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[ペンネーム登録待ち板7] 公教育が危ない!「東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る」 
東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る

https://news.yahoo.co.jp/byline/otatoshimasa/20181020-00101152/

おおたとしまさ | 育児・教育ジャーナリスト

10/20(土) 8:14

大学入試改革に関連し、東大は9月25日、英語民間試験の成績の提出を実質的に必須としないと発表した。他大学の方針にも大きな影響を与えそうだ。大学入試改革第1期に当たる学年は、すでに高校1年生になっているというのに、改革の落としどころがいまだに見えない。拙著『受験と進学の新常識』(新潮新書)でも触れているが、これは異常事態である。大学入試改革を巡る2013年からの議論を振り返り、いま何がどこまで決まっていて、決まっていないのかを整理する。

◆いちばん困るのは改革1期生の前の学年

 大学入試改革が2020年度以降に予定されていることは、すでに多くの人が知っているはずだ。ただしその全容はとらえづらく、教育関係者でもない限り、「センター試験がなくなるらしい」「英語は民間業者のテストを使うらしい」などという断片情報を聞いたことがあるだけだろう。

 しかし子をもつ親には切実だ。2002年4月以降生まれの学年から新制度入試を受けることになる。もっと微妙な立場に立たされるのが実はその1つ上の学年だ。現役で大学進学を決めなければ翌年から新制度入試。「ルールががらりと変わる」と言われれば、「現役で勝負を決めておかないと、どうなってしまうかわからない」という不安が湧いてくるのは当然だ。改革の具体的な落としどころが気になる。しかも、「落としどころ」は目指す大学のレベルによっても違ってきそうだ。

 どんな議論が、どこを目指し、どこまで進んでいるのかをおさらいしておこう。

 発端は、2013年10月31日に教育再生実行会議が発表した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」である。高校教育、大学教育、大学入学者選抜のあり方の3つの改革を一体的に実施する提言がなされた。

 知識偏重の1点刻みの大学入試もダメ、事実上学力不問になっている一部の推薦・AO入試もダメ。「大学入学者選抜を、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換するとともに、高等学校教育と大学教育の連携を強力に進める」という方向性が打ち出されたのだ。

 個別の大学の入学者選抜においては、以下のような方針が示された。

・各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する。

・各大学は学力水準の達成度を判定するほかに、 面接、論文、高校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、多様な方法で入学者を選抜し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。

 さらに「提言」は、現行のセンター試験の弊害を指摘し、代わりに「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「同(発展レベル)(仮称)」の2段階の学力テストを行う方向性を示した。「基礎レベル」は高校で学ぶべきことが達成されているか、「発展レベル」は大学で学ぶための素養が達成されているかを測るもの。そして「達成度テストの「年間複数回実施」「1点刻みではなく段階別の結果」のほか、「外部検定試験の活用」「推薦入試やAO入試に達成度テスト(基礎レベル)を活用する」などのビジョンも示された。特に「年間複数回実施」は改革の目玉とされた。

 欧米先進国の大学入試をまねていることは明らかだった。高校3年生になってから問題集や志望大学の過去問を解きまくって身に付ける「付け焼き刃の学力」では太刀打ちできないようにしようということで、たしかに大改革である。そしてこの方向性自体には前向きな評価が多かった。

◆中高一貫校生にますます有利に!?

 これを引き継いだ中央教育審議会は、2014年12月22日に新しい答申を出し、教育再生実行会議の提言具体化に一歩踏み出した。

 「達成度テスト(基礎レベル)」と「同(発展レベル)」はそれぞれ、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と呼ばれるようになったが、この時点ではまだいずれのテストも年間複数回実施されるという話だった。センター試験のようなマークシート形式だけでなく、記述式の問題を含めることにも言及があった。

 個別の大学の選抜試験については、「学力評価テスト」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、 プレゼンテーション、調査書、活動報告書、入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録などの活用を示唆した。

 このために、高校3年間の学習履歴を記録し大学にインターネット経由で提出するための「e-ポートフォリオ」というシステムがすでに構築されている。各高校はこれを導入せざるを得ない流れだ。ただし、大学側にこれを十分に活用するノウハウや体制があるかどうかは甚だ疑問。システムを導入した高校の教員たちからも「これを一生懸命記入しても、本当に活用されるんでしょうか」との疑問の声が上がっている。

 面白いのは、「大学のレベルによって入試のやり方を最適化しなさい」という趣旨が盛り込まれたことだ。

 スーパーグローバル大学をはじめ、比較的「偏差値の高い大学」では、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を含む学力を、高い水準で評価するようにとのこと。

 「中程度の大学」では知識量のみを問う問題になっていることが多いので、「大学入学希望者学力評価テスト」をうまく活用し、その分、個別選抜で「思考力・判断力・表現力」までをも含む力を試すことに注力しなさいと提案している。

 入学志願者が少なくて「入学者選抜が機能しなくなっている大学」では、せめて「高等学校基礎学力テスト」で高校時代の学習成果を測るようにとしている。

 ここまで踏み込んだ答申を見て、「今回ばかりは本気の改革だ」と、教育関係者も評価した。

 このとき、開成や灘のような従来の進学校が凋落する、という噂が広まったが、大きな間違いである。少なくとも東大合格者トップ10に名を連ねるような進学校では、生徒たちの高い基礎学力を前提に、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を育む教育が伝統になっており、今回の改革はむしろ有利に働くと多くの専門家は予測した。有名進学校の教員たちも一様に、手ぐすね引いて改革を歓迎した。

 特に基礎学力の仕上がりが早い中高一貫校の生徒は、複数回行われる「基礎学力テスト」や「学力評価テスト」において早い段階で最高レベルの成績を収め、個別の大学の入試対策に専念することで、さらに有利になることが予見された。私立中高一貫校の入試広報担当者も「これはチャンス」とにらんだ。

◆結局、それほど変わらない

 ところが、さらに具体的な実施方法を検討する段階になると、改革は急にトーンダウンした。特に公立高校の教員から「複数回実施」への反対意見が相次いだ。現在のセンター試験より前倒しの日程で試験が実施されれば、学校での指導が間に合わなくなるというのだ。結果、2016年3月31日に発表された「最終報告」では次のように表明されている。

・「高等学校基礎学力テスト」は2019年度から試行実施するが、本格実施は次期学習指導要領への移行時期を鑑み、2023年度以降とする。

・「大学入学希望者学力評価テスト」の複数回実施はいったん見送り、引き続き検討する。

 2015年12月22日に文部科学省の専門家会議が「大学入学希望者学力評価テスト」の「記述式問題イメージ例【たたき台】」を公表すると、「どうやって採点するのか?」が論点になった。記述式問題は採点基準に幅ができやすいうえ、50万人を超える答案を短期間でどうやって採点するのかということだ。

 マークシート方式よりも先に記述式の試験を行う案が検討されたが、実施時期が前倒しされれば高校の指導カリキュラムに影響が出る。記述式は各大学が採点するという案も検討されたが、日本私立大学団体連合会は「入試準備などと並行して新テストの採点をするのは実質的に不可能」との意見書を出した。

 これらの議論を踏まえ、文部科学省は2017年7月13日に「高大接続改革の実施方針等の策定について」を発表した。

 要するに、「センター試験の代わりに『大学入学共通テスト』が実施される。 その国語と数学については、記述式問題を導入する。記述式問題の採点に関しては、大学入試センターが民間の業者に委託して行う。個別の大学入試では、小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなども実施される。英語においては外部検定試験も導入する」というあたりが、現在のところの既定路線だ。

 つまり、それほど変わらない。

 文部科学省の担当者が悪いわけではないだろう。もともと広げられた大風呂敷が、どだい無理筋だったのだ。「それでは教科書の履修範囲を終えられない」という声が現場から上がるのは、日本の大学入試が学習指導要領と検定教科書にがんじがらめにされている以上、しかたがないことだ。入試問題と学習指導要領と検定教科書が三つ巴になっている限り、高校の授業の進度と内容に入試が縛られるのは宿命である。

 アメリカの大学を受験するときに必要になる標準学力テストSATは、年複数回実施されている。学習指導要領も検定教科書もないので、高校の授業の進度はバラバラという大前提。SATで早くいいスコアを取りたければ、自分で勉強しなさいということだ。

 学習指導要領と検定教科書を入試から切り離す。そこまで腹をくくらなければ、年複数回実施などできるわけがない。そうでもしなければ、学習指導要領に定められた検定教科書の内容を「試験範囲」とする「教科書絶対主義」「知識偏重型教育」からいつまでたっても離れられない。そこまでやるつもりなのかと、2013年当初は期待したが、そうはならなかった。現実的には非常に難しいことはわかっていたが、それでも一縷の望みが消えたときにはがっかりした。

 念のため付け加えるが、学習指導要領や検定教科書の内容が悪いといっているわけではない。その影響が強すぎることが大学入試改革のネックになっているという指摘だ。

◆優秀な受験生には「ファストパス」が用意される

 個別の大学の入学者選抜についても触れておこう。

 具体的な議論はまだあまり聞こえてこない。ただし、文部科学省の方針を受けて国立大学協会は、将来的に入学定員の3割をAO・推薦入試等にあてるという目標を掲げている。また、文部科学省はAO入試においても「大学入学共通テスト」またはそれに準ずる学力評価の実施を必須にすると発表している。ちなみに、2020年度以降、「一般入試」は「一般選抜」に、「AO入試」は「総合型選抜」に、「推薦入試」は「学校推薦型選抜」に名称が変更される予定。

 2016年に東大と京大が戦後初となる推薦入試を実施したのには、他大学の入試でも入試で小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなどを実施することへの先鞭をつける意味合いが多分にある。現在は各大学100人の枠だが、今後はこれを拡大する方針だ。

 東大の推薦入試で理学部に合格した都内男子校出身者に聞いた。東大推薦入試の枠は「各高校から男女1名ずつ」と決められ、男子校からは1名のみの枠だ。

「高3の夏に化学グランプリ日本大会で銀賞に輝いたことが評価されました。1次選考は、志望理由、大学卒業後の将来像、そのほかのアピールという3種類の書類審査だったので、学校の国語の先生に何度も相談して作成しました。2次選考は普通の面接で、まず志望理由を説明し、約20分間の口頭試問が行われました。提出書類の記述に関して、理学的な視点からの疑問が投げかけられ、その場で回答しなければいけません。いくつか答えられない質問もありましたが、一生懸命答えようとする姿勢を見せて乗り切り、不安でしたが、合格しました」

 20分程度の口頭試問で東大入試が終わる。あっさりしている印象だが、高校の調査書や学校以外での実績、3種類の論文提出で、学力の高さは保証されている。本人も「一般入試で受けても合格したと思う」と自信をもっていた。優秀な受験生に、無駄な受験対策をさせなくてすんだわけだ。

 付け焼き刃ではない学力を高いレベルで身につけてきた高校生には、今後ますますこうした「ファストパス(入場優先券)」と多様な選択肢が用意されることになるだろう。

 私大にもようやく動きが見え始めた。2018年6月、早稲田大学は2021年の入試から、入試のあり方を改革することを明言した。特に看板学部の政治経済学部では、出題科目を全面的に見直す。これまで大学独自問題による3科目受験が可能だったが、2021年以降は全受験生に大学入学共通テストの英数国+選択科目の4科目を課し、さらに独自入試も行う。独自入試は、教科の枠を超えた合科型の形式をとるとのこと。英語の民間資格・検定試験も全員に課す。

 これまで私大と国公立大は、入試科目数で差別化がなされていたが、その垣根が今後あいまいになる可能性がある。

◆センター試験を変える意味はあるのか?

 2017年12月、大学入学共通テストの試行テストが公開された。特に記述式が出題された数学と国語に注目が集まった。

 地方の公立進学校の教員に評価を聞くと、「今回はかなり頑張ってつくった良問だと思う」「たとえば数学は、単なる計算力では太刀打ちできないようになっている」と、概ね好評だった。ただし「問題のレベルが、一部の上位層にはちょうどいいが、それ以外の高校生には難しすぎるのではないか」という声も聞いた。

 実際、国語の記述式問題では完全正答率が0.7%の問題があり、数学でも全3問の正答率が1割未満だった。2018年6〜7月に朝日新聞と河合塾が共同で755大学を対象に行った「ひらく 日本の大学」という調査によると、名古屋大や法政大、近畿大など10%の大学が「難しい」と答え、「やや難しい」という大学も43%もあった。同10月4日の朝日新聞によると、日本女子体育大の入試担当者は「このままの難易度では(正答率が低すぎて)差が付かないのではないか」とコメントしている。

 関西の私立中高一貫校の校長も「うちの生徒にはいいが、一般論としたら難しすぎるのではないか」と懸念を示した。さらに国語の問題については「あれが国語の読解力なんですかね」とも。思想の練り込まれた長文を立体的に読む力というよりは、雑多な文字情報の中から必要な情報だけをパッとすくい取る能力を試すような問題が目立ったからだ。

 お茶の水大学は「国語の記述式問題では、どのような能力をどのような制度で測れるのか、課題が多いのではないか」と指摘した(2018年10月4日朝日新聞より)。

 試行テストと従来のセンター試験を比べたとき、見た目上のいちばんの違いは、問題文や課題文の体裁である。従来のテストであればほんの数行で終わっていたはずの問題文が、何行にもおよぶ会話文になっていたりする。日常生活や実社会を意識させるために、会話文や図表などを多用し、ストレートに問いを投げかけてはこないのである。その手法は、公立中高一貫校の適性検査にそっくりだ。

 まわりくどい問題文をわざわざ読ませることには課題発見能力も測るという意図があるのだとは思うが、問題文が長く婉曲的になればなるほど、文章を速く正確に読み取るのが得意な受験生に有利になる。要するに読解力あるいは速読力の勝負になり、教科そのものの能力が見えづらくなる。たとえば驚異的な数学センスをもっている受験生でも、読解でつまずいてしまうかもしれない。それは教科のテストとしてはいかがなものか。テストの体裁を変えることを目的化して、本来測るべき能力が正確に測れなくなるようなことのないように、今後の調整を行ってほしい。

 ある進学校の校長はこんなことも懸念していた。「記述式の採点は専門の業者が行うというが、いくら専門の業者でも、50万人分の答案を採点できるほど専門の職員がいるとは思えない。実際は大量のアルバイトに採点させることになるのではないか」。結局は素人に機械的に採点させるのなら、記述式問題を出す意味があるのかという、もっともな疑問だ。

 2018年10月4日の朝日新聞によれば、「採点基準を厳密にしても、採点者によって偏りがでる可能性は否定できないと思う」など懐疑的な意見が大学側からあり、全体の53%の大学が「採点の公平性に疑問」の声を上げている。試行テストでは、受験生の自己採点と入試センターの採点結果が一致しない例も多く、80%の大学がこれを問題視した。

 また「日本テスト学会」は試行テストに見られた「5つの選択肢の中から適当なものをすべて選べ」というような多肢選択問題について、実際は選択肢ごとにそれが適切か否かの二者択一をしているにすぎず、「より深い思考力」を求めていることにはならないと指摘する。さらに「テスト理論」の観点から、5問正答のみを正答とし4問以下の正答は0問正解と同じとみなしてしまうことについて、「貴重な個人差情報を捨てる」と批判的な声明を出している。

 以上を総合すると「だったら記述式問題も多肢選択問題もなしにして、現行のセンター試験のままでいいじゃないか」という結論になりかねない。

 報道によると、テスト理論の専門家がすでに再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正がされないまま今回の試行テストが実施されたとのこと。だとすると、今回の試行テストは「見せ球」の可能性が高い。このままではGOできないとわかっているが、一見していままでとは明らかに違う案を見せておく。そのうえで、公に批判を浴びる中で現実的な案に収斂していくのが文部科学省の作戦なのかもしれない。無理筋な改革を押しつけられたときに官僚がとるべきプロセスとしては間違ってはいない。ただしそれは、最終的な着地点が現行のセンター試験を「お色直し」した程度のものになることを見越しているからこその作戦だと言えなくもない。

◆東大が英語民間試験を実質不採用

 数学や国語から遅れることおよそ3カ月、大学入学共通テストの英語の試行テストが実施され、公開された。これまたいままでのセンター試験とはだいぶ装いが違う出題方式が目立った。しかしそれと前後して、ちゃぶ台返しのような衝撃が、大学入試改革関係者を直撃する。2018年3月10日、東大が、英語の民間検定試験を合否判定に利用しない可能性を表明したのだ。

 冷めた空気が流れる中、2018年3月26日には大学入学共通テストの英語で活用される4技能を測る民間試験として、英検(新型)、ケンブリッジ英語検定、GTEC、IELTS、TEAP、TEAP CBT、TOEFL iBT、TOEICの8種が合格したことが発表された。ちなみに従来型の英検が不合格とされたのは、1次試験・2次試験とわかれており、「1度の試験で4技能のすべてを評価する」という要件を満たしていないからだ。

 2018年4月3日の「東京大学新聞」では、東大の阿部公彦准教授が英語の民間検定試験導入だけでなく大学入試における4技能評価重視の風潮そのものを一般論として批判している。

 「共通テストのプレテストでも民間試験と同様、遊園地の混雑度をウェブサイトで調べる問題など、日常生活の具体的な状況が題材の問題が多く見られた。しかし『これでは英語力ではなく情報処理の問題だ』」というのだ。

 先述、関西の私立中高一貫校の校長が、国語のプレテストを「あれが国語の読解力なんですかね」と疑問を呈したのと同じ視点である。

 このタイミングで民間検定試験導入に対するネガティブな姿勢を東大が表明したことからは、「いまさら大学入試改革の既定路線をひっくり返すことは難しい。しかしこのままではまずい。自らがいち早く態度を表明することで、他大学の方針に少しでも影響が与えられれば」という思いが感じられる。

 2018年7月12日、東京大学のワーキンググループは「出願にあたって(英語の)認定試験の成績提出を求めない」を第一優先順位の選択肢とする答申を発表した。同8月10日に朝日新聞がまとめた調査では、英語の民間試験について、82の国立大学のうち37大学が「活用するか未定」と回答。具体的な方針を示しているのは13大学にとどまった。

 9月25日、東大はついに、英語民間試験の成績提出を実質的に必須としないとの結論を出した。英語民間試験活用に対して方針を保留していた多数の国立大学の今後の判断に大きな影響を与えることは間違いない。大学入試改革の風向きが、ここに来てさらに大きく変わった。

 前出「ひらく 日本の大学」によると、英語の民間試験の活用については46%の大学が「問題がある」と回答した。同じ調査では、共通テストいついて「利用したい」が69%だった。前年の同調査の88%から19ポイントもの下落だ。試行テストの問題を見ての翻意だと考えられる。

 10月11日には朝日新聞に、東大副学長の石井洋二郎氏のコメントが掲載された。

 「今回の改革で一番問題なのは、途中から目的と手段が逆転してしまったことだと思います。これからの時代を生きるために英語のコミュニケーション能力が必要であることは明らかですし、WGの答申もその目的自体を否定してはいません。ただ、本来はまず高校教育で基礎力を養い、その成果を問うために大学入試があるはずなのに、入試を変えることで高校教育を変えようとする発想で議論が進んできた。これは逆立ちした考え方です。民間試験はあくまで手段のひとつでしかないのに、スピーキングが含まれているというだけで、これを活用することがいつのまにか目的化してしまった。これでは高校の授業が民間試験対策に走ってしまい、教育がゆがめられてしまう恐れがあります。本末転倒の議論が続いているうちに、何のための入試改革か、忘れられていたのではないでしょうか」

