http://www.asyura2.com/25/warb26/msg/177.html
Tweet |
露軍との戦争で戦況を変えるための時間稼ぎに失敗した独首相が露国に戦争の恫喝
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202505290000/
2025.05.29 櫻井ジャーナル
フリードリヒ・メルツ独首相は公開フォーラムで、ウクライナ軍がロシアに向けて発射するドイツ製ミサイルの射程距離に制限を課さないと宣言した。メルツはロシア政府に対し、高級的な和平でなく30日間の停戦を要求していたのだが、それを拒否され、啖呵を切ったつもりなのだろう。
ロシアがこの要求を拒否した理由は明確である。30日間に限定した停戦を実現することでロシア軍の進撃を止め、その間にウクライナ軍に兵器を供与して態勢を整えることができる。ベルギーのテオ・フランケン国防相はEU外相会議で、「停戦が成立した瞬間、有志連合は直ちにウクライナ領土で活動できる」と語っている。つまり、停戦が実現すれば欧州諸国からウクライナへ軍隊を派遣することができると語っているのだ。
メルツは以前から空中発射型巡航ミサイルの「タウルスKEPD 350」をウクライナへ供与すると主張しているが、この攻撃計画はドイツ空軍の中で議論されていることを示す会話がすでに公表されている。
同軍のインゴ・ゲルハルツ総監や作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将、そして連邦軍宇宙本部の2名が昨年2月19日にリモート会議で行った会議の中で、クリミア橋(ケルチ橋)をタウルスで攻撃する計画が議論されているのだ。イギリスの情報機関もこの橋の爆破を試み、失敗したと言われている。
ドイツ空軍幹部の音声は昨年3月1日にRTが公開したが、ディルク・ポールマンとトビアス・アウゲンブラウンの分析によると、ゲルハルツらは2023年10月の時点で計画の内容を太平洋空軍司令官だったケネス・ウイルスバックに伝えているという。
ウイルスバックは2023年5月、航空戦闘軍団司令官に指名され、24年2月に就任した。ウイルスバックの後任としてケビン・シュナイダーが太平洋空軍司令官になったのは24年2月9日。問題のリモート会談が行われる10日前のこと。その時点でシュナイダーはウクライナでの攻撃計画について知らなかったようだ。グレーフェによると、シュナイダーは彼が何を話しているのか理解できていなかったという。
タウルスに限らず、アメリカのATACMSにしろ、イギリスのストームシャドウにしろ、オペレーター、地上や衛星からの情報、あるいはミサイルを誘導するためのシステムが必要であり、NATO諸国の軍が関与しなければ使えない。つまりメルツの発言はドイツがロシアとの直接的な戦争を始めるという宣言に等しい。
ロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めたのは2022年2月24日のこと。当時NATO/ウクライナ軍はドンバス(ドネツクとルガンスク)に対する大規模な攻勢を計画、その周辺に兵力を集めていた。その兵力を一気に叩いたようだ。またその際、ウクライナ側の軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを破壊、機密文書を回収している。
当時のキエフ体制は2014年2月、アメリカのバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターで樹立したのだが、そのクーデターで中心的な役割を果たしたのはNATOの訓練を受けたネオ・ナチだった。これについては本ブログで繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。
クーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したものの、国民の支持を得ていたとは言い難い。特にヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部での反発は強く、オデッサでは反クーデター派の住民がネオ・ナチに虐殺されて制圧されたが、南部クリミアの人びとはロシアと一体化する道を選び、東部ドンバスでは武装抵抗が始まり、内戦になる。
反クーデター派は軍や治安機関にも多く、その比率は7割程度だったと言われている。クリミアでウクライナ軍が住民を鎮圧しなかった理由は、駐留していた部隊の9割程度がクーデターに反対していたからだとも言われている。
そうした状態のため、キエフのクーデター政権は軍事力でウクライナ全域を制圧することができない。そこでオバマ政権はクーデター直後からCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ。傭兵会社「アカデミ(旧社名:ブラックウォーター、Xe、2014年6月にトリプル・キャノピーと合併してコンステリス・グループ)」の戦闘員約400名もウクライナ東部での戦闘に参加している。CIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練、イギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊員がウクライナ国内出活動しているとも伝えられていた。年少者を戦闘員として育てるため、「ヒトラーユーゲント」的なプロジェクトもスタートさせている。
戦力を増強するためには時間が必要。そのために「停戦」が利用されている。ドイツやフランスが仲介する形で停戦交渉が始まり、2014年には「ミンスク1」、15年いは「ミンスク2」が締結されるたのだ。
しかし、後に当時のドイツ首相、アンゲラ・メルケルはキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎに使われたと証言、フランソワ・オランド元仏大統領もその発言を肯定している。和平の実現ではなく、戦争の「リセット」が目的だった。
これを経験しているロシア政府だが、2022年2月24日に戦闘が始まった直後、ロシア政府とウクライナ政府は停戦交渉を始めている。この段階でロシアが求めていたのは、ウクライナが憲法を適切に改正し、ロシア語を話すウクライナ人の権利と地位の保護を保障することの保証。
停戦交渉はふたつのルートを使って始まった。仲介役はイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットやトルコ政府。2023年2月4日に公開されたインタビューの中で、ベネットはロシアとウクライナはともに妥協し、停戦は実現しそうだったと語っている。
2022年3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。ウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺したのはその3月5日だ。
トルコを仲介役とする停戦交渉は仮調印まで漕ぎ着けているのだが、そうした停戦交渉を壊すため、イギリスの首相だったボリス・ジョンソンは4月9日にキエフへ乗り込み(ココやココ)、4月30日にはアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。そうした中、西側の有力メディアはロシア軍がブチャで住民を虐殺したと宣伝し始める。その主張を否定する事実が次々と現れたが、停戦交渉は壊された。
NATO側はロシアを簡単に破壊できると考えていたようだが、そうした展開にならず、ロシアとの戦争に疑問を持つ人が増えていく。そこで対ロシア戦争の中心にいる人びとは民主主義の衣を脱ぎ捨て、弾圧を強めている。それだけ追い詰められているのだ。
ドナルド・トランプ米大統領はその状況を変えようとしているのだろうが、状況認識を間違っていると考えられている。ロシアは甚大な被害を出していて、それに耐えられない、ロシアによるウクライナ攻撃はプーチン大統領の個人的な敵意に基づいている、ウクライナでの戦争はロシア経済に大きな負担をかけていて、プーチン大統領は打開策を探していると米大統領は考えているのだろうということだ。この間違った認識によってトランプ大統領は迷走している。
**********************************************
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ

すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。