緩和を推奨し続けてきた。それに人々はまんまと騙されたというわけである。

ダリオ氏は次のように続ける。

歴史を通して、現物資産よりも現物資産を買うための資産(訳注:金融資産)の方がはるかに多い時にはいつでも、多くの金融資産の保有者が実際にその資産を使おうとしたタイミングで経済危機が起こってきた。

現在、現物資産よりも莫大な量の金融資産が存在している。それを現物資産に変換しようとする動きがもし始まれば、「銀行の取り付け騒ぎ」型のトレンドを生む。中央銀行は間違いなく更なる紙幣印刷で対応しようとするが、そうすると更に紙幣の価値がなくなってゆく。

銀行の取り付け騒ぎとはいつもそうした手段で解決される。紙幣を引き出そうとする人々は、紙幣は手に入れるが、その紙幣には価値がなくなっているというオチである。ダリオ氏はこう続ける。

大量の紙幣印刷によって人々を金融資産持ちのリッチにすることは出来るが、実際に豊かにすることは出来ない。

結論

紙幣印刷で起こったインフレを紙幣印刷で解決しようとするなんてそんな馬鹿なことがあるだろうかと読者は思うかもしれない。しかし実際にドルの前に基軸通貨だったイギリスのポンドの覇権はそのような形で終わりを迎えた。

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
そして実際に今、アメリカは6%のインフレが起こっている状況で金利を0%から0.25%にするかどうかを迷っている。フランスは実際に紙幣をまだばら撒いている。そんな馬鹿なことが実際に起こっているのである。

フランス、インフレ対策で現金給付へ
だが経済成長率がまだプラスになっている今は良い。今後の金融引き締めで経済が沈み始め、経済成長率ほどインフレ率が沈まなかった時、政府はどうするだろうか?

そのシナリオでは2つの選択肢があるということをここでは何度も繰り返してきた。経済を救うために金融緩和を続けて物価高騰が止まらなくなるのか、インフレを退治するために金融引き締めを行なって経済を更に沈めるのかである。

これは予想の難しい2択だが、上記の文章から推測するとダリオ氏はどうやら物価高騰シナリオになると踏んでいるらしい。そうすると金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ価格が高騰するだろう。

その辺りの投資戦略についても書きたいのだがなかなか書けていない。今後も楽しみに待っていてもらいたい。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18576

15. 2022年1月15日 19:49:14 : GhTxcLiTVY : UmtDRE9QTUIzckk=[18] 報告
コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
2022年1月13日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18620


1月12日、アメリカの最新のCPI(消費者物価指数)統計が発表された。12月のインフレ率は7.1%(前年同月比、以下同じ)となり、前月の6.9%から加速してついに7%台となった。

コロナ以後、インフレ率については前年比にすると比較対象の前年が極端に低い数字となってしまっていたため前月比年率を使ってきたが、そろそろ前年同月比に戻しても良いだろう。前月比のデータは月ごとの要因を打ち消すために恣意的な指数調整に頼っており、その不正確さが市場で問題になったこともある。出来る限り前年同月比を使ったほうが良いだろう。

インフレ率はついに7%台へ

さて、では物価上昇率のチャートを見てみよう。


コロナ後の物価の上がりようは見事である。現金給付と脱炭素がちゃんと仕事をしたということだろう。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
グラフをもう少し詳しく見ると、12月に入って勢いはやや鈍化したように見える。夏頃に一度チャートに踊り場が出来ていることに注目すると、この踊り場は夏のコロナ蔓延が一因となって引き起こされたものであり、アメリカで現在の波が12月頃から始まったことを考えれば、今回やや勢いが落ちているのはオミクロン株のためかもしれない。

そうであれば1月や2月のインフレ率もやや減速し、同じような踊り場が出来る可能性もある。しかし逆に言えば、コロナが収まればまた物価の高騰が始まるということでもある。どちらが良いのか分からなくなってくる状況である。

上がり続ける住宅価格

ではいつものようにCPIの内容を見てゆこう。まずは金融緩和と現金給付によってもたらされた住宅バブルを反映している(はず)の要素、家主の見なし家賃からである。

家主の見なし家賃とは、家主が賃料を払ったと仮定して算出するCPI住宅関連の要素であり、12月の数字は3.8%の上昇となっている。


ほとんど垂直上昇である。

それもそのはずで、実際にはアメリカの住宅価格は2桁上昇となっており、3.8%どころではないのである。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏ら専門家がこの要素が住宅市場の実体を表していないとして何度も批判している。

しかしそれでも実体を遅れて表してくるのであれば、家主の見なし家賃はこのまま上がり続けるだろう。そしてそれはコロナの波による経済の短期的な落ち込みにも影響されていないように見える。

エネルギー価格は一旦停止

次はエネルギー価格である。化石燃料の供給を無理矢理制限する脱炭素政策のために怒涛の上昇を続けていたエネルギー価格だが、12月は29.6%の上昇となり、11月の33.5%からやや減速した。


これは原油価格が冬より前に上がりきったこと、そしてオミクロン株が発見されたことで11月に下落を始めたことが原因だろう。アメリカの原油価格のチャートは次のようになっている。


原油価格はコロナの波をある程度反映する推移となっている。CPI全体の夏の踊り場も夏の原油価格の下落が一定の役割を果たしているだろう。

結論

だが原油価格は回復している。今後物価はどうなるだろうか。現在7.1%の物価の今後の推移がアメリカの利上げを左右し、アメリカの利上げが世界の株式市場の命運を握っている。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
まず今短期的に経済を抑えているコロナには波があるので、アメリカでは春前には状況は今よりは良くなっているだろう。

更に物価全体、そして原油価格に影響を与えるのが、金融政策の水準である。そしてアメリカの中央銀行が今どうしているかと言えば、インフレ率が7.1%の高さにある中で、金利を0%から0.75%に上げるかどうかを話し合っている。

12月FOMC会合結果: 利上げ3回示唆でタカ派に転換も株価は上昇
それでインフレが止まるわけがないのである。1970年代の物価高騰では政策金利をインフレ率より上に上げなければインフレは止まらなかった。

何度も言うが0.75%は低金利である。しかしその低金利でさえ株式市場を殺してしまうかもしれない。

マイナード氏: 来年の利上げは株価にとって危険
アメリカ経済は完全に終わっている。中央銀行はいずれ利上げの更なる加速を表明し、株式市場は下落するだろう。慌てた中央銀行が緩和を再開し、ドルが暴落するところまでを専門家は既に織り込んでいるのである。

サマーズ氏: 中央銀行と市場はインフレを過小評価、政策金利は2.5%以上まで上がる
世界最大のヘッジファンド: ドルとユーロと円は暴落する

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18620

16. 2022年1月15日 20:27:32 : GhTxcLiTVY : UmtDRE9QTUIzckk=[19] 報告
ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
2022年1月14日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18701

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社主催の会議で皮肉を飛ばしまくっている。親しい人々と話しているためか、Bloombergなどでのインタビューよりも自由に話しており、いつものインタビューより見ものになっている。

現金給付とインフレ

ガンドラック氏はアメリカで現金給付が引き起こした7%のインフレを次のように皮肉る。

4時に10億ドルを国民全員の銀行口座に振り込み、5時にまだインフレが起こっていなければ、フェラーリの店舗前の行列はなかなかの見ものになっているだろう。

これは大げさな言い方だが、現金給付とは要するにそういうことだ。コロナで生産能力が落ちている状況で何兆ドルもの資金をばら撒けば、物価が上がるということは頭の良い12才児なら分かるだろう。

しかしFed(連邦準備制度)のパウエル議長は残念ながら頭の良い12才児ではなかった。ガンドラック氏ら著名投資家がインフレを警告してから1年以上にわたり、インフレは一時的ですぐ収まると言い続け、最終的には誤りを認めることとなった。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ
ガンドラック氏は次のように続ける。

これはFedが面目を失った数多くの例の1つに過ぎない。「サブプライムローンは制御されている」「インフレは一時的だ」、しかし本当に分からなかったのだろうか?

中央銀行が何故ここまで外し続けるのか、筆者を含め金融の実務家にはむしろ謎である。読者には分かるだろうか? 筆者には何故彼らがここまで逆を行けるのか正直まったく分からない。

インフレを支える賃金上昇

また、会議の参加者が指摘したのは現金給付はものを買うために使われるから物価を上昇させるだけでなく、例えば共働きの夫婦などは現金給付や手厚すぎる失業保険のために片方が働かなくとも良くなったということである。

失業保険が手厚すぎるために人々が働くよりもむしろ失業したがるというのはガンドラック氏が以前より指摘していたことである。

ガンドラック氏: 現金給付と失業保険が失業を悪化させる
それで労働者の数が減り、企業は労働者を確保するためにより高い賃金を払う。そしてより高い賃金とインフレへの恐れ、そして低金利は、人々を住宅購入に向かわせる十分過ぎる動機である。そして住宅バブルが止まらなくなる。

ガンドラック氏は次のように続ける。

消費者物価は7%前後の上昇率で、アトランタ連銀によると賃金上昇率は4.3%、そして30年の住宅ローン金利は3.25%となっている。つまり、ローン金利はインフレを差し引くとマイナス金利となっている。

賃金が住宅ローン金利よりも早く上昇すると確信している場合、ローンは実質的に無料の資金だ。

何故ならば、金利は今後の賃金上昇で賄えると考えるからである。もっと言えば、Fedが3回利上げを行なって政策金利が0.75%になったとしても、インフレ率が7%なら、どうして0.75%の金利でお金を借りて金属や穀物などを買わないだろうか? 0.75%を払っても買ったものが7%上昇するのである。

ガンドラック氏はこう続ける。

それが住宅市場の背景にある要因であり、住宅バブルが近い内に落ち着くことはほとんどありえない。

インフレと株式市場

中央銀行はこのようにしてインフレ予測に失敗し、早く対処していればそうならなかったであろう水準まで利上げをすることを強いられる。

それは明らかに株式市場と実体経済を殺してしまうだろう。そして景気後退に陥り、金融緩和が再開される。これをもう何十年も繰り返してきたのである。

ガンドラック氏は次のように言う。

同じ映画を繰り返し見ているようだ。そして同じ映画が繰り返されるたび、政策金利は低くなってゆく。それが40年も続いている。経済を支えるために必要な政策金利がどんどん低くなる。

それが金融緩和の限界である。そうして市場と経済が低金利に依存してゆくために、少しの利上げで両方が崩壊するようになる。ガンドラック氏は次のように補足する。

最後の利上げでは、金利をたった2.5%近辺まで上げたところで市場は崩壊した。

それが2018年の世界同時株安である。当時の記事を見てもらえば分かるが、パウエル氏は最後まで責任を認めなかった。

12月FOMC会合結果は空売り派への満額回答 (2018/12/20)
今回はどうなるだろうか? 彼はこう続ける。

ここ何ヶ月かの債券市場の動きを見ていると、現在の市場では政策金利が1.25%まで上がっただけで市場が崩壊してしまいそうだ。

しかしガンドラック氏は今の株価水準について割高でないと主張する。

株式市場が他のすべてのものと同じように投機でバブルになっていることには同意するが、10年物国債の金利が同じ水準にある限り、歴史的水準と比べて株価は高くない。

だが問題は次の部分である。

しかし少しでも金利が上がり始めると、非常に急速に割高になってゆく。

そして4回前後の利上げで崩壊するだろうということである。

結論

乗りに乗ったガンドラック氏は次のようなことまでぶっちゃけてしまう。

はっきり言ってFedがある意味が分からない。Fedは2年物国債の金利で代替可能なのではないか?

そもそもパウエル議長が利上げに転換せざるを得なくなったのは、2年物国債の金利が利上げを織り込み始めたからである。市場が利上げは不可避だと先に判断し、それにパウエル氏が従った。

ガンドラック氏は次のように続ける。

2年物国債がゼロ近辺にある時には、利上げがないと分かる。0.75%まで上がれば、2022年に恐らく3回の利上げがあるということが分かる。何故か? 他でもない2年物の金利が利上げ3回と同じ水準まで上がったからである。

700人以上の博士号を持ったエコノミスト? 何というお金の無駄遣いだろう。ブルームバーグ端末で2年物国債を眺めていれば十分じゃないか。

それに彼らを全員解雇すれば賃金インフレの抑制の助けにもなるのではないか。

日銀などもう5年もほとんど何もしていないではないか。そして彼らの高い給料を自分が払っているということを納税者は分かっているのだろうか? そしてこうしたことはすべて大経済学者のフリードリヒ・フォン・ハイエク氏が何十年も前に主張していたことなのである。今更ではないか。

ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18701

17. 中川隆[-14170] koaQ7Jey 2022年1月16日 08:07:48 : b4icEK6wIg : U2YxOWdnZXY2UFE=[2] 報告
ガンドラック氏: ドルが下落しないのは向こう見ずな日欧の投資家がドル資産を為替ヘッジなしで買っているから
2022年1月15日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18774

引き続きDoubleLine Capital主催の会議より創業者ジェフリー・ガンドラック氏の相場観を紹介する。今回は長期金利の水準とドルの下落に関する部分である。

高くならない長期金利

前回の記事でガンドラック氏は、株価は債券と比べるとまだ割高ではないと主張していた。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
金融の実務家は通常、株価水準を国債の魅力との比較で考える。株式に投資して値上がりと配当を貰うのが良いか、それとも長期国債に投資して数パーセントの金利を貰うのが良いか、投資家は考えるからである。

国債の金利が高ければ株式よりも国債を買おうということになり、株価にはネガティブになる。逆に金利が低ければ国債に投資しても仕様がないということになり、株価にはプラスとなる。

ガンドラック氏は今回、この話をもう少し掘り下げている。

株価が金利水準に比べて高くないという話は難しい問題だ。何故ならば、株式のリターンと比較対象となる金利は10年物国債だからだ。

10年物国債はほとんど上昇していない。10ヶ月前よりむしろ下がっている。

アメリカの10年物国債(つまり長期金利)のチャートは次のようになっている。


この会議の収録直後にようやく10ヶ月前より高い水準に達したのだが、金利はインフレ率と実質金利の足し算で出来ており、7%のインフレと金融引き締めがある中で長期金利がほとんど上がっていないという事実を考えてみてほしい。

ガンドラック氏は次のように続ける。

わたしも顧客にいつも聞かれる。インフレにもかかわらず何故金利はこんなに低いんだ?

