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例1:記者クラブの「機密を漏らし」「取材上の秘密」にかかわる、とされたらしい文書 転載 投稿者 ウッチャー 日時 2002 年 9 月 01 日 21:57:49:

(回答先: 司法ジャーナリズムの欠如 転載 投稿者 ウッチャー 日時 2002 年 9 月 01 日 21:44:41)


『まだ旧体制下の新聞社と月極契約している人たちへ』 から。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~NKSUCKS/


例1:記者クラブの「機密を漏らし」「取材上の秘密」にかかわる、とされたらしい文書

掲載時期:96年春(当時の原文そのまま。文章が拙いのはお許し下さい。以下 同文。)

「県警記者クラブ事情」--その実態--


どういう訳か、新聞記者のほとんどは、地方の警察担当からスタートを切る。私 もその例に漏れず、福岡県警の記者クラブを拠点に事件や事故に追われる毎 日を送っている。

県警本部、午後二時。夕刊も刷り終わり、朝刊までは時間がたっぷりある。夕 刊が配達される午後三時半ごろまでは、少し気を抜ける。県警本部の記者クラ ブ室は、建物の一階、かび臭く目立たない所にある。中は、共有スペースにソ ファーやテレビ、冷蔵庫などがあり、残りのスペースが、各社ごとのブースに分か れている。

昼飯を食べ終わった記者たちが、ソファーで寝ている。普通、記者クラブには、 横になれるソファーと毛布、枕があり、記者たちが仮眠をとるための用意ができ ている。カンジュースの自販機、テレビやお茶コーナー、そしてマージャン卓に囲 碁卓。談話室などという部屋もあって、二段ベッドまである。シャワー室まで使え る。

担当のおばさん(県警職員)が毎日ゴミ箱や灰皿を掃除してくれ、昼前になれ ば「昼食はどうしましょうか?」と聞きにきてくれ、頼めば弁当を届けてくれる。
昨年、全国の各署別の一一○番通報件数で、ベスト二とベスト三が、福岡県内 の西署と東署(一位は那覇署)。福岡はそれほど、事件、事故が多いようだ。そ のせいか、記者クラブ日経ブースのファイルやスクラップ帳では「暴」の字を良く 見かける。暴力団、暴走族、校内暴力、婦女暴行、そしていじめによる暴行。

日経ブースの壁には、銃の種類が解説されている「犯罪拳銃の基礎知識」、逮 捕から送検、起訴までの流れをチャートで図にした「逮捕から夢の二十二日 間」、そして「この顔見たら一一○番」の数々のポスターたち。昭和時代のものま でが、所狭しと貼られている。

記者クラブに突然入ると、タイムスリップした気分になる。ここだけ時間の流れ が遅いのではないか、とも思う。外界での情報化の波にも飲まれず、記者クラブ が閉鎖的だと批判されようが、この部屋でやっていることは、ほとんど変わってい ないようだ。三年目の先輩の話では、手書き原稿が完全になくなったのは、つい 三年前の話だとか。

県警記者クラブでの基本的な仕事は、広報担当官が記者クラブ内でアナウン スする発表(主に事件や事故)を、同時に配布されるペーパーをもとに記事化す る作業だ。わからない箇所は、二階に上がって、それぞれ担当の課の管理官 (副課長)に尋ねたり、管轄の署に電話取材をかける。大事件の逮捕者が出る と、記者クラブ内に併設された部屋で記者会見が開かれる。個別に記者に対応 するとキリがなく、能率が悪いという事情もある。よくテレビに映っている記者会 見のシーンは、大抵が記者クラブ内にある会見室での出来事だ。

そして、一ヵ月に一度は「懇談会」と称して、暴力団に対する方針やら、暴走族 対策などについて、部長クラスの担当者が、会議室で、クラブ員に対してレク チャーをする。「今度、封鎖ネットを利用して効果的に暴走族を取り締まるが、 ネットに引っかかって事故が起きるかもしれない。そこばかりを取り上げて強調し た記事を書かないでほしい」などといった感じだ。
警察側としても、仕事を円滑に行うために、報道機関との連携プレーを重んじ ている。例えば道路の混雑が予想されるならば、電車や徒歩を呼びかける報道 によって、警察も交通整理が楽になるわけで、その効果は馬鹿にできない。

夏になればホテルのビアガーデンを会場に「暑気払い」と称した県警本部詰め 記者と本部長以下各課長職以上との飲み会がある。県警本部だけでなく、「社 会正義を語る場」などといって、年に数回、各署ごとに記者と署長以下課長クラ スとの懇談会も設けられている。
こうして、記者クラブ内の記者と警察は、閉鎖的な世界を築いていく。

この代々受け継がれてきた閉鎖的な空間は、確かに体制側にとっては能率的 だ。邪魔者は完全にシャットアウトされており、広報担当者が体制側情報だけを 効率よく流す。突発的な事件が起きて記者会見があるとなれば、まずは記者クラ ブ室に情報が入り、そこに記者がいない場合は、加盟各社へ電話連絡されるこ とになっている。情報が必ず入る仕組みである。
そぞろ不思議な空間で、それなりの緊張感もあり、ここにいるだけで仕事をして いるような錯覚に陥りやすい。しかし、ここにいる限り、実際には県警の広報部と 言ってもいいくらいの仕事しかできないのも確か。
「私は違和感はないです。なにか起これば、みんなそれぞれ外に行って取材して くるんだから、これが能率的でいいんですよ」と記者クラブ担当の広報官は言う。 だが、それは体制側の論理だ。