 英語だけではなく、今回の大学入試改革そのものの話の進め方を批判しているようにも読める。いや、そうとしか読めない。

◆先行き不透明な時代のための先行き不透明な入試改革

 改革によって得られるものと、生じる混乱のどちらが大きいか。

 難関国立大学の2次試験にはもともと数百字におよぶ記述式が多く、そのような大学を志望する受験生たちにとっては、大学入学者共通テストに80字程度の記述問題が導入されたとしてもそのための対策に余計な時間を取られる心配はほとんどない。要するに、学力上位層にはこの改革はほとんど影響がない。混乱に巻き込まれる可能性があるのは学力中間層以下の受験生たちである。

 新テストの実施までもう時間がない。早めに混乱を回避する十分な策がとられなければ、新テストを回避しようとする思惑が、受験生の志望校選びに影響を与えかねない。新テストを回避して、結局従来通りの入試を続ける大学に人気が集まるなどという最悪のシナリオもあり得る。

 混乱ばかりをまき散らし「結局のところ、50万人分の記述式解答を採点する業者と4技能型の英語の資格検定試験を実施する業者と『e-ポートフォリオ』を学校に提供する業者が儲かるだけの改革になってしまった」なんてことにならないようにしてほしい。実際、高校の現場からは、「結局某民間教育企業にすべてを牛耳られている。『それでいいのか?』という疑念はあるが、生徒に不利益があってはいけないので、いまは彼らの言いなりになるしかないのが悔しい」との声を多数聞く。

 いまだ先行き不透明な大学入試改革であるが、こうなったらもう、これも先行き不透明な時代を生きるための実戦訓練だと思うしかない。この状況をどう乗り切るか、その姿勢こそが問われているわけである。

 先行き不透明な世の中では、未来予測も損得勘定もあてにはできない。1つ確実なことは、変化の激しい時代を生き抜くためには、たとえ逆風の中でも、自分の目指す方向を指し示し続ける強さが求められるようになるということだ。自分の中にぶれない軸をもっておかないと、世の中の風向きが変わるたびに右往左往することになる。それでは人生、おぼつかない。

 自分がどんな人間で、何のために何を成したいのかを問い続け、そのために必要なことを誠実に学んでおけば、結果的に大学入試改革以降の大学受験でも困ることはないだろう。時代はそのような人間を求めており、そのために大学入試改革が議論されているのだから。



おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト


1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を歴任。男性の育児、夫婦関係、学校や塾の現状などに関し、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演多数。サイト「パパの悩み相談横丁」を主宰する。著書は『ルポ塾歴社会』『名門校とは何か?』『追いつめる親』『ルポ父親たちの葛藤』『<喧嘩とセックス>夫婦のお作法』など50冊以上。

*****

投稿者注:「結局のところ、50万人分の記述式解答を採点する業者と4技能型の英語の資格検定試験を実施する業者と『e-ポートフォリオ』を学校に提供する業者が儲かるだけの改革」の3業者にあてはまるのが長年にわたる全国学力調査で文科省と強固な関係を築いたベネッセ。関連情報を追々Upしていきます。

http://www.asyura2.com/13/nametoroku7/msg/767.html

[お知らせ・管理21] 2018年10月 削除依頼・投稿制限・等管理スレ。突然投稿できなくなった方も見てください。 管理人さん
20. しろたえ[2] grWC64K9gqY 2018年10月22日 04:35:53 : tgrMjnXnxA : HzI7ZPdP5gI[15]
管理人さん

久々のペンネーム登録しようとして難儀しました。

おまけに自分のスレがペンネーム登録待ち板に見当たりません。

こんなハードル高かったっけと、半泣きです。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/540.html#c20

[ペンネーム登録待ち板7] 東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る <公教育がアブナイ>

*投稿者注)文中の某民間教育企業とは2007年からの全国学力調査で文科省との強固な関係を築いてきたベネッセのこと。

「東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る」

https://news.yahoo.co.jp/byline/otatoshimasa/20181020-00101152/
おおたとしまさ | 育児・教育ジャーナリスト 10/20(土) 8:14

大学入試改革に関連し、東大は9月25日、英語民間試験の成績の提出を実質的に必須としないと発表した。他大学の方針にも大きな影響を与えそうだ。大学入試改革第1期に当たる学年は、すでに高校1年生になっているというのに、改革の落としどころがいまだに見えない。拙著『受験と進学の新常識』(新潮新書)でも触れているが、これは異常事態である。大学入試改革を巡る2013年からの議論を振り返り、いま何がどこまで決まっていて、決まっていないのかを整理する。

◆いちばん困るのは改革1期生の前の学年
 大学入試改革が2020年度以降に予定されていることは、すでに多くの人が知っているはずだ。ただしその全容はとらえづらく、教育関係者でもない限り、「センター試験がなくなるらしい」「英語は民間業者のテストを使うらしい」などという断片情報を聞いたことがあるだけだろう。
 しかし子をもつ親には切実だ。2002年4月以降生まれの学年から新制度入試を受けることになる。もっと微妙な立場に立たされるのが実はその1つ上の学年だ。現役で大学進学を決めなければ翌年から新制度入試。「ルールががらりと変わる」と言われれば、「現役で勝負を決めておかないと、どうなってしまうかわからない」という不安が湧いてくるのは当然だ。改革の具体的な落としどころが気になる。しかも、「落としどころ」は目指す大学のレベルによっても違ってきそうだ。
 どんな議論が、どこを目指し、どこまで進んでいるのかをおさらいしておこう。
 発端は、2013年10月31日に教育再生実行会議が発表した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」である。高校教育、大学教育、大学入学者選抜のあり方の3つの改革を一体的に実施する提言がなされた。
 知識偏重の1点刻みの大学入試もダメ、事実上学力不問になっている一部の推薦・AO入試もダメ。「大学入学者選抜を、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換するとともに、高等学校教育と大学教育の連携を強力に進める」という方向性が打ち出されたのだ。
 個別の大学の入学者選抜においては、以下のような方針が示された。
・各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する。
・各大学は学力水準の達成度を判定するほかに、 面接、論文、高校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、多様な方法で入学者を選抜し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。
 さらに「提言」は、現行のセンター試験の弊害を指摘し、代わりに「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「同(発展レベル)(仮称)」の2段階の学力テストを行う方向性を示した。「基礎レベル」は高校で学ぶべきことが達成されているか、「発展レベル」は大学で学ぶための素養が達成されているかを測るもの。そして「達成度テストの「年間複数回実施」「1点刻みではなく段階別の結果」のほか、「外部検定試験の活用」「推薦入試やAO入試に達成度テスト(基礎レベル)を活用する」などのビジョンも示された。特に「年間複数回実施」は改革の目玉とされた。
 欧米先進国の大学入試をまねていることは明らかだった。高校3年生になってから問題集や志望大学の過去問を解きまくって身に付ける「付け焼き刃の学力」では太刀打ちできないようにしようということで、たしかに大改革である。そしてこの方向性自体には前向

◆中高一貫校生にますます有利に!?
 これを引き継いだ中央教育審議会は、2014年12月22日に新しい答申を出し、教育再生実行会議の提言具体化に一歩踏み出した。
 「達成度テスト(基礎レベル)」と「同(発展レベル)」はそれぞれ、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と呼ばれるようになったが、この時点ではまだいずれのテストも年間複数回実施されるという話だった。センター試験のようなマークシート形式だけでなく、記述式の問題を含めることにも言及があった。
 個別の大学の選抜試験については、「学力評価テスト」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、 プレゼンテーション、調査書、活動報告書、入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録などの活用を示唆した。
 このために、高校3年間の学習履歴を記録し大学にインターネット経由で提出するための「e-ポートフォリオ」というシステムがすでに構築されている。各高校はこれを導入せざるを得ない流れだ。ただし、大学側にこれを十分に活用するノウハウや体制があるかどうかは甚だ疑問。システムを導入した高校の教員たちからも「これを一生懸命記入しても、本当に活用されるんでしょうか」との疑問の声が上がっている。
 面白いのは、「大学のレベルによって入試のやり方を最適化しなさい」という趣旨が盛り込まれたことだ。
 スーパーグローバル大学をはじめ、比較的「偏差値の高い大学」では、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を含む学力を、高い水準で評価するようにとのこと。
 「中程度の大学」では知識量のみを問う問題になっていることが多いので、「大学入学希望者学力評価テスト」をうまく活用し、その分、個別選抜で「思考力・判断力・表現力」までをも含む力を試すことに注力しなさいと提案している。
 入学志願者が少なくて「入学者選抜が機能しなくなっている大学」では、せめて「高等学校基礎学力テスト」で高校時代の学習成果を測るようにとしている。
 ここまで踏み込んだ答申を見て、「今回ばかりは本気の改革だ」と、教育関係者も評価した。
 このとき、開成や灘のような従来の進学校が凋落する、という噂が広まったが、大きな間違いである。少なくとも東大合格者トップ10に名を連ねるような進学校では、生徒たちの高い基礎学力を前提に、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を育む教育が伝統になっており、今回の改革はむしろ有利に働くと多くの専門家は予測した。有名進学校の教員たちも一様に、手ぐすね引いて改革を歓迎した。
 特に基礎学力の仕上がりが早い中高一貫校の生徒は、複数回行われる「基礎学力テスト」や「学力評価テスト」において早い段階で最高レベルの成績を収め、個別の大学の入試対策に専念することで、さらに有利になることが予見された。私立中高一貫校の入試広報担当者も「これはチャンス」とにらんだ。
◆結局、それほど変わらない
 ところが、さらに具体的な実施方法を検討する段階になると、改革は急にトーンダウンした。特に公立高校の教員から「複数回実施」への反対意見が相次いだ。現在のセンター試験より前倒しの日程で試験が実施されれば、学校での指導が間に合わなくなるというのだ。結果、2016年3月31日に発表された「最終報告」では次のように表明されている。
・「高等学校基礎学力テスト」は2019年度から試行実施するが、本格実施は次期学習指導要領への移行時期を鑑み、2023年度以降とする。
・「大学入学希望者学力評価テスト」の複数回実施はいったん見送り、引き続き検討する。
 2015年12月22日に文部科学省の専門家会議が「大学入学希望者学力評価テスト」の「記述式問題イメージ例【たたき台】」を公表すると、「どうやって採点するのか?」が論点きな評価が多かった。
になった。記述式問題は採点基準に幅ができやすいうえ、50万人を超える答案を短期間でどうやって採点するのかということだ。
 マークシート方式よりも先に記述式の試験を行う案が検討されたが、実施時期が前倒しされれば高校の指導カリキュラムに影響が出る。記述式は各大学が採点するという案も検討されたが、日本私立大学団体連合会は「入試準備などと並行して新テストの採点をするのは実質的に不可能」との意見書を出した。
 これらの議論を踏まえ、文部科学省は2017年7月13日に「高大接続改革の実施方針等の策定について」を発表した。
 要するに、「センター試験の代わりに『大学入学共通テスト』が実施される。 その国語と数学については、記述式問題を導入する。記述式問題の採点に関しては、大学入試センターが民間の業者に委託して行う。個別の大学入試では、小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなども実施される。英語においては外部検定試験も導入する」というあたりが、現在のところの既定路線だ。
 つまり、それほど変わらない。
 文部科学省の担当者が悪いわけではないだろう。もともと広げられた大風呂敷が、どだい無理筋だったのだ。「それでは教科書の履修範囲を終えられない」という声が現場から上がるのは、日本の大学入試が学習指導要領と検定教科書にがんじがらめにされている以上、しかたがないことだ。入試問題と学習指導要領と検定教科書が三つ巴になっている限り、高校の授業の進度と内容に入試が縛られるのは宿命である。
 アメリカの大学を受験するときに必要になる標準学力テストSATは、年複数回実施されている。学習指導要領も検定教科書もないので、高校の授業の進度はバラバラという大前提。SATで早くいいスコアを取りたければ、自分で勉強しなさいということだ。
 学習指導要領と検定教科書を入試から切り離す。そこまで腹をくくらなければ、年複数回実施などできるわけがない。そうでもしなければ、学習指導要領に定められた検定教科書の内容を「試験範囲」とする「教科書絶対主義」「知識偏重型教育」からいつまでたっても離れられない。そこまでやるつもりなのかと、2013年当初は期待したが、そうはならなかった。現実的には非常に難しいことはわかっていたが、それでも一縷の望みが消えたときにはがっかりした。
 念のため付け加えるが、学習指導要領や検定教科書の内容が悪いといっているわけではない。その影響が強すぎることが大学入試改革のネックになっているという指摘だ。

◆優秀な受験生には「ファストパス」が用意される
 個別の大学の入学者選抜についても触れておこう。
 具体的な議論はまだあまり聞こえてこない。ただし、文部科学省の方針を受けて国立大学協会は、将来的に入学定員の3割をAO・推薦入試等にあてるという目標を掲げている。また、文部科学省はAO入試においても「大学入学共通テスト」またはそれに準ずる学力評価の実施を必須にすると発表している。ちなみに、2020年度以降、「一般入試」は「一般選抜」に、「AO入試」は「総合型選抜」に、「推薦入試」は「学校推薦型選抜」に名称が変更される予定。
 2016年に東大と京大が戦後初となる推薦入試を実施したのには、他大学でも入試で小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなどを実施することへの先鞭をつける意味合いが多分にある。現在は各大学100人の枠だが、今後はこれを拡大する方針だ。
 東大の推薦入試で理学部に合格した都内男子校出身者に聞いた。東大推薦入試の枠は「各高校から男女1名ずつ」と決められ、男子校からは1名のみの枠だ。
 「高3の夏に化学グランプリ日本大会で銀賞に輝いたことが評価されました。1次選考は、志望理由、大学卒業後の将来像、そのほかのアピールという3種類の書類審査だったので、学校の国語の先生に何度も相談して作成しました。2次選考は普通の面接で、まず志望理由を説明し、約20分間の口頭試問が行われました。提出書類の記述に関して、理学的な視点からの疑問が投げかけられ、その場で回答しなければいけません。いくつか答えられない質問もありましたが、一生懸命答えようとする姿勢を見せて乗り切り、不安でしたが、合格しました」
 20分程度の口頭試問で東大入試が終わる。あっさりしている印象だが、高校の調査書や学校以外での実績、3種類の論文提出で、学力の高さは保証されている。本人も「一般入試で受けても合格したと思う」と自信をもっていた。優秀な受験生に、無駄な受験対策をさせなくてすんだわけだ。
 付け焼き刃ではない学力を高いレベルで身につけてきた高校生には、今後ますますこうした「ファストパス(入場優先券)」と多様な選択肢が用意されることになるだろう。
 私大にもようやく動きが見え始めた。2018年6月、早稲田大学は2021年の入試から、入試のあり方を改革することを明言した。特に看板学部の政治経済学部では、出題科目を全面的に見直す。これまで大学独自問題による3科目受験が可能だったが、2021年以降は全受験生に大学入学共通テストの英数国+選択科目の4科目を課し、さらに独自入試も行う。独自入試は、教科の枠を超えた合科型の形式をとるとのこと。英語の民間資格・検定試験も全員に課す。
 これまで私大と国公立大は、入試科目数で差別化がなされていたが、その垣根が今後あいまいになる可能性がある。

◆センター試験を変える意味はあるのか?
 2017年12月、大学入学共通テストの試行テストが公開された。特に記述式が出題された数学と国語に注目が集まった。
 地方の公立進学校の教員に評価を聞くと、「今回はかなり頑張ってつくった良問だと思う」「たとえば数学は、単なる計算力では太刀打ちできないようになっている」と、概ね好評だった。ただし「問題のレベルが、一部の上位層にはちょうどいいが、それ以外の高校生には難しすぎるのではないか」という声も聞いた。
 実際、国語の記述式問題では完全正答率が0.7%の問題があり、数学でも全3問の正答率が1割未満だった。2018年6〜7月に朝日新聞と河合塾が共同で755大学を対象に行った「ひらく 日本の大学」という調査によると、名古屋大や法政大、近畿大など10%の大学が「難しい」と答え、「やや難しい」という大学も43%もあった。同10月4日の朝日新聞によると、日本女子体育大の入試担当者は「このままの難易度では(正答率が低すぎて)差が付かないのではないか」とコメントしている。
 関西の私立中高一貫校の校長も「うちの生徒にはいいが、一般論としたら難しすぎるのではないか」と懸念を示した。さらに国語の問題については「あれが国語の読解力なんですかね」とも。思想の練り込まれた長文を立体的に読む力というよりは、雑多な文字情報の中から必要な情報だけをパッとすくい取る能力を試すような問題が目立ったからだ。
 お茶の水女子大学は「国語の記述式問題では、どのような能力をどのような制度で測れるのか、課題が多いのではないか」と指摘した(2018年10月4日朝日新聞より)。
 試行テストと従来のセンター試験を比べたとき、見た目上のいちばんの違いは、問題文や課題文の体裁である。従来のテストであればほんの数行で終わっていたはずの問題文が、何行にもおよぶ会話文になっていたりする。日常生活や実社会を意識させるために、会話文や図表などを多用し、ストレートに問いを投げかけてはこないのである。その手法は、公立中高一貫校の適性検査にそっくりだ。
 まわりくどい問題文をわざわざ読ませることには課題発見能力も測るという意図があるのだとは思うが、問題文が長く婉曲的になればなるほど、文章を速く正確に読み取るのが得意な受験生に有利になる。要するに読解力あるいは速読力の勝負になり、教科そのものの能力が見えづらくなる。たとえば驚異的な数学センスをもっている受験生でも、読解でつまずいてしまうかもしれない。それは教科のテストとしてはいかがなものか。テストの体裁を変えることを目的化して、本来測るべき能力が正確に測れなくなるようなことのないように、今後の調整を行ってほしい。
 ある進学校の校長はこんなことも懸念していた。「記述式の採点は専門の業者が行うというが、いくら専門の業者でも、50万人分の答案を採点できるほど専門の職員がいるとは思えない。実際は大量のアルバイトに採点させることになるのではないか」。結局は素人に機械的に採点させるのなら、記述式問題を出す意味があるのかという、もっともな疑問だ。
 2018年10月4日の朝日新聞によれば、「採点基準を厳密にしても、採点者によって偏りがでる可能性は否定できないと思う」など懐疑的な意見が大学側からあり、全体の53%の大学が「採点の公平性に疑問」の声を上げている。試行テストでは、受験生の自己採点と入試センターの採点結果が一致しない例も多く、80%の大学がこれを問題視した。
 また「日本テスト学会」は試行テストに見られた「5つの選択肢の中から適当なものをすべて選べ」というような多肢選択問題について、実際は選択肢ごとにそれが適切か否かの二者択一をしているにすぎず、「より深い思考力」を求めていることにはならないと指摘する。さらに「テスト理論」の観点から、5問正答のみを正答とし4問以下の正答は0問正解と同じとみなしてしまうことについて、「貴重な個人差情報を捨てる」と批判的な声明を出している。
 以上を総合すると「だったら記述式問題も多肢選択問題もなしにして、現行のセンター試験のままでいいじゃないか」という結論になりかねない。
 報道によると、テスト理論の専門家がすでに再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正がされないまま今回の試行テストが実施されたとのこと。だとすると、今回の試行テストは「見せ球」の可能性が高い。このままではGOできないとわかっているが、一見していままでとは明らかに違う案を見せておく。そのうえで、公に批判を浴びる中で現実的な案に収斂していくのが文部科学省の作戦なのかもしれない。無理筋な改革を押しつけられたときに官僚がとるべきプロセスとしては間違ってはいない。ただしそれは、最終的な着地点が現行のセンター試験を「お色直し」した程度のものになることを見越しているからこその作戦だと言えなくもない。

