個人情報保護法案反対アピール その2

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投稿者 1985 日時 2001 年 5 月 31 日 18:57:51:

回答先: 個人情報保護法案反対アピール その1 投稿者 1984 日時 2001 年 5 月 31 日 18:55:57:

■田原総一朗(評論家)
プライバシーが保護されるべきは当然だが、この法案には隠された狙いがある。政治家や官僚、特殊法人や企業の不正、スキャンダルを追及するには、内部告発など、明らかに出来ない取材源が必要であることがきわめて多い。それを明らかにしなければならない、となれば事実上追及は不可能になる。新聞社や放送局は、例外扱いされるようだが、雑誌、そしてフリージャーナリストの取材は完全に縛られる。逆にいえば新聞や放送は大したことはやらないと、随分とみくびられたものだ。新聞よ、テレビよ、本気で怒れ。それにしても、法律をつくる側、つまり"権力"にからむ連中たちを、雑誌ジャーナリズムから遮断して守る。こんな意図みえみえの法律をつくらせるわけにはいかない。断固として!

■土屋健太郎(早稲田大学四年)
現在、早稲田大学の四年である僕は来春から、通信社に勤める予定である。これから「報道」の世界を歩もうとしている僕にとって、この個人情報保護法は大きな影響を及ぼすものなのではないだろうか、と不安を抱いている。恐らくこの法律が成立してしまったら、「公権力から発表されたことだけを紙上で報道する」ということが僕の仕事になってしまうのだろう。それではあまりに機械的で、やりがいがない。僕はそんなことがしたくてマスコミを志したのではない。話を聞くことが好きな僕は、マスコミに入ることで人脈を多く作り、数多くのインタビューをやっていきたいと思っていた。しかし、そこでもし彼らを批判するような、あるいは何かを暴露するような記事を書いて、この法律を盾に取られたら……。そう考えると僕の「やりたいこと」は出来なくなってしまうのではないかとさえ思う。僕自身が大きな希望を持って前に進めるように、この法案には反対したい。

■永江朗(フリーライター)
気をつけよう、甘い言葉と暗い夜道。「個人情報保護法案」のなにがいやかって、それがとことん甘い言葉でできていることである。個人の情報を悪い人から保護してあげましょうっていうんだから、こんなけっこうなことはない。でも、その個人って誰なのか、情報ってなんなのかは、この法案のどこにも書いてない。少なくともホントのところは隠されている。素直に「雑誌取締法案」とか「報道禁止法」とか「政治家保護法」とか「汚職隠蔽法」とかって名乗ればいいじゃねえか。それを、面と向かっては反対しにくい「個人」だの「保護」だのって言葉をまぶしたところが気に入らない。適用除外の対象について、曖昧な線引きをしているのも気に入らない。ようするに反対しそうなヤツらを分断してやろう、という意図が透けて見える。言論弾圧だ! と反発すると、「何を大げさな」と思う人もいるだろう。でも、法律をつくれば必ず拡大解釈したがるやつらが出てくるんだから。 

■林克明(フリーライター)
「我々の主要な敵は、テロリスト(ゲリラ)ではなくジャーナリストだ。彼らを殲滅せよ」。ロシアのプーチン大統領は、チェチェン共和国攻撃に際し、こう発言した。権力にとっては、ロシア軍に抗するゲリラより報道のほうが危険だと言うのだ。個人情報保護法案は、これと同じ発想である。現状と近未来を戦争たとえると次のようになる。敵軍(法案推進勢力)は重要拠点(読売新聞)を手中に収め、首都(朝日新聞)陥落は目前だ。つまり敵は正規軍(新聞・放送などの大メディア)を半ば支配下においている。だからこそ敵に必要なのは、ゲリラ狩りである。首都陥落後、信州の山岳地帯などに逃れ、なおも闘おうとする出版社、フリーライター、作家らを発見するために、ベトナム戦争で米軍が使用した「枯葉剤」の登場となる。緑深き山々をハゲ山にし、潜伏中のゲリラを発見して言論・表現の自由に最後の止めを刺す。その枯葉剤の役割が個人情報保護法案なのである。

