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所有権と占有権の違いそして競争原理 投稿者 あっしら 日時 2002 年 9 月 28 日 20:58:35:

(回答先: 貧富のある共産主義について 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 9 月 28 日 09:17:35)

レスありがとうございます。

誤解があるようなので、最初にいくつか確認しておきます。


● オリジナルの内容は、グランド・デザインに通じるものを含んでいることは事実ですが、あくまでも「共産主義国家」が“破綻”ないし“変質”に至った要因を述べたものです。

● よって、歴史的現実であった「共産主義国家」の愚策やそうならざるを得なかった国際要因を取り上げることが主眼のものです。

● グランド・デザインと重なる部分はあるとしても、オリジナルの内容はそれを説明するために書いたものではありません。


端的に言えば、我々が「共産主義国家」だと認識していた近代国家は、経済論理的に言えば、“戦時国家資本制国家”であったという主張を書いたものです。

「国家資本制」とは国家が近代的生産手段を所有管理する経済システムというもので、対比させるとしたら、日本などは「私的資本制」ということになります。
どちらも、資本を増殖させることを通じて国民経済を発展させなければならない論理規定性を基礎としていることが共通です。


>貴殿の理論を突き詰めると、(個人経営を含む)あらゆる事業体の私的所有は禁止さ
>れ、国家ないし集団所有のみが認められる(これにより余剰通貨が企業段階でもし発
>生したら国家がすべて吸い上げる)、能力に応じた報酬の差はあるが、他人より多く
>の報酬を得たからと言ってそれを増殖させる行為は禁じられる(全て消費に回す以外
>に使い道はない)、そういう社会でしょう。

過渡的には国家が余剰通貨を吸い上げるという段階はあると思っていますが、国家が国民に求めるのは、通貨ではなく活動力になります。

報酬の差異性や稼いだ通貨の使途についてはまとめていただいたイメージです。

土地や生産手段の絶対的な排他的支配権としての私的所有は否定しますが、土地や生産手段の占有的利用権を認める立場です。

いわゆる「共産主義国家」が採用した国家所有ないし集団所有は否定的に捉えています。
そのような抽象的な所有形態は、否応なしに具体的なものにならざるを得ない占有的利用権の行使をあいまいにし、官僚統制を招来することになります。

個人経営も否定しません。
活動成果として受け取った「活動証書」(通貨)をソーイングマシンや工具と交換することはでき、それらを使って生産した財を「活動証書」と交換することは制限されません。
しかし、それは個別相対取引に限定され、いわゆる無人格的な市場取引に参入することはできません。

理想とする社会構造は、「土地や生産活動に縛られない自営農民共同体」です。
生まれ落ちた子は歴史的基準で必要な生存条件としての土地を給付され、死にゆく人はその土地を返還することになります。
集産主義とも言える「共産主義国家」との特徴的な違いは、「土地にしがみつく自給自足的な自営農民」の存在も認められることです。
同時に、農民の活動と交換できる活動を行う人々は、土地や農業生産活動から“完全に”離れることもできます。(迂回的に農民の活動と交換できる活動でもかまいません)

農民であり、職人であり、介護人であり、デザイナーであるという個人の生き方も可能です。
私的利益を追求するなかで生産性を急激に上昇させ、労働過程も抽象化を進めてきた「近代経済システム」が、個人にそのような活動を可能にする物質的条件を準備しました。

(逆に言えば、だからこそ、「近代経済システム」である限り解消できない「世界同時デフレ」という歴史段階を迎えることになったのです)


現在の社会との根底的な違いは、経済活動が目的となったり生活のなかで大きなウエイトを占める社会ではないことです。
わかりやすく言えば、お金にならない活動が生活のなかで大きなウエイトを占めるようになります。

「利潤なき経済社会」の統治形態はおいおい説明して行くつもりです。


>私は、資本主義と共産主義とを分かつ根本的なキーワードは「競争原理」だと思って
>います。競争による優勝劣敗を通じてマクロで見た果実を競争のない世界(共産主義)
>よりは大きく得られる、これが資本主義の本質だと考えます。貴殿のネオ・コミュニ
>ズムは能力に応じた報酬の差別はつけても、多分、事業体の優勝劣敗(企業の倒産)は
>認めないのだと思います。そうするとこれは必然的に計画経済になります。つまり、
>財貨Aを産出する企業数と従業員数はこれこれ、サービスBを産出する企業数と従業
>員数はこれこれ、とかつてのゴスプランがやっていたのと同じ事をやることになって
>しまうのです。