確かに、警察を監視する意味で、常に近くにいる意義も無視できない面があ る。しかし、現状では、ほとんど事実関係に限っては警察発表を鵜呑みにして報 道しており「福岡県警〜課は〜したとして、〜を〜容疑で逮捕した。調べによる と、〜疑い」という決まった形に当てはめるだけで、警察広報の事実関係につい て疑うことは、まずない。記者が現場に行って検証するのは相当に大きな事件に 限られるし、全ての現場に行く暇はない。容疑者サイドからの情報はシャットアウ トされており、新人は警察側からのみの偏った情報だけで記事を書くよう教え込 まれる。それならば「今日の交通事故死亡者は〜人」というようなデータだけを載 せる方がましだ、と思うこともある。

そもそも、警察のやっていることを報道する必要などないのでは、という論もあ る。よほどの大きな事件や事故以外で、いちいち水死体が見つかったり、トラッ クが事故を起こしたり、火事があったり、といった記事を関心を持って読んでいる 人がどれだけいるのか、疑わしい。
地域の安全を守る役割は交番が担っているので、防犯上に必要な情報は、交 番の連絡協議会などで吸い上げられ、回覧板などで重要な情報が回る。

少なくとも、警察の広報部のようなことを民間企業がやる必要があるのか。特 に、新聞、通信社だけで七社も八社も県警に常駐し、各署の副署長を尋ね回っ ては「何かないですか」と朝から夜まで体制側からの情報を集めるいわゆる「サ ツ回り」に、どれだけの意義があるか、はなはだ疑問を感じる。 警察に都合の悪 い情報はクラブにいる限り、入ってこない。つまり、ジャーナリズムにとって最も重 要であるはずの「権力のチェック機構」は、ここにいるだけでは働かないのだ。

掲載時期:96年夏 (当時の原文そのままです)


「県警記者クラブを考える」--改革法--

最近、会社が「記者クラブ費」というのを払っていることを知り、その額に驚い た。県警記者クラブ費として、一人一ヵ月五百円。日経はメンバーを五人登録し ている(常駐は私とキャップだけだが)ので、一ヵ月二千五百円だ。私は電話など は、思いきり利用させてもらっているが、その金がどこから出ているのかと言え ば、勿論、税金だ。制度に問題がある。私は税金を使いたくないし、できるならば 会社の経費に含んで欲しい。

一ヵ月二千五百円で、エアコンの効いた、四畳半ほどの個室に近いスペースを 借り切り、ロッカーや新聞受けを使用し、衛星放送つきの大型テレビと仮眠用の ソファーを利用でき、ゴミ箱の処理や部屋の掃除、昼食の注文とりといったサー ビスを受けられるのは、破格の待遇といえよう。これと引き替えに、記者たちは 体制側に接見しやすくなり、警察を担いだような記事ばかりを書く。そう考えると 警察の広報費としては安いのかもしれない。

事件や事故が起きると、所轄の各警察署から、県警本部の記者クラブに、逐 一、広報文が上がってくる。一日で五枚〜十枚ほどであろうか。それをもとに、取 材が必要なら取材し、現場に行く必要があれば行って取材する。それを受けて、 クラブにいる記者が記事を書く場合が多い。

記者クラブの最大の問題点は、その「閉鎖性」だろう。一般市民はまだしも、雑 誌記者やフリージャーナリストは記者クラブ規定で入れないのだ。彼等を締め出 す正当な理由など、あるとは思えない。多様性を奪い、情報の画一性を高める 原因にもなっている。
例えば、今、手元に道路公団が出したお盆の渋滞予測がある。これはそのま ま見れば非常に有意義だが、そのまま乗せるほど紙面に余裕がないので、私が これを加工する。従って、主要な道路しか紙面に載らない。載っていない道路で も渋滞予測は出ており、そこを利用する予定の人にとっては、日経など、無意味 な新聞である。

事件にしても、現場の各署の担当警官→各署の副署長→県警本部記者クラ ブ、と既に三次情報となっているものに、さらに記者の誤解可能性が加わる。電 報ゲームの理論で、明らかに情報は歪められる。実際、私は事故を報じる記事 などで、広報文以外に加えて現場の状況も載せようと副署長を電話取材して書 いたものの、実際には事実と違っていたことを何度か経験した。車が「被害者の 後ろから来た」と確かに聞いたが、実際は横からだったりしたことがある。
従って、少しでもこの次数を少なくするためにも、希望者が広報文をじかに受け 取れるシステムが必要となる。
広報文は、希望者全員に送れるようなシステムにすべきだ。広報文は基本的 に手書きであり、またファックスの同報機能には限界があるので、ファックス送信 を希望する人は、広報官の手間代として、一ヵ月に五万なりのコストを支払うよう にする。一方、広報文はすぐさまパソコンでデジタル化し、電子メールの同報機 能で、登録を希望した者のところに届くようにする。これは格段にコストが安いの で、一般市民でも十分に登録が可能だ。登録費はタダにしてもいいほど安くでき る。なにしろ、アドレスをメーリングリストに登録するだけでいいのだから。また、 インターネットのホームページに掲載してもいい。
受け取った広報文に関しての問い合わせ窓口は複数つくり、ランクつけする。 市民からの問い合わせで回線が混むと、新聞やテレビが報道できず、市民に とってより大きな損失を生むから、このくらいは、マスコミ優先となっても仕方な い。
次に、記者会見を行うような大きめの事件の場合。これも、現状の記者クラブ 員に限定したものは閉鎖的で良くない。まず、いつどこで会見があるかは、希望 者には電話、ポケベル、電子メール等で知らせるようにする。出席する用意があ る希望者は、それなりの料金を、エクストラで毎月支払う。会見は、それなりに大 きな部屋を用意する。

