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※紙面抜粋
※2025年8月13日 日刊ゲンダイ2面
戦後80年に漂うキナ臭さ…中途半端な終戦記念日に落胆
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/376092
2025/08/13 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
広島、長崎のスピーチは好評だったが…(C)共同通信社
談話不要論者は要するに安倍談話への上書きを許さないということだろう。一方の何らかの発信を目指す石破首相も党内の顔色をうかがい、何の準備もない付け焼き刃。核は安上がりなどという政党が躍進し、プーチン、 ネタニヤフの高笑いが聞こえる敗戦忌に識者の嘆き。
◇ ◇ ◇
日頃はロクな報道をしない大マスコミも、毎年この時期だけは戦争を振り返る特集を企画する。しかも今年は戦後80年の節目だから、多少は力が入っているように見える。
ところが、日本の政治家の体たらくには、目を覆うばかりだ。自民党は「石破おろし」の政局にかまけ、肝心の首相も党内の顔色をうかがって、終戦記念日に「談話」を発出できない。節目の年に歴代首相が出してきた「談話」までが政争の具にされているのだから、ひどい話だ。
首相談話は、閣議決定を経て発出される。戦後50年の村山談話、戦後60年の小泉談話、戦後70年の安倍談話もそうだった。党内基盤が弱く、支持率もジリ貧の石破は、党内外のいわゆる“保守系”に配慮して、談話発出を早々に見送ったが、その代わりに閣議決定を経ない形で、何らかのメッセージを出すことを目指しているという。保守系とやらはそれにもケチをつけて、石破おろしに余念がない。
12日は、石破茂首相による戦後80年メッセージの発出を「断固阻止する」と訴える集会が官邸前で行われた。保守系と呼ばれる評論家らが登壇し、「英霊に対して感謝と敬意の他にない」などと熱弁。首相が毎年8月15日の「全国戦没者追悼式」で述べる式辞についても「感謝と敬意を反省に塗り替えてしまう」と懸念を示した。
保守系団体の「日本会議」も谷口智彦会長名で、「全国戦没者追悼式式辞への『反省』『謝罪』の言葉の挿入に反対する」とする声明を発表。閣議決定を経た談話とは別の形で見解を述べることに対しても、「自民党を率いた選挙で三戦全敗」した石破が「歴史に自説を刻もうとは、地位の濫用である。断念すべきだ」と激しく牽制した。
要するに、談話不要論者は、戦後70年に安倍元首相が発出した談話で「私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」としたことを「謝罪外交に終止符を打った」と評価し、この安倍談話を上書きされることを嫌がって大騒ぎしているのである。
8日に開かれた自民党の両院議員総会で党内保守派が首相退陣や総裁選前倒しを要求したのも、その流れと軌を一にするところがある。
「石破首相は過去3回の節目と同様に、閣議決定した首相談話を堂々と出すべきです。戦後80年の節目に談話を出さなければ、日本が反省を忘れ、過ちをなかったことにしようとしているという間違ったメッセージを国際社会に与えることになりかねません。世界中に戦争の火種がくすぶるキナ臭い時代だからこそ、日本政府として、不戦の誓いと平和主義を高らかに宣言することには大きな意義がある。党内政局に揺さぶられて地位に恋々とし、安倍談話にとらわれて節目の終戦記念日を中途半端にやり過ごすようでは、それこそ政治家失格です。今年の広島、長崎の原爆の日での石破首相のスピーチは、過去3代の首相による心のこもらない官僚作文と違って、自分の言葉で書かれていて心に響きました。反省と謝罪を拒否して先の戦争を美化する保守派と刺し違える覚悟で談話を発表できないのなら、何のために首相を続けているのかという話ですよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
スピーチで失地回復した
堂々と出せばいい(C)日刊ゲンダイ
8月に広島と長崎で開かれる平和式典での過去3首相のスピーチは、コピペだったり読み飛ばしたりで常に批判の対象になってきたが、今年の石破のスピーチは趣を異にするものだった。
