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楳図かずお の世界
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/628.html
投稿者 中川隆 日時 2016 年 4 月 13 日 23:33:25: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

楳図かずお 『マザー』動画
http://www.bilibili.com/video/av2184619/


松竹メディア事業部 2014年

監督 楳図かずお


キャスト

楳図かずお - 片岡愛之助

若草さくら - 舞羽美海

イチエ - 真行寺君枝

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 中川隆[2317] koaQ7Jey 2016年4月13日 23:41:20 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2357]

日本を代表する恐怖漫画家楳図かずおの長編初監督作「マザー」。

これまで数多くの作品で人間の闇を見つめてきた楳図が、自身の生い立ちと母との関係を一部投影した自伝的映画だ。


映画では、息子を愛しながらも、自らの悲しい過去を拭いきれずにこの世を去った母イチエの怨念が、漫画家楳図たちを恐怖に引きずり込む。

このように楳図作品では、その怖さが登場人物の持つ悲しさと結びついたものも多い。

怖さを引き出す想像の源とはどのようなものなのだろうか。


「それは難しいですよね。

単純に脅かすということでしたら、すごく簡単なんです。僕はオバケ屋敷をいくつも手がけましたが、矢庭に出てくれば誰でも大体怖がります。角を曲がったら、いきなり出てくるとか、トイレで下から何かが覗いていたとか。

ただ、そういうことばかりだと恐怖の質が浅くなっちゃうんです。

僕は人間の持っている深くてどうしようもない状況を追究することが、質が高い恐怖になると考えていて、今回の作品でもそれを目指しました」(楳図)

撮影ではとりわけ美術面に重きをおいたそうで、母親イチエ役を演じた真行寺君枝のメイクは楳図監督自身が考案した。

「明るくなった時はメイクもすごく明るく、死んでいくまでは真っ黒のメイクにして、その上にわざとキレイなメイク、例えばエリザベス・テイラーやビビアン・リーなど昔の女優さんのような細い眉と赤い唇の華やかなメイクを乗せました。

髪の毛も、年寄りくさくなる白髪は嫌だったので、かぶって華やかになるようなパーマのかかった銀髪。細かい部分で工夫したんです」

とこだわりを明かす。

「昔話は話が始まって、少しページをめくると結末が見えるところが好きなんです。

明快なストーリーは、逆に掘り下げるといろんな人間の生き方が見えてくる。

今回の映画もわかりやすい話になっていると思います。

死ぬ間際などリアルな描写もあるけれど、そういう部分も含めて単純な世界でよく出来た120点の作品です!」
http://eiga.com/movie/79663/interview/


2. 中川隆[2318] koaQ7Jey 2016年4月13日 23:48:07 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2358]

「マザー」“日本一美しい母親”役の真行寺君枝が語る楳図かずおワールド
2014年9月21日


http://eiga.com/news/20140921/5/1/01/
楳図イチエ役を演じた真行寺君枝「マザー」


]恐怖漫画の巨匠、楳図かずおが片岡愛之助主演でメガホンをとった初監督作「マザー」。

片岡が漫画家楳図かずおを演じた楳図の自伝的作品だ。

日本一美しく、恐ろしいといっても過言ではない、母親の楳図イチエ役を演じた真行寺君枝が撮影を振り返った。

人気漫画家となった息子を愛しながらも、自らの悲しい過去を拭いきれず、死の間際に不可解な言葉を残してこの世を去るイチエ。

美しいがいつも不幸そうで、蜘蛛や息子の描く美少女の画を嫌がるという一面を持つ謎めいた女性だった。その後、自らの怨念で漫画家楳図たちを恐怖に引きずり込むという重要な役どころだ。

かつて楳図監督は、美ぼうの衰えた元大女優が、美に執着するあまり、自らが生んだ美しい一人娘に自分の脳を移植するという恐ろしい母を描いた漫画「洗礼」を発表しており、同作の主人公のイラストが今回の映画の中でも使われている。

舞羽美海演じる新人編集者の名が若草さくら、その上司が谷川という名であることも「洗礼」ファンにはうれしいポイントだろう。



真行寺は、現実と妄想、恐怖と悲しみ、そしてユーモアが入り混じる楳図ワールドを自らの演技で体現し

「劇画的で、リアリズム要素と空想がコンジャンクションしているその境界線をどこに引くのか、戸惑いましたが、思索の結果、“割り切り”“意味付けなし”といったところに活路を見いだし、演じることができました」

と述懐する。そして、

「『マザー』、その母親ということにおきましては、

森羅万象の源を産み出す怪物=バビロニアの天地創造神話のティアマト=母

などが、脳裏に浮かんでまいります」

タイトルロールでもある母親という、万物にとって途方も無く大きな存在について語る。

様々な取材で楳図監督は、母イチエのメイクにこだわったと語っている。真行寺は

「メイクというものは、本来は美しく装い活力を得るものだと思いますが、古典芸能では、人物のデフォルメに駆使されもします。役者としてのひとつの壁を乗り越える、貴重な機会を与えて頂きました」

と振り返り、

「私的には、メイクに関しましてヒース・レジャーの『バッドマン』のジョーカーを拠り所としました」

と明かす。

長編デビュー作となった楳図監督の演出については

「ファイン・アートとエンターテイメントに重点をおいた演出」

と語り、「楳図かずおファンが集った創作に乾杯!」と完成を喜んだ。
http://eiga.com/news/20140921/5/


3. 2016年4月13日 23:53:13 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2359]

お礼参りって…復讐かよっっ!!

親から愛されず孤独で、おまけに傷物にされて縁遠くなり、結婚してからは男狂いと…地元の伝説を作っていたのはイチエさん自身だった。

親戚からも家政婦からも馬鹿にされて、夢で見た通りのお礼参り〜〜〜…。

本当は「子の年・子の月・子の日・子の刻…」(1936年11月?)に生まれたらしい かずおの誕生日をわざわざ自分と同じ誕生日に修正して届け出たのはなんのため?

「お前、似てきたね」
結局、かずおは自分を犯した男の子どもで、イチエはその男にひと目ぼれして探していたというオチらしい。

母親としてこの長男だけを深く愛していて、女としてこの子の父親を探し求めていた。なんか、凄いな。このまま民話のヘビ女にされても仕方ないな。(実際にそんなお母さんだったのかどうかは知らないけど、届け出の誕生日が実際の誕生日と違うのは事実らしい)

「愛してるよぉぉぉぉぉ」の映像はチープだったけれども、ちょっとウルっとなりかけた。

だって、母だもの。
http://www.cinemarev.net/entry/mother-umezu.html


4. 中川隆[2324] koaQ7Jey 2016年4月14日 08:11:42 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2366]

楳図かずお先生による楳図かずお作品の実写映画

「楳図先生!半生記を出版させてくんなまし」

「いいけど住民トラブルの話は無しね」

「了解っす!」


漫画家楳図かずお先生の「半生記」の企画が持ち上がりました。

担当は楳図作品の大ファンで、特に「おろち」に入れ込みまくってる新人編集者、
若草さくら←ここでファンは大喜び


さくらが取材していくうちに、楳図は、母親であるイチエとの間に、強くかつ複雑な関係を持っていることがわかってきます。

イチエは、次男よりも長男の楳図を溺愛してたっぽい。


イチエは、とても美しい人でしたが、 病の床についていました。


楳図に自分が見た夢の話をするイチエ。

「お世話になった方々に、お礼参りをしてきたわ」


イチエは死の直前、楳図に、 「綺麗に化粧をして…」と言い残し亡くなります。


しかし、その手には、どこの誰のものともわからない黒髪が握りしめられていたのでした。


葬式も終わり、日常が始まるはずでしたが、 楳図の周囲では怪奇現象が起こり始めます。


さくらは、楳図の作品に大きな影響を与えているイチエのことを調べるため、
シカ…奈良県曽爾(そに)村を探訪。

そこで、不思議現象に次々襲われるさくら。


一方、楳図の親戚たちが、イチエに襲われる…という事態が勃発。
まさにイチエが見ていたあの夢のとおりになってしもうてる。


実は、イチエの生まれた村に伝わっている、怪奇伝説のモデルはイチエだったのです。

美しいイチエは、通りすがりの男(イケメンらしいが身元不確か)に手篭めにされ孕んでしまい(その子が楳図)、そのことが原因で村人からも親戚からもハミゴにされてしまうのです。


オールドミス(禁止用語)になりかけてたイチエは、 一人の男と結婚しますが、
手篭めったその男を恋してしまってたので、ある意味「男狂い」になってしまった不幸な過去。


イチエは自分を排除した皆様方に、復讐をしておられたのです。

「お礼参り」


楳図は、蘇ったイチエと決別すべく、 神の左手悪魔の右手で戦いを挑みます。

ついでにイチエが苦手としている蜘蛛の絵や、美少女の絵を武器にしたるわ!