■久田恵(ノンフィクション作家)
この法案を耳にした時、自分の人生を否定されたようないいようもない怒りを覚えた。今まで、書くという「自由」を胸に抱え、大切にして仕事をしてきた。私は主に市井の人々の生きる姿をルポしてきたが、そんな作品でもこの法律を遵守すれば、書けないことばかりになる。フリーランスのライターの存在を無視したなめきった法案だ。権力が、憲法で保障された表現の自由に干渉するということは、個々の価値観、思想信条にまでも国家が介在してくることにつながる。表現活動における国民相互の評価、批評、批判の自由は民主主義の根幹であり、それを安易に公的権力にゆだねるようなことは、決して許してはいけない。自己表現を抑圧された世界で、果たして人々は希望を感じることができるだろうか? 未来を思うことができるだろうか? そんな日本を私は後世に残したくない。

■日名子暁(ルポライター)
「ちょっと話を訊かせていただきたいのですが……」とソフトな口調で所轄署から連絡がある。警察体験がないと半ば恐れながら出向く。そこで用件を告げられる。たとえば、名誉毀損としよう。さり気なく「まあ、こういうことは当事者どうしで話し合っていただければ済むことなんですが、訴えがなされた以上、私どもも仕事ですのでお話をうかがわないわけにはいかないものですから」と切り出し、あたかも参考意見を訊くように、事情をすべて聴取する。終ると「ありがとうございました」と丁寧に送り出す。これにて一件落着かと安心していると、本庁から呼び出しがかかる。こんどは一変して身柄を拘束される。事情は全て所轄署で述べているのでいいわけはきかない。これは最新の事例である。とにかく、いかがわしい匂いのするものを管理し、排除しようというのが国だ。「個人情報保護法案」が成立すれば、まず、このケースのような弱い組織、個人が“見せしめ”のために逮捕される。それは私でもあり、あなたである。 

■福田文昭(カメラマン)
「個人情報保護法案をぶっつぶせ!」というFAXが来た。「あんたが一番につかまるよ」と。こりゃ名誉なこと。久しぶりに私の出番が来たか、血が騒ぐ。
「取材相手の許可なしには情報収集もできなければ、書くことも許されない」と法案には高らかに。一切の一切の批判は許さないぞとすごんでいる。権力者から満面の笑みがもれる。完璧だ。ぱちぱち。  すぐピンと来た。
「女房には全く頭が上がんないしなあー」
「愛人はちっとも黙っててくんないしなあー」
「本当にひどい目に会ったよなあー」
“ノーパンしゃぶしゃぶ”ゴッコで憂さをはらしながらかなわぬ夢を得意気に練り上げた数人の官僚や政治家の本音が見えてしまう。
いくら法律で助けてもらおうと画策しても、女房のお尻は重くなるし、愛人の復讐も鋭くなるばかり。法律も過ぎたるはなお及ばざるが如し。ゴーマン、フリンなエリート官僚にブレーキはきかない。

内閣官房内政審議室個人情報保護担当室長の藤井昭夫氏。
'48年、神奈川県生まれ。金沢大学院法学部卒。 '73年行管庁入省。

■藤 岡比左志(ダイヤモンド社編集者)
「個人情報保護法案」とは「言論・表現・出版の自由抹殺法案」である

およそこの世に存在するあらゆる物事や事象は、良いことも悪いことも、すべて批評や論評、報道の対象である。人間なら誰でも、自分の見たもの、知ったもの、調べたものについて事実を語り、意見や評価を加え、それを世間や第三者に言葉や文書・映像で伝える権利を持っている。これぞまさに「言論・表現・出版の自由」の権利だ。だがもし仮に、その行為の実現に、論評・報道する相手の事前の同意が不可欠であるとしたら、いったいどうなるか。自分に不利な情報が含まれた報道に、人は同意などするわけがない。そうなったら「言論・表現の自由」などは根底から揺らいでしまう。
21世紀も始まったばかりなのに、この民主社会の根源的ルールを改悪しようとする政権が登場するとは夢にも思わなかった。「個人情報保護法案」とは「言論・表現・出版の自由抹殺法案」である。日本の民主主義を殺し、物言わぬ国民を作る、この恐るべき法案を断固、廃案に追い込みましょう!

