◆──アニメトラウマで「オウム事件」を考える

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投稿者 SP' 日時 2001 年 5 月 08 日 08:25:47:

回答先: 悪の世の写し鏡 投稿者 SP' 日時 2001 年 1 月 18 日 09:23:50:

アニメの醒めない魔法』(高田明典著、PHP研究所)より。


 多くの子供向け番組が扱っている深層構造としては「大人への反抗」をあげることができます。子供を叱り、ルールや規範を強制する「大人」の存在をうとましく思わない子供はいません。この「大人社会への反抗」という深層構造は、したがって、子供向けの娯楽全般の永遠のテーマであるとも言えます。
 もちろん、大人に反抗したいという気持ちがアニメによって惹起されたわけではなく、子供の心の中にあるその気持ちをアニメが良く表現しているのだと言えます。
「大人社会への反抗」は、どの時代の若者にも若干は存在するものであり、そのこと自体が悪として捉えられるべきものではありません。若者の反抗心は往々にして、社会をより良いものにしていくための原動力だからです。しかし、度を外れた反抗心や、単に恨みによって駆動されている反抗心は願い下げです。
 アニメや特撮などの子供向け番組の影響は、この種の反抗心をどのような方法で充足・解消させるかというところに存在します。これを、「水路づけ」と呼ぶことは前の項で説明しました。問題は、この水路の出口にどんな行動が形成されているかということの方です。
 細かくは後述することになりますが、一九六〇年代後半から一九七〇年代初頭にかけて放映されていた子供向けテレビ番組の多くにおいて、「大人社会への反抗」と「科学の否定」という構造が用いられていました。
 言い換えれば、これらの「敵=大人社会=科学」という構図は、現在三十代前半に位置する人間たちが幼い頃に視聴したテレビ番組において多く用いられていた構図でもあります。例えば、「サイボーグ009」であり、「仮面ライダー」であり、「人造人間キカイダー」であり、「鉄人28号」であり、「ジャイアントロボ」です。それらの子供向けテレビ番組では、敵である「ショッカー」や「ダーク破壊部隊」が圧倒的な科学力を有する秘密結社として描かれています。
 さらに、その主人公は、敵である犯罪秘密結社によって制作されたヒーローです。これらの子供向け番組においては敵秘密結社は「大人社会」の暗喩であると同時に「科学」の暗喩となっています。秘密結社に敵対する主人公も、実のところ「科学の産物」であり「大人社会の産物」です。科学に対抗できるのは科学のみであり、大人に対抗できるのも大人のみです。したがって、彼ら主人公はふだんは「生身の人間」ですが、敵が出現すると「異形の者」に変身して子供たちを救います。
 大人社会に反抗したいという欲望は、科学の否定・科学への反抗という出口から流れ出すことによって解消されるのです。彼ら子供の心には、「大人社会への反抗」という欲望が「科学に反抗」することによって充足されるという水路づけが形成されていると言えるでしょう。
 例えば、サイババの紹介本がヒットした背景にも、その著者(青山圭秀氏)が「先端分野にいる科学者」として紹介されているという要因があります。「科学の側によって作られたヒーロー」が、自分たち「子供」の味方をして大人たちの「けがれた科学」をやっつけてくれるという構造が明らかに存在しています。その意味で、その著者は「仮面ライダー」であり「キカイダー」であると言えるでしょう。
 このようなテレビ番組を視聴し、水路づけを形成してしまった子供がそのまま成長すると、どのような行動に出ることになるでしょうか。彼らが「大人社会」に反抗するためには、「科学の権化」に変身しなくてはなりません。科学の権化である異形の者に変身した主人公のみが、この「汚れた社会」から人間を救済できるという滑稽な結論に達するのは、理解できます。もちろん真に問題なのはそれらのテレビ番組の影響ではなく、自分たちが立派な大人(年齢的には)になっているにも拘らず、大人社会への反抗などという「子供の精神の尻尾」を心の中に残したままの「コドモ大人」の状態に甘んじていることの方なのです。大人になるということは「酸いも甘いも噛み分ける」分別を持ち、同時に「清濁併せ呑む」知性を持つことでもあります。
 ここで説明したアニメトラウマが極めて苛烈な形で出現してしまったのが、昨今世間を騒がせている「オウム真理教」に代表される超能力宗教のブームでしょう。超能力宗教において用いられているこの構造は、「大人社会=科学」であると捉え、「科学では説明できないこと=超能力」への傾斜を強めることによって裏側から科学を否定し、同時に大人社会を否定することによって、反抗心を充足させるところに特徴があります。「科学で説明できないことはたくさんある」というのが、彼ら「超能力信者」の常套句であるのは、だから当然なのです。特に、「科学部隊」を中心に置くオウム教団の構成は、この種のアニメトラウマの構造に良く合致します。しかし、だからと言って「超能力宗教」全体を非難するにはあたらないでしょう。たとえそれがどんなにくだらないことであろうと、人が信じていることを非難することはできません(誤っていると指摘することはできるが……)。犯罪行為にさえつながらなければ、勝手にどうぞ……というわけです(まぁ最近の状況をみると、そうも言っていられないのだが)。(p47-51)


