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第12回 歴史認識の“修復”なしに反日デモは終わらない (2005/04/25)
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投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 10:09:35: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 第11回 中国の反日デモを挑発した小泉首相の政治責任を問う (2005/04/22) 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 06 日 09:51:49)

第12回 歴史認識の“修復”なしに反日デモは終わらない (2005/04/25)
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/

2005年4月25日

 中国での反日デモは急速に勢い失い、収束したかに見えるが、火種が消えたわけではない。今のところ当局の力づくでの押さえこみが功を奏しているだけで、当局の押さえこみがゆるんだら、あるいは、デモ側のパワーが当局の押さえこみを上まわったら、いつでもまた火を噴く可能性が残っていると見るべきだろう。

 ジャカルタでの日中首脳会談(4月23日)が、反日デモを終息させたというわけではない。

 共産党中央が「デモ野放し」から「デモ押さえこみ」の側にカジを切り直したのは、数日前からであることは、中国の国営テレビ放送、公安当局の通達などから明きらかである。4月16日に上海の反日デモが一万人を越える規模に盛り上がり、日本の総領事館の建物が相当の被害を受けたあたりが、今回の騒動の一応のピークだったと考えていいだろう。

 
冷たい握手が日中首脳の温度差を象徴
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 しかし、ジャカルタでの小泉首相と胡錦濤国家主席のやりとりを見ても、両者の和解がなったとは全く考えられない。

 だいたい、日本側はその前日のバンドン会議第1回の22日に会見を求めていたのに、中国側は全く応じなかった。第1日目2人が同席する公の場面は記念撮影など幾つかあったのに、両者握手をしないのはもちろん、視線を合わせて笑みを交わすことすらせず、全くのすれちがいに終わった。2日目は日本側の必死の働きかけで、胡主席も会うことには応じたものの、冷たい握手どまりで、笑顔を見せることはなかった。

 新聞は大々的に「日中友好維持で一致」(日本経済新聞)「日中改善へ対話促進」(朝日新聞)などの大見出しをかかげて、いかにもこの会談に大きな意義があったかに見せかけているが、会談内容をよく読むと、実際に行われたやりとりは全く冷たいもので、「ベリー・グッド・ミーティング」「極めて有意義な実りある会談」(記者会見での小泉首相の総括)などでは全くなかったことがわかる。

 胡主席が記者会見で強調したことは、日本側の最近の行動(歴史認識、台湾問題など)に対するはっきりとした不満の表明「中国人民の感情を傷つけた」「最近の中国人民の強い反応は日本の反省に値する」(朝日新聞)であり、「反省を実際の行動に移してほしい」(日本経済新聞)ということだった。小泉首相が反日デモの再発防止と安全確保を求めたのに対して、胡主席は「理解を示した」というにとどまっている。これをウラ読みすれば再発防止は約束されていないから、再発はいつでもあり得るということである。

 
next: 中国側の会見内容説明は…
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/index1.html

 中国側の会見内容説明は、靖国神社参拝問題と教科書問題に言及したと発表したが、日本側説明はその問題への言及を全く話題にしなかった。この問題に関しては、小泉首相が記者会見で今年の靖国神社参拝を問われて、「適切に処理する」と答えただけだった。おそらく現実に起きたことは、中国側が靖国参拝中止を強く要請したのに対して、小泉首相がひたすら逃げて、いかなる言質も与えなかったので、中国側が強い不満を残したまま両者もの別れに終わったということだろう。

 日本では、靖国公式参拝は、小泉が首相になった当初からの公約だから、今さら看板を引っこめるわけにはいかない。自民党は小泉首相がいない間に、「靖国神社に参拝する会」を中心に80人もの議員がゾロゾロ集団をなして参拝するような党だから、小泉首相になって以来これだけ繰り返し公然と行ってきた靖国参拝を突然中止するような決断をしたら、今度は党内から轟々たる非難の声が上がること必至である。

 今年の8月15日、小泉首相はいったいどうするのか。もしまた靖国参拝をしたら、それこそ、中国、韓国でどんな反日デモが起こるかわからない。小泉首相は絶体絶命の心境だろう。

