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「イスラエルのグアンタナモ」の悪名も…ガザ医療関係者への拷問・虐待、その実態と狙いは? 「司法制度は機能しない。国際社会の圧力しか手立てがない」人権団体が報告書
2025/04/29 共同通信
https://www.47news.jp/12511351.html
パレスチナ自治区ガザの戦闘で、イスラエル軍はガザでパレスチナ人を拘束し、イスラエル領内に連行している。その数は、地元メディアによると、今年1月時点で計3400人に上る。中でも、医療関係者は計250人以上で、標的にされていると指摘される。殴打などの拷問のほか、「ディスコルーム」と呼ばれる大音量の音楽が流れる部屋への監禁、天井からのつり下げ、医療放置…。
特に、イスラエル南部のスデテイマン基地は、米国のテロ容疑者への虐待で悪名高いグアンタナモ基地になぞらえ、“イスラエルのグアンタナモ”との非難も広がる。
2月にイスラエル軍拘束下の医療関係者に関する報告書を公表した非政府組織(NGO)「人権のための医師団・イスラエル」(PHRI)の拘束者支援部門責任者、ナジ・アッバス氏にオンラインで現状を聞いた。(聞き手=共同通信前エルサレム支局長・平野雄吾)
▽拷問の結果とみられるも…死因は明らかにされず
―イスラエル軍はガザから多数のパレスチナ人を連行、軍の基地では拷問も指摘されている。現状は。
「情報公開制度に基づき、軍がPHRIに開示した情報では、2023年10月のガザ戦闘開始以降、2024年7月までにイスラエル軍の拘束施設でガザのパレスチナ人44人が死亡し、イスラエル刑務所当局(IPS)管轄の拘束施設で2024年9月までにパレスチナ人21人が命を落としています。後者の数字には、ヨルダン川西岸や東エルサレムのパレスチナ人も含まれており、PHRIの調査では、ガザ出身者は5人でした。合計すると、戦闘開始以降、少なくとも49人がイスラエル側に拘束される中で死亡しており、かつてない規模の犠牲が出ています。
イスラエル軍やIPSは死因を明らかにはしていませんが、PHRIの調査で少なくともいくつかは拷問の結果死亡したとみられるケースがありました。半年以上前の数字なので、現在までに死亡したパレスチナ人はもっと多いはずです。49人の中には、医師3人と救急隊員1人の計4人の医療関係者が含まれています。
特に、ヨルダン川西岸出身の拘束者が死亡した場合に多いのですが、PHRIの医師が遺族からの依頼で法的手続きを経て解剖を実施しているほか、PHRIの弁護士が軍基地をはじめ拘束施設を訪問、拘束されているパレスチナ人と面会して何が起きているのか事実の把握に努めてきました」
▽なぜ医療関係者を狙うのか、三つの目的
―PHRIは2月、医療関係者に特化した報告書を公表した。その概要は。
「今回の報告書は医療関係者に特化しています。イスラエル軍がガザで病院を特に激しく破壊しているためです。軍基地やIPSの施設でPHRIの弁護士が面会できた拘束者は計24人で、いずれも拷問や虐待を証言しています。24人のうち20人はガザの病院で拘束されました。戦時国際法で保護対象とされている病院で医療関係者が拘束されており、本来はイスラエル軍が医療関係者を『拉致』していると表現するべきです。
イスラエル側は尋問の中で、一般的な質問を重ねています。これは驚いたことなのですが、『病院の構造を教えろ』とか『同僚について話せ』『(イスラム組織ハマスが拘束する)人質はどこにいる?』といった質問ばかりで、拘束者個人とハマスとの関わりや、具体的な事件について過去に関わったことなど、いわゆる個別の犯罪捜査のような質問はほとんどないのです。つまり、単に一般的な情報収集として医療関係者を拘束しているということが明らかになりました。
これを医療関係者拘束の第一の目的とすれば、第二の目的はハマスが拘束する人質解放に向けた交渉材料として、拘束し続けるということです。実際に今年1月の停戦開始以降に実施されたハマスの人質解放で、PHRIが面会したパレスチナ人を含め、何人もの医療関係者が人質解放の枠組みの中で身柄拘束を解かれています。
そして第三の目的として挙げられるのは、ガザの保健医療システムを崩壊させることです。イスラエル軍が特に病院を標的に攻撃をしていることは知られていますが、建物の破壊だけでなく、医療関係者を拘束することで、ガザで負傷したパレスチナ人を治療する人員がなくなります。保健医療システムの崩壊を目的としているとPHRIはみています」