実体化したイチエ。
蛇女のようになるイチエ。

対抗する楳図。

イチエは楳図にのしかかり、 「愛してるのよ」と悲壮な声を上げます。

その時、何故か建物が崩れ、落下してしまうさくら。

さくらの髪をむんずとつかみ救出するイチエちゃん…。
死の間際に握ってたのは、さくらの髪の毛だったのねー。


そしてイチエは、さくらの身代わりに深い闇の中へと落ちていくのでした。
ちょっと笑っちゃうポージングで。

「おかあさんいかないでぇぇぇぇ」


事は一段落しますが、 楳図の周囲には、まだイチエがいるような…。

     おしまい


ぼくは、おかあさんがだいすきすきすきすきすきすきあいしてる。

イチエがネグリジェ姿で道を疾走するシーンは、通行人の皆さんが思わず道を譲る…モーゼ状態。
こんな甘酸っぱい思いをするのは、 「実写版スパイダーマン」で、スパイダーマンがごっつ恥ずかしそうに町中を走らされているシーンを見たとき以来でした…。


この映画を一言で表現するならば、楳図かずお作品の実写化、これに尽きます。

漫画を実写にしたらこうなる…という楳図かずおテイスト満載になっております。
監督してるの楳図かずお先生ご本人だし。
故に、ホラー映画として観たなら、あれ?となるかもしれません。


いっちゃん怖い(と思われる)シーンは、廃屋の中で泣いている少女が、こっちを向いたら目から血を流していて…っちゅうところでしょう。


既視感がありますが、気にしない。

それよりも、 母親と息子の間に流れる、しかも同じ腹から産んだ子供でも、 愛する人にそっくりな息子と、 別に愛してないけど生活のために結婚した相手の息子では、愛情の深さに差が生じる…的なところが、 怖かった。


女はいつまで経っても、母になっても女なのよのさ!
そういうのが、いいのかぇ?
母性より己の女性の部分を尊びているオナゴのほうが、いいのかぇ?


楳図かずお永遠のテーマ、

母性(息子に恋してる)
老いたら醜くなる(美しさを永遠に)
寝るときはネグリジェ(そこは違う)

を如実に表した出来上がりとなっておりますぞ。


楳図かずおファンには、オススメ。
そうじゃない方には、オススメしません。
だって、何がなんだかオラわかんねー!になるに違いないからさ。


しかし、死んでから、このやうなネタにされてしまふとは、 母親とは因果な商売よのぅ。

母上、 化けて出られますよ、この扱いじゃ。

でもまぁ、アテクシなら、息子のネタになるなら本望ですことよっ!
さぁ、いつでもネタになさいませ。

あ、いらんの?
そ…そう…(寂しげに)
http://ameblo.jp/makomako-63/entry-12043805571.html


5. 中川隆[2325] koaQ7Jey 2016年4月14日 08:19:54 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2367]

「マザコン!」と斬り捨てられない楳図かずおの情念がこもった問題作『MOTHER』

 忘れもしない小学四年生のとき、近所の古本屋で「洗礼」の単行本と出会って以来、

楳図かずおという漫画家の、女性の美醜への執着、特に、老いによって失われる美への恐怖心(と、老いた女の悲惨さ)の描き方には、何か普通では考えられないほどのトラウマや創作の元ネタがあるはずだと考え続けていた。

その楳図が78歳にして初めて、自作の脚本を自ら監督したという映画を、見逃すわけにはいかなかった。

 「洗礼」では、その美貌と演技力から国民的大女優の地位を手に入れた若草いづみが、歳をとるにつれ、顔に大きなシミや皺ができていき、美しさを失っていく。

そのことに耐えられなくなった彼女は、計画的に女児を出産、娘・さくらがやがて美しい小学生に成長したとき、脳の移植手術を行い、外見は可愛い女の子だけど内面は狡猾な中年の女性として生き直す、という、ぶっ飛んだ物語だ(映画化もされた岡崎京子「へルタースケルター」は今作の影響を強く受けていると思う)。

 そんな漫画を描いた人の、70歳を越えてからの初監督作のタイトルが、『MOTHER』である。もう、見る前から半分くらいネタがわかってしまったようなものである。

そうか、楳図にとって何よりも影響を受けていた存在は母親だったのかと、それを確認するためだけに劇場に行ってみたが、いやしかしさすがは楳図かずお。こちらの想像をあっさりと超えるような、それはそれはなんとも切ない、年老いた女の哀しく狂った物語になっていた。


妖怪のせいなのね

 映画は、片岡愛之介演じる楳図自身の元に、彼の半生を本にしたいと現れた、若くて美しい編集者の女性が、楳図から色々と生い立ちについて話を聞き出し、その話を元に進んでいく。

取材を続けるうち、既に亡くなっている母親の存在に興味を持った編集者は、彼女の親戚や奈良の山奥にある生家を尋ね、いくつかの隠された恐ろしい事実を知っていく。

 そんなとき、その母親の幽霊が出現、暴走。やがてその幽霊は実体化し、生前自分を苦しめた人たちを殺したり、無関係なはずの編集者にまで襲いかかる。亡き母親の行動に気付いた楳図は、自ら母の情念と対峙しようと立ち上がるのだが……。

 劇中での楳図かずおは、常に着ている赤×白のボーダーが片岡愛之助に全然似合っていないという不自然な点を除いては、いたってノーマルな人間として描かれている。彼自身も、自分が特に母親に執着しているつもりもない、普通の母子関係だったと思っているようだ。

 が、決して“普通”なんかではなかった。


 それまでは村の古い言い伝えと信じられていた謎の美女妖怪
(夜な夜な山中の沼に現れては醜い蛇に変身して男に襲いかかる)、

その正体が実は楳図の母親で、実際にはそこで男に襲われた彼女が身ごもったのが楳図自身であり、その事件がきっかけで、母は妖怪と村の人に噂されるほど色情狂になってしまった……

えー! それだけでもじゅうぶん、自分の母親をなんちゅーキャラに仕立てるんだと驚くのだが、何も知らなかった若き日の楳図がそれを徐々に知っていくその姿を、78歳の楳図かずおが自分の過去として描いている、そのことは事実。

現実の彼と母親の関係には「所詮男はみんなマザコンよねー」なんて軽い言葉では済まされない、深い闇を感じずにはいられない。

 映画はさらに衝撃の展開を続ける。

母親が楳図を可愛がったその本当の理由、

そして生き霊になってまで現れた理由、

もう観客には手に負えないほど、母親の人生は見てて辛過ぎる。


終盤、編集者の命を狙うために現れた亡霊の姿は、それまでの老女ではなく、若く美しいときの姿になっている。

愛する息子に寄り添う女性に、女として嫉妬した母親。しかしそれは、化け物。


 その編集者の役名が、「若草さくら」と聞いたとき、ちょっとした悪ふざけかと思ったのだが、最終的に、

この映画は「洗礼」そのもの、

つまり、自分の母親が「洗礼」の、漫画史に残るほど頭のおかしい女である

と、楳図かずおは自らの映画で言ってしまっている。


 「洗礼」以外の作品でも、楳図漫画に登場する女性は、異様なほどの美しさで描かれるが、たいていその正体は蜘蛛女だったり蛇女だったり、毒々しい存在として現れる。

 ひとりの男性にとって、女性という生き物をここまで、人間ではない何か、もしくは美しくなければ人間でない、と強く思わせた、母親という女の存在。

それにとらわれ続けたのか78歳の現在まで独身で、その年齢になってようやくホラー映画という手段を見つけ、客観的に母親を描くことができた楳図かずお。

漫画よりも映画よりも、最もホラーな人生を送っていたのが作家本人なのかもしれない。

 映画はラスト、わずかながら希望を感じさせて終わる。それがひとりの男の母親への愛なのか、未だ逃れられない呪いなのか……。まだまだ若造のわたしには映画を一作見たくらいで解ける謎ではなかったので、是非ともまだまだお元気に、監督第二作目も撮って頂きたい。

 もちろん漫画家楳図かずおには「まことちゃん」という代表作を筆頭に、ホラー以外にも名作漫画はたくさんあるのだが、個人的におすすめなのは、「偶然を呼ぶ手紙」という、ホラーではないものの、女の顔を巡るミステリー漫画だ。これの闇深さも相当なので、興味があれば「洗礼」と併せて読んでみて下さい。
http://news.biglobe.ne.jp/trend/1018/mes_141018_6372095555.html


6. 中川隆[2326] koaQ7Jey 2016年4月14日 08:42:08 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2368]


映画『マザー』監督 楳図 かずおさん

2014/09/22 |   インタビュー マザー映画監督

『おろち』『洗礼』『漂流教室』など独特の世界観を持つ作品で、海外からも高い評価を受ける漫画家・楳図かずおさん。

1995年以降、腱鞘炎のため休筆を続けている漫画界の巨匠が、77歳にして映画監督デビューを飾ります。自ら脚本も手掛けた楳図作品創造の秘密を解き明かす自叙伝的ストーリー『マザー』の公開を前に、楳図さんにお話を伺いました。

■ 創作の原点は、小さい頃から触れていた絵と、土地に伝わる怖い話


自分のクリエイティブの素になったものを振り返ると、小さい頃から触れていた絵だと思います。

今回の映画『マザー』にも出てくるのですが、僕が初めて鉛筆と紙を手にしたのは、生後7か月の頃だったようです。それは、母親の思いつきの実験なのですが(笑)、歩行器に座っている僕を見て、

「この子に鉛筆と紙を持たせたら書くかなぁ」

と思って「丸はこう書くんだよ」と教えたらそのように書いたので驚いたそうです。

それをきっかけに、「丸に丸を足していけば花になるよ」などと教えたらしいんですね。

そのうち、母親にも「あれ書いて、これ書いて」とお願いするようになって。母親は絵が得意でなかったので、絵本を読み聞かせて、そのうち僕が自分で読むようになれば書かなくてすむと思ったようです。それで買ってきた絵本が、家にはたくさんありました。

中でも記憶にあるのは、汽車や電車の絵本です。濃尾平野の田んぼの中を電車がコトコトと走っているような絵本や、キンダーブックはよく覚えています。山の中の生活が多かったので、絵本を読んだり、絵を書いたりというのが、遊びの中心でした。