これは複雑な問題だ。金銅の価格比のような指標の歴史的水準を考えると、10年物国債の金利は少なくとも3%以上であるべきだ。

だから中央銀行が金利を上げても10年物国債の金利は上がらないかもしれない。

それが恐らく、アメリカ経済のお先が真っ暗であるにもかかわらず株価が史上最高値付近を維持している理由なのだろう。同じく債券の専門家であるマイナード氏が同じ主張をしていることは興味深い。

マイナード氏: 利上げの初期には株を買え
マイナード氏: 利上げ強化でアメリカ経済は墜落するがそれまでは株高継続へ
ドルが下落していない理由

しかし利上げにともなって短期金利は上がり続けるだろう。以下の記事で筆者が予測した通りの状況である。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想 (2021/9/5)
そして長期金利は短期金利の上昇に押されることになる。

また、ガンドラック氏がアメリカの低金利の理由としてやり玉に挙げたのが日本とヨーロッパの投資家である。

多分、日本やヨーロッパの投資家がアメリカの資産に投資をする時にヘッジをしていないのだろう。ドル建ての資産を買い、そして当分の間為替ヘッジをしないことを選択する。

何故か? トレンドはフレンドだからだ。「ドルは下落していないし、去年はむしろ上がったじゃないか?」。彼らはそれに頼っている。

日本やヨーロッパの投資家たちがアメリカの10年物国債を為替ヘッジなしで買う。ドルが下落しないという前提に根拠はない。これがドルを支えているというわけである。

ドルと株価が同時に暴落する

ガンドラック氏は次のように続ける。

だがそれはいつか逆流する。量的緩和が終了し、10年物国債の金利が上昇するとき、すべてのリスク資産に大きな問題が生じる。

金融引き締めが本格的となるとき、そして米国債や米国株の価値が下がり始めるとき、ドルへの資金流入は逆流するだろう。

今や中央銀行は量的引き締めさえ考慮に入れている。3ヶ月前までは量的緩和を当面続けると言っていた。それがすぐに6月までに緩和停止、3月までに緩和停止となり、バランスシートの縮小を議論するとこまで来ている。

これは2018年終盤と同じシナリオだ。それが過大評価されたすべての資産を崩壊させる。

ガンドラック氏は当然ながら、バランスシートを縮小する量的引き締めで世界同時株安が起こった2018年末のことを言っている。ここではリアルタイムで実況していたから、覚えている読者も多いはずである。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
そして2018年と同じように、株価の下落がドルへの資金流入を逆流させ、多くの人がドル資産を投げ売りし、ドルを投げ売ることになる。それがドル下落のタイミングとなるということである。

為替ヘッジなしで米国株や米国債に投資している日本やヨーロッパの投資家は全滅になるだろう。

彼らの多くは銀行や金融庁にそそのかされて投資信託を買ったり、インデックス投資は安心と何の根拠もなく信じたりしているのだろうが、中央銀行さえ素人なのだから、銀行や金融庁に何が分かるだろうか。よく考えてみてもらいたい。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18774

18. 2022年1月17日 17:52:52 : oddckM36N2 : N1JaZUMySlBoYVE=[6] 報告
世界最大のヘッジファンド: インフレでも株式は魅力的な投資先
2022年1月16日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18814


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がCNBCのインタビューで株式市場に強気の発言をしている。これだけのインフレと、それを抑制するための利上げ観測があるにもかかわらず、世界最大のヘッジファンドは株式を魅力的な投資先と見ているようだ。

まだ3年目だ

ダリオ氏の根拠は主に2つあるように思える。まず1つ目はまだまだ金融引き締めの序盤だということだ。ダリオ氏は次のように説明する。

現金給付が行われ大量の資金が流れ込み、これらの資金が使われてインフレを醸成するというサイクルのまだまだ序盤だ。歴史上、こうした局面では商品やサービスや金融資産の価格が上昇してきた。

物語は恐らくコロナで株価と経済がどん底まで落ちた2020年から始まるだろう。そこをスタートとして、現金給付と金融緩和によって株価も経済も無理矢理浮揚させられてきた。

当然そこから金融緩和は縮小され、次第に利上げなどの金融引き締めが始まる。これがいつもの流れであり、いつものサイクルなのだ。2008年のリーマンショックの後も、量的緩和開始からの量的緩和停止、そして利上げと量的引き締め、その後の2018年世界同時株安まで、上がってから下がってきたのである。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
それまで10年掛かった計算になる。利上げはサイクル開始から7年後の2015年に始まったが、株価暴落で利上げが利下げに転じるまでには利上げ9回、その後3年の年月がかかっている。利上げ開始から株価暴落までは時間がかかるのである。


今回のサイクルが始まったのは2020年だ。3年目に利上げをしなければならないという意味でサイクルは縮小されてはいるが、ダリオ氏はまだまだ序盤だと主張しているのだ。彼は次のように続ける。

今はまだまだこのサイクルが始まって3年目で、当然ながら中央銀行の金融引き締めが始まるが、この金融引き締めの問題点は、市場と経済が金利に対して非常に敏感になっていることだ。

金融緩和をやり過ぎてしまったために、それを少し元に戻すだけでかなり難しいことになってしまう。

しかしこのサイクルは通常3年では終わらない。

重要なのは、Fedや他の中央銀行がマイナスの実質金利を保たなければならないだろうということだ。

これは債券投資家スコット・マイナード氏の意見とも一致する。

マイナード氏: 利上げの初期には株を買え
株式か現金か

株価が下落するためには金利上昇によって現金や債券が株式よりも魅力的になる必要があるとダリオ氏は指摘する。そうなって初めて株式から現金や債券への資金流出が始まるのである。

だが現金か債券は魅力的だろうか? ダリオ氏はこう指摘する。

預金の実質リターンはマイナス4%だ。

すべての投資家は、現金や債券を持っていては価値が目減りしてゆくという現実に直面している。

勿論インフレのお陰である。実質リターンとはインフレ率を引いたリターンのことだ。アメリカのインフレ率は最新の数字で7%となり、金利を大きく上回っている。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
つまり、数パーセントの金利収入があったとしても物価の上がるペースがそれよりも早いために現金を持っていると購買力は下がってゆくということである。

ダリオ氏はこのインフレ率と金利の関係を逆転させるのは中央銀行であるFed(連邦準備制度)には無理だと踏んでいるのだ。

いくらかの金融引き締めはあるだろうが、インフレを考慮しても現金や債券が魅力的になるほどの金利上昇を引き起こすのは無理だ。そうなるためには非常に大きな金利上昇が必要となり、何よりまず経済が駄目になってしまうだろう。

2022年の中間選挙と2024年の大統領選挙がある。Fedが景気後退を引き起こすほどの金融引き締めを行なってしまったらどうなるだろうか?

Fedのパウエル議長はそもそも利上げをやりたがっていなかった。自分の利上げが2018年の世界同時株安を引き起こしたからである。

12月FOMC会合結果は空売り派への満額回答 (2018/12/20)
それでもインフレ抑制のために利上げは不可避だということを債券市場が先に織り込み始めたために渋々利上げを了承したが、そもそも市場の言う通りに利上げをしたとしても金利はインフレ率の7%に遠く及ばない。中央銀行は金利をほとんど上げられないのである。

ダリオ氏は次のように続ける。

Fedは市場の利上げ予想より遅れて動いているが、大して追いつくことが出来るとは思えない。よって現金や債券が魅力的な投資先になることはないだろう。

それで利上げ後も低金利は続く。その後のシナリオは物価の更なる高騰だろう。はっきり言うが2022年のインフレはまだまだ序の口である。日本の読者も投資家としてだけではなく、消費者としてもインフレに備えておく必要があるだろう。

現在のアメリカの物価高騰はインフレ第1波に過ぎない


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18814

19. 2022年1月18日 07:50:19 : 3ECNedPwGs : RnhEczdWSW94cW8=[8] 報告
サマーズ氏、インフレを強欲な企業のせいとした民主党を批判
2022年1月18日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18847

アメリカの元財務長官でマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏が、先週発表されたCPI(消費者物価指数)を受けてインフレについてコメントしている。

1970年代の物価高騰を繰り返す

12月のアメリカのインフレ率は遂に7%台に到達した。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
この発表を受け、サマーズ氏はこの水準がどれだけ高いか説明している。

インフレ率が去年の2/3の水準だった時にニクソン大統領は賃金の統制を行なった。現在のインフレ水準はベトナム戦争に起因する物価高騰の頂点よりもなお高い。

これはつまり、アメリカで物価高騰が止まらなくなった1970年代におけるインフレ第1波より高い水準にあるということである。当時のインフレ率は以下のようになっている。


少し前まで1970年代のインフレのようにはならないと言っている人が何人も居たが、現在のインフレ率は既に当時の水準に達しているということである。

インフレは一時的ではない

何故物価がここまで上昇するまで放置されてきたかと言えば、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長やバイデン政権の政治家たちが何の根拠もなくインフレは一時的だと主張してきたからである。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ
彼らは最初何の根拠もなくそう主張し、次に債券投資家のスコット・マイナード氏らがコロナによる一時的な半導体不足で中古車市場が高騰していると指摘すると、その主張をオウムのように繰り返してきた。

しかしインフレはそうした一時的な要素だけではないと何度も主張してきたのが、経済学者のなかで恐らく世界で唯一、金融の実務家にも一目置かれるサマーズ氏である。この状況をこれまで警告し続けてきたサマーズ氏は次のように言う。

経済統計はわたしが言い続けた通りの展開となっている。確かにインフレのいくらかの要素は一時的なもので、それらは後退するが、全体としては根強い物価上昇に向かっている。それはインフレ期待にも賃金の上昇にも労働力不足にも表れている。

労働市場はかなりの過熱状態にある。失業者に対する求人の比率はかなりの期間なかったほど高い。カウンセラーからマクドナルドの店員まで、労働者は何処でも不足している。経済の生産能力に比べて購買力と需要は過剰となっている。

このままではインフレは高止まりするだけでなく、加速し続けるだろう。

問題はもはやコロナで一時的に生産不足となった一部の商品だけのものではなく、経済全体のものとなっている。その証拠の1つは労働市場であり、もう1つの証拠は以下の記事でジェフリー・ガンドラック氏が言及していた住宅バブルだろう。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
インフレが止まらなければ、これまで経済と株価を支えてきた低金利政策を撤回して利上げなど金融引き締めを行わなければならなくなる。これまで低金利に依存してきた経済と株価がどれだけ耐えられるかは、あまり希望のある話ではない。

サマーズ氏は次のように言う。

実体経済は過熱しており、Fedは混乱を招くことなしに経済を冷却するという本当の困難に直面するだろうが、それに成功した例は過去にほとんどない。

目を背け続ける政治家たち

しかしどうやらFedとバイデン政権はインフレに上手く対処できそうにない。そもそもインフレという事実を1年以上の間認めなかった彼らに何が出来るだろうか。

彼らは最近になってようやくインフレの事実を認めたものの、今度はその原因を他人に押し付けようとしている。

アメリカ民主党のエリザベス・ウォーレン議員などは、現在の物価上昇は「強欲な企業たち」のせいで起こったと企業を非難している。自分たちの現金給付と脱炭素政策で起こったインフレに対してあまりにも馬鹿げたことである。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
サマーズ氏はこうした政治家たちを次のように批判する。

政治家たちが現在のインフレは企業の強欲さから引き起こされたと主張するとき、雇用の安定とインフレの沈静化の両方を達成できる日はどんどん遠のいてゆく。

上で述べたように今や物価高騰は労働市場と住宅バブルの問題となっており、コロナによる一時的な供給減少の問題、あるいはウォーレン氏の主張するように(何の根拠があるのだろう?)個別の企業の問題ではなくなっている。

インフレは加速する

現在のインフレが政策金利が1%以下の低金利下で続くとき、間違いなく1970年代のような2桁のインフレ率が待ち受けているだろう。

サマーズ氏: 中央銀行と市場はインフレを過小評価、政策金利は2.5%以上まで上がる
1970年代には当時のFed議長ポール・ボルカー氏が強烈な利上げを行い、厳しい不況と引き換えにインフレを沈静化させた。サマーズ氏はその繰り返しが起こらないよう祈っている。

ポール・ボルカー氏がFedの議長となった時に必要とされたような過激な経済縮小を回避できることを祈っているし、避けられるとも思っている。

しかしインフレの原因を企業の強欲さや特定の業界のせいにするような政治家たちのやり方は、経済を最終的に景気後退に導くリスクを生じさせる。

だがバイデン政権がサマーズ氏の期待に応えるようなことはありそうもない。もはや問題は、単に経済と株式市場はいつまでもつかということなのである。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
レイ・ダリオ氏など一部の投資家は、まだもう少し猶予があると考えている。