▽法的な手続きがないままに拘束
―拷問や虐待には、どんなものがあるのか。
「殴る蹴るといった拷問のほか、睾丸を蹴り上げるなどの性的な虐待、犬に攻撃させるとか、医療放置などが典型ですが、『ディスコルーム』と呼ばれる部屋への長期間の監禁もあります。大音量の音楽が流れる部屋に何日間も閉じ込め、その後に尋問に移るのです。拘束者は精神的にも疲弊しきっています。
例えば、60歳の救急車運転手はこう証言しています。『尋問の間、やつらは私を殴り、冷水をかけた。その後1週間、耳がつんざくようなディスコルームに入れられ、出された後の尋問で思いっきり殴られ歯の詰め物がとれた。さらに冷水をかけられ、携帯電話で頭部を殴られ死にかけた』。さらに、38歳の看護師は『天井から何時間もつるされた』と語っています。こうした拷問はジュネーブ条約に明白に違反しています。
拷問や虐待に加えて問題なのは、法的な手続きが欠如していることです。大多数の医療関係者は訴追されているわけではありません。弁護士をつけることもできません。
あるパレスチナ人は『軍事法廷で2回、聴取があったが、自分には訴追事実はなく、戦争が終われば解放されると伝えられた』と証言していますし、ある産婦人科医師は『電話越しに聴取があったが、やつらは私を訴追はしないが、無期限に拘束すると言った』と話しました。一方で、『テロ組織に属している』との理由で訴追された医師もいますが、証拠は何も示されませんでした。さらに、イスラエル側はアラビア語で尋問を実施しているにもかかわらず、パレスチナ人の理解できないヘブライ語の書類にサインをするよう強要しています。
医療放置も大きな問題で、監房内で疥癬がはやったのに治療はなく、何度も訴えたら、ペッパースプレーをかけられたとの証言があるほか、拘束施設内のイスラエル人医師が治療をしないから、自らも拘束されているパレスチナ人医師が『おれが治療するから機器を貸してほしい』と頼んでも、断られるケースが発生しています」
▽「奴らを処刑すべきだ」ファシズム的思想への懸念
―イスラエル当局はPHRIによる拘束者の面会を認めたのか。
「2024年7月以降、認めるようになりました。外国メディアが、イスラエル軍によるパレスチナ人虐待の疑惑を相次いで報じた影響だとみています。ただ、その後も、許可されていたはずの面会が突然取り消されるほか、何カ月も許可が出ないなど拘束者と面会するのは簡単ではありません。それでも、イスラエル軍やIPSが事実を明らかにしない以上、実態把握には拘束者と面会するしか方法はありません。
イスラエルの司法制度はパレスチナ人保護に関しては機能しないので、国際社会がイスラエル政府に圧力をかけるよう訴えるしか状況を改善する手だてがないのです。そのためには、拘束されているパレスチナ人に何が起きているのかを地道に明らかにする必要があります」
―なぜ拷問が横行するのか。
「当初は、ハマスによるイスラエル奇襲に対する復讐だと考えました。ただ、最近はイスラエル軍やイスラエル政府の上層部でファシズム的な思想が広がっているのではないかと感じています。拷問はその結果です。対パレスチナ強硬派で知られる極右のベングビール国家治安相はIPSも管轄していますが、『パレスチナ人の過剰収容問題を解決するために、やつらを処刑すべきだ』と公然と発言しています。こうした考えが一部の極端な人間だけでなく、イスラエル軍や政府の間に広がりつつあるのではないかと危惧しています」
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NAJI・ABBAS
1990年、イスラエル北部にあるアラブ人の町デールハンナ生まれ。ヘブライ大で法学を学んだ後、イスラエルの刑務所に収監されるパレスチナ人の人権保護活動を始めた。2023年から「人権のための医師団・イスラエル」で拘束者支援部門の責任者を務める。
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平野雄吾 2006年共同通信入社。前橋、福島、カイロ支局などを経て、2020年8月〜2024年7月エルサレム支局長。同8月から外信部。著書に『ルポ入管―絶望の外国人収容施設』(ちくま新書、2020年、城山三郎賞など)。エルサレム支局時代は、ガザのシーフードパスタが好きだった。
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