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※2025年5月1日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年5月1日 日刊ゲンダイ2面
怪気炎の暴君に、ああ、小間使いの忖度外交(C)日刊ゲンダイ
ウクライナの戦争は終結せず、ガザも泥沼、関税は次々撤回という案の定の「口先ぶり」。そんな中、世界は毅然と対峙する国と2国間ディールで擦り寄る国とに分かれている。関税交渉合意はそんなトランプへの助け舟となるが、脱米国のしたたかな戦略が石破にあるのか。
◇ ◇ ◇
「わが国の歴史で最も成功した政権100日間のスタートだった」──2期目就任から100日を迎えた現地時間29日、トランプ米大統領が自動車の街・デトロイトで大規模集会を開催。岩盤支持者を前に自画自賛したが、現実の成果は乏しい。
ロシアが侵略したウクライナの戦争では、早期停戦に向けて仲介に乗り出したものの、ウクライナのゼレンスキー大統領との資源取引を含めた協議は口喧嘩の物別れ。ロシアのプーチン大統領にもいいようにあしらわれている。
昨年の大統領選中には「私が就任したら24時間で終わらせる」と豪語したクセに、最近は「比喩的な表現で、誇張して言った。冗談だったと皆わかっている」「バイデン(前大統領)の戦争であって、私のではない」と言い訳を繰り返す。
パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意も崩壊。再び泥沼に陥り、トランプはイスラエルに肩入れするだけ。和平は遠のくばかりだ。
「口先だけ」は外交に限らず、内政面も行き詰まっている。就任早々に手をつけたのが連邦政府の官僚機構改革だ。実業家のイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」を設立し、強引かつ性急な人員整理や歳出削減を断行。計約1600億ドル(約22兆円)の歳出をカットしたと胸を張るが、「達成可能」(マスク)と目標に掲げた1兆ドルには手が届きそうもない。
この間の大統領令は140を超え、近年で最多だったバイデンの3倍以上。ところが、大風呂敷を広げただけで目ぼしい成果は上がらず、全ては空回りである。
もはや三権分立すら風前のともしび
そんな状況への焦りからか、トランプは追加関税を乱発。関税率145%に達した中国だけでなく、EUや日本など同盟国の関税率も容赦なく引き上げ。「米製造業の復活」をアピールしたが、最近は軌道修正を余儀なくされている。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「常軌を逸したトランプ関税に対し、金融市場は米国債・ドル・米株式を同時に売り浴びせ、トリプル安が発生。市場が暴走にノーを突きつけ、相互関税の発動は90日間停止。中国にiPhoneの生産拠点を置く米アップル社も悲鳴を上げ、スマホ輸入は対象外に。5月3日に発動予定の自動車部品25%の追加関税も、米国内で自動車を生産するメーカーへの負担軽減措置を発表しました。米国の産業界からの不満を無視できず、次々と事実上の撤回に追い込まれています。現実を知らない素人が後先を考えず関税を玩具扱い。頓挫するのは当然です」
おかげで成長著しかった米国経済も急ブレーキだ。1〜3月期の米国の実質GDPは年率換算で前期比0.3%減。マイナス成長は実に3年ぶり。トランプ関税発動前の駆け込み需要でGDPにはマイナスに働く「輸入」が41%増と急拡大。成長率を大幅に押し下げた。
それでもトランプは悪びれもせず「関税とは関係がない。バイデンが悪い数字を残したというだけのこと」と自身のSNSに投稿。またしても前任者に責任をなすりつけ、もはやつける薬はない。
就任100日集会での「アメリカの黄金時代は始まったばかり」という言葉は虚勢でしかないのだが、世界の経済秩序を揺るがす“裸の王様”をいさめる声は政権内から聞こえず、議会も抑制機能を果たせていない。
バイデンが力を入れた人種やジェンダーなど多様性を促す施策は次々と廃止し、従わない米ハーバード大からは助成金を召し上げようとする。多くの移民を勝手に「ギャング」と決めつけ、強制的に国外退去。司法が是正命令を出しても従うそぶりもみせない。