あと、強く影響を受けたのは、父親から寝物語として聞いた話です。

父親は『かちかち山』『さるかに合戦』『因幡の白兎』『ヤマタノオロチ』の岩見重太郎オロチ退治など、いろいろな昔話を聞かせてくれました。


その中で、一番記憶に残っているのは、『お亀ケ池のへび女』。

それは土地に伝わる話なので、すごいリアリティがあるんです。昼間には僕を自転車に乗せながら、父親が土地に伝わる物語の舞台になった場所を教えてくれました。

「あそこに見える岩は小太郎岩だよ」

などと言って…小太郎岩というのは難病の小太郎という子を持つお母さんが、

”これから、いいところに連れて行ってあげるよ”

と言ってその岩の上に連れて行って後ろから突き落としたとか…そういう土地に伝わる怖い話です。

舞台となった場所を見ることで、より本当らしく聞こえるものだから、恐怖感が増していきました。

そのことから、例えばお亀ケ池を参考にして怖いものを書こうと思った時に、創造性だけ膨らませても「本当かなぁ?」と受け取ってもらえる部分が貧弱だと、それは「ものを作っている」ということにならないなぁと気が付くきっかけにもなりましたね。

クリエイティブに繋がるリアリティの大切さ…父親から話を聞いていた当時は、その意識はないですが、後に『へび少女』などの執筆に繋がった時に、そのことを強く実感しました。

■ “母親”という特別な存在をテーマに


長い間、創作活動を続ける中で、映像にも以前から興味はありました。チャンスがあれば撮りたいと思ってはいながらも、なかなかその機会に巡り会わなかったのですが、今回、周りからお話をいただいて映画監督をすることになりました。

そこでテーマにしたのが、自分にとって大きな存在の”母親”です。

母親は、他に置き換えられない特別な存在ですね。もし、世の中に男性がいなくなって、女性だけになったら子孫が途絶えるかと言ったら、それでも突然変異で続いていきそうな、そこまでの大きなパワーを女性には感じますね。

母親は、自分たちが分かっていないような世界の謎も抱えた存在だと思います。


その”母親”をテーマにストーリーを作って、映像作品に仕上げていくにあたって実感したことは、やはり、物事は自分一人ではできないなぁと。特に映画では、大勢の人が関わるので、”みなさんのお力をお借りして”ということだと思いますが、そこで監督という役柄は全体をうまくまとめて、一つの方向に持っていくお仕事だと思うので、その大切さを思いながら制作していました。

■ 楳図流”恐怖”の描き方


今回の『マザー』の前にも、映像でホラーを作ろうとしたことがあったのですが、その時は関わる方のドキュメンタリーへの拘りが強くて、うまくまとまらなかった経験があります。

「こういう風に作りたい」と説明して、理解してくれようとはするのですが、やはり「ホラーの見せ方の部分がきつい」と言われてしまいました。

具体的に比べると、ドキュメンタリーは事実の流れで綴られますよね。

でもホラーは”やにわに”そこにバッと何かが現れる、というのがあって、論理はその時点では存在しません。

それに対して、ドキュメンタリーに携わっている方は、道筋があって論理がないとダメだという想いが強いんですね。

でも、ホラーにそれを取り入れたら、先読みされてしまって

「この流れだったら、こんなのが出てきそう」

と分かってしまうので、ホラーの一番のポイントは、その”やにわに”というところだと思います。

見抜かれてしまうと怖さが半減してしまうので、もしドキュメンタリー的な流れで物事が起きる前の段階で伏線を張るなら、気付かれない伏線の張り方はあるんですよね。

そういうことに通じていないと、ホラーの演出は難しいです。

そのような恐怖の描き方は、これまで恐怖をたくさん描いてきただけあって、日本で一番分かっているかもしれないと思っています。


■職人とクリエイターの違い…”新しいことをやる”


漫画の表現でも映像の表現でも、リズムが大切というのは同じだと思います。

ストーリー全体のバランスにもよりますが、どのくらいが見ている人に違和感を抱かせない長さなのか、というのがリズムの問題です。

例えば映画で、動き方がいつも同じのっそりとしたパターンだと、見ている人は違和感を抱くので、ここはのっそり、でも別の所ではバッと勢いよく!とか、そういう変化も含めて見せるように意識しました。

漫画でも、動きはなくても場面転換の仕方にリズムがうまくはまることが重要です。
リズムが良ければ、それだけで成り立つこともあると思います。

一つの設定だけでリズムよく、手を変え、品を変えすると成り立ってしまうパターンもありますが、それに加えて作品に奥行きを出すためには、ちゃんとした骨子があって、新しいメッセージが毎回あるものを作っていきたいですね。

作ったことは皆、過去になるので、新しいところに向けて考えなければ、という想いがあります。

職人さんにとっては、同じことを繰り返して、その中で身についた見抜く力、というのがあります。寸分の狂いもなく、繰り返しながら極めていく技があると思うのですが、クリエイターは、やはり新しいことに目を向けなければいけないと思います。

これから、ものづくりをしたい、という方に心がけて欲しいことも「新しいことをやる」という一言に尽きます。

「新しいことをやる」と一言で言うと、粗雑に聞こえてしまうかもしれませんが、それが一番分かりやすいんです。

例えば「何かを参考にしました」と言ったら、そのもののコピー、マネになる恐れがあるので、そこから抜け出すためにまた考えを巡らすことになりますから、最初から「新しいもの」と決めたら、その方が楽なんですよね。その方向で一生懸命考える、ということで、一言で言えば、それに尽きるのだと思います。
http://www.creativevillage.ne.jp/1342


7. 中川隆[2327] koaQ7Jey 2016年4月14日 08:50:58 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2369]

映画『マザー』楳図かずお監督インタビュー 2014.09.30

楳図かずお、映画『マザー』で描く“絶対的な母親”の存在と“女性”に込める意味


 漫画界の巨匠、楳図かずおが監督デビューを果たした恐怖映画『マザー』が9月27日公開されます。

『おろち』『洗礼』などおどろおどろしい世界を漫画で表現してきた楳図監督ですが、さて映画ではどのような世界を見せてくれるか?

 テーマは、映画のタイトルそのものズバリ“母親”です。

女性をテーマにした漫画を描き続けてきた楳図監督にとっての「女性」とは、そして初めての映画作りについて語っていただきました。

――初監督作の『マザー』楽しませていただきました。内容は怖いのに、見終わったあと、不思議と楽しかった! と思える映画ですね。

楳図かずお監督(以下、楳図) ありがとうございます! よかった〜、そう言っていただけるのが一番うれしいです。見終わって暗い気持ちになったりしたらイヤだし、ホラーだからって汚いと思われるのもイヤで。怖いけど楽しい映画にするのが狙いだったのです。観客のみなさんには、見終ってスッキリと映画館を出てほしいと思って作りました。


――78歳で映画監督デビューされたわけですが、映画を撮ろうと思った経緯を聞かせてください。

楳図 以前から「映画を作りませんか?」という話はあったのですが、なかなか実現に至らなかったんですね。ただ、映画作りの依頼がたびたびあったことで、僕の中では映画を作る準備はできていたんです。今回は以前から知っているプロデューサーの方から、けっこう急に話が来たのですが、前からやるつもりでいたので心の準備はできていましたし、やっと実現したという感じです。


――この映画は監督の自伝的要素もありますよね。ご自身の分身ともいえる主役に片岡愛之助さんをキャスティングした理由は?

楳図 役者さんを誰にしようかという話が出たとき、スタッフから片岡愛之助さんの名前が出たのです。ノホホンとした雰囲気が僕に似ているし(笑)。周囲の人がいいと言っているのだからきっと大丈夫だと思いまして。でもまさか歌舞伎の役者さんにお願いすることになるとは想像していませんでした(笑)。


――監督として、愛之助さんにはどのような演出をされたのですか?

楳図 愛之助さんは役作りに少し悩まれていたようなのですが、僕は「愛之助さんの楳図かずおを演じてください」と言いました。

これはドキュメンタリーではなくフィクションなので、楳図かずお本人に近づける必要はなく、愛之助さんの考えるままの楳図かずおでいいので、あまり細かく考えなくていいですよ、とお伝えしました。

あと、主人公は何が起こるかわからないわけですから、最初は力まず平常心で、中盤からアクションやサスペンスといった展開になりますとも言いましたね。


――映画『マザー』は母親と息子の物語ですが、母親との関係性をテーマにしたのは?

楳図 僕は自分の上に母親ありき、自分の下に母親はあり得ないのです。

僕の基本は母にあるので、この映画は僕が主人公である以上、その設定は動かせない、欠かせないと思ったのです。

もともと漫画とか映画とか関係なく、母が出てきちゃうんですよ。イヤでも出てきちゃう、避けることができないのです。あえて、母の存在を消して“母はいません”という設定にしても映画はおもしろくなったかもしれないけど、自伝的な映画なので、やはり僕の人生を描くとき、母を欠くことはできませんでした。

――お母さんの存在の大きさと同じく、楳図監督の漫画は“女性“を恐怖のモチーフにしていますよね。

楳図 男性と女性では恐怖の質が違うのですよ。

男性でホラーを描こうとすると行動が鍵になり、暴力を使った残酷を描くことになるのです。

その一方、女性だと心理描写がメインになります。

心の問題をどうとらえているかが、物語の核になっていくわけです。

もちろん、必ずしもそれが全てではありませんけどね。

例えばアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』という映画は、主人公の男の心理をホラーとして描いているのです。必ずしもそうとは限りませんが、女性を中心に置いた場合は、心の問題に持っていった方が自分を素直に出せるんですね。

――なるほど、楳図監督の作品に女性が多いのは、そういう理由なのですね。
『マザー』を撮り終えた現在、また映画を撮りたい、第二作も! という気持ちはありますか?