◆東大が英語民間試験を実質不採用
 数学や国語から遅れることおよそ3カ月、大学入学共通テストの英語の試行テストが実施され、公開された。これまたいままでのセンター試験とはだいぶ装いが違う出題方式が目立った。しかしそれと前後して、ちゃぶ台返しのような衝撃が、大学入試改革関係者を直撃する。2018年3月10日、東大が、英語の民間検定試験を合否判定に利用しない可能性を表明したのだ。
 冷めた空気が流れる中、2018年3月26日には大学入学共通テストの英語で活用される4技能を測る民間試験として、英検(新型)、ケンブリッジ英語検定、GTEC、IELTS、TEAP、TEAP CBT、TOEFL iBT、TOEICの8種が合格したことが発表された。ちなみに従来型の英検が不合格とされたのは、1次試験・2次試験とわかれており、「1度の試験で4技能のすべてを評価する」という要件を満たしていないからだ。
 2018年4月3日の「東京大学新聞」では、東大の阿部公彦准教授が英語の民間検定試験導入だけでなく大学入試における4技能評価重視の風潮そのものを一般論として批判している。
 「共通テストのプレテストでも民間試験と同様、遊園地の混雑度をウェブサイトで調べる問題など、日常生活の具体的な状況が題材の問題が多く見られた。しかし『これでは英語力ではなく情報処理の問題だ』」というのだ。
 先述、関西の私立中高一貫校の校長が、国語のプレテストを「あれが国語の読解力なんですかね」と疑問を呈したのと同じ視点である。
 このタイミングで民間検定試験導入に対するネガティブな姿勢を東大が表明したことからは、「いまさら大学入試改革の既定路線をひっくり返すことは難しい。しかしこのままではまずい。自らがいち早く態度を表明することで、他大学の方針に少しでも影響が与えられれば」という思いが感じられる。
 2018年7月12日、東京大学のワーキンググループは「出願にあたって(英語の)認定試験の成績提出を求めない」を第一優先順位の選択肢とする答申を発表した。同8月10日に朝日新聞がまとめた調査では、英語の民間試験について、82の国立大学のうち37大学が「活用するか未定」と回答。具体的な方針を示しているのは13大学にとどまった。
 9月25日、東大はついに、英語民間試験の成績提出を実質的に必須としないとの結論を出した。英語民間試験活用に対して方針を保留していた多数の国立大学の今後の判断に大きな影響を与えることは間違いない。大学入試改革の風向きが、ここに来てさらに大きく変わった。
 前出「ひらく 日本の大学」によると、英語の民間試験の活用については46%の大学が「問題がある」と回答した。同じ調査では、共通テストについて「利用したい」が69%だった。前年の同調査の88%から19ポイントもの下落だ。試行テストの問題を見ての翻意だと考えられる。
 10月11日には朝日新聞に、東大副学長の石井洋二郎氏のコメントが掲載された。
 「今回の改革で一番問題なのは、途中から目的と手段が逆転してしまったことだと思います。これからの時代を生きるために英語のコミュニケーション能力が必要であることは明らかですし、WGの答申もその目的自体を否定してはいません。ただ、本来はまず高校教育で基礎力を養い、その成果を問うために大学入試があるはずなのに、入試を変えることで高校教育を変えようとする発想で議論が進んできた。これは逆立ちした考え方です。民間試験はあくまで手段のひとつでしかないのに、スピーキングが含まれているというだけで、これを活用することがいつのまにか目的化してしまった。これでは高校の授業が民間試験対策に走ってしまい、教育がゆがめられてしまう恐れがあります。本末転倒の議論が続いているうちに、何のための入試改革か、忘れられていたのではないでしょうか」
 英語だけではなく、今回の大学入試改革そのものの話の進め方を批判しているようにも読める。いや、そうとしか読めない。

◆先行き不透明な時代のための先行き不透明な入試改革
 改革によって得られるものと、生じる混乱のどちらが大きいか。
 難関国立大学の2次試験にはもともと数百字におよぶ記述式が多く、そのような大学を志望する受験生たちにとっては、大学入学者共通テストに80字程度の記述問題が導入されたとしてもそのための対策に余計な時間を取られる心配はほとんどない。要するに、学力上位層にはこの改革はほとんど影響がない。混乱に巻き込まれる可能性があるのは学力中間層以下の受験生たちである。
 新テストの実施までもう時間がない。早めに混乱を回避する十分な策がとられなければ、新テストを回避しようとする思惑が、受験生の志望校選びに影響を与えかねない。新テストを回避して、結局従来通りの入試を続ける大学に人気が集まるなどという最悪のシナリオもあり得る。
 混乱ばかりをまき散らし「結局のところ、50万人分の記述式解答を採点する業者と4技能型の英語の資格検定試験を実施する業者と『e-ポートフォリオ』を学校に提供する業者が儲かるだけの改革になってしまった」なんてことにならないようにしてほしい。実際、高校の現場からは、「結局某民間教育企業にすべてを牛耳られている。『それでいいのか?』という疑念はあるが、生徒に不利益があってはいけないので、いまは彼らの言いなりになるしかないのが悔しい」との声を多数聞く。
 いまだ先行き不透明な大学入試改革であるが、こうなったらもう、これも先行き不透明な時代を生きるための実戦訓練だと思うしかない。この状況をどう乗り切るか、その姿勢こそが問われているわけである。
 先行き不透明な世の中では、未来予測も損得勘定もあてにはできない。1つ確実なことは、変化の激しい時代を生き抜くためには、たとえ逆風の中でも、自分の目指す方向を指し示し続ける強さが求められるようになるということだ。自分の中にぶれない軸をもっておかないと、世の中の風向きが変わるたびに右往左往することになる。それでは人生、おぼつかない。
 自分がどんな人間で、何のために何を成したいのかを問い続け、そのために必要なことを誠実に学んでおけば、結果的に大学入試改革以降の大学受験でも困ることはないだろう。時代はそのような人間を求めており、そのために大学入試改革が議論されているのだから。


おおたとしまさ 育児・教育ジャーナリスト

1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を歴任。男性の育児、夫婦関係、学校や塾の現状などに関し、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演多数。サイト「パパの悩み相談横丁」を主宰する。著書は『ルポ塾歴社会』『名門校とは何か?』『追いつめる親』『ルポ父親たちの葛藤』『<喧嘩とセックス>夫婦のお作法』など50冊以上。

http://www.asyura2.com/13/nametoroku7/msg/769.html

[ペンネーム登録待ち板7] 東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る <公教育がアブナイ> しろたえ
1. しろたえ[3] grWC64K9gqY 2018年10月29日 00:56:40 : tgrMjnXnxA : HzI7ZPdP5gI[16]
投稿規定読みました。よろしくお願いします。
http://www.asyura2.com/13/nametoroku7/msg/769.html#c1
[政治・選挙・NHK252] 東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る <公教育がアブナイ>
*投稿者注)文中の某民間教育企業とは2007年からの全国学力調査で文科省との強固な関係を築いてきたベネッセのこと。

「東大もちゃぶ台返し!? 大混乱の大学入試改革は、結局何をもたらすのか? これまでの経緯を振り返る」

https://news.yahoo.co.jp/byline/otatoshimasa/20181020-00101152/
おおたとしまさ | 育児・教育ジャーナリスト 10/20(土) 8:14

大学入試改革に関連し、東大は9月25日、英語民間試験の成績の提出を実質的に必須としないと発表した。他大学の方針にも大きな影響を与えそうだ。大学入試改革第1期に当たる学年は、すでに高校1年生になっているというのに、改革の落としどころがいまだに見えない。拙著『受験と進学の新常識』(新潮新書)でも触れているが、これは異常事態である。大学入試改革を巡る2013年からの議論を振り返り、いま何がどこまで決まっていて、決まっていないのかを整理する。

◆いちばん困るのは改革1期生の前の学年
 大学入試改革が2020年度以降に予定されていることは、すでに多くの人が知っているはずだ。ただしその全容はとらえづらく、教育関係者でもない限り、「センター試験がなくなるらしい」「英語は民間業者のテストを使うらしい」などという断片情報を聞いたことがあるだけだろう。
 しかし子をもつ親には切実だ。2002年4月以降生まれの学年から新制度入試を受けることになる。もっと微妙な立場に立たされるのが実はその1つ上の学年だ。現役で大学進学を決めなければ翌年から新制度入試。「ルールががらりと変わる」と言われれば、「現役で勝負を決めておかないと、どうなってしまうかわからない」という不安が湧いてくるのは当然だ。改革の具体的な落としどころが気になる。しかも、「落としどころ」は目指す大学のレベルによっても違ってきそうだ。
 どんな議論が、どこを目指し、どこまで進んでいるのかをおさらいしておこう。
 発端は、2013年10月31日に教育再生実行会議が発表した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」である。高校教育、大学教育、大学入学者選抜のあり方の3つの改革を一体的に実施する提言がなされた。
 知識偏重の1点刻みの大学入試もダメ、事実上学力不問になっている一部の推薦・AO入試もダメ。「大学入学者選抜を、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換するとともに、高等学校教育と大学教育の連携を強力に進める」という方向性が打ち出されたのだ。
 個別の大学の入学者選抜においては、以下のような方針が示された。
・各大学のアドミッションポリシーに基づき、能力・意欲・適性や活動歴を多面的・総合的に評価・判定するものに転換する。
・各大学は学力水準の達成度を判定するほかに、 面接、論文、高校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、多様な方法で入学者を選抜し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。
 さらに「提言」は、現行のセンター試験の弊害を指摘し、代わりに「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「同(発展レベル)(仮称)」の2段階の学力テストを行う方向性を示した。「基礎レベル」は高校で学ぶべきことが達成されているか、「発展レベル」は大学で学ぶための素養が達成されているかを測るもの。そして「達成度テストの「年間複数回実施」「1点刻みではなく段階別の結果」のほか、「外部検定試験の活用」「推薦入試やAO入試に達成度テスト(基礎レベル)を活用する」などのビジョンも示された。特に「年間複数回実施」は改革の目玉とされた。
 欧米先進国の大学入試をまねていることは明らかだった。高校3年生になってから問題集や志望大学の過去問を解きまくって身に付ける「付け焼き刃の学力」では太刀打ちできないようにしようということで、たしかに大改革である。そしてこの方向性自体には前向

◆中高一貫校生にますます有利に!?
 これを引き継いだ中央教育審議会は、2014年12月22日に新しい答申を出し、教育再生実行会議の提言具体化に一歩踏み出した。
 「達成度テスト(基礎レベル)」と「同(発展レベル)」はそれぞれ、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と呼ばれるようになったが、この時点ではまだいずれのテストも年間複数回実施されるという話だった。センター試験のようなマークシート形式だけでなく、記述式の問題を含めることにも言及があった。
 個別の大学の選抜試験については、「学力評価テスト」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、 プレゼンテーション、調査書、活動報告書、入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録などの活用を示唆した。
 このために、高校3年間の学習履歴を記録し大学にインターネット経由で提出するための「e-ポートフォリオ」というシステムがすでに構築されている。各高校はこれを導入せざるを得ない流れだ。ただし、大学側にこれを十分に活用するノウハウや体制があるかどうかは甚だ疑問。システムを導入した高校の教員たちからも「これを一生懸命記入しても、本当に活用されるんでしょうか」との疑問の声が上がっている。
 面白いのは、「大学のレベルによって入試のやり方を最適化しなさい」という趣旨が盛り込まれたことだ。
 スーパーグローバル大学をはじめ、比較的「偏差値の高い大学」では、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を含む学力を、高い水準で評価するようにとのこと。
 「中程度の大学」では知識量のみを問う問題になっていることが多いので、「大学入学希望者学力評価テスト」をうまく活用し、その分、個別選抜で「思考力・判断力・表現力」までをも含む力を試すことに注力しなさいと提案している。
 入学志願者が少なくて「入学者選抜が機能しなくなっている大学」では、せめて「高等学校基礎学力テスト」で高校時代の学習成果を測るようにとしている。
 ここまで踏み込んだ答申を見て、「今回ばかりは本気の改革だ」と、教育関係者も評価した。
 このとき、開成や灘のような従来の進学校が凋落する、という噂が広まったが、大きな間違いである。少なくとも東大合格者トップ10に名を連ねるような進学校では、生徒たちの高い基礎学力を前提に、「主体性・多様性・協働性」や「思考力・判断力・表現力」を育む教育が伝統になっており、今回の改革はむしろ有利に働くと多くの専門家は予測した。有名進学校の教員たちも一様に、手ぐすね引いて改革を歓迎した。
 特に基礎学力の仕上がりが早い中高一貫校の生徒は、複数回行われる「基礎学力テスト」や「学力評価テスト」において早い段階で最高レベルの成績を収め、個別の大学の入試対策に専念することで、さらに有利になることが予見された。私立中高一貫校の入試広報担当者も「これはチャンス」とにらんだ。
◆結局、それほど変わらない
 ところが、さらに具体的な実施方法を検討する段階になると、改革は急にトーンダウンした。特に公立高校の教員から「複数回実施」への反対意見が相次いだ。現在のセンター試験より前倒しの日程で試験が実施されれば、学校での指導が間に合わなくなるというのだ。結果、2016年3月31日に発表された「最終報告」では次のように表明されている。
・「高等学校基礎学力テスト」は2019年度から試行実施するが、本格実施は次期学習指導要領への移行時期を鑑み、2023年度以降とする。
・「大学入学希望者学力評価テスト」の複数回実施はいったん見送り、引き続き検討する。
 2015年12月22日に文部科学省の専門家会議が「大学入学希望者学力評価テスト」の「記述式問題イメージ例【たたき台】」を公表すると、「どうやって採点するのか?」が論点きな評価が多かった。
になった。記述式問題は採点基準に幅ができやすいうえ、50万人を超える答案を短期間でどうやって採点するのかということだ。
 マークシート方式よりも先に記述式の試験を行う案が検討されたが、実施時期が前倒しされれば高校の指導カリキュラムに影響が出る。記述式は各大学が採点するという案も検討されたが、日本私立大学団体連合会は「入試準備などと並行して新テストの採点をするのは実質的に不可能」との意見書を出した。
 これらの議論を踏まえ、文部科学省は2017年7月13日に「高大接続改革の実施方針等の策定について」を発表した。
 要するに、「センター試験の代わりに『大学入学共通テスト』が実施される。 その国語と数学については、記述式問題を導入する。記述式問題の採点に関しては、大学入試センターが民間の業者に委託して行う。個別の大学入試では、小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなども実施される。英語においては外部検定試験も導入する」というあたりが、現在のところの既定路線だ。
 つまり、それほど変わらない。
 文部科学省の担当者が悪いわけではないだろう。もともと広げられた大風呂敷が、どだい無理筋だったのだ。「それでは教科書の履修範囲を終えられない」という声が現場から上がるのは、日本の大学入試が学習指導要領と検定教科書にがんじがらめにされている以上、しかたがないことだ。入試問題と学習指導要領と検定教科書が三つ巴になっている限り、高校の授業の進度と内容に入試が縛られるのは宿命である。
 アメリカの大学を受験するときに必要になる標準学力テストSATは、年複数回実施されている。学習指導要領も検定教科書もないので、高校の授業の進度はバラバラという大前提。SATで早くいいスコアを取りたければ、自分で勉強しなさいということだ。
 学習指導要領と検定教科書を入試から切り離す。そこまで腹をくくらなければ、年複数回実施などできるわけがない。そうでもしなければ、学習指導要領に定められた検定教科書の内容を「試験範囲」とする「教科書絶対主義」「知識偏重型教育」からいつまでたっても離れられない。そこまでやるつもりなのかと、2013年当初は期待したが、そうはならなかった。現実的には非常に難しいことはわかっていたが、それでも一縷の望みが消えたときにはがっかりした。
 念のため付け加えるが、学習指導要領や検定教科書の内容が悪いといっているわけではない。その影響が強すぎることが大学入試改革のネックになっているという指摘だ。

◆優秀な受験生には「ファストパス」が用意される
 個別の大学の入学者選抜についても触れておこう。
 具体的な議論はまだあまり聞こえてこない。ただし、文部科学省の方針を受けて国立大学協会は、将来的に入学定員の3割をAO・推薦入試等にあてるという目標を掲げている。また、文部科学省はAO入試においても「大学入学共通テスト」またはそれに準ずる学力評価の実施を必須にすると発表している。ちなみに、2020年度以降、「一般入試」は「一般選抜」に、「AO入試」は「総合型選抜」に、「推薦入試」は「学校推薦型選抜」に名称が変更される予定。
 2016年に東大と京大が戦後初となる推薦入試を実施したのには、他大学でも入試で小論文・面接・集団討論・プレゼンテーションなどを実施することへの先鞭をつける意味合いが多分にある。現在は各大学100人の枠だが、今後はこれを拡大する方針だ。
 東大の推薦入試で理学部に合格した都内男子校出身者に聞いた。東大推薦入試の枠は「各高校から男女1名ずつ」と決められ、男子校からは1名のみの枠だ。
 「高3の夏に化学グランプリ日本大会で銀賞に輝いたことが評価されました。1次選考は、志望理由、大学卒業後の将来像、そのほかのアピールという3種類の書類審査だったので、学校の国語の先生に何度も相談して作成しました。2次選考は普通の面接で、まず志望理由を説明し、約20分間の口頭試問が行われました。提出書類の記述に関して、理学的な視点からの疑問が投げかけられ、その場で回答しなければいけません。いくつか答えられない質問もありましたが、一生懸命答えようとする姿勢を見せて乗り切り、不安でしたが、合格しました」
 20分程度の口頭試問で東大入試が終わる。あっさりしている印象だが、高校の調査書や学校以外での実績、3種類の論文提出で、学力の高さは保証されている。本人も「一般入試で受けても合格したと思う」と自信をもっていた。優秀な受験生に、無駄な受験対策をさせなくてすんだわけだ。
 付け焼き刃ではない学力を高いレベルで身につけてきた高校生には、今後ますますこうした「ファストパス(入場優先券)」と多様な選択肢が用意されることになるだろう。
 私大にもようやく動きが見え始めた。2018年6月、早稲田大学は2021年の入試から、入試のあり方を改革することを明言した。特に看板学部の政治経済学部では、出題科目を全面的に見直す。これまで大学独自問題による3科目受験が可能だったが、2021年以降は全受験生に大学入学共通テストの英数国+選択科目の4科目を課し、さらに独自入試も行う。独自入試は、教科の枠を超えた合科型の形式をとるとのこと。英語の民間資格・検定試験も全員に課す。
 これまで私大と国公立大は、入試科目数で差別化がなされていたが、その垣根が今後あいまいになる可能性がある。

