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●農政の要諦は、食料安保に在る
●カロリー及びタンパク質ベースの自給率100%以上を目指すべき。輸入は補完的手段
●減反も価格統制も下策。直接所得補償で、生産安定化と共に市場原理を働かせよ
●肥料・飼料・燃料も自給率100%以上が望ましい。輸入が絶たれても5年間籠城可能な様に
米価高騰対策で政府備蓄米の競争入札を行ったものの価格が下がらず、消費者の気持ちを逆なでしたとされる失言で前農林水産大臣が辞任した後、小泉進次郎氏が新大臣となり随意契約に切り替えた。その結果、古古米、古古古米ながら価格は手頃なものとなった。
この現状に対して、緊急対応をした小泉氏をヒーロー扱いする向きが多い中、米価の下落は先々農家の営農を困難にするという反発が起きている。世論を単純化すると、米の価格は安ければ安いほど良いのか、農家が営農して行けるようある程度の高値は必要だという意見に分かれている。また、災害時等のためにある備蓄米を安易に放出で切り崩してよいのかと言う議論もある。
●農業の要諦は、食料安保に在る
この辺りの議論は、やや軸を失っている感がある。様々な考え方があるが、筆者は農政の要諦はやはり食料安保にあると考える。そこから逆算して議論を組み立てるべきである。食料はエネルギーと共に戦略物資の最たるものであり、世界情勢の不安定さが増している中、その重要性は今後更に高まって行くだろう。食料の多くを輸入に頼っている日本が戦乱や経済封鎖や輸入経路でそれを断たれたら飢餓は容易に現実のものとなる。そして飢餓は戦争それ自体よりも更に悲惨なものになるだろう。
●カロリー及びタンパク質ベースの自給率100%以上を目指すべき。輸入は補完的手段
米に過度に固執する必要はないが、国家として食料全体のトータルでのカロリー及びタンパク質ベースの自給率100%以上(現状2023年度:カロリー38%、タンパク質50%)を目指すべきであり、平時は輸出超過に持って行きこれを保ち、輸入は補完的手段としておく必要があるだろう。加えて筆者は、並行してこれまでのWTOルールとは画期して国家主権の一部として新たに前述の両自給率に基づく「食料自給権」の確立を国際的コンセンサスとする必要があると考える。この基盤の下に、リカッドの比較優位論も念頭に置かれた各国毎の保護作物のアラカルトに対して、あるいは輸入関税、あるいは輸入数量規制が許容されるべきである。
●減反も価格統制も下策。直接所得補償で、生産安定化と共に市場原理を働かせよ
米については、食糧管理制度により高度成長期後も暫くほぼ全量政府買い取りが続いたが、米離れによって流通経路と価格の自由化に舵が切られた。しかし価格の下落が止まらず農村票に頼る自民党政権は減反政策によってこれを維持するようになった。その結果何れに於いても市場メカニズムが働かない事となり、圃場の大規模化や効率化が図られず農家はジリ貧となっていった。その後減反政策は廃止されたが、他作物や飼料米への奨励金が付与され実質上の減反政策の継続とも批判される。
生産の安定化と市場原理を同時に働かせる必要がある。EU等でスタンダードとなっている農家への直接所得補償制度を入れるべきであろう。言わば、「一律に下駄を履かせた上での自由競争」である。これは民主党政権時代に数少ない妥当な政策として小沢一郎氏中心に唱えられたが、政権を失うとともに霧消した。
●肥料・飼料・燃料も自給率100%以上が望ましい。輸入が絶たれても5年間籠城可能な様に
なお、食料自給率がたとえ100%となってもエネルギーを海外に頼っていてそれを断たれれば同じであり意味が無いという議論もある。しかしそれは、ゼロイチの机上の論理である。全てに鉄壁の備えに起こした事は無いが、完璧でなくとも漸次塞げる穴は埋めて行き備えを厚くしバーゲニングパワーを高めておく必要があるだろう。
進んではその上で、難しいが肥料・飼料・燃料も自給率100%以上が望ましい。少なくとも有事に輸入が絶たれても5年間は籠城可能な様にしたい所だ。燃料に関しては特に難しいが、電力供給を原子力発電にシフトさせる一方、合成燃料等の採算化が図られれば将来2040年までを見据えれば不可能ではない。
さてこれらを踏まえ、日本の今後の農政の姿を概略描けば、穀物等は米を主体とするも、カロリー・タンパク質ベース自給率100%以上を目指す方向性の範囲内で作物品目は柔軟に。直接所得補償制度による補償レベルの上げ下げで、ある程度の安定経営と市場原理をバランス化させ、効率化・大規模化を図り、作物品目割合もコントロール。タンパク質は必須アミノ酸の充足度を示すアミノ酸スコアが高い大豆中心に。
輸入は自給率ベースで輸出超過となる範囲で。肥料・飼料・燃料も100%自給を目指し、前述の食糧自給率100%以上前提で、あくまでもそれでも万一食糧が足りなくなった時にはセーフティーネットとして、牛・豚・鶏を潰し飼料を食用に流用。ゴルフ場等の緊急時農地転用は実施可能な様に除草剤等の種類・量を限定し遵守、と言った所か。
農政の全体像を見据えた議論を望みたい。
(SSRI 佐藤戦略総研 http://blog.livedoor.jp/ksato123/)
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