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第71回 ソムリエ田崎真也さんらと語った『青春漂流』その後の20年 (2006/05/02)
http://www.asyura2.com/08/senkyo56/msg/719.html
投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 08 日 21:47:22: Dh66aZsq5vxts
 

(回答先: 立花隆さんの「メディア ソシオ-ポリティクス」の海外アーカイブを阿修羅のスレッドでまとめて保存してくれないかと、。 投稿者 ROMが好き 日時 2008 年 12 月 05 日 18:06:37)

第71回 ソムリエ田崎真也さんらと語った『青春漂流』その後の20年 (2006/05/02)
http://web.archive.org/web/20060615123854/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060502_20year/

2006年5月2日

 私が書いた本はかれこれ100冊近くあるから、とっくに絶版になった本も多いが、ロングセラーとして延々売れつづけている本もかなりある。先立って、アマゾンで調べてみたら、ロングセラーの第1位が『知のソフトウェア』(講談社)で、第2位が『ぼくはこんな本を読んできた』(文藝春秋)だった。第 3位には『青春漂流』(講談社)が入った。

 この本は85年に刊行されて、もう20年以上たつが、いまも文庫本で延々売れている。数多くの高校で高校生の読むべき本として推奨されたり、読後感を書かされたりしているかららしい。この本の登場人物たちは、不思議にみんなあるとき落ちこぼれだった人々で、エリートコースはもちろん、ナミのコースにも乗れないで苦労したことがある人々だった。彼らは、あるとき、何らかのきっかけで突如奮起して人並み以上の努力を重ねて自分の手で成功をつかみとっていった人々なのである。そういうところが若い人々に受けているらしい。

 
ソムリエ、鷹匠など多彩な職人たちのその後を取材
……………………………………………………………………
 『青春漂流』の原型はとっくに廃刊になってしまった若者向けの雑誌「スコラ」に1年間にわたって連載されたものである。迷いとまどいがつきものの青春期をいかに生くべきかをテーマに、青春のケースワーク集として、当時、20代から30代で、並みのサラリーマン的な生き方を選ばず、ユニークな生き方を選び、苦労しながらそれぞれその道で成功しつつあるちょっと面白い人々を訪ねて、そこまでの人生を語ってもらおうという企画だった。

 選ばれた人の職業を並べてみると、家具職人、手作りナイフ職人、猿まわし調教師、精肉職人、動物カメラマン、自転車フレーム・ビルダー、鷹匠、ワイン・ソムリエ、フランス料理コック、染織家、レコーディング・ミキサーなどといった人々が並ぶ。この職業を見ただけで、人選のユニークさがわかるだろう。

 この人々は取材した時点で、それぞれの世界ですでにある程度名を知られた存在になっていたが、それから20年たつうちに、多くの人が全国的に有名になった。きわめつけの有名人としては、ソムリエの世界コンクールで優勝してしまった田崎真也さんがいる。猿まわしの村崎太郎さん、動物カメラマンの宮崎学さん、ナイフ職人の古川四郎さん、フランス料理の斎須政雄さん、鷹匠の松原英俊さんなども、テレビに一度ならず取り上げられ、全国的に知られている。

 昨年、BSジャパンで、「20年後の青春漂流」と題して、私が彼らを一人ひとり訪ね歩いて、その後の20年を映像資料とともに語ってもらうという番組を作った。

 
next: 田崎真也さんのように…
http://web.archive.org/web/20060615123854/http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060502_20year/index1.html

 田崎真也さんのように、しょっちゅう多様なメディアに登場する人については自然にその消息が耳に入っていたが、すべての人について消息を知っていたわけではないので、そもそもそういう番組を企画したとしてそれがうまくいくかどうか疑問だった。しかし、局のほうが予備調査をしてみると、全員元気で、それなりの成功を収めており、そういう番組を作るなら是非参加したいといっているということだったので、延べ2年間かけてあちこちロケをしながら番組を作った。

 
フランス料理の名店「コートドール」で一堂に再会
……………………………………………………………………
 あの本の登場人物たちは、実は横のつながりが全くなかった。お互いがお互いのことを知ったのは、あの本を通じてだけだった。他の登場人物のことは、あの本の記述を通してしか知らなかったのである。

 しかし、その番組ができてからは、それを通して、お互いの20年を深く知ることになったので、心理的にお互いに親しみをより深く感じるようになった。そこで自然と、一度全員で集まってみようという企画が持ち上がり、つい先日、本当にその会が実現した。

 場所は、フランス料理通なら知らない人がない、斎須さんのお店、三田の「コートドール」。斎須さんのお得意料理のフルコースを食しながら、ソムリエの田崎さんが選んだシャンパンからはじまって、白ワイン、赤ワイン、食後酒までのワインのフルコースが田崎さんの解説付きで供されるという贅沢この上ない食事の会だった。