◆センター試験を変える意味はあるのか?
 2017年12月、大学入学共通テストの試行テストが公開された。特に記述式が出題された数学と国語に注目が集まった。
 地方の公立進学校の教員に評価を聞くと、「今回はかなり頑張ってつくった良問だと思う」「たとえば数学は、単なる計算力では太刀打ちできないようになっている」と、概ね好評だった。ただし「問題のレベルが、一部の上位層にはちょうどいいが、それ以外の高校生には難しすぎるのではないか」という声も聞いた。
 実際、国語の記述式問題では完全正答率が0.7%の問題があり、数学でも全3問の正答率が1割未満だった。2018年6〜7月に朝日新聞と河合塾が共同で755大学を対象に行った「ひらく 日本の大学」という調査によると、名古屋大や法政大、近畿大など10%の大学が「難しい」と答え、「やや難しい」という大学も43%もあった。同10月4日の朝日新聞によると、日本女子体育大の入試担当者は「このままの難易度では(正答率が低すぎて)差が付かないのではないか」とコメントしている。
 関西の私立中高一貫校の校長も「うちの生徒にはいいが、一般論としたら難しすぎるのではないか」と懸念を示した。さらに国語の問題については「あれが国語の読解力なんですかね」とも。思想の練り込まれた長文を立体的に読む力というよりは、雑多な文字情報の中から必要な情報だけをパッとすくい取る能力を試すような問題が目立ったからだ。
 お茶の水女子大学は「国語の記述式問題では、どのような能力をどのような制度で測れるのか、課題が多いのではないか」と指摘した(2018年10月4日朝日新聞より)。
 試行テストと従来のセンター試験を比べたとき、見た目上のいちばんの違いは、問題文や課題文の体裁である。従来のテストであればほんの数行で終わっていたはずの問題文が、何行にもおよぶ会話文になっていたりする。日常生活や実社会を意識させるために、会話文や図表などを多用し、ストレートに問いを投げかけてはこないのである。その手法は、公立中高一貫校の適性検査にそっくりだ。
 まわりくどい問題文をわざわざ読ませることには課題発見能力も測るという意図があるのだとは思うが、問題文が長く婉曲的になればなるほど、文章を速く正確に読み取るのが得意な受験生に有利になる。要するに読解力あるいは速読力の勝負になり、教科そのものの能力が見えづらくなる。たとえば驚異的な数学センスをもっている受験生でも、読解でつまずいてしまうかもしれない。それは教科のテストとしてはいかがなものか。テストの体裁を変えることを目的化して、本来測るべき能力が正確に測れなくなるようなことのないように、今後の調整を行ってほしい。
 ある進学校の校長はこんなことも懸念していた。「記述式の採点は専門の業者が行うというが、いくら専門の業者でも、50万人分の答案を採点できるほど専門の職員がいるとは思えない。実際は大量のアルバイトに採点させることになるのではないか」。結局は素人に機械的に採点させるのなら、記述式問題を出す意味があるのかという、もっともな疑問だ。
 2018年10月4日の朝日新聞によれば、「採点基準を厳密にしても、採点者によって偏りがでる可能性は否定できないと思う」など懐疑的な意見が大学側からあり、全体の53%の大学が「採点の公平性に疑問」の声を上げている。試行テストでは、受験生の自己採点と入試センターの採点結果が一致しない例も多く、80%の大学がこれを問題視した。
 また「日本テスト学会」は試行テストに見られた「5つの選択肢の中から適当なものをすべて選べ」というような多肢選択問題について、実際は選択肢ごとにそれが適切か否かの二者択一をしているにすぎず、「より深い思考力」を求めていることにはならないと指摘する。さらに「テスト理論」の観点から、5問正答のみを正答とし4問以下の正答は0問正解と同じとみなしてしまうことについて、「貴重な個人差情報を捨てる」と批判的な声明を出している。
 以上を総合すると「だったら記述式問題も多肢選択問題もなしにして、現行のセンター試験のままでいいじゃないか」という結論になりかねない。
 報道によると、テスト理論の専門家がすでに再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正がされないまま今回の試行テストが実施されたとのこと。だとすると、今回の試行テストは「見せ球」の可能性が高い。このままではGOできないとわかっているが、一見していままでとは明らかに違う案を見せておく。そのうえで、公に批判を浴びる中で現実的な案に収斂していくのが文部科学省の作戦なのかもしれない。無理筋な改革を押しつけられたときに官僚がとるべきプロセスとしては間違ってはいない。ただしそれは、最終的な着地点が現行のセンター試験を「お色直し」した程度のものになることを見越しているからこその作戦だと言えなくもない。

◆東大が英語民間試験を実質不採用
 数学や国語から遅れることおよそ3カ月、大学入学共通テストの英語の試行テストが実施され、公開された。これまたいままでのセンター試験とはだいぶ装いが違う出題方式が目立った。しかしそれと前後して、ちゃぶ台返しのような衝撃が、大学入試改革関係者を直撃する。2018年3月10日、東大が、英語の民間検定試験を合否判定に利用しない可能性を表明したのだ。
 冷めた空気が流れる中、2018年3月26日には大学入学共通テストの英語で活用される4技能を測る民間試験として、英検(新型)、ケンブリッジ英語検定、GTEC、IELTS、TEAP、TEAP CBT、TOEFL iBT、TOEICの8種が合格したことが発表された。ちなみに従来型の英検が不合格とされたのは、1次試験・2次試験とわかれており、「1度の試験で4技能のすべてを評価する」という要件を満たしていないからだ。
 2018年4月3日の「東京大学新聞」では、東大の阿部公彦准教授が英語の民間検定試験導入だけでなく大学入試における4技能評価重視の風潮そのものを一般論として批判している。
 「共通テストのプレテストでも民間試験と同様、遊園地の混雑度をウェブサイトで調べる問題など、日常生活の具体的な状況が題材の問題が多く見られた。しかし『これでは英語力ではなく情報処理の問題だ』」というのだ。
 先述、関西の私立中高一貫校の校長が、国語のプレテストを「あれが国語の読解力なんですかね」と疑問を呈したのと同じ視点である。
 このタイミングで民間検定試験導入に対するネガティブな姿勢を東大が表明したことからは、「いまさら大学入試改革の既定路線をひっくり返すことは難しい。しかしこのままではまずい。自らがいち早く態度を表明することで、他大学の方針に少しでも影響が与えられれば」という思いが感じられる。
 2018年7月12日、東京大学のワーキンググループは「出願にあたって(英語の)認定試験の成績提出を求めない」を第一優先順位の選択肢とする答申を発表した。同8月10日に朝日新聞がまとめた調査では、英語の民間試験について、82の国立大学のうち37大学が「活用するか未定」と回答。具体的な方針を示しているのは13大学にとどまった。
 9月25日、東大はついに、英語民間試験の成績提出を実質的に必須としないとの結論を出した。英語民間試験活用に対して方針を保留していた多数の国立大学の今後の判断に大きな影響を与えることは間違いない。大学入試改革の風向きが、ここに来てさらに大きく変わった。
 前出「ひらく 日本の大学」によると、英語の民間試験の活用については46%の大学が「問題がある」と回答した。同じ調査では、共通テストについて「利用したい」が69%だった。前年の同調査の88%から19ポイントもの下落だ。試行テストの問題を見ての翻意だと考えられる。
 10月11日には朝日新聞に、東大副学長の石井洋二郎氏のコメントが掲載された。
 「今回の改革で一番問題なのは、途中から目的と手段が逆転してしまったことだと思います。これからの時代を生きるために英語のコミュニケーション能力が必要であることは明らかですし、WGの答申もその目的自体を否定してはいません。ただ、本来はまず高校教育で基礎力を養い、その成果を問うために大学入試があるはずなのに、入試を変えることで高校教育を変えようとする発想で議論が進んできた。これは逆立ちした考え方です。民間試験はあくまで手段のひとつでしかないのに、スピーキングが含まれているというだけで、これを活用することがいつのまにか目的化してしまった。これでは高校の授業が民間試験対策に走ってしまい、教育がゆがめられてしまう恐れがあります。本末転倒の議論が続いているうちに、何のための入試改革か、忘れられていたのではないでしょうか」
 英語だけではなく、今回の大学入試改革そのものの話の進め方を批判しているようにも読める。いや、そうとしか読めない。

◆先行き不透明な時代のための先行き不透明な入試改革
 改革によって得られるものと、生じる混乱のどちらが大きいか。
 難関国立大学の2次試験にはもともと数百字におよぶ記述式が多く、そのような大学を志望する受験生たちにとっては、大学入学者共通テストに80字程度の記述問題が導入されたとしてもそのための対策に余計な時間を取られる心配はほとんどない。要するに、学力上位層にはこの改革はほとんど影響がない。混乱に巻き込まれる可能性があるのは学力中間層以下の受験生たちである。
 新テストの実施までもう時間がない。早めに混乱を回避する十分な策がとられなければ、新テストを回避しようとする思惑が、受験生の志望校選びに影響を与えかねない。新テストを回避して、結局従来通りの入試を続ける大学に人気が集まるなどという最悪のシナリオもあり得る。
 混乱ばかりをまき散らし「結局のところ、50万人分の記述式解答を採点する業者と4技能型の英語の資格検定試験を実施する業者と『e-ポートフォリオ』を学校に提供する業者が儲かるだけの改革になってしまった」なんてことにならないようにしてほしい。実際、高校の現場からは、「結局某民間教育企業にすべてを牛耳られている。『それでいいのか?』という疑念はあるが、生徒に不利益があってはいけないので、いまは彼らの言いなりになるしかないのが悔しい」との声を多数聞く。
 いまだ先行き不透明な大学入試改革であるが、こうなったらもう、これも先行き不透明な時代を生きるための実戦訓練だと思うしかない。この状況をどう乗り切るか、その姿勢こそが問われているわけである。
 先行き不透明な世の中では、未来予測も損得勘定もあてにはできない。1つ確実なことは、変化の激しい時代を生き抜くためには、たとえ逆風の中でも、自分の目指す方向を指し示し続ける強さが求められるようになるということだ。自分の中にぶれない軸をもっておかないと、世の中の風向きが変わるたびに右往左往することになる。それでは人生、おぼつかない。
 自分がどんな人間で、何のために何を成したいのかを問い続け、そのために必要なことを誠実に学んでおけば、結果的に大学入試改革以降の大学受験でも困ることはないだろう。時代はそのような人間を求めており、そのために大学入試改革が議論されているのだから。


おおたとしまさ 育児・教育ジャーナリスト

1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を歴任。男性の育児、夫婦関係、学校や塾の現状などに関し、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演多数。サイト「パパの悩み相談横丁」を主宰する。著書は『ルポ塾歴社会』『名門校とは何か?』『追いつめる親』『ルポ父親たちの葛藤』『<喧嘩とセックス>夫婦のお作法』など50冊以上。

http://www.asyura2.com/18/senkyo252/msg/817.html

[政治・選挙・NHK252] 「受験生を利権の被害者にしてはいけない」 2020年大学入学共通テスト 英語民間試験導入問題(対談 中島京子x阿部公彦)
連載対談  中島京子の「扉をあけたら」 2018.11

2020年度から、センター試験に替えてはじまる大学入学共通テスト。そこでは英語の試験を8種類の民間業者の試験で代用しようという動きがある。業者ありきで推し進められる入試の民営化に反旗を翻している東京大学教授阿部公彦さんに、いま英語教育の現場で何が起こっているのか、お話を伺いました。

http://bp.shogakukan.co.jp/news/0101/

第二十六回 
受験生を利権の被害者にしてはいけない
ゲスト 阿部公彦(東京大学教授)

◆英語の四技能化は、誰のため?

中島 阿部さんは、ご専門の英文学はもちろん、日本近代文学に関しても魅力的なご本をたくさん出されていて、楽しく拝読しているのですが、今回の『史上最悪の英語政策 ウソだらけの「4技能」看板』(ひつじ書房)は、大学の先生として、政府の英語政策に怒り爆発という感じです。
阿部 これでもずいぶんソフトに書いたつもりなのですが……(笑)。
中島 英語学習には「読み、書き、話し、聞く」四つの技能が必要です、と言われると、たしかにそうでしょうと思うんです。でもその先がおかしい。四技能が必要だから、大学入試の英語は英検やTOEIC、TOEFLなどの民間業者の試験に任せる。論理がひとっ飛びしていて、まったく理由がわからない。
阿部 謎です。東大は入試の出願資格にこの民間試験の成績を提出必須としない、という方針を発表していますが、今回の英語政策の方針を決めたのが「英語教育の在り方に関する有識者会議」。この会議にしても、メンバーの選び方がひどく恣意的で反対意見を言いそうな人はほとんど入れていないし、民間試験の導入を検討する協議会なんて、民間の英語試験業者がずらりと名を連ねているんです。民間試験を導入するかどうかを話し合う会議に、利害関係者がいること自体おかしいでしょう。
中島 本当ですよね。ゴールは学生の四技能習得ではなく、民間業者を大学入試に参入させることなのかと思えてきます。
阿部 もとをたどれば、一九八九年三月に文部省(当時/現・文部科学省)の英語の学習指導要領が、コミュニケーションを重視するという方向に変わったんです。
中島 そんな昔に! コミュニケーションというのは、具体的には会話を優先するという意味ですよね。
阿部 そうです。それから三十年近くその方針で教育してきたけれど、やっぱりうまくいかない。それはコミュニケーション重視の英語教育がだめだったということです。誰が考えても、明白です。
中島 それなのに、今回の改革も「コミュニケーション重視」だと。自民党の遠藤利明議員は「中高六年間も英語をやってきたのに、パーティーでワイワイ英語がしゃべれない。そんな英語教育を直しましょう」という持論を改革の根拠にしています。パーティーでワイワイなんて、日本語でもしないでしょうとツッコミを入れたくなりましたが(笑)。
阿部 遠藤さんは数年前に大学入試の英語をTOEFLで代用しようという提言を出した教育再生実行本部長でした。
中島 民間試験導入という政策が、いかに無知と思い込みに基づいているかということですね。
阿部 三十年やってもダメだった事実にまったく目を向けずに、今回なぜかさらにその方向に舵かじを切ろうとしているわけです。読み書きやヒアリングならまだしも、スピーキングのテストをどうやって一律に実施するのか。大学入試の場合、毎年五十万人くらいの学生が受験するわけでしょう。
中島 ひとりひとりちゃんと採点しようとすると、ものすごい数の試験官が必要になりそう。
阿部 日本語でも、友だちとの井戸端会議みたいなおしゃべりなら日常的にしていると思いますが、知らない人の前できちっと手順を踏んで論理的に物事を話すのは結構難しい。そのための特別な訓練が必要です。
中島 採点する側にも、相当なスキルが求められそうです。
阿部 仮にスピーキングの試験を導入するとしても、まず日本語でやって、発展段階として英語でやる。それが筋だと思うんです。日本語ですら経験のないことを、いきなり英語でやろうとしている。それで英語力が上がるというのだから、もうちゃんちゃらおかしいとしか言いようがありません。
中島 受験生をおかしな英語政策の被害者にしないでほしい。だいいち、遠藤さんが目指す「パーティーでワイワイ」のようなインフォーマルな会話は、じつは難易度が高いと、阿部さんは書かれていましたね。
阿部 そもそも西洋には歴史的に公の場で口頭でいろんなことを決めてきた伝統があるんです。ギリシャやローマの時代に、レトリックをふんだんに使ったパフォーマンスを人前で行う技術が発達した。その技術が後世に伝授されてきました。二千年以上の歴史の延長上に、今のパーティーワイワイがあるんだと思います。
中島 それは面白い考察ですね。
阿部 西洋では、印刷技術が発達した十七〜十八世紀頃には、まず宗教関係の本がたくさん出版されました。次いで出されたのがマナーの本なんです。マナーの中でも一番重要視されたのは人前でどう話すか。あまり病気の話をするなとか、自分の奥さんや召し使いの話ばかりするなとか。プライベートなことをしゃべるべきではないというルールが書いてある。西洋社会では、その頃にコミュニケーションのマナーの一環としてプライベートとパブリックを区別するようになったのだと思います。
中島 なるほど、欧米の政治家は演説がうまいはずです。それにひきかえ日本の政治家は……。
阿部 海外の首脳の演説は、そのまま書き起こしてもある程度ちゃんとした文章になっています。日本の政治家の演説は、そうはいきません。
中島 書き起こすまでもなく、グダグダな話し方をする人が多いですから(笑)。
阿部 現在の英語は、ギリシャ・ローマ時代以来の話し言葉レトリックの伝統の上に築かれています。話し言葉が先で、書き言葉のほうが後に来た。たとえば、話し言葉だと口から発した瞬間からどんどん音が消えていくでしょう。だから、わかりやすく列挙したり、繰り返しが多くなるんです。英語の場合、書き言葉にも繰り返しが多い。対して、日本語は必ずしも話し言葉のレトリックをベースにした書き言葉ではありません。漢文をもとに発展してきたのが日本語の書き言葉だったので、ポイントは雄弁さよりも簡潔さにある。明治の言文一致運動のときに問題になったのも、漢文調からどう離脱して、書き言葉をしゃべり言葉に近づけるかということでしたから。日本人は文章を読むときとしゃべるときは別のモードなんです。だから英語風に繰り返しや列挙を使って拡大していくようなタイプの文章は、饒じょう舌ぜつ体と言われたりしてちょっと軽く見られる。
中島 しゃべり言葉と書き言葉が違うという感覚自体が、英語にはない。とても日本語的なものなんですね。それはすごく面白い。そんなところにある文化の違いを知ることにも、意味があると思います。

◆ピンポン英会話なんて、誰もできない

阿部 今回の「四技能」に対する疑問に戻すと、日本人は書き言葉と話し言葉を分けて考えるけれど、英語は言文がかなり一体となっている。だから読むことを通してしゃべるリズムも身につけられるし、もちろん逆もある。ネイティブスピーカーの人に「いま日本では訳読文法派と英会話派が対立して、血で血を洗う戦いになっている」と話すと「えっ? その二つ何が違うの」って、驚かれます(笑)。
中島 英会話派からは、訳読や文法は悪者扱いですが(笑)、文法をわかってないと、ちゃんとしたスピーキングはできないんじゃないでしょうか。
阿部 英語ではもともと一体化しているものを、なぜまるで違う領域の知的活動であるかのように言うのか。まったくナンセンスです。たしかに六十年ぐらい前には、英会話なんて必要ないという偏った風潮がありました。極端なコミュニケーション軽視です。これも日本的な「言」と「文」の不一致のあらわれだったのでしょう。特に大学の英文科などでは、英語をペラペラしゃべりたいという人は、何となくさげすまれていた。
中島 “ペラペラ”という音に、どこか馬鹿にしたニュアンスが含まれていますよね。
阿部 当時は英文の本がちゃんと読めなければ、知的ではないという時代。そうした英語教育の方法に対する反発が非常に強くなった結果、この三十〜四十年はコミュニケーション重視に逆振れしたのでしょう。たしかに当時の読解偏重は度が過ぎていた。誤っていたと私も思います。が、今度は反対に偏りすぎている。
中島 そうですね。どうしてそんなに対立しなければいけないのかよくわからない。ネットに、ある英語の先生の意見が載っていたのですが、とにかく英語をいったん和訳することほど害のあるものはない。英語で考えなきゃいけない。英語で話しかけられたら、ピンポン玉を打ち返すようにパーンと答えられなきゃいけない。そういう練習をしなきゃいけないと。
阿部 面白いですね。日本語ですら、ピンポン玉みたいにやりとりするのはむつかしい。そうだ、コミュニケーション英語が目指しているものを「ピンポン英語」と名付けたらどうでしょう(笑)。日本人には、英語圏の人は、しゃべるのがすごく速い、というスピード幻想があるんです。だから、グローバル化されたいまの世を生き抜くビジネスパーソンは、このスピードに遅れてはいけない。そんなロジックでスピードを売りにしたピンポン英語教育が依然として流行しています。それも私は、間違っていると思うんです。
中島 えっ、違うんですか? 私も少しだけアメリカで暮らした経験がありますが、最初はみんな早口で何を言っているかわからず苦労しました。
阿部 英語圏に行くと、とにかくリスニングができない。それは、話すスピードに付いていけないというより、もっと別のことだと思うんです。だって英語圏の人が日本人より言語処理能力が異様に速いということはありえない。だからスピードが原因だと日本人が感じているのは、単に聞き方のこつだと思うんです。
中島 ご本にも、日本語は高低のアクセント、英語は強弱のアクセントでできている。リズムが違うから習得がむつかしいんだと書いてありましたね。
阿部 英語圏に住むと、半年ぐらいたった頃に突然英語がわかるようになると、よく言うでしょう。それは英会話のスピードに対する処理能力が上がったわけではなく、英語的な会話の音のリズムに体がようやく慣れたということなんです。
中島 そんなふうに言語の特徴から教えてもらうと、英語に対するハードルが低くなる気がします。
阿部 読めないとか書けないというのは、しょせん机上のもの。辞書を引いたり、人に教えてもらうこともできる。でも周囲の人の会話を聞き取ることができないと、自分の存在そのものの足元が崩れるような根源的な不安に襲われると思います。
中島 自分がそこにいる世界が把握できなくなるわけですから、英語に対するコンプレックスがさらに強くなりますね。 
阿部 でも、それは自分の英語力とイコールじゃなくて、リスニングの問題なんです。私の考えとしては、語学はまずはリスニングから。一言もしゃべれなくても周りの人が言っていることがわかるようになれば、一体感があるし、パーティーに参加しても、ワイワイした気分になれます(笑)。