世界最大のヘッジファンド: インフレでも株式は魅力的な投資先


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18847

20. 中川隆[-14149] koaQ7Jey 2022年1月18日 11:03:43 : 3ECNedPwGs : RnhEczdWSW94cW8=[16] 報告
金利上昇で高騰する銀行株の買い時・売り時を解説!
2022/01/14

金利上昇で高騰「銀行株」は買いか売りかホールドか?日本特有の値動きを考慮したトレード戦略=栫井駿介
2022年1月18日
https://www.mag2.com/p/money/1148067


金利上昇で株価が上がっている銀行株について、主にファンダメンタルズの方面から詳しく分析します。銀行株を持っている、またはこれから買おうとしている場合、どのような行動を取るべきでしょうか?(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)


銀行の利益はどこから?
アメリカの長期金利が上昇していて、2021年末には1.5%ほどだったものが2022年に入ると一時は1.8%を超えるまでになりました。

米国国債10年 日足(SBI証券提供)

これを受けて、「金利の上昇と言えば銀行株」ということで銀行株の株価が上昇しています。

220118_kakoi_1

しかし、PERを見てみるとまだかなり低い水準となっています。

株価が上昇しているのにPERは割安なので、まだ買えるのではないかと思えてしまいますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

まず、銀行のビジネスモデルを簡単に説明します。

銀行は、人々からの預金を企業に貸し出したり有価証券で運用したりします。

220118_kakoi_2

企業に貸し出して回収するときの利息から、人々からの預金に付く利息を差し引いたものが利ざやとなり、そこから人件費などのコストを引いたものが最終的な銀行の利益となります。(図は預金利息を0.1%、企業への貸出利息を2.0%と仮定したもの)

このように銀行のビジネスモデルは非常に単純なものとなっています。

企業に貸し出す金利は市場金利+αという形で決まるので、市場金利が上昇すれば企業への貸出金利も上がることになります。

よって、【金利の上昇=銀行株の上昇】という連想が生まれるのです。


日本の金利は上がらない!?
では、アメリカの金利が上がったからと言って日本の金利も上がるのかというところです。

短期的に見ると、確かにある程度の連動性はあります。

日本の10年利回り国債金利も今年に入って大きく上がっています。

日本国債10年 日足(SBI証券提供)
日本国債10年 日足(SBI証券提供)

そもそもなぜアメリカが金利を上げようとしているかというと、最大の理由はインフレの抑制のためです。

これはアメリカのCPI(消費者物価指数)の推移です。

米国消費者物価指数(CPI) ※出典:Yahoo!ファイナンス
米国消費者物価指数(CPI) ※出典:Yahoo!ファイナンス

物流の混乱や生産者の不足などでものの価格が上がっているところにさらに金融緩和でお金をばらまいていて、物価の上昇に拍車がかかっています。

2021年12月にはなんと7%も価格が上昇しました。

これが続くと、低所得者層や年金生活者は苦しくなってしまうので、これを抑えるために金利を引き上げて物価を下げるという動きを行わなければなりません。

ところが、今の日本のCPIはこのようになっています。

全国消費者物価指数(CPI) ※出典:Yahoo!ファイナンス
全国消費者物価指数(CPI) ※出典:Yahoo!ファイナンス

確かに物価は上がっていますが、数字を見ると、0.6%に過ぎません。

アメリカの7%に対して0.6%なので、大して上がっていないというのが正直なところです。

日本も物価が上がり始めてはいますが、これは金融緩和によるものではなく、物流費や原油価格の上昇によるいわゆる“コストプッシュ型”のインフレなので、利上げを行ったところで物価にはさほど影響がないということになります。

国内情勢だけを見ると、日本は金利を上げる必要は必ずしもありません。

しかし、アメリカの金利に合わせて上げなければならないケースもあります。

アメリカの金利が上がると、自国で運用するよりアメリカに持って行って運用するほうが利益が出るということになるので、世界中からアメリカにお金が集まる、つまりドルが買われ、ドル高となります。

円安ドル高となってしまうと輸入物価が上昇してしまうので、それを抑えるために利上げを行ってアメリカに流れてしまったお金を引き戻さなければならないという側面があります。

一方で、日本には輸出企業が多く、円安になると海外競争力があがるので、円安はどちらかというと歓迎される向きがあります。

したがって、円安になったからと言ってそう簡単に利上げを行うかというと必ずしもそうではありません。

また、ドル/円のレートを見ても、今は1ドル=115円といったところで、過去と比べてもそこまで円安の状況ではありません。

米ドル/円 月足(SBI証券提供)


【関連】1ドル130円超に備えよ。日銀が円安を放置する3つの理由とは?逆風・追い風が吹く企業も解説=栫井駿介
https://www.mag2.com/p/money/1127780


この間も日本の政策金利はほぼゼロでしたから、それでもそこまで円安になっていないので、日本はそう簡単に金利を上げないのではないかというのが私の考えです。


銀行の業績と金利の関係
しかしながら、メカニズムとしてはアメリカの金利が上がれば日本の金利も上がりやすいというところがあるので、仮に日本の金利が上がった時のことを考えてみましょう。

三菱UFJフィナンシャルグループを例に、金利と業績の関係を見てみます。

220118_kakoi_5

直近10年で、日本の金利は右肩下がりとなっていて、1%あったものがほぼゼロというところになっています。

しかし、1株当たりの利益は横ばいで、業績(株価)もほぼ横ばいとなっています。

長期的に見ると、金利と業績はあまり連動していないという結論がここから導き出せます。

したがって、今、金利の上昇で銀行株が上がっていますが、そんなに長くは続かないのではないか、という仮説が立てられるわけです。

では、金利と業績がなぜ連動しないのかということを考えてみます。

1つ目の仮説として、1%以下の微々たる金利変動では業績にそれほど影響は与えないのではないかというものです。

金利に対する業績の感応度はそれほど高くないということです。

逆に言えば、金利が2%3%と大きく上がっていくようであれば業績(株価)にも影響が出る可能性があると考えます。

2つ目の仮説は、銀行の利益の本質は「長短金利差」なのではないかということです。

先ほどは銀行の利益は運用金利(企業への貸出金利)から調達金利(預金利息)を引いたものと言いましたが、運用金利が上がる時には同時に調達金利も上がることになるので、単純に金利が上がったからと言って利益が増えるというわけではありません。

これは「イールドカーブ」と呼ばれるもので、金利とその償却期間の相関関係を表したものです。

220118_kakoi_6

期間が長くなるほど金利が上がっています。

預金者には6ヶ月や1年など比較的短い期間で利息を払い、企業には3年・5年といった長い期間で貸し出し、その金利の差が銀行の利益となります。

この長期と短期の金利差が大きくならないと銀行の利益は上がらないということになります。

イールドカーブの傾きが上がった時(スティープ化)、初めて銀行の利益が上がります。

しかし、長い期間で貸し出すと当然リスクも大きくなるので、今日本の銀行はそのリスクを下げようとして貸出期間を短くするという動きをしています。(レギュレーションの短期化)

それによって、この長短金利差の恩恵をあまり受けられなくなっているのです。

3つ目の仮説として、オーバーバンキングによる金利競争というものがあります。

実は今、預金量自体はどんどん増えています。

しかし、それを貸し出す先が無いのです。

国債で運用してもそれこそ金利がゼロに近いですから、できれば安定的に金利を払ってくれる優良企業に貸したいところですが、企業の方にも資金需要があまり無く、仮に借りたい企業があったとしても、貸したい銀行がたくさんあるので、より金利が低い銀行から借りようとし、どんどん金利が引き下がることになります。

長期金利とは直接関係なく、銀行は利益を得にくくなっているところです。

以上のことから、短期的な株価を見れば、金利が上がれば銀行株が上がりやすい側面がありますが、長期的に見ると、株価が上がり続けるためのベースとなる業績は簡単には上がらないということが言えます。


売る?買う?ホールド?銀行株の扱い方
結論としてはこうなります。

1. 国内金利が米国と連動して上がるかどうかは不透明
2. 国内金利が上昇したとして、過去10年の業績・株価の連動性は低い
3. 上昇基調の継続あるいはイールドカーブの鋭化があれば、長期的な株価の伸びも期待できる
(3)に関しては、金利やイールドカーブの状況によるので、事前に予測するのはなかなか難しいと思われます。

これを受けて、投資家はどのように動くべきか、私から提案させていただきます。

割安感もあり、既に銀行株を保有しているなら、もう利確のタイミングを探っても良いのではないかと思います。

このグラフを見れば分かるように、株価はボックス圏で、上がったり下がったりを繰り返しています。

(SBI証券提供)
(SBI証券提供)

なぜこのような動きをするかというと、銀行に成長性が見込まれておらず、上がったら早めに売ろうと考えている投資家が多いからです。

これから右肩上がりで上昇し続けることは、よほど金利が上がり続けたり長短金利差が広がり続けない限り、難しいと思われます。

したがって、ここまで上がればラッキーと思っていったん売るということを検討するべきだと思います。

配当目的で保有しているのなら、配当利回りは4%くらいあり、配当としては手堅いので、そのまま持ち続けても良いと思います。

1つの方法として、先ほども示した通り株価はボックス圏で動いているので、上がった時に売って下がったら買いなおすというのも配当株の買い方としておすすめです。

今、上昇しているのでこれから買おうとしている方も多いと思います。

確かにこの上昇トレンドでPERも低いので、上昇がしばらく続く可能性も大いにあります。

しかし、やはり成長性は厳しいですから、どこかで下げに転じることが考えられます。

今から買ってすっと放置というわけではなく、どこで売るかを意識したうえでエントリーするべきだと考えます。

まとめ
1. 割安感で保有していた人 → 利確のタイミングを探る
2. 配当目的で保有していた人 → 基本保有継続だが利確もアリ
3. これから買おうと思っている人 → まだ悪くないかもしれないが、売りどきは意識

21. 2022年1月19日 20:45:46 : HuHSGoKygw : WWpVMi5ZRnhCRC4=[11] 報告
金融市場、今年5回以上の利上げを織り込み始める 株式市場は風前の灯火
2022年1月19日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18899


アメリカのインフレが止まらない。そして同じように、インフレを抑制するための利上げも止まらなくなりそうだ。利上げで間違いなくダメージを受ける株式市場の運命は風前の灯火である。

金融引き締め加速へ

覚えている読者がいるかどうかも分からなくなってきたが、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)のパウエル議長が当面の間は量的緩和とゼロ金利を継続すると言っていたのはたった2ヶ月前の話である。

それがテーパリング(量的緩和縮小)の加速に追い込まれ、その後2020年内に3回の利上げを表明するところまで本当にたった数週間程度の話だった。

パウエル議長、ついに「一時的」を撤回しテーパリング加速を示唆 (2020/12/1)
12月FOMC会合結果: 利上げ3回示唆でタカ派に転換も株価は上昇 (2020/12/16)
そしてそれももはや変わるかもしれない。アメリカの債券市場が3回どころか今年中に5回以上の利上げを織り込み始めたからである。

止まらない短期金利上昇

以下の記事で債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が言っていたように、そもそも緩和を続けたかったパウエル議長が利上げに追い込まれたのは、物価高騰で利上げは不可避と見た債券市場が、今後の利上げ予想を織り込んで推移する2年物国債の金利を上昇させ始めたからである。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない
それでパウエル氏も慌てて追従することとなった。ガンドラック氏はどうせ2年物国債が政策金利を決定するのだからFedは要らないではないかと言っていたが、パウエル氏に代わって中央銀行業務を行なっている2年物国債の金利がその後どうなっているかと言えば、次のようになっている。


これがアメリカの中央銀行の仕事ぶりである。パウエル氏はこれを見て、そろそろ利上げ回数を3回から増やさなければならないと思い始めているだろう。Netflixを眺めているティーンエイジャーでも同じ仕事が出来るのではないか。

上の記事でガンドラック氏の言っていたことをもう一度思い出したい。

2年物国債がゼロ近辺にある時には、利上げがないと分かる。0.75%まで上がれば、2022年に恐らく3回の利上げがあるということが分かる。何故か? 他でもない2年物の金利が利上げ3回と同じ水準まで上がったからである。

では1.1%という現在の水準が利上げ何回分かと言えば、1回の利上げは0.25%なので、4回か5回である。

これとは別に金利先物市場における年末までの利上げ回数の織り込みを見てみると、次のようになっている。

2回: 5.2%
3回: 18.2%
4回: 31.4%
5回: 28.5%
6回: 13.3%
7回: 2.7%
少し前まで年内3回の利上げがメインシナリオだったものが、4回がメインシナリオになり、しかも5回の利上げがある確率と拮抗し始めている。このまま行けば5回がメインシナリオとなり、6回の可能性も見えてくるだろう。

利上げと株式市場

言うまでもなく、これまで金融緩和で上昇してきた株式市場にとって利上げはマイナス要因である。

株式市場は大丈夫なのだろうか? ガンドラック氏が次のように言っていたことを思い出したい。

ここ何ヶ月かの債券市場の動きを見ていると、現在の市場では政策金利が1.25%まで上がっただけで市場が崩壊してしまいそうだ。

その水準まで既にかなり近づいている。その他にもマクロ経済学者のラリー・サマーズ氏などは4回の利上げが危ないと指摘し、筆者も4回前後が限界だと見ているが、今年の金利予想は既にほぼその水準に到達しているということである。