そして、やはりテレビの力を利用するしかない。ケーブルテレビで、希望者は全 ての会見を中継で見れるようにする。これには、ある程度の公費の投入もやむ をえない。ノーカットで見た会見と、テレビで編集された会見では、全く違う印象を 受けるだろう。テレビ受けするところだけ放送するのだから、当然だ。誤解を与え る。新聞も同様で、面白いところ以外は省かれる。社会部系マスコミ人ほど偏っ た常識を持っている人種も珍しいので、マスコミから事実を知ることは容易では ない。

こういった改革のために、税金が余計に使われることはない。記者クラブ室を 使いたい社は、今まで通り使ってもいいが、それなりの金額は払う必要がある。 月に五万円は払うべきで、電話など通信費は各社持ちにすべきだ。現在、月に 二千五百円しか払っていない各社が、正当な使用料を払うようになるのだから、 収入はあがる。ファックス送信や電話応答用に、広報官の一人や二人を追加配 備しても、三十ほどの会社や人が加盟すればペイすること間違いなしだ。ただ、 記者クラブにいる必要がなくなるので、現状の加盟社が脱退する可能性もある。

県警本部に出入りしたり各課の次長に接見する権利も、現在は記者クラブ員 に配布されるバッジが必要だ。これは全員自由にすると混乱を招くので、公益性 を考えてランクつけすべきだろう。例え一般市民であっても、理由つけがあれば 簡単に会えるようにすべきである。

こうして、全てがオープンになったとき、新聞記者の無能さが露呈されることに なるだろう。記者が会見で無能な質問を連発したら、ただちに糾弾されうる。こう して、記者自身も磨かれていく。

「記者相互の親睦を深める」が記者クラブ設立の大義名分となっているが、何の ために親睦を深める必要があるのかが不明だ。日本独特の村意識以外の何者 でもないと思う。福岡県警クラブでは、夏になると「暑気払い」などと称して、一社 一万五千円も払い、県警本部長以下部長クラスと各警察署長ら二十人との懇親 会がある。私も日経代表で出席し、密室性の高さを感じたものだ。

しかし、問題意識を持っている人間を聞いたことがない。一生、会社にお世話 になろうと目論む記者たちにとって、既得権益をみすみす逃す理由はないのだろ う。「記者クラブ」という名の朱に染まっても赤くならないくらいの強靭な意思を持 つ、独立心の強い記者がもっと沢山いれば、少しは変わっていくのかもしれな い。

掲載時期:96年夏 (当時の原文そのままです)

「夜回り」--その志の低さ--

記者をしていると「いったい自分は、こんなところで何をしてるんだろう」と思うこ とが多々あるが、それを特に感じるのが「夜回り」や「張り番」の仕事をしている 時だ。

張り番はガルーダ機事故の時ずいぶんやった。機長が入院している病院の中 で、連日、県警の事情聴取があるため、出てきた捜査官から何を言ったかを聞く ためだ。こういった昼間の張り番くらいならまだ明るくて「まし」なのだが、問題は 夜。皆が家でのんびりしているであろう時間に、なぜこれほど間抜けな過ごし方 をしなければならないのか。

電灯のついた電柱のかげに隠れ、本を読みつつ、課長が家に帰ってくるのを ひたすら待っていると、あまりの空しさに悲しくなる。これほど非生産的な仕事は 世の中にないのではないか。だいたい、たとえ帰ってきても、無視されることもあ れば、何も話さないこともある。

福岡証券取引所の前上場部長が、三カ月で一割の利子がつくなどといって、 知人らから十数億円を集めて失踪した、という出資法違反および詐欺の疑惑が 持ち上がったため、捜査二課長の自宅前で、帰宅を待つ。もう○時過ぎだ。九時 三十分から待っているので、もうすぐ三時間。いい加減に疲れてきた。待つだけ という作業は、時間がたつのが遅い。本を読むにも、集中力を欠く。

電柱やら、マンションの階段やら、車の中やらで、よく見ると各社が隠れている のがわかる。一般人からみたら、なんて怪しい人達だろうか。疲れ果てて階段で 眠りに入っている記者の姿も。
取材先に対する倫理的問題もさることながら、周辺環境の悪化に貢献している のは確かだ。これだけ怪しいことをやっていて、「いったい自分は何やっているん だろう」と思わない方がおかしい。

夜回り終了まで待機するタクシーの運転手が言う。「マスコミん人達が、こげさ 毎日取り巻いてっちゃ、警察も悪かこっちゃできんばい」。確かに一理あるだろう が、論理的結論としては、説得力に欠く。コストの割に効用が薄い。本質的に重 要な情報は出てこないからだ。

一度夜回りをすると、家の遠さにもよるが、大抵のケースで一〜二万円ほどの タクシー代がかかる。このような仕事に数万円のタクシー代と、記者の貴重な時 間をかけるなど、企業としても社会としても個人としても、全てにおいてペイしな い。夜回りによって出てくる情報は、いずれ出てくる「イエロースクープ」だ。例え ば、「〜に逮捕状」などという見出しで朝刊に載ったりする記事。果たして、その 通りに日中に逮捕され、記者クラブで広報文が配られる。そして各社の夕刊に載 る。いずれ出てくる話をわずかに早く伝えるのみ。事態の本質とは全く関係がな い。警察当局に関して都合の悪い情報は出てこないし、法的に言う義務もない。