◆実用英語は、AIに代替される

中島 語学なんていうのは、その国で育てば、誰だってしゃべれるようになると言う人もいるじゃないですか。でも、その国で育つということは、なんにもしゃべれないまま、お母さんやお父さんがしゃべっていることをずっと聞いている。
阿部 それも、全人生をかけて。
中島 すごく長い時間聞き続けて、やっと「パパ」とか「ママ」とかの単語を発するわけでしょう。
阿部 まったく言葉に関する認識が浅薄だなと思います。わたしは「英語教育の在り方に関する有識者会議」にも、作家や哲学者、言語学者などを入れるべきだと思うんです。残念ながら入っているのはほとんど業者ですが……。でもこれは文科省だけではなく、日本の公共事業の典型的なやり口なんです。割と最初から出来レースみたいになっている。役人たちもみんなそれに慣れっこになっているから、なあなあで済ましちゃう。
中島 でも、今回は教育の問題です。対象は未来を担う子ども、若者なんだから、次元が違います。
阿部 しかも共通テストだけではなく二次試験まで民間試験にする方向に持っていこうとしているんです。そうすると大学入試は完全に民営化される。つまり教育を一種の利権争奪の場にしようという政策です。業者さんだってそんなことは望んでいないのに、政治のほうがそれをけしかけている。利権を生み出すことで、お金が政治家に戻ってくるようなシステムをつくろうとしているわけです。
中島 それによって英語ができるようになればまだいいけれど、正反対の方向に向かっているのは、日本にとってもう悲劇でしかない。国際競争力も落ちるし、国力が失われていく感じがすごくしますね。
阿部 もうひとつ根っこにある大きな問題は、「言葉なんてものは、とにかくやりとりができりゃいいんだ」という読み書きに対する軽視。つまり「知」に対する侮蔑です。今回の入試改革の隠された目的は、一種の階級化を引き起こそうとすることではないかという気がするんです。一般国民は英語の非常にベーシックなスキルだけ身に付ければいい。知的な英語力は要りません。あなたたちは読み書きをする必要がないんですというメッセージを明らかに出している。それは英語に関してだけではなく、恐らく国語にも及びつつある。英語のことは完全にその一部で、その向こうにある巨大なトレンドは見逃せないと思います。
中島 最近、やはり「教育改革」の一環で、高校の国語の教科書から近現代の文学が外されると聞きました。大騒ぎしてみんなで止めないと大変なことになってしまう。まさかとは思いますが、国は・バカ”な国民をつくりたいっていうことなのでしょうか。
阿部 思考力や判断力は邪魔でしかない。言うことを聞く従順な国民をつくりたいんです。TOEICは企業の人がよく使いたがる英語のテストですが、アメリカ版TOEICのサイトには「使える労働者を揃そろえるための道具」だという内容が堂々と書いてある。TOEICは、もともと従業員英語。企業に使われる人のための英語なんです。それをいくら強化しても自分で主体的に判断する英語はとても身に付かない。
中島 とすると、日本政府にとって、もう大学はアカデミズムの世界ではないと。
阿部 本当に危機的だと思います。極論ですが、このままだと大学は社畜生産工場になってしまいます。
中島 この間、フランスに帰る姉を見送るために成田空港に行ったら、コンビニの店員さんが自動翻訳機を使っていたんです。中国の人に対して「このカードを使うにはあなたではなく、あなたの娘さんのパスポートが必要です」と話しかけると、機械が瞬時に訳して、相手も納得していました。
阿部 すごいですね。
中島 今後こういう現場では自動翻訳機がどんどん使われていくことになるでしょう。AIが発達して翻訳の精度もどんどん上がっていく。これこそ究極の実用英語。いま政府が目指している英語の到達点ですよね。
阿部 少なくともコミュニケーション英語を推進しようとしている人たちは、そういうレベルの実用英語を目指していますね。
中島 テクノロジーによって代替可能な英語なら、そこに学習という努力は必要なくなりますね。
阿部 まさにそこが問題なんです。いまの日本ではあきらかに「知」の権威が失墜しています。言葉でも、自然の摂理でも、何かを無性に知りたくなるのは、たとえば神のことを知りたいと思うのと同じ気持ちだと思うんです。どんな時代になってもそういう神聖な気持ちは消えないし、それが心の豊かさであり、人間文化を支えるものだと思うんです。だから、どんなに大衆化して「知」の権威が失墜したとしても、襟を正す瞬間は訪れると思うし、それがないと倫理やモラルも成り立たない気がします。
中島 いまの日本は、だいじなものを見失っていると感じます。人は、実利だけではまったく説明のつかない、いろんなもやもやをいっぱい抱えて生きている。言葉が豊かであれば、そのもやもやの正体を言語化することもできるし、誰かに伝えることもできる。それが「知」に対する欲求にもつながっていく。言葉の豊かさを失うというのはすごく危険な状況なんだと、気づいてほしい。利益誘導型の政策によって犠牲になるのは、これからの日本を支えていく子どもたちなのですから。

構成・片原泰志

http://www.asyura2.com/18/senkyo252/msg/819.html

[お知らせ・管理21] 2018年11月 削除依頼・投稿制限・等管理スレ。突然投稿できなくなった方も見てください。 管理人さん
4. しろたえ[4] grWC64K9gqY 2018年11月12日 00:40:58 : tgrMjnXnxA : HzI7ZPdP5gI[18]
お世話になっています。ちょっと余裕がなく、やっとご連絡しています。

先月、ペンネーム登録で試行錯誤していたのですがなんとか登録できたみたいなのでこれから安倍政権の公教育破壊について揚げていこうと思います。
なぜかペンネーム登録待ち板に自分の投稿が反映されなかったのですが、数日後みたら上がっておりました。原因はよくわかりません。

ついでに、常々知りたいと思っていたことを要望します。

☆投稿の文字の太字、色付けの仕方がわからない。やりかたを図示してください。

☆画像、動画を入れ込むのは限られた人だけなのでしょうか?そうでないなら、やりかたを図示してください。

☆ツイッターの埋め込み方が分かりません。IT初心者でもわかるように図示してください。

以上、対応してくださると私の投稿も格段に面白くできると思います。
よろしくお願いします。



http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/541.html#c4

[お知らせ・管理21] 2018年11月 削除依頼・投稿制限・等管理スレ。突然投稿できなくなった方も見てください。 管理人さん
10. しろたえ[5] grWC64K9gqY 2018年11月13日 23:12:17 : tgrMjnXnxA : HzI7ZPdP5gI[19]
管理人さんへ

以下の点、みなさんお分かりなのでしょうか?こういうことがわからないと新規に投稿する人が増えないと思います。ご教示よろしくお願いいたします。

☆投稿の文字の太字、色付けの仕方がわからない。やりかたを図示してください。

☆画像、動画を入れ込むのは限られた人だけなのでしょうか?そうでないなら、やりかたを図示してください。

☆ツイッターの埋め込み方が分かりません。IT初心者でもわかるように図示してください。

http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/541.html#c10

[お知らせ・管理21] 2018年11月 削除依頼・投稿制限・等管理スレ。突然投稿できなくなった方も見てください。 管理人さん
14. しろたえ[6] grWC64K9gqY 2018年11月15日 00:26:17 : tgrMjnXnxA : HzI7ZPdP5gI[20]
≫13 てんさいさんへ

お手数おかけします。

htmlタグといわれてもさっぱりわからないほどIT苦手です。

でもこういうことがわからないと阿修羅は活性化できないと思いますので
どうぞよろしくお願いします。


http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/541.html#c14

[政治・選挙・NHK254] 2021年実施の国立大学共通テスト 迷走する英語入試 キーマンは下村博文か 竹中平蔵らも蠢く <公教育がアブナイ>


2021年度の国立大入試ではセンター試験に代えて大学入学共通テストが実施されるという。とりわけ英語民間試験については、交付金で首根っこを押さえられている国大協は承諾せざるを得なかったが、東大・名大など合否判定に使わないとする勇気ある決断を下す大学が出てきている。
最近では岩手県立大の英断が光っている。


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英検など入試活用 判断分かれる
11月28日 13時18分 https://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/20181128/6040002740.html


大学の入学試験に3年後に導入される「英検」などの英語の民間試験について、岩手県立大学は合否の判定に使わないことを決めました。
県内では岩手大学が活用を決めていて、各大学で判断が分かれています。


3年後・2021年の大学入試では、現在の「センター試験」が「大学入試共通テスト」に代わり、英語では、話す力や書く力もみる「英検」や「TOEIC」など複数の民間試験が導入されます。
この民間試験については、合否の判定に使うかどうか大学によって対応が分かれていますが、岩手県立大学は2021年の入試では合否の判定に活用しないことを決めました。
理由について県立大学はことし7月に行った高校へのアンケート調査で、県内で受けられる試験が限られることや、交通費や検定料など経済的な負担がかかるなどと説明してます。
一方で、2022年以降については「未定」とし、今後対応を検討することにしています。
英語の民間試験を巡っては県内では、岩手大学が活用を決めていて、大学によって判断が分かれています。


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この民間入試導入には、モリカケどころではない闇がある。受験生のレベル的にベネッセのGTECがほぼ独占すると見られるが、問題の質、試験環境等、非常に怪しい。ベネッセは2007年度から実施されている全国学力テストで自民党文教族(安倍の派閥、清和会議員=日本会議)と強力な関係を築いてきた。(民主党政権下で抽出方式に変わったが、安倍二次政権で悉皆に) 民間試験導入までの有識者会議には利害関係者が含まれ、キーマンは下村元文科大臣とされている。


 


民間試験導入の制度設計責任者は当時中教審会長であった安西元慶応塾長。東大の発表前にでた読売の下の提灯記事はかなりの反響を呼び、逆効果となった模様 (https://togetter.com/li/1270181)


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大学の実力 異見交論55 「東大の見識を疑う」安西祐一郎・中央教育審議会前会長 
(読売教育ネットワーク)
http://kyoiku.yomiuri.co.jp/torikumi/jitsuryoku/iken/contents/55.php


 2020年度に始まる「大学入学共通テスト」に導入予定の民間英語試験(認定試験)を東京大学が活用するかどうかに注目が集まっている。この問題では、東大ワーキンググループ(WG)が7月、「活用しない」を最優先とする答申を五神真学長に出し、文部科学省が8月、実施に向けた進捗状況を公表した。こうした現状に対し、高大接続改革の設計に当たってきた安西祐一郎・中央教育審議会前会長は「答申が採用されて英語入試が矮小化されるなら、東大は時代の牽引者として国民が負託すべき大学に値しない。そんな大学に多額の税金を注入する必要はない」という。東大の責任とは、何か。(聞き手=松本美奈)


■英語入試についての民間委託試験の活用


――2020年度、つまり受験の「2年前ルール」からいえば、タイムリミットの現段階になって、外国語、特に英語の民間委託試験反対の答申が東大学長に提出された。内部議論とはいえ、多大な影響がある。高大接続改革が大きな曲がり角を迎えたことになる。


安西 初めに申し上げておくが、東大は国民の負託を受けて多額の税金が注入されている明治以来の国策大学だ。運営費交付金だけで824億円。京都大学は544億円(いずれも2017年度予算)、その比率は「東大の3分の2」。帝国議会の決定のままだ。それだけでも、立場は分かるはずだ。その他にも他大学を圧する多額の研究資金などが税金で賄われている。東大は国家のための大学として、世界の転変の中でわが国と世界の未来を創っていく、またそのためにリーダーシップを取れる卒業生を多数輩出して世界の一流大学として人材ネットワークを創り上げていく、その牽引者たるべき責任がある。現状の東大入試は、この大きな責任を全く果たせていない。
とりわけ英語入試だ。受験の期日も場所も狭く限定されたペーパーテスト中心の内容では、世界から優秀な学生を集めることなどできはしない。わが国の高等学校教育、特に英語教育を変える牽引者にもなり得ない。世界に通用しないローカル大学としての東大を表現する最高(あるいは最低)のものが、現在の東大入試、特に英語科目なのだ。 その意味で、五神学長に提出された答申は、わが国の未来を創り出す責任を背負った東大の今後あるべき姿とかけ離れた、見識を疑う内容の答申と言わざるを得ない。一読して、答申を書いた人たちは英語ができないに違いないと思った。
 その一方で、答申の後に出た文部科学省の見解を読むと、民間委託試験における受験費用や場所、ミスやトラブルが起こったときの対処方法などについて、触れてはいるもののまだ詰められていない点がある。


■経済格差を是正したい


――確かに文科省文書は、いま指摘されたような懸念にこたえているようには見えない。


安西 受験費用や場所の確保は、最も重要な課題だ。家庭の経済格差や地域差によって受験機会に差が生じることは許されない。低所得層の受験生に対する受験費用の支援、交通が不便な土地に居住している受験生の受験場所の確保などについては、国が責任をもって対応する必要がある。このことは国の側も理解していると考えている。ところが、現在の大学入試、とりわけ東京大学をはじめとする国立大学の入試は、経済格差や受験場所の確保の問題にほとんどこたえていない。


――公正性についても懸念されている。文科省の文書によると、ミスやトラブルが起きたら、「それぞれが実施している範囲について責任を負うことが原則。民間事業者等の採点ミスについて、センターや大学が責任を負うことは基本的には想定されない」と記されている。これでは、丸投げと批判されても仕方ないではないか。


安西 民間委託先でミスやトラブルが起こったら、委託先が責任をもって対応すべきだ。このこと自体は文科省の言うとおり。ただし、実際に起こったときの具体的な対応策はしっかり決めておく必要がある。この点が文科省の文章には書かれていない。まじめに取り組んでいる受験生に不利にならないように、ミスあるいはトラブルの内容(想定外のことが起きた場合も含めて)によって対応を決めておくこと、場合によっては再試験を迅速に行うことを、文書による契約事項の一部として民間委託先に義務づけるべきだ。
 対応の方法自体は、内部で入試業務を丸抱えしている大学が現在、行っているのと基本的には同じことだ。違いは、大学側が自分のこととして責任を取るかどうか、ということになる。今、学内丸抱えで入試を行っている大学で深刻な採点ミスが続発する事態が起きているが、大学内部であれば責任は各自が取るのだからよい、とでもいうのだろうか。答申の意味がわからない。
 民間委託による不祥事の発生を恐れて大学内部だけで入学者選抜を行うことにすれば、当然、教員の負担が増える。実際、いろいろな仕事が増えて研究ができない、という大学教員、特に国立大学教員の大合唱が聞こえている。それでいいのだろうか。民間委託を否定する東大答申も、そうした点で矛盾がある。
 
――民間委託では試験問題の質が担保できないのではないか、という意見も聞くが
 
安西 民間の試験問題では質が担保できない。その一方で、英語の「書く」「話す」の試験を大学内部ですべて請け負うことは、教員の負担からいって不可能だ。ということだとすると、英語の「書く」「話す」力(単に書ければよい、言えればよい、ではなく、しっかりした構文構造と語彙で論旨明快に表現できる力)を評価する入試、一次試験はできないということになってしまう。これらの力こそ世界水準の学生に求められる力であり、それを一次試験で全く評価しない、ということでは、東大は世界水準の大学に決してなれないだろう。また、一次試験では「書く」「話す」力を見ないということでは、東大は高等学校の英語教育の牽引者たることも不可能になる。高校英語教育に「書く」「読む」を入れていく(これらの授業の割合が小さいのが現状であり問題点)ことは時代の趨勢だ。
 こう考えると、まずは高校教育の実を上げて一次試験受験者のレベルアップを図る。そして、外国語科目の一部を民間委託して学内の負担を軽減する。その上で、独自の二次試験を通して、改めて東大卒業生として世界に通用すると思える受験生を、点数にのみにこだわらず自分たちが責任をもって合格させるべきだろう。 
 民間委託の試験問題は質が低かったり不安定だったりするから心配、という見方は、入学者選抜から卒業時点のディプロマポリシーに至る総合的な観点の中で考えると、あまりに偏った見方だと思う。民間委託の試験だけで合否を決めるわけではあるまいに。


■時代遅れの東大入試を改める好機に


――不祥事について、東大WGの答申は以下のように指摘している。〈大学入試における出題ミスや問題漏洩などの不正を絶対に避けなくてはならないことは自明であるにもかかわらず、多くの認定試験が個々の問題を公開していない現状では、これを検証することは不可能である〉
 
安西 いや、そもそも東大が、二次試験まで含めて入試に関する情報を十分公開していない。それを棚にあげてこのように言うのは、おかしなことではないか。
 高大接続改革は「入試改革」ではない。大学と高校の教育を変える、そのために間に横たわる入試も変えざるをえないということだ。その大前提を東大WGの人たちは理解しているのだろうか。話を英語入試の民間試験利用に矮小化していて、やらないための理由付けをしているようにしか読めない。
 入試について言えば、東大の入学者選抜の方法、特に英語については、時代にまったく合わなくなっていることを自覚しているだろうか。もしこのWG答申の提案が認められてしまうと、東大が世界の一流大学の仲間入りをしてこれからの大学と社会を牽引すること自体、将来にわたってできなくなるに違いない。そうなると、東大だけというよりはむしろ国立大学全体が、世界を舞台に動いているトップレベルの大学からさらに置き去りにされるだろう。東大は、明治以来、わが国を牽引してきた大学として、入学者選抜の方法(特に英語)を時代遅れの国内ローカルではない、世界に通用する方法に改めなければならない。その絶好の機会が巡ってきているのに、答申はこの点をまったく理解していない。
 国民にとって本当に必要な東京大学は、時代の変化を乗り越えてこれからの日本を創り出すリーダーとしての東京大学であって、現在の東大入試、特に英語の入試は、それにまったく逆行した、昔の日本のための入試だ。
 
■東大入試は公平か


――受験機会の公平性が問題視されている。
 
安西 受験機会の公平性について書いてあるが、経済格差、居住地域の違い、注入されている国家予算の額などを勘案すると、受験機会が最も不公平なのは明らかに東京大学だ。ところが、現実の東大受験過熱状態を東大は見て見ぬふりをし、経済格差、地域の違い、多様な障がいの有無など、受験機会の公平性などほとんど考えていないように見える。
 
――時間をかけて議論することはできないか。答申は「拙速だ」と批判している。


※答申より
〈2020 年という実施時期の設定にいかなる合理的な根拠があるのかは必ずしも明らかでなく、拙速という批判もしばしばなされてきた。大きな改革を進めるに際してはある程度のスピード感が必要であることは事実だが、中途半端な状態で見切り発車をすれば、結局、迷惑を被るのは受験生であることを忘れてはならない。したがって、認定試験に関する諸課題への明確かつ具体的な対応が確認されない限り、本学としての判断は留保せざるをえないと考える〉
 
安西 入試改革のことは15年以上も前から提唱されている。時代の変化は予期されていた。その間何もしてこなかった人たちが、いまさら「拙速だ」と言っても全く説得力がない。こういう切迫した事態を招いた責任のかなりの部分はそういう人たちにある。また、「2020年に合理的根拠があるか明らかでない」というが、それでは彼らは、「いつ始めるか」について合理的根拠をもって主張してきたのだろうか? 何も言ってこなかったではないか。英語の書く、話す力が重要と考えるなら、それらのテストを「いつ始めるか」合理的根拠をもってすでに提唱していてしかるべきだったのではないか? 2020年に始める理由は、それ以上遅れるわけにはいかない、今までさぼってきた人たちの尻ぬぐいをしている、ということだ。何年かけても、ただ議論のための議論をしている人たちがいくら議論を繰り返しても、その間に子どもたちが年取っていくだけだ。
 