サマーズ氏: 市場を急落させても4回の利上げが必要
利上げでインフレは止まるか

言うまでもなくそれはインフレを抑えるために必要だからである。

だが考えてもらいたいのだが、仮に5回利上げしたとして、政策金利は1.25%になるが、現在のインフレ率は7.1%である。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
7.1%のインフレ率に対して1.25%の政策金利、つまりそれは超低金利である。

金融緩和で自国通貨を暴落させたトルコのエルドアン大統領の息の掛かったトルコの中央銀行は、インフレ率が19.9%で政策金利が15%となっている状態を「金融引き締め」と呼んだ。

物価高騰と金融緩和でトルコリラが暴落中
西洋諸国はこれを笑っていた。しかし考えてほしいのだが、インフレ率を差し引いたトルコの実質金利はおよそ-5%、一方でアメリカの実質金利はおよそ-6%となり、(仮に5回の利上げが行われたとしても)むしろアメリカの方が常軌を逸した金融緩和状態なのである。ちなみに利上げがまだ行われていない現在の実質金利は-7.1%である。

結論

どう考えても利上げはインフレを止めるには不十分であり、株式市場を暴落させるには十分な水準に到達しつつある。インフレは止まらなくなるだろう。今年の半ばにはインフレ率が2桁を越えている可能性も十分にある。その段階で利上げはまだ1回か2回しか行われていない計算である。

筆者の予想では、株式市場を暴落させる水準まで利上げをしなければならないという事実が春か夏頃までには明らかになり、市場はパニックになるだろう。

それまで株式市場は上昇するという見方もある。だが間違いなくプロ向けのチキンレースであり、筆者はお勧めしない。

マイナード氏: 利上げの初期には株を買え
世界最大のヘッジファンド: インフレでも株式は魅力的な投資先
この相場で必要なのはスタグフレーションに賭けるポジションである。もう何十年もスタグフレーションは起こったことがないので、これに対応できる投資家はほとんどいないだろう。以下の記事などを参考にしながらこの難しい相場を乗り切ってもらいたい。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18899

22. 中川隆[-14107] koaQ7Jey 2022年1月21日 12:13:10 : 8TUb5hYdHg : dDF5OVNWVlpkLk0=[14] 報告
2022年のスタグフレーションに投資する方法
2022年1月20日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18949


年始から著名投資家の相場観の紹介に忙しかったため、なかなか書けていなかったが、2022年の投資戦略について包括的に書いてみよう。

インフレと景気後退の合わせ技

2022年のテーマはスタグフレーションである。

スタグフレーションとはインフレと景気後退が同時に来ることである。物価は需要と供給に左右されるが、景気が後退すると通常需要も後退するため、物価押し下げの要因となることが多い。つまりはデフレである。

ここ数十年の間、経済のテーマはデフレと景気後退だった。インフレが起こることはなかった。だがデフレにあぐらをかいて、どんなに紙幣を印刷してもインフレにはならないと高をくくって紙幣をばら撒き続けた結果、アメリカでは前年比7.1%の物価高騰が起こっており、しかも収拾の目処は立っていない。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%
リフレ派の似非経済学者たちにインフレは良いものだと教えられてきた多くの人々は、スーパーの食料品の値段が上がり始めてようやく、インフレとはものが同じ値段で買えないことだという事実に気づいたようである。面白い話ではないか。政府やマスコミの言うことを信じるからそういうことになるのである。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
結果として中央銀行は金融緩和の撤回、そして金融引き締めを強いられている。しかし利上げを行うとインフレが抑制されるより先に株価が暴落するということは、以下の記事を読んだ人には確実に思える話だろう。

金融市場、今年5回以上の利上げを織り込み始める 株式市場は風前の灯火
インフレ対策とは違うスタグフレーション対策

このままでは物価高騰は止まらず、先に景気後退が来そうである。景気後退にもかかわらず物価上昇が収まっていない状態、つまりスタグフレーションは、著名投資家やここの読者には2022年のメインシナリオである。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏などは半年以上前からこの状況を的確に予想していた。

ガンドラック氏: インフレが後退するなら景気も後退 金価格高騰へ (2021/6/14)
今後の経済動向を予想するのは簡単である。それはスタグフレーションである。

しかし投資家にとってはややこしい問題が待ち構えている。スタグフレーションに賭ける投資は、インフレに賭ける投資よりも複雑だということである。

単にインフレに賭けるだけならば、ゴールドやシルバー、原油や大豆やコーンなどを買えば良い。暗号通貨も上がり続けるかもしれない。物価が上がるのだから、ものを買えば良いのである。金融市場で売買できるこうした商品はコモディティと呼ばれている。

事実、コモディティ銘柄はインフレを織り込んで1年半前から上昇してきた。ここではそうした動きを最初から報じ続けている。

金融市場にインフレの兆し: 金、原油、穀物価格が高騰 (2020/10/14)
例えば原油価格は次のように推移している。


だが2022年、金融引き締めは経済成長を殺してしまうだろう。そうなれば株価は暴落し、それはこうしたコモディティ価格にもマイナスに働く。リーマン・ショック時に金価格が暴落していることを思い出したい。

リーマンショックで急落した金価格、上昇した米国債
スタグフレーション相場では、単にコモディティ銘柄を買うだけでは駄目なのである。

スタグフレーションへの賭け方

では投資家はどうすれば良いだろうか?

まずはスタグフレーションとはそもそも何であるかを思い出したい。まず名目経済成長率とはインフレ率と実質経済成長率の和である。

名目経済成長率 = インフレ率 + 実質経済成長率
スタグフレーションとは、この内インフレ率はそれほど下がらないが、実質経済成長率が下がってしまう状態のことである。結果として名目経済成長率は必ずしも下がるわけではない。

この名目と実質ということが重要である。例えば株価はインフレを差し引きしていないので名目の数字であり、(銘柄にもよるが)インフレはプラスに働くものの実質経済成長率の減少はマイナスに働く。

この状況で株式という資産クラスが微妙なのは、インフレというプラス要因と実質経済成長率減少というマイナス要因の両方の影響を受けるからである。グロース株など銘柄によってはインフレもマイナス影響となり、そうしたものはむしろ空売り対象だろう。著名投資家も手を引き始めている。

ドラッケンミラー氏、やはりインフレ懸念でハイテク株を利益確定
ジョージ・ソロス氏、インフレトレードを継続 ハイテク株は一部利益確定
そこで、投資家は「名目の成長率からインフレを差し引いたものが下落する」ことに賭ける必要があることが分かる。

名目のものとは、例えば株式である。

一方でインフレに連動するものには金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ銘柄がある。

ここまで言えば多くの読者には分かるのではないか。株式を空売りして、同額のコモディティを買うのである。そうすれば「名目からインフレを差し引いた、実質的な価格減少に賭けるポジション」が出来上がる。それこそがスタグフレーショントレードである。

スタグフレーションで空売りすべきもの

しかし株式と言っても様々な種類がある。2018年の世界同時株安からの読者は実体験として覚えているだろうが、株価暴落と言ってもすべての銘柄が同時に下落を始めるわけではない。

2018年の例ではまず中国株などの新興国株が下落し、次に日本やヨーロッパなどの株式が下落し、米国株が下落した。

同じ国の株式市場でも株価指数に採用されている大型株が下落するのは最後で、日本のマザーズやアメリカならRussell 2000など小型株指数から先に下落する。詳細は当時の記事を読んでもらいたい。

遂に米国株にも減速の兆し (2018/10/8)
世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
また、ガンドラック氏は大型株より先に下落するものとしてジャンク債を挙げており、金利上昇に耐えられない銘柄としては随一のものであるので、筆者もお勧めしている。

ガンドラック氏: 株価急落のタイミングはジャンク債が教えてくれる
ジャンク債の空売りは安全なヘッジになるか
こうした階層構造をランク分けすると次のようになるだろうか。

ランク1: S&P 500など
ランク2: Russell 2000、日本株、欧州株、ジャンク債など
ランク3: 日本や欧州の小型株、新興国株など
現状、ランク1はまだ上昇基調であり、ランク2は横ばい、ランク3は下落済みという感じである。

2018年の例ではランク2はランク1が下落する相場の最後まで上がらずに横ばいを続けたケースが多かった。日本株については最後に一瞬だけ上がったのでそういう可能性もあると考えるべきだが、ランク2の中で分散して空売りしておけばリスクは大きくないだろう。

バブルの頂点で日経平均は上昇、空売りを淡々と継続 (2018/9/20)
スタグフレーションで買うべきもの

一方で同額買うべきものはコモディティである。あるいは株式の中でもコモディティを産出する銘柄についてはコモディティ扱いしても良い。小型株指数とのロングショート(買いと空売りの組み合わせ)はまさにスタグフレーショントレードである。

具体的にはどうだろうか。筆者はそろそろゴールドに手を出して良いと考えている。(しかし上記の空売りと組み合わせたスタグフレーショントレードとしてである。)


ゴールドはこれまでコモディティの中では売られてきた方である。これは利上げがゴールドにマイナスだったからだが、現状の利上げペースではインフレを止められないということがはっきりしてきた今はゴールドに風が向き始めているだろう。

また、現在のインフレのもう1つの原因は脱炭素政策である。化石燃料の供給を強制的に減らしたために化石燃料が高騰している。

サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない
脱炭素に取り憑かれたフランスなどは天然ガスの高騰に現金給付で対応してまさに火に油を注いでいる。

フランス、インフレ対策で現金給付へ
彼らはどうしても化石燃料を使いたくないため、ヨーロッパでは原子力発電に予算が組まれるなど原発が再注目されている。

原油や天然ガスに直接賭けるのも悪くはないが、天然ガスや原子力などの関連株式銘柄に割安なものがまだ残っている。

そして最後に紹介するのが農作物である。今回のインフレの問題は1970年代以来の大問題だが、農作物にはまだ10年来の高値さえ越えていないものが山ほどある。

例えばとうもろこしである。


他には大豆もある。


とうもろこしと大豆はバイオエタノールの原料となるためエネルギー価格高騰と連動する。

連動しないものとしては、小麦などはまだまだ安いだろう。


また、コモディティでも中国バブル崩壊の影響が大きいものは避けるべきだろう。中国の影響の少ないコモディティと大きいコモディティでロングショートを行うことも出来る。中国については詳細は別の記事に譲りたい。

サマーズ氏: 中国恒大集団のデフォルト危機は日本のバブル崩壊と同じで極めて深刻
恒大集団倒産と中国不動産バブル崩壊で空売りすべき銘柄リスト
結論

以上、買いと空売りを組み合わせたスタグフレーショントレードを紹介した。まとめると、買うべき銘柄は以下のものである。

ゴールド
エネルギー資源や関連銘柄の安いもの
とうもろこしや大豆、小麦など農作物
空売りすべき銘柄は以下のものである。

米国小型株指数
日本株やヨーロッパ株
ジャンク債
中国関連コモディティ
このように、スタグフレーショントレードはインフレトレードよりもよほど難しく、しかもここ何十年もスタグフレーションは起こったことがないため、経験ある投資家は世界にもほとんどいないだろう。

また、物価水準に基づいたトレードの第一のものは米国債のトレードであり、筆者の第一のポジションもそれであることは、もう一度述べておきたい。以下の記事で詳しく説明している。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想

https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/18949

23. 2022年1月27日 09:33:46 : sUlbBSxYZw : VDIxWXo3Vmwud3c=[18] 報告
マイナード氏: アメリカは2018年世界同時株安を繰り返そうとしている
2022年1月25日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19117


Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏が顧客向けのレポートでアメリカの利上げがインフレではなく株価を殺してしまう可能性について語っている。やはり優れた投資家は誰もが2018年の株安を思い出しているようである。

量的引き締めの脅威

Fed(連邦準備制度)は元々インフレは一時的なものに過ぎないのでゼロ金利政策を当面維持すると言っていたが、ここ数ヶ月の間にまず量的緩和を縮小し始め、次に今年3回の利上げを宣言し、しかも最近では一部メンバーがバランスシートを拡大した量的緩和を逆回し(縮小)する量的引き締めにまで言及するという豹変ぶりを見せている。

12月FOMC会合結果: 利上げ3回示唆でタカ派に転換も株価は上昇

量的引き締めとはつまり、市場に資金を注入する量的緩和とは反対に市場から資金を吸い上げるということである。Fedの一部メンバーは物価高騰を止めるために量的引き締めもやむを得ないと考えている。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%


この状況についてマイナード氏は次のように述べている。

2018年にFedが利上げを行いながら実行した前回のバランスシート縮小が金融市場にどれほど酷い結果をもたらしたかを考えれば、Fedがまた利上げとバランスシート縮小を同時にやろうとしていることは興味深いことだ。

Fedが最後に行なった金融引き締めは、2018年の世界同時株安を引き起こした。以下は当時の株価チャートである。


当時の議長も今と同じパウエル氏であり、今回インフレが一時的なものではないと長らく認めなかったのと全く同じように、当時彼は株安が自分の金融引き締めのせいだということを認めようとはしなかった。

12月FOMC会合結果は空売り派への満額回答 (2018/12/20)
これは当時も書いたことだが、そもそも量的緩和で投資家がどれだけ株を買ってきたかということを考えれば当たり前のことである。

量的緩和で株価が大いに上がったのだから、量的引き締めでは株価が大いに下がらなければ理屈が合わない。2018年の相場では筆者だけがこの当たり前の理屈を暴落前から主張し続けたが、株価の高騰にのぼせ上がった周囲のファンドマネージャーやバンカーは誰も耳を貸さなかった。バブルとはそういうものである。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)