■藤吉雅春(フリーライター)
5年前、私のもとに信用保証協会からカネを返せという請求書が送られてきました。何年も前にカタがついたと思っていた父親のン十万円程度の借金なのですが、十数回引っ越している私の現住所を知っていることに驚きました。そこで信用保証協会に「やっぱ戸籍とか住民票を丹念に辿っていったんスか?」と電話すると、担当者は絶句。続けて、「役所には何と言って住民票を取り寄せたんスか? ボク、返済義務ないから、金銭貸借は理由にならないですよ」と聞くと、しどろもどろになるのでした。昭和63年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が制定されているのですが、私のような返済義務のない人間の住所まで丹念に調べるくらいですから、普段から行政機関とタッグを組み、大々的に戸籍や住民票が横流しされているのでしょう。個人情報を保護しようと言うなら、最も情報を保有している政府や行政機関をまずは締め上げないと何の意味もないのではないでしょうか。

ちなみに信用保証協会は何も言ってこなくなりました。それはそれで、日本の不良債権処理問題は大丈夫なのだろうかと心配にもなるのでした。

■法学部学生
私は将来、マスコミ関係、特に出版を希望している人間である。自分で取材し、文章を書き、それを多くの人に読んでもらうことを職業にしたいと望んでいる。

ところが、その世界に入る前に問題が起きてしまった。それまで聞いたこともなかった「個人情報保護法」という法律が審議されているらしい。なんでも、それが可決されると取材活動が大幅に規制されるという。

思わぬ所に壁があった。たまったもんじゃありません。職に就くのも困難だっていうのに、仕事をしたら法に触れるだと? お先真っ暗じゃないですか。それに、私が反対したところで否決されるわけもない。

現在、法学部に在籍する人間として、知らなかったのもお恥ずかしい話だけど、勝手に決められても困ります。少なくとも他人事ではないので、これからも目を離すわけには行かない。どうにか、私の将来の道が開けることを祈るばかりである。

■三平三郎(フリーライター)
個人情報保護法をめぐっては、その法案段階から、官僚や自民党代議士らがいつになく熱心にその導入を進め、結果的に“メディア規制法”に作り変えてしまったことは、暴挙であると同時に、きわめて愚行だった。

法案成立に積極的であればあるほど、ご当人はさぞ隠したいことが多いのだろうと邪推されることに思いが至らない点が、愚かさの第一。二点目は、同法の施行で、とくに雑誌メディアの追及をかわせると信じているかのように見受けられる点だ。

たしかにフリーランスの諸先達は、「法律が施行されれば政治家をターゲットにした取材ができなくなる」「雑誌メディアが骨抜きにされてしまう」などと声高に叫んで同法を批判するが、それを真に受けてもし、ほくそ笑んでいる政治家がいたとすれば、その認識は直ちにあらためるべきだろう。

記者クラブのような“便利”な装置をもたず、しかも売上げに直結するゆえに常に取材手法や文章表現に磨きをかけざるをえないフリーランスの雑誌記者たちは、過去幾多の規制を乗り越えてそのノウハウを継承してきた。

個人情報保護法に抵触せずに個人情報を集める手法など、それこそ記者の数ほどあるのだと、同法推進派の諸センセイ方には、そう認識しなおされることをお勧めする。

■宮崎哲弥(評論家)
雑誌ジャーナリズムが存亡の危機に瀕している。個人情報保護法なる「汚職醜聞情報保護法」が成立しつつあるのだ。

IT化の進展に伴って個人情報の大量収集可能性や利用価値が高まり、それにつれて、自分に関する情報の保護やコントロールについての不安や危機感が募ってきているのは事実である。確かに、この国のプライバシー関連法制の整備が非常に立ち遅れている。悪知恵だけはよく回り、国民の「良識」を信じない一部の為政者、法吏はこいつに目をつけた。奴等は「個人情報保護」を謳う法律の中に、マスコミ報道を縛る内容を密かに滑り込ませたのだ。