――「世界への通用性」というフレーズが何度も出てきた。
 
安西 国立大学法人とは何か。東大とは何か。圧倒的に多額の税金を注入されている東大の責任とは何か、文科省にとってではなく東大にとって、卒業のためのポリシー、教育のポリシー、入学者選抜のポリシーは、これからの時代にどうあるべきなのか、どう関係しているのか、これらの関係のなかで外国語科目の入試をどうすれば未来の日本を牽引する責任を果たせるのか、東大からはほとんど何も聞こえてこない。
 例えば、学部の推薦入試では、(教育学部を除き)外国語の民間資格試験受検結果などの資料、あるいはきわめて高い語学力を示す資料の提出を義務づけているのに、一般入試の受験者については、答申にあるようにCEFR A2レベルでも難しい、ということだ。推薦入試では民間を利用しているのに、(答申が言うには)一般入試では民間委託してはいけない、ということだ。
 この矛盾はさておいても、推薦入学者と一般入試入学者の外国語能力の評価方法についての違いを、入学後の授業でどうやって埋めているのだろうか。一般入試については二次試験の外国語科目でしっかり見ているから大丈夫、ということなのだろうか。一次試験では低レベルの足切りで十分、ということなのだろうか。多数の受験生が挑む一次試験でこそ英語の「書く」力、「話す」力を評価することによって高校英語教育の水準が上がることは確実だというのに、自分の大学さえよければそれでいい、ということなのだろうか。
 東大は、国民の負託のもとに、国内外の転変の中でわが国の未来を創っていく、その牽引者としての責任がある。この責任において、東大は特に、一定程度以上の高等学校教育の水準を引き上げること、また卒業生の最低条件が世界の舞台で通用する水準であることに対して、義務を負っていると考えるべきだ。だから「世界への通用性」と言っているのだ。
 もう一度言うが、母語でない言語としての外国語、特に英語の力とは、単に単語をたくさん覚えているとか、長文を読んで正解にマルをつけることができる、という力ではない。これらは当然のことであって、英語力というのは、しっかりした構文規則と豊富な語彙を使いこなし、相手の立場や文脈を考慮して、論旨明快に英語で表現する力のことだ。東大生がすべてこの力を持っているとはとてもいえない。その深い原因は、現在の一次試験において外国語、特に英語力の評価を甘くみていることにある。
 もし答申が通って英語入試が矮小化されるのなら、東大は時代の牽引者として国民が負託すべき大学に値しない。そうであれば東大に多額の税金を注入する必要はない。


おわりに
 ある教育長が、教員たちを前にこんな話をしていた。「知」は大きなかたまりで、人はそのまま取りこめない。だからスライスする。そのスライスを「教科」と呼び、スライスを統合させ、新しいものを作り始めるプロセスこそが「学び」なのだと。
 長らくそれを妨げているのが、東大を頂点とする大学、東大への進学率を競う高校の序列であり、進学率を決する入試だ。そこに大きな風穴があこうとしている。高大接続改革の柱の一つ、「大学入学共通テスト」を前に、高校の授業が変わり始めたのだ。「異見交論」51で紹介した英語授業はその典型例だろう。やっと「学び」の緒に就こうとしている教育現場に水をさしていいのか。
 東大の責任は、極めて重い。(奈)


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英語民間試験の導入の裏には竹中平蔵もいたようだ。加えてeポートフォリオも入試に使われることになった。どうしてこんなやつらが教育政策を好き勝手できるのか??!公教育が私物化されている。。。 
以下は昨年度の記事↓


竹中平蔵氏、安西祐一郎氏、有志により発足 「教育改革推進協議会」は何をもたらすか?
https://edutmrrw.jp/2017/innovation/0701_jcer_2017  (EducationTomorrow 教育革新のための情報発信ニュースメディア)
Posted on 2017-07-18 by 石川 成樹


7月13日、文部科学省から「高大接続改革の実施方針等の策定について」が公表され、目下のところ、大学入試センター試験に代わる新テスト「大学入学共通テスト」の動向や、英語4技能を評価するための民間試験の活用といった内容に大きな注目が集まっている。
その少し前の7月1日、慶應義塾大名誉教授の竹中平蔵氏が代表を務める「教育改革推進協議会」が発足した。発会式ともなる第1回は、日本学術振興会理事長で中央教育審議会会長の安西祐一郎氏も出席の上、日本全国から高校、大学、教育関係企業のトップ約30名が集まって行われた。
教育改革の方針が明らかになる一方で、いまだ実現性に懐疑的な見方も多い。そのような中、「教育改革推進協議会」は、どのような目的で、何を行っていこうとしているのだろうか。第1回協議会の内容からレポートする。


◆マルチステークホルダーによる教育改革


教育改革推進協議会の発会にあたり、竹中代表はこのように語った。
「教育を改革しなければならないということは皆わかっています。そして、それぞれにそれなりの役割があります。政府は政府で重要です。中教審では安西先生が頑張ってくださっています。そして、学校や民間教育の現場が大事です。しかし、そういった垣根を越えて、マルチステークホルダー、つまり、いろんな立場の人が集まる場というのは、考えてみると意外にない。私も、安西先生も、よく一緒にダボス会議に出席しますが、ダボス会議でも、政府も、企業も、NPOも、学者も集まる。今日の集まりというのは、まさにそういう場になっている。マルチステークホルダーで教育改革を推進しようというのが、この協議会の趣旨です。そういう意味で、今日は皆さんと新しい社会的ムーブメントを起こす、そのスタートになるという思いで、私も安西先生もここに立っています。」
社会的な変革は、政府の政策だけで決まるものではない。社会の様々な立場にある組織や個人が、変革のプロセスに参加し、協力し、それぞれの役割を果たすことが不可欠となる。そして、このような課題解決の鍵を握る組織や個人を「ステークホルダー」と呼び、多様なステークホルダーが対等な立場で参加し、協働して課題解決にあたる合意形成の枠組みのことを「マルチステークホルダー・プロセス」と呼ぶという。
教育改革推進協議会は、まさにこの「マルチステークホルダー・プロセス」を実践しようという取り組みだ。考えてみれば、幕末から明治維新にかけて薩長に象徴されるような複雑な利害関係を持つ諸政治勢力が肩を組んだように、大規模な教育改革を実現するにあたっては、利害関係を超えた協力こそが何よりの力となるはずだ。


◆利害関係を超えて何を行っていくか?


では、実際にどのようなことを行っていこうというのだろうか。今回の協議会では、そのひとつの取り組みとして、教育ビッグデータの収集と利活用が掲げられた。
近頃、教育界では「非認知能力」というキーワードがよく使われるようになった。これは、意欲やリーダーシップや創造性といった、学力テストや偏差値では測定することができないような力のことで、この力こそが、社会的、経済的な成功を左右するとも言われている。
ところが、この力をどう鍛えるかについては、確立された方法論があるわけではない。また、入試改革の流れにおいては、この非認知能力をどう評価するかが重要視されている。なぜなら、よく言われている通り、知識の多寡や、テストスコアだけが本人の全てではないからだ。
実は、非認知能力を鍛える教育がないわけではない。それこそ、マルチステークホルダーが、それぞれの現場で実践している教育の中で、知らず知らずのうちに培われているはずだ。問題は、ほとんどの場合、その養成の過程が明らかになっていないことだ。この状態では、新しい時代に合った教育モデルを形作るまでには至らない。
また、大学入試において、この非認知能力を評価することもそう簡単ではない。なにしろ、現在のところ、非認知能力を測るテストは存在しない。面接や志望理由書を通じた志願者の言葉から一定のことはわかるかもしれないが、果たしてそれだけを根拠として良いかは悩ましい。
そこでひとつの評価対象として大学入試で取り入れられているのが「ポートフォリオ」だ。ポートフォリオとは、アーティストが自分の作品集をつくるように、学び手が自身の様々な活動経験をまとめて人に伝える媒体のことで、現在、東京大学の推薦入試や京都大学の特色入試をはじめとするAO・推薦入試での評価が始まっており、入試改革の策定方針の中でも活用が言明されている。
そして、協議会では、日本アクティブラーニング協会の理事長で、同協議会の共同代表となっている相川秀希氏から、このポートフォリオというプラットフォームによる教育ビッグデータの収集と利活用について提言された。
相川共同代表は、プラットフォームのひとつとして、自社が手がけるSNS型eポートフォリオ Feelnoteを例に挙げて説明した。SNSを活用することによって、成果や結果だけでなく、学びや活動のプロセスをログとして残すことができ、学生と教員、学生同士の関わりすらもデータ化される。このようなビッグデータを活用することで、例えば、非認知能力を鍛える教育モデルを浮かび上がらせたり、より実証的な根拠に基づいた教育活動が可能になったりするかもしれない。


◆エビデンスと第4次産業革命と教育改革


「私のゼミの卒業生に中室牧子さんがいます。『学力の経済学』というとても面白い本を書いた人ですが、彼女とこんなことを話したことがあります。」
竹中代表はこう続けた。
「経済財政諮問会議で教育について議論したシーンがありました。これは議事録にも残っているんですが、ある人が、“私の経験によれば、学校教育というのはこういうものだ”と言った。次に、ある大臣が、“私のしっている教育関係者の話によるとこうだ”と言った。そして、ある経営者が“私の会社の教育の例について話すとこうだ”と言った。これらは全部、個人のエピソードです。エビデンスは何もない。私たちはマルチステークホルダーでチャレンジするとともに、エビデンスをしっかり集めて、そして社会を説得して、社会の制度を変えていかなければならない。」
そして、第4次産業革命の中で日本が置かれている状況についても、このように触れた。
「ここ5年くらいの間に、急激な変化が起こっていることを私たちは認識しなければならない。第4次産業革命と呼ばれる変化です。ドイツ政府が、Industry 4.0をいう言葉を2011年に初めて使いました。その翌年、気がつけば、アメリカとイギリスは、ビッグデータを整備するための仕組みを作り始めました。ところが、日本で第4次産業革命という言葉が閣議決定された成長戦略の中に出てきたのは2016年、去年のことでした。仕方ない側面もあります。2011年に東日本大震災が起きました。2012年に政権交代でデフレ克服のための新しい準備をしなければなりませんでした。しかし、このような状況には危機感を持つべきだと思います。」


◆ポートフォリオは大学入試の評価対象として機能するのか?


協議会ではiPadを使って参加者へのアンケート調査も行い、その場で出た結果を受けて竹中代表、安西氏、相川共同代表、参加者全員によるディスカッションも行われた。
行われたアンケートの中にはこのような質問があった。
“将来、ポートフォリオが、大学入試のひとつの評価対象として機能すると思いますか?
そして、この質問の結果は、全参加者33名中、YESが31名、NOが2名となった。NOと回答した参加者の意見はこうだ。
「個人的にはポートフォリオを活用すべきだと思うが、それを評価する人財の問題がある。一部の大学にはできても、全国の大学にそれができるようになるのか。そのためのチームを作れるのか、それだけの余裕があるのかについては疑問がある。」
これに対し、安西祐一郎氏はこのように語った。
「ポートフォリオを評価する側が大変だというのはその通り。評価する側に経験がない。けれども経験を始めなければ、いつまでたってもできるようにはならない。これは是非この協議会が先頭に立って進めていただきたい。いろいろなところで話をすると、だいたい皆さんから、新しいセンター入試はどうなるんですか?と聞かれます。質問というとこの類のものですが、どうなるか、ではなく、自分で作ればいい。改革は、マルチステークホルダー、これからの時代を作っていきたいという人たちが、一緒になって、力を合わせてやるものです。」


教育改革推進協議会の第2回は来年2月に予定されている。また、次回に向けた取り組みとして、分科会となる「教育ポートフォリオ研究会」が行われる。研究会では、ポートフォリオの実践的活用と実証実験を行い、次回の協議会で経過報告を行う予定だ。

http://www.asyura2.com/18/senkyo254/msg/459.html

[政治・選挙・NHK255] 怪しい官邸主導の教育改革 英語4技能、 主体的な学び、 eポートフォリオ。その先にある「未来の教室」とは?
左から竹中平蔵代表、相川秀希共同代表、安西祐一郎氏





http://www.activelearning.or.jp/studygroup/


教育分野における自由度の高い実験場」を。


第4次産業革命の波が急速に広がる一方で、日本には、米国のグーグル、アマゾンに匹敵する規模のIT企業はありません。グローバル教育の遅れを取り戻し、技術革新、変化への対応スピードを高めていかなければ、ますますこの差は広がってしまいます。とりわけ、本来であれば最も優先されるべき教育分野でのビッグデータの利活用は、ほとんど手付かずの状況です。


このような状況下で、日本における第4次産業革命推進のための政策のひとつとして、私は今、「レギュラトリー・サンドボックス(規制の砂場)」の設置を安倍総理に提言しています。これは、FinTech産業を発展させるために英国が取り入れたのが始まりで、既存の規制にとらわれることなく、より自由度の高い実験を行うことができる特区のことです。


私はこのレギュラトリー・サンドボックスが教育分野でも必要だと考えています。従来の規制や既成概念にとらわれることなく、トライ&エラーで新しい取り組みを行っていかなければ、欧米ばかりかアジアの中でも取り残されてしまいます。


そこで、教育改革推進協議会では、このような考え方に賛同してくださる有志の方々と一緒に、例えば、教育SNSやデジタルポートフォリオの活用によるビッグデータの収集、遠隔教育、新しい発想の教育機関の創出等を実践していきたいと思っています。机上の空論ではなく行動を通じて日本の未来をつくる取り組みをご一緒いただける皆さんのご参加をお待ちしています。


教育改革推進協議会
代表 竹中平蔵


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官邸が推し進める2020年大学入試改革が怪しい。特に2021年実施の国立大学センター試験に代わる大学入学共通テストは、英語民間試験、国語・数学の記述式民間委託など公平性・公正性の点からも問題だらけ。それなのになぜ強行されようとしているのか?どうやら経産省による教育の民活のための「未来の教室」とつながっているようだ。



https://prtimes.jp/main/html/rd/amp/p/000000052.000004142.htmlより


2020年大学入試改革に向けて、 英語4技能、 主体的な学び、 eポートフォリオなどの動きが活発になってきました。
これらは教育改革のゴールなのでしょうか。
その先にある「未来の教室」とは何か?
EdTechがもたらす学び方の変革は、 受験に何をもらたらすのでしょうか。 その時、 塾は?


教育イノベーションを推進する経産省と塾業界、 そして先進的な取り組みを行なっている企業が、 「近未来の塾のあり方」について語り合います。


<パネリスト>
安藤大作氏 (全国学習塾協会会長)
高宮敏郎氏(SAPIX YOZEMI GROUP共同代表)
稲田大補氏(atama plus株式会社)
宮坂直氏(スタディプラス株式会社)
他、 多数の有識者を予定


<モデレーター>
浅野大介氏(経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課長)
佐藤昌宏氏(デジタルハリウッド大学大学院 教授)


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コエテコ編集部 | 更新日:2018.08.03


『チェンジ・メーカー』を作ろう!日本の教育現場をもっと贅沢に―経済産業省 教育産業室長 浅野大介さん


驚くべきスピードで変化し続ける現代社会において、いま、日本の教育は改めてその在り方を問われています。産業空洞化、少子高齢化などの問題を抱えるこの国にとって、「教育再生」は避けて通れない課題です。子供たちの未来を考える浅野さんに、将来の日本を背負って立つ子どもたちをどう育てていくべきなのか?今後の教育の在り方とは?経済産業省 商務サービスグループ 教育産業室長 浅野大介さんにお話しを伺いました。


(インタビュアー:GMOメディア株式会社 代表取締役社長 森 輝幸)


◆社会をデザインするのが経済産業省のミッション


――これからの未来に向かって、「教育再生」は社会全体で取り組んでいく必要があります。経済産業省視点での「教育再生」についてのお考えをお聞かせください。


経済産業省というのは、日本人が生き残っていける環境を作る役所です。日本社会が世界において意味のある存在として生き続けていくためには、当然ながら世界に対して付加価値を出していかないといけない。「あってもなくてもいい存在」にしてはいけない。そのためには日本社会が世界に価値を生むことのできる人たちの集団でないといけない。それが経済や産業の発展、多くの国民の人生の充実につながります。その礎を作っていくのが我々のミッションです。


第4次産業革命、人生100年時代、そもそも人口減少やどんどん進むグローバル化など、我々の環境は常に変化し、そのスピードは増す一方です。これまでの常識がまったく通用しない世界が日々進行しています。我々の生き方や未来の仕事、必要とされる能力もどんどん変わってくる。
そのなかで、「未来の大人」である今の子どもたちは、「今の大人」の我々世代が身につけてきた能力とは違うものを身につけないといけない。この能力を身につける環境に手を出すのが経済産業省の仕事です。そのために必要な「教育の社会システム」をデザインするのがうちのミッションだと僕は思っています。


「教育は文科省だけが所管している分野」とは思っていないんです。文科省もやるし、経産省もやる。学校教育という観点では文科省が一生懸命頑張るけど、学校の先の「出口」である経済・産業の中で活躍できる人をどう作るかという観点から教育サービスのイノベーションを仕掛けていくのが経産省ですし、そもそも経産省は学習塾などの民間学習支援業を所管しています。だから、経産省なりの教育観というのが当然出てくるわけです。時に文科省との間で意見が違うこともあるかもしれませんが、それを擦り合わせながら政策を作っていくことが、未来の政策を作るうえで極めて重要だと思います。


教育は特に大事な国家的テーマですから、ひとつの組織の中だけで考えるのはやはり良くない。各省庁なりの教育へのスタンスがあってしかるべきで、農林水産省だって国土交通省だって厚生労働省だって外務省だって、みんなそれぞれのスタンスを持っていていいと思うんです。


たとえば、国際舞台でいかに日本人が貧弱か、非常に存在感がない存在としての日本人というのを外務省は痛感しているはずです。海外の会議に行ってもダサいプレゼンをしてロクな発言もできず、世界に影響を与えられず、ただ名刺交換して帰ってくるだけの日本人の姿を外務省はいやというほど目にしているでしょうし、それをどうにかしたいと恐らく彼らは思っているでしょう。


僕らは僕らで、新しい価値とイノベーションを生めず、世界で存在感がなくなっていく日本の産業の姿を見ているし、どうにかしなきゃと思うわけです。一方で、学校現場のリアリティ、生徒や先生や保護者の皆さんの抱える課題をずっと見ていろいろ悩んでいる文科省。みんなそれぞれ視点が違います。それぞれの視点を組み合わせて考えないと、本当の教育政策って考えられないはずなんですよ。


ただ、塾や通信教育などはもともと経産省の所管業界なんですが、経産省としてはこれまでこういう教育産業のみなさんと一緒に教育イノベーションおこそうよという話はやってこなかったんです。
ですが、ひとりの学習者にとっては学校や塾、プライベートの他の教育も全部合わせて学びが成り立つわけです。なので、教育産業の皆さんも、学校の現場も、産業界も地域社会も、垣根を超えて「未来の教室」つまり「未来の学び方」のデザインをやっていこうと働きかけるために、去年7月に教育産業室を立ち上げたんです。


しかし基本的にいまの教育産業って、受験対策か習い事かしかありません。本当に人間の能力開発産業といえるような教育産業はまだ日本で生まれていないので、それをちゃんと生み出そうとしています。
僕たちが掲げたい「学習者中心主義」で考えるならば、学びというのは学校に閉じないんですよね。塾で学ぶのも家庭学習もそうだし、地域の中で生きるのもそうだし、いろんな学び方があるんだと思うんです。最終的に学校を卒業することが目的じゃない。いろんなことを学んで、主体的に学び続けて、価値を生める人がたくさん育ってくれればいいわけです。


究極のところ、学校に一日も行かなくたって構わないんですよ。ですが、いまはそこがゴールとして設定されているので、経産省や文科省、そして他の役所も協力しあいながら、今はまだ受験産業や習い事産業である教育産業に、「真の能力開発産業」になっていただくための応援をし、それが学校教育や地域社会や産業界全体と結びついて、本当に日本の能力開発の現場が変わっていく、というのが僕らの目指すところです。


◆キャッチフレーズは『チェンジ・メーカーを作ろう』


――今の子どもたちを変えていくということは、これからの日本においてとても大切なことだと思います。そのために経産省として取り組まれていることは何でしょうか?


