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2026年2月28日、米国とイスラエルは「エピック・フューリー(獅子の雄叫び)」と名付けられた作戦でイラン全土への大規模空爆を開始した。最高指導者アリー・ハメネイ師の暗殺をはじめ、核施設・ミサイル基地・革命防衛隊(IRGC)拠点が次々と破壊され、イランは報復としてホルムズ海峡を事実上封鎖。湾岸諸国の米軍基地や石油施設を攻撃し、3週間以上が経過した現在も応酬は続き戦況は鬩ぎ合っている。
各プレイヤーは戦後の中東にどのような「最終形」を描いているのか。イスラエル、米国、イラン、湾岸アラブ諸国、ロシア、中国の視点から現実の戦況(原油高騰、ホルムズ危機)を踏まえつつ展望する。
◆イスラエルのビジョン:シオニズムの究極実現と「ホロコーストの貯金」◆
ネタニヤフ首相は明確に「イラン体制転換」を戦争目的に掲げている。目標はイランの核・弾道ミサイル能力の完全破壊、IRGC基地の壊滅、そして代理勢力ネットワーク(「抵抗の枢軸」)の解体だ。再建を試みれば「数カ月後に再爆撃する」とイランに警告し、長期抑止を狙う。
ここで鍵となるのがシオニズムの理想だ。イスラエルは単なる安全保障ではなく、ユダヤ国家の歴史的・宗教的完成を求めている。イスラエルの拡張(Greater Israel構想)は西岸・ゴラン高原にとどまらず、戦後真空のシリア・イラク領一部まで視野に入れる。核実質保有(未公表ながら約90発と推定される核兵器)を維持・強化し、敵対勢力を永遠に抑止する。
さらに象徴的なのが神殿の再建。エルサレム神殿の丘(ハラム・アル・シャリフ)を奪還し、第三神殿を建設する動きが加速する。戦後イラン脅威が消えれば、ユダヤ教極右勢力の影響力が増大し、モスク撤去の議論すら現実味を帯びる。これを支えるのが米国福音派の思惑だ。福音派は「終末預言」の実現を期待し、イスラエル支援を神の計画と位置づける。トランプ政権のバックボーンでもある福音派は、第三神殿再建を「キリスト再臨」の前兆と信じ、軍事・資金援助を惜しまない。
筆者は「ホロコーストの貯金」と呼んでいるが、これまでイスラエルが領土拡張と事実上の核保有等を国際社会で実質追認されて来たのには、ホロコーストの記憶を政治的・外交的レバレッジとして活用し、欧米の支持を得ていたという構図がある。
イスラエル自身はこの事を「生存の正当性」と主張し、戦後の最終形を「シオニズム完成の中東」——イラン不在の安全保障・宗教的優位圏——と描く。だが、その貯金もガザでの報復の範囲を超えた破壊と殺戮で尽き掛けて来ている感がある。
https://agora-web.jp/archives/260309062428.html
◆米国のビジョン:力による平和と福音派の終末論◆
トランプ政権の目的は核開発中止、ミサイル停止、代理支援打ち切り。理想は親米・民主的なイラン政府樹立だ。地上部隊投入も排除せず、4〜5週間の作戦継続を想定する。
戦後の最終形は、イランが「近隣を脅かさない」秩序。ホルムズ安全航行を回復し、中国・ロシア影響力を削ぐ。しかしここにも米国の人口の4分の1を占めると言われる福音派の思惑が深く絡む。トランプ支持層の福音派は、イスラエル支援を「聖書預言の実現」と見なし、神殿再建を後押し。核実質保有のイスラエルを「神の盾」と位置づけ、米軍事支援を正当化する。結果、米国のビジョンは軍事力だけでなく、宗教的終末論が色濃く反映されたものとなる。
◆イランのビジョン:生存と「勝利」アピール、北朝鮮型抑止国家◆
イラン指導部は「攻撃されない保証」と「戦争賠償」を要求しつつ、生存そのものを勝利とする。IRGC主導で国内弾圧を強化し、代理勢力を温存する非対称戦略を継続。