零時半ころ、やっと二課長が帰ってくる。実家に帰り趣味の楽器をとってきたと か。酔っ払っている。記者が暗闇の中から湧き出るように集まってくる。全部で五 人だ。私は興味がないので、みんなが話しているのを聞いていた。夜回りの時は メモをとらないという不文律があり、記憶しなくてはならない。この上場部長の疑 惑は内偵中。県警はまだ一応の情報があがってきているだけ。被害届も出され ておらず、本人が失踪中なので、どうにもならない。このまま、絶ち消えるかもし れない。誰も被害を感じていない。単なる民事事件の可能性もあり、一般人には 迷惑がかかっていない公算も高い。立件するなら、詐欺罪か、証取法違反。出 資法違反の可能性は薄い、とか。

夜回り制度のポイントは、「わざわざ家まで来た人にだけは、ちゃんと教えてあ げるよ」という体制側の偉ぶった考え方、そして「行って自分だけ下らんスクープ を貰おう」と考えるご機嫌とりの記者、それを代々継承し、批判せずに受け入れ る新人記者たち、そして疑問を持つ記者に対しては議論を受け入れず、夜回り を強要する上層部、と多岐にわたり、日本の報道体制全体に病巣が広がってい る。

何にせよ、たとえ記者が夜回りに行こうが、警察は自分に都合の良いことしか しゃべらないし、しゃべる法的責任もない(警察は情報公開法の適用外)のだか ら、この作業は、権力をチェックしたり批判したり、といったジャーナリズムとは全 く縁のない作業なのだ。良心的な記者なら、いずれこの下らない作業をしていた 自分に後悔する時が来るだろう。ジャーナリズムではないからこそ、欧米では仕 事として見なされない。このようなものに、一回、社の金を何万円もつぎ込むな ど、考えられないはずだ。

警察情報が情報公開法の適用外である現在、記者が「これは一般に広く公表 すべき情報だ」としつこく迫ったり、警察が「捜査上の機密事項を教える義務はな い。時がくれば、会見で公表する」といった信念を持っていたりするなら、まだい い。記者は、情報公開法の不備を指摘し、徹底的にその閉鎖性を追求すべきで ある。

しかし、そうならない原因は「記者たちにおれの帰りを待たせている、という優 越感」と、マスコミの「内輪のスクープゲームに躍起になる自己満足感」という、二 つの人間の本性を指摘できよう。何にせよ、大義名分もなく、両者ともに視野の 狭さと志の低さばかりを感じるのだ。

掲載時期:96年秋 (当時の原文そのままです)
「市政記者クラブ」--その功罪--

新人としては異例の人事異動で、行政グループ、福岡市役所担当となった。市 役所十階にある記者クラブ室に出勤(出クラブ)し、社に寄って帰る毎日だ。仕事 は、記者クラブの発表モノの処理と、それ以外の自由な独自ネタの発掘、記事 化である。

記者クラブでの情報授受には二通りがある。普通は、資料が日経の所定の場 所に投函されるだけ。重要なものについては、前日に会見予告があり、併設され た部屋で記者会見形式をとる。いずれにせよかなりの量で、慣れないうちは処理 するのが大変だ。記者会見は一日二回程度だが、投げ込みは十五種類くらい はある。お役所というのは数えられないほどの課に分かれており、会見は各課 の授業を受けているかのようだ。不勉強の政治家が官僚に取り込まれてしまう のもわかる気がする。全てを理解するのはとても無理である。

夕方、発表モノで重要そうなものを、キャップに連絡。指示に従って記事化す る。あとは独自ネタの取材を勝手にやっていればいい。かなり行動の自由度は 高まった。
警察と市役所とで最も違う点は、警察ネタが、突発事件に対して、次々に取材 をしなければ記事にならないのに対し、市政ネタは、主に発表モノを「要約」すれ ばいいということだ。

何にせよ、時間が決まっているところが魅力である。前日夕方に会見・レクチャ ーの時間や、議会その他の動きが張り出される。全部で六〜十件くらい。当日に なって突発的に発表となるのは、「O157」をはじめとする食中毒の発生くらい。 警察担当のように常に精神不安定とはならない。しかし、前日に張り出されるも のは、当局の恣意が入り込んでおり、都合の悪いこと、触れてほしくないことは、 避けられている。例えば、たまたま講堂を覗いたら同和問題に関する企業研修 会をやっていた、ということがあった。マスコミは、知らず知らずのうちに記者クラ ブにより情報操作されている。

他に「県警クラブ」との違いといえば、様々な買収行為が行われていることだ。
多いのは、観光業組合が勧誘の一貫として配布するもの。観光課は、観光業 を振興しなければならないので、九州近郊の観光業組合らとともに売り込みにく る。確かに、新聞の地方版に記事として載せてもらえれば、効果は絶大だ。
観光課が「中国四国オレンジライン」への観光誘致活動をする、となれば、ミカ ンを一箱持ってきて、記者クラブに置いていく。天草地方なら、乾燥コンブを一 箱。貰う人がいないので、余っているくらいだ。この程度のものは、その効果を考 えれば安いものなのだろう。おかげで記者クラブはいつも何かしらの食べ物が置 いてある。