インフレが量的緩和バブルにとどめを刺す

だが今回の相場では2018年と違う点が1つある。インフレになっているということである。

2018年の世界同時株安は最終的にパウエル氏が間違いを認め、金融引き締めを撤回したことで収束した。

しかし今回は金融引き締めを撤回すると物価高騰がそのまま継続してしまう。株価が暴落してもインフレは金融引き締めを強いるだろう。金融引き締めが止められないとなれば、株価は何処まで下がってゆくだろうか。

特に根拠もなくリフレ派に騙されてインフレを賛美していた人々は、インフレになってようやく物価は安い方が良いという当たり前の事実に気付くようになる。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信


12才児でも分かるような事実に誰も気付かなくなる現象のことをバブルと呼ぶのである。あるいは人間は元々12才児よりも頭が悪いのかもしれない。筆者はもうこれはどうしようもないと思っている。人はあまりに簡単に騙されてしまう。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない


マイナード氏は次のように言う。

明らかに金融市場は投機家の天国となった。ミーム株、ジャンク債、アート、住宅市場、ほとんどすべてのものが青天井に上がっている。

この状況にどう収拾を付けられるだろうか。金融引き締めは緩和によって引き起こされたバブルに終止符を打ち、インフレを抑制できるだろうか。

マイナード氏の答えは、バブルに終止符を打つことは出来るがインフレは抑制できないという何とも悲観的なものである。

もし市場に予想外のショックが与えられれば、それはインフレには即座に影響を与えはしないが、既に過大評価されている資産価格には即座に影響を与え、消費者心理を冷やし経済を不安定化させるだろう。

だが予想外のショックを与えないならば、つまりインフレ率が7.1%の状況で市場の織り込み通り政策金利を1%程度までにしか上げないならば、間違いなく物価高騰は継続するだろう。

結論

現状の問題は明らかである。金融引き締めを行えばインフレよりも先に株式市場が死んでしまう。しかし行わなければ物価が高騰し、後でより大きな金融引き締めを強いられる。アメリカ経済はもう詰んでいるのである。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する


投資家に出来ることはいくつかある。まず前回金融引き締めが行われた2018年の世界同時株安を勉強することである。

2018年の世界同時株安では何から順番に暴落したかを振り返る


そしてその上でどういう投資が出来るのか考えてみるべきだろう。繰り返しになるが2022年はかなり難しい相場になる。読者の幸運を祈りたい。

2022年のスタグフレーションに投資する方法


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19117

24. 2022年1月28日 10:28:36 : 8BXFZ7d3Hw : blVPV25wWkNUY3M=[1] 報告
アメリカ、2018年の株価暴落を引き起こした量的引き締めを発表
2022年1月27日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19181


やってしまったと言うか、他にどうしようもなかったと言うか、どうだろうか。アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合の結果を米国時間1月26日に発表し、政策金利の維持を決定した。

しかし問題は同時に発表された量的引き締めである。

「バランスシート縮小の原則」

まず、ゼロ金利が今回の会合で維持されることは事前に説明したように織り込み済みである。市場では利上げ1回目は3月と織り込まれており、今回発表された声明文でも以下のようにアナウンスして3月の利上げを確認している。

雇用の最大化と2%のインフレ目標達成のため、政策金利を上げることがもうすぐ適切になると予想している。

だが今回のFOMC会合ではいつもの声明文および記者会見とは別に「バランスシート縮小の減速」と銘打たれた文書が公開された。この文章の最初にはこう書かれている。

FOMCはバランスシートの規模を大きく縮小する計画的なやり方についての情報を今回の会合で公開することが適切であるとの合意に達した。

ここの読者には説明不要かもしれないが、量的緩和とは中央銀行が債券などを買い入れて市場に現金を供給する金融緩和であった。中央銀行が保有する証券の量が膨らむので、量的緩和はバランスシート拡大とも言われた。

今回発表されたのはそれを逆回しにする「バランスシート縮小」である。つまり中央銀行が保有する債券の量を減らすことで市場から資金を吸い上げる量的引き締め政策なのである。

量的引き締めと株価暴落

量的引き締めが最後に行われたのは2017年の秋で、これは結局2018年終盤の世界同時株安を引き起こすまで続いた。2018年の株価暴落のチャートをもう一度掲載しておこう。


当時の株式市場は量的引き締めが開始されてから4ヶ月後の2018年1月末に一度下落し、そこから再上昇してから2018年終盤に大きく下落した。

だがこれから起こる今回2022年の暴落に比べれば当時の20%の下落などほとんど下落していないに等しいだろう。当時は結局Fedのパウエル議長が金融引き締めを撤回したから株価は戻ったのだが、今回は金融引き締めを撤回できない理由がある。インフレである。

インフレと金融引き締め

日本の3倍以上の規模で行われた現金給付と化石燃料の供給を無理に減らす脱炭素政策によって、アメリカのインフレ率は7.1%に達している。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%


経済の中に資金が多すぎ、脱炭素やコロナのお陰でものの供給は少なすぎるのである。物価高騰を抑制するためには資金を吸い上げなければならない。パウエル氏はまず今年3回の利上げを宣言し、そして今回量的引き締めを発表した。

前回の量的引き締めでは開始から4ヶ月で株価の下落が始まった。では今回の量的引き締めはいつから始まるのだろうか? 例の「バランスシート縮小の原則」には次のように書かれている。

バランスシートの縮小は政策金利を上げるプロセスが開始された後に始まると予想している。

上記のように利上げは3月に始まるから、量的引き締めは早ければ春には開始されるというシグナルをFedは送っているわけである。

金融引き締めと株価の今後

前回の量的引き締めがトランプ政権の強力な経済政策でかなり強かった市場経済を4ヶ月で屈服させ始めたことを考えれば、コロナで弱体化している今の経済では株価は今年の半ばまでも持たないということはほぼ間違いがないだろう。それが春の量的引き締め開始が意味することである。

また、パウエル議長は記者会見でかなり無責任なことを言っている。

バランスシート縮小の詳細は最大雇用と物価安定の目標に応じて決められることになる。

縮小の具体的なタイミングやペースやその他の詳細については何も決めていない。

実際には何も決めていないのではなく、決められないのである。

パウエル氏の心中

今回の会合はどちらかと言えばタカ派側に振れたと思う。そしてその理由を考えれば、金融引き締めが今後どのように決められるかが分かる。

パウエル氏は金融引き締めをずっと躊躇っていた。物価がどんどん高騰していたにもかかわらず、特に根拠もなく「インフレは一時的」だと言い張っていた。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ


だが物価高騰がアメリカで社会問題となり、バイデン大統領がインフレ抑制を要請して初めて金融引き締めに取り掛かり、そして今度は動揺する株式市場を無視して量的引き締めを行おうとしている。

このパウエル氏の変わり身をどう解釈すべきだろうか? 筆者が思い出したのは、ジム・ロジャーズ氏の以下のコメントである。

ジム・ロジャーズ氏: 金融市場でまだ安いのはコモディティだけ


長らく相場にいた結果、こういう人々の言うことには耳を貸しても仕方がないということを学んだ。彼らが気にしているのは自分の職を維持することで、あなたやわたしや子供たちのこと考えているわけではない。彼らは自分の職のことしか考えていない。

つまり、パウエル氏は人々が「インフレはまだ大丈夫」と思っている間から早期にインフレ対処のために金融引き締めを行い、市場を暴落させて自分の責任になることを嫌って緩和を続けていたが、人々がインフレを気にし始めたならば、金融引き締めを行なって株価が暴落しても「そうしなければインフレが酷くなった」との言い訳が成り立つ。

パウエル氏が自分の職と責任のことしか考えていないということは投資家にとって非常に重要である。筆者はこの推論から、今のパウエル氏は株価をある程度犠牲にしてもインフレが収まるまで金融引き締めを続けると予想している。

いや、ある程度どころか、仮に株価が暴落してもインフレが高止まりしていた場合、金融引き締めをそれでも継続するかもしれない。そうなれば、株式市場の下げ幅は2018年の20%ではなく、以前アメリカが物価高騰で金融引き締めを止められなかった1970年代の60%下落になりかねない。


ちなみにこの場合ドル円も下落するので、米国株を為替ヘッジなしで買っている日本の投資家は株安とドル安で本当に死ぬことになる。この点についてはここでは何度も警告してきたので、ここの読者にそういう人は流石にいないだろう。

今後の見通し

2022年前半の市場と経済はどうなるだろうか。Fedが3月に利上げをしてもインフレ率7.1%に対して政策金利0.25%である。インフレが止まるはずがない。

Fedのタカ派的なスタンスにもかかわらず、4月にかけてインフレはますます酷くなり、Fedが何もしなくても市場では金利が上がってゆき、株価にはかなりの重しになってゆくだろう。以下の記事で説明した通り、結局金利を決めているのは市場であってパウエル氏ではないのである。

ガンドラック氏: 12才児よりも愚かな中央銀行の存在意義が分からない


パウエル氏が何も気付かないとしても、4月頃には現在織り込まれているような4回程度の利上げ(つまり1%程度の政策金利)では7%のインフレは止まらないということに市場は気づき始めるだろう。そして金利は株式市場が耐えられる水準を越えて上がってゆく。中央銀行が何もしなくともそうなるだろう。

著名投資家の中には株価の天井はまだだと踏んでチキンレースを繰り広げている人々もいるが、筆者は今回の量的引き締め発表で株価は遅くとも今年半ばまでの命だということを確信した。

仮にここから株価が短期的に反発したとしても、それに乗ることは本当にお勧めできない。仮に株高基調に戻ったとしても数ヶ月の命だからである。

そもそも何故この状況で株高に賭けなければならないのだろうか? 以下の記事で書いた通り、この相場で儲ける方法ならいくらでもあるのである。

長期金利とテーパリングの関係、今後の推移予想
2022年のスタグフレーションに投資する方法


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19181

25. 中川隆[-14019] koaQ7Jey 2022年1月29日 15:03:56 : B9JL8APU2Y : cEFEaDNPdW5NRC4=[7] 報告
世界最大のヘッジファンド: 2022年世界同時株安の理由
2022年1月28日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19213#more-19213


世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が2022年の株価急落の原因について語っている。それは利上げを含む金融引き締めなのだが、そもそも利上げで株価が下落するのは何故だろうか? 一度復習してみるのも悪くないだろう。

世界同時株安の原因

まずは米国株の主要株価指数S&P 500の現在のチャートを掲載しよう。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/01/2022-1-28-s-and-p-500-chart.png


S&P 500に関して言えばまだ辛うじて上昇トレンドを崩しているとは言えない。しかし米国小型株や日本株など他のものに関してはかなり崩れてきている。以下の記事で事前に予想した通りである。バブル崩壊前夜にはいつもこうなるのである。

2022年のスタグフレーションに投資する方法

何故株価は崩れかけているのか? ダリオ氏はコロナ後の経済の状況をこう説明する。

これまでわれわれは大量の負債を作り出し、大量の現金を給付した。それで誰もが現金を受け取った。更にものを買うためにお金を借りようと思えば、それも簡単だった。

背景にあるのは量的緩和と現金給付である。こうした緩和策は経済を浮揚させると見せかけて実は何年も持たず、大きなバブル崩壊の原因となるのだが、人々はそれに気付かずに紙幣を印刷したがる。

しかも今回のバブル崩壊は例えばリーマンショックの頃よりも深刻である。何故ならば、アメリカでは40年ぶりの物価高騰が起きているからである。

コロナ蔓延でもインフレ止まらず、12月米物価上昇率は7.1%


7.1%のインフレとは1年の間に預金の価値がそれだけ減ったということである。日本でもガソリンなどの価格が上がっているが、それはその分貯蓄の価値が目減りしたということである。インフレを喜んでいる人々は、もう随分減ってきたとは思うが、その意味を理解しているのだろうか。

ダリオ氏は次のように続ける。

購買力をそれほど大幅に増強すれば、経済は商品とサービスを作ろうとはするが、結果として大規模なインフレになる。

それで利上げが必要となる。政策金利が上がるとそれに連動する住宅ローンや自動車ローンなどの金利も上がり、ものを買うための資金を借りにくくなり、インフレが抑えられる。

インフレと金融引き締め

金融市場では金融引き締めが必要となることを早くから織り込んでいたが、アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)のパウエル議長はインフレが手遅れになるまでインフレの脅威を否定し続け、緩和を継続してインフレに燃料を供給し続けた。

ガンドラック氏: パウエル議長はただインフレが続かないように祈っているだけ
何故ならば、自分の金融引き締めが引き起こした2018年の世界同時株安のように、金融引き締めをすれば株価が暴落すると分かっていたからである。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)


パウエル氏は自分が株価暴落の引き金にはなりたくなかったが、アメリカ社会がインフレを恐れ始め、「株価を急落させても利上げをしなければ物価高騰が続いてしまう」という免罪符を手に入れるや否や強力な金融引き締めを発表している。

アメリカ、2018年の株価暴落を引き起こした量的引き締めを発表


免罪符を手に入れるまでパウエル氏が引き締めを避け続けたという事実だけでも現在の株価急落の説明にはなるのではないか。

手遅れになった物価高騰

元々インフレが酷くない間に金融緩和を止めていればこれほどの事態にならなかったのだが、上記の経緯から緩和のブレーキは遅れた。それで本来必要だった以上の金融引き締めが必要となり、その規模は明らかに株価を殺してしまう量が必要とされている。ダリオ氏は次のように続ける。

金融市場は早くから利上げが必要になると織り込んできたが、Fedは市場よりも後手に回り続け、金融引き締めは遅れた。したがって今、高騰した物価に対応するべく金利が上昇している。

政策金利を先回りする市場の2年物国債の金利を見てみよう。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/01/2022-1-28-us-2-year-treasury-bond-yield-chart.png


怒涛の勢いで上がっている。上がってはいるが、1.2%程度で7.1%のインフレが収まるわけがない。金利は何処まで上がるだろうか。そして1.2%でも株価にとっては十分脅威なのである。

金利上昇と株価の関係

以上がこれまでの経緯である。しかしそもそも金利が上がれば株価が下落するのは何故だろうか? ダリオ氏は次のように説明する。

すべての資産は互いに競争しなければならない。

金利、つまり債券の利回りは1%程度上がった。そうすると他のものにも連動する。

競争とはどういうことだろうか? 債券や株式など様々なものに投資をする投資家の気持ちになってみれば良い。

例えば国債に投資をしても金利が0%の状況で株価が年間5%上昇するならば、誰もが株式に投資をしようと思うだろう。

一方で国債の金利が仮に4%まで上がったとして、株価の上昇見込みが変わらず5%だったとすれば、1%の差のために下落リスクのある株式を買いたいと思うだろうか?