楳図 みなさんのご支援があれば、ぜひやりたいですね。『マザー』がうまくいけば、第二作目も作れるかもしれません。監督二作目と作るとしたら……やはり僕が監督するからホラーになるんでしょうか、わかりませんけど……。でも二作目は注意深く作ることになるでしょうねえ。デビュー作と比較されますし、前よりも期待されるじゃないですか。慎重に注意深く作らないと、期待ハズレになっちゃいますからね(笑)。
(取材・文/斎藤香、撮影/橋明宏)
http://www.cyzowoman.com/2014/09/post_13583.html


8. 2016年4月14日 08:58:53 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2370]

『マザー』楳図かずお監督インタビュー
自分自身のドキュメンタリーの中に嘘の世界を展開する、新しい試み

日本を代表する漫画家・楳図かずおが、77歳にして映画監督デビューを果たした『マザー』。

脚本も手掛けて挑むその内容は、自らの母親をテーマにした自叙伝的なホラー・ストーリー。

片岡愛之助演じる漫画家・楳図かずおの生い立ちを調査する担当編集者が、母・イチエの謎に迫るとき、母の怨念が恐怖を巻き起こしていく。

映画の公開を前に、楳図監督を直撃。
初の映画に挑んだ心境と、お話作りへのこだわりを伺いました。 .


『マザー』楳図かずお監督インタビュー:自分自身のドキュメンタリーの中に嘘の世界を展開する、新しい試み

──初監督となりましたが、映画には以前から興味があったのですか?

楳図かずお監督(以下、楳図):前から興味はあって「監督やりたい」って言ってたらしいですね(笑)。でも、自分が思っていても、そう叶うものでもないですし、周りから仕掛けていただいて初めて出来るものだと思うんです。“流れ”でそうなっちゃったとしか言いようがないんですけども(笑)。

──映画監督をやりたいと思ったのは、どういうきっかけから?

楳図:最初はね、ヒッチコックが亡くなった時に「ではあとは僕が…」って(笑)。

あの方のスリラーが好きなんです。

あとは、色んな方に僕の原作で映画を撮っていただいたりするんですが、良い場合もあるし、ちょっと意に沿わない部分もあったりすると、「僕だったらこんな風に撮りたいな」って、厚かましくもそう思ったりするんです。

前にも一度、監督として映画の話があったんですけど、その会社がリーマンショックで潰れちゃって(笑)。なので、気分的にはずっと映画をやりたいって思っていたんです。


──2008年頃ってことですよね。その時の企画は今回の『マザー』だったのですか?

楳図:全然関係ないものです。


──脚本も手掛けていますが、『マザー』企画はいつ頃から温めていたのですか?

楳図:温めていたわけじゃないけども、部分的には常に頭の中にあって、監督のお話をいただいた時から、きちっとまとまったストーリーにしていったんです。


──ご自身の半生や母親との関係をテーマにしたのは?

楳図:自分自身のドキュメンタリーを、どこまで嘘の世界に展開できるのか、そういう試みを今回やってみたかったんです。

漫画でも何でもそうだけど、同じ繰り返しでは喜んでもらえないし、どこかで新しくないと受け入れてもらえない。

それを考えたら、自分自身のことであり、現実の「僕の母親」のことだったんです。

今まで、漫画に「母親」は出てきましたが、自分の母親が出てくることがなかったので、身の回りの本当の話でまとめたのは初めてなんです。そういう意味でも、新しいものになったと思います。


──劇中の編集者・さくらとともに、観客は楳図先生のルーツを辿っていくんですね。

楳図:現実の僕を想像しながら観てもらえると思います。
うまく嘘が描けていれば、あり得ないかもしれないけど、あるかもしれない…って感じられる面白さはあると思います。


──まさに、どこまでが本当でどこまでがそうじゃないのか、想像がつかなくて、ハラハラしながら観ていました。

楳図:狙い通りハマっていただいてありがとうございます(笑)。

絵を覚えたエピソードは、母親がそう言うので本当だと思うし、「君恋し」の唄も母親が歌っていたので、部分的には本当なんです。


──生まれ故郷である高野山も出てきますが、撮影するうえで、ご自身のルーツとなった場所に訪れたりしたのですか?

楳図:全然行ってないんです。
僕、あまり下調べしない方で、「わたしは真悟」('82〜)の時もロンドンが出てきたんですけど、適当に描いてたんです(笑)。

後で一応行ってみようと思ってロンドンに行ったら、そんなに変わらないって思った(笑)。
ドアを内側に開けるか、外側に開けるか、そういう細かい動きは行ってみないとわからないけど。


あとね、下調べして描いた漫画はウケないっていうジンクスがあるんです。

たぶん、しっかり調べ過ぎちゃって、事実に縛られて嘘がつけなくなっちゃうんですね。

何処で生まれて何をしているかっていう事実は事実として、あとは想像のほうが先行しないと、お話が広がらないんです。

今回は、携帯もインターネットも出てきて、時代も無視してますから(笑)。

──ストーリー展開ではどんなことに気を付けるのですか?

楳図:寸分も無駄のない作り方、入り込んだら出られないくらいのテンポで、たたみ込んでいきたいっていうのは気にしていました。

漫画の時も同じなんですけど、無駄ゴマがあると見てる人は飽きちゃうんです。

ひとつひとつのコマに意味があって、それが流れの中でちゃんと役を果たしている。

そういう構成になってないといけないって思うんです。

あとは、できるだけ前回と違う方向に行きたい。要するにいつも新しくありたいって思ってるんです。


──片岡愛之助さんが楳図先生の役を演じたのは衝撃的でした。

楳図:最初はもちろん想像してなかったけど、愛之助さんの名前を挙げられた時に、面白いなって思いました。

歌舞伎ってリアリティの世界じゃなくて、最初から“物語”の世界ですよね。

それをいかに本当らしくみせるかというのは漫画も一緒で、本当らしさを出すというより、本当らしく感じてもらえることが大切なんです。

こだわり始めると難しいかなと思ったんですが、愛之助さんのペースにお任せして、無理なく演じていただきました。


──ちょっと落ち着いていて、クールな楳図先生でしたね。
楳図先生は本当はこういう方なんだろうか…と想像してしまいました(笑)

楳図:実際はちょっと違うかもしれないですね(笑)。あんまりクールじゃないし、落ち着いていないですけど、「愛之助さんが演じる楳図かずおが、楳図かずお」と思って頂いてもいいかもしれません(笑)。


──母親役を演じた真行寺君枝さん、美しくて怖かったです。

楳図:ビジュアル的に素晴らしいんですけど、あまり怖い役の経験ないようですね。

本来は優しい役が持ち味だと思います。

でも、本人は計算外だったと思うんですけど、優しくニッコリ笑うのが、怖く見えちゃうんですね。

すごく粘り気のある感じというか、女っぽさからくる怖さが自然に出ていたんじゃないかな。


──今回の作品で、映画ならではの表現や醍醐味を感じられたことは?

楳図:今回、真行寺さんの病院のシーンが怖かったって言われるんですけど、崩れゆく寸前の状態の怖さなのか、優しい顔が怖く見えるっていうのは、映画ならではだと思いました。

漫画は、怖いものは怖く描かないと怖く見えないんです。

映画をやってみて、より「怖い」と「優しい」は紙一重なんだなって思いました。

あと、怒りが地響きになったり、男の声になったり。そういうのは映画じゃなきゃ表現できないなと思いました。


──漫画家としてもずっと「恐怖」をテーマにしていますが、何故「恐怖」はそれほどに先生を魅了するのでしょうか?

楳図:恐怖は面白いんです。あり得ないことが起こるっていう設定自体が面白いんですよね。


──先生自身が怖い体験をしたとか?

楳図:僕自身は怖い体験が全くないんですよね。

お化けの経験もないので全然怖くない。

自分が漫画家としてプロでやっていこうと思った時に、「恐怖」の世界はあまり一般的ではなかったので、ここだと思ったんです。

そこで、「怖い」ってどんな感覚だろう?って思った時、父親が話してくれた伝説とか、母親のことを思い出して描くようになったんです。

──今回は77歳にして映画監督にチャレンジしましたが、そのエネルギーの源は?

楳図:新しいことをすることかな…。新しいことを見つけると頑張れますから、それがエネルギーの源(笑)。


──最近、挑戦しているものは?

楳図:大それたことではないけど、5カ国語をラジオで聞いてるんです。

フランス・イタリア・ドイツ・スペイン・英語ですね。ロシア語も聞き始めました。

喋れないけど、聞き取っていくと少しずつ知識がついていくので、いつかは喋れるようになるのかな(笑)。


──今後、映画監督としての活躍は?

楳図:新しい恐怖を思いついた時に、またやりたいですね。


──ご自身の作品を自ら映画化することは?