こういった買収作戦は、観光に限らない。交通課が「車よりも電車に乗るよう に」との政策を推進するため「ノーマイカーデーFカード」なるものを作って発表す れば、見本ができましたとばかりに千円分のプリペイドカードを各社に投函する。
年金課は、国民年金推進期間になると、「二十歳になったら国民年金」という広 告用の福岡市作成のテレホンカード(五十度数)を二バージョン、見本として資料 投函箱に投げ込んできた。これが、写真入りで各紙の県版に載るわけだ。
見本といいつつも実物なので、私は、有難く使っている。みんな使っているの で、誰も文句は言わない。これらは紛れもなく税金である。見本を配りたければ 見本と書いて、使えないものを配ればいいのに、とも思う。そこまでいくと、神経 質だろうか。ただ、この事実はあまり知られていない。

これらに限らず、相変わらず行政側の便宜供与はかなりのものだ。記者クラブ 室は報道課とつながっており、ほとんど記者クラブ専属の男性職員が三人ほど いる。他にも事務処理やお茶くみの女性が三人ほど。コーヒーを頼むと五十円で 持ってきてくれる。さすがに、広報担当の人間というのは人選がよくできていて、 人当たりがいい。私を、同じ社の後輩のように飲みに連れていく。大型テレビが あり、ソファー、二段ベッドがあり、新聞が十紙ほど、赤旗から日経産業新聞、産 経、スポーツ紙までおいてある。そして各種週刊誌。

マスコミが、それ相応の負担(事務所料や電話使用料)をしていないのは問題 だ。また、同じ社に勤めているがごとく、一つの部屋に各社がいて、仕事をしてい ることの弊害も大きい。他社がお互いに何を取材しているのかは筒抜けだ。私 は「日経」と「記者クラブ」という二つの会社に属しているようなものである。少なく とも、声を小さくすれば聞こえないくらいの「ついたて」で仕切るとか、ブースで分 けるとかしてくれれば、この点は改善される。記者発表の公開性が低いことも問 題だ。記者発表資料は翌日には情報公開室で一般に公開されるが、やはり、他 マスコミや他社、一般人が時間差なしで資料を入手できたり、会見に参加できる ような、高度情報化の工夫は必要であろう。

一方、取材をする上では一概に悪いことばかりでもない。なにより、一ヵ所に集 めているメリットがある。まず驚くのは、各紙の切り抜きの必要がないことだ。担 当の職員が、毎朝、朝、毎、読、西日本、日経の五紙の市役所関連記事を全部 切り抜き、B4版に両面コピーして、ホッチキスで止めて投函してくれるのである。 多いときは五枚くらいになる。月曜など、土日の分もあるため、倍増する。これは 記者にとっては楽だ。切り抜きは新人の仕事の定番だが、時間の無駄使いとい う面も多い。このシステムは能率的で、批判の余地はない。

次に、市役所の外部からの情報がある程度、能率的に入ること。月別で幹事 社が決まっており、外部からの「持ち込み」があると、幹事を通して資料が投げ 込まれたり、会見が開かれる。記者クラブというと、官報ばかりが投げ込まれる ところという閉鎖的なイメージがあるが、例えば市民団体が記者クラブを利用し てマスコミ各社にアピールすることが、容易にできるわけだ。しかし、このシステ ムは、広く一般に知られていない。何とかして知らせる手だてはないものか、と思 う。

掲載時期:96年冬 (当時の原文そのままです)


「脱・記者クラブ体制」--実現への道--

記者クラブ問題に関しては、多くの論者が「現状に問題あり」と感じ、改革が必 要であるという点では大方の議論が一致している。そこで有益なのは、理想の姿 と、改革を妨げているものが何かを明確にし、改革への道筋を提言することだ。
記者クラブ問題に関し、1.その問題点と2.利点を洗い出し、3.「こうあるべき」と いう理想論を述べたあと、4.「その障害となっているもの」について分析し、5.あく まで改革するための方法論、6.展望について述べる。

1.問題点
a.発表ジャーナリズムの温床
役所・警察系の記者クラブの場合、大本営情報ばかりが流される。市政・県政 便りと全く同じ内容の記事が新聞に載っていることも、しばしばである。結果的 に、独自性の強い面白い掘り下げた記事は少なくなる。

b.閉鎖性
雑誌記者やフリーの記者は規約により入れない。情報の独占により既得権、 馴れ合いが生じる。

c.自由な取材活動を阻害
これは夕刊があることと密接な関係がある。会社からは夕刊締切の午後一時 ごろまで記者クラブにいるよう命じられるので、どうしてもクラブにいる時間が長く なる。クラブ内では他社が何をやっているかが筒抜けなので、独自の取材ができ ない。キャップは、他社に何を書いているのかバレないように、ラップトップで記 事を打つ時、見出しだけは、本文の内容と関係のない「ダミー見出し」を使ってい る。

d.加盟社内の相互批判がしにくい
どうしても同じクラブ内では相互批判しにくい環境になりがち。どこかが誤報を 流しても指摘するよりはかばう。仲間意識は極めて強く「読売さんは今日のレク のやつ、いつ書くの?」と毎日の記者が聞く、などということは日常茶飯事。

e.税金の無駄使い
マスコミが相応の負担(事務所テナント料や電話使用料)をしていない。警察や 役所といった圧力団体の陳情場に、マスコミが日常的に出向いて税金で接待を 受けている構図。従って影響力の大きい巨大マスコミ以外は締め出されている。
一般企業から接待を受けることも問題だが、役所系記者クラブの場合、その費 用が税金であることは、深刻な問題である。