これがダリオ氏の言う競争である。だから金利が上がると株価は下がらなければならない。株価が下がると将来の上昇余地が増えるということだから、株式の予想リターンは改善して5%から8%に増えるかもしれない。それならば4%の金利とも釣り合いが取れるだろう。このようにして市場は互いに調整するのである。

緩和を永遠に続けられる時代は終わった

金融引き締めで株価が下落することは過去にもあった。例えば2018年である。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
当時は市場が20%程度下落したところでパウエル氏が株安の原因は自分だと認め、引き締めを撤回して株価は反発した。

しかし今回の問題は、金融引き締めを止めると物価高騰が続いてしまうことである。

ダリオ氏は次のように続ける。

市場を資金漬けにしても物価が高騰せず、金融引き締めも必要にならない、そういう時代は終わった。いまや相場のサイクルの新たな局面に達している。

これはインフレ愛好家たちの致命的な矛盾なのだが、緩和を永遠に続けられていたのはデフレのおかげである。物価が上がらないからこそ緩和が続けられたのだ。だがその時代は終わった。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
何故その時代は終わったのか? ダリオ氏が「サイクルの新たな局面」と呼んでいることに着目したい。サイクルと言うからにはこれまで同じ事が何度も起こってきたということである。

暴落までのサイクル

金融緩和のサイクルとは次のようなものである。まず経済成長が以前ほどではなくなってきて、人々は金融緩和に頼るようになる。金利を下げると経済と株価は回復し、人々は喜ぶ。

そうしている内に今度は金利がゼロまで下がってしまい、これ以上下げられなくなる。そうすると人々は紙幣を印刷し始める。量的緩和である。(もう公に紙幣印刷と呼んでしまって良いのではないか?)

量的緩和はリーマンショック以後の新しいものだと思われがちだが、人類の歴史上紙幣印刷は何度もあった。元々は紙幣ではなく金貨だったから、改鋳によって金貨に含まれるゴールドの含有量を減らしたりしたのだが、それは要するに貨幣の価値を薄める今の量的緩和と同じことである。

奇妙なことに国民は政府の借金を薄めるために自分の貯金の価値を減らす政策を喜んで支持している。人々は生まれながらの奴隷なのだろう。

しかし問題は、紙幣印刷を行なっても10年か20年の間はインフレが起こらないということである。この10年という期間はレーガノミクスの1980年代に緩和が始まって緩和バブルが完全に崩壊するまでの50年から見れば短い期間なのだが、人々の実感として10年は長い。

だから人々は「どれだけ紙幣を印刷してもインフレにはならない」とする錯覚に陥ってしまう。そう主張しているMMT(現代貨幣理論)は新しいものに思われがちだが、歴史を振り返れば緩和バブル相場の末期にいつも同じ主張が現れ、バブル崩壊とともに消えてゆく、いつものことなのである。

ただ、この紙幣印刷理論はいつも違う名前で現れるので新種だと錯覚されがちである。紙幣印刷でみな幸せになると主張する幸せな人々にはダリオ氏の以下の言葉を贈りたい。

世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。

結論

こうしたことは金融史をきちんと勉強した人間には当たり前のことである。ドル以前に世界の基軸通貨だった大英帝国のポンドやオランダ海洋帝国のギルダーが金融緩和でどうなったか、ダリオ氏が説明しているのでそちらも参考にしてもらいたい。

世界最大のヘッジファンド: 大英帝国の基軸通貨ポンドはいかに暴落したか
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
また、「でも日本は紙幣印刷してもインフレにならないではないか」と思う人ももしかすればまだ居るかもしれないが、それについては以下の記事で説明しているので参照してもらいたい。

世界最大のヘッジファンド: 何故日本円は暴落しないのか?
ここでは2022年の株価暴落も含めてすべて事前に説明しているのである。

2022年の株式市場はインフレと金融引き締めで暴落する
株価暴落とはもちろん、現状の10%程度の下落や2018年のような20%程度の下落のことを言っているのではない。

ここの読者にはその意味が分かるだろう。インフレで株価が60%下落した1970年代のチャートをもう一度掲載しておく。

https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2021/11/1970-1974-nasdaq-composite-chart.png


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/19213#more-19213

26. 2022年3月04日 03:28:07 : Gs6Zlr43fk : N3BUTVh1S042QVU=[2] 報告
パウエル議長、ウクライナ危機でも3月の利上げ方針を改めて表明
2022年3月3日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20733


アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)のパウエル議長は3月2日の議会証言で、ウクライナ情勢に懸念を示したものの、今月のFOMC会合における利上げ方針を改めて表明した。当たり前だが、ロシアのウクライナ侵攻でも利上げと量的引き締めはするということである。

ウクライナは株式市場に影響与えず

ウクライナ情勢を受け、アメリカや日本の株式市場は多少動揺している。米国株のチャートは次のように推移している。


だが最初に述べたように、ロシアのウクライナ侵攻が米国株に与える影響はほとんどなく、下げ幅も限定的となっている。

世界同時株安の原因はロシアとウクライナではない
結局2022年の株式市場を決めるのはアメリカの物価高騰とそれに伴う中央銀行の金融引き締めだということである。

パウエル議長の議会証言

そうした最中、パウエル議長は議会証言を行なった。Fedのメンバーの何人かはウクライナ情勢の中で今後の利上げについて語っていたが、ロシアによる侵攻後にパウエル議長本人が公の場で話したのは初めてで、その内容が市場に注目されていた。

ウクライナ情勢で利上げの手が緩まるのではないかという意見が一部で言われていた。経済学者のラリー・サマーズ氏はウクライナ情勢による原油高に注目し、インフレはウクライナの一時的影響として中央銀行が利上げを控える可能性を指摘していた。

サマーズ氏: ウクライナ問題で 「インフレは一時的」が「インフレは原油のせい」に進化する可能性
パウエル氏はどう発言しただろうか? 結果はと言えば、ウクライナ問題にかかわらず利上げ続行である。パウエル氏は次のように述べている。

インフレ率が2%を大きく上回り、労働市場が強い現状では、今月の会合で政策金利を上げることが適切であると考えている。

これだけを見ればサマーズ氏の懸念は杞憂だったように見える。だが金融市場ではここ数日で利上げ観測の減退が見られる。

そもそも金融市場では今月の会合で2回分(0.50%)の利上げが一気に行われる可能性をある程度織り込んでいたのだが、ウクライナ情勢を受けて現在は1回分(0.25%)の利上げの確率が99.3%という織り込みとなり、市場が利上げ予想を減退させたことが分かる。

また、今後2年の利上げ幅を織り込んで推移する2年物国債の金利はこれまで止まることのない上昇トレンドを描いていたが、ウクライナ情勢を受けて一時大きな後退をしている。


現状では元の高値に戻りつつあるが、2年物国債の金利がこれまで見られなかった動きを見せたのは注目に値する。

量的引き締めも実行

また、Fedは量的緩和で拡大したバランスシートを逆に縮小する量的引き締めを開始するプランを1月に発表していた。この量的引き締めは2018年に株式市場を暴落させ、パウエル議長は当時撤回を余儀なくされている。しかし今回は物価高騰が差し迫っているため撤回出来ない。

アメリカ、2018年の株価暴落を引き起こした量的引き締めを発表
ウクライナ情勢を受けて量的引き締めにも影響があるかどうかが注目されていたが、パウエル氏は今回の議会証言で次のように再確認している。

緩和政策を取り除くプロセスでは、政策金利の上昇とバランスシートの縮小の両方が行われる。

量的引き締め開始の時期については「利上げプロセスが開始された後」という従来の発表を踏襲しており、いつなのかが不明確である。ただ、サンフランシスコ連銀総裁のデイリー氏がバランスシート縮小は段階的で予測可能なやり方で行われるとしているので、開始前にはもう1段アナウンスがあるのだろう。

結論

やはりウクライナ情勢は株式市場には影響はないし、金融政策に影響を与えることはない。ただ、今月の利上げは0.25%になりそうである。

しかしそれも結局、株式市場が下がったからであり、ある程度持ち直した今は2年物の金利も持ち直している。利上げのペースについては戦争ではなく株式市場がそれに耐えられるかどうかによる。

以下の記事で見たように、戦争に対する株式市場の反応は、その時の市場がもともと上げ相場だったか下げ相場だったかに大きく左右され、反応する時もあればしない時もある。つまり、短期的な値動きを見れば一見戦争に反応したように見えても、戦争を口実に元々のトレンドが顕在化しているだけなのである。

戦争で株価は下落するのか? 歴史上の株価チャートを振り返る
こうして結局、2022年の相場は「株価はこれからの強烈な金融引き締めに耐えられるのか」という元々のテーマに戻ってくることになる。

そして繰り返しになるが、結論は次のようになる。今の7.5%のインフレを抑えるのに十分な引き締めの量は、2018年に市場を暴落させた引き締めの規模を軽く上回ってしまう。

1969年の米国で6%のインフレを抑えるためにどれだけの利上げが必要だったか
一方で十分な引き締めを行わず、インフレ率が7.5%である状況で金利を1%だか2%だかに保ち続ければ、アメリカのインフレ率は今年中に2桁になってゆくだろう。その場合ドル暴落は避けられない。

だから米国株は(特にドルの値下げを考慮しなければならない日本の投資家にとっては)既に詰んでいるのである。

これは年始の株価下落前から言い続けていることで、この意見を変える理由は何も存在していないし、今後現れることもないだろう。この状況で利益を出すトレードについては以下の2つの記事で説明しているので、そちらを参考にしてもらいたい。

2022年のスタグフレーションに投資する方法
急速にスタグフレーションを織り込む金融市場


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/20733

27. 2022年3月18日 08:09:08 : SruyHYNJ8U : TVdiVVlTQXpnZzI=[7] 報告
世界最大のヘッジファンド: 株価暴落か物価高騰かどちらかしかない
2022年3月16日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21458


あるいはその両方だろう。世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がPOLITICOの主催するラリー・サマーズ氏との対談でアメリカのインフレと株式市場の見通しについて語っている。

アメリカの物価高騰

アメリカの消費者にとって物価高騰は既に生活の問題である。アメリカではガソリンだけではなくあらゆるものの価格が既に上がっている。

2月の米国インフレ率は7.9%、今後更なる物価高騰へ
物価が上がる、上がるから先に買う、そして価格がもっと上がるというインフレサイクルが始まっているのである。

それに対して「物価安定」を目標とするFed(連邦準備制度)は何をやっていたか? 去年の末にようやく間違いを認めるまでインフレの状況下で金融緩和を続けていたが、その時にはインフレ率は既に6%まで上がっていた。

パウエル議長、ついに「一時的」を撤回しテーパリング加速を示唆 (2021/12/1)
これはどういう原因によるものだろうか。2020年、新型コロナ対策でアメリカなど多くの国は強力なロックダウンを行い、景気は瞬間風速的に急激に落ちたが、それは長期的な景気後退には繋がらなかった。

現金給付で無理矢理に消費者の消費を喚起したからである。だが紙幣印刷は当然のようにインフレを引き起こし、それは住宅バブルなどに火をつけて持続的なものとなった。もはや現金給付は行われていないが、インフレは続いている。

12月のアメリカの住宅価格は18.8%上昇、サブプライムバブルを大きく上回る
アメリカ人は住宅をこぞって買っているし、米国企業は原油や小麦など金融市場で値段が高騰しているものを更に高騰するまえに買ってしまおうとしている。

ウクライナ危機でコモディティ価格高騰、小麦を一部利確してシルバー買い
そうした資金の少なくない部分は住宅ローンなど借りられたお金である。だからこのインフレを止めるためには中央銀行は金利を上げ、人々がお金を借りにくくする必要がある。

それでFedは利上げなどの金融引き締めを行おうとしているのである。

アメリカ、2018年の株価暴落を引き起こした量的引き締めを発表
利上げのもたらす結果

利上げをして、それでインフレが収まり、それだけだろうか。しかしこれまで低金利で支えられてきた株式市場のことを思い出したい。ダリオ氏は次のように語っている。

インフレを十分に抑えられる高金利は金融市場と実体経済にとって高過ぎる。

株式市場も実体経済もこれまで低金利に頼りすぎてきたのである。「インフレにならない限りいくらでも紙幣印刷できる」を合言葉にしていた人々は、今頃デフレの有難さを噛み締めているだろう。デフレだったからいくらでも紙幣印刷出来たのである。

