SRV:科学的遠隔透視による宇宙〔謎の大探査〕

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投稿者 SP' 日時 2001 年 8 月 19 日 07:46:28:

回答先: 「オレが透視した敵潜水艦、誘拐犯。そして臨死体験」(『ボーダーランド』96年6月創刊号) 投稿者 SP' 日時 2001 年 7 月 27 日 16:17:46:

コズミック・ヴォエージ』(コートニー・ブラウン著、南山宏監修、ケイ・ミズモリ訳、徳間書店)より。


第4章 最初の火星訪問


 私は自分のトレーナーが遠隔透視(リモート・ビューイング。以下RVと略称)の指導に使用する部屋の中にいる。室内には、人の注意をそらすようなものはほとんどない。周囲の主な色は明るいグレイである。目の前のテーブルにはペンと紙の山以外は何もない。天候は申し分なかった。訓練はうまくいっている。最近の目標は、戦時中のベトナムのある川にかかった橋であった。私の心があて推量しないように、目標の選択には変化がつけられている。これまでのところ、セッションが完了するまで、何を、そしてどこを見ているのか私にはわからない。
 教官はいつものように、今日の午後のセッションを始める。彼はトレーニング・テーブルを挟んで私と向かい合って座っている。快適かどうか彼は私に尋ね、私のペンが紙の上に置かれるまで待つ。私は準備ができたことを彼に教え、彼は私にターゲット対応番号を与える。

日付:一九九三年九月二九日
場所:トレーニング室
データ:タイプ4
ターゲット対応番号:5987/9221

 私は紙に番号を書き、そしてペンを数字の右側に動かす。この時点で、私の自律神経系が私の手を作動させ、即座にラフな線画をスケッチする。それから、この絵は知的分析と私の直観力の両方を使いながら、調査分析される。これらのすべてがSRV実験手順のステージ1に含まれている。
 SRV実験手順のステージ2に移動しながら、私はターゲットにかかわる色や表面の手触り、音、温度、味、匂いなどの情報を集め始める。ステージ1と2の手続きは、私がターゲット信号で精神的な「ロック」を確立するのを手助けする。もちろん、私はまだこれには慣れていないので、その信号を分離させるのには時間がかかる。最後に、そして一一ページに及ぶ予備データのあとで、私は同時に二つの場所に存在し始める(肉体はトレーニング室に留まり、意識はターゲット現場に存在する)。

私「ここには山のようなものがある。まわりの陸地は半ばやわらかく平らで、砂地になっている。現場一帯に壮大さが感じられる。今はだれも見えない。平地には人工構造物のようなものがあるようだ」
モニター「いいぞ。ステージ3のスケッチをやるんだ。それをすべて書き留めて、ステージ4に移るんだ」
私「了解。マトリックス(紙の上に描かれた分類欄の一式。一種のチャート)を見直して……ここにあるものは茶色で砂っぽい。家が一軒ある。あのピラミッドは何だ? ピラミッドについて〈分析的判断〉(アナリティック・オーバーレイ。対象に対する透視者の心的判断。その正否はセッション後に初めて明らかになる)を加えさせてください。想像の産物かもしれない」
モニター「決めつけてはいけない。今のはただ〈分析的判断〉として書き留めるんだ」
私「その家はかなり長くて狭い。材木でできているようだ。残念ですが、またあのピラミッドだ。本当に巨大だ」
モニター「データを記録し続けるんだ。該当欄にすべて書き留めるんだ。他に何が見える? マトリックスを見直すんだ」
私「ああ、今は人がいる。いっぱいいる。そして動物も。人々と動物と……すべてをマトリックスに書き留めています。このピラミッドはある種の崇拝に関係している。つかみどころがないですよ」
モニター「そのとおりだ。続けるんだ」
私「ピラミッドは高くて、石造で堅く砂っぽい。周辺は砂っぽくて風が強い。ピラミッドは密で堅いようだが、同時に空洞でもあるようだ。本当に高い」
モニター「了解、視点移動を行うんだ。ペンをとって準備するんだ。ピラミッドの内部に何かが見えるはずだ」
私「茶色と明るい黄褐色だ。表面はざらざらして砂だらけ、石がある。涼しいが寒くはない。ある部屋の中にいる。床と石の壁がある。テーブルがあって、その上にはコップの形をしたものがある」
モニター「該当欄にすべてを書き留めるんだ」
私「この場所の目的にはどこか陰気なところがある。窮乏あるいは必要性に結びついた強固さが感じられる。トンネルがいくつかある。一つのトンネルの前にいる」
モニター「そのトンネルに入るんだ」
私「床の上はほこりだ。トンネルは暗い。外につながっている。今、地表の構造物の外側にいる。一本の道があり、まわりにはたくさん砂がある。また、この構造物に対して陰気な目的を感じる。
 何てことだ。今私はたくさんの人々が知覚できる。この構造物かあるいは近くの何かは壮大な建造プロジェクトで、人々は援助と多くの資源を必要としていることがはっきりとわかる。どうやら、多くの人々がこの建造で死んでいる。
 隣接して都市がある。また、そばには噴火している山がある。ここで何が起こっているんだ? 私の知っているピラミッドのそばには火山はない。これはポンペイのようだが、ポンペイのそばにはピラミッドはない」
モニター「分析してはいけない。ただデータを記録するんだ。続けるんだ」
私「たくさんの人々がこれまでに死んでいて、今も続いている。たくさんの動きがある。人々は走っている。多くは散らばっている。失望感がある。これはひどい!」
 私はその光景のスケッチを始める。火山は都市の東方にあるようで、人々はほとんど北に走っている。
「時間を少し先に進むと、生存者たちは近くで村をつくっている。彼らを助ける者はだれもいない。絶望的な貧困がある。小屋とテントがある。これは本当にひどい。
 うーん。都市を再建している新しい人々が何人かいる。彼らは元からいた人々ではない。彼らは新しいグループのために再建しているようだ。他の人々がやって来ている。新しい人々はとても遠いところからやって来て、かつての住人を助けることについて、緊急だからといってうろたえてはいない。最初の人々の視点から見ると、それは私利をあさり歩く渡り者のようだ」
モニター「了解。今のところはこれで十分だ。時間を書き留めて、セッションを終わりにしよう」
私「そう、あれはどこだったんですか?」
 教官はテーブル上の書類フォルダーを私のほうに突き出した。私はそれを開け、人工衛星によって撮影された火星のサイドニア地区の写真を引き出した。日中で、はっきりとしたピラミッドがある。火山活動を示す証拠は、ピラミッドの右(東)にあった。
「冗談でしょう。私を地球の外に送ったのですか? 火星に?」
モニター「ああ、私は自分の生徒をそこに送るのが好きなんだ。それは彼らに悪評を買っているがね」

検討

 このセッションが、私に初めて、火星にはある時期人々が実際に住んでいたかもしれないという考えを植えつけた。これ以前は、その話題はただSFの世界に属するものであった。その日の残りの時間は、私が火星史の実際の断片を目撃した事実に慣れることに費やされた。


第5章 UFOアブダクションの遠隔透視


 遠隔透視者たちは、UFOがかかわる人間誘拐(ヒューマン・アブダクション)の体験を観察することには成功していないと、たびたび私の教官は語った。透視者たちは過去にそれを試みてきたが、そのたびにわずかな例外を除いて、彼らはアブダクションの代わりに代替信号を受けとっていた。しばしばこの信号からのデータは象徴的にのみ解釈されうる。透視者は何かを見るが、ターゲットは見ないだろう。
 事実、集められた情報にターゲットと似通ったものはまったくなかった。他の透視者たちが同じターゲットに挑戦したときも、彼らの結果はずいぶんバラバラだった。ある場合には、アブダクション事件からはまったく何の情報も得られなかった。
 本章で描写されるターゲットはETによる人間誘拐である。ターゲットとした事件は、ジェイコブスの著書『未知の生命体』中のあるページからとられたものである。
 たとえ自分が透視者にこの特別なターゲットをまったく与えておかなかったとしても、私にはアブダクションの代わりに偽の信号が与えられるだろうことを私の教官は知っていた。結果は、ETたちが私に理解してもらいたかったシンボルを含む信号であった。おそらく、アブダクション自体は誤解されることを彼らは確信していて、そのためアブダクションの背後にある目的や意味を伝えるシンボルを代用したのである。
 もちろん、セッションが完了するまで、実際のターゲットの正体について私は何も教えられていなかった。

