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Re: 「インフレターゲット論」批判は重要だが全体としてはほとんど無意味な主張 投稿者 あっしら 日時 2002 年 4 月 22 日 20:08:29:

(回答先: 「デフレ対策」と「茹で蛙」の寓話 〔普通の人のための経済学より〕 投稿者 PBS 日時 2002 N 4 月 20 日 23:48:57)

オリジナルの主張は、「デフレを不況の原因とし、原因であるデフレを貨幣量で克服することで不況からも脱却できるという議論を浅薄で無責任なもの」と諫めるものだろう。

「デフレ=不況」ではないことは、「国家破産」ボードに書き込んだことだが、中国経済の動きを見ればすぐにわかる。
この意味で、「デフレ=不況」も「デフレ→不況」も先験的には言えないし、「不況→デフレ」も先験的には言えない。

しかし、日本経済が「不況→デフレ→不況→デフレ」という循環を見せてきた(いる)ことは現実であり、経済論理的にも不況とデフレは密接な連関を持っている。
経済学的な興味や新奇性から言えば、「デフレでありながら好況」を示している中国経済のほうが心魅かれるものである。

日本経済と中国経済はともに年率1%を超えるデフレであるが、IMFは「世界経済見通し」で、日本経済と中国経済について対照的なデータを示した。

日本経済の予測:2002年−1.0%  2003年 0.8%
中国経済の予測:2002年 6.9%  2003年 7.4%

デフレータをすべて−1%だと考えると、

[名目成長率]

日本経済の予測:2002年−2.0%  2003年−0.2%
中国経済の予測:2002年 5.9%  2003年 6.4%

となり、IMFは、中国経済がデフレ下でもGDP的成長を続けると見ている。

※ 中国経済のデフレ下での成長については後述し、オリジナルの論点を先に見る。


>「デフレ対策」という言葉も同じような転移を見せている。従来の考え方では、イン
>フレやデフレはあくまでも表面的あるいは名目的・貨幣的な現象にすぎず、実質的な
>経済の実態を指すものではなかった。この使用法においては、インフレだが不況の場
>合もあるし(スタグフレーションという)、デフレだが好況の場合もあるはずだっ
>た。ところが、今はデフレが必ず不況とセットで語られている。表題のデフレ対策
>も、本来は不況対策であるはずだった。それなのになぜが混同されて使われているう
>ちにデフレ対策という言葉が定着してしまった。

歴史的な基準をどこにするかという問題はあるが、従来的な考え方ではインフレ=好況期・デフレ=不況期であり、「スタグフレーション」というインフレと不況が同時に進行する状況のほうが“新奇な”経済現象である。

日本における「スタグフレーション」の代表は、72年に発足した田中内閣が政策的に推し進めた「日本列島改造」景気がわずか1年で破綻し、73年秋の「石油ショック」と重なることで、「狂乱物価」とも言われた急激なインフレを引き起こし、実質GDPがマイナス成長になったものである。

戦後日本の高度成長は、1971年“ニクソンショック”→1972年田中内閣成立→「日本列島改造景気」→1973年2月変動レート制移行→1973年10月“第一次石油ショック”→「狂乱物価」→「一大不況」という流れで終焉を迎えた。

高インフレと不況の同時進行である「スタグフレーション」は、経済社会の購買力が偏向することで生じるものである。
簡便に説明すると、同じ可処分所得の総和であれば、これまで100の商品(個数や種類のバラエティと考えて欲しい)に向けられていた購買力が、高インフレになったことで、生活必需品を中心とした70とか80の商品だけに向けられてしまう。しかし、原油というエネルギー・輸送・原材料の根幹を担う商品が3倍以上も値上がりしているから、利便商品なども販売価格を引き上げなければ採算が合わない。そうなると目論見通りには売れないので、在庫の積み増しになったり、資金繰りが悪化することになる。(コストが上がっているのに販売価格を上げないというのは、はじめから資金繰りを悪化させる道を選ぶ愚挙である)
また、便乗値上げで利益を拡大した企業も、生産活動の強化や賃上げに資金を回すことよりも、将来的な利得が確からしく思える土地や株式への投資に資金を回すようになる。

論者の言う「デフレだが好況の場合もあるはずだった」というのは、現在の中国経済を例外として、近代経済社会ではなかった。
言えるのは、農産物価格が下がることで経済社会全体の好況が促進されることがあったということである。
19世紀の英国は、アメリカ合衆国などからの農産物輸入で生じた食糧価格の下落が賃金抑制要因や工業製品への購買力拡大の要因となった。


>不況の対策は本来、貨幣面以外の手段で行うべきだ。私個人は旧マネタリストではな
>いし、一部に貨幣と実態経済の相互作用があることも認めうるものだが、それとこれ
>とは別問題だ。貨幣は信用によって維持されるものであり、その本質を忘れて信用を
>むざむざ失墜させようという政策はあまりにも危険であると言いたいだけである。