僕らはいま、『チェンジ・メーカーを作ろう』というキャッチフレーズを掲げています。チェンジ・メーカーとは、まず目の前にある事象の中から課題を発見し、その茫漠たる課題を「解ける問い」に設定し直し、それを喜んで解いていく人。そのための創造力をちゃんと身につけてもらいたい。それさえ身についてれば一生生きていける、一生付加価値を生める人であり続けるはずなんです。


入り口はやはり課題発見力なんですよ。そして無から有を生む創造力。ここにフォーカスを当てることから始めて、でも基礎学力がないと深まらない。だからそのために必要な基礎学力をいかに短い時間で身につけるか。自分が好きなことを見つけて、そこにのめりこむ。でも、「解きたくなる現実の課題」とかから入らないと、いったい何のために教科書を勉強するのかさっぱり分からない、という話になるんです。だから僕らは入り口を変えようとしています。


また、プログラミング教育はコーディングする技術を身につける教育だと勘違いされる方がたくさんいますが、全然違うと思っています。学習指導要領でも「プログラミング的思考」という言葉を使っていて、あれが目指すところは僕らが目指すところとまったく同じなんですよね。自分が好きだな、関心を持っているな、ということに対して、なんとかそれを実現してやろう、と思って試行錯誤をするじゃないですか。その過程でうまくいったりいかなかったり、というところを粘り強く、うまくいくように頑張る。そこを磨いてくということに他ならないと思っています。


日本の産業界を見ると、自分でアジェンダ(課題・論点)が設定できない人が多いというのが現状だと僕は思っていて、この病気は役所にも日本社会全体にも蔓延してます。制度や環境のせいにせず、自分たちのことは自分たちの力で解決する。それを嬉々として楽しんでやるという心が欠けているから、当然ながらイノベーションなど生めない、というのが今の日本社会だと思っています。だから、僕らが目指しているのは、自ら課題を発見して設定し、それを嬉々として解ける人たちを作ろうということです。


僕は役人になってからの方が学生時代の100倍くらい勉強してる気がします。もう日々勉強。僕らは2〜3年のサイクルで部署がころころ変わるので、そのたびに全く新しい政策テーマをやるわけです。「来週異動しろ」って言われたら異動して、また新しいテーマやるので、その度にゼロから勉強なんですよね。


僕は文系なんですが、資源エネルギー庁で7年間勤務しました。石油とかガスとか電気とか扱うには、最低でも高校レベルの化学や物理はわかってないと話にならない。だからその時は高校の教科書を買って勉強したんです。「生きた勉強」なんで、学生時代はあれだけつまらなかった化学の勉強でも、必要にかられて自分で問題意識を持ってやるからものすごく面白い。やり方ひとつで全部変わるんです。「大人の学び」ってそういう面白いものじゃないですか。でも、子どもだけが、なぜか学校で出口もわからないまま教科書を1ページ目からやる苦行を強いられるんです。だから、リアルな社会課題とかから入って、その謎を解くために必要な勉強をするというのがいいですね。


◆「いい大学に入るのがゴール」という価値観を壊したい


――これまでの教育産業におけるひとつのゴールは、いい大学に入ることでした。


あの価値観はぶち壊してやりたいですね。もうすでに壊れ始めてはいますが、根強いんです。しかし世界中どこを見ても、受験はとても重要な話。中国や韓国はもちろん、アメリカなんか学歴社会の最たるものですから。だから受験というのは避けては通れない。もちろん受験勉強から得られるものはたくさんあります。期日までに一番合理的な手段でゴールに達するというスキル、あの瞬間に鍛えられる根性とマネジメント力って、あれは一生ものの力なんですよ。
でも、それはそれでいいんですが、それだけだとこれからの時代はもう無理なんですよね。ちょっと違う能力が必要になってくる。「指示待ち人間」では生きていけない社会になると思うんですが、今のままでは「指示待ち人間」しか生めない教育がずっと続いてしまう。


まず大前提として、教師の言うことや教科書が言うこと、新聞に書いてあることは疑う。新聞はこう言うけど本当はどうなんだろうか、と考えられる力を身につくことが始まりだと思うんです。クリエイティブな仕事に必要な力ってそこじゃないですか。付加価値を生める人たちをどうやって大量に育てていくのか、というのが今の教育では圧倒的に欠けてますよね。


なぜ最近になって政権の中で「生産性革命」や「人づくり革命」という言葉が出てきたかといえば、やはり一番の本質的な課題がそこだからだと思います。
安倍政権では、まずマクロ経済対策としてやらないといけないことは徹底的にやってきた。金融緩和もそう。法人税減税もそう。TPPもそう。ただ、それは国の競争力の根っこではない。本当に改革が必要な根っこは、「生産性革命」です。それはつまり、付加価値を生める企業や人になれるかという話です。付加価値を生めなければ生産性を上げられない。付加価値を生むためには「人づくり革命」でしょう、となるわけです。


――中国、シンガポール、アメリカ、と海外への留学経験も豊富な浅野さんにとって、諸外国と比較した際に日本はどう見えていますか?


中国にせよ、シンガポールにせよ、アメリカにせよ、ものすごい勢いで教育を変えようとしています。その勢いに対して、日本が相当遅れているのは間違いない。


『Most Likely To Succeed』というとても面白いアメリカ教育のドキュメンタリー映画があるんですが、そこで描かれているアメリカの課題は、実はいま僕らが日本で直面している課題とほとんど変わらない。アメリカでも日本でも悩みは一緒で、優等生で教科書を理解して暗記して吐き出して大学入試でいい点を取っていい大学に行って、というパスに乗っかることを重視した教育がやはり基本路線なんですよね。でも「これからの世の中、それでいいのか?」というのを問いかけて、STEAM教育なんかを中心においたカリフォルニアの高校を舞台にして、これからの時代に必要な教育を問うドキュメンタリーになっています。


世界経済で存在感のある国々は、みんな教育を変えようとしています。経産省のキャッチフレーズとして「チェンジ・メーカーを作ろう」というのを掲げていますが、世界を見回せば、みんな明らかにその方向に舵を切っています。つまり、課題を発見できる、解決できる、そして無から有を創造できる。そこに焦点を当てようという方向性が世界的潮流だと思っています。だからこそプロジェクトベースのSTEM教育やSTEAM教育、あとはEdTechを使った圧倒的に効率化された教科学習に舵を切り、そこに向けた投資も結構なものになっています。


しかし日本には根本的な課題があります。これは社会の特性かもしれないんですが、日本人の集団ってみんな発言しませんよね。すぐ空気を読んじゃうじゃないですか。空気を読むのは万国共通なんですが、読みすぎなくらい読んで黙るのが日本人。日本人を集めて会議をするとき、開催する側としては沈黙リスクを心配する。そして実際に沈黙しますよね。でもたとえば海外の大学ではその心配はいらない。授業で先生が10分喋ったら、残りの50分は質問や意見がバンバン出る。なかには見当違いな発言も、長々とした場違いな演説もたくさんありますが、基本的に教師が「止めろ」というまで喋ります。そういう社会と日本は決定的に違うので、そこからどうにかしないといけない。


間違ったことを言って恥をかきたくないから黙る、という空気がやはり日本人は強いですし、であるがゆえにまったく面白い議論ができない。あとは、組織や集団の中での自分に与えられた役割認識が異常に強くて、自分で勝手に縛られて、ポジショントークしかしない。そのあたりが他の国に比べて、ハンディキャップだなと思います。


◆レゴ少年が見ていた夢が現実に


僕自身、レゴブロックが大好きなレゴ少年だったんです。親に聞いたら、3〜4歳くらいからずっと、もう、日がな一日、レゴを組み立てていたらしいんですよね。祖母が、今日は消防署セットだよ、次の日は病院セットだよと、せっせといろんなレゴのパッケージを買ってきてくれて、良かれと思って僕のために一生懸命組み立ててくれるんですが、僕は組み立てられたものには全然興味がなくて、すぐ壊しちゃったらしい。そして、僕は僕なりの宇宙ステーションをひたすら作るらしいんですよ。親はずっとそれを放っておいて、そしてたまに褒めてくれたんです。まず第一に放っておいてくれたこと、そしてずっとやらせてくれたこと。これがすごく良かったですね。
その当時、ずっと自分の中で「レゴで作ったこの自動車が動かないかなあ」「レゴで作った宇宙ステーションからこのロケットが飛ばないかなあ」と妄想してたんですよね。
それでこの前、MITメディアラボに行った時にびっくりしたんですが、今は子どもがレゴで作った自動車を、自分でタブレットでプログラミングをして動かせるソフトウェアがあるわけです。僕が幼稚園児の時に夢見てた世界があるわけですよ。ついにこの世界に来たのか!と感動しました。


そんな子どもの使えるプログラミングソフトなどなかった時代でも、僕の中ではレゴでいろんなものを作って妄想してるだけでイマジネーションはそれなりに育った感じがするんですよね。でもあれをさらに膨らませて、子どもが妄想を形にすることができる武器としてプログラミングがある。これって子供のクリエイティビティにすごい威力をもたらすんだろうなって思います。


ただ、いまは世の中へのメッセージが間違って伝わっているような気がします。プログラミング教育って別にプログラマーを作るためじゃない。「これからはプログラミングくらいできないと生きていけない!」ということでもないでしょう。
でも、プログラミング的思考ができないと価値のある人にならない、というのは実際そうなるんでしょう。ワクワクする面白い世界や仕事を作っていく、世の中にインパクトを与える人間になるために、そういう方向にいくための基礎力として、プログラミング思考ってあるんですよね。


◆学校の部活動を学びの場に。教育現場をもっと贅沢に。


実は僕らのプロジェクトの中では、「部活動をいかに学びにするか」ということをやっていきたいと思っています。


僕は弱小ラグビー部の出身なんです。大学はそれなりに強かったんですが、中学高校のチームは弱かった。でも、そこでの試行錯誤と失敗って今に活きているんですよね。僕が高校1年の時にやったのは、いずれ自分がキャプテンになって率いるチームに足りない戦力を他の部活から引き抜いてくることでした。他の部活に飽きたヤツらとかをね。口説いて戦力を集めて、チームを整形して、練習プログラムを考えて、人間はどうしたら強くなるのかというのをわからないなりに勉強して。あとはどこの学校とどういう順番で試合をするのか、というのも全部考えるんです。


でも弱いチームで下手なキャプテンが一人で叫んでいても限界あって、もっと一流の選手やコーチの助けがほしかった。恵まれない環境だったから工夫したというのもあるんですが、もう少し手助けがあったら、もっと面白いことができたよな、というのはいまでも思うんですよ。


だから、子どもたちが自分で部活をうまく運営していけるような、ある程度のマネジメントのフレームを提供してあげるだけで違ってくるだろうなと思っています。他にも栄養学とか筋肉の鍛え方とか戦略なんて、やりようによってはサイエンスの基本もデータを扱う思考力もちゃんと身につけられる。部活という場は相当面白いポテンシャルを持っているんです。だから社会がもっと部活を助けていく土壌を作りたい。


今は部活の問題といえば、学校の先生たちの業務負担が大変だから部活指導員を入れましょう、みたいな「先生たち目線」の話ばかりなんですよね。そうではなく、もっと生徒が部活を通じていろんな一生モノの学びをしていくプロセス自体を社会全体で整えてあげよう、という方向にしたいんです。


とにかく僕らは教育現場をもっと贅沢にしたいんです。そのためには、個人、企業を問わず、社会からもっと潤沢な資金やプロフェッショナル人材が学校の教育現場に流れる仕組みを作らないといけない。それが個人にとっても企業にとっても、メリットになる仕組みもちゃんと作らないといけないんです。


僕らは今までに見たこともないような「究極の教育プログラム」を作るという取り組みと共に、それが一般化されるだけの社会の基盤を作りたい。学校側の資金調達とか人材調達とか。学習者のWILL(意志)を見つけだし、その実現のために、学校も塾も社会の現場もない新しい学び方に向けて、いろんな挑戦をしていこうと思っています。それが、経産省の目指す「未来の教室」です。6月のとりまとめに向けて議論が佳境を迎える『「未来の教室」とEdTech研究会』と、これから始まる「学びと社会の連携促進事業」での様々な実証プロジェクトにご注目ください。


◆編集部コメント
未来の大人である子どもたちが『チェンジメーカー』として成長し、一生生きていける力を身につけられる仕組み作りが確実に始まっています。これからの産業、世界の競争を見ている経産省と学校、先生、親を見ている文科省。さらに他の省庁も含め、それぞれの得意分野を活かした取り組みにより、今後の教育現場が豊かになっていく可能性を感じました。


プロフィール
浅野 大介(あさの だいすけ)
経済産業省商務・サービスグループ教育産業室長


略歴
2001年入省。資源エネルギー(石油・ガス)、流通・物流・危機管理、知的管理、地域経済産業、マクロ経済分析等の業務を経て、2015年6月より資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長補佐(部内総轄)、2016年7月より商務流通保安グループ参事官補佐(大臣官房政策企画委員)として部局再編を担当し、教育サービス産業室(現:教育産業室)を立ち上げ。2017年7月より大臣官房政策審議室企画官、10月より教育産業室長を兼務。


<参考資料>
経済産業省 :「未来の教室」とEdTech研究会
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mirainokyositu/002_haifu.html


(文/冨岡美穂、撮影/コエテコ編集部)
公開日:2018.04.16


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コエテコ編集部


2020年から始まる小学校での「プログラミング教育の必修化」に向けて、小学生を対象としたプログラミング教室、ロボットプログラミング教室の市場はどんどん拡大しています。社会・教育・産業構造が大きく変革していく中で、未来の日本を担う子どもたちはグローバル化・情報化社会を生き抜く力を身につけなければなりません。 コエテコ編集部では、習い事やプログラミング教育に関わるテーマをわかりやすく、面白く伝える記事を作成し、皆さんにお届けしていきます。



http://www.asyura2.com/18/senkyo255/msg/804.html

[政治・選挙・NHK256] 『竹中平蔵による授業反対!』 この看板を立てビラを配った学生に東洋大学が退学勧告


https://m.facebook.com/nobuhiko.utsumi/posts/2072566752821082


内海 信彦 さんは船橋 秀人さんと一緒にいます。


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東洋大学4年の船橋秀人君が、大学キャンパスで東洋大学教授竹中平蔵の講義と、竹中平蔵が行って来た犯罪的な行いに抗議して、単身で立て看を立て、ビラ撒きを行いました。学生の反応はいまひとつ、立て看は10分で撤去されたそうです。大学当局は、彼を呼び出して二時間半も尋問して、「学則に違反する行動」として、「学生の本分」から外れ、「大学の秩序」を乱したと決めつけて、卒論審査も済んでいる彼に「退学処分」を警告したそうです。


若者の命と未来を奪い、若者の希望と可能性を破壊した竹中平蔵を批判したことの、どこが「学生の本分」から外れ、「大学の秩序を乱した」のだと言うのでしょうか!?


ソーシャルメディアでは、船橋君の勇気ある単独行動を支持する声が高まっています。しかし東洋大学の学生の冷たい無視と、当局の弾圧への教職員の無視は酷いものですね。東洋大学でのビラ撒きは40年ぶりではないかと言う、船橋君への不断の注視と、彼の抗議行動への連帯表明をお願いいたします。


今の全体主義時代に、ひとりで竹中平蔵に抗議することは、ナチ時代の1942年からミュンヘンで反ナチ活動を続けた『白ばら』に等しいと船橋君は言っています。
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船橋秀人君より
『立て看設置&ビラまき、同時決行!
しかし、大学当局によりあえなく撤去、その後2時間半にわたる取り調べとなりました。
♯立て看 ♯ビラ ♯東洋大学 ♯南門』
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以下は、船橋君からもらったビラの文です。


この大学はこのままでいいのだろうか?
我々の生活が危ない!
竹中氏の過悪、その一つは大規模な規制緩和である。特に2003年の労働者派遣法の改悪がこの国にもたらしたものは大きい。それまで限定されていた業種が大幅に拡大されることで、この国には非正規雇用者が増大したのである。「正社員をなくせばいい」や「若者には貧しくなる自由がある」といった発言は、当時の世論を騒がせた。しかしながら、この男まるで反省の素振りを見せない。「朝まで生テレビ!」という番組では、自らの政策の肝であったトリクルダウン(お金持ちが富むことでその富が貧しい者にも浸透するという理論)について、「あり得ない」というある種開き直ったかのような発言をしており、まるで自分がやった責任について無自覚なようだ。また、昨年可決された高度プロフェッショナル制度については、「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」などという驚くべき思惑を公言している。つまり、初めは限定的なものだからという理由で可決された労働者派遣法が、今これほどまでに対象を拡大したように、高度プロフェッショナル制度は、今後とも更なる拡大が予想されるのである。無論、我々も例外ではない。労働者はこれから一層使い捨てにされることになるのだ!!
様々な利権への関与!?
竹中氏が人材派遣会社のパソナグループの会長を務めているということも忘れてはならない。というのも労働者派遣法の改悪は、自らが会長を務める会社の利権獲得に通じていたからだ。まさに国家の私物化である。また、最近では昨年法案の正当性について全く審議されずに可決された水道法改正案と入管法改正案についても関与していたことが明るみになっている。更に加計学園との関連も取りざたされており、今後ともこの男の暴走を追及する必要がありそうだ。
今こそ変えよう、この大学を、この国を
皆さんは恥ずかしくないですか、こんな男がいる大学に在籍していることが。僕は恥ずかしい。そして、将来自分や友達や自分の子どもが使い捨てにされていくのを見ながら、何も行動を起こさなかったことを悔いる自分が、僕は恥ずかしい。意志ある者たちよ、立ち上がれ!大学の主役は、我々学生なのだ。右も左も前も後も何にも分からない人も、みんな集まれ。民主主義は決して難しいものではない。共に考え、議論し、周りに訴えながら、もう一度みんなでこの社会を立て直そう!!





http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/570.html

[政治・選挙・NHK256] 大学入試改革の旗振り役 慶應元塾長に利益相反疑惑を直撃 (NEWS ポストセブン)


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190122-00000001-pseven-soci&p=3
大学入試改革の旗振り役 慶應元塾長に利益相反疑惑を直撃


1/22(火) 7:00配信 NEWS ポストセブン



 大学入試センター試験が1月19、20日の2日間にわたって行なわれた。現行入試は2019年度(2020年1月)の実施を最後に廃止され、代わって2020年度から「大学入学共通テスト」がスタートするが、とりわけ物議を醸しているのが「英語」だ。政府は「読む・聞く」だけだった現行入試に代えて民間資格・検定試験(民間試験)の活用を打ち出したが、東京大学が昨秋に事実上「不採用」を決めると、京都大学や名古屋大学などが追随した。