科学への反抗 〈仮面ライダー (1971─1973)〉


   ◆──「仮面ライダー」の表層ストーリー

「仮面ライダー」・「キカイダー」・「ジャイアントロボ」・「鉄人28号」・「サイボーグ009」──これらに共通している表層構造は、敵と闘う主体者が「敵によって作られた」ものであることです。すなわち、裏切りであるとも言えるでしょう。その中でも仮面ライダーは、最も敵に近い味方です。彼はバッタの改造人間であり、その容姿は、ゆえに正義の味方らしくありません。仮面ライダーの表層ストーリーは典型的に以下の形式をとります。
 (1)ショッカーによる悪事(怪人登場)
 (2)本郷猛(後に一文字隼人)の、生身による対抗と失敗
 (3)仮面ライダーへの変身
 (4)ショッカーの怪人を撃退
 仮面ライダーはウルトラマンのようにスーパーエゴ(超自我)でもなければ、ウルトラセブンのような勇気の発露でもなく、怪獣のようにエス(原始的衝動)でもありません。実は彼らは全て、敵と味方の中間に存在する得体の知れないものなのです。これは石森章太郎ものに特徴的な構造で す。これらのテレビ番組のもう一つの特徴は、敵が秘密結社等の集団であることです。この構造は、同じヒーロー物でもウルトラマンのシリーズには無かった構図です。そしてこの場合の「秘密結社」等の敵集団は、深層構造としては「大人社会」そのものの暗喩となっています。子供たちにとって得体の知れない秘密の敵集団は、まさしく彼ら子供に害をなす大人社会です。
 そして、仮面ライダーがショッカーによって作られた改造人間であるという構図は、「大人社会に属していたある大人が、そこを離反して自分たち子供を助けてくれる」という深層構造を持っています。ゆえに、仮面ライダーは改造人間であり、その他のショッカーの怪人と同様の異形をしている必要があります。仮面ライダーが敵と味方の中間に存在する得体の知れないものであるのは、それが大人と子供の中間に存在するいわゆる周辺人(マージナルマン)であることをも暗喩しています。
 大人に対抗できるのは大人でしかないということを子供たちは良く知っています。彼はふだんは普通の人間なのですが、ショッカーが現われると変身して子供たちをその「悪」から守ってくれます。この深層構造に準じて考察を進めると、登場する人間は全て子供の暗喩であると言えます。そして全てのショッカーの隊員や怪人が大人の暗喩です。
 子供の側に立つ本郷猛や一文字隼人が「変身ベルト」を用いて、怪人である仮面ライダーに変身するという構図は、子供が「良い大人」に変身することを表していると言えます。が、しかし完全に大人になってしまうのでは敵になることと同義ですので、「一時的な変身」というレトリックが用いられることになります。幼い視聴者は一文字隼人に自己投影することにより、「大人になって、その大人社会を退治したい」という願望を充足させます。しかし、その欲求は実は矛盾しているのです。なぜなら「大人になる」ということは、すなわち「ショッカーの一員になる」ということだからです。自分が大人になってしまっては、元も子もなくなってしまいます。

