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<社説>新聞の存在理由を問う 桐生悠々を偲んで(東京新聞・社説)
http://www.asyura2.com/21/idletalk42/msg/114.html
投稿者 蒲田の富士山 日時 2021 年 9 月 10 日 15:05:49: OoIP2Z8mrhxx6 ipeTY4LMlXiObY5S
 

2021年9月9日 07時49分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/129825?rct=editorial

 気骨のジャーナリスト、桐生悠々=写真=は八十年前のあす十日に亡くなりました。破滅的な戦争へと向かう時代、古巣の新聞界にも批判の矛先を向け、奮起を促し続けた悠々を偲(しの)び、今の時代にも通じる教訓を読み取ります。
 悠々は、本紙を発行する中日新聞社の前身の一つ「新愛知新聞」や、長野県の「信濃毎日新聞」などで編集、論説の総責任者である主筆を務めた言論人です。
 明治から大正、戦前期の昭和まで、藩閥政治家や官僚、軍部の横暴を筆鋒(ひっぽう)鋭く批判し続けました。その報道姿勢は、今も私たち新聞記者のお手本であり続けます。
 悠々は信毎時代の一九三三(昭和八)年八月十一日付の評論「関東防空大演習を嗤(わら)う」が、軍部の怒りや在郷軍人会の不買運動を招いて、信毎を追われます。

◆政府の提灯持ちと批判

 新愛知時代に住んでいた守山町(現名古屋市守山区)に戻った悠々は個人誌「他山の石」の発行で糊口(ここう)をしのぎます。軍部や権力への旺盛な批判がやむことはなく、同誌の発行は、悠々が喉頭がんで亡くなる直前の四一(同十六)年九月五日号まで続きました。
 ただ、この号は発行に至りませんでした。原稿を活字に組み込んだものの、病状が悪化して、校正作業をするための「校正刷り」段階にとどまったためです。悠々は八日、友人や読者に「他山の石」廃刊の辞を発送し、十日に息を引き取ります。六十八歳でした。
 悠々の「遺言」とも言える最後の九月五日号に掲載されているのが「科学的新聞記者」という記事です。抜粋して紹介します。
 《この頃の新聞に至っては、…全然社会を無視して、時の政府の反射鏡たらんとしている。輿論(よろん)を代表せずして、政府の提灯(ちょうちん)を持っているだけである。そして彼等(かれら)は矛盾極まる統制の名の下に、これを彼等の職域奉公と心得ている》
 《今日の新聞は全然その存在理由を失いつつある。従って人はこれを無くもがなのものとしているけれども、他に代(かわ)ってその機能を果たすものなきが故に、彼等は已(や)むを得ずなおこれを購読しつつある。…今日のだらしない状態である》
 《将来の新聞は科学的でなくてはならない。現在に於(おい)て、全くその態度を一変しても、決して早くはあるまい》《神秘主義を尊奉するに至っては、その存在理由を失うのは明である。見よ、彼等は既にその存在理由を失わんとしつつある。試みに街頭に出て、民衆の言うところを聞け、彼等は殆(ほと)んど挙げて今日の新聞紙を無用視しつつあるではないか》
 軍部が政治の実権を握り、すでに日中戦争に突入し、国家総動員で日米開戦に向かう時代です。
 残された時間の短さを自ら感じ取った悠々は、言論統制や戦争協力に甘んじる新聞や記者の現状を憂い、最後に、書き残しておかねばならないと考えたのでしょう。
 それは、悠々にとって「言いたいこと」ではなく「言わねばならないこと」だったはずです。

◆今の時代に通じる警鐘

 私たちが暮らしている今の日本は当時と違い、憲法で言論、報道の自由が保障されています。しかし、悠々の指摘は、今の時代にも通じる警鐘に思えてなりません。
 新聞などメディアは社会に寄り添い、世論を代表しているか。政府の言い分を垂れ流し、報道を規制されても公益のためと思考停止に陥っていないか。ネット時代に新聞は本当に求められているか。存在理由はどこにあるのか−。
 悠々が亡くなったのは日米開戦の三カ月前でした。「他山の石」廃刊の辞では「唯(ただ)小生が理想したる戦後の一大軍粛を見ることなくして早くもこの世を去ることは如何(いか)にも残念至極に御座候」と、戦後の軍縮をも予想しています。
 悠々が理想とした一大軍縮は、日本では戦後、戦争放棄、戦力不保持の平和憲法に結実し、日本は戦争のない時代を過ごします。
 しかし、平和憲法の下、歴代内閣が憲法違反としてきた「集団的自衛権の行使」は、安倍晋三前政権によって容認に転じました。防衛費の増額も続きます。新聞などのメディアが声を上げ続けなければ、平和主義は一瞬にして骨抜きにされるのは歴史の教訓です。
 生涯言論人であり続けた悠々は私たちの新聞にとって、進むべき方向を示す「極北の星」のような存在です。《今日の新聞は全然その存在理由を失いつつある》。悠々が最後に書き記した一節は、没後八十年の新聞を担う私たちにも自問自答を迫ります。  