6日の広島市では、原爆資料館を訪れた際の感想を述べるとともに、被爆した歌人、正田篠枝さんの歌集「さんげ」に収録された代表作「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」の一節を2度読み上げた。
9日の長崎市でも、被爆しながら救護に尽力した永井隆博士の「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」という言葉を引いて、「長崎と広島で起きた惨禍を二度と繰り返してはなりません」と強調。「80年前、この国で何が起きたのか。戦争の実態と悲惨さ、原爆被害の過酷さを決して風化させることなく、記憶として継承していかなければならない」と訴えた。これら石破のスピーチはSNSを中心に高く評価された。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「昨年の衆院選、今年の都議選、参院選で惨敗した石破首相は、党内で“スリーストライク、アウト”などと言われて退陣を迫られている。しかし、広島と長崎のスピーチで失点を取り戻したのではないでしょうか。SNSでは、石破首相の言葉で80年談話を発出してほしいという声も高まっている。支持率が上向いているのも、スピーチの効果でしょう」
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」という不気味な警句
NHKが9〜11日に実施した世論調査で、石破内閣を「支持する」と答えた人は7月調査より7ポイント上がって38%、「支持しない」は8ポイント減の45%だった。石破の続投についても「賛成」が49%で、「反対」の40%を上回った。
「ドイツの終戦80年にあたる5月8日に、シュタインマイヤー大統領は『ドイツ人は犯罪的な戦争を始め、ヨーロッパを破滅のふちに突き落とした』と過去への反省と謝罪を述べたうえで、『人道に対する罪を犯した』と述べ、歴史を忘れずに平和や民主主義を守ろうと呼びかけた。そのうえで、『アウシュビッツ強制収容所を解放した旧ソビエトが新たな侵略者となった』と、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を非難しました。石破首相も同じような文脈で談話を発表すれば、国際社会でのプレゼンスは高まるはずです。未来志向は、過去の反省の上にしか成り立たないのです」(五野井郁夫氏=前出)
歴史は繰り返さないが、しばしば韻を踏む──。これは、「トム・ソーヤーの冒険」で知られる米作家マーク・トウェインの言葉とされる。歴史は全く同じ形で繰り返されるわけではないが、似たようなことはよく起きるという警句だ。
のんびり読書してる場合ではない
戦後80年の今年は、昭和で言えば100年の節目でもある。いまの世相は、第2次世界大戦に突入した1世紀前と酷似しているようで戦慄する。
格差が広がり、社会の分断が起き、自国第一主義がはびこって、世界各地でポピュリズムが台頭。保護主義による関税競争も勃発した。それで世界経済が行き詰まり、第2次大戦に至ったのではなかったか。
世界はいま、再び戦争の時代に足を踏み入れようとしているかに見える。国際社会はプーチンのロシアがウクライナを侵攻し、ネタニヤフのイスラエルがガザで非道の限りを尽くすことを止められない。日本でも戦争経験のない世代が大多数になり、「核武装が最も安上がりだ」などと言う政党が国政選挙で躍進する。
自由と民主主義の守護者を自任し、「法の支配」を訴えてきたはずの米国も、トランプ大統領が「アメリカファースト」を掲げて関税戦争を仕掛け、同盟国のイスラエルを支持して、その正当性が失われつつある。プーチンやネタニヤフの高笑いが聞こえてくるようだ。
こういうタイミングだからこそ、石破が終戦記念日に過去の戦争を総括し、平和を誓う談話を出す意味があるのではないか。
コメ問題や日米関税交渉、参院選などの対応で準備ができず、15日の談話は間に合わなかったとかいう言い訳も聞こえてくるが、本気で歴史と向き合ってきた政治家ならば、そんなもん1日もあれば書けるだろう。
実質的な夏休みに入った石破はきょう、あすの公務の予定はなく、趣味の読書をしながら静養するというが、のんびり本を読んでいる場合ではない。
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