日付:一九九三年九月三〇日
場所:トレーニング室
データ:タイプ4
ターゲット対応番号:2864/0576

 予備ステージでは、ターゲットは乾燥した陸地にあることを示していた。

私「ここには土のような色がある。茶、白、黄褐色。暖かい。砂漠のようだ」
モニター「ステージ3のスケッチに行くんだ」
私「ええと、ビル、フェンス、そして鉄道の線路のようなものがある」
 私はそれらを描いた。教官は異なる視点を与えるために、現場周辺で私に三度視点移動を命じた。
「これは何かが保存されている場所のように感じられる。ここにフェンスがある」
 私はぐるりとカーブしているフェンスを(紙の上に)描いた。
モニター「了解。ステージ4のマトリックスに行くんだ」
私「確かにフェンスがある。平坦で土のある場所だ。これは何かの仕事場だ。フェンスの中には動物と数人の人がいる。彼らは白人で仕事に従事しているようだ。動物に関していうと、私は馬を察知している。
 ここでのゲシュタルト(心理的な統一的形態)は、動物管理のそれだ。ここは明らかに仕事環境で、人々はただ割り当てられた仕事を行っている。彼らは仕事がなされる必要があるという感覚をもっている。ここではたいへん厳しい決定がなされている。それは闘牛のようだ」
モニター「それをターゲット信号の〈分析的判断〉として“闘牛のよう”と書き留めるんだ。解釈してはいけない。ただデータをとるんだ」
私「ええと、動物たちのいるフェンスで囲われた場所には人々もいる。何かが虐待されているようだ。しかしまた、同様にここにはたくさんの見物人を収めた大衆観覧席がある。人々はフェンスで囲われた円形の場所に見入っている。私はこれがまったく好きになれない」
モニター「了解、コートニー。休みをとろう」
 再開。
私「現場に戻ってきた。たくさんの叫び声、金切り声、また笑い声が聞こえる。大衆観覧席の人々は現代の普通の人々だ。その人々については娯楽の感覚がある。彼らにとって、これは土曜日のスポーツ・イベントのようなものだ」
 私の教官は現場上空一五〇〇メートルへの視点移動を命じる。
「何だ、これは変わっている。銀色の金属製のものがここにある。速い動きがある。ETの宇宙船を識別している。次に何をしますか? ここには乗り物があるようだ」
 教官は私に所在追跡技術を実行させた。これを使いながら、私はその乗り物を現場上空から元の場所まで追跡した。
「キラキラ輝く金属製の飛行機のように見える宇宙船の中の人々は、目的をもった任務を帯びているようだ。飛行機の中に二人いる。彼らの態度は気取っているように見える。スタート地点は都市だ。
 都市にはたくさんの人々がいる。ある種のイベントの間、飛行機に乗っている人々は都市の人々を傷つけているように感じられる。後者は何かの目標になっており、彼らはそれを好んでいない。飛行機が離陸する飛行場がある。
 元の現場に戻ってみると、動物たちは明らかに脅されている。まるで人々が動物たちをもてあそんでいるか、おもちゃにしているようだ。動物たちはパニックになっている。しかし、フェンスの内側の人々は動物たちに害を与えるつもりはないことがはっきりと感じられる。しかし、彼らはそれからいくらか楽しみを得ている」
モニター「君には動物と一緒にいる人々の目的に焦点を絞ってもらいたい」
私「彼らはまるで群れを集めるように動物たちを管理しようとしている。これは調教場だ。彼らは何かをやらせるために動物たちを訓練している」
モニター「少し時間を先に進むんだ」
私「動物たちはもうパニックにはなっていない。本当に、彼らは調教師から食べ物と愛を得ている」
モニター「了解。セッションを終わりにしよう。ここにターゲットがある」

検討

 私が提示できる最善のことは、このRVセッションに対する私個人の解釈である。読者はこの体験について私とは違った解釈をするかもしれない。このタイプのセッションは二つの既知の状況においてのみ起こっている。最初は、UFOアブダクションをRVしたときである。二度目は、軍の遠隔透視者が危険なエネルギー装置を観察しようと試みたときである。いずれの状況においても、どうやらだれかが人間がその情報を入手することを歓迎せずに、透視者に代替信号を与えたのである。
 このセッションにおいて、動物たちは人間を代表しているように思われる。フェンスの内側の人々は、人間をある目的で訓練するためにともに仕事をしているETたちである。大衆観覧席の人々はおそらく銀河系の見物人たちである。飛行機は、フェンス内の調教師たちの活動に関係したETの宇宙船を表し、搭乗者たちはおそらく地上のそれらを支持している。
 これは私が本書で描くその種の唯一のターゲットである。このターゲットは、シンボルを通して理解されることなく、実際の観察で、直接に分析可能な他のすべてのターゲットとは異なっている。
 あるETたちは代替シグナルをつくり出すことができ、彼らは遠隔透視者の心と体験に代替シグナルを合わせることが可能であると、現在私は知っている。しかし、そのような出来事はきわめてまれなことである。


第6章 火星人:現在の生存者


 まだ訓練中の私は席に腰かける。私の教官は新しいターゲットを記した閉じられたファイルを手にしている。まだ私にはターゲットが何であるのか推測しようとする誘惑があって、わずかに抵抗がある。私の心が直接情報を受けとることに慣れれば、推測しようとするのを自然に止めるようになる、と彼は私にいう。おそらく、忍耐は学究上の美徳である。昨日の朝、彼は私に壁から巨大なフォークが突き出ている異様な美術館の展示を透視させた。私は彼が時々冗談で話すメリーランド州フォート・ミードにある汚水処理場へ私を送ろうとしているのかと思った。彼はテーブルを挟んで私の前に腰かけ、訓練を始める準備ができているか尋ねる。
「いいですよ。合図してください」

日付:一九九三年一〇月一日
場所:トレーニング室
データ:タイプ4
ターゲット対応番号:5664/1821

 予備ステージでは、ターゲットはある山に関係していることを示していた。

私「茶と緑をとらえている。風があって涼しい。ヒューヒューという音も聞こえる。うーん。ここでは何かが起こっている」
モニター「了解、コートニー。ステージ3のスケッチに移るんだ」
 私は白紙の上に丸い山を描く。山の頂上は禿げているが、下には木々がある。山の表面を風が吹きつけている。ステージ4に進む。
私「今、マトリックスを調べている。ああ。人々がいる。白人だ。ちょうど今予感がする。人々が着ている服が見える。またあの山があって、風がある。ひやっ! 強い恐怖、それに興奮と解放が感じられる。ここには、さまざまな感情をもったさまざまな人々とともに、たくさんの感情があるようだ。飛行船のようなものが見え、異常に興奮した活動が感じとれる」
モニター「視点移動の準備をするんだ。山の上空三〇〇メートルからならば何か知覚できるだろう」
 私はその移動を実行する。
私「ここには活動が、とても速い活動がある。何が起こっているのかを割り出すのは難しい」
モニター「了解。人々のところに戻るんだ。何が見える?」
私「また活動があるが、今回はそれは動いている人々だ。人々は興奮している。うーん。彼らは、おそらく彼ら自身が計画したものではない活動に巻き込まれている。また山が見える。それが彼ら自身の計画であるのかわからないが、彼らは作業計画をもっている。乗り物がある。人が一〇人ほどいる」
モニター「さらに視点移動をやろう」
 彼は私が山頂に移動するように指導する。
私「とても速い円を描く運動がある。それは山の上にやって来る。かなり渦巻いている。風で葉が落ちるように、あるいは激しい横風の中を下降する鳥が円を描くように。オー! これは分析したほうがいい。ETの宇宙船を見つけた。つやがあり金属質で暖かい」
モニター「ただ書き留めて、ステージ6のスケッチに進むんだ」
私「今、たくさんの山を見ている。多くは丸くなっている。それは、ちょうど今私がいる山をとり囲んでいる。この山の片側には平らになった場所がある。一つの谷がこれともう一方の山々をへだてている。東方に伸びるいくつかの高原と、特に北側と南側の周囲の山々を私は見ている」
モニター「もう一度、視点移動だ。物体の中に何かが見えるだろう」
私「了解。ここにあるこれは鏡のようなものだ。輝いていてつやがある。たくさんの光がある。暖かい。異様に甘い砂糖菓子のような匂いがする。また何かヒューヒューという音が聞こえる。おやっ、これは本当に動いている!」
モニター「ステージ6のスケッチ」
私「これはまっすぐ山の中に入っている! 完全に岩を通り抜けて! 何だこれは!?」
モニター「手続きにしたがうんだ。ただデータをとるんだ。それをすべて書き留めて、ステージ6のマトリックスを調べるんだ」
私「了解、宇宙船の中に生き物たちがいる。生き物はすべてが同じタイプではない。ここに壁がある。機械。生き物たちの心から何かがわかる。これは供給航路だ。たいしたものではない。彼らはいつもの任務をこなしている。人間に似ている……技術者だ。皆がユニフォームを着ているようだ。
 今、山の中の洞窟か穴のようなものの中にいる。宇宙船はそこの中央に着陸している。これは格納庫か何かだ。私がここにいることを彼らは知らない。何か大切そうな液体を運んでいる。それはヘドロのように、見た目に本当にむかむかするものだ。それにはある生物学的な目的がある。彼らにとってそれは重要な液体だ。エンジン・オイルの粘りぐらいありそうだ。
 私は今、このまわりを移動している。仕事をしているたくさんの生き物がいる。作業の実施にかかわる重要な仕事は男たちが行っている。女たちはここでは働いていない。彼女たちの仕事は別にある。彼女たちは大事にされていて、あまり重要でない仕事を行うようだ。
 まだ移動を続けている。ここには子供たちがいる。子供たちは健康ではない。子供たちは具合が悪く、本当に病気である。女たちは辛うじて自分たちを抑えているが、ほとんどパニック状態だ。彼女たちは静かに腰かけているが、うろたえている。とても怖がっている。ふたたび、男たちを見てみる。ああ、この文化は男性上位主義だ」
モニター「休みをとろう、コートニー。時間を書き留めるんだ」
 昼食後に再開。
私「育児室の女性のところに戻ってきた。赤ん坊のための容器がある。子供たちはしゃべっていない。彼らは陰気か、寝ているか、不幸であるかのいずれかである。ここでは何かが感じられない。何人かの少年と少女が見える。若者たちは大丈夫なようだ。しかし、彼らはそれほど多くはいない。たくさんの赤ん坊がいて、彼らは病気かまたは少なくとも大部分が病気である。若い人々はその問題を無視している。しかし、母親たちは何が起こっているのか知っているようだ。
 物質的な環境が健康的でないことが問題だ。問題があるのはすべての環境だ。体の機能不全ばかりではない。牢屋を出るように彼らは、文化または社会的束縛を断ち切って外に出る必要があるように見える。状況は、ある新しい要素と成分を必要としている。私はここで、人間的な何かが役に立ちそうな気がする」
 ここで教官は、私がその問題の解決法に焦点を合わせるよう指示した。
「遺伝子上の問題がある。彼ら自身の遺伝子的な変化がいまだに続いているようだ。今、私ははっきりとわかるようになった。生き物たちは、今、生きている火星人たちの感覚を私に与えている。彼らには遺伝子が修正できない。これは彼らにとってひじょうに大きな問題である。自暴自棄な状態が広がっている。
 彼らの装備と資源は、外からの助けなしに遺伝子の問題を解決できるほどには十分に進歩してはいない。女性に関する限り出口はないようだ。彼女たちは男たちが救援を得るのを期待して、ただここに座っている。男たちは自分たちの活動にひじょうに狭い視野しかもっていない。彼らは怒っていて頑固である。生き残りがここでのカギである。生き残ること。ああ、この生き物たちは絶望的だ!」
モニター「コートニー、液体に関してもっと調べるんだ」
私「何かが火星からやって来る。おそらく〈分析的判断〉として書き留めるべきだろう……その人々の本当の正体をだれが知ろう。私はただその人々に火星の感覚をもっただけだ」
モニター「手続きにしたがうんだ。ただ書き留めて、分析してはいけない」
私「ああ、液体はひどいものだ。ひどい味がして、粗末なものだ。しかし、この人々は自分たちの血液のようにその液体を大切にしている。それは大きめの容器に入っている。それを貯蔵して守る環境設備がある。それは緑がかった黒である」
モニター「その液体が作られている場所に行くんだ」
私「オー! 私はどこにいるんだ? 私はどこかに飛ばされた。ムチで打たれたように、パチッと音がして私はどこか別の場所に来た感じだ。
 この場所は赤く、砂地だ。構造物がある。私はその建物の中に入れる。何か密閉されたドアがあるようだ。ドアを通り抜けるべきですか?」
モニター「最初に、その建物のまわりの環境について教えてくれ。そしてその建物の中に入るんだ」
私「ここは砂漠だ。何も育っていない。不毛だ。そして寒い。建物は日干しレンガづくりの家のようだ。内側の表面は金属質でプラスチックだ。輝いている。生産施設だ」
モニター「視点移動するんだ」中断。
「生産施設の五キロ東に何かが見えるだろう」
私「ああ、またあの宇宙船の一つが見える。下降しながら、曲がったり、円を描いたりと狂った動きをしている。それは真上からまっすぐにその建物の中に向かっていった。何と、まっすぐ屋根を通り抜けた!」
モニター「建物に戻って乗り物についていくんだ。それはどこに行くんだ?」
私「今、建物の中にいる。ああ、宇宙船が降りてきた。建物の下にはたくさんの地下室がある。宇宙船内の生き物たちは建物の外を歩きたがらない。建物の外にはかなりの赤と黄褐色があるのがわかる。そして依然、私は火星の感覚をもっている」
モニター「地下室に行くんだ」
私「この場所は最新風だが超モダンではない。男たちが見えるが、女はいない。労働者がいる。ここは楽しい労働環境ではない。人々は非番でここにいるのだ。さらに下がってみよう。
 彼らはここに、下の洞窟に住んでいる。事実上、一つの都市だ。たくさんの洞窟とトンネルがある。機械が至るところに置いてある。ここのほうが上の洞窟の中での仕事よりも快適で、この人々はここで長時間暮らすことができるだろう。ここから立ち去ることに対する恐れを感じる」
モニター「なぜ、彼らは立ち去ろうとするんだ?」
私「彼らにとってここには未来がない。ここは死んだ場所だ」
モニター「その人々の外見を描くんだ」
私「えーと、今、男たちが見える。彼らは人間のような顔をもっているが、髪の毛がない。普通の人間のようには見えない。別の人種のように見える。彼らはある方法で自分たちの意識と交流する装置のような、精神の機械をもっているようだ。彼らの精神がその装置をコントロールする。生き物自身は薄い色の皮膚をしている。また彼らは人間と比較して弱々しく見える」
モニター「了解。セッションを終わりにしよう。今はこれで十分だ」
私「ふー、長かった。ところで教えてください。私はどこにいたんですか?」
モニター「メリーランド州フォート・ミードにある汚水処理場だよ」
私「えっ!」
モニター「ただの冗談だ。ここに書類フォルダーがある。見るんだ」
 私はそのフォルダーを開き、次のように書かれている一枚の紙を引き出した。〈火星人/現在の生存者〉。しばらく無言が続く。
モニター「大丈夫か?」