「貨幣面以外の手段で行うべきだ」というより、「デフレ不況」対策は、貨幣的手段だけで行えるものではない。
それは、日銀の超金融緩和策=貨幣供給量の増大が、27兆円もの日銀当座預金残高をもたらしただけで、実体経済の貨幣流通量拡大にはつながらなかったことでわかる。

日銀の超金融緩和策は、日銀と銀行のあいだに巨大な貨幣プールを築いただけで、不良債権の増大を恐れる銀行から外(実体経済)には向かわなかったのである。
増大した貨幣が実体経済に向かわなければ、デフレも解消しない。
超金融緩和策は、銀行が“預金引き出し”で資金ショートになる事態を防いでいるだけである。

貨幣の信用は、基本的に、それに見合う生産活動があるかどうかに負うものである。
生産活動を超えた貨幣の供給を行えばインフレを引き起こし、インフレで困窮した国民を救おうとさらに貨幣の供給を増やせば、インフレがさらに進み、行き着くところはハイパーインフレである。


>デフレが問題になる点として、賃金の下方硬直性とか、税収の累進性が指摘される
>が、そのためにだけインフレを起こすべきかをよくよく議論すべきである。
>これだけの不況下で賃金も全体的には下方シフトしているように思われる。
>税収が減少するのは、そもそもの制度がインフレ下において自動的に増税ができるよ
>うな国民を欺くシステムを組みこんでいたことにこそ問題がある。インフレによる税
>収の自然増を図るよりは、国民と正々堂々とした議論をして必要な増税を行うべきで
>ある。(その方が歳出の無駄が省かれて、より効率的な民間への権限委譲が進むかも
>しれない。根本的なデフレ対策になるであろう。)

「賃金の下方硬直性」は、住宅ローンなどで借り入れをしている人には痛手になるが、デフレ率未満の引き下げであれば、実質賃金は上昇したことになる。
「税収の累進性」は、インフレやベースアップを前提として所得税制が決められているから、デフレであれば年々所得税負担の重みが増していくという話なんだろうが、これは、税制の変更で対処すべきことで、インフレでどうこうすべきことではないのは確かである。

論者は増税とあっさり語っているが、どういう取引に対してかやどういう層に対して増税するかを明確にしなければ、増税でより不況が進み、増税策の実施が現実的には税の減収を引き起こすということにもなりかねない。(増税=税増収でもないし、減税=税減収でもない)

「(その方が歳出の無駄が省かれて、より効率的な民間への権限委譲が進むかもしれない。根本的なデフレ対策になるであろう。)」と主張しているが、無駄な歳出は抑えなければならないが、「効率的な民間への権限委譲」は、デフレ対策とはならず、デフレを進めるものである。

無駄な歳出を抑えながら、負担できる高所得層に増税し、可処分所得が少ない中低所得者の負担を減少させることが、有効な不況対策でありデフレ対策である。


>インフレによって債権者から債務者に対して所得移転が行われることも、債務者救済
>のためには良いかもしれない。国民資産が1400兆円といわれる中で、国民のその資金
>をちゃっかり頂戴してしまいたいという思いは債務に苦しむ企業にも、そして政府に
>もあるだろう。しかし、それは債権者や国民を騙そうという発想でしかない。

債権者=銀行は、インフレで騙されたり、所得移転をみすみす許すような経済主体ではない。
インフレ(デフレ)率を考慮した実質利子率で貸し付けを行っている。インフレになれば、貸し出し利率を引き上げるし、デフレになったからと言って、インフレ時に取り結んだ高利子率を引き下げるわけではない。

政府債務も、国債の利払いや償還を借換債を発行して行っているので、インフレになればその時点で発行する国債の利子が上昇するから得とは言えない。(過去の債務を返済するだけの話であれば論者の主張は正しいが、今後も新たな国債を発行するのだから、インフレが債務軽減になるとは一概に言えない。現在のように、インフレからデフレになるのが債務者にとっていちばん辛い)


>海外からは著名な経済学者を始めとして、日本にデフレ対策を取るように求める声が
>多いのも事実である。しかし、彼らははっきり言って無責任な第三者である。
>デフレ対策を主張する人々には、ぜひとも自分の資産を国債に投資してもらいたい
>(今の利回りだと可哀想かもしれないが、彼らが主張するインフレ率2-4%以上の利息
>を与える必要はない)。そうでもしないと、無責任な議論が横行しそうだ。

海外の著名な経済学者のなかには、無責任な第三者であると同時に日本経済をおかしくしたいと考えている人もいる。

国債に投資しているのは銀行や機関投資家であり、他に有望な投資先がないから、預かったお金を国債に投資しているのである。(預金をそのまま持っていれば、0.001%とは言え利息を支払わなければならないので大損である)
政府も、国債利回りの上昇=価格下落を考慮しているから、リスクが少ない短期国債の比重を高めようとしている。