楳図:わからないですね。過去のものでも、流れに紛れて隠れていた主題をクッキリさせるとか方法はあると思います。映画化されていないすばらしい作品がいっぱいあります。そう考えると何かワクワクしてきますね(笑)。
http://cinetri.jp/report/mother_umezu/


9. 2016年4月14日 09:39:20 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2371]

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楳図 かずお(うめず かずお、本名:楳図一雄、1936年9月3日 - )は、日本の漫画家・タレント・作詞家。

和歌山県伊都郡高野町に生まれ、奈良県五條市に育つ。血液型はO型。

初期には山路 一雄やウメヅ カズヲの名義による作品もある。

1955年に貸本漫画家としてデビュー、『週刊少年サンデー』などに作品を発表。

代表作に『漂流教室』『まことちゃん』『わたしは真悟』など。

作品は恐怖ものからSF、ギャグもの、時代劇まで、少年もの、少女もの、青年ものを問わず幅広いが、一般にはホラー漫画の第一人者として知られる。

1995年以降、腱鞘炎などといった理由で漫画は休筆中で、現在はタレント活動を精力的に行っている。東京都武蔵野市吉祥寺南町に住居兼オフィスを構える。

幼少期

1936年9月3日、和歌山県伊都郡高野町に生まれる。

戸籍上では9月25日生まれだが、これは母・市恵の誕生日4月25日(1907年)の日に合わせて登録したものだという。

本籍地は奈良県五條市だが、父方は一族全部が教員という家系であり、父・公雄も小学校教員をしていたため、幼少期は奈良県の山間部の僻村を転々とした。

高野町で生まれたのは、出産の便宜のため。なお、父は囲碁が好きで囲碁大会に奈良県代表としてしばしば出場し、高島忠夫の父とは囲碁友達だった。

尚、楳図家の祖先については、(かずおの)曽祖父より前の世代の親族が奈良県外から来たらしいということしか分かっていない。

3歳から6歳までは奈良県宇陀郡曽爾村で過ごし、父から地元の伝説や民話を聞かされて育つ。

6歳からは五條市に住し、東京に出る27歳(1963年)までそこで過ごす。

ちなみに、五條市に隣接する和歌山県橋本市は、楳図青年の散歩コースでもあり、橋本市の広報誌に4コママンガ『オテンバ日記』を載せたり(1956年)、橋本駅前に『まことちゃん』の像が建てられたり(2002年)と、縁がある。

1947年、小学5年生の時、手塚治虫の『新宝島』を読み、漫画家になることを決意する。

初めは手塚を模倣して描いていたが、プロを意識しはじめた中学生時代に手塚調を廃し、初山滋や武井武雄など童画家の影響による作風で漫画を描きはじめ、神戸の「改漫クラブ」、青森の「少年少女漫画ルーム」など複数の同人サークルで積極的に活動する。

中学時代は『漫画少年』にたびたび投稿していたがなかなか採用されず、往復マンガが一度載ったのを最後に同誌への投稿をやめ、『譚海』や『漫画と読物』などに作品を発表していた。

奈良県立五條高等学校在学中は音楽と美術以外に好きな学科は全くなく、授業中には漫画を描いていた。


プロ漫画家として

1955年、五條高校卒業。
親の言いつけで奈良学芸大学(現・奈良教育大学)を受験したが失敗。

同年、『森の兄妹』(6月刊。山路一雄名義)、『別世界』(9月刊。共にトモブック社)でプロデビュー。

前者は「改漫クラブ」の文通相手だった水谷武子との共作で『ヘンゼルとグレーテル』の漫画化、後者は太古の地球に舞台を取った壮大な叙事詩的SF作品。

以後、貸本漫画を多く発表し人気作家となる。

1961年、貸本短編誌『虹』29号に発表した「口が耳までさける時」において「恐怖マンガ」という言葉を作った。

1963年8月、同じ大阪貸本漫画家の先輩である佐藤まさあきに誘われて上京。

池袋にある佐藤の事務所に居候として3年間住む。

以後、目白、高田馬場を経て、吉祥寺(現在)に住す。

このころ本格的に俳優を志し、年齢を下に詐称して劇団ひまわりの青年部に入り、『兵隊やくざ』(大映、1965年)や太田博之の映画やNHKの朝の連続ドラマに出演したこともあるが、劇団の上層部の人間から宗教への入信を勧められたのに嫌気が差して退団した。


また、当時俳優志望だった久保新二と同居して毎晩ひとつの布団で寝ていたこともある。ただし久保によると「といっても、乳くり合ってたワケじゃないぞ。オレはもちろん、その頃からナヨナヨして奇抜な服着てた楳図もホモじゃねえから」という。


1966年、講談社の少女漫画誌『週刊少女フレンド』に連載した「ねこ目の少女」「へび少女」等がヒットし、恐怖マンガ家として全国的に知られるようになる。

この後、『週刊少年マガジン』(講談社)、『週刊少年キング』(少年画報社)等などでは少年向けのSF作品、「猫目小僧」など恐怖ものを連載。最も多忙な時期で月刊誌・週刊誌あわせて5本の連載作品を持っていた。

1971年、主たる作品発表の場を、『週刊少年サンデー』(小学館)にしぼる。

1975年、『漂流教室』ほか一連の作品で第20回小学館漫画賞受賞。

同年、自作自演のLP『闇のアルバム』(CBSソニー)を発表。

また、この後、ギャグ作品「まことちゃん」の連載とあいまって、バンド活動を展開する。作詞家として、郷ひろみや近田春夫の楽曲の作詞を手がけたこともある。

1982年、「わたしは真悟」を小学館『ビッグコミックスピリッツ』に連載開始。
これに伴い、主たる作品発表の場を同誌に移す。


休筆

1995年に完結した『14歳』以後、漫画は休筆中。

理由には長年の執筆による腱鞘炎が悪化したことと、「14歳」連載時、新任編集者に、ゲンコツを描いた紙を持ってこられ「手はこう描くんですよ」と言われたとされることから始まる小学館との関係の悪化が挙げられる。

小学館との関係は、その後、かつてスピリッツでの担当編集者であった江上英樹が編集長である『月刊IKKI』等が代表作を復刻刊行する等にとどまっている。

休筆以降、現在まで、テレビ・雑誌等で活発なタレント活動を行っており、その明るくサービス精神にあふれたキャラクターを元気一杯に披露している。20代前半の頃より赤白のボーダー柄を好んで着ていたが、その姿をTV等で見掛ける機会が多い。

2005年の映画『楳図かずお恐怖劇場』シリーズの公開に伴い、絶版作品の復刻もあいまって、若い女性ファンを中心に現在もファンを増やし続けている。

初の監督作品

2014年9月17日公開の長編ホラー映画「マザー」は、楳図初の監督作品となる。

脚本も楳図で出演もしている。

自叙伝の出版が決まった楳図と編集者の周辺に怪奇現象が続出するが、亡き母の怨念がそこにあったことを知るというストーリーで、片岡愛之助が楳図を演じる。

母親役の真行寺君枝、編集者役に舞羽美海なども出演。

映画の完成披露会見では、前年の2013年に転倒して頭部を打ったことから慢性硬膜下血腫で8月と9月の2回にわたり手術を受け、右頭部で190cc、左頭部で250ccの血を抜き、その直後に撮影をしたことなどを明らかにした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A


10. 中川隆[2328] koaQ7Jey 2016年4月14日 10:17:12 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2372]


“ポルノの帝王”久保新二氏が語る楳図かずお氏との共同生活 2014年12月14日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/155718



 66年「血は太陽よりも赤い」(若松孝二監督)でデビュー。ピンク映画に転じてからは「痴漢電車」(滝田洋二郎監督)や「未亡人下宿」(山本晋也監督)シリーズなど850本以上の作品に出演した。今も現役、“ポルノの帝王”久保新二さん(66)の下積み時代は――。


 オレがウメズと同棲してた、なーんて、本人同士のほかに知ってるヤツなんていないんじゃないかなあ。

どこのウメズかって? 漫画家の楳図かずおだよ。

49年も前、楳図が、漫画で飯食うために奈良から上京して3年目ぐらい。

先輩漫画家の居候から卒業し、一人暮らしを始めて間もない頃だった。

毎晩ひとつの布団に入って、不思議とケンカもせず寝てたっけ。

 といっても、乳くり合ってたワケじゃないぞ。

オレはもちろん、その頃からナヨナヨして奇抜な服着てた楳図もホモじゃねえから。

当時、オレは3カ月で高校中退して「劇団ひまわり」に入り、俳優を目指してた。で、メジャーデビュー前だった楳図も10歳ぐらいサバ読んで「ひまわり」の青年部にいたんだよ。

まだ映画が元気な頃だから、エキストラの仕事はあったし、楳図は社会勉強と漫画を描くのに役立つんじゃないかって思ったみたいだな。

 それで勝新太郎さん主演の「兵隊やくざ」(65年、増村保造監督)や、NHKの朝ドラ「たまゆら」のロケ現場で一緒になるうちに、妙に気が合っちまってさ。自宅が千葉県習志野市だから、都内に通うのに金も時間もかかって困ってたオレの餌食、いやいや、同情して居候を誘ってくれた。

 アパートは西池袋、目白3丁目辺り。

4畳半1間、煮焼きできるぐらいのチッコイ台所があるだけ。
風呂なんてない。トイレはポットン式の共同だよ。

■居候なのに家事は楳図さん任せ

 そりゃあ、生活は質素さ。オレは定職なんて持ってないから、いつもピーピーで。

兵隊映画で、坊主にしたらギャラは5000円上乗せって聞いて、真っ先に床屋に行ったなんてのも懐かしいよ。エキストラの日当が1000円前後だから、破格だったもんな。


楳図は楳図で、毎日腹ばいで気持ち悪い漫画を描いてた。

今、振り返ると、66年に講談社の「週刊少女フレンド」に連載されて評判になった「ねこ目の少女」「へび少女」の原点になる作品だったんだろう。

悪いけど、オレには理解できなかった。

 で、ヤツはお昼前後に家を出て出版社まで歩いて編集部へ持ち込みするのが日課。

神保町の小学館だと往復で15キロくらいあるんだけど、交通費がもったいないから。

 なのに、楳図は「何が食べたい?」って気を使ってくれてさ。毎日飯を作ってくれたんだよ。

野菜炒めとかオカラ、茹でジャガイモ……。

質より量が優先で。たまにバラ売りで買ってくる卵なんてぜいたく品だよ。
でも、気持ちがうれしいじゃないか。収入が増えてたワケじゃないのに、飯を出してくれるんだから。