検討

 その日遅く、教官と私は長時間にわたって火星の問題について話した。私と他の透視者たちが提出した描写に基づいた山の所在について、彼には思い当たるふしがあるといった。彼は私に、ニューメキシコ州サンタ・フェ近くにある山々の写真をいくつか見るよう提案した。写真を見ながら心の内側で何かを認識したと感じた。他のたくさんの透視者による以後のRVは、その所在を確認する方向に向かった。RVによる証拠は、その山がニューメキシコ州のサンタ・フェからさほど遠くない国定森林の内側に位置するサンタ・フェ・ボールディ山であることを示している。
 地球に火星人がいる。しかし、警笛を発する前に我々は、これが何を意味するかについてはっきりと考えなければならない。この火星人たちは絶望的である。どうやら彼らの火星居住区はたいへんなことになっているらしく、地表では生活できない。彼らの子供たちには自分たちの故郷に未来はない。彼らの故郷は破壊された。それは塵の惑星だ。本書の最終章において、困窮するこの時期の火星の隣人たちに人間はどのように対応すべきか、私は自分の考えを述べるつもりである。


第7章 最盛期の火星文明


 訓練はうまく進んでいる。昨日の午後、教官は私にカリフォルニア州のモンテレー湾を遠隔透視させた。結果は、私が帆船上から下をじっと見ているところで終わった。しかし、今朝のセッションは異なるタイプのものであった。彼はタイプ6の条件下で、私にセッションを体験させたいと思っていた。それは、モニターも透視者も事前にかなりのターゲット情報をもって行うものである。
 前もってターゲットについて知ることになっていたので、私が見たい時間と場所、すなわち最盛期の火星文明を選んだ。崩壊前に、彼らがどのような社会を営んでいたのかを私は見たいと思った(後章でこの崩壊を起こした大惨事について説明する)。
 このセッションで何が起こるのか私にはまったく予期することはできなかった。私がこのセッションから学ぶことになった一つは、予期しないことが起こった際(むしろそのほうがふつうである)、いかに経験を積んだモニターをもつことが重要であるかということであった!

日付:一九九三年九月二日
場所:トレーニング室
データ:タイプ6
ターゲット対応番号:8587/7258

 予備ステージでは、ターゲットは乾燥した陸地と、人工構造物に関係していることを示していた。

私「茶色に黄褐色、そして赤が見えてきた。あたりは砂っぽくて、風がある。気温は暖かいところから涼しいところまで幅がある。声、音楽、会話が聞こえる。また、何かをこする音や騒音が聞こえる。場所の雰囲気は、ケニア東岸の古代スワヒリ港都市、オールド・タウン・モンバサに少し似ているようだ」
モニター「続いてステージ3のスケッチに移るんだ」
私「片側に建物が並ぶ道がある。だれかが丸い建物のそばに立っている。それは小さな円形競技場といった感じだ」
モニター「了解。今のは〈分析的判断〉として“円形競技場のようだ”と書き留めるんだ。ステージ4に進むんだ」
私「今、人々を、たくさんの人々をとらえている。男たちだけが見える。彼らの顔に注目する。髪の毛がなく、人間よりも大きな目をしている。皮膚は薄い色をしている。家がある。建物は粘土か日干しレンガづくりのようだ。現在の地球基準からすると、この人々は貧しいが幸せなようだ。全体的に、住むには苛酷な場所に見える。
 まわりにはたくさんの水がある。この人々は水を好むようだ。彼らは基本的な道具はもっている。彼らのコミュニケーション手段もまた素朴なものだ。アフリカを思い起こさせる」
モニター「〈分析的判断〉として“アフリカのようだ”と書き留めるんだ」
私「彼らの心に注目する。いくらかテレパシー能力をもっている。女と子供たちがいるところに来た。女たちはほとんど家の中にいて、あまり子供たちと外に出ることはない」
モニター「彼らの文化について何か察知できるか?」
私「ええと、彼らは村の集まりに似た会合をもつようだ。もう一度男たちを見させてください」
モニター「休みをとろう」
 三〇分後に再開。
私「私はまた家のあるところに来た。その中の一つに入る。三つの部屋がある。家の中にはトイレがある。ここの人々は、これが快適な生活だと感じている。コップなど台所用品が見える。家族がここに住んでいる。四人の男女が見える。この人々は一夫多妻をとっているようだ」
モニター「何かシンボルのようなものがあるかどうか見てみるんだ」
私「オー。今何が起こったんだ? 時間の混乱を経験した。別の時間帯に飛ばされたような気がする。かなりびくっときた感じだ。ここは様子が違っている。何が起こっているんだ?」
モニター「分析しないで、ただデータをとるんだ。何がある?」
私「私はバッジを見つめている。まわりは白く磨かれた表面だ。金属が見え、空中には灰色と黒の煙がある。さっきまでいたところと比較すると、ここにはきわめて急速な科学技術の発展がある。
 他の生き物も今ここにいるのが見える。彼らはもっと小さく背が低い。彼らはある任務のために働いているようだ。ヤー、彼らは動機づけされている。ある理由のために、スピードと緊急性が最も優先されている。
 彼らは宇宙船をもっている。バッジをつけたユニフォームを着ている。何人かはパイロットだ。今は火星人は見当たらない」
モニター「火星人がどこにいるのか見つけ出すんだ」
私「まさにそうだ。火星人は行ってしまった。彼らは出た。家々は空だ。私はまだ火星にいるが、この背の低い進歩した生き物たちを除いて、ここはゴースト・タウンとなっている。彼らは自分たちの家を建てた。箱型の最新式のものだ。家の中には工学的機械がある。またモダンな部屋が見える」
モニター「背の低い生き物たちの目的に注目するんだ」
私「彼らは大きなプロジェクトの第一段階としてここにいる。彼らはすべてのものを荷造りしているようだ」
モニター「了解。ステージ6の時系列線に行こう。線上に最盛期を置くんだ」
 中断。
「さあ、その線上に他の者たちがやって来た時期を点として置いてみるんだ」
 私はピーク時を時系列線の左側に置き、他の者たちの到着をページの真中に置いた。教官は、背の低い生き物のユニフォーム上にあったバッジを描かせるのに、私にかなりの時間を与えた。それは中央にとぐろを巻いた蛇をあしらったバレンタイン・デーのハート型に近かった。ハート型の境界線は金色で、その中の地は白で、ヘビの頭は赤であった。
モニター「いいぞ。今度はステージ6のマトリックスを調べるんだ」
私「二つの異なるタイプの生き物がいるように感じられる。火星人自身はその人々のことを、必ずしも宇宙人ではなく別の種族の火星人と考えているようだ。火星人たちにはただ理解できていないのだ。
 背の低い生き物たちが来たとき、状況はパニックと絶望のそれであった。背の低い生き物は不透明な白い肌をしている。火星人は彼らのことを神のようにみなした。私は赤い液体に注目している。背の低い生き物たちはある方法でこの液体を使用している。火星人たちはある変化に備えるために一まとめにされているようだ。これは気味が悪い。火星人が自らの肉体に肉体的変化を起こすことを、背の低い生き物たちが計画しており、火星人たちはしばらく冷たい貯蔵庫の中に入れられる。
 この背の低い人々はグレイに似ている」
モニター「了解、コートニー。セッションを終わりにしよう。終了時間を書き留めるんだ」