f.圧力団体の陳情場、五五年体制の残滓
日経の西部編集部は、十五の記者クラブに所属している。福岡経済記者クラ ブ、証券・金融記者クラブ、福岡建設記者クラブ、福岡農業記者クラブ、福岡航 空記者クラブ、福岡県政記者会、福岡市政記者会、福岡県教育庁記者クラブ、 福岡県警記者クラブ、福岡司法記者会、九大記者クラブ、九州写真記者協会、 福岡運動記者会、福岡レジャー記者クラブ、九州JR記者会で、一人一ヵ月、平 均五百円程度を各社が払っている。日経は各クラブに、重複して一人〜八人が 所属しており、例えば私は市政、県政、県警クラブの三つに所属。市政記者クラ ブは一人六百円で四人所属しているので、日経は市役所に対して、一カ月あた り二千四百円しか払っていない。
これらの記者クラブに配備されている広報担当職員は、とても人あたりの良 い、憎めない人と相場が決まっている。これは企業の広報や人事部と同じで、日 経の人事部がいかに他部よりも人柄のいい人が厳選されているかは、多くの同 期社員が感じていることと思う。これはある意味、非常に騙され易く、事の本質と かけ離れるケースが多い。
結局、記者たちは、業界団体や職員らにうまく利用され易くなる。締切までに紙 面を埋めねばならぬという至上命令の下、アクセスしやすい情報に頼らざるを得 ないという事情がある。
「ロビーイングの場としての記者クラブ」という性格が強いことは、次の事実に よって裏付けられる。裁判所では、供給側による情報提供の「うまみ」があまりな いため、記者は優遇されていない。私も福岡地裁の記者クラブには五、六回仕 事で顔を出したが、市役所や県警とは違い狭くて、居心地の悪いところだ。警察 や役所と違い、お茶やコーヒーのサービスはなく、雑誌も一切置いていない。
裁判所担当の記者が言う。「十二月はうちが幹事だから大変だよ。県警とか役 所とかの記者クラブだと、職員が連絡事項など全部やってくれるけど、裁判所で は各社持ち回りでやらなきゃならないからね。裁判の記事なんて、裁判所がいく ら情報提供したって、メリットがないからさ」。
県警や市役所、県庁では、記者クラブには担当の職員がいて記者間の連絡を 取ってくれたり、急な発表の時は各社に電話してくれたりと、様々な便宜供与が ある。また、お茶やコーヒーを給仕する職員が必ず常駐している。「コーヒーを入 れてくれんかね」と女性職員に頼む記者を見るにつけ、市の職員と区別がつか ない。
そして、赤旗から読売まで、各社新聞は言うまでもなく、スポーツ紙から週間現 代、週間プレイボーイにビックコミックスピリッツまでが常備され、電話は使い放 題。これはどう見ても便宜供与ではないか。
裁判所クラブがなぜ担当職員も置かず、記者に冷たいのか、という現実を考え た時、その「圧力団体が接待をしている」という性格は、一層、明らかである。「市 民の知る権利に応えるため」というならば、裁判所も同様のサービスがあるはず なのだ。
企業・経済系の記者クラブがあり、消費者、市民系の記者クラブがないため、 どうしても供給側の情報ばかりが読者、視聴者に流れてしまう。記者クラブ問題 は、消費者、生活者よりも企業や役所といった供給者を優先させてきた五五年 体制の構図と、切っても切れない関係にあると言えるだろう。時代遅れの構造自 体の変革が迫られている。

2.利点
利点を考えれば考えるほど、皮肉になってしまう。まず、読者は市政・県政便り を読まずに捨てることができる。全部、地元紙、テレビが報じてくれるからだ。ま た、クラブで貰うネタで紙面が埋るので、掘り下げた報道は少なくなり、社会の疑 問点は表出せず、従って社会が混乱しないことも挙げられる。これは既得権者 に都合が良く、また経済の高度成長至上主義には都合が良かっただろう。敢え て挙げるなら、当局に都合の良い情報(当局の言い分)ばかりが、高い速報性で 効率的に新聞、テレビを通して市民に伝わること。あくまで当局に偏ったものに なるので、読者にとって利点と言えるかどうか疑わしいが。ただ、能率性は軽視 できない問題だ。記者が全てのネタを自分から動き出して集めるとなると、時間 がかかり過ぎるのだ。