銀行の収益源は貸し出しである。デフレ対策が不況対策になって好況を転換すれば、銀行は貸し出しを拡大させてボロ儲けするから心配は要らない。

好況になれば2〜3%のインフレになる可能性が高いから(企業はできるだけ高く商品を売りたがるもの)、デフレ対策を主張する人に対して「国債に投資してみろ」と恫喝するのは、デフレ下での好況への道筋を提示しない限り、不況対策そのものを無責任な議論と言っていることになってしまう。


===================================================================================
[デフレ下での中国の経済成長]


日本経済は、それ以前からの問題だが、誤った経済政策により97年度を境にして縮み続けている。

[日本経済のGDP推移]

        名目         実質 デフレータ
----------------------------------------------------------------------
97年度 520,177( 3.6)521,315( 3.7)−0.1
98年度 513,245(−1.3)517,204(−0.8)−0.5
99年度 514,349( 0.2)526,951( 1.9)−1.7
00年度 513,006(−0.3)535,690( 1.7)−2.0


以前から書き込んでいるように、「デフレ状況」では経済指標を“実質”ではなく“名目”で見なければ錯誤に陥る。
“名目”を抑えなければ、企業業績も予測できなければ、人々の生活実態も見えなくなる。

好調を伝えられる中国経済も、年率1%を超える「デフレ状況」にある。

「デフレ」は、資金をいったん物や労働力に変え、時間を掛けて商品を生産し、それを売ることでより多くの資金を回収するという経済活動を抑制するものである。
それは、「デフレ」であれば、そのような過程を経て回収した金額が投下した金額より多くなるという見通しを持ちにくくなり、生産活動に投下するよりお金をそのまま保有していた方がいいという認識を多くの経済主体が持つ可能性が高いからである。

「デフレ」である中国が、実質とは言え7%前後の経済成長を遂げていることは脅威的である。
デフレ下での高成長の要因としては、次のようなことが考えられる。

● 物価下落が不況から生じたというより生産性の向上から生じた

中国経済の根幹を担っている国営企業のリストラ(余剰従業員解雇・生産設備の更新・従業員福祉の切り捨て)が進んだ。
この結果として国営企業の輸出が拡大すれば、従業員の再雇用も実現される可能性がある。


● 輸出拠点として外資の直接投資が拡大

「デフレ」は経済活動を縮ませるものだが、日本のみならず欧米アジア諸国が生産拠点を中国に建設していることで、それを克服した。

輸出向けの商品が生産されるのであれば、雇用増大分だけ国内の需要が増大するので、生産性が高い工場が増えてもデフレを深化させない。


● 政府の財政支出拡大

中国政府は、7%成長を“国是”としており、それを実現するために大規模な公共事業を立案し、財政支出を増大させている。
インフレからデフレになった経済状況での政府債務は大きな負担になるが、名目でも6%前後の成長を遂げるのであれば、徴税さえきちんと行えば命取りにはならない。

そして、財政支出拡大が「デフレ」を解消する可能性もある。


● 中国元の安め固定

中国経済の高成長は、現在のところ、日本の高度成長期と同じように、輸出の拡大に依存している。
中国の輸出は、90年以降4年でほぼ2倍という急成長を遂げている。

中国経済の生産性の向上と「デフレ」を考え合わせると、中国元は価値が上がって当然である。

中国政府は、「アジア経済のために中国元を切り下げない」と胸を張っているが、お為ごかしで居直った論理である。
“元安”は機械類の輸入には不利だが、原油輸入依存度が低いことから、輸出条件で有利な“元安”をなんとしても維持したいということだろう。

中国経済の“成功要因”を簡単に説明したが、“成熟期”にある日本経済は、“高度成長期”の中国経済と同じ経済政策をとることはできない。

日本経済は、世界経済における中国経済との“棲み分け”を明確に認識し、貿易黒字の維持と付加価値(GDP)の合理的な分配をはかることで、国民生活の安定化を実現しなければならない。

現在のような誤った政策そして小泉政権が考えているさらに誤った政策を実行していけば、国民生活の一部困窮化や幅広い不安定化が拡大する。そして、貿易黒字も消え去り、アルゼンチン的状況に陥ることになるだろう。

日本が立ち直るために残された時間は、理想的(過去を言っても仕方がないから)には1年、ぎりぎりでも貿易黒字が維持できると思われる2年だろう。

日本企業は、生き残りと拡大のために中国進出を拡大させているが、企業栄えて国民生活窮乏ということがないようにしなければならない。
そのようにして日本企業が栄えた日本は、手足のない“本社管理国家”という脆弱なものになり、東京圏のみがそこそこで、それ以外は惨憺たる状況という国になってしまう。


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