 本当はオレが一回りも年下で、居候なんだから、炊事洗濯掃除、何でもやればよかったんだろうけど、そんなタイプじゃなかったから、ぜーんぶお任せ。ずいぶん生意気な居候だよな。

でも、さすがに半年くらいで申し訳なく思ってさ。いつまでも邪魔しててもナンだし、飯だって、食うや食わずで可哀想だろ。

そんな時にちょうど川崎の一軒家にシングルマザーの母親と住んでる役者の卵と知り合って、オレはそっちに引っ越したんだ。

 そのすぐ後かな。楳図が連載を持つようになり、“恐怖漫画”ってジャンルの売れっ子になったのは。

オレはオレで「血は太陽よりも赤い」でちゃんとした役をもらってピンク映画に出るきっかけになった。

そんなホロ苦い青春のひとコマ。

楳図にとっちゃ、毎日が迷惑と恐怖でしかなかったかもしれないけど。


11. 中川隆[2329] koaQ7Jey 2016年4月14日 10:48:16 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2373]

早川さや香のプロフェッショナルの唯言(ゆいごん) 宅ふぁいる便

〜濃く熱く、ひたむきに生きる仕事人に聞くライビング・メッセージ!〜

第6回 楳図かずお 氏(漫画家・マルチアーティスト)


よく死ぬこと=よく生きることだと言います。

各界の一流仕事人の人生観・死生観をうかがう連続インタビュー第6回目は、
日本で初めて「恐怖まんが」というジャンルを確立し、日本中の子供たちを震え上がらせ、PTAの目玉を剥かせた天才芸術家・楳図かずお氏の“唯言”をお届けします。

《唯言人》楳図かずお氏の半生

◇1936年、和歌山県・高野山にて生まれる。

生後7ヶ月で、母にもたされた筆で図形を描き始め、父に村の伝説を聞かされて、自然や空想と戯れて育つ。

◇1955年、中学2年時の作品『森の兄妹』などが出版され、商業デビュー。

大阪の貸本漫画で活躍し始める。

『口が耳までさける時』『へび少女』などを発表し、少年少女を震撼させる。


1967年〜『猫目小僧』、
69年〜『おろち』、
74年〜『洗礼』

等ヒットを飛ばし、76年〜『まことちゃん』で大ブレイク。“グワシ”は社会現象に。

◇1975年、SF大作『漂流教室』で小学館漫画賞を受賞。

メディアの寵児として歌い、踊り、演じ、マルチアーチストと呼ばれる。

その後も

82年〜『わたしは真悟』、

86年〜『神の左手悪魔の右手』、

90年〜『14歳』

など時代を先取りした作品を発表し、“預言者”と呼ばれる。

◇2008年、『おろち』が映画化。

◇2009年、8/20〜9/27 楳図かずお×現代浮世絵版画展を下北沢GAoh!にて開催 

同じく9月〜、原作を手がけた舞台『漂流教室〜大人たちの放課後〜』よしもとプリンスシアターで上演予定!

現在、小学館より『UMEZZ PERFECTION!』、小学館クリエイティブより『完全復刻版』を刊行中。

【オフィシャルHP】⇒http://umezz.com

◆出版社に「芸術的すぎる」と言われ、スランプに陥った高校時代

 僕は、戦後初のベストセラー漫画といわれる、手塚治虫先生の『新宝島』を小5のときに読んで、自分も作家になりたいと思いました。

でも「筋」は書けないし、「絵」は手塚先生に似ちゃうし、早くからものづくりの苦しみを味わいました。

中学校でも出版社に投稿したり、脱・手塚をめざして童画みたいなタッチを取り入れたり、試行錯誤していたんです。

 そんなある時、手塚先生ご本人にも、童画タッチの作品を送ってみたら、その直後の手塚作品に一部が取り入れられていたんです! 

デフォルメした「木」の描き方なんですけど、それまでの作品になかったタッチなので、ええ〜っ!?て思っていたら、後日談がありました。

 あの藤子・F・不二雄先生が、十代で手塚先生のお宅に見学に行かれたとき、壁に僕の絵が貼られていて、先生が「天才が現れた!」と鼓舞されたそうです。

だから、その「木」の絵は、その時手塚先生のお仕事を手伝った、F先生が描かれたのかもしれない。

あくまで推測ですけれどね。藤子不二雄A先生から後日談を聞いてすぐに、F先生は亡くなられましたが、ちょっとご縁が繋がったような、良いお話だと思っています。

 そんなわけで、高校生になってもひたすら描きまくっていたのですが、出版社に「絵が芸術的すぎる」って言われたり、漫画漬けで成績が下がって先生に説教されたりで、とうとう高校2年生のとき、「やーめた」と思いました。それからは音楽にのめりこむ日々を送っていました。

 ところがある日、修学旅行から帰った級友が「楳図くんの漫画が、熱海の売店で売られていた」って言うんです。

僕は、乗り物がキライなので行かなかったのですが(笑)、「ええーっ」ですよ。漫画サークルの先輩が出版社に売り込んでくれていて、本人が知らないうちにデビューしていたの(笑)。そうして漫画に呼び戻されたんです。

序文

楳図かずお 1936年、和歌山県生まれ。生後7ヶ月で、母にもたされた筆で図形を描いていたという。

 幼いころ、楳図まんがを読んでトイレに行けなくなった人は、結構いらっしゃるのでは? 

私(早川)がうっかり楳図シャワーを浴びたのは小学校2年生。

近所の本屋さんで立ち読みしたら、腰が砕けた。

それから毎日、怖くて怖くてやめたいのに、足が本屋へ…。

小2にして不眠症にもなった。『窓の外におばけがいるよ〜…』。母に助けを求めたいが、もしや、母にも“おばけ”が取り憑いていないか? 母親という、安寧の存在に恐怖を感じたのも、楳図ホラーの洗礼だった。

 「お母しゃんは、ヘビ女じゃないか!?」、とうとう母を指さして言った日、私はお尻が割れるほどぶたれ、本屋は出入禁止になった。しかし妄想は止まらない。夜は布団から両手を宙に突き出して、バリアを張った。

この結界が破れたら、自分も“おばけ”になってしまう…。そんな姿を暗闇で見て、母はキャッと叫んだ。小学4年生のとき、私は両親に遠くの田舎に連れて行かれ、楳図まんがとの蜜月は終わる。

 今は、夜の恐怖はすっかり忘れたし、妄想力もなくなってしまった。「楳図作品って、エロチックでもあったな〜」と思いながら頁を繰ると、恐ろしさより、懐かしさが先に立つ。しかし、どこかで、原始的な恐怖を忘れたくなくて、今も楳図先生に近づいていってしまうのかもしれない。

先生は読者を裏切らず、いつも「ちょっとフシギ」をサービスしてくださる。
http://www.filesend.to/plans/yuigon/body.php?od=20090813.html

唯言その一

◆これからの時代を生き延びるには……
『日本人は、もっと“芸術”心をもったほうがいいと思います』

――楳図先生は毎日、フランス・ドイツ・イタリア・スペインそして英語と、5か国語の勉強に勤しまれている。海外で、もっともっと自分の言葉で活動したいという意欲も含め、常に「目が外向き」だという。

 あの「ニューまことちゃんハウス」も、「漫画家の生活というものを、作品のように楽しいイメージで見てほしい」という、対外的サービス心の表れでもある。


 近隣住民の方の「景観の破壊…云々」なる訴えが棄却され、楳図先生に軍配が上がってから、私も見学しに行ってみた。

――「あれ…?」。それは想像していたほど派手でない、小洒落たカフェ風であった。(あくまで私見です)。実は裁判官の方も事前に視察しに来られ、見た瞬間、「あれ、素晴らしい…」とつぶやいていたそうだ。


「皆さんからも、お洒落、可愛いって意見を多くいただけたのは良かったです。

でも僕、ハッキリ言って日本の人って美術性・芸術意識が低いんじゃないかって思うんです。

そこを排除したところで言い合いをすると、キリがない。

裁判中に、ある知識人の方が“街並みを統一させようと思ったら、隣の家に合わせればいい”っておっしゃったんですが、それだけの意見って、貧しくないですか? ヨーロッパの、街並みの美しさを保つために合わせる、という意識とは違うんですよ」

――まことちゃんハウスの赤×白ストライプの外壁は、ベースが落ち着いた黄味のトーンで統一され、東京のはっきりしない空によく調和するように見えた。平安時代の「重ね」の色目のひとつである、「雪の下」を連想させる紅白である(あくまで私見です)。

 近隣住民の方は、最初に図面だけを見てギョッとされたようだが、楳図先生はこの見栄えまで、きちんと計算されていたのではないか。

「そぉなんです〜! あのね、今の日本の人って、色彩そのものばかり気にしていて、ある形や素材に色がのったらどうなるかっていう感覚が落ちてしまっていると思うんです。

この国って、経済復興したいときは凄い力を発揮できるんだけど、裕福になって成熟さが求められる段になっても、経済に向かう頭ばっかりなので、飛躍ができないんじゃないでしょうか。あくまで生活感覚から出発し、生活の延長で色彩を見ているんです。だから灰色と茶色ばっかりの世界でしょう(笑)」


――その、色気のない感じってどこから変えたらいいんでしょう。教育でしょうか?