3.理想論
記者クラブ室の開放化、有料化、情報化でかなりの程度が、解決されるはず。 まずは記者クラブを開放する。加盟社は従来の大手新聞、テレビだけに限ら ず、原則、自由とする。一般人でもいい。加盟すれば、時間的、量的にも平等に 情報が流される仕組とする。(クラブ室の投函箱への投函、電話、FAX、E-mail によって)。
税金が無駄使いされないように、加盟社は市場価値に相応する負担金を払 う。部屋を利用したい社は貸与代から机など備品使用代、電話代、光熱費まで、 すべてを各社で自己負担する。職員の提供などの余計なサービスはなくす。各 社ごとに声が筒抜けにならないように部屋をブースごとに分け、共有スペースに は、資料の投函所を配置する。会見場は、希望する一般市民が入れるように公 民館など広いスペースを随時、利用する。会見の知らせも、勿論、加盟社に平等 に伝える。
この情報化策により「情報を独占的に早く知る」という既得権が無くなる。 誰も が発表モノを知る立場になれば、ますます発表モノを要約して報道するだけのマ スコミでは、意味がなくなる。
警察、役所、業界団体だけに存在していた記者クラブでは、情報がどうしても 権力側、体制側からのものに偏っていた。既に述べたように、記者クラブは役所 を含む圧力団体の陳情場としての意味合いが大きい。陳情方法は「情報アクセ スの良さ」という、形となって見えにくい実に巧妙な手口によって為されている。多 くの人が理解していなかったこの概念により、実に巧妙に隠されてきた。
そこで「市民、消費者、生活者の記者クラブ」を創る。現在、ボランティア組織や NPOなどの、これまでの五五年体制下では育ってこなかったセクターが急進し つつある。こういった新たなセクターに、従来の記者クラブは対応できない。行政 への不満、警察の不正、企業の悪事などについての市民、消費者、生活者、市 民団体などが発する情報が能率良くマスメディアに伝わるようなシステムを構築 する。
こういったマスメディアを積極的に利用する仕組みは、何らかの形で義務教育 課程に組み込む必要がある。
それでも、夕刊がある以上、午後一時までの時間が縛られ、自由な取材がで きない→記事が画一化する、という現象が存在する。夕刊がある以上、締切直 前に起きたことを入れないと「特落ち」になる。通信社の原稿は配信までに一時 間以上かかるので、待っていたら締切に間に合わない。従って、夕刊を廃止する 新聞が出てきてもいい。その変わり、その日あった発表モノは通信社を使い、独 自の記事執筆に記者を投入する。現在の「オール通信社体制」から通信社と新 聞社の役割分担の時代へと移行するのだ。これで、「つまらない新聞・テレビ」か らの脱却が可能となる。
一気に改革を進めるのは不可能なので、まずは、過渡的な措置として、現在の クラブ室内にある共同会見場とそれに併設した部屋(=現在の記者クラブ)を、 加盟社の共同利用のために残し、正当な価格で加盟社が借りるようにする。正 当な市場価格にすると、一社一クラブ十万円程度はかかるものと見られ、多くの 社が撤退するだろう。

4.実現への障害
a.多くの記者が望んでいない
本来の仕事をしているとは思えないが、なぜか高収入と適度な社会的地位が 保証されている。世間はなぜか、記者を格好いい仕事だと勘違いしている。実際 には権力に付きまとい、ゴマをすって情報を貰っている(これをなぜかマスコミで は「食い込む」と表現する)のが主な仕事で、本質的に格好いい仕事をしていると はとても思えない。情報の既得権を握った記者は、ぬるま湯の中で、抜いたの抜 かれたのと、レベルの低いスクープ合戦に明け暮れる。本来のジャーナリズムの 仕事をしている記者、本当に社会的意義のある仕事をしている記者は大新聞に は少なくなる。記者は新人時代から考える暇もないほど忙しいので、いつのまに か染まってしまう。

b.経営陣が望んでいない
完全に既得権のシステムに組み込まれている。定年まで朝日新聞を勤めあげ た本多勝一氏は入社当時と比較し、こう述べる。「テレビをはじめ関係する業界 が多くなりすぎました。タブーがふえすぎた。なにしろジャーナリズムではなくて情 報産業であり、デパートや銀行と同じレベルになりつつあるのですから。_もはや ジャーナリズムなんか不要で、ただの情報産業でいいんだから、カネモーケ第 一、あんまり社会の矛盾なんかほじくってほしくないのです。だからジャーナリスト たらん記者は冷遇され、ゴマスリが重用されるようになってゆくのも当然でしょ う。」(「滅び行くジャーナリズム」より)。要するに、テレビや新聞が系列化されて いくに従い、新聞は系列局テレビ番組のスポンサーに気を使わざるをえなくなっ た。掘り下げた報道をすると、どこかでスポンサーの批判記事という意味合いを 持ってしまうため、経営陣にとっては困る。新聞社の利益の約半分は広告収入 だからだ。

c.圧力団体が望んでいない
記者クラブは、権力、圧力団体との癒着の場である。自らに都合の良い情報を 効率良く流せる記者クラブ制度がなくなると、批判的な記事が増えるだろうし、都 合が悪い。効果的な情報のリークも難しくなってしまう。

d.規制に守られている
競争がほとんどない。しかも、各紙の販売部数は記事の内容ではなく、販売 力、つまり勧誘員の「拡材」と呼ばれる洗剤やチケットで決まっている面が強い。
販売店制度に基づく宅配制度が主流の日本では、新規参入が極めて難しい。 そのため、夕刊などなくして、差別化を図ろうという新聞を創刊して売りたくても、 作れない。本多氏の悲願である本当のジャーナリズムを追及する新聞が、流通 問題から実現しなかったことが、新規参入の難しさを示している。日夜、激しい出 入りを繰り返し、浮き沈みの激しい雑誌業界とは対照的に参入障壁が高いの だ。
そうかといって、既存の新聞は大きくなりすぎて、もはや改革は望めない。日本 の新聞ほど部数が多い新聞は世界的にも珍しい。再販制度に守られ、価格競 争もないので、変えるインセンティブもない。従って、夕刊がある→記者は記者ク ラブに夕刊締切の午後一時ごろまで詰めている→独自の取材が少なくなる→紙 面が画一化する、という悪循環となる。私は締切まで記者クラブに張り付いてい なかったがために何度かデスクに怒られた。これでは、通信社だ。この時間を有 効に使えれば、記事の質も高まり、各社ごとの違いも出るはずだ。それでも、日 経が他紙に比べてまだ面白い(と私は思う)のは、一応、共同通信の記事を買っ ているので、独自の取材が他紙に比べればしやすいからだろう。朝毎読は、外 信以外は自社原稿なので、記者は記者クラブネタを「処理」するだけで精一杯 だ。