検討

 シンボルを探させようとする教官の言葉は、まったく思いがけず、時間を通り抜けて、グレイのユニフォームにつけられたバッジまで私を導いた。以来、私はそのような体験を多くもった。その感覚は、急速な物理的動きと似ているが、二つを混同することはできない。それは静寂をしたがえる突然の加速や瞬時の方向感覚の喪失を伴っている。
 最盛期の火星人社会は、テクノロジーの面において古代エジプト社会と比べられる。彼らは苛酷な状況の下で生活した人々である。しかし、彼らは家族を養い、街で暮らし、共同体生活に参加することができた。男たちと女たちは、その社会においてひじょうに異なる役割を果たした。それは男女平等の社会ではなかった。女たちはほとんどの時間を子供たちとともに家の中で過ごした。興味深いことに、この文化的側面はあまり今日でも変わっていないようだ。
 火星人社会はある大惨事を経験した。多くの火星人が死に、ある者は救済された。もっとも、火星人たちが救済といういい回しを好むかどうか私には定かではない。
 救済したのは、我々が現在グレイと呼んでいる生き物であった。彼らは火星文明が崩壊する最後の瞬間にやって来た。彼らは、大急ぎで火星人たちを“貯蔵”した。専門的な説明をすることができないが、救済の本質的な目的は火星人の遺伝子物質の維持であった。
 これらすべては何百万年も前に起こった。セッションのあと教官と私は、どのようにして火星人が“解き放たれ”、どのようにして彼らが地球にやって来たのかを考えてみた。事実上すべてのRVデータは、火星人たちは火星と異なる地球の重力と条件の下で生きられるよう遺伝子的に変化が与えられたことを示している。実際の変化は貯蔵期後の最近に起こり、まだ完了していない。
 我々はまた火星人の科学的進歩について思いをめぐらした。今日の火星人はテクノロジーを発達させてきているが、グレイとは比較にならない。
 グレイは自分たちの宇宙船を時間と超長距離──つまり銀河スケールの距離──の両方を横断させることが可能なテクノロジーをもっていると、現在の我々は知っている。しかし、火星人たちの宇宙船ではこれは不可能である。もし可能であったなら、火星人たちは、大惨事の前に自分たちの惑星から逃げ出していただろう。それでも彼らの宇宙船は、(人類の水準にくらべれば)進歩した推進技術を利用している。それは宇宙船の物質相を部分的に変え固体物質を通り抜けるのを可能とする。
 このセッションから、我々はいくつか予備的な結論を導き出した。

(1)火星人はグレイによって滅亡から救済された。
(2)火星人は遺伝子操作によって最近救い出された。操作は完璧ではなく、多くの子供たちに死をもたらした。
(3)火星人の科学技術レベルは、現在の人類よりも約一五〇年進んでいる。
(4)現在の火星人たちには地球以外に避難する場所がない。

 研究のこの時点で、火星人の科学技術におけるゆるやかな進歩の背後には何か理由があるのか、と私は考え始めていた。だれかが、人類と火星人との間の相互交流のために、可能性をとっておいてくれているように思われる。
 グレイは火星人を救助するために最後の瞬間にやって来たことを思い出していただきたい。過去のデータに基づいて未来を予言すれば、ここ地球における大惨事の危機も予見できるかもしれない。そのような危機は、人類をワラをもつかむ気持ちにさせるだろう。火星人の科学技術は、まさにそのような状況において必要とされるものかもしれない。


第9章 空からの攻撃


 一九九三年八月二一日、突然、NASAの宇宙探査機と地上管制官との間のすべての通信が途絶えたとき、探査機は火星に向けて飛行していた。探査機の〈マーズ・オブザーバー〉号は、火星表面のほぼすべてを詳細に写真撮影する予定で、その中には、以前の衛星写真が明らかにしたピラミッド状構造物や、人間の顔に似た地形カーブを示す異常な地表面をも含んでいた。以前は完璧に機能していた探査機の予期せぬ沈黙について、NASAの技術者や科学者はその状況説明に当惑した。
 事件の数日後、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、NASAの人々は、なぜ火星に不運がつきまとうのか率直に不思議がっていると報じた。火星にかかわる他の不可解な出来事の一つとして、この事件の少し前、ソビエトの探査機が火星の衛星の一つに近づこうとして、似たような状況下で行方を絶っている。当局の何人かは半ば冗談で、あの惑星にかかわる奇妙な技術的な失敗の連続には地球外生命が関係しているかもしれない、と大いに不思議がった。数カ月の調査のあと、おそらく探査機は内部の給油トラブルで爆発したものと当局は発表した。しかし、調査員たちはその診断については確証をもっておらず、その主張を支持するデータもなかった。それは一種のカンであったが、当時の彼らにできた最大限のことであった。
 本章では、実際に〈マーズ・オブザーバー〉号に何が起こったのかを説明する。読者は、セッションの前にはターゲットの正体について私には何の予備情報も与えられていなかったことを心に留めておいていただきたい。さらに、データは遠隔でモニターされたセッションで収集された。つまり、このセッションは、私がジョージア州アトランタにあるエモリー大学の私の研究室に座っている間、教官の自宅でモニターされたものである。そのようなモニタリングは言葉と視覚の両方によるものである。モニターと透視者の密な連絡を保つために、両者でスピーカーフォンが使用される。さらに、セッションの間、途中結果(スケッチや生のデータを含め)は、セッションが終わったあとの最終結果と同様に、モニターにファックスで送られる。すべてのタイプ4データでは、セッションが完了したあとに透視者にターゲット情報が与えられる。