「う〜ん。僕は、美術性や創造性と教育って、正反対のところにある気がします。

日本の教育って必ず、良いとか悪いとか結論を付けたがるけど、創造性っていうのは、まったくそんな論理がないところにあるんです。結論が出るところの正反対の、あり得ないようなこと…不条理とか不測を追求するのが、芸術や創造性に寄っていくことなんです」

――ああ…、なんで日本人に芸術性が足りないとおっしゃるのか、わかる気がする。リクツの通らない環境とか空間を、排除したがるからでしょうか。
http://www.filesend.to/plans/yuigon/body.php?od=20090813.html&pc=2

――ああ…、なんで日本人に芸術性が足りないとおっしゃるのか、わかる気がする。リクツの通らない環境とか空間を、排除したがるからでしょうか。


「そぉです!理詰めじゃないところに創造性があるっていうことを、論理じゃなくわからないと、街は美しくならないし、芸術の国になることは望めない。

これからこの国は、どうしたら食べていけるかってことを考えたら、僕はやっぱり芸術だと思うんです。

誤解を恐れずにいえば芸術が一番お金になります。

イタリアも、そのおつりで生きているようなものですよね。

だから、漫画もサブカルだとか三流だとか言わず、芸術ですって胸を張ったほうがいいですね。そう言った瞬間から、芸術に育っていきますから」

――しかし、我々のような「経済に向かう頭ばっかり」の人間は、「芸術です」なんて言い張る自信がないのです。


「小物一つでもいいから、家の中に芸術だと思うものを持ち込むことから始めたらどうでしょう。

それを家の中に置いた時、洒落て見えなかったら、芸術を芸術と見られない暮らしをしてるのかな?って、一つのバロメーターになると思いますよ。

安物でもいいんです。この時代、どれだけお金を使わずにやり過ごせるかが肝心だと思います。無理に“何かしよう”って思わないで、工夫することです。どんなに散らかっていても、お洒落なおうちってありますでしょう」

――なるほど、この楳図プロダクションのように(笑)。


唯言その二

◆『前世と聞かれてもよくわかりませんが……高野山にいらっしゃる弘法大師は、まだ亡くなっていなくて、それが実は僕なんです。ここにおります、ハイ!(笑)』

――楳図先生の感性のもとは、野山を駆け回って、超自然児として育った子供時代に培われた部分もあるだろう。高野山の数々の古刹も、金や朱のダイナミックな色彩にあふれ、現実離れしていたという。

 そういう人智を超えた空間で暮らすと、人の思惑や、人からどう見られるかといった制限が外れていくのかもしれない。

『そうですね。ですから他との協調性はないんです(笑)。

漫画を描くことしか神経がいかなくて、漫画以外の時間の流れや変化が止まっている生き方ですよね。漫画以外は何にもできないです、ハイ。

でも自分の空間で生きていると、僕って素晴らしいって思えるようになります。

自分のことを卑下しないで、そうやって気持ちを楽にしていると、身体もそこに合ってきて、マイナスの出来事も起こらないんですよ。

死後の世界…なんて僕にはよくわかりませんけど、生きてる時に、どれだけ自分の空間をつくる作業をしたかによって、それは出来あがるのかな。だからこそ、自分の生き方を大事にしなきゃって思います』

――いつも自分を尊敬し、気持ちをラクに保つことは大事だと、よく一流の方はおっしゃる。そうすれば人を憎んだり怯えたりしないので、物事がうまくいくのだと。加えて、それだけ漫画一筋に生きてハッピーな楳図先生。きっと前世も作家ですね?と伺ったら、弘法大師様!

 そういえば、毎日何キロも散歩して回る先生は、都民による目撃情報が多いことでも有名ですが、それも、全国を行脚していたという弘法大師の変わり身だから…?


『ギャグにしても、言い過ぎでしょうかね(笑)。生まれ変わりなんて、よくわかりませんが、もし来世でも漫画を描くとしたら、やっぱり迫力で人をワッと驚かすものが描きたいです。

漫画を描くっていう行為は、発表した段階で、読む方との勝負になるんですよ。

読者の方の、ワ〜ッという反応をとって、初めて面白かったと思われるので、多少エグくても勝たなくてはいけないんです。

ちなみに、お笑いやギャグっていうのは、僕にとっては、こちらからエネルギーを発散するだけで返ってくる力がないので、寿命が縮むような気がします。笑いという反応はあるけど、こっちからのエネルギーは抜けっぱなしになっちゃうような。

だから、僕はギャグを描いたら恐怖を描き、交互にしたいっていう感覚があります。
前世とか来世なんて、あまり考えませんが、そういうことのバランスは考えますね』
http://www.filesend.to/plans/yuigon/body.php?od=20090813.html&pc=3


唯言その三

◆『若さのヒケツは……

「肉も魚もたまに食べるベジタリアン生活」とか「散歩」とか「無理をしないで好きなことをする」とか、色々ありますが、やっぱり一番は、「歳はとりたくない、死にたくない」の気合です!』

――公式HPなどで見られるが、夜中に楳図さんの動画をうっかりクリックすると、大変テンションが高いのでびっくりする。

 とにかく元気、お若い。8年前、初めてインタビューに伺ってから全く歳をとってらっしゃらない。一体どうなっているんですか?と尋ねたら、このような気合が返ってきた。

「自分の作品が怖くないですか?」「そんなわけないですよぉ」と爆笑する先生だが、いちおう怖いものはおありで、それに打ち克ってこられたのだ。


「僕は、けっこう漫画の中で自分の気持ちを描きこんでいます。

たとえば『わたしは真悟』だったら子供のままでいたい、っていう気持ちを、

『洗礼』だったら醜くなりたくない、歳とりたくないっていう、そのままの気持ちを漫画で描いてるので、自分の漫画イコール自分の願いなんです。

だからこそ、創作のアイディアとか、本当の願いっていうものは、口から外に出さないほうがいいと思うんです。口から出した途端、エネルギーを発散しちゃって、自分の中にこもらなくなっちゃうので」

――ええっ。そうなんですか。現代の風潮かわかりませんが、「願望はドンドン口に出して、叶えるべし!!」のようなポジティブ思考のもと、「アンチ・エイジング」なんて言葉が出回っておりますが、逆効果ですか? でも、先生もいま口に出しちゃった……。


「そぉなんです! 発散しちゃったらスッキリして気が済んでしまうので、ダメなんです。これは内緒にしたかったことなのに、喋っちゃいました(笑)。
これからは、絶対もうインタビューとかでは言わない! また気持ちがスッキリしないよう、ためこまなくちゃ」

――変なことを聞いてすみません。自分の身体が大人になり、変容していく不安や不快、老いて崩れゆく恐怖…そういうものを作品に塗り込めることで、エネルギーを分散させていらしたのか。

これは、天才にしか使えないアンチエイジング術にも聞こえますが、とりあえず先生のひそみにならい、わたくしも今後は口に出しません。
http://www.filesend.to/plans/yuigon/body.php?od=20090813.html&pc=4

おわりに、唯言伝達人より

◆形見分け

 8年前に、初めて楳図先生にインタビューさせていただいたとき、先生の超多忙時代の話題になった。

週刊連載を何本も抱え、眠る時間もなく身を削っているのに、「あなたはエコノミックアニマル(経済的利益ばかり考える動物)だから、もっと働きなさい!」と揶揄した編集者がいた。

だがその方は間もなく病気で亡くなったので、もう悪くも言えない…という話だった。


 私と一緒にいた怖がりの編集者が、「ヒエ〜、楳図先生のことは悪く言えませんね」と叫んだ瞬間、グラッと大地震が起きた。ギャーッ、大地が賛同している!

「あの時は本当に怖かったですよ〜先生」。そんな思い出話をしていたら、「最近もちょっと奇妙なことが…」とおっしゃる。な、なんですか。

「自宅に、ハチベエって名付けている、黒猫をかたどった柱時計があるんです。

吉祥寺のヴィレッジヴァンガードで買ったもので、尻尾が振り子になっているんですけどね。それが僕と目が合うと、その瞬間ピタッと止まるんです」……?

「正確には、見る寸前に止まるんです。これが、帰宅した瞬間や、夜中にTVを見ていて振り返った瞬間、朝起きて見た瞬間、必ず、その1秒くらい前で尻尾が止まるんです。止まる瞬間の動きは見せないし、僕が見ない間の時間はちゃんと進んでいるんですけどね」

はははは。なんだか、生きているみたい。 どう解釈されているんですか?