 
5月4日は歴史的な反日の日
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 8月15日の前に、5月4日がある。5月4日は、日本人にとってあまりピンとこない日だろうが、中国ではほとんど建国記念日に近い思いをもって迎えられる記念日である。もちろん現代中国(中華人民共和国)が建国された日は、1949年10月1日でありその日が今でも現代中国の建国記念日、国慶節として祝われているが、それよりさらに30年も古い1919年5月4日が、現代中国の源流が生まれた日として、「五四中国青年節」という祝日として毎年盛大に祝われている。

 この日はどういう日かというと、北京大学の学生が一大決起して天安門前広場に集まって大集会を開き、そのあと激しい反日デモを繰り広げ、当時の中国政界随一の親日派政治家曹汝霖の邸に押しかけて、その家に放火し、家財道具を打ちこわし、その場に居合わせた他の親日派政治家(曹氏は不在だった)をさんざんに殴打して重傷を負わせた日である。この暴動反日デモはすぐ上海に飛び火し、そのあと次々と中国各地の学生に波及していった。

 各地で学生たちは同盟罷工で立ち上がり、デモを行い、あるいは街頭に出て排日、日貨排斥を呼びかけた。要するに今回北京、上海など中国各地で起きた大々的な反日デモの源流はすべてここにある。このあとは、反日デモはさらにエスカレートして、3日後の5月7日に、北京市では、学生の呼びかけによって日貨焼棄会なるものが催された。北京市の商店に並ぶ日本商品が天壇公園に山と積まれ、それがことごとく焼き払われたのである。

 なぜこのような暴動的排日運動が起きた日が“建国記念日”なのかというと、この運動によって、中国民衆の心にナショナリズムの火が燃え上がり、結局それが、中国という近代国家を生むことになったからである。

 これ以前、中国は国家の体をなしておらず、国民の間に、国民国家意識が芽生えていなかった。三百年近くにわたって中国を支配した異民族王朝清が滅んだばかりで、そのあとどのような体制になるか、はっきりしない政治的混沌状態がつづく中で、民族意識はその焦点を見失っていた。そこに日本という強大な敵がクッキリ姿を現したことで、反日を軸に民族意識が盛り上がり、急速に近代国家中華民国が形成されていったのである。

 
next: 中国国家の成り立ちの過程に反日デモの文脈がある
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/index2.html

中国国家の成り立ちの過程に反日デモの文脈がある
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 時あたかも辛亥革命が起こって清朝が滅んだものの、臨時大総統になった孫文が十分に権力を掌握することができず、代わって大総統になった袁世凱が新しい皇帝になろうとしたり、各地に群雄割拠する軍閥が相互に戦争を起こしたりといった大混乱が起きていた時代である。当時の中国は、日英独仏米露の各国が清朝末期から中国を分割して植民地にしてしまおうと争っており、中国で少しでも有利な権益を獲得するために激しく争ってきたところだった。

 そこに第一次大戦が勃発し、ヨーロッパにおける戦争の帰趨が、中国の権益争いに大きく影響する微妙な情勢になった。

 日英同盟下にあった日本は、連合国側に立って、ドイツに宣戦布告し、中国にあったドイツの権益の中心、山東省の膠州湾周辺を奪った。日本はドイツの権益を全部自分のものにしただけでなく、それ以上の権益を獲得しようとして、中国政府に突きつけたのが「対支二十一カ条要求」だった。これは、中国の主権を大きく侵害する内容を多数含む、中国にとって屈辱的な内容の要求だった。中国としては、日本との力のバランス上これを呑まざるを得ない状況にあり、これに調印した。しかし、中国の民衆はこの内容に怒り、この調印がなされた日を国恥記念日と呼んだ。この屈辱的条約に調印したときの中国側責任者が、五四運動の反日暴動で邸宅を焼き払われた曹汝霖だったのである。