日付:一九九四年二月七日
場所:ジョージア州アトランタ
データ:タイプ4、遠隔モニター
ターゲット対応番号:6421/9054

 ステージ1のデータによると、私は運動感の伴う硬質な人工構造物にかかわっていることを示していた。

私「ここにはたくさんの動きがある。何かがとても速く動いている。たいへん活動的だ。うーん。二つの物体が一緒に、またはかなり近づいているのがわかる。一つは小さく堅い固体だ。それはかなり速く動いている。もう一つは大きく、もっと複雑で不揃いな形をした物体だ。
 これは奇妙だ。どちらの物体の下にも地面がない。どうして地面が見えないのか私にはわからない。それらはただそこにあるのだ」
モニター「ステージ6に進んで、マトリックスとスケッチの準備だ。スケッチの際に、その物体の位置を示すよう紙の上にXと記すんだ。その物体の動きを追うんだ」
私「ええと、小さいほうの物体は横からやって来た。今最初の位置に戻ってそれを追いかけている。ワァー」
モニター「何があるんだ? 手続きにしたがうんだ。マトリックスに戻るんだ」
私「宇宙船だ。小さいほうはETタイプの宇宙船に誘導されている。どうやら宇宙船からの発射物だったようで、もう一方の不揃いな形をした大きい物体のほうに当たった。どうして彼らはこんなことをするんだ?」
モニター「分析してはいけない。ただデータを集めるんだ。何が見える?」
私「えーと、今、宇宙船の中に入ろうとしている。うーん、ここには生き物たちがいる。皆禿げているようだ。目がある。今一人の顔をスケッチしている。
 宇宙船全体は大きな金属の構造物に見える。ある部屋の中にいる。部屋の中には物が、たくさんの物、専門的な物がある。椅子、テーブル、多少の生き物、コンピューター端末機、他にもそのようなものがある」
モニター「了解、とりあえず休憩をとろう。時間を書き留めて、これまでの結果を私にファックスして、電話し直すんだ。またな」
私「わかった。二、三分ください」
 再開。
モニター「コートニー、ステージ6のスケッチに戻るんだ。宇宙船の動きをたどって、その出発点に戻ってもらいたい」
私「了解。今やっている……出発点にいる。それは地面の中の穴、洞窟だ。金属の乗り物は洞窟の中にある。生き物たちがその乗り物に乗り降りしている」
モニター「地表に行くんだ。何が見える?」
私「今、上に向かっている。赤、砂地の手触り、凸凹の地形。火星のようだ」
モニター「それは分析だ。とりあえず〈分析的判断〉として書き留めるんだ。マトリックスを見直すんだ。データだけだ。洞窟に戻るんだ」
私「洞窟の中にはたくさんの生き物がいる。彼らはグレイ種だ。働いている」
モニター「コートニー、生き物の一人を選んでその心に入ってもらいたい。何かわかるか?」
私「了解、一人選んだ。オー!」
モニター「〈感情的反応〉(遠隔透視されたものに対する感情的反応。エーセティック・インプレッション)としてそれを書き留めるんだ。続けるんだ。彼らについて何か見つけ出すんだ。彼らは眠るのかどうか探り出すんだ」
私「何てことだ。今はっきりとこれがわかった。私がここにいることをそのグレイはわかっている。私の探索を気にしていないようだ。とても自然な感覚だ。それは我々が眠るようには眠らないかもしれない。何か他のことが起こっている。これと比較可能なプロセスは、意識がひじょうに深くさかのぼるときだ。これが何を意味するのか正確にはわからない。意識をたどって戻るべきですか?」
モニター「先に進むんだ。マトリックス内に留まって」
私「オー。真っ暗だ。空虚な空間だ。悪くはないが、ここで何をするのか私にはわからない。次に何をすべきですか?」
モニター「その生き物についていって誕生時までさかのぼるんだ。それはどこから来たんだ?」
私「今、そこにいる。幼児は透明な小型容器のようなチューブの中にいる。今は新しい場所に来ている。ここがどこなのかはわからないが、実験室のように見える」
モニター「外に出るんだ。何が見える?」
私「ここは空気のない世界だ。星、クレーター、岩が見える。この印象を表層的にも分析したほうがいいだろう。月のようだ。光は信じられないほど明るい。たくさんの星、凄く明るい! おや、ここのものは透明だ。見回している。空には一つ惑星がある。残念だが地球のようだ。雲や水さえも見える。それは青い。〈分析的反応〉として地球とさせてください」
モニター「チューブの中の幼児に戻るんだ。チューブの中には何がある?」
私「大きな胎児のような、ただの幼児と濃い液体。液体は緑だ」
モニター「その液体を味見するんだ。どんな味に似ている?」
私「ウワァー。オイルのようなひどい味だ」
モニター「わかった。時間を進めて、宇宙船があった洞窟内の生き物のところに戻るんだ。労働環境とその生き物の個性についてもっと探り出すんだ」
私「このグレイ、それがグレイの外見に似ているので、そう呼ばせてください。彼は我々の標準からすると幸せではない。それは働いている。
 今、その心に入り込んでいる。感情がないようだ。心理的にひどい目にあったことがあるような感じさえする。これはよくない。
 他にほとんどわかるものはなさそうだ。この生き物について私はよい気持ちがしない。何かがここにはない」
モニター「その生き物をスケッチするんだ」
私「わかりました。皮膚は白く、革のようだ。痩せた外見にもかかわらず、実際はかなり強健そうに見える。しかし、何となくその生き物がかわいそうだ。そう思うのはよくないことかもしれない。ただ私は気分が悪い」
モニター「もうセッションを終わりにしなければならない。君はその生き物を強調し始めている。それはデータを汚しかねない。ただ、現在までのところ、これはとてもよかった。終了時刻を書き留めるんだ」
私「ああ、このセッションは私にはまったくの謎だ。何のターゲットを見ていたのか想像もできない。何だったのですか?」
モニター「〈マーズ・オブザーバー〉号、一九九三年の失踪事件だ」
私「からかっているんじゃないですか?」
モニター「いや。それは〈オブザーバー〉だった」
私「それでは、あれが不揃いな形をした物体だったんだ! 大きな弾丸で打たれた? どうして彼らはそんなことをしようとしたんだ?」
モニター「それはよい質問だが、我々はデータを信じなければならない。このセッションは間違っていなかった。どうやら、彼らは探査機が回って、何であれ詳細な写真を撮ることを望まなかった。それを打ち落とすのに大砲のような機械を使ったのは、レーザーなどさまざまなものがあるこの時代には奇妙なような気がする。しかしソビエトの探査機も、また謎めいた原因で消息を絶ち、その探査機から最後に自動計測伝送された情報は、接近する物体か、または宇宙船エネルギーの上昇と結合したエネルギー源の画像であったことは覚えておくべきだろう。私の推測は、ETたちは似たようなデータ漏洩の機会を望まず、そのために物理的に排除したというものだ。ただ、人間の知りえる範囲で、それは隕石によって打ち落とされたこともありうる」
私「私はまだ少し感覚を失っている。ほとんど信じられないことだが、それはすべてにあてはまる。落ち着くまで、心の中でただターゲットを繰り返し呟いている」
モニター「いいセッションだった」
私「ええ。現実に戻らせてください。そうすればあなたにこれをファックスできる。今夜にでもまた話しましょう」
モニター「いい計画だ。君のファックスを待ってるよ。今夜話そう。気をつけて」

検討

 かなりの量の情報がこのセッションから得られ、それは基本的な印象を要約するのに有益なものである。〈マーズ・オブザーバー〉号は、近くのETの宇宙船によって打ち上げられた発射物のような機械によって破壊された。
 宇宙船は、どうやら火星の地下格納庫からやって来た(または帰還した)。格納庫の中にはたくさんの生き物がいた。彼らの何人かは(すべてではない)小さなグレイ種であった。彼らは労働者であった。私はその生き物たちの一人の誕生までたどって、それが実験室で“生まれた”ことを突き止めた。それは労働者になるように創造されているのかもしれない。
 その生き物自体は、必ずしも自分たちが虐待されているとか奴隷にされていると感じているわけではない。明らかな睡眠期間中(言葉のグレイ的な意味で)、彼らの意識は、宇宙空間のどこかに止まっている。それは夢のようなものではない。それが生まれた実験室は、我々の月の地下構造物、ある種の基地にあるようだ。胎児のような幼児をとり巻く栄養物は、エンジン・オイルほどの粘りをもった緑の液体の中にある。
 このセッションには答えを与えるのと同じだけ多くの疑問がもち上がる。NASAの火星探査機に何が起こったのか、今我々は知っている。しかし、ETたちが探査機の探知あるいは写真撮影を望まなかったのはなぜだったのか、我々にはいまだにわからない。火星の基地にかかわっているグレイが、他の場所のグレイとともに仕事をしているかどうかもはっきりしていない。
 この状況においては、グレイは労働者のようであり、他のヒューマノイド(人間に似た生き物)が監督しているようである。不幸にも、いったいだれが監督しているのかについては、はっきりと知覚できなかった。


第14章 外交的解決法


 ある日、私のモニターは、最近、ある透視者が自分自身のアブダクションを透視できるようになったと私に報告した(問題の女性は、どうやら古典的UFO−ETスタイルでこれまでに何年にもわたって誘拐されていた)。モニターが言及したセッションは、高度に監視されたタイプ4の条件下(透視者は前もってターゲット情報を知らされず、モニターだけが知っている)で行われた。そのセッション・データの真に驚くべき点は、透視者が完全にUFOアブダクションを見ることができたことである(概して、これは以前には不可能であり、偽の代替信号がつねに受けとられていた)。モニターも私もその時点ではこのエピソードに関していかなる結論をも引き出さなかったが、変化には気づいた。この会話の数日後、何がこれを可能にしたのかを我々は割り出した。