   ◆──「ライダーキック」の意味──科学VS.原始の構造

 この矛盾状態を解消してくれるのが「変身」です。変身した一文字隼人は、必ず元の人間に戻ります。そして、「アンパンマン」において見られる構造同様、仮面ライダーの主たる武器は光線銃や科学的な兵器ではなく「ライダーキック」「ライダーパンチ」という極めて原始的なものです。子供は科学的な兵器を使いません。この特撮ものに特徴的な表層構造は、「科学VS.原始」の構図です。ショッカーは圧倒的な科学力を有する強大な敵として描かれています。敵である秘密結社に「科学」の色を塗り付けることは、この当時のアニメや特撮で大流行した現象です。実のところ、これは一九六〇年代後半から一九七〇年代初頭のみの現象であり、一九七〇年代も後半に入る頃から、この種の「圧倒的な科学力を有する敵」という構図は用いられなくなります。
 例えば「マジンガーZ」('72−'73)においては、主人公も敵同様(もしくはそれ以上)の科学力を有する存在として描かれています。さらに時代が下ると「科学的な色彩」そのものが薄れていきます。科学VS.原始の構図を有しているのは、この仮面ライダーの他、「人造人間キカイダー」('72−'73)、「サイボーグ009」('68)といった石森章太郎もの、および「鉄人28号」('63−'65)、「ジャイアントロボ」('67)などであり、それらの放映時期は一九六〇年代後半から一九七〇年代初頭に集中しています。前述したとおり、これらの番組の主人公たちは全て「敵の科学力によって作られた者たち」です。「マジンガーZ」以降のアニメでは、「ふしぎの海のナディア」と「それいけ! アンパンマン」が科学VS.原始の構図を持っていますが、それ以外にはほとんど見当たりません。

   ◆──深層構造

 表層ストーリーは以下のような深層構造を有していると言えます。
 (1)科学に代表される大人社会の露呈
 (2)子供のままでの反抗と失敗
 (3)科学を用いる「大人」への主人公の一時的成長
 (4)大人社会の撃退
 成長することによって自分が大人になり、恐怖や嫌悪の対象である大人社会を撃退するという構造は子供に受け入れられ易いものであると言えるでしょう。そして撃退の対象である大人社会とは「科学技術」そのものです。おそらくは、公害や科学による人間疎外などといった問題が当時取りざたされていたことによるものであると思われますが、この種のアニメを視聴した子供の心の内部には、科学を恐怖の対象と考えるとともに、大人社会=科学という構造が打ち込まれた可能性があります。大人に対抗できるのは大人のみであり、また、科学に対抗できるのは科学でしかありません。その構造は「仮面ライダー」や「ジャイアントロボ」にも如実に表現されています。