 日本はこの時期さらに、中国政界で自己の地位を高めるために、膨大な資金を借款として時の段祺瑞内閣に与えた(これが世にいう西原借款である)。その額約1億5000万円だが、その頃の日本の国家予算は約10億円だったのだから、その10分の1以上というとてつもない金額だった。これは手っ取り早くいえば借款に名を借りた(いちおうさまざまの事業目的がついていた)買収である。中国の悪徳政治家は、この借款の相当部分を自分の懐に入れて私腹をこやした。学生たちはそれをバクロするビラを大量にバラまき、悪徳政治家の代表として曹の家を襲ったのである。

 北京大学の文科学長の立場で、この学生運動を煽ったのが若き花形文学評論家、陳独秀である。陳は補縛投獄されるが釈放後上海におもむき、ここで全国学生連合会を組織している。これが中国全土に広がった学生運動の中心組織となり、翌々年には、この運動の中から、中国共産党がはじめて誕生し、陳独秀がその最初の総書記(委員長)となったのである。

 
next: 要するに…
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/index3.html

 要するに、反日学生運動、日貨排斥(日本商品ボイコット)運動は、現代中国の国家作りの原点だったのである。その後の満州事変から日中戦争にいたる過程でも、繰り返し反日運動が起り、それが中国の民族意識を高め、国家意識を作ってきた。日中戦争の初期、国民党軍と共産党軍に分裂していた中国を国共合作に踏み切らせたのも、抗日統一のスローガンをかかげた学生運動だった。

 
圧倒的に欠如している日中関係の歴史認識
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 このように反日運動の歴史、またそれが中国の国家意識の形成にどれほど大きな役割を果たしてきたかを日本人はほとんどしらない。かなりのオールド・ジェネレーションなら、歴史的にリアルタイムでそのようなことが起きた時代を多少なりとも知っているはずだが、当時の日本人は今日のようなニュース報道メディアを持っていたわけではないから、事実そのものをほとんど知らなかった。また多少は報道があったとしても、それは冷静な客観報道として伝えられたわけではなく、反中国感情(このような反日行動をつづける中国は懲らしめるべきだ)をかきたてるようなニュースとして伝えられていた。

 そして、若い世代になると、そのような歴史的事実があったことすら基本的にほとんど知らない。学校の歴史では、現代に近い部分の歴史をほとんど教えていないからである。歴史に強い子でも、平安時代、あるいは江戸時代のことは知っていても、現代史を知らないのが普通である。

 現代史を多少は知っている若者でも、あの戦争の時代に関して知っているほとんどのことは、アメリカとの戦争に関してであって、中国との戦争に関しては、知らない人のほうが圧倒的に多いだろう。

 歴史認識に欠陥があるのは、小泉首相だけではない。日本人ほとんどすべてがそうなのだ。学力低下問題は、算数、理科、国語などだけに起きている問題ではない。歴史に関しては、もっともっとひどいといわなければならない。

 
next: 小泉首相の行動が中国の親日家を反日へ追いやる
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/index4.html

小泉首相の行動が中国の親日家を反日へ追いやる
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 4月25日朝日新聞夕刊の「反日に揺れる中国を訪ねて」の中で、昭和史研究家の保阪正康氏は、最近3日間北京に滞在して、さまざまな人と会い、最近の事態を語り合った感動を書いているが、その中で、「中国社会の地下三尺には『抗日・反日』というエネルギーが常に胎動している」と書き、「このエネルギーは、日本側の無神経な言動でたちまち火がつくという現実」から目をそらすなといっているが、その通りだ。無神経な言動の極地が、小泉首相の度重なる靖国参拝である。

 保阪氏が親しくしている親日の日本研究者はこうだった。「かつて彼は『小泉さんは私たちの政府をどうして困らせるのですか』と、小泉首相が靖国参拝を行うたびに中国政府は国民に向けての説得の根拠を失って行くと眉をひそめたが、今回もその表情には怒りがあった」。