ハイエク: インフレ主義は非科学的迷信
しかし実際、利上げはどこまで行われるのだろうか? 今後の利上げ予想を織り込んで推移する2年物国債の金利を見てみよう。


ウクライナ危機で少し足踏みしたが、ウクライナ問題はむしろインフレを悪化させるとの見方から金利は更に上昇し、2%まで上がっている。この水準は2018年の世界同時株安を引き起こした利上げの水準に近い。

2018年の世界同時株安では何から順番に暴落したかを振り返る
それで株式市場が大慌てしているのである。米国株は次のように推移している。


インフレ抑制のためにどれだけ利上げが必要か

しかしよく考えてほしいのだが、市場が大騒ぎしている2%の金利はインフレに効くのだろうか。

ダリオ氏は次のように述べる。

相場が織り込んでいる利上げは政策金利が2%程度まで上がるというものだ。だがインフレがこれから5%になるとしても、それに対して金利が2%だというのは深刻な問題だ。

筆者も前から何度も言っているが、現在7.9%(筆者がインフレについて書く度にどんどん上がっていっている)のアメリカのインフレ率に対して金利を高々2%まで上げたところで、インフレに対して何の意味があると言うのだろう。

金利が2%だとしてもものの値段が7%で上がるのならば、消費者や企業はやはり借金をして金利を払ってでも値段が上がる前にものを買いたいのではないか。それがインフレと金利の実際の関係である。

今後も悪化するインフレ

つまり、インフレはどんどん悪化する。現在の7.9%という数字は通過点に過ぎない。

しかしその通過点に過ぎないインフレ率でも抑制するために必要な利上げ幅は相当なものになるだろう。過去にアメリカで6%のインフレを抑えるためにどれだけの利上げが必要だったかについては以下の記事に書いてある。

1969年の米国で6%のインフレを抑えるためにどれだけの利上げが必要だったか
つまり、中央銀行が現在の「緩和的な」利上げ姿勢を続ける限り、アメリカのインフレは最終的にジンバブエのようになってゆく。

それは政治的に許容できないので、Fedは何処かの時点で更に強力な利上げ姿勢を表明せざるを得ないだろう。しかし2%の利上げでも悲鳴を上げている株式市場は、それ以上の金融引き締めが発表されたときどうなってしまうのだろう? 何度も言うが、2022年の株式市場は詰んでいるのである。

結論

もうこの話は著名投資家の中では去年から分かっていた話であり、ここの読者にとっては当たり前の結果でしかないので、あまり新鮮には響かないだろう。これから起こる株価暴落も、大してニュースではない。一部の人々はこれまでの株価下落で驚いているかもしれないが、まだ何も始まってすらいない。

現金給付や脱炭素政策によって作り出されたインフレは避けられた人災である。特に以下のガンドラック氏の中央銀行批判など日付を見てほしい。現在の状況はいつから明らかだっただろうか。

ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判 (2020/3/29)
サマーズ氏: エネルギー価格を高騰させる脱炭素政策は健全ではない (2021/10/18)
避けることは出来たはずの悲劇に人間はいつも自分から突っ込んでゆく。人生楽しそうである。

ダリオ氏の対話相手で経済学者のサマーズ氏もダリオ氏の見解に同意し、次のように上手く纏めている。

インフレを抑えることは出来るが、そうすれば実体経済と金融市場は駄目になる。あるいは実体経済を守ることは出来るが、インフレ率はもう2%には戻らないだろう。

また、この株価暴落とインフレの2択という現実は、要するに株価暴落とドル暴落の2択ということである。インフレとは貨幣価値下落であり、それはドルの下落を意味するからである。

2022年ドル円の推移予想: インフレによるドル高は持続せずドル円暴落へ
これは米国株に投資する外国の(アメリカ以外の)投資家にとって死の宣告に等しい。ドルが死んでも株価が死んでもその人の投資は死ぬからである。

そう言えばこの状況は1987年のブラックマンデーに似ているのではないか。

プラザ合意からブラックマンデーまでを振り返る


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/21458

28. 中川隆[-13456] koaQ7Jey 2022年3月24日 19:12:02 : 6meu4CGw9M : c1BYcnRJSmpmaGM=[1] 報告
なぜインフレでも日銀は動かない?2022年冬、さらなる円安進行で中流階級の生活崩壊=吉田繁治
2022年3月24日
https://www.mag2.com/p/money/1170863


現在の物価と金融の状況からは、2022年夏から2023年の、(1)インフレ率、(2)金利上昇、(3)株価暴落、(4)国債・社債価格の下落、(5)不動産の下落も85%は、決定したように思えます。

1年前は想像しなかったことが、ウクライナ戦争を契機に起こっています。2022年、23年は「大変」な時代です。大変とは、戦後世界の基礎が80年ぶりに変わることです。怖がる必要はない。情報を数値(=事実)で集め、論理的に解析し、予想ことです「80年も当たり前」だったことが「当たり前」ではなくなっていくでしょう。2022年冬には、行動を変える必要があるように感じています。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年3月23日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

今回の危機は金利を上げるインフレが加わっている
化石エネルギー・資源・穀物(食糧)のインフレ→金利の上昇→マネー量の縮小→株価と債券の下落

ウクライナ戦争の状況から、インフレは長期化が予想され、世界の中央銀行の、親玉であるFRBは、1回0.25%だけでなく0.5%の利上げもあることを示唆しました。昨年の8月、9月、CPIの上昇は短期的」としてきたパウエルは、しれっと、予想を変えたようです。

「言葉の信用」が命であるはすの中央銀行には、こうした「いい加減」なところがたびたびあります。根本で、フィアットマネーの増刷という、国民をまやかす金融詐欺(=錬金術)を行ってきたからです。

錬金術は、当方の言葉でない。大英銀行の元総裁マーヴィン・キングです(書籍は『錬金術の終わり』)。錬金術は近世の化学でした。

特に西欧で、数多の人間が試みたのです。比重が金と同じタングステンに、金メッキをすると、見かけは純金になります。当時の金商人の秤ではわからない。銀や銅の混ぜ物も使われました。

2022年の金融・経済の危機では、

(1)コロナによるサプライチェーン・ショックからのインフレと、
(2)2月末からのウクライナ戦争が惹起したエネルギー・資源・穀物の高騰が重なりました。

これは、従来はなかったことです。

過去の大きなインフレは、(1)1973年からの第一次石油危機(原油2ドルから10ドル、15ドル)、(2)1979年から1980年の第二次石油危機(原油40ドル)でした。今回は、コロナ危機+ウクライナ戦争が重なった第三次石油危機です。

消費者物価指数(CPI)が5%上がるインフレのときは、

・市場の期待金利の上昇から株価が下がっても、
・中央銀行には、量的緩和と利下げという手段はないことが、重要な点です。株価の暴落があっても、中央銀行が対策を打ちにくい。

米国CPIの上昇は、2021年4月の4.2%から始まりました。その後も上げを続け、直近の2022年2月には7.9%の上昇という高い水準です。

米国CPIの年間予想は、ウクライナ戦争の推移が関連しますが、5%程度でしょう。戦争が終わっても、資源価格の短期的下落はあっても、長期的な下落の期待は薄い。産油国、とくにサウジの増産の姿勢が弱いからです。
参考:消費者物価指数(CPI) [前年同月比]

欧州も、米国を追った動きであり、2022年2月は前年比5.8%です。
参考:消費者物価指数(HICP、速報値) [前年同月比]

今回のインフレは、FRBの誘導金利(FF金利:短期金利)が2%に、市場が決める長期金利は、3.5%〜4.0%に上がることを意味しているでしょう。

リーマン危機以降の13年間、ほぼゼロ金利で上がってきた世界の株、国債、社債の価格は大きく下がるということです。これらの債券の価格が下がることは、直接に、マネー量の収縮です。

コモディティ価格が上がると打撃を受ける日本の輸入構造
日本では、国際商品コモディティ(エネルギー・資源・穀物)が多い輸入物価が、円安も加わって、37.5%上げています。

国内の企業物価は8.6%上昇、消費者物価は、0.5%です(21年12月)。2021年の、菅首相による携帯電話の値下げ(-50%)があったので、実際の物価上昇(総合)は2.0%付近です。

企業物価(=卸売物価)が8.6%上がったのに、消費者物価が2.0%しか上がっていないのは、「世帯の所得増がないので、値上げすれば売れなくなる」として、上がった仕入価格を、企業利益の減少で吸収しているからです。

これは、長続きができない。商品を売る企業が赤字になるからです。2022年は、日本も3%台のインフレに向かうでしょう。生活に必需な財のインフレは、第二次石油危機(1980年)以来、40年ぶりです。

永遠に続くかとも思えたディスインフレの40年は終わりました。物価の基礎でもある公示地価は上がっているとされますが、それは、昨年の地価の統計です。2022年には、確実に下がります。
(注)次のGDP成長は、2030年ころのAI革命からでしょう。

輸入物価の急上昇に対する、日銀の、おかしな態度
日銀は、「CPIの物価上昇は短期的として、金融緩和の継続」を言っています(日銀黒田総裁の会見;22年3月18日)。これは、リフレ派の妄言でしょう。根拠がない発言です。


インフレになっても、日銀が金利を上げない本当の理由
日銀には、FRBにはできる利上げ(1回が0.25%×7回:22年3月)とマネー量の引き締め(QT)という選択肢がない。

理由は、

・1,200兆円のゼロ金利国債の平均金利が1%に上がると、
・国債価格が「1200兆円÷(1+0.01×10年)=1,200÷1.1≒1,090兆円」に下がるからです。

(1)日銀
530兆円の国債をもつ日銀では482兆円に下がり48兆円の含み損が生じます。11兆円の自己資本の日銀は、主要国では唯一債務超過に陥ります。

債務超過になっても日銀は倒産しません。倒産の代わりに、円の信用が低下して(海外から売られ)、円安になります。そもそも政府機関には、どんなに損をしても倒産という概念がありません。

夕張市の財政が破産しても、市の行政組織は別のものには交替せず、残っています。2回財政破産したNY市も同じです。

大きくいえば1,200兆円の負債をかかえ、金利が2%に上がるだけで破産に向かう日本政府がデフォルトしても、政府がなくなることはない。デフォルトとは、政府が支払うべきものが、払えないことです。

「特別会計の二重計算の除外(196兆円)+一般会計(107兆円)の、財政支出」で大きなものは、(1)公務員の人件費(25兆円)、(2)年金の支払い58.5兆円、(3)医療費40.7兆円、(4)介護費12.7兆円、(5)子育て支援等9.5兆円です。(注)国債費は、架空の60年償還と決めて、金利払いを含んで23.7兆円です。実際の平均満期は、8年ですが…。
参考:日本の財政関係資料(令和3年10月)https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202110.html

参考:特別会計の現状-財務省
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/fy2020/2020-souron-2.pdf


(2)金融機関
長期金利が1%に上がるだけで、

・670兆円の国債をもつ金融機関(民間銀行、政府系銀行、年金運用のGPIF、生損保、120兆円の円国債をもつ外銀)に、61兆円の含み損が生じます。

国債の10%近い下落は「国債の不良債権化」を示すものです。

金利が1ポイント(%)上がると、確実にこうなるので、日銀は、日本のインフレ率が高くなっても、金融引き締め(=金利を上げること)に転換できない。

日銀が、2013年から9年間の金融緩和からの出口(=利上げ)政策をとれば、1,200兆円の既発国債の価格が下がって、政府の財政破産になるからです。

・米国経済のアキレス腱は、株価の下落です(時価総額5,000兆円)。
・日本経済にとっては、インフレで上がる金利です(国債1,200兆円)。

いずれも、インフレによる金利の1ポイント(%)の上昇から、2ポイントの上昇に向かうトレンドが金融市場に認識され、レバレッジ投資が剥がれて暴落していくでしょう。まず、円安に、これが表れています。

・日本では、国債がGDPの240%と大きすぎます。今年も、財政の資金収支での赤字43.6兆円のため、増えています。

・米国では、GDPの220%の時価総額5,000兆円の株価が、大きすぎます。30%下がって、短期での反騰がないと、金融危機に直行します。

「バフェット指数」では「GDP=株価時価総額」付近が最適とされます。米国株は、リーマン危機+コロナ危機での、合計10兆ドルの増発によって、株価も時価総額がGDPの2.2倍に膨らんでいます。

歴史上最大のマネーの増発による、バブル株価です。

長期金利が3%から4%に上がる動きが見えると、米国の株価バブルは、崩壊します。現在は長期金利2.2%と7.9%のインフレで、崩壊寸前です。

長期金利は、FRBのコントロールの外にある、民間市場の金利です。FRBが誘導するのは、財務省短期証券の金利です(FF金利という)。
(米国の長期金利=10年債の利回りは、現在2.2%付近)

「米国国債10年 日足(SBI証券提供)」
https://www.mag2.com/p/money/1170863/2

米国のもう一つの弱点は、対外債務3,000兆円です。国債・社債・米国株の価格が下がると売られて(価格は下がり)、米国の長期金利が上がるサイクルに入ります。

インフレからの、悪い金利の上昇は、13年間の量的菅緩和の金融を、逆に回転させます。

ローン金利に敏感な米国の住宅価格も下がって、リーマン危機のときのように、MBSに不良債権が増えていきます。

一般会計の資金収支の赤字は、43.6兆円(GDPの8.2%)と大きい
2022年度の、一般会計の資金収支の赤字は、43.6兆円です(日本:財政予算106.6兆円-税収予定63.0兆円=資金の不足43.6兆円)。