   ◆──「科学技術」への拒否反応

 科学信奉のこの世の中で、「物理・化学・地学・生物」といういわゆる理科系科目から落ちこぼれた若者は多いと言えるでしょう。それは単に文系進学者とか理系進学者とかいう枠組みでは括ることができないものでもあります。理系進学者でさえ、実は先端科学からは落ちこぼれています。
 彼ら(もしくは僕ら)は、この二十世紀に生をうけながら、「まともな科学教育」を受けることもなく、また「科学」の本質に一度も触れることなく成長してきた人間です。私たちが受けてきた科学教育とは、実は「科学技術教育」に過ぎず、それさえも受けていないに等しい人間は圧倒的多数を占めていると言えるでしょう。ほとんどの人間はラジオを作れないどころか、その仕組みすら知りません。
 数式と記号に彩られて科学が複雑怪奇なものになってしまった現代においては、全ての人間が「科学技術からの落ちこぼれ」です。先端分野にいる研究者でさえ、専門を少しでも外れた分野においては、ただの「落ちこぼれ」でしかありません。その意味では、もちろん私も例外ではないでしょう。しかし「科学」は「技術」とは異なります。
 古典文学から落ちこぼれたという認識は日常生活を営む上で何ら影響しないでしょうが、科学技術の方は巷に溢れています。どこへ行っても何をするにも「科学技術」を利用し、それに頼らなければなりません……自分が一度は破れた「科学技術」に依存しなければ、私たちは生きていくことさえできない情けない存在です。そして、そのような過程で「科学技術への拒否感情」が次第に「科学の否定」「科学への反抗」に置き換えられていくことも、ままあることでしょう。繰り返しにな りますが、科学と科学技術は別物です。
 この「仮面ライダー」によるアニメトラウマは、当時五歳程度であった子供の心の中に形成されている可能性が高いものです。一九七〇年から一九七五年当時五歳だった視聴者は、一九九五年に二十五〜三十歳となっています(私の世代だ)。彼らの心に「大人社会への反抗心」が生じたとき、彼らは「科学を否定し、そして自らが科学を用いることによって、大人社会を撃退する」という一見矛盾した行動をとるのではないかと予想されます。実際には「自分が大人になっている」にも拘らず「大人社会への反抗心」を持っていることの方が奇妙なのであって、この種のアニメに問題があるのではありません。心の中にどんなに歪んだ水路づけが形成されていたとしても、その水路に水が流し込まれない限りは、それが行動として表出することはないはずです。


宗教的超能力への希求 〈レインボーマン (1972一1973)〉


   ◆──「レインボーマン」の表層構造

 レインボーマンは、インドの山奥でヨガの修行していた主人公に「ダイバダッタ(提婆達多)」の魂が宿って、正義の味方「レインボーマン」となり、悪の秘密結社「死ね死ね団」と戦うという実写版特撮ものです。変身ヒーローものであるこの特撮の表層構造は予想にたがわず単純なものであり、以下に示すものを典型とします。
 (1)死ね死ね団(主領ミスターK)の悪事
 (2)通常努力、および化身しての戦闘と失敗
 (3)「ヨガの眠り」や修行によるエネルギーの再充填
 (4)レインボーマンに化身しての戦闘
 (5)勝利
 このレインボーマンに特徴的な表層構造は、通常の変身ヒーローとは異なって主人公が「修行者」であることです。結局のところスーパーヒーローに変身(作中では「化身」)してしまうわけですからウルトラマンや仮面ライダーと何ら変わりはないのですが、修行によって得た超能力が主人公の「武器」となっています(例えば、「遠当ての術、トォッ〜!」……などというのは、私も好んでマネしたものです)

   ◆──深層構造

 表層構造に対応する深層構造も、実のところ多くの変身ヒーローもので用いられているものと同じです。
 (1)大人社会の汚れの提示
 (2)通常の努力での社会の変革努力と失敗
 (3)修行によって超能力を身に付ける
 (4)汚れた大人社会の撃退
 特徴的なのは、前述のとおり「変身」が修行の結果であるということです。「アノクタラサンミャクサンボダイ……」等という変身呪文は、極めて宗教色の濃い神秘的なものであり、当時の視聴者である私を含めた子供たちに圧倒的な影響を与えたと思われます(だから、今でも暗記しているわけだ……)
 この深層構造に触れた子供の内部に形成される水路づけは、「大人社会への反抗心→修行による超能力の修得」です。「修行による超能力の修得」そのものが水路の出口としてそのまま残っているというようなケースは、そう多くないでしょう。しかし、「ショッカーによってバッタの改造人間にされる」という表層構造や「ジャイアントロボの操縦者になる」という表層構造が全く現実的ではないのに対して、この「修行による超能力の修得」は現実的な色彩を強く有しています。暗喩が暗喩として機能するのは(つまり、表層構造が深層構造に転換されるためには)、表層構造が「非現実的な事態」である必要があります。もちろん「超能力」などというものは明らかに「非現実的なもの」なのですが、実のところこの日本社会では相当に「現実的なもの」として扱われている場合が多いのが悲しむべき現状です。

