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株価を暴落させるのはインフレではなく、インフレが引き金となる金融引き締め
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/638.html
投稿者 中川隆 日時 2021 年 5 月 26 日 08:31:41: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 株式投資の方法 投稿者 中川隆 日時 2020 年 12 月 12 日 10:52:08)

株価を暴落させるのはインフレではなく、インフレが引き金となる金融引き締め


インフレ懸念が株式市場バブルの終わりではない理由
2021年5月24日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13674

アメリカでは現金給付などの景気刺激による物価高騰が懸念されており、株式市場はグロース株を中心としてやや不安定な状況となっている。

グロース株急落の理由は止まらない期待インフレ率上昇
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13541


インフレ率が今後どうなるのかということも問題だが、仮にインフレが止まらない場合、株式市場はどうなるのだろうか。

著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏はインフレが止まらない場合株価が下落する可能性を指摘している。

ガンドラック氏: インフレが止まらなければ株価急落へ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13593


しかし筆者の考えではこの表現は厳密ではない。インフレ自体が株価バブルの終わりを告げることはないだろう。今回はこのことについて深く考えてみたい。

インフレと株価の関係

インフレ、つまり物価の高騰とは逆に言えば貨幣(アメリカではドル)の価値が下がることを意味している。この環境下では、紙幣以外の財のドルで表記した価格が上がることになる。それで金融市場では貴金属や穀物などコモディティの価格が上がっているのである。

ドラッケンミラー氏が物価高騰を予想、米国債を空売り、コモディティを爆買い
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/12182


では株式はどうだろうか。株式とは会社の所有権であり、会社とはいわば資産をプールする容れ物のようなものである。

したがって株式の価値はその会社の保有するものの価値によって決まることになる。ここでは資産とは、貸借対照表に載るような現金や不動産などの資産だけではなく、優れた従業員を確保していること、取引先との関係、その業界における先行者利益など様々なものを含めたい。

その会社が仮に現金しか保有せず、何の事業をも行なっていなければ、その株式の価値は会社が保有する現金の価値に等しい。ドルにインフレが起こったとしても、ドル建てで表記するその株式の価格は変わらないだろう。

一方でその会社がゴールドを保有するだけの会社であった場合、株式の価値はそのゴールドの価格と同じになる。インフレ前に100ドル分のゴールドを持っていた会社があり、ゴールドの価値がインフレで100ドルから150ドルまで上がった場合、株式も同様に100ドルから150ドルまで上がるだろう。

会社にもよるが、実際には企業とは現金と現物資産の混合体ということになる。従業員や取引先との関係など目に見えない資産もインフレでドル建てで計算した価値が上がるという点では同じである。つまりインフレは会社の資産に対しては(ドル建てで)基本的にプラスの要因となる。

一方で株式には「将来のキャシュフロー」という現金にはない計算要素もある。インフレは1年ごとにドルの価値を減価してゆくので、遠い未来であればあるほどその収入の実質的価値は減ってゆく。遠い将来のドル建て収入を織り込んで上昇していたグロース株がインフレで調整局面に入っているのはそれが理由である。

一方でバリュー株はそれほどそうした悪影響を受けないだろう。ダリオ氏の現在の米国株ポートフォリオもそうした目算に従っている。

世界最大のヘッジファンド、米国配当株投資を増額 金利頭打ちを予想か
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13662


これがインフレの株式に対する影響である。つまり、「他の条件が同じならば」インフレが起こってもグロース株を除く株式にとってはそれほど悪い状況ではないということである。

他の条件が異なれば

しかしインフレが起こった場合、その他の状況にも影響を及ぼす。他の条件が同じでなくなるということが問題なのである。

株式市場にとって一番懸念される状況は何か。それは物価高騰を懸念した中央銀行がインフレを抑えるために利上げや量的引き締めなどの金融引き締め政策を行うことである。量的引き締めの威力についてはそれが原因となった2018年の株価暴落を思い起こせば良いだろう。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7959


インフレ、金融政策、そして株価の関係はどうだろうか。これを検証するためには過去のインフレにおける株価の推移を考えれば良い。つまりは1970年代および1980年代のアメリカにおいて株価がどうなったかを考えれば良いのである。

アメリカで1970年代から始まったインフレは1971年にニクソン大統領が金本位制度を放棄したニクソンショックに端を発している。当時ウォール街でアルバイトをしていた、後のヘッジファンドの帝王、レイ・ダリオ氏が以下の記事で当時の様子を振り返っている。

レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9645


金本位制度の廃止は今で言うところの量的緩和に似ている。ドルの価値を意図的に希釈したのである。

結果としてインフレ率は緩やかに上昇し、1974年のインフレ第1波で12%、1980年の第2波で14%まで上昇した。

さて、ここからが本番である。以下のチャートは現在の状況と同じく、インフレが起こり始めた1974年の第1波の前後で株価、インフレ率、政策金利がそれぞれどう動いたかを表したものである。


https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2021/05/1970s-nasdaq-us-cpi-growth-and-federal-funds-rate-chart.png

株価は1973年頃から急落している。一方でインフレ率と同時に政策金利も急上昇していることに注目したい。当時の中央銀行はインフレを許さなかった。インフレの気配を感じると中央銀行は即座に利上げをした。そして筆者の考えでは、株式市場はインフレよりも急激な利上げに反応して下落していった。

現代の相場とインフレ

しかし現在のアメリカの中央銀行の議長を務めるパウエル氏はインフレの脅威を無視している。

4月FOMC会合結果: パウエル議長のインフレ無視は続く コモディティバブル継続へ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13428


何故かと言えば、パウエル議長は自分の金融引き締めが2018年の株価暴落を引き起こしたことがトラウマになっているからである。彼はもう容易に金融引き締めが出来ないだろう。

世界同時株安を予想できた理由と株価下落の原因 (2018/10/28)
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/7959


もしインフレが起こっても中央銀行が利上げを行わないならば株価はどうなるか。それが今回の記事の主題である。上記の考察からは、インフレ自体は必ずしも株価にとってマイナスではなく、金融引き締めを伴わないインフレで(グロース株を除く)株価が暴落することはないと結論したい。つまり、株価を暴落させるのはインフレではなく、インフレが引き金となる金融引き締めである。

その他の相場見通し

しかし筆者にとって重要なのは株価よりもコモディティと暗号通貨の相場見通しである。株価は現在インフレ懸念というよりもバリュエーションが高くなったことで上値が重くなっているので大して問題視していない。それは普通の値動きである。

一方で、インフレ相場で上昇してきたコモディティ市場(暗号通貨含む)について、何人かの著名ファンドマネージャーがこれまで好調だったこれらの銘柄の調整を示唆している。

ガンドラック氏: ビットコインとコモディティは調整へ
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13605


短期的には彼らの考察が役に立つだろう。しかし長期見通しはどうだろうか。コモディティバブルとそれに付随する暗号通貨バブルはここが頂点なのだろうか。

筆者の考えでは、コモディティと暗号通貨の長期的な上昇相場の頂上は株式市場にとどめが刺されるタイミング、つまりパウエル議長がインフレの危険性を認め、金融引き締めの必要性について語り始める頃になるだろう。

上に述べた理由によりそのタイミングはまだ少し先である。パウエル議長が現実逃避をしている間は長期的には上昇トレンドは継続する。

長期的な見通しを見失わない投資家にとっては、短期的な下落は好機となる。一方で長期的な天井はいつか。パウエル議長がいつ自分の誤りに気付くかどうかについては今後のインフレ統計次第だろう。以下の記事を参考にされたい。

アメリカでインフレ止まらず、4月は年率9.6%
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13653


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/13674  

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コメント
1. 2021年6月18日 18:10:16 : miENho5Kzg : dnZJcjFka2JYTlU=[23] 報告
世界最大のヘッジファンド: 紙幣印刷で株式の実質リターンがマイナスになる
2021年6月16日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14073


世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の5月29日のインタビューから量的緩和バブルの終着地点について語った部分を紹介したい。

コロナ後の経済と量的緩和

コロナ以後、世界経済には大きな穴が空き、多くの国が政府債務を増やして景気刺激を行うことで対応しようとした。

その借金の額が膨大になったのがアメリカである。アメリカでは30万円を超える現金給付が行われた上に、失業保険の大幅拡充まで行われ、一部の労働者は働かずに失業保険を受け取ることを希望していると債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は指摘している。

ガンドラック氏: 現金給付と失業保険が失業を悪化させる
結果としてアメリカでは大量の借金上乗せが必要となり、大量の国債が刷られた。そして今後も同じように景気刺激を続けなければ株式市場も実体経済も持たないだろう。