日付:一九九四年五月三一日
場所:ジョージア州アトランタ
データ:タイプ4、遠隔モニター
ターゲット対応番号:3701/5475

 予備ステージでは、ターゲットが乾燥した陸地と、人工構造物に関係していることを示していた。

私「茶と黄褐色、それに粗い木質の手触りをとらえている。気温は暖かく快適だ。何かテレピン油をかいでいるようだ。森のような匂いがするので、野外のようだ。今のは森として〈分析的判断〉を加えることにする」
モニター「ステージ3に移って、それからステージ4に進むんだ」
私「家のような木造構造物をとらえている。構造物の中に入ってみる。木製のテーブルがある。これは少し古いようだ。内部構造は正方形、あるいは最低でも長方形だ。とても質素な居住設備だ」
モニター「ステージ6に進むんだ。視点移動をやろう」
 彼は私をその構造物の上空一五〇メートルに移動させる。
私「構造物の近くには山と道がある。また、川もあり、どうやら急流か滝もその建物のそばにある。これを調べますか?」
モニター「コートニー、ステージ4に戻って、その構造物の中に入るんだ。無意識に問題を解決させよう」
私「了解。今、内部に戻ってきた。ここには人間の男がいる。格子柄のシャツにジーンズの仕事着を着ている。彼には髭がある。どんな種類の活動もあまり感じられない」
モニター「ある程度、自由に動くんだ。君の無意識にこれを解決させるんだ」
私「ちょっと時間をください。よし、家の中の強い恐怖感をとらえている。夜だ。だから少しの時間とまどった。ETの活動を感じている。これは奇妙だ。誘拐だ。これを〈分析的判断〉として書き留めている」
モニター「手続きにしたがうんだ。続けるんだ」
私「木の床と同様に、テーブルはまだそこにある。しかし、今ここにはたくさんのグレイがいる。何人かは空中に浮いているようだ。ユニフォームを着ている。急いで片付けなければならない問題があるかのように素早く動いている。
 一人の女性がいる。彼女が彼らの活動の中心となっているようだ。彼らはその女性を浮遊させて、この家の窓を通り抜けさせている。窓は開いているとは思えない。彼女はまさにそこを通り抜けたのだ! 私は彼女とグレイたちのあとについて外に向かっている。
 ここにはとても明るい光がある。今、見回している。グレイたちはその女性をもち上げて大きな宇宙船へ連れこもうとしている。宇宙船を、今、スケッチしている。また、彼女が窓を通り抜けたときの家の中の光景もスケッチしている」
モニター「グレイを一人選んで、その心に入るんだ。彼らが何をしているのか割り出すんだ」
私「待って。今、それをしている。これは生き残りのためのプロジェクトだ。生活のために行うという意味で、それは彼らの仕事だ。だれにとっても現状では、生き残りという概念はひじょうに幅広い」
モニター「今度は、その女性の心の中に入るんだ。ステージ4のマトリックスに留まるんだ」
私「彼女の状況把握には明らかに複数の階層がある。最上層では、彼女は落ち着いている。しかし、すぐその下のいまだに人間のレベルでは、彼女は恐れている。さらにその下のサブスペースのレベルでは、彼女は幸福で有頂天にさえなっている」
モニター「選択の基準は何なんだ?」
私「彼女が自分自身を選んだ。彼女は志願したんだ」
モニター「宇宙船の中に入るんだ。ステージ4に留まるんだ」
私「今、それをしている。オー!」
モニター「その強い〈感情的反応〉をマトリックス内に放り出して、先に進むんだ」
私「ここにはたくさんのグレイがいる。膨大な数の手術台がある。広々とした場所で、たくさんの活動が見られる。すべてのグレイがひじょうに忙しくしている。宇宙船内には、どうやらグレイたちによって連れてこられた人間たちが他にもいる」
モニター「宇宙船内には別のタイプのETはいるか?」
私「宇宙船内にはグレイと人間だけだ。木造の家からやって来た女性が、今手術台の上にいる。彼女は金切り声をあげている。彼女の両脚の間を見ている背の高いグレイがいる。彼らは彼女を検査して、何かをしようとしている。
 どうやら私は気づかれている。だれかが文字どおりあるものを見させようとして私を押している。それは、通路の中に、あるいはドアを通して、強く押されるような感覚だ。だれかが私に何かを見せたがっているのが感じられる。
 実際、私は今、その女性の子宮の中にいる。ここには胎児がいる。おそらく人工的にその場所を照らす光が感じられる。胎児は外に出かかっていて、私はその胎児がとり出されるのを追いかけている。胎児は今、その女性の外に出た。彼女はとても穏やかで、疲れており、おそらく、まさに“途方に暮れている”。彼女は気絶していたのかもしれない。胎児は素早くきれいな容器の中の液体に浸けられた」
モニター「どのぐらいの間、胎児は容器の中にいるんだ?」
私「この特別なチューブには短い間だ。私のそばに辛抱強く立っている大人のグレイから、今、この情報を受けとっている。その生き物は、管理人の人格をもった、一種の看護婦か助産婦のようだ。赤ん坊は成長に応じてあちこちに移し変えられると、そのグレイは私に話している。このあとは大きめの容器に入れられて、やがて完全に外に出る。最終的に、移し替えは普通の出産に似ている。そして赤ん坊はとり出され、呼吸する空気が与えられる」
モニター「どのぐらいの間、この作業は続いているのか?」
私「これは人間にとって大きな躍進だ、と私は教えられている。その決定は、人間(すなわち我々)に全体計画を示すために、まさに最近下されたものだ。グレイたちはもはや我々のRVに干渉しないだろう。今、我々はいわゆるアブダクションを自由に見ることができる。グレイたちは、人間との関係において変化を望んでいて、彼らの側の主要な譲歩として(だがこれはおそらく間違った表現である)これを行っている。彼らは人間と協同して仕事をしたがっている。
 現在の彼らの活動の活発さに関しては、これは新しい動きだ。連続と緩やかな過去の変化から、グレイと人間に自己決定を許す、急速で主要な進化論的前進へ、計画は新しい方向へ向かっている。
 どうやらこの変化は、より大きな連邦の決定によって指示されている。グレイたちには変化が求められていて、彼らにはまた人間を助けることも要請されている。人間たちが自発的にグレイたちを助けてきたことに関して、彼らは長い間感謝してきたことがはっきりとわかる」
モニター「今のところはこれで十分だ。セッションを終わるんだ」
私「このセッションは時間がかかった。疲れたよ。それで、ターゲットを教えてください」
モニター「“連邦/現在の地球での作業”」
私「うーん。今後は、ことが変わってくるようだ」
モニター「考えさせられるな」

検討

 今回のセッションが、ジョン・マックがETアブダクション現象に関する本を出した数週間後に行われたものであることは注目すべきことである。その現象に対するマックの扱いは、おそらく現存の文献において最も慎重であり、グレイに関しても肯定的である。グレイたちは、我々のRVの試みに関して、従来の作戦を変えることに決めたのかもしれない。というのも、彼らの活動に対してこれまで我々の典型的な反応であった“恐れ”なしで、今や我々は、その現象を理解することが可能であると彼らは結論づけたからである。
 このセッションのあと私のモニターは、高度に監視されたタイプ4の条件下でETアブダクションをターゲットとした多くの透視者と連絡をとり合ったが、彼らの結果はすべて目覚ましいものであった。一九九四年五月のある時点でグレイたちは、人間との交信方法を変化させていた。我々は、少なくとも互いの活動を自由に看視できるという意味で、彼らと対等に考えられている。これは、将来のさらに大きな協力関係への前触れとして見られるのではないかと私は思っている。
 おそらく、今回のセッションから得られる最も重要なデータは、少なくとも一人のアブダクティーは自発的に誘拐されたということであった。私がセッションの間に考えたことは、この特別なアブダクティーは、複雑な意識構造の中に何層もの意識をもっているということであった。深層レベルでは、彼女はアブダクション体験に気づいており、それに参加することを喜んでいた。しかし目覚めた意識は、それに参加する事前の合意も覚えておらず、ただ恐ろしいと思えることに深入りすることも望んでいなかった。
 人間の意識には何層にもわたる構造があることを考えれば、それがグレイたちをいかに戸惑わせるものか、また、なぜ彼らが無神経とも思えるやり方でアブダクションを行っているのか、私にも理解することができる。彼らはその人物が(肉体的誕生以前に)もともと参加に同意していたことを知っており、だから肉体的人間のパニックを無視したのかもしれない。多分彼らは、アブダクティーの肉体が死に、そのサブスペースの個性が肉体的意識から自由になるときすべてのことが許される、と想定しているのだろう。
 最近の人間の行動は、グレイの態度の変化を促しているようだ。もしグレイたちが本当に自分たちと同様に人間を救うために働いているのなら、我々をこの冒険における行動的なパートナーとして扱うことで、さらに得るものがあるのかもしれない。


第23章 火星の聖職者


 昔、軍の透視者たちが最初に赤い惑星から地球へ向かう火星人宇宙船の軌道を追跡し始めたとき、火星人の社会において独特な役割を演ずるある一団に気づいた。彼らはまじない師かシャーマンに似ていた。彼らは多くの火星人たちにたいへん尊敬されていて、さらに不吉なことに、彼ら自身に似た他の者たちの会合に参加するために、自分たちの肉体からサブスペース体を分離させる能力をもっていた。正直にいって、これはアメリカ軍をおびえさせた。
 やがて私は、RVの世界で火星人聖職者として広く知られるようになるこの謎めいた生き物たちを透視した(デブ導師は、彼らはシディーを行わないが、自分にもわからないそれ以上のことを行うと、すでに私に教えてくれていた)。このセッションは通常のタイプ4の条件下でモニターされた。