   ◆──「オウム真理教」と「レインボーマン」の符合

 一九九五年現在、世間を騒がせている一連のオウム疑惑の報道を見ながら私が真っ先に思い出したのは、この「レインボーマン」です。地下鉄サリン事件や拉致監禁事件や狙撃事件は、確かに「死ね死ね団」の破壊工作に似ています。しかしそれらの事件がオウム教団の人たちの犯行によるものであるかどうかは現状では全く不明であり、予断に基づく考察は不毛です。
「死ね死ね団」の主領はミスターKと呼ばれる外国人(アメリカ人?)であり、黄渦論の信奉者でもあります。米軍がオウム真理教を攻撃しているという彼らの主張も、この「レインボーマン」の敵対関係に符合しています。ことによるとオウム教団の「育ち過ぎた子供」の面々は、この「レインボーマン」によって打ち込まれた「水路(欲望と行動の道筋)」に従った行動を無意識のうちにとっているだけという可能性があります。
 オウム教団の行動の特徴は、超能力と科学を用いて社会に反抗するということでしょう。一連の疑惑の真偽の程は司直の判断に委ねるとしても、彼らが超能力および科学技術を中心に据えて、社会から隔絶した共同体生活を送っていたことは事実です。もちろん、現世から隔絶した生活を営むこと自体の中に、「現代社会の否定」「現代社会への反抗」の意図が存在することは当然です。そして、このような感情を胸に持っている若者は、実は結構多いのではないでしょうか。
 人間にとって「反抗期」の存在は重要です。反抗期を過ごすことによって、多くのアニメトラウマやその他の「歪んだ水路づけ」が、あたかも「傷口から膿が出るようにして」消失していきます。そして、確固たる反抗期を経ないで成長した人間においては、その種の「歪んだ水路」がそのままの形で温存されている可能性が多分に存在します。
 俗にいう「エリート」の問題は、ここにもあります。「優秀な子」「褒められる子」「いい子」として成長しているエリートと呼ばれる人間たちには、反抗のチャンスや対象物が与えられない場合があるからです。そして反抗のチャンスがないままに成長した彼らは、自分の心の「水路づけ」が実は歪んでいることに気がつかないまま大人になってしまいます。「大人への反抗心という欲求不満状態が、超能力の修得によって解消される」などという滑稽な水路づけが温存されているとしたら、その人間はまともな反抗期を過ごさなかったのだと考えて良いでしょう。そんなことがありえないということは、せめて高校生になるまでの間に気づくべきですし、事実、「まともな」大人たちの中にもそのような「恥ずかしい思い込み」の時代を過ごした人は、いるはずです。スプーンを曲げたり、たかが数メートル飛び上がったりすることがたとえできたとしても、それでは何も変わらないし、そんなくだらない能力によって社会が改良され るはずもありません。ましてや、そのほとんどはインチキやダボラなのですしね……。
 オウム教団の幹部の心のうちには、ここに示した「変身ヒーローもの」の表層構造の(1)〜(5)の進展に相当する心境の変化が存在しているはずです。衆議院選挙に出馬した頃のオウム教団は、ある程度真摯に社会変革を考えていたのではないでしょうか。そして、生身で(変身せずに、選挙という通常の方法で)、社会変革を達成しようと考えた彼らは、手痛い敗北を喫することになりました。この頃から教団が性質を変え始めたという様々な報告は、その敗北によって彼らが「変身」したことを示しています。
 よくある変身ヒーローものアニメのように、主人公が「変身できる」ということは秘密です。衆議院選挙にうって出て見事に惨敗した彼らの心の内部には圧倒的な疎外感が生じたことでしょう。彼らの「反抗心」は、おそらく自分たちを決して受け入れてくれなかったこの現代日本の社会に対しての憎しみによって裏打ちされています。