同法において規制の対象とされる「個人情報取扱事業者」には新聞、テレビといった大手の報道機関から個人のジャーナリスト、作家、マンガ家、研究者、カメラマン、評論家まで含まれてしまう。  もしもこの法律が成立し、厳格に適用されるようなことになれば、取材活動、調査報道に厳しい枠が嵌められることになる。

あー、要するに『週刊ポスト』も『週刊現代』も『文藝春秋』も『FRIDAY』も『FOCUS』も『噂の眞相』もその他その他も、お上に楯突いたり、悪徳権力者に唾のひとつも引っ掛けてやろうとすればお縄ちょうだいを覚悟しなければならんってわけですね。こりゃ、ホント戦前に逆戻りだな。

■宮崎 学(作家)
この法案の直接的な問題性については、多くの方々が発言、指摘しているので私は、官僚がこの法案を考える際に拠った思想について思うところを記す。

根底に流れるのは、どうしょうもない差別思想である。

週刊誌,月刊誌などの雑誌は、「あってはいけないもの」と言う思想である。

それでは、何故「あってはいけない」と考えるのか?

それは、自分達官僚が営々と築き上げたものを守るために飼っている自民党を揺さぶるこれらの雑誌は許す事のできない存在であり、すでに記者クラブ等を通じてコントロールが完結している既成の新聞やテレビ、ラヂオは放置してもなんら問題はない。飼い犬としての自民党を批判するものに網をかけると言う全くの自己防衛的思想である。国民のプライバシーをまもることなどにかけらほどの関心はない、まもろうとするのは、飼い犬のスキャンダルである。このことによる最終的な利益を享受できるのは官僚である。社会を防衛するためには、こうした雑誌やそれに携わるフリーのジャーナリストなど という官僚とは対極にある感性の持ち主の存在そのものに刑事罰の網をかけてしまうことである。

私はこの官僚の思想に、「伝統的」なこの国の全体主義の系譜を見る。

■目森一喜(作家)
桶川女子大生刺殺事件で、被害者の女子大生は、自殺した小松和人らに誹謗中傷をインターネットに流されるなどした。中身は中傷だったが名前、電話などの本当の個人情報も同時に流された。しかし、こうした犯行は個人情報保護法の対象とはならない。

個人情報保護法は個人情報を守らない。

福岡の古川竜一元判事の妻園子は、浮気の恋敵の女性の子供の学校に行き、担任から電話番号などを聞き出し脅迫電話をかけた。これも個人情報保護法の対象とはならない。両方とも数が少なく事業者とはならないからだ。

個人情報保護法は個人情報を守らない。

平成七年十一月に浦和地裁川越支部から供述調書のコピーが流出した。平成十一年五月に京都府宇治市の住民基本台帳約二十二万人(ほぼ全市民)分のデータが流出したが、これらも個人情報保護法の対象ではない。役所だからだ。官公庁からの情報流出は多い。

個人情報保護法は個人情報を守らない。
個人情報保護法に反対します。

■元木昌彦(講談社編集者)
個人情報保護法絶対阻止!

この法律は雑誌弾圧法だ。新聞では書けないテレビでは流せないが、雑誌でなら書けるということはこの世の中にいくらでもある。中でも権力者たちのスキャンダルは非新聞社系雑誌の独壇場といってもいい。しかも記者クラブにも所属していないし免許事業でもないから脅しが効かない。そこで、スキャンダルを山ほど抱える自民党の議員や官僚たちが、悪知恵を絞ったのだ。個人情報を保護するという大義名分をつけて、形振り構わぬ雑誌規制に出てきたのだ。青少年環境対策基本法と人権救済機関の導入という三点セットで雑誌メディアの首をしめて窒息させようというのだ。

表現の自由を保障している憲法21条を踏みにじり、国民の知る権利まで奪う悪法を今議会で可決・成立させるならば、小泉首相は21世紀の治安維持法をつくった最凶の男として歴史に残ることは間違いない。

