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ついに言い出した「マイナンバーカード義務化」のディストピア 二極化・格差社会の真相
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/388123
2026/05/26 日刊ゲンダイ 後段文字お越し

聞こえの良い言葉に置き換えても全国民の一挙手一投足をあまねく監視(平井卓也デジタル社会推進本部本部長ら=左)/(C)日刊ゲンダイ
これは陰謀論などでは断じてない。監視社会の取材を30年も重ねた経験ゆえの、満腔の怒りだ。
自民党が全国民に“マイナンバー”カードの取得を義務付けると言い出した。19日発表の政策提言「デジタル・ニッポン2026」の重要項目。来年の通常国会で法制化を図るという。
〈これからは、マイナンバーカードを使うことが当たり前になり、デジタルの恩恵を全ての国民が感じることができる社会を目指すべきである〉
と、くだんの提言は強調している。だから一人残らずカードを持っている前提が必要だ、と。
“マイナンバー”制度が始まるはるか以前、国民総背番号の構想当初からの発想だから、今さら驚きはしない。神様の目線の選民意識と、人間を支配することへの飽くなき欲望にただただ呆れる。
義務化しても罰則規定は設けないという。それでも全国民が使うということは、カードを携帯していないと生活できない世の中にされていくのと同義である。
提言には実際、全国民の一挙手一投足をあまねく監視し、利権にしたい魂胆モロ出しの言葉が並ぶ。事業者が申請すれば行政機関などの保有する(個人)データの提供を要求できる制度の創設とか、カードで認証された情報を特定の事業者にシームレスに連携可能とする法整備とか。
筆者には次の一文が最も恐ろしく感じた。〈不慣れな方々が多いことを理由にデジタル化を断念するのではなく、デジタル化とデジタルに不慣れな方々に対する支援をセットで進め、利便性向上・業務効率化と費用対効果の高いワイズスペンディング(引用者注:賢い財政支出)を実現すべき〉。
誰一人取り残さないDXだ、などと軽々しくうたう。しかしてその将来像は、全国民にデジタルの海の中で生き延びる以外の道を閉ざし、矯正不能な者は野垂れ死にさせるディストピアでしかない。かつて筆者の取材に、「国民は奴隷になりたがっている」と言い放った官僚がいた。政府が国民総背番号体制を構築しつつあるのに、本気で怒ってるのはあなた(斎藤)だけじゃないの、と笑っていた。
そんなことはないと返した。今だって総務省の調べで4月末時点の“マイナ”カード保有率82.7%。他方、取得後に「本人希望・その他」の理由で廃止されたカードが昨年7月末までに約93万枚あったと会計検査院が。事の重大性に照らせば、義務化を口にしてよい段階ではないのだ。

斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
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