今や民主政治の基本原理である「三権分立」すら風前のともしびだ。
覇権終焉の流れは不可逆的で日本も道連れに
「MAGA沢」/(ホワイトハウス提供、共同)
トランプはわずか100日で自国と世界を散々かき回し、混乱に陥れた。もう馬脚を現した愚かな暴君とどう付き合うべきなのか。世界は毅然と対峙する国と2国間ディールで擦り寄る国とに分かれている。
前者の代表はEU諸国だ。ロシアに融和的な姿勢を打ち出す一方で圏内の同盟国を敵視し、関税戦争を一方的に仕掛けたトランプに猛反発。法の支配や自由貿易体制維持のため、インドやASEAN(東南アジア諸国連合)、オーストラリアとの自由貿易協定締結に向け動き出した。安全保障上も米国依存を低減させる考えだ。
真っ先にトランプ関税の標的となった隣国・カナダでは、国民の反米感情がエスカレート。トロントに本拠地を置く米大リーグ・ブルージェイズの試合で米国歌が流れるたび、スタジアムがブーイングに包まれるのが恒例に。米国産品のボイコット運動も起こり、4月28日投開票の総選挙での与党勝利の要因にも、有権者の「反トランプ感情」が挙がるほどだ。
西側諸国の間で「米国は今や信頼できるパートナーではない」との認識が急拡大する中、中国も黙っていない。関税率引き上げの報復合戦は“撃ち方やめ”だが、周辺国やグローバルサウスに対米共闘を呼びかけている。習近平国家主席は4月14〜18日にベトナム、マレーシア、カンボジアを歴訪。各国で「一方的ないじめ行為に反対し、自由貿易体制を守ろう」と訴えた。王毅外相も28日、ブラジル・リオデジャネイロでのBRICS外相会議の場で「あらゆる形の保護主義に反対する」と主張した。
中国こそが自由貿易の「擁護者」と言わんばかりで、米国が批判してきた「力による一方的な現状変更」を逆手に取られている。ぶざまだ。
孤立を恐れず世界を敵に回すのは本望
さて後者、トランプに擦り寄る国の代表が日本である。
石破首相はGW前半にベトナムとフィリピンを訪問。昨年10月の就任以来、東南アジア歴訪は3回目だ。半年でASEAN加盟10カ国の半分を回ったことになる。
「ハイペースでのASEAN外交は純粋なるアジア重視の表れでしょうか。第1次政権時にトランプ氏はASEAN関連の首脳会議を4年連続で欠席。アジア軽視の尻拭いの意味合いが強い。特にベトナムはトランプ氏に中国製品輸出の迂回先とにらまれ、46%の相互関税を課すと脅されています。しかも習近平氏の訪問直後。中国への依存強化と米国離れを防ぐ得点稼ぎが目的で、頼まれもせず、ひたすら米国に媚を売る。まるで小間使いの忖度外交です」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
トランプが国際社会に背を向ける中、石破は「こっち向いて」と猛アピール。訪米中の「MAGA沢」こと赤沢経済再生相に、米国産米の輸入拡大や米国車の安全基準に関する特例措置拡充など、言われるがままの“土産”を持たせ、2度目の関税交渉に臨む。
まさに「飛んで火に入る」で「トランプ政権が針小棒大に成果を誇張する材料に使われるだけ」(斎藤満氏=前出)である。
前出の五野井郁夫氏はこう言った。
「戦後の国際秩序を利用した各国に米国は搾取されてきたと見なすトランプ氏の『恨み』は根深い。脱グローバル・反戦後秩序に根差す極端な政策に、喝采する多くの支持者がいることも忘れてはいけません。熱狂的に支持するのはキリスト教右派の『福音派』で、米国成人の25%を占める。彼らは先祖が『ノアの箱舟』で神に救われた選民意識が強く、異端者を敵視し孤立を恐れない。世界を敵に回すのは本望でしょう。トランプ体制後も“新たなトランプ”を生み出し、米国が孤立を深め、覇権を失う潮流は不可逆的かもしれません。その時は日本も道連れ。石破首相はトランプ氏に面従腹背で脱米国の戦略を探るべきですが、そのしたたかさは感じられません」
暴君との付き合い方を誤ればこの国は沈む。神は救ってくれないのだ。
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