戦後の最終形は、孤立しながらも「修正主義的」なイラン。核閾値保有、ミサイル抑止、反米プロパガンダで体制を維持。権力空白から若手急進派が台頭し、湾岸への報復を恒常化させる可能性が高い。民主化ではなく、治安国家へのシフト。ホルムズ影響力を「新体制」として保持し、地域でのシーア派影響力を最小限に残す「耐久の秩序」を描く。
◆湾岸諸国(サウジ・UAEなど)のビジョン:スンニ主導の経済繁栄圏◆
イラン攻撃で米軍基地や石油施設が被害を受け、信頼は崩壊した。サウジ・UAEは共通の脅威で一時団結。
戦後の最終形は、イラン孤立下の「GCC主導秩序」。イスラエルとのアブラハム合意を深化させ、経済統合を加速。イスラエルの拡張とシオニズムの進展を警戒しつつ、脅威消滅による石油安定と投資流入を最大化する。スンニ・アラブ+イスラエル+米の新ブロックで中東の中心となる。
◆ロシアのビジョン:多極化と漁夫の利◆
プーチン政権はイラン攻撃を「国際法違反」と非難しつつ、間接支援。ウクライナ戦争の注目分散と原油高騰を利益とする。
戦後の最終形は、米影響力低下の多極中東。イラン残存勢力を支え、BRICSで経済的足場を確保。シリアやイラクでの影響力を維持し、中国と連携して「米一極」打破。
◆中国のビジョン:エネルギー安全保障と一帯一路継続◆
中国はイラン最大の原油購入国。ホルムズ封鎖で打撃を受けつつ、表立った介入を避ける。
戦後の最終形は、米軍事資源が中東に縛られる隙を突いた「経済主導中東」。一帯一路を守り、人民元決済やSCOで影響力を維持。多極秩序を加速。
◆不安定な新秩序か、シオニズム完成の混沌か◆
各プレイヤーのビジョンは交錯する。イスラエル・米・福音派はシオニズム、イスラエルの拡張、核実質保有、神殿の再建、ホロコーストの貯金的戦略を軸に「脅威ゼロの新中東」を、湾岸は経済圏を、露中は多極化を、イランは孤立抑止を描く。しかし現実には、IRGC主導のイラン存続、内戦リスク、テロ恒常化が濃厚。中東は「新たな不安定期」に入る可能性が高い。
日本にとってはホルムズ危機の教訓だ。原油95%中東依存の脆弱性を露呈し、海上自衛隊護衛や湾岸外交強化が急務となる。戦争はまだ続いているが、その「向こう側」に描かれる最終形は、力の均衡ではなく、宗教・歴史・終末論が交錯する混沌かもしれない。2026年の中東は、戦前とは全く異なる地図を描き始めている。
さてこの中で最大の主役となるのはやはりトランプだろう。訪米した高市首相から「世界中に平和をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」との絶妙な外交辞令を送られトランプは満面の笑みを浮かべた。
実際、イスラエルの行き過ぎを制し、イランを妥協させ、湾岸諸国を巻き込んで拡大アブラハム合意に落とし込める立場に居るのはトランプである。これに中露間に楔を打ち込んでプーチンをどう世界秩序に組み込んで中東に於いてもどう利用するかも絡んでくる。
主著と言われる「The Art of the Deal」には、不動産屋として達成した妥協の取引の数々が成果としてこれでもかと言う程延々書き連ねてある。それをNYではなく中東の地で実現し、歴史に破壊者ではない名が残せるかが試される。
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だが真の最終形に至るには別途、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の一神教の宿痾となっているドグマの整理も不可欠なのかも知れない。であれば、それはトランプの手に余るだろう。
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