 小泉首相の行動は、中国の親日家、知日家をどんどん反日本の立場に追いやっているのだ。

 保阪氏はさらに、日本人が中国近代史の根幹を理解していないとして、次のように書いている。

「日本の指導者は、『反日教育をやめよ』などといった筋違いの発言をしているが、これは中国に対して『近代史を教えるな』と同義語であることに気づいていない」

 気づいていないのは、政治家だけではない。日本人全体である。日本人の大半は、先に私が述べたようなことを知らないからである。

 それに対して、中国人の若者は、五四運動とか、日中戦争当時の抗日運動の意味など、皆さまざまな形で(歴史の時間だけでなく、文学でも、映画や演劇でも)繰り返し繰り返し学習させられてきたから、反日運動の火はすぐ点くのである。

 5月4日は国家的記念日として、反日暴動、五四運動を想い起す日だから、激しい反日デモがまた盛り上がるのは必然的といってもよい。胡主席はじめ中国の指導者も、それを下手におさえこんだら、五四運動で邸を焼きうちされた親日政治家曹汝霖と同じ運命をたどることを心配しなければならないのである。親日感情を持つといわれる胡主席としても挑発的に靖国参拝をつづける小泉首相にニッコリするわけにはいかないのである。

 
next: 次の8月15日の振る舞いが日中関係の将来を決める
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050425_syufuku/index5.html

次の8月15日の振る舞いが日中関係の将来を決める
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 5月4日そのものは、歴史的な経緯もあって中国政府が全面的にデモを禁止することは絶対にできないだろう。そして、デモをやれば反日スローガンが出てくることも避けられないだろう。しかし、国際的な評判が傷つく恐れもあり、暴力のとばっちりが自国政府に向かう恐れもあり、暴力化することだけは、警察力を大動員してでも押さえこむにちがいない。しかし、いくら警察力で押さえこんでも、日本にとってそれでメデタシ、メデタシにはならない。そのような押さえこみでは、反日のエネルギーは、保阪氏のいう「地下三尺で胎動をつづけるエネルギー」に舞い戻って、次の大爆発待ちになるだけだろう。

 日本で60年安保の反米デモをいくら警察力で押さえこんでも、その反米エネルギーが70年代にそれに数倍する爆発を起こしたと同じことが、中国で起こることは十分に予想できる。

 60年代、70年代に広く日本にあった反米エネルギーが消えていくためには、さらに十年が経過して、80年代に日本経済がさまざまな局面でアメリカ経済を凌駕するようになり、日本人がアメリカに対して劣等感を持たないどころか、優越感すら持つような時代になることが必要だった。

 おそらく、あと十年経つと、日中間で同じような変化が起きるだろう。それまでの十年間をいかにうまく乗り切るかがこれからの日本にとっていちばん大切なことだと思う。

 そのためにも、次の8月15日を小泉首相がどのように乗り切るかが、最も大切だと思う。一見、小泉首相は二進も三進もいかない窮地に追いこまれてしまっているかのように見える。しかし、私は小泉首相にその勇気があれば起死回生の一手があると思っている。

 それは、次の8月15日、政府専用機で一日のうちに、東京、北京、ソウルを駆けまわり(物理的に十分可能だ)、それぞれの国家的戦争犠牲者慰霊碑の前に花束をささげ、村山談話にあったような「痛切なる反省と心からのおわびの気持」を表明してくることである。それも言葉を選び抜いて、後々まで小泉談話として引かれるような名文句で表現し、かつ、テレビで世界中にその行動の一挙手一投足まで中継されることを意識して、その誠心誠意の気持が十分あらわれるようにパフォーマンスすることである。

 その上でなら、日本に帰国後、早速靖国神社にいって「皆さんの尊い犠牲を生かすべく精一杯の努力をしてきました」と報告をし、「戦争犠牲者への鎮魂の気持と不戦の誓いをするためだけの参拝」をするというなら、中国・韓国もその怒りをおさえて認めてくれるにちがいない。

 問題は小泉首相にそれだけのことをするだけの勇気があるかどうかだ。小泉首相にそれができたら、小泉首相は歴史に名を残す名宰相となるだろう。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月から東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
 

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