ドラッケンミラー氏: 緩和終了でバブル終了へ
ダリオ氏は次のように指摘している。

需要と供給の問題がある。これから国の予算がどうなるかを考えれば、大量の現金、大量の借金が必要となることは明らかだ。

中央銀行が大量の紙幣を刷り、それを政府がどんどん使ってゆく。しかしこれまで日本とアメリカの経済政策が証明してきた通り、そのお金は金融市場には行くが国民には届かない。ダリオ氏は次のように続ける。

株式が上がるだろう。株式、ゴールド、ビットコイン、不動産、すべてが上がることになる。ドルの価値が暴落するからだ。

一般国民は貧しくなってゆくが、投資家は逃げ切れるのだろうか? しかし金融業界の人間ならば痛感しているだろうが、金利が10%の世界と金利がマイナスの世界では、ヘッジファンドであってもリターンは縮小されてゆく。何故か? ダリオ氏はこう説明する。

資産価格が上昇するたび、そこから将来得られるリターンは低下する。どの資産でも債券と同じだ。そしてそれは最終的に国債の金利に近づき、その資産を買うインセンティブがなくなる。

実際に、例えば配当の多い銘柄を買っている投資家は、低金利の状況下において配当率も以前ほどではなくなっていることを感じているだろう。すべては金利に連動するからである。

量的緩和の行く末

しかし問題はそれだけではない。株式のリターンが少なくなり、それは何処まで行き着いてしまうのだろうか? ダリオ氏は次のように続ける。

ここで問題が生じる。この状況で金融引き締めを行うことは非常に難しい。すべての資産が金利に対して敏感に反応するようになっているからだ。すべての資産が暴落してしまう。

そして中央銀行はますます紙幣を印刷しなければならなくなる。そうすれば1970年代に起こったように、株式や他の資産の実質リターンがマイナスとなる。このパターンは歴史上何度も何度も起こっている。

ダリオ氏は興味深いことに株式の実質リターンがマイナスになると言っている。これでは株式投資家も助からないことになってしまう。

しかしこれは意外なことではない。何故ならば1971年のニクソンショックからインフレが収まるまでの10年間、米国株の実質リターン(株価を消費者物価指数で割ったもの)は次のようになっているからである。


これが物価高騰時における株式の本当のリターンである。米国株のリターンが10年間マイナスだということが今の投資家に信じられるだろうか?

勿論、名目で見ればリターンは良くなる。しかしアメリカ人にとっては投資のリターンでものを買えるわけでもなく、円建てで考えなければならない日本の投資家にとっては、インフレ時に米国株に投資するとドル暴落で結局こういうリターンになるのである。

国民の悲劇は株のリターンがマイナスになることだけだろうか。ダリオ氏によれば、それだけではない。

お金が必要だ。だから紙幣を印刷する。お金が必要だ。だから税金が上がってゆく。これがトレンドを生んでゆく。

日本ではインフレにならないから日本人は問題を避けられているのだろうか? しかし日本の税率はアメリカとは比べ物にならない。所得税と社会保険と消費税を足し合わせた場合、大半の給与所得者は収入の半分以上を税金その他で持っていかれている。そのお金は容赦なく東京オリンピックに流れてゆく。日本人が自分で選んだ道である。

結論

今回の論考は日本の投資家にとって米国株投資を考え直さなければならないものとなったのではないか。

こうした状況下では最終的には株式よりも金属や穀物などのコモディティが上がるだろう。

ではコモディティを買えば投資家は紙幣印刷の弊害を避けられるのだろうか? 実はコモディティさえも買えなくなる可能性がある。ダリオ氏はこう付け加えている。

その次には何が起こるだろうか?

資本統制があるかもしれない。資金は何処かに行きたい。資金は現金以外のほとんどすべてのものに流れてゆく。

実際、過去にはアメリカ政府はゴールドの保有を国民に禁じたことがある。

世界最大のヘッジファンド: 金保有を禁止した政府はビットコインも禁止する
政府が自分の紙幣印刷の責任を国民に押し付けるためには何でもありである。経済学者ハイエク氏がどれほど慧眼だったかを思い知らされる。

インフレが制御不能になれば政府は価格統制を始める
ハイエク: 政府から通貨発行の独占権を剥奪せよ


https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/14073

2. 2021年9月07日 04:48:46 : r5z45lvW9w : b2RKcGJ1YVo0ZE0=[8] 報告
インフレ相場における投資家の選択肢は高成長株より低成長株
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1192.html

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