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※紙面抜粋
※2025年6月4日 日刊ゲンダイ2面
戦後80年、ますます不穏に…長嶋茂雄への哀愁と時代の閉塞
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/372785
2025/06/04 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
「ミスタープロ野球」と呼ばれた国民的英雄、長嶋茂雄氏(C)日刊ゲンダイ
ミスターが鬼籍に入り、大メディアはこぞって、追悼特集を組んでいるが、改めて、戦後80年を冷静に振り返ってみる必要がある。経済、政治、安保の閉塞と危うさがより一層、長嶋への郷愁となる昭和世代の嘆息。
◇ ◇ ◇
「日本球史に燦然と輝く長嶋さんが闘病生活の末、旅立たれてしまったことを本当に残念に思う。一緒に野球ができたことを本当に感謝している」(プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長)
「心よりご冥福をお祈りいたします」(米大リーグ、ドジャースの大谷翔平)
突然の訃報を悼む声が国内外で上がっている。
プロ野球巨人の4番打者、監督として野球界に足跡を残し、「ミスタープロ野球」と呼ばれた国民的英雄、長嶋茂雄氏が3日午前6時39分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。89歳だった。
千葉県臼井町(現佐倉市)出身。県立佐倉一高(現佐倉高)から立教大へ入学。通算8本塁打の東京六大学野球記録(当時)をつくり、1958年に巨人入りした。
1年目に本塁打王、打点王、新人王を獲得したほか、59年、昭和天皇が初めてプロ野球を観戦した「天覧試合」でサヨナラ本塁打を放つなど、大舞台になるほど勝負強さを発揮。王氏との3、4番コンビは「ON砲」と呼ばれ、巨人を65年から9年連続日本一に導いた。
現役時代は首位打者6回、本塁打王2回、打点王5回のタイトルを獲得。最優秀選手に5回選ばれた。74年、「わが巨人軍は永久に不滅です」との言葉を残して引退した。
平和と自由を謳歌していた時代と余裕のない今
「日本が戦争に負けて、復興していく。まさに高度成長の時代を体現したスーパースター。どん底まで落ちた日本人が復興して、今度は世界に伍していくような経済成長をしていく、あの時代をまさに象徴した存在だった」
テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でコメンテーターを務める元テレ朝社員の玉川徹氏が3日の番組でこう振り返っていた通り、「ミスタージャイアンツ」「燃える男」と呼ばれ、明るいキャラと華やかなプレーで絶大な人気を誇った長嶋氏はまさに昭和という時代の象徴的な存在。1960〜70年代の高度経済成長期に「野球」というスポーツを国民的な娯楽へと押し上げた立役者だったと言ってもいいだろう。
そのミスターが鬼籍に入り、大手メディアはこぞって追悼特集を報道。コメンテーターの発言から透けて見えるのは、古き良き時代を懐かしむかのような「昭和ノスタルジア」だ。「長嶋ファン」を自任する経済評論家の斎藤満氏もこう言う。
「ファンの一人として、長嶋さんが亡くなったことは本当に残念です。ただ、NHKなどのテレビ各局が番組を中断して取り上げるほどなのかと驚きました。おそらく、それは長嶋さんが活躍した、経済的に恵まれ、平和と自由を謳歌していた楽しい時代と、生活に余裕を感じられない今とのコントラスト、世相の違いがあり過ぎるからではないか。つまり、その差が大きいがゆえに、各局が大々的に取り上げる価値ありと判断したのでしょう」
歴史を見ると、1945年に終戦を迎えた日本国民はそれまでの国家主義や軍国主義の閉塞感から解き放たれ、その後、自由と民主主義を謳歌。朝鮮戦争による特需で経済的復興の兆しをつかむと、そのまま高度経済成長期に突入した。
しかし、80年代のバブル景気をピークに90年代から長期の経済低迷期に入ると、弱肉強食の新自由主義が台頭。自己責任論が強調され、かつての相互扶助の考えやつながりは後退し、ネットでは昨年の兵庫県知事選で見られたような差別や偏見が横行。これでは昭和世代から時代の閉塞感を嘆くため息が漏れるのも無理はない。
この先の政治、経済をどう転換していくのか
イケイケドンドンで行われた大阪万博=1970年(C)共同通信社
改めて戦後80年を冷静に振り返ると、1955年に約9兆円だった名目国内総生産(GDP・当時は国民総生産=GNP)は、長嶋氏が巨人で活躍を始めた頃の60年に17兆円、65年に34兆円、70年に77兆円……と倍々ゲームで急成長。
イケイケドンドンの70年に行われた大阪万博では、今では日常的に見られる「動く歩道」や「モノレール」「携帯電話」などの製品が展示され、ちまたには「巨人、大鵬、卵焼き」の言葉がはやった。
戦後の焼け野原だった日本がこれほど飛躍できたのは地道に「技術立国」としての地位を築き、半導体や自動車などの産業で世界をリードしてきたからだろう。
例えば半導体は1950年代、東京通信工業(現ソニーグループ)のトランジスタを使ったラジオが大ヒット。自動車も当時の米国に追いつき追い越せと、生産台数を飛躍的に増やした。
ところが、今は違う。自動車は辛うじて上位シェアを維持しているものの、半導体は見る影もない。80年代に日本は世界の半導体市場で5割のシェアを握っていたが、中国や韓国、台湾に抜かれて大幅に低下。スマートフォンやAI(人工知能)で市場規模が拡大しているにもかかわらずだ。
「国力の低下」につながる少子化も進行
名目GDPは24年に初めて600兆円を突破したとはいえ、92年に500兆円を突破してから30年以上も経ち、当時、世界2位だった日本の順位も急降下。2010年に中国、23年にドイツに抜かれて4位に転落し、25年はインドに抜かれて5位になるとみられている。
足元を見れば、およそ2%台で推移していた生鮮食品を含む消費者物価の上昇率は24年12月に3.6%にハネ上がり、物価の変動を考慮した24年の実質賃金は3年連続マイナス。「政府備蓄米」を放出せざるを得なくなった「令和の米騒動」に見られるように、コメ類に限っては6割余りも上昇していたから驚天動地だ。
「国力の低下」につながる少子化も歯止めがかからない。厚労省が5月下旬に公表した人口動態統計(速報値、外国人を含む)によると、25年1〜3月の出生数は、前年同期比4.6%減の16万2955人。このままだと、過去最少だった24年通年の72万988人を下回る可能性が高く、これでは将来の希望など持てるはずがないだろう。
それでいて防衛費だけは爆増し、政府・与党の頭にあるのは政権維持だけだから何をかいわんや。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。
「長嶋さんが活躍した経済成長期の日本と落ち目だった米国の立場は今、完全に逆転しました。この状況から見ても、もはや昭和を振り返っている場合ではないのです。この先の政治、経済をどう転換していくのか。それを本気で真剣に考えるべきです」
経済、政治、安保などあらゆる場面で危うさや閉塞感が漂う令和の今、昭和の郷愁に浸っている時間はない。
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