 みんな初対面だというのに、本とテレビを通してお互いをよく知りあっているので、会は昔からの親友同士の雰囲気で進行し、お互いの自己紹介と近況報告をするだけで、盛りあがりすぎるくらい盛りあがった。贅沢なこの会をさらに贅沢にしたのは、料理の最後のプラスアルファの一品が、鷹匠の松原さんが、自らの鷹に仕とめさせた野ウサギの肉料理だったことだ。

 食事の前に、キッチンで、その皮をはいだばかりの肉を見せてもらったが、その肉は驚くほどあざやかな真っ赤な色をしていた。斎須さんが、

 「こんなあざやかなウサギの肉は見たことがありません」

 という。ウサギ肉料理は、フランス料理のレパートリーにあるから、「コートドール」で出すこともあるが、市販のウサギ肉は養殖されたウサギのものだから、肉がピンク色で、野生の野ウサギの肉とは似ても似つかぬものだという。

 
鷹匠松原さんが仕留めた野ウサギに斎須シェフが腕をふるう
……………………………………………………………………
 それを食しながら、松原さんの野ウサギ捕獲の苦労話を聞いた。

 野ウサギは逃げ足が早いから、いったん取り逃がすと、雪穴にすぐ逃げ込まれてしまう。すると、人間も雪穴に頭から入り込んで雪をかきわけかきわけ追いかけることになる。ときには2時間半以上かけて、3メートル以上も雪穴を掘り進んでやっとの思いで生け捕りにするのだという。

 
next: そのウサギ肉だが、
http://web.archive.org/web/20061108080834/www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/060502_20year/index2.html

 そのウサギ肉だが、これはまさに野生の味そのもので、脂ぎった日本の高級牛肉とは対極にある肉料理である。「これぞホンモノの肉」といいたくなるじっくりした味わいの肉で、ついつい赤ワインの杯が進んでしまった。

 フランス料理では、ジビエといって、野生の鳥獣の肉料理が珍重され、日本の有名フランス料理店にもそれがメニューにのっているのが普通である。しかし、その食材はほとんど輸入物に頼っている。しかし、これは国産のほんもののジビエで、銃砲も使わず鷹に捕らせた鮮度抜群の野性の味である。

 それを斎須さんが腕をふるった料理で、田崎さんのワイン付きで食すなどというのは、現代日本で考えられる最高の贅沢といってよいだろう。

 これを捕った鷹匠の松原さんも、「うまいうまい」といいながらパクついている。聞けば、鷹が野生のウサギを捕まえることは結構あるが、だいたいそれは自分でバラして、野菜類といっしょに煮込むウサギ汁にして食してしまうのが常で、よもやこのようなフランス料理になるとは夢にも思わなかったという。

 
コートドールのメニューに鷹匠のジビエ料理がならぶ日も
……………………………………………………………………
 この松原さん、取材した頃は年収40万円台で、これで将来食っていけるのだろうかと思っていたが、いまも年収百数十万円台だそうで、通常の意味ではほとんど食っていけない。鷹匠といっても、鷹に捕らせた野生の肉を売って暮らせるかといったら、暮らせない。そちらの収入はほとんどなきに等しく、収入らしい収入が入るのは、行楽などで山野に入る人の案内人になるとか、地方自治体、官庁などから環境問題などでの自然調査の役を受けるとか、市民講座などの講師として話をしにいくなどの臨時収入くらいなのだという。

 それでもなんとか食ってこられたのは、住むところがあって、野菜などは自分で作ってしまうからで、ほとんど出費らしい出費がない生活をしてきたからだという。ところが最近、息子が高校に入った。いまは山形の山奥からバスに乗って鶴岡の高校に通っているが、その通学時間が大変なので、本当は鶴岡に下宿させてやりたいのだが、その下宿代(6万円くらいかかる)がどうにも捻出できないのだとういう。

 いまや日本全体が格差社会になりつつあるとはいえ、話を聞けば聞くほど気の毒になった。そして、ウサギ肉にパク付きながら、これほどうまいウサギ肉がけっこうとれるなら、それをウサギ汁で自家消費してしまわないで、「コートドール」のような一流のフランス料理店に食材として卸し、そのお店では、鷹匠が捕ったほんもののジビエ料理として売り物にして、それを食べる会をオーガナイズするなどといったことを試みてはどうかと提案した。

 斎須さんもなるほどという顔をしていたから、そのうちコートドールのメニューに鷹匠のジビエ料理がならぶかもしれない。

 
立花 隆

 評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月 -2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。

 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。

 

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コメント
 
1. 2015年11月28日 03:48:33 : jbcJQt5aLA

シュタイフ ソムリエベアー 田崎
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%95-%E3%82%BD%E3%83%A0%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%99%E3%82%A2%E3%83%BC-%E7%94%B0%E5%B4%8E/dp/B00KDUWSKC

[32初期非表示理由]:担当:宣伝

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