日付:一九九四年七月二七日
場所:ミシガン州アン・アーバー
データ:タイプ4、遠隔モニター
ターゲット対応番号:8711/3454

 予備ステージでは、ターゲットが乾燥した陸地と人工構造物の上にあることを示していた。

私「黄褐色、赤、茶をとらえている。ここは砂っぽくて岩が多い。寒い、寒い。火星のようだ。今のところ、それを〈分析的判断〉とさせてください。
 ステージ3のスケッチをやっている。いくつかの低い丘、右前方に緩やかなくぼ地、そして、何本かの水路が中央を貫いて斜めに刻まれている。川底かもしれない。水を調べるべきですか?」
モニター「そのままステージ4に行くんだ」
私「了解。今、マトリックス内にいる。たくさんの赤い岩がある。険しい山々を考えれば、基本的に平坦な地域だ。ここには空気がない。地表は不毛で、生き物はいない。たいへん苛酷な環境だ。現実には、多少の空気があるのを今、感じている。ひじょうに希薄で、乾燥している。
 ひじょうに美しい、何もないところだが、キャンパーにとっては天国のようなところだろう。
 今、生き物たちをとらえている。彼らはグレイではない。これは本当に火星のようだ。この生き物たちをデータの流れから火星人と分析している。男たちと女たちがいるのがわかる。彼らはとても痩せていて、色白で、髪はいくらか小さく束ねられている。今、彼らの所在をとらえようとしている。待って。
 彼らは部屋の中にいる。私はその中にいる。あまりモダンではない。生き残り用の基本的な必需品がある。実際、たいへん貧しいところだ。調べている。部屋は地下にある。今、私は何をすべきですか?」
モニター「統治という概念を調べるんだ」
私「了解。この人々は原始的な組織構造をもっている。アメリカの選挙のように、大規模な参加方式のネットワークはない。一族支配のようだ。長老は尊敬され権威をもっている。生き残るための条件は、自由気ままな民主的熱意を許さない。それは階級的で権威的な構造だ。権威の段階は選ばれた長老たちの間で行われる小規模な投票と経験を通して決められる。宗教を調べたいと思う」
モニター「そうするんだ」
私「ここでは礼拝が行われている。物質的生活をとり巻く苛酷な現実があるため、それは社会の結束を維持するために利用されている。子供たちは母親同様にそれを必要としている。しかし、選ばれた長老たちはあまりそれに納得していない。ただ、彼らは人々を励まし、おそらく、伝統が人々を助けるだろうという希望から、口先だけでそれを行っている。それはある段階ではすべての人々を助ける。
 宗教的指導者の方向に引かれる感じがしたので、今、それを探っている。彼らは聖職者のようだ。修道士。彼らは社会的な階層(トーテムポール)のトップにいる。シンボルや魔術を使うようだ。彼らは物質的なものを超えた実在があるという、素朴だが真の理解力をもっている。特に内部組織の点で、彼らはイランの神学者に似ている。彼らは政治と社会の両方に影響を与える。しかし、ひじょうに進化した精神的存在というよりはシャーマンに近い。
 彼らの魔術の観念を追いかけている。待って。トーテムか物神のような物体がある。そうだ、これらは西アフリカの物神に似ている。彼らは、自分たちの宗教的概念を補強するような体外離脱も体験している。そのような聖職者の一人が今このRVに気づいているようだ」
モニター「指導者の居場所を突き止めるんだ」
私「彼らは至るところにいて、利益を上げている。彼らは安全保障機構のようでもある。大衆を支配し続けるために、自分たち自身の諜報手段を使ってひそかに見張っている。
 これは妙だ。この宗教的指導者に対する統制の限界を見つけ出してみる。待った……。この社会には二つの階層がある。宗教指導者は下の階層を支配する。官僚的・専門的階級は彼らを寛大に扱っている。というのも、現在のところ彼らは大衆に対して(宗教の)代わりとなるような信念体系をもっていないからだ。
 彼らの所在に関していうと、彼らは地球にもいる。待って……これは面白い。彼らは地球への移動を重要な権力闘争と見なしている。ちょうど今、彼らにとって火星にはあまりめんどうなことがないので、火星から地球への移動が争いの種になっている。地球では、大衆は宗教指導者を完全に見捨てるかもしれない。
 これは、彼らの火星の伝統を維持するための、本物でひじょうに現実的な闘争である。彼らは自分たち自身を個人的にコントロールできなくなるのを恐れているのではなく、自分たちを、少なくとも普通の人間ではなく火星人たらしめているすべての伝統が破壊されるのを恐れているのだ」
モニター「一般的な聖職者にとっての体外離脱状態に関してもっと調べ出すんだ」
私「了解、ちょっと待って……彼らは招集されている。仕事はあまりはかどっていない。人間が肉体とサブスペース体の二つのレベル間で働くときと同じ困難を彼らも抱えている。聖職者たちは肉体的にも意思の伝達を行うことができるが、サブスペースがコミュニケーションのために利用されている。体外離脱状態は聖職者たちを束ね、人々に伝統をうやまわせるためのものだ。それはまた人間の伝統に対する違和感を強めることを促す。
 彼らは、体外離脱は自分たちのような種族がもつ高度な能力であると説いているようだ。これは事実ではないが、大衆の支配を説くのには役立つことを知っている」
モニター「指導者のシンボルについてはどうなんだ?」
私「今それをとらえている。スケッチしてみる……これは面白い。どうやら、昔火星人を救出に来たグレイがユニフォームにつけていたのと同じシンボルだ。どうやってそれを手に入れたのだろう?」
モニター「人間と火星人との会合に意識を向けるんだ」
私「火星人聖職者たちはむしろ原始的だ。彼らは我々人間を好んでいないようだ。火星の住民を隔離したがっている。うーん。彼らは、自分たちから人々が離れていくように見える事態のなりゆきに狼狽している。
 今、何かをとらえている。会合がまもなく開かれる。聖職者ではなく、官僚的・専門的階級とだ。私には、官僚的・専門的階級は我々が聖職者とかかわりをもってほしくないと思っているのがはっきり感じられる。それは、人間と火星人との交流を成功させる方法ではないからだ。なぜなら、聖職者とコンタクトをとる人間は、国連の代わりにローマ法王とコンタクトをとる火星人のようなものだからだ」
モニター「よし、コートニー。よくやった。セッションを終えるんだ」
私「それで、ターゲットは?」
モニター「“火星人聖職者”だ」
私「やっぱりそうか」

検討

 このセッションは多くの問題をカバーし、遠隔透視者たちが長い間抱えてきた数々の重要な質問に答えを出した。最初に、火星の聖職は火星人社会における公式の政府機関ではない。聖職者と非宗教的な官僚たちの権威争奪がどの程度社会を分裂させているのか、私にもわからない。だが、大衆における影響力は、非宗教的な指導者の方向に優位に傾いているが、彼らは、まだ聖職者たちを無視することはできないと感じている。
 研究のこの時点において私にわかっているのは、火星の権力組織には二重の垂直に下りる指令の流れがあるという最小限のスケッチだけである。しかし、大衆には明確に上下二つの階層があり、聖職者の影響は下層で優勢であることははっきりしている。二つの階層をわかつものははっきりしない。富が基準になるようなことはなさそうで、何か他の要素が基準にされるようだ。この時点では教育レベルを推測できるが、間違っているかもしれない。というのは、彼らが最終的に行う(少なくとも理論上)ここ地球への移住を前にして全住人を向上させる必要があれば、なぜ火星人は自分たちの社会の全メンバーに平等な教育レベルを与えることを否定しようとするのか、よくわからないからである。


第31章 火星人との公式会見


 今やほとんどすべての読者の心に浮かぶ最も重要な疑問の一つは、おそらく、どのように火星人とのコミュニケーションが始められるかであろう。私が前章で示したように、人間はグレイよりも先に火星人と公式のコンタクトをもつであろう。その後どれだけたって、我々がグレイとかかわりをもつのか私にはわからないが。国連によって放送されるグレイへの率直な会見要請は、ことを早めることになるであろう。しかしいずれにしろ、火星人とのコンタクトが最初に起こり、これが人間の意識を大きく星々へと向けさせるのに役立つであろう。
 本章の基となっているセッションは、火星人たちがどれだけ首尾よく人間文化に自分たち自身を統合させているかを探り出すことが、本来の意図であった。当セッションは一つの答えを与え、多くの他のRV体験と同じく、それ以外にも重要な情報を豊富に明らかにした。その中には、第一歩として、どのように人間−火星人間の公式な交流が進められるべきか(または、おそらく進められるであろうこと)を示唆する情報も含まれている。
 このセッションはタイプ4の条件下でブラインドで行われた。

