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為替問題と米国債問題 投稿者 あっしら 日時 2002 年 10 月 09 日 20:31:40:

(回答先: あっしらさん、私の頭を少しクリアにしてください。 投稿者 聖徳太子 日時 2002 年 10 月 09 日 17:54:22)

聖徳太子さん、こんばんわ。


■ 為替問題

円安がどういう過程で実現されるかが重要です。

円安にする方法として、国際的了解のもと、大量のドル買いをトリガーとして投機筋も円安を予測する動きに引き込んで実現するものと、輸出財の比較生産性が低下して財価格が上昇することで輸出が減少して実現されるものがあると考えています。

最初の方法を「政策的円安」とし、後のほうを「経済論理的円安」とします。

● 「政策的円安」

これは、国内の生産条件は基本的に変わらないので、輸出条件が有利になり、輸入条件が不利になると考えられ、インフレターゲット論者を中心に好意的に受け止められています。

円安が輸出企業の利益を増加させることは確かです。

そして、株式はともかく、米国連邦政府の財政赤字をファイナンスすることは願ったり適ったりですから、それが約束される円安に米国政権も強く反対はしないと予測します。

(経常収支の黒字をすべて対米証券投資に回すことには反対です。せいぜい半分にとどめるべきです。対外通貨余剰は、日本経済の再生に不可欠なものです)

>円安、金利上昇、物価上昇などが起こるとともに黒字体質が残存している日本にとっ
>ては、国際競争力が増し国内経済が浮上する可能性が出てくるのではないかと思われ
>ます。

対外余剰が国外に流出するという前提ですから、経済論理的には金利上昇が起きるはずです。しかし、現状の経済状況に照らせば、輸出企業を中心とした民間で大きな資金需要増加が起きるとは考えられないことと、日銀が低金利政策と金融緩和策をとることから、変わらないと考えます。

ポイントは、「物価上昇」がどの範囲まで広がるのかということだと思われます。

輸出企業のコストに占める輸入財の比率が低ければ、既存生産設備や賃金は条件が変わらないのですから、円安による手取り円額の増加で、輸入財の価格上昇は吸収できます。

しかし、国内需要向け財や用役の供給のために使われる輸入財の価格上昇は、国内の需要規模によって最終財の価格に反映できるかどうか微妙です。

食品などの必需財は価格上昇が素直に反映されると予測します。
しかし、それは、一定である可処分所得のある部分が価格が上がった必需財の購入に回ることを意味しますから、それ以外の不要不急の財や用役に回る需要は減少します。

耐久消費財などを供給している経済主体は、コストが上がったにも関わらず、価格が上げられなかったり、売上が減少することになります。
おそらく、73年の「第一次石油ショック」のようなスタグフレーションではなく、物価が上がらず利益だけが減少する結果になると思われます。
(スタグフレーションになるためには、それ相応の賃金上昇が必要です)


問題は、90年代からアジア地域とのあいだで水平分業が進んだことです。
原材料を輸入して生産財や最終消費財を生産するという垂直分業構造から、生産財や最終消費財も輸入するという構造に変わってきています。

円安による生産財や最終消費財の輸入価格の上昇は、輸出財の競争力を劣化させたり、国内生産最終消費財に対する需要をより減少させる可能性があります。
(輸入最終消費財はマージンが大きいので、それほど価格を上げなくとも利益がなんとか確保できますが、国内最終消費財は、価格を上げなければ赤字になるという構造です。財布の中身は変わらないのに、財の価格が上がろうとすれば、安い価格の商品に購入対象がシフトします)

最終消費財の輸入は、日本企業の海外生産分がほとんどで、「デフレ不況」がそのような動きを加速化しています。
(財の価格が下がっているからコストの安いところで生産して利益を補うという、個別企業にとっては正しく、国民経済にとっては間違いの経済事象です。最終消費財の海外生産の進展がデフレをさらに悪化させ、さらに最終消費財の海外生産を進展させるという悪循環です)


総合的に判断して、「政策的円安」が現在の日本経済の回復策になるとは思えません。
せいぜい優良輸出企業の手に余剰通貨がさらに積み上げられるだけという事態になる可能性が大です。


● 「経済論理的円安」

私が主張している給与引き上げによるデフレ解消策も、財の価格上昇を通じた国際競争力の劣化をもたらすことで円安傾向に動かすものです。

個別輸出企業は別ですが、国民経済的に言えば、輸出は“丸儲け”ですから輸出価格を上昇させないということもできます。
(輸出財に投じられた金額は輸出で稼がなければなりませんが、輸出財の生産=供給は国内に支払われているのですから、それがきちんと使われるならば、輸出財と国内財を合わせた需要は国内にあるからです)

輸出価格を上昇させても、米国には対抗できる競争相手がいない商品も多いのですから、輸出量が減るとしても手取り円額は減らない可能性もあります。


私の為替政策は、円高になる生産条件(国際競争力)向上を追求しながら、円高になったら給与を引き上げて国内需要を増加させ、それで輸出財価格が上昇することにより貿易黒字を減少させて円安に戻すというサイクルの繰り返しです。


■ 米国連邦政府の債務問題

>問題は日本が行った莫大な対米投資は返却されるべき性質のものではないのではな
>く、日本から米国へ行ったきり返ってこないのではないかという点です。米国が本当
>に返す気があるとすれば、円高ドル安にした方が負担は少ないです。

米国連邦政府の対外債務に限定すると、返す気があっても、返すことはできません。
6兆ドルもの公的債務を積み上げたうえで財政赤字を続け、経常収支が4千億ドルもの赤字になっている米国連邦政府は、富裕者から思い切った徴税をしない限り、どんなにがんばっても債務を完済することはできません。(米国の政権が富裕者に思い切った増税を行うということは、米国の価値観が180度変わることを意味します。そのとき、世界に安寧が訪れます)

せいぜい、デフォルトにならないよう、外国からのファイナンスを期待するしかありません。つまり、借金で借金を返すという悪循環が続けられる限り、デフォルトにはならないというだけです。
悪循環が断ち切られたとき、米国連邦政府は、対外債務のデフォルトを行うことになります。(自国経済をなんとか維持しようとしたら、それしか策がありません)


>また、返ってくるかどうかもわからないような米債であるならば売ることを考えてい
>かなければなりません。これは、数日前のどなたかの書き込みにもありましたけど、
>米国への対抗手段として、日本の保有する米国債を売り払ってしまうという考えにも
>通じます。

日銀や政府部門が保有している米国債は、返ってこなくとも仕方がありません。
とりわけ、日銀が外貨準備として保有している米国債は、それに対応する日銀券が既に供給されていますから、残り滓と考えていいものです。
(戦後復興から高度経済成長、そして現在に至るまで、米国経済に依存するところ大の日本経済ですから、感謝を込めて放棄すればいいのです。その後で、原爆投下や都市空襲の反省を求めればいいでしょう)

民間部門は、完済されることはないという前提で売り時を決める必要があります。

「米国への対抗手段として、日本の保有する米国債を売り払ってしまうという考え」は、日本国民の安全と生命を脅かすものですから実行に移してはなりません。

米国債を人質にはしないで、日本政府と米国政府が話し合いで穏便に懸案事項(米国債問題を含む)を解決していくのが筋だと考えています。

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