e.勇気がない
業界全体にマンネリズムが蔓延している。「構造問題」で述べたように、もとも と、官僚のような筆記試験ができるだけの人材が集まる制度だったので、上層 部にはジャーナリストとしての素質のある人材がもともと少ない上に、終身雇用 で外部からの人材はほとんど入ってこないから、ジャーナリストとして必要不可欠 な改革を主張する勇気を持った人材が社内に少ない。本多氏が以下のように述 べているのは、象徴的である。
「そういう根性のある記者はむしろ『出世』しないようになってきたのかもしれませ んな。適当にゴマをする方がトクするような構造に。だいたい入社試験のやり方 からして、独創性のある人間がはいらなくなっているようだ。選ぶ側も選ばれる 側も、管理職になりたがるような連中ばかり。管理職にさそわれても断固ライタ ーの道をとりつづける記者が、ゼロとはいわぬまでも希有ですからね。」(「事実 とは何か」より)

5.改革するための方法論
a.「メディア利用」に関する周知徹底
一般市民は、新聞がどうやって作られるのかを、もっと知るべき。多くの小学校 は社会科見学で新聞社を見学させるが、一度も記者クラブで発表モノの処理に 追われている記者の姿を見せることはない。実際には、多くの記者がメイン取材 は記者クラブ内から庁内に電話することだ。いちいち現場に行っていたら、年々 増ページを重ねてきた新聞紙面を埋めることはできない。
一方で、現場の実感として、多くの新聞が、喉から手が出るほど面白い話題を 求めている。何でもいいから、自分がニュースになるようなことをやっていると 思ったら、投稿すればいい。何かベンチャー的なことをやっている、時代の先端 を行くことをやっていると思うなら、FAXでも手紙でもいいから、新聞社に送るの だ。記者が喜んで飛びつくだろう。しかし、本当に時代のトレンドとなるような活動 をしている人に限って自覚はなく、メディアを利用しようという発想は思いつかな いようだ。また、なぜか「何で取り上げてくれないのか」などと文句を言っていたり する。そういうことは、少なくとも情報を発信してから言って欲しい。特に市民団体 は自らの利益のために、マスコミにアピールするべきだ。
こういった利用法を紙面を使って周知徹底する。これにより、記者は市民サイ ド情報へのアクセスがしやすくなる。皆がそういった意識を持てば、「市民・消費 者・生活者クラブ」ができる前でも、紙面は面白くなる。これを地道に訴えていき たい。

b.業界再編のための規制緩和策
新聞業界における規制緩和は、逆説的のようだが、「販売店にどの新聞でも配 達するよう義務付けること」である。米国のように町角の新聞ボックス(五十セン ト入れると出てくる販売機)が沢山あるわけでもない日本では、新聞の九十九% が宅配である。土地代が高い日本では、販売店を新たに沢山作るなど、事実上 不可能。これが大きな参入障壁となり、新たな新聞社を作れない。事実として、 戦後、東京を中心とした新しい新聞社が生まれていないのだ。これほど固定化し た市場も少ないのではないか。この宅配インフラの共通化は、業界全体の業務 の効率化にもつながるメリットがある。
例えば、東京を中心とした夕刊のない新聞がなぜ不可能なのかと言えば、夕 刊をなくす→広告収入が減る→リストラが必要、という構図がある。そして既存の 新聞は既に組織が改革の仕様がないほど大きい。新聞業界は労組の力が強 く、もはや規模の縮小による質の向上は期待できない。従って、つまらない、読 まれない夕刊でも、惰性で存続する。毎日新聞が経営悪化しても改革に乗り出 せないのは、規模が大きくなりすぎたからだろう。今や、ニュースのない土曜の 夕刊さえも廃止できない状態だ。
だいたい、夕刊の存在自体が、世界的に見て珍しい。忙しい現代人にとって、 情報を得る手段はインターネットや雑誌、ケーブルテレビと、多様化を進めてい る。朝夕二回も新聞をじっくり読むなど、返って読む精度を落とすだけだ。それよ りも、独自の掘り下げた記事を増やす効果が期待される夕刊廃止策が進むべき で、需要もはあるはずなのだ。しかしこれも、新聞社の買収、合併、新規参入な どがない限り、実現は難しい。規制緩和がもっと議論されるべき所以である。

6.展望
結論として、五五年体制が崩れ、経済・社会全体で構造改革が進んでいる現 在において、五五年体制の残滓である記者クラブ制度に基づいたメディアが既 存の体制を維持し続けるなど、不可能だと思う。制度疲労は明らかだ。他業界 が規制緩和により業界再編、リストラを余儀なくされるのと同様、もはや世界にも 稀な巨大部数を誇る新聞が、そのままの形で残ることはないだろう。
既存の新聞は、肥大化しすぎている。もはや、既存のシステムの下でジャーナ リズムが有効に機能することはありえない。それは、やはり関連業界が増えすぎ たからだ。
潰れる新聞社も出てくるかもしれない。税金の使い方が問われている現在、市 民は記者クラブにつぎ込むことも許さないだろうし、価格に転嫁することを許さな いだろう。しかし、構造改革は痛みを伴う。五五年体制の供給重視体制から、消 費者、生活者重視の新体制への移行は、他の規制緩和、情報公開、NPO法制 定、行政改革といった一連の流れと同様、避けられない問題である。
ワクワクしながら読めるような面白いメディアが誕生するか否かは、読者の強 い期待と記者の気概があれば、何も業界外からの圧力がなくても、不可能な話 ではないはずだが、やはり現状は明るいとは言えなそうだ。

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