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自衛隊機レーダー照射問題
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2025年12月10日 植草一秀の『知られざる真実』
中国軍の戦闘機が日本の自衛隊機にレーダー照射を行った問題を日本が大事件として大報道を展開している。
この問題に関して中国側は訓練海空域を事前に公表したと説明しているが小泉進次郎防衛相は
「ノータムや航行警報が事前に通報されていたとは認識していない」
と述べて中国側から訓練に関する事前通報はなかったと主張した。
「レーダー照射」問題はいつも日本が突然大事件として報道する展開が続く。
2013年1月30日には中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対し射撃用の火器管制レーダーの電波を照射していたことが大きく報道された。
2018年12月20日には能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国駆逐艦「広開土大王」が海上自衛隊のP1哨戒機に向け火器管制レーダーを照射したことが大報道された。
しかし、2018年のレーダー照射事案に関して元航空幕僚長の田母神俊雄氏は次のようなメッセージを発している。
「(レーダー照射について)全く危険ではない」
「今回ぐらいのことは世界中の軍が日常的にやっていることであり、電波照射をしてもミサイルが直ちに飛んでいかないような安全装置もかけられている」
高市発言で日本は窮地に追い込まれている。
客観的に評価して高市発言に正当性はない。
中国が厳しい対応を取るのは当然と言える。
しかし、高市首相は「撤回しない」と主張しており、今後の情勢推移によっては一段と厳しい局面に追い込まれることが予想される。
このような状況下で中立公正な議論を示していないのが日本のマスメディア。
メディアこそ過去の事実を明らかにして、たとえ日本の政権であっても非は非として追及する姿勢を示す必要があるが、戦時中の翼賛報道と類似した対応を示している。
そのメディアが大本営と化して政府が発表する情報を針小棒大に伝えている。
今回のレーダー照射について中国は事前通知を行ったと説明しているが小泉防衛相は全面的に否定した。
これに対して中国国営メディアは実際の日中間の通信音声を公開して事実の立証を試みている。
中国国営メディアが報じた内容は次のもの。
中国軍とされる音声(中国語で呼びかけ)
「日本の海上自衛隊116番艦へ、中国海軍101番艦だ。我々の艦隊は計画に沿って艦載機の飛行訓練を実施する」
中国軍とされる音声(英語で呼びかけ)
「中国海軍101艦だ。我々の艦隊は計画に沿って艦載機の飛行訓練を実施する」
自衛隊とされる音声(英語で呼びかけ)
「中国軍101艦へ、こちら日本の116艦。メッセージを受け取った」
この音声が事実をそのまま伝えるものであるかはまだ判明していない。
しかし、ねつ造した音声を公表する可能性は低いのではないか。
現時点で確定的な論評を示すことはできないが、仮に中国側が公表した音声が事実に即したものである場合、高市内閣は一段と窮地に追い込まれる可能性が高い。
その後、小泉防衛相は中国側から事前通告があった事実を認め、「詳細については連絡を受けていない」に発言を変えたが、当初の発言は誤りだったことになる。
日本サイドはレーダー照射問題を一大事として大々的に報じた。
日本政府の意向があり、大政翼賛メディアが政府の意向に沿って大報道を展開したものだと考えられる。
ところが、中国側が日本サイドに通告した上での行動であるなら意味合いはまったく変わる。
中国国営メディアは中国軍と自衛隊とのやりとりとする音声を公開した上で中国軍の訓練の前に自衛隊に対して複数回、訓練を行う旨の通報を行って自衛隊からも返答があったと説明した。
さらに訓練等に関する位置関係を表わす図を示して、訓練直後に日本側が接近して中国側が設定し、発表した訓練区域に入ってきたと説明している。
自衛隊機が訓練区域に入ったために中国軍機との距離が縮まってレーダー探知できる距離になったとしている。
さらに、中国側の関係者の証言として
「中国軍機も同じく自衛隊機からのレーダーを感知した」
と伝えている。
まずは事実関係の確認が先決だ。
もし、中国側の説明が事実に即している場合には、高市内閣は極めて厳しい状況に追い込まれることになる。
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