事業体の優勝劣敗(企業の倒産)は必要です。
市場経済で失敗した“占有的利用権”行使者(経営者に限らず)はその職から放逐されますし、歴史的変移のなかで事業体のリストラクチャーも行われます。

人々が活動力を交換する社会ですから市場もあり、報酬に差異性があるのですから「競争原理」もあります。

ソ連がゴスプラン的隘路に陥ったのは、“戦時国家資本主義体制”として国防最優先で資源配分を行ったことが要因です。
国家の死活を制する需要を優先する状況になれば、私的資本制であろうとも、計画経済になります。

市場があるのに、商才に長けているとしても、官僚が生産計画や資源配分を行うのは無駄なことです。


>「こんなアイデアがあるが、社会が受け入れるかどうか分からん。とにかくやってみ
>よう。」という一番ムキ出しの形での起業家精神も、こういうシステム下では実質的
>には入りこむ余地がないでしょう。つまりは、貴殿は「所有形態以外は」あまり資本
>主義社会とは変わらないと考えておられるネオ・コミュニズムも、やっぱり資本主義
>とは大違いで、待っているのは「退出と参入の進まない」計画経済でした、というこ
>とになるのではないでしょうか。

創成期の「近代経済システム」であれば違いますが、「一番ムキ出しの形での起業家精神」を阻害しているのは、固定資本が巨大化した現代の「経済システム」です。

ITソフト・ファッション・飲食サービスなど限られた分野での起業家精神の発揮余地は認めますが、中核産業にそのような可能性があるわけではありません。

ソニーやホンダはあのような歴史段階だったから可能なのであって、日本人に発明や開発の才もしくは起業家精神が喪失されたわけではありません。

「こんなアイデアがあるが、社会が受け入れるかどうか分からん。とにかくやってみ
よう。」という人々をサポートできるのも「利潤なき経済社会」だからこそ可能です。

利潤を追求するわけではないのですから、結果的に、失敗に終わったり、評判が悪いものであっても造るムダが許されるのです。
市場規模が小さくても、それを必要としている人やそれで助かる人がいるのなら、開発活動を含めて割の合わない生産であっても行えるのが「利潤なき経済社会」です。

「近代経済システム」が行き詰まっている要因をきちんと考える必要があります。

私に言わせれば投資銀行とお金好き起業家精神が仕組んだ詐欺である「ITバブル」しか社会的に広く認知される起業家精神を発露できる場がないというのが現実です。


>社会の原動力としての役割を「報酬の差別化」に期待しておられるのだと思います
>が、資本化して増やして行く事を禁じられた貨幣にどれだけの魅力を民衆が感じるの
>か疑問があります。最低報酬と最高報酬を何倍まで認めるのか、残された貨幣は死後
>相続が認められるのか、などの問題も重要です。どうも行きつく先はかつての社会主
>義諸国とさほど変わらないような経済社会にしかならないのではないか、という危惧
>を禁じ得ません。

正直申し上げて、「報酬の差別化」にほとんど期待していません。
期待しているのは、一部ではあろうと推測している人々の活動欲求や自己実現欲求です。

「報酬の差別化」は過渡的には必要な政策だと思っています。


>他への優越の願望、それを実現するための競争の展開、これを下支えする私的財産所
>有制度への固執は人間の本能に近いと言えるほどに根深いものだと感じます。それゆ
>えに(ネオ)コミュニズムの実現性は薄いということのみならず、その私的所有を全否
>定した社会に活力が生まれうるか、という点は多いに疑問があります。

自由主義の権化とも言えるハイエクが洞察しているように、「人々はほっとけば社会主義に傾く」ものだと思っていますので、近代的な意味での「私的財産所有制度への固執は人間の本能に近い」ものだとは考えていません。

もちろん、自己(家族)防衛意識としての生存条件の確保(占有的利用権)に執着することは認めます。

「他への優越の願望、それを実現するための競争の展開」が保有するお金の量を基準としたものであれば、あまりにも哀れです。
と言うより、そのような価値観は近代のなかで醸成されてきたあぶくのようなものです。

「他への優越の願望」を活動意欲の支えとして否定するものではありませんが、それが得られるお金の多寡で計れると考えている愚か者は、現代においてもごく少数です。


どっちにしても、保有する通貨を増殖させることにこだわる「近代経済システム」はまもなく行き詰まります。
どの先進諸国も財政不如意になったなかで資本化されることのない私的利潤を許している限り、身動きできない歴史段階に「近代経済システム」は到達したのです。


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