 現場から懸念が噴出しているにもかかわらず、進められている民間試験導入方針のウラに何があるのか。取材を進めるとより深刻な「利益相反」の懸念に突き当たった。

◆「100億円」市場の誕生

 民間試験導入について「公平公正なテストにならない」と指摘するのは、東大文学部の阿部公彦教授だ。

「受験生の居住地によって希望の試験会場は遠くなり、地理格差ができてしまいます。検定料にも幅があるため裕福な家庭の受験生ほど選択肢が広がって有利になりやすい」

 不利な受験生への補助がなければ公平さを欠くが、問題はそれだけではない。

「テストを出題する同じ業者が、その試験の対策本で利益を得ることになります。対策講座では“予想問題が的中”というのが売り文句になりますが、実際の試験情報の漏洩と紙一重の問題を出すこともありえる。こうした構造的な利益相反をチェックすることも難しい」(阿部教授)

 実際、認定されたテストの一つ、TOEICは数多くの対策問題集が発売されているが、試験を主催する「一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会」が発行する『公式 TOEIC Listening & Reading 問題集4』はAmazonでこの分野のベストセラー1位(1月15日現在)。1冊で税込3024円と高額だが、他の公式問題集も軒並み上位を占めていて、売る側にとっては“ビジネス”として成立している。

 昨年11月の衆議院文部科学委員会の質疑でも「試験の出題者と問題集の販売者が一緒でいいのか」と追及を受けたが、柴山昌彦・文科大臣は「当事者に検討してもらう」というのみで、解決策は示されていない。各社、各団体では「試験問題の作成担当者と、対策本・講座の制作担当者を分離させる」といった対応が取られているとされるが、それで十分なのか、チェックする仕組みは今のところない。


一方で、民間試験を扱う「業界」にとっては“特需”だ。文部科学省が2018年12月25日に発表した「受検ニーズ調査」は、最初の高校3年生が2020年4〜12月の間に1人最大2回の機会があることを前提に、のべ123万人が民間試験を受けると予測する。

 現在、大学入試センターから認定を受けた民間試験は8つ。検定料には幅があるが、現状で最も安いのが実用英語技能検定(英検)3級の5800円。逆に最も高いのはケンブリッジ英語検定の2万7000円だ。仮にその間をとって1万円と見積もっても、〈1万円×123万人=123億円〉に膨れ上がる。高校2年から練習で受検する者も含めたら簡単に150億円を超える市場が出現する計算だ。まさに巨大な“ビジネスチャンス”である。

◆旗振り役「慶應元塾長」への疑問

 この「民間試験導入」はどのようにして実現に至ったのか。

 そもそも〈民間資格・検定試験の活用〉という方針を文部科学省が打ち出したのは2014年12月、諮問機関である中央教育審議会(中教審)の答申だ。民主党政権時代からのベテラン委員で、答申当時の会長として議論を取りまとめたのは元慶應義塾大学塾長の安西祐一郎氏。文科省OBは「答申を出した後も関連の会議のトップを務めてきた安西氏は、入試改革を推し進めた最大の功労者」と証言する。

 その自負からか、東大が不採用を打ち出した昨年秋、安西氏は読売新聞が運営するウェブ版のインタビューで「東大の見識を疑う」と激しく“口撃”している。そんな安西氏の背景を取材すると、あるテスト業者との間に“関係”が浮かび上がってきた。

 8つある民間試験のうち「有力な選択肢」(塾講師)との呼び声高い、「GTEC」。通信教育大手のベネッセとともにこの試験を共催するのは、「進学基準研究機構(CEES)」という聞きなれない名前の一般財団法人だ。

 同法人の所在地は新宿にあるベネッセ東京本部の社内。公式HPの役員一覧によれば、理事長は文部事務次官を務めた佐藤禎一氏だ。この天下りの事実だけでも文科省との深い関係がわかるが、問題はそれだけではない。


さらにHPには記載がないが、法人登記によれば2014年11月の設立と同時に就任した3人の「評議員」の筆頭に、安西氏の名前があるのだ。民間活用を打ち出した中教審会長が、答申前に民間試験業者側にポストを得ていたとあれば、利益相反の疑念が生じてくる。議論が民間試験導入の方向に曲げられたのではないかという疑念だ。

 しかも安西氏は、中教審の答申を取りまとめた後も2015年2月〜2017年2月には文科省の顧問として、2018年6月からは参与として、業務実態に応じて日給2万6200円もしくは2万2700円の報酬をそれぞれ得ている。

 一方のベネッセは文科省が小学6年と中学3年の全児童・生徒を対象に約50億円という巨額予算を投じて毎年実施する「全国学力学習状況調査」を直近5年間、毎年落札している。

 この入り組んだ関係を俯瞰してみると、「民間試験導入」でベネッセは新市場を、導入を主導した安西氏はポストと報酬を、文科省は新たな天下り先をそれぞれ手に入れる──そんな構図が見えてくる。1月10日、都内の会合から出てきた安西氏に、筆者はこの点を直接、問い質した。

「それ(評議員就任と中教審答申)は全く関係ないと思う」

──答申直前に評議員に就任されたことは適切だったとお考えですか。

「えーと、それはちょっと(回答を)考えますけど」

──CEESからは報酬は受け取っていますか?

「受け取っていないです。ええ、1円も」

 一方のベネッセは、安西氏に答申の方向性の希望を伝えるなどしたのではないかとの問いに「一切ない」(広報・IR部)としたが、報酬については「評議員の方にお支払いしている固定の報酬はない」という表現の仕方をする回答だった。

 受験生の人生を左右する入試には、何よりも「公正さ」が求められる。新たに導入される入試制度の運営体制は、その条件を満たしているのか。



●取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)







関連記事:東大vs慶應 偉い教授たちが罵り合いの大ゲンカ勃発
https://www.news-postseven.com/archives/20180921_766243.html?PAGE=1#container


2018.09.21 11:00


 日本の最高学府の頂点に立つ存在といえば「東京大学」で間違いない。一方、ビジネス界に目を向けると、最強の“学閥ブランド”に私学の雄「慶應義塾大学」を挙げる声も大きい。両大学がぶつかり合うのは東京六大学野球くらいの印象しかないが、最近になって東大と慶應が“正面衝突”する出来事が起きた。


 きっかけは〈東大の見識を疑う〉と題した1本の記事だった。読売新聞が運営するウェブサイトに9月10日付で元慶應義塾塾長・安西祐一郎氏のインタビューが掲載されたのだ。


 安西氏は認知科学を専門とする研究者で、2001年から8年間、幼稚舎から大学まで慶應全体を統括する塾長を務めた。また、日本学術振興会理事長や私立大学連盟会長も歴任した。「慶應の顔」ともいえる人物が、「東大の知」を否定しているのだから、穏やかではない。


 背景には、大学入試改革を巡る対立があった。政府は2020年度から、毎年50万人が受験する「大学入試センター試験」に代えて「大学入学共通テスト」を導入する。


 その際、英語については、英検やTOEIC、TOEFLといった民間業者による試験の結果を、合否判断や出願の条件に採用する方針を打ち出している。


 そんな最中の今年7月、東大の学内WG(座長・石井洋二郎副学長)は「見切り発車すれば受験生が迷惑を被る」として、「出願にあたって(民間の)認定試験の成績提出を求めない」という選択を第一とする答申を発表した。


 これは東大の最終結論というわけではない。だが、その選択は、国内にある82の国立大学だけでなく、東大との併願者が多い私立大学の方針にも影響することが確実視されている。


2014〜2015年に中央教育審議会(中教審)の会長を務め、「民間試験導入」の制度設計責任者だった安西氏としては、面子を潰された格好になる。インタビューで安西氏は怒りをぶちまけた。


〈わが国の未来を創り出す責任を背負った東大の今後あるべき姿とかけ離れた、見識を疑う内容の答申と言わざるを得ない。一読して、答申を書いた人たちは英語ができないに違いないと思った〉


 安西氏から、“英語ができない”と切り捨てられた東大WGだが、名を連ねるメンバーにはイリノイ大学で言語学の博士号を取得した教授など“英語のプロフェッショナル”が複数加わっている。だが、安西氏の弁舌は止まることなく、東大生の英語力にまで及んだ。


〈英語力というのは、しっかりした構文規則と豊富な語彙を使いこなし、相手の立場や文脈を考慮して、論旨明快に英語で表現する力のことだ。東大生がすべてこの力を持っているとはとてもいえない。(中略)もし答申が通って英語入試が矮小化されるのなら、東大は時代の牽引者として国民が負託すべき大学に値しない。そうであれば多額の税金を注入する必要はない〉


◆慶應はもうちょい勉強しろ


 慶應の元塾長からここまでこき下ろされては、東大側も黙ってはいない。英米文学が専門の阿部公彦・東大教授は、ツイッター上で反撃に出た。


〈わ、東大を脅迫ですか。答申の疑念には答えず、東大の英語教育に難癖。(中略)もうちょい勉強して欲しいなあ、元慶應塾長さん〉


 これには東大アカデミズムの内外から1500を超える「いいね」が集中した。さらに阿部氏は続く投稿で、


〈もし、安西さんの言うように東大が「国家のための大学」なら(すごいなあ〜!)、誤った政策に対して「最後の防波堤」とならないとね〉と民間認定試験の“導入反対”を皮肉たっぷりに表明したのだ。阿部氏に真意を聞いた。


「現在、提案されているやり方だと、英語の試験を複数の民間業者に丸投げするようなかたちにもなりかねないが、それぞれビジネスや教養など目的も違い、設問の仕方も違う。それなのに無理にセンター試験のように共通の基準に換算しようとしている。それでは受験生のスコアを正確に比較することは簡単ではありません。走り幅跳びと棒高跳びを比べるようなものです」


 民間試験導入の問題点をそう指摘した阿部氏は、疑念はそれだけに止まらないとして、こうも続けた。


「センター試験は内容的にも運用面でも評価の高いものでした。ところがこれを解体することで、受験生は新しい試験への対策に迫られるかたちとなり、塾業界は今、その不安を煽ることで活況を呈している。教育の理念より、ビジネスの論理が先行する話のように思えてなりません」


 東大側からの指摘にどう答えるのか。安西氏に取材を申し込んだが、「今回の件では取材をお受けしません」との回答だった。
 
※週刊ポスト2018年10月5日号


阿修羅関連投稿:http://www.asyura2.com/18/senkyo254/msg/459.html



http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/571.html

[政治・選挙・NHK256] 東洋大 竹中平蔵批判立て看事件の舩橋君 「おかしいことをおかしいと言えないのは、おかしい」その後


東洋大、竹中平蔵氏批判の学生に「退学」勧告? 立て看板とビラ配布


https://mainichi.jp/articles/20190125/k00/00m/040/410000c
毎日新聞2019年1月26日 08時00分(最終更新 1月26日 10時32分)

 東洋大白山キャンパス(東京都文京区)で、一人の学生が、同大国際学部教授の竹中平蔵氏を批判する立て看板を掲示し、ビラをまいた。竹中氏は小泉政権時代に構造改革や規制緩和を主導した経済学者だ。学生の抗議活動は大学側により直ちに中止させられた。学生は「大学から退学を勧告された」と訴え、毎日新聞の取材に「おかしいことをおかしいと言えないのは、おかしい」と大学を批判する。大学側は退学させることはないとしている。【大村健一/統合デジタル取材センター】


◆10分後には職員数人が駆け付け


 学生は東洋大文学部哲学科4年の船橋秀人さん(23)。彼によると経緯はこうだ。


 1月21日午前9時ごろ、白山キャンパスの南門付近で、一人で「竹中平蔵による授業反対!」と大書した立て看板を設置し、竹中氏を批判するビラを学生たちにまき始めた。


 ビラはA4判1枚の両面刷り。竹中氏が経済誌のインタビューで語った「若者には貧しくなる自由がある」(東洋経済オンライン2012年11月30日)などの発言を引用し、竹中氏の唱えた規制緩和で非正規労働者が増え、大多数の働く人が不幸になっている――と主張。後半で、竹中氏が東洋大で教えていることについて「皆さんは恥ずかしくないですか。僕は恥ずかしい」「意志ある者たちよ、立ち上がれ! 大学の主役は、我々学生なのだ」と訴えている。


 用意したビラは70枚。メガホンも使わず学生たちに呼びかけ、手渡す。開始から約10分後、10枚ほど配ったところで数人の大学職員が止めに来て、立て看板が撤去された。


◆抗議活動は退学処分に該当?


 船橋さんによると、このあと学生部の部屋に連れて行かれ、約2時間半、大学職員数人から叱責された。


 職員たちは大声で「(ビラ配布で)大学の印象を悪くしたことを分かっているのか?」「(竹中氏は)影響力のある人だから、今後の君の将来に影響が出るんじゃないか?」などと言った。ビラに記載した「東洋大立て看同好会」(https://twitter.com/6N8JeOXEKgmbO21)のツイッターアカウントについても、職員は「君には表現の自由があるが、それには責任も伴う」などと言い、消去を求めてきた。


 職員たちはさらに、大学が学生に配布する「学生生活ハンドブック」を取り出し、「退学処分」に該当する条件として


 ・性行不良で改善の見込みがないと認められる者


 ・本学の秩序を乱し、その他学生の本分に反した者


と書かれた部分を示して、抗議活動がこれに該当する可能性があると説明。最後に「また改めて君や親に電話する」と言われた。


 船橋さんはやりとりを録音していなかった。


 一連の経緯は、知人のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への投稿で22日にかけて一気に拡散された。


 学生からの批判をどう受け止めているのか、竹中氏に取材を申し込んだが、同氏は大学広報を通じて「海外出張中のため取材対応は難しい」とコメントした。


◆大学側「退学処分の事実はない」


 一方、東洋大は23日、大学のサイトに「学生の学内での無許可の立看板設置並びにビラ配布に関する本学の対応について」(http://www.toyo.ac.jp/news/top/201901231500/)とする文章を掲載した。立て看板は「原則禁止」で、無許可でのビラの配布を禁止しているとして、「当該学生に対し指導いたしました」と説明している。


 船橋さんが「退学を勧告された」と訴えている点については、「事実確認と禁止行為に関する説明を行ったが、ネットなどで散見されるような当該学生に対する退学処分の事実はない。本件に関して、所属学部では退学としないことを確認している」と説明。両者の主張は食い違っている。


 大学側は船橋さんとの話し合いの中で、退学処分を勧告したり、ツイッターアカウントの消去を求めたりしたのか。


 東洋大は毎日新聞の取材に「退学は勧告していない。禁止行為を行うと場合によっては処分となる、処分の中には重いものでは退学もある、と説明した」と回答。ツイッターについては「いろいろな意見が生じやすいネットで記事が残り続け、学生本人に不利益が生じないかを案じ、記事を控えた方がいいのでは、という趣旨で説明した」とする。


◆抗議は何もかもたった一人で


 何が船橋さんを突き動かしたのか。「(竹中氏の)徹底して若い世代を『使い捨て』にするような言動に、ずっと憤りを感じていました」と説明する。年明けごろから「何かをやらなければ」という思いが募り、ビラも立て看板も数日で仕上げた。「勇気が必要で、決断まで時間がかかってしまった」とも。


 船橋さんは特定の政治的な党派や組織に属していない。「何かの団体の代弁と思われると、なかなか関心を持ってもらえない。これまでも属してこなかった。一人でやれば『勇気がある』と思ってもらえるかもしれないし、『あいつ何をやっているのか』と関心を持ってもらえるかもしれないと思いました」


 1960〜70年代の学生運動のことは知っているが、立て看板を作ったのは初めて。埼玉県の実家の近くにあるホームセンターで150センチ×60センチほどの板とペンキを買い、一人で作った。作り方が分からず、下書きをしなかったため、字の間違いもあった。ビラにあるツイッターアカウントは「東洋大立て看同好会」だが、実態は船橋さん一人だ。


 大学ではカントなどドイツ哲学を専攻し、パラグライダー部に所属。就職先も決まっていて、4月から東京都内で働く予定という。高校まではサッカー部だったが、フォークソングが好きで、ギターで井上陽水らの曲を弾き語りする。


◆「少しでも関心を持ってほしい」


 21日以降、船橋さんが見た範囲でSNSには「勇気ある行動に感銘を受けた」などと応援する声が多かった。当初は「東洋大に退学を勧告された」という船橋さんの発信が拡散され、「これで退学処分はおかしい」と大学側に憤る声も多かった。


 批判も寄せられた。船橋さんが竹中氏の授業を受けたことがない点を踏まえ、「ビラや立て看板ではなく、授業に出て本人に伝えるべきだ」という意見があった。しかし、船橋さんは言う。「授業に出て(感想などを記す)リアクションペーパーで訴えても何かが変わるとは思えなかった。竹中教授個人だけでなく大学の姿勢そのものも問題だと思う。それで今回の行動になりました」


 メッセージアプリ「LINE」でも友人が連絡してきた。反響はさまざまだが「非正規雇用」や「高プロ」などについての基本的な質問も寄せられ、「少しでも関心を持ってもらえたのはよかった」と話す。2月以降は入学試験などもあり、卒業まで時間は少ない。それでも船橋さんは、今後も立て看板やビラ以外での抗議を考えている。


 大学や就職先の企業、家族からの連絡は、23日夕方の取材時点ではないという。




内海 信彦 さんは船橋 秀人さん、他3人と一緒です。
https://www.facebook.com/nobuhiko.utsumi


1月27日 2:35 ·


...


船橋秀人君、
元気一杯、勇気百倍、意気軒昂ですよ!


鄭 甲寿さんと久しぶりに再会しました。
昨年、鄭さんに早稲田大学にお出でいただいた時に、船橋秀人君の研究主題であるカントをめぐり皆でお話しました。今回の船橋君の実践に基づいた普遍的真理の探求について、昨日も鄭さんからお話をしていただきました。


私見ですが、船橋君の実践的な真理の探求は、単身行ったものです。であるが故に極めて孤立していて、常識を超えた苦難に曝されて、思索と煩悶を経て、孤独な想いのなかで行われました。だからこそ、船橋君は荒野の中を彷徨ったように強く、逞しいのです。自立した思考と創造をめざすものに、孤立と孤独は不可欠です。


荒野に出でて、彷徨わなければ得られないような、ヴィジョンクエストを、船橋君は自らに課した のだと思います。船橋君の実践は、既成の政治主義や現実に存在する既成の社会変革の地平を超えて、若さ故に大胆に飛翔し始めたドリームキーパーの試行ではないでしょうか。


まことに無から在ることに至る苦悶を、思索し、創作するものは経てみないことには、荒野を出ることなど不可能なのです。現代というどうしようもない時代に、ヴィジョンクエストに挑んで荒野に旅立つ若者は、絶滅したかと思われていますが、船橋君のように思索と創造に挑んでいる若者は、あえて単身孤立して孤独に逞ましく生きています。


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1月26日 23:15 ·


...


今日、ある方からうかがったのですが、東洋大学創立者井上円了先生のお孫さんも、大学当局の船橋秀人君への横暴な振舞いに、お怒りだとのことです。


以下は、船橋秀人君が大学最後の講義を受けて、講師の方が話されたことです。
船橋秀人君より



船橋 秀人 1月26日 17:30


東洋大学でも講義を行なってる楠秀樹先生より。
講義内で東洋大学の問題について取り上げてくださいました。


「今日は白山のラストだった。子どもの貧困の話などしたあと次のような話をした。


この貧困や格差に困窮する現在の日本のあり方の根本には、小泉政権以来の雇用や経済の変化がある。昨年この講義を受講していた学生がタテ看板やビラを配ったとニュースになったが、たしかに竹中平蔵氏は、学者としてではなく、政権の中枢で今の日本をつくった責任がある。大学でこの講義に限らず、文系科目では悲惨が取り上げられているが、たしかにその原因の一端がこのキャンパスで存在していることに対する抵抗感を私も禁じ得ない。」


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http://www.asyura2.com/19/senkyo256/msg/828.html

   

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