   ◆──「汚れた社会」から救われる道

 この社会は完全無欠・純粋無垢ではありません。おそらく、過去現在未来を通して、完全無欠・純粋無垢な社会というのは、素晴らしい理想ではあるものの、常に理想に過ぎないものであるとも言えます。私たちは、昨日より今日、今日より明日が少しでも良い日であれば、それを以て満足するしかないのではないでしょうか。その段階的な社会改革の向こう側には当然「理想社会」があります。しかし、それは絶対に行き着くことのできない理想郷なのであるということを認識する必要があります。理想を失った社会は必ず退廃しますが、あまりにも過度に理想を追い求める社会はバランスを失って結局崩壊します。ましてや、革命的手法による社会改革などは、少なくとも現代社会においては労多くして益の少ないものだと思われます。社会改革の方法を考えている人々は、その効率を最優先して考慮に入れるべきでしょう。この情報化社会においては、血を流さなくとも充分に効果のある手法が多々存在しています。
 純粋無垢どころか、おそらくこの現代社会は十分に汚れています。しかしそれは私たち自らの選択によってそうなったものです。私はこの汚れた社会が好きですし、こんなもんで上出来だと思います。そしてこの汚れた社会が嫌いなのであれば、一部の宗教教団のように社会から隔絶された共同体で生活する権利を、私たちはあながち否定しはしません。それはそれで構わないでしょう(ちょっと不気味だと思ってしまうくらいは、許して欲しい)
 さらに、通常の方法でこの社会を改良していく努力を積むこと自体は称賛こそされるものの非難などされないはずです。私たちの「こっちの(おそらく普通の)社会」は決して「ショッカー」でも「死ね死ね団」でもありません。私たちは救済などされたくないし、困ってもいません。ましてや、打倒されるべきどんな理由も思いつかないのですが……。困っているのは、むしろオウム真理教に代表される「超能力宗教」にしか救いの道を求めることしかできない若者たちの方なのです。
 彼らオウムの側からすれば、この現代社会の方が「秘密結社」であり「死ね死ね団」なのでしょう。それは、彼らがことあるにつけて主張している「謀略説」にも見てとることができます。もしかすると、本当の「ショッカー」や「死ね死ね団」も、彼らと同じように「現代社会から攻撃を受けている」という認識を持っていたのかもしれません。オウム真理教は「レインボーマン」になろうとしていたのかもしれませんが、どこでどう間違ったか、「ミスターK」率いる「死ね死ね団」になってしまったのでしょうか?(p63-76)





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コメント
1. 2022年12月03日 22:32:41 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[15622] 報告
仮面ライダー 第54話[公式]
東映特撮YouTube Official
2022/11/30に公開済み
https://www.youtube.com/watch?v=I9ZxMPmQHmQ

人造人間キカイダー 第29話[公式]
東映特撮YouTube Official
2022/11/29
https://www.youtube.com/watch?v=IIdkLyk3Amc

〖祝!東映オンデマンド サービス開始〗<4K-HDR>劇場版 仮面ライダー 予告集[公式]
東映特撮YouTube Official
2022/12/01
https://www.youtube.com/watch?v=eRcLNKl1ubY

2. 2022年12月06日 23:58:28 : LY52bYZiZQ : aXZHNXJYTVV4YVE=[15655] 報告
がんばれ!レッドビッキーズ 第01話[公式]
東映シアターオンライン
2022/12/01
https://www.youtube.com/watch?v=xl9y71TzaxI

がんばれ!レッドビッキーズ 第02話[公式]
東映シアターオンライン
2022/12/01
https://www.youtube.com/watch?v=54LaaJcb08o

3. 2024年2月29日 02:15:49 : pFOo12dNeQ : S2x6SVQxaHdmaVE=[1201] 報告

消費税と自民党を叩くように誘導されてその通りに行動する今の時代の50代がいたらそれはホンモノのキチガイレベルだと判断して良いわけですね 爆

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