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コメント
1. 2021年9月10日 19:23:15 : 1tZRpxjYnM : bUYuaUYyL2VueWc=[5] 報告
>> 政府の提灯(ちょうちん)を持って、..これを彼等の職域奉公と心得ている
>> 今日の新聞は全然その存在理由を失いつつある

なんだこれ? 桐生悠々ってのは偉大なる予言者か。
見事に現在を言い当ててるではないか。

しかし
>> その報道姿勢は、今も私たち新聞記者のお手本であり続けます
って他人事だよなあ〜。手本てのは真似ることだろう?
今の新聞が桐生悠々を真似しているか?してないだろう。
逆に提灯持ちのほうを真似していながら私達新聞記者のお手本だみたいな
ことを言える神経がすごいわ。恥ずかしいと思わんのかな。

社説なんてのはインテリが書くんだろうね。
お上品に纏まっているが心を動かされないんだよな。
お手本だとか「極北の星」のような存在だとか自問自答を迫りますとか
そんな生煮えな言葉に力はない。

桐生悠々を思えば今の私たちは慚愧に耐えないとなぜ言えないのだろうか。


2. 蒲田の富士山[927] ipeTY4LMlXiObY5S 2021年9月19日 16:16:50 : ppIazu1xKw : RkNTU081dXc1ci4=[42] 報告
信濃毎日新聞、5万号発行 1873年創刊(東京新聞・共同)

2021年9月19日 15時25分 (共同通信)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/131899?rct=national

 長野県の地方紙「信濃毎日新聞」は19日、通算発行5万号を記録した。1873年7月に「長野新報」として創刊。地方紙としては山梨日日新聞に次ぎ、2番目に古い歴史を持つ。「信濃日報」などの題号を経て、1881年から信濃毎日新聞として発行している。

 明治から昭和初期にかけて山路愛山、風見章らが主筆として活躍。1933年の社説「関東防空大演習を嗤ふ」を主筆として執筆した桐生悠々は、軍部の怒りを買い、職を追われたが、言論統制が強まる時代に軍部批判の姿勢を貫いたジャーナリストとして知られる。

 現在の発行部数は約42万部。日本新聞協会の新聞協会賞は地方紙で最多の17件。

3. 蒲田の富士山[956] ipeTY4LMlXiObY5S 2021年9月30日 21:18:50 : ppIazu1xKw : RkNTU081dXc1ci4=[71] 報告
言わねばならないこと(東京新聞)

2021年9月18日 07時05分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/131655?rct=discussion

 九日に掲載した社説「桐生悠々を偲(しの)んで」に読者から多くの反響をいただきました。ほぼすべてが、東京新聞への励ましでした。まずは心よりお礼申し上げます。

 社説で紹介したように、桐生悠々=写真=は太平洋戦争が始まる直前の一九四一(昭和十六)年九月十日、六十八歳で亡くなりました。

 その命日にちなんで毎年、悠々に関する社説の掲載を始めたのは今から九年前の二〇一二年。見出しは「言わねばならないこと」でした。

 当時は野田佳彦首相率いる民主党政権でしたが、公約違反の消費税増税を決めたり、原発維持の選択肢を残したりと、私たちの命や暮らし、民主主義をないがしろにするような政策を続けていました。

 悠々にちなんだ社説の掲載に至ったのも、どんな政権であろうと、新聞は権力監視の役割を放棄してはならないという決意を、読者の皆さんに伝えたかったからです。

 悠々は「言いたいこと」と「言わねばならないこと」は区別すべきだとして、「言いたいことを言うのは、権利の行使」だが、「言わねばならないことを言うのは義務の履行」であり、「義務の履行は多くの場合、犠牲を伴う」と書き残しています。

 日々の社説は「言いたいこと」ではなく「言わねばならないこと」でなくてはならないという、私たち自身への戒めでもあります。

 悠々の社説には毎年、読者の皆さんから励ましのお便りをいただくのですが、今年は私たちの新聞への期待感がより大きくなっているように感じました。それは危機感の裏返しなのかもしれません。

 安倍、菅両政権の九年近くの間、独善的な政治運営が続き、政治は私たちの望む、あるべき方向とは全く違う道を進んでしまいました。でも、それを止める力が新聞にはまだある、義務を履行せずしてどうするのか、と読者の皆さんに教えられた思いです。

 きのう始まった自民党総裁選後には衆院選があります。どんな政権ができようとも、私たちは「言わねばならないこと」を堂々と言う新聞でありたいと考えます。 (と)

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