■森 健(フリーライター)
無数の情報が行き来する2001年現在、「個人情報の保護」自体は守られてしかるべき重要な情報ソースだろう。それを保護する法ができることに異存はない。

けれども、この「法案」には問題があり、賛成しかねる。問題は主にふたつ。定義上の「その他の報道機関」の範囲がこの多種媒体の時代にあって曖昧なこと。そして、そもそも「報道」というものの定義が曖昧であることだ。この2点は質疑の段階で口頭で藤井昭夫氏が答えている。だが、書面でははっきり明記していない。そこに法制局など事務方の不純な意図を感じる。

とりわけ問題なのは後者だ。地上波やBSなどの放送媒体から新聞雑誌に至るまで、あらゆるメディアは報道たる要素を担うべく、部局や人員を設けている。けれども、その過程で日々立ち現れる取材/執筆/放送活動などノウハウは多様であり、その概念はとても広い。政治家など権力を持つ者に報道をし、彼らが報道ではないと言い張ったとき、司法はどう判断するのか。何をもって取材と非取材を分けるのか――?

景気よりも悪く、分厚く湿った暗雲が漂っている気がする。

■森永卓郎(経済アナリスト)
70年前の悲劇を繰り返すな

日本経済を深刻な不況が襲っている。70年ぶりのデフレ経済は、構造改革という名の経済引き締めで、今後恐慌に発展するかもしれない。経済が疲弊すると、必ず現れるのが独裁者だ。世界恐慌の1930年代、ドイツで、イタリアで、日本で、そしてアメリカでさえファシズムが台頭した。苦しいときには皆、強いリーダーを求める。しかし、その強いリーダーが必ず行うのは厳しい言論統制、思想統制なのだ。
先進国のなかで日本だけがデフレに陥ったということは、もしかすると日本がファシズムの先頭を走っているのかもしれない。個人情報保護法は、ジャーナリズムの自由を奪い、国民を愚民化する。それを未来の独裁者とその取り巻きは、陰で喜んでいる。

■山田 聡(マガジンハウス編集者)
飲み会の約束が、こうなった。初めは吉田司さん、魚住昭さん、斎藤貴男さんと和(なご)もうと思っていた。やっと3人のスケジュールが合ったところに「個人情報保護法案」国会上程の報道だ。飲み会当日・4月9日のテーマは和みから「どうするよ、個人情報保護法案?」に変更、お三方の呼びかけで佐野眞一さん、吉岡忍さん、宮崎学さんほか20人が寿司屋に結集、翌週には、反対アピールを発表する記者会見を開くことがその場で決まった。

メンバー見てくださいよ。群れるのが嫌いな人ばかりじゃないか。思想、信条だってバラバラだろう。なのに集まった。約2ヵ月間、一緒にいろんな活動を展開してきた。

この一点をとっても、個人情報保護法案がいかにヤバイか、わかるってもんでしょう。

■吉岡 忍(ノンフィクション作家)
「改革」が流行っている。

構造改革。財政改革。政治改革。行政改革。金融改革。産業改革。教育改革。しかし、こう朝から晩まで、カイカク、カイカクと聞かされると、なんかちがうなー、という気分に私はなる。

なにがちがうか?

ふと見わたせば、改革を叫んでいるのは、昨日まで、その改革の対象を守り、せっせと担ってきた連中ばかりではないか。たんなるスローガンとしての「改革」が人気取りになっていやしないだろうか。「雌伏(しふく)」とか「面従腹背」ということもあるから、いちがいに全部ダメ、とは言わないが、それでもどこかおかしい。

個人情報保護法案も、IT革命を追い風にした改革のひとつだろう。データの収集と活用がビジネスはもちろん、効率的な社会管理にも欠かせなくなった今日、なんらかの個人情報保護の規則が必要になった事情もわからないではない。

しかし、くり返し批判してきたように、個人にかかわる情報をもっとも保有しているのは民間の事業者ではなく、公的機関である。戸籍や住民票、収支や納税額からはじまって、学校の成績や非行歴や逮捕歴、病歴や介護の必要度まで、公権力が保有する個人情報は多岐にわたる。ところが、当の個人は学校の内申書ひとつ、自由に閲覧できないし、間違いを指摘し、修正させる権利も保障されていないのである。なによりもまず個人が、公権力のふところ深くにある自分に関する情報にアクセスし、管理する権利がなければならないのに、法案はそこには立ち入らずに、民間事業者ばかりを取り締まろうとする。