参考:これからの日本のために財政を考える-財務省

国債は、1960年代の発行開始から1円の純返済もないので、43.6兆円国債の残高が増えます。(上の財務省パンフレットの2ページと3ページ)。

借り入れを繰り延べるための「借換債(約150兆円)」を含む、「約200兆円/年の国債発行」は、GDPが540兆の日本にとって、恐るべき数字です。平均8年で満期償還される150兆円/年で、銀行は新規債を買っているのです。(注)150兆円の借換債(これも国債です)のことは、メディアも報じません。財務省が「そっと」しか言わないからです。官僚の基本性格がこれです。


急な円安
FRBがインフレに対して1回目の、0.25%の利上げをしたとき、ゼロ金利の円は、1ドル=115円付近から119円まで、3.5%急落しました。(注)現在は121円です。慌てて、ドルや仮想通貨を買う人が増えました。まだ…金の買いには行っていない。

FRBが、利上げのフォワード・ガイダンス(将来の金融政策を前もって示し、利上げのときの金融市場の混乱を避けること)を行った、21年12月には、1ドル=104円付近でした。104円も円安です。

104円の円安と比較し、現在は15円(14%)の円安です。金利ゼロの通貨=円が売られて、金利が上がるドルが買われたからです。

インフレであっても、ドルやユーロのように金利を上げることのできない円は、世界の銀行の店頭で売られて、急落しました。

3か月で14%の円安への通貨変動は、「普通はない水準」です。
つまり、異常な円安です。

「米ドル/円 日足(SBI証券提供)」
https://www.mag2.com/p/money/1170863/3

「米ドル/円 日足(SBI証券提供)」
黒田総裁の迷言
黒田総裁は、「円安は日本経済にとってプラス」という、1990年代の輸出が超過して貿易黒字があったときのことを、オウム返しに述べています。

金融ムラの総裁の経済への認識は、アベノミクスの2015年ころから、おかしくなってしまいました。

失礼を承知でいえば、バイデンに似た認知症か。記者会見ではモゴモゴしたはっきりしない発言が増えました。任期は、23年3月までです。

8年間掲(かか)げてきた、「2年で2%の物価上昇目標とGDP成長2%」を達成できず、原因の追及と確定は、行っていません。失敗とは言わない。政策の反省はない。それでも官僚総裁を許されています。

民間銀行の頭取には、許されないことです。損をした株主からの追及があるからです。国民はまだ、日銀の金融政策の失敗を追及していません。逆に、円を500兆円刷った「アベノミクス」は、どちらかといえばいいものだったとしているようです(よくなかったのですが…)。

2011年以降、日本は貿易黒字が出ない国になった
2011年3.11の東日本大震災以降(=サプライチェーン・ショック)
2011年以降の、日本経済は、高齢化した世帯(年金世帯)の貯蓄率のマイナスから、輸出が超過する経済ではなくなっています。

マクロ経済では、貯蓄額−国内投資=貿易黒字です。

高齢化のため貯蓄額が、国内の設備投資額より減ると、どんなに円安になっても、貿易黒字にはならない。

3000万人に増えた年金受給者(1,000万世帯)は、1か月に平均で5万円から6万円の預金を、取り崩しています(生活費は1か月26万円くらい)。このため、日本では総預金が増えなくなったのです。(注)個人金融資産の2,000兆円には、「銀行預金+株式+投資信託+生命保険+年金基金」が入っています。現在の増加は株価の上昇分です。

貿易では、逆に、輸入物価の上昇がモロに来て、輸入額が増えて貿易は赤字になります。貿易の赤字とは、日本人の所得が海外に流出することです。貿易の赤字は、GDPも低下させます。

輸入するエネルギー・資源が上がり始めた2021年12月には、15兆円から、20兆円/年の黒字だった経常収支すら赤字に転落しました。

円高を、もっとも大きく支えてきた所得収支の黒字(15兆円から20兆円/年)も、エネルギーと資源価格の高騰によって、なくなったのです。このため、円安のトレンドが「構造的なもの」になりました。
(注)経常収支=モノの貿易収支+海外旅行収支+対外資産からの所得収支。
参考:12月経常収支、1年半ぶり赤字 資源高響く、21年も黒字、2.8%減-JIJI.COM(2月8日付)

輸入する品目の問題
日本の輸入構造にある問題は、国際卸価格(=商品コモディティ指数)がどんなに上がっても必需のエネルギー・資源・穀物であることです。

エネルギーと原材料になるので格が上がっても輸入が必要です。
米国のように商品の輸入が多いと、価格が上がれば、減らせます。

日本は、高い価格になっても同じ量を買わねばならない。
輸入の金額が増えて、資源価格の高騰分が赤字になります。

食糧の自給率は60%です。コメだけでは、3,000万人しか食べることができない。コメ以外の穀物も輸入です。コーンや小麦は家畜の餌にもなる。国産牛も飼育ができなくなる。餌が上がると、肉は上がります。

漁船では、エンジンの燃焼に大量の石油を使います。
電力は、原油、天然ガス、石炭です。水力発電は5%でしかない。

価格が理不尽に上がっても、輸入しなければならないのが化石燃料です。木材もほぼ100%輸入です。紙も上がります。輸入がなければ、住宅も作ることができない。趣味のスピーカーBOXも、作れません。ダンボールも上がり、ガソリンが上がるので、アマゾンから買うときの宅配費も上がります。

それでも日銀には、国債価格を下げる金利上昇の選択肢がありません。

黒田氏は、2%台のインフレになっても、金利は上げないという説を、述べています。これは、ファイナンスの面では、日銀が国債を10%は高い価格で買い続けるという宣言です。

10年債の金利は0.25%以下に誘導
日銀による「10年債の金利目標0.25%」の意味は、

(1)10年債の利回りが、金融機関が作る債券市場で0.25%を上回ると、(=既発国債の価格が下がる=国債の売り手>買い手になる)、

(2)日銀が、0.25%以下に下がるように、市場の気配値より高く買って、円を増発するという、市場介入の宣言です。

このため、米国の金利が上がると、今回(21年12月から22年3月のように長期金利が0.25%以上に上がらない円は、大きな円安になります。

(注)10年債の市場での金利が0.25%を上回ると、日銀が即座に、市場に出た10年債を高い価格で買って0.25%以下に下げています。これが、長期金利の目標0.25%の意味です。

米ドルの長期金利は2.4%に上がっているので、長期金利が0.15%〜0.25%しかない円国債は、売られます。

2%以上のイールド(利益)があります。ドル債を円で買えば、金利の2%に、ドル高/円安の利益も加わるからです。

「米国国債10年 日足(SBI証券提供)」
https://www.mag2.com/p/money/1170863/4

金融抑圧と円安の被害を受けるのは世帯
円安の被害は、エネルギー・資源・穀物の輸入物価の上昇がCPIの物価上昇として、所得の増えない世帯の支出の増加になる家計に向かいます。

物価が上がるなかで、国民の賃金が上がらないスタグフレーションです。

普通の経済では、インフレで企業の売上も増えるので、米国のように求人が増え、賃金が上がります。

しかし、日本経済では、物価が上がると60%(3000万世帯)の所得が低い世帯が、商品が買えなくなって、企業の売上は増えない。むしろ減ります。

スタグフレーション
このため、コストプッシュ型のインフレになっても、企業の求人は増えず賃金も上がらない。

日本経済では、所得が増えない年金受給者が3,000万人にも増加した高齢化が、世界で最初に起こりました。

このためインフレは賃金の上昇という循環を生まず、2022年末から2023年には、過去に経験がない不況になっていくでしょう。価格が25%も上がった電力も、東北地震で不足し、なんだか…さんざんな経済。

米国では物価が7.9%上がって、賃金も5%上がっています(実質所得は−2.9%ですが…)。所得の増加がなく、平均では減っている日本人の生活は、インフレになると、モロに苦しくなって行きます。

世界200か国のなかで、2022年、23年の日本は、「コロナ+ウクライナ戦争」での、スタグフレーション第1号でしょう。

ロシア経済が、SWIFTからのルーブルの排除と、G7からの経済封鎖からのインフレで苦しくなるとされていますが、所得の上昇がなく、逆に減る日本は、ロシア以上でしょう。

(注)G7:米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本の西側諸国。2000年代のG7(10億人)のGDPの合計成長率は低く、中国・インド、ロシアを含む新興国の合計GDPを、下回っています。

日銀、政治家、メディアは、賃金が世界22位に下がり、スイスの70%に下がった日本を、今も「経済大国」と錯覚する誤りを犯しています(韓国が20位です)。これは、まさに32年前の昭和の錯覚。

1990年には、日本人の賃金は、世界トップクラスのスイスと並んでいました。今回の円安で、ポーランド並みの25位でしょう。ポーランドは、欧州の中進国です。ショパンと音楽とチョコレート、牛肉、高級ワインの国。
参考:「平均年収は韓国以下」日本人の給料がちっとも上がらない決定的な理由-PRESIDENT Online

MMTの副作用が発生した
基本的なところでの、約500兆円のMMT(500兆円の国債の日銀による買い)に幻惑されてきた誤認が、円安歓迎の黒田説になるのです。

実質GDPの成長は、世帯の実質所得の、上昇によるものであり、それ以外には目的はないはずです。米国より実質GDPの成長率が高まると円高になります。

政治家は、実質GDPの上昇と、世帯所得の増加を政策目標にしなければならない。それ以外に、政治家の政策の目標は、ないはずです、

2013年から8年のアベノミクスでは、「金利を下げ、通貨を増発することでの円安での名目成長」として、誤認していました。

2022年になって、米国の1年半遅れで、消費者物価(CPI)が上がる傾向が出てきた。しかし実質経済成長率と等しい国民の所得の増加はない。

超金融緩和の、500兆円のマネー増発が原因で上がった株価は、世界の金利上昇と企業純益の低下から、2022年は下がります。


2011年以降の日本にとっては。円安はいいところがない
貿易黒字の構造が終わって、経済構造が変化した2011年3.11以降の日本では、円安は、何もいいことはない。

(注)ドル建ての対外資産が上がるだけです。しかしこれは円が下がった結果でありドル価格が上がったのではない。対外債権である米株式・国債・社債・不動産は、ドル金利の上昇で実際には下がり、円安での見かけ上の上昇が相殺されるでしょう。

円安は、基本的には、物価上昇を引いた日本の実質GDPの成長が、米国より低いことの結果です。

(注)マイナス金利からゼロ金利という超金融緩和のアベノミクスの失敗も、未だに論述されていません。異次元緩和を歓迎してきたこの国のエコノミストと経済メディアは、一体、どこを見てきたのか?

世帯の生活意識
日銀の、最新の生活意識アンケートを見ます。
憂うべき状況に見えるのですが、マスコミは、これを報じません。

(1-2)暮らし向き(21年12月)

・ゆとりが出てきた     5.8%(持ち株が上がった世帯)
・どちらともいえない   53.4%
・ゆとりがなくなってきた 40.0%

(1-2-3)1年後の雇用・処遇の不安(官庁と会社に勤務する人)

・あまり感じない     26.2%
・少し感じる       48.4%
・かなり感じる      24.8%

ここが、現在の日本の、最大の問題です。雇用と処遇(=賃金)に不安を少し感じる世帯が48.4%、かなり感じる世帯が24.8%、合計で73.2%。

中小企業雇用(3,361万人)と非正規(1,750万人)が多いでしょう。

「あまり感じない」とする26.3%は、公務員(350万人:平均年収624万円/人:税金22兆円分)と大企業雇用者(1400万人)でしょう。

約30年、人的生産性を、0.5%/年程度しか増やすことができなかったことが原因です(GDP÷就業者数:会社では、売上収益÷就業者数)。

賃金が上がらない中で、物価は上がるという認識が広がって(77.4%の世帯)、将来への生活不安が増えています。

東京のスーパー(SM)、サミット・ストアで2004年まで社長だった安土敏氏が「(会社に飼われ)意識が社畜化したサラリーマン」と言ったのは1995年頃でした。

「売れる」専門技術がないままに40歳代で会社を変わると、賃金は2/3、普通は、社歴1年生からの出発になって、1/2に下がるからです。

新卒採用が多い日本では、転職(=転社ですが…)は、その人の真価を知る知己がないと難しい。ボスによる中途採用が雇用制度である米国とは、違います。日本では73.2%(≒3人に2人)が雇用と処遇の不安を感じているという。

米国の大学では、会社に勤めず、主にITとプログラムの技術を学んで、仲間とベンチャーを興す大学生が、今も多い。引く手あまたの、AIの分野では、特に多い。

米国とは、教育、個人の意識、就業の社会の仕組みが違います。

ビル・ゲーツ(マイクロソフト)、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、フェイス・ブック(現在はメタ)のマーク・ザッカーバーグ、グーグルのラリー・ペイジとセルゲイ・プリンは、いずれも学生ベンチャーでした。13年間の株価バブルの中、株価時価総額が150兆円、2000兆円を超えた自社株で10兆円以上の富豪になっています。

(続きはご購読ください。初月無料です。)

リフレ派が、あり得ないと言ってきた、政府財政の破産

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