日付:一九九四年九月二六日
場所:ジョージア州アトランタ
データ:タイプ4、遠隔モニター
ターゲット対応番号:6068/0004

 予備ステージでは、ターゲットに対する最初の接近は乾燥した陸地にある人工構造物にかかわっていることを示していた。

私「茶と黄褐色をとらえている。手触りは木とセメント。気温は暖かく、実際とても暖かい。甘い味を感じており、人間の声が聞こえる。何か円形で平たいものがターゲットのある場所に存在するのを知覚している」
 平たい屋根をもった円形の構造物と思しきものを素早くスケッチするために、ステージ3に進む。
モニター「ステージ4に移るんだ」
私「今、マトリックスにいる。ある建物をはっきりと知覚している。建物の中に声が聞こえるので中に入ってみる。会話が行われている。話をしている人々がいる。建物は円形で、以前この建物を透視したことがあるかもしれないという感じがする。しばらく外に出てみると、建物のまわりには木々がある。今、内部に戻った。
 オー! 何という〈感情的反応〉だ! 建物の中で話をしていた人々にまさしく注目している。ひじょうに力強く精力的な人々だ。これはトップレベルの会合だ。彼らの心の中に入らせてください。待って……彼らはETたちについて話している。
 この人々は軍服に身を包んでいる。将軍、提督、軍の高級将校たちだ。ここには一人、文官もいる。合衆国の大統領のようだ。〈感情的反応〉の欄にさらに“オー!”と書き留めさせてくれ」
モニター「わかった。それをすべて書き留めて、先に進むんだ。ペースを速めるんだ。いいぞ」
 モニターは私をすぐにステージ6に移らせる。彼は私に、聞こえる会話の主要テーマの構成要素を分離させるSRVテクニックを実行させる。
私「ひじょうに実践的なレベルの議論がもち上がっている。主な焦点は、まさにETたちとのコミュニケーションの方法である。彼らは、意識にはこれが可能なことに気づいているが、さらに物理的な何かを求めている。意識を通したコンタクトは始まったが、今、彼らは何か他のものを必要としている。提案の一つは電波の使用だ。彼らはこのやり方を考え出そうとしている。
 グレイたちが彼らの会話の主題ではない。この人々は火星人たちについて話している。これは現実の惑星間コミュニケーションの問題だ。彼らは今電波に焦点を合わせている」
 未来の特定の時点を探れるよう、私はステージ6の時系列線をつくる。
「人間が火星人と対話を始めている時点を見つけた。私はこれをコミュニケーション・ポイントと呼ぶことにする。彼らは電波望遠鏡──複数の望遠鏡で一つではない──を使っているようだ。その望遠鏡は世界中にある。
 人間たちは火星に望遠鏡を向け、耳を傾けることから始める。彼らはあまり多くのことを拾い上げてはいないようだ。それで、人間たちは戦術を変えて、送信を始める。解決されるべき数々の問題がある。一つの大きな問題は、何語を使うかということだ。それから通信定式書を開発しなければならない。
 グレイたちは観察しているが、このすべてに積極的に参加してはいない。彼らは興味をもっているようだが、消極的だ。
 人間たちはまた、月のET基地にも送信しようとしている。ただ、火星に向けてのほうにもっと力を注ごうとしている。月のETたちは沈黙を守っている。
 最初は、火星の火星人たちは黙っている。彼らは発見されたと感じ、何をすべきか、どんな人間の反応が生じるのか、考えを巡らしている。この日がいずれはやって来ることを彼らはつねに自覚していた。彼らは少し傷つきやすいようだ。
 時間を先に進むと、火星人たちは対話を行うことを決定する。彼らは大きな音ではっきりと信号を送り返す。彼らは、人間が使い始めたのと同じ電波定式書を使用するようだ。
 火星人たちの様子に私は少し感動した。火星への電波信号を追いかけ、私は今そこにいる。火星人たちはヒューマノイドで、今はとても人間に似ている。髪の毛もある。この火星人たちは圧倒的に男性だ。ある種のユニフォームを着ているが、軍の戦闘グループではない。火星人たちはそのようなことはしない。彼らの全防衛体制は、戦闘ではなく、秘密主義によって形づくられているようだ。火星人の皮膚は薄い。この火星人たちは本来の火星人と同じようだ(サブスペース的意味において)。しかし、彼らの肉体は地球人とそっくりだ」
モニター「時間を先に進むんだ。火星人たちはどこにいる?」
私「待って……彼らは地球にいる。彼らは、ここに早くから移住してきた人々のように、自分たちの土着のグループと一緒に働いている。また彼らは自分たちの仕事を継続するために、人間の政府から支援を得ている。現在、彼らの仕事は明るみに出ている。何てことだ。火星人たちは本当に人間のようだ」
モニター「グレイたちはどこにいるんだ?」
私「グレイたちは自分たちのことを行っている。この未来の時点で、彼らの遺伝子プロジェクトは終わっているか、あるいはほとんど終わっているところだ。残されているのは仕上げだけだ。彼らはまだ人間たちと直接話はしていない」
モニター「了解、コートニー。必要なことはやった。ターゲットは“火星人/未来の文化”だった」

検討

 将来、我々が交流することになる火星人たちは、おそらく違いを見分けられないほどに我々と似ている。地球を根拠とする人間と比較すると、彼らの事実上の違いは、文化と科学技術にある。我々が彼らと首尾よく交流するつもりなら、彼らは、我々が彼らの気持ちを理解しなければならないという要求をもつであろう。しかし、彼らは“リトル・グリーン・メン”(ラジオ放送『宇宙戦争』に登場した宇宙人[緑色の小さな宇宙人])としては我々のところにやって来ないであろう。ET文化との我々の最初のオープンな交流は、少なくとも見たところ彼らの肉体が我々と変わらないことで気持ちよいものとなるであろう。


第33章 火星を破壊した出来事


 火星がかつてしっかりした生態系をもっていたとしたら、何がそれを破壊したのであろうか? 破壊以前の時期から得られたRVデータは、火星人自身が、火星の大気はいうまでもなく自分たちの環境を破壊するような科学技術をもっていたとは示していない。これまでの章で提示されたデータに基づいて、グレイたちは環境的に向こう見ずな行為を通して自分たちの故郷を破壊し、また人間たちも同様の道を歩んでいることを、我々は現在知っている。しかし、火星の事情はまったく異なっている。調査の初めから、火星環境の崩壊はある自然災害にかかわっているように思われた。たくさんの異なる透視者たちは、火星の災害は、おそらく彗星か小惑星に関連した天体の出来事によって起きたと結論づけている。
 そのためモニターと私は、火星文明崩壊の原因を見極めるための、手がかりとなるターゲット設定を行った。結局のところ、今回のRVセッションは、我々が本書のために予定した二つの最終セッションの一つとなろう。何カ月も前にモニターと一緒に最初のターゲット・リストをまとめ上げたあと、私が私の無意識が実際のセッション前に意見を形成するのを防ぐために、注意深くリストを見ることを避けていたのを読者は思い出すであろう。リストは長かった。それに加えて、暫定リストに新たなターゲットを加えたモニターの強い好みが、まだ割り当てられていないターゲットについて私があれこれ考えないようにさせてくれた。しかし、最後から一つ前のターゲットが回ってきたとき、私は初期火星文明の崩壊を見極めるターゲットがまだ割り当てられていなかったことを意識的に思い出した(他のどのターゲットに際してもこんなことは起こらなかった)。セッションが始まると、ターゲットからの最初の信号は、このセッションが本当に火星がターゲットであることを示した。タイプ4の条件下で始まったこのセッションは、それゆえ実際にはタイプ4とタイプ6が合わさったものとなった。

日付:一九九四年九月二九日
場所:ジョージア州アトランタ
データ:タイプ4、遠隔モニター
ターゲット対応番号:5966/2695

 予備ステージでは、ターゲットが動きと荒れた自然の陸地にかかわっていることを示していた。

私「茶とベージュ色をとらえている。手触りは岩だらけで、気温はとても寒い。ハリケーンのように、すさまじい風の音が聞こえる。また何か円形で丸いものを知覚していて、火星の災害を分析している」
モニター「ただ手続きに忠実にしたがって、ステージ3に進むんだ」
 私のステージ3スケッチは二つの円形物体の単純な表示である。
私「ステージ4に移ると、少なくとも円形物体の一つは惑星であるようだ。まだ茶色と岩だらけの手触りを感じとっていて、何かが冷たい。また強い大気の乱れ、特に渦巻き運動を感じとっている。この惑星にかかわる生き物がいて、現在のところ彼らは恐怖状態にある。そこにはものすごい動揺がある。二つのものを〈分析的判断〉としてとらえている。一つは月か小惑星、もう一つは火星だ」
モニター「コートニー、直接ステージ6に行くんだ。君は正しいターゲットをいい当てている。それは火星の災害だ。ただ手続きに忠実にしたがって、続けるんだ」
 モニターは私にその惑星と小さな物体をスケッチさせる。この二つの物体に比較して地球を定め、私に火星と比較して小さな物体の動きの方向を割り出させることを可能とするSRVテクニックを実行する。またその出来事の時系列線をつくる。
私「小さいほうの物体は片側が大きい、いびつな形をしている。そこには分子レベルでのみ計測可能な、きわめて薄い大気がある。この物体はより大きな惑星の大気の端を通り抜けた。惑星の大気は比較的濃く、物体は成層圏を押し抜けて去っていった。物体が大気を通り抜けた地域を交差地区と呼ぶことにする。物体は惑星の表面には墜落しなかった。
 今その惑星を探っている。最初に、大気にはあまりダメージはない。交差地区に近い区域では高い乱気流がある。他の場所では、惑星全体の大気を通じてただ揺れているだけだ。交差地区にさらに近づくと、さらに高いレベルの乱気流がある。
 最初の乱気流に続いて、水面に落ちた石が外側に向かってより大きな波紋を描くのに似て、物体は大気中に円形の波を起こした。波は大気の津波に成長した。
 大気の乱れからは表面の環境には最初衝撃はなかった。それは、すべてのものがただちに破壊される地震のようなものではなかった。
 円形の波が大気を通して伝わり、惑星の反対側で出会い、跳ね返ってくるかまたはそれ自体を通り抜けて、交差地区に戻ってきた。それからふたたびそれは円形の波として押し寄せてきて交差地区で出会い、振幅を起こして、ギターの弦のように振動しながら跳ね返りか通過現象を繰り返し、何度も続いていった。それは共鳴を起こした。共鳴は、太陽熱のように他のすべての影響源を圧倒しながら、大気状況の最初の伝動装置となった。見たところ重力は素早く振幅を和らげられるほど強くはなかった。そのため、この状態は長く続いた。
 惑星の生き物たちは徐々に影響を受けた。すべての気象パターンは変わった。惑星の状況はゆっくりと悪化し始めた。農作物が育たなくなったため、食料が問題となった。雨も問題となった。最初に洪水と干ばつの両方が現れた。
 大気はしばらくの間は呼吸するのに十分の濃さであったが、絶えず起こる波は徐々に大気を宇宙空間に飛ばしていった。惑星の重力は、波の運動エネルギーを打ち消すことはできなかった」
モニター「了解、コートニー。もう十分だ。ターゲットは“火星人/文明崩壊(の出来事)”だった。これは面白い。我々は決してこんな過程を推測できていなかった。これは、惑星の大気における乱気流や流体力学を研究する科学者の間で、完全に新しい研究分野を切り開くことになるだろう。私にはここから出てくる数学的なモデルが想像できる」

検討

 私が目撃した過程は本当に面白いものであった。それは、大きな重力をもつ地球であれば、通過する小惑星か彗星によってつくり出される大気の波は素早く静められたであろうから、起こりえなかったことである。しかし、火星においては、大きな波が長い時間をかけて形成された。火星人たちが自分たちの惑星に深刻な問題があることを悟り、連邦はグレイによって編成された救出チームを送るだけの時間があったのだ。




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