ここにある家父長的権威思想が、私は気にくわない。

いや、法案作成にたずさわった官僚たちと話していて感じるのは、彼らがその傲慢さに気づいていないばかりか、まるでよいことをやっているとすら考えていることの、気味の悪さである。この国に暮らす個人一人ひとりは、そうやって保護してやらなければならない無力な存在なのだ、と言わんばか りの態度に、私はうんざりする。

考えてみれば、あらゆる改革が、今日、同じ物腰をしている。同じように、一人ひとりの個人のため、国民のため、という顔つきをしている。

これから何年、何十年もかけて、私の国も変わっていくだろう。私の国の人間のあり方も変化していく。たしかにいまは、大きな変化のとば口にいる、と私も思う。

しかし、その過程があいかわらず社会というものを烏合の衆の集まりと見なし、管理しなければいけない、保護しないとどうなるかわからない、という思想に覆われていくさまを、私はいささか絶望的な気分で眺めている。

一人の人間を責任と権利の主体としてきちんと把握しなおさなければならない。それが原則だ、と私は思う。権利の主体としての人間の側面をそぎ落とし、責任と義務ばかりの檻に閉じこめる個人情報保護法案に、だから私は反対する。

「改革」が流行っている。

そういうものが流行ってもかまわないが、その騒々しさのなかで、原理原則が押し流され、忘れられていく様子こそ、また再びの火の玉集団主義、護送船団方式、金魚の糞状態である。私はそういうものに、背を向けたい。

■吉田 司(ノンフィクション作家)
ネットバブルがはじけたと思ったら、今度は<政治バブル>の時代の到来だ。田中康夫の“市民と目線を同じ”にする車座集会や脱ダム・脱記者クラブ宣言が<市民革命>的手法と最上級に格付けされて高価を呼び、小泉首相の脱派閥宣言やハンセン氏病被害者の「涙・涙・また涙……」の救出劇が、“国民と目線を同じ”にする<国家変革>のはじまりでもあるかのように政治市場を沸騰させている。

≪革命と変革≫への“期待値”だけで、株価=支持率はうなぎ昇り。軒なみ80%を突破した。それは去年の2月、<ベンチャー革命>の旗をかかげた孫正義のソフトバンクが、実体のない「虚業」と言われながら、最高値株価19万8100円をつけた頃と大差ない。

われわれは冷静になろう。小泉政権の“実体値”は、憲法違反または極めて市民抑圧的な性格をもつこの『個人情報保護法案』の中にあるのだと。この法案がもつ“治安維持法”的本質を国民の前に明らかにし、バブルをバブルとして葬り去らねばならないと思う。「失われた10年」の後に発生したその国民的≪革命と変革≫願望を、絶対に、あの大衆熱狂型「独裁」政治=首相公選制の創出につなげさせてはならないからだ。 

http://kodansha.cplaza.ne.jp/broadcast/special/2001_05_30/coment.html



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コメント
 
1. 2016年2月26日 14:11:58 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[1369]
Domestic | 2016年 02月 26日 13:31 JST
経産事務次官脅迫の疑い

 経済産業省の菅原郁郎事務次官を脅す内容の文書を同省に送ったとして、警視庁捜査1課は26日、脅迫の疑いで東京都豊島区南長崎、自称記録カメラマン福田文昭容疑者(69)を逮捕した。

 逮捕容疑は昨年11月17日朝、菅原次官の家族に危害を加えるという趣旨の文書1枚を、自宅から事務次官室にファクスで3回送った疑い。

 捜査1課によると「そのような内容のファクスを送った」と供述。ほかの省庁の事務次官にも同様の文書が届いており、事務次官室のファクス番号を知った経緯などを調べる。

〖共同通信〗

http://jp.reuters.com/article/idJP2016022601001677


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