「感覚的に、おはよう、おかえりなさい、とか、こっちのおうちにも帰ってきてね…っていうお愛想なのかなあ? 空気の振動の作用にしては、ちょっと妙ですから」

 もし、他人から見ても同様のことが起こるなら、美輪明宏先生にご相談しなければと微笑む楳図先生。

そういえば、かしこい飼い猫って、「だるまさんがころんだ」遊びをしますよね。ソロ〜と近寄ってきて、飼い主が見つめるとピタッと止まってみせる。あれですか?……まあ、真夏の楳図小噺として、おひとつ。(了)


※参考文献:『ウメカニズム 楳図かずお大解剖』(小学館)/文化放送『くにまるワイド ごぜんさま〜』より
http://www.filesend.to/plans/yuigon/body.php?od=20090813.html&pc=5


12. 中川隆[2330] koaQ7Jey 2016年4月14日 11:05:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2374]

まことちゃんハウス - Google 検索
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%81%BE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr:lang_1ja&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwivuO3IhI3MAhWG2aYKHTzpDi4QiR4Icw&biw=1122&bih=668

「まことちゃんハウス」訴訟に判決、楳図かずおが「完全勝利」。2009/01/28


楳図かずおの新居として建築された東京・吉祥寺の通称「まことちゃんハウス」の景観をめぐり、少し離れたところに住む“近隣住民”から起こされた裁判に判決が下った。

裁判所は「景観利益を損なうものではない」と判断。

原告側の主張を全面的に退ける判決で、楳図かずおの「完全勝利」となった。

楳図かずおは判決を受け、「本当に春をちょっと皆さまより先に感じさせていただくことになりました」と喜びを語っている。

また、今後の近所付き合いの在り方については「無理なこだわりをするとややこしくなりますので、僕は僕の流れで、素直な感じでやっていきたい」とコメント。そして「無理矢理くっつくような、仲良しとかではなく、多少間を置くのも一つの仲良くする方法だと思う」「時間が解決してくれると思います」と、焦らずに、自然な形での近所付き合いを希望している。


この裁判は原告の“近隣住民”2名が、「まことちゃんハウス」の赤と白で構成されたストライプの外壁や、物見塔のように突き出た部分に「閑静な住宅街の景観を破壊する」「気色悪い」「乱痴気な建物」と不快感を示し、建築中から工事の中止を訴えていたもの。

当初は建設差し止めの仮処分申請をしていたものの、東京地裁がこれを却下、さらに昨年3月に建物が完成したため、訴訟内容を変更して裁判が続いていた。

“近隣住民”が求めていたのは、大まかに次の3つだ。

1.景観を悪化させている赤と白のストライプの外壁を撤去すること。
2.撤去するまでの期間、毎月10万円を原告に支払い続けること。
3.「物見塔」の窓から外が見えないように目隠しをすること。

1と3は建築中止を求めていた段階の主張と大差はないが、2に関しては訴訟内容変更にともなって追加された主張だったため、「結局金が欲しいだけか」「ついに本性を現したな」「恐喝のようだ」と、ネットでは反発の声も上がっていた。

なお、楳図かずおが「赤と白のボーダー」にこだわる理由について、よみうりテレビの「情報ライブ ミヤネ屋」のインタビューでは、

「赤と白は力強く、いつも元気をもらえる」
「ボーダーはエネルギー」
「ボーダーを見ていると気分が楽しくなって、『さあ、がんばろう!』って僕はそう思う」

と説明している。また、自身は「手塚治虫のようになりたい」と願っており、高校生の頃に読んだ手塚治虫の「新宝島」に出てくる海賊が、赤と白のボーダーの衣装を着ていたことが、こだわり始めたきっかけになったという。
http://www.narinari.com/Nd/20090111000.html


ダメダメ家庭の目次録
http://space.geocities.jp/kinoufuzennkazoku/index_original.html


08年11月29日 楳図かずおさんへの抗議
 
楳図かずおさんに抗議している女性について


取り上げるのは、ちょっと前から、騒動になっている東京在住の漫画家 楳図かずお さんの邸宅への抗議を繰り返している女性たちの問題です。

その事件は、報道されていますから、皆さんもご存知でしょう。

楳図かずお さんが、奇妙な外観の家を建てて、その家に対して、クレームをつけている2人の女性たちがいるんですね。

その女性たちの抗議のスタイルも、ダメダメ家庭の問題がわかっていると、実に理解しやすいわけ。

まずその女性たちの抗議のスタイルは、わざわざその邸宅を見に行って、

「まあ、なんてヒドイの?!」

と嘆きの声を上げていますよね?

そんなにその邸宅の外見が気に入らないのなら、見なければ済む話。

お隣さんではないようですから、見ないという対応を取ればいいだけ。

しかし、ダメダメな人は、わざわざクレームの場面を作ることがあります。

そうして、わざわざ「あら探し」をして、「まあ、ワタシって、なんてかわいそうなの?!」と言い出すことになる。

そうして、探し当てて得ることが出来た自分の被害を、人々に語りたいと熱望することになる。

それも権威主義的なので、国家認定の機関である裁判所が好き。

相手方の意向も聞かずに、一方的に糾弾することになる。
まさに典型的な「つるし上げ」状態。

このような抗議スタイルは、市民団体などの活動家ではおなじみでしょ?

あるいは、着地点の想定なしにクレームをつけ続けるスタイルは、典型的な「クレーマー」。

抗議のスタイルから多くのダメダメが見出されるわけですが、じゃあ、その女性たちの家庭の中ではどうなっているでしょうか?

そもそも、妻がそんなクレーマー状態なのに、夫は何をやっているの?

しかし、ダメダメな夫婦においては、強圧的な妻と、「影の薄い夫」という組み合わせの例も結構あったりするわけ。

そして、夫はともかく、そんな問答無用のクレームをつけ続けている母親の姿を見ている子供はどうなっちゃうの?

しかし、ダメダメな親は、子供にそんな姿を見せるわけ。
つまり家庭内全体として「不寛容」な精神が支配している状態なんですね。

まあ、これくらいのリストアップなら、購読者の皆さんでもできるでしょう。
ここからは、私ならではの心理面の考察に入ります。


あの女性たちは、どうしてあの邸宅が気に入らないの?

その女性たちにとって趣味が悪いから?しかし、趣味は人それぞれ。

世の中には、趣味が悪いものなんていっぱいありますよ。それこそ趣味が悪いと思うのなら見なければいいだけ。その邸宅に、どうしてそんなに心理的インパクトを感じるの?

あの邸宅の写真を見れば思われる方も多いでしょうが、あの邸宅は、実に「子供っぽい」んですね。

ヘンな話、小学校低学年の子供が工作で作ったものが、そのまま家になってしまった・・・そんな趣があるでしょ?

小学生はあんな工作をしますよね?

だからこその逆上なんですね。

ダメダメ家庭の子供は、子供体験が出来ていない。そもそも、ダメダメ家庭においては、「格の違いに対するセンシビリティ」がない。

ダメダメ家庭においては、親も子供も同格なんですね。序列の違いはあっても、格の違いはないわけ。そんな家庭では子供も大人と同じ対応を求められるわけ。だからダメダメ家庭の子供は、子供らしく生きることができない。

子供として生きることをしていないので、「子供っぽさ」との付き合い方がわからないことになる。

親からは、「いつまでそんな子供っぽいことをやっているの?!」「早く大人になれ!」と厳命されてばかり。

そんな家庭の子供は、子供っぽい楽しみとは無縁。

それこそ、子供っぽい服装を楽しむことはできない。

あるいは、学校の工作での作品なども、親から酷評されたり、あるいは、親が侮蔑のまなざしを向けて、その工作を「ゴミ箱ポイ!」なんて事態になったりする。あるいは、作文の文章に対しても、「何なの?このツマラナイ文章?」と笑われてしまう。

そんな感じで、自分自身の子供っぽさを、親から言下に否定され続けた日々だったので、自分自身の子供っぽさとの付き合いができないわけ。子供っぽさが発現しそうになると、必死でそれを抑圧する習性がついてしまっている。

そんな「子供っぽさ」を抑圧している精神の目の前で、臆面もないほどに「子供っぽい」外観を持つ邸宅が登場したら、逆上してしまうのも、ある意味において当然なんですね。

だって、それまで自分の「子供っぽさ」を必死で抑えて生きていたんだから、まさにパニックになってしまうわけ。

このような状況は、たとえば、ダイエットのために甘いものを取らないようにして、我慢に我慢を重ねている状態の時に、目の前で甘いケーキをおいしそうに食べている人がいたら、腹が立つでしょ?

あるいは、禁煙の際にタバコを断って禁断症状で苦しんでいる時に、目の前でタバコをおいしそうにプカ〜と吸われたら、やっぱり腹が立つんじゃないの?

子供っぽさを抑圧している人も、まったく同じなんですね。

だからこそ、かつて自分自身が自分の親からやられたように、相手の子供っぽさを否定しようとするわけ。

子供っぽいものを見て、もっとも一般的で、もっとも適切な対応は、「笑う」というもの。

そんなものでしょ?だって別に危険なものではないんだし・・・ちょっと見て、笑っていればいいじゃないの?

しかし、まさに自分自身を必死で抑圧しているがゆえに、「笑う」という余裕ある態度が取れないわけです。

ちなみに、この抗議の声を上げているのは、いわゆる「市民団体」の関係といえる人でしょう。それに対し、抗議された側の梅図かずおさんは、芸術家と言えるかどうかは別として、創作者の範疇に属する人と言えるでしょう。

実は、市民団体と、創作者は、相性が悪い関係なんですね。

歴史的に見ても、市民団体というか、良識ある市民と自称する人たちとの間で、良好な関係を築いたアーティストなんて存在しないでしょ?

まあ、数少ないその例外が画家のルーベンスといえるでしょう。だから、「フランダースの犬」で、ルーベンスが言及されるわけです。

基本的に、アーティストと市民は対立するものなんですね。

市民団体の心理的な本質は、自分で考えたくない、自分で見たくないという自己逃避的な心理。それに対し、創作するにあたっては、自分で見て、自分で考えることが必須となっている。

それに、創作するにあたっては、様々な選択に直面する。

漫画だったら、どのようなキャラクターを使うのか?どんな展開にしていくのか?この人物をどのように描写するのか?・・・等々、無限の選択肢がありますよ。
その選択を回避していたら、何も作れませんよ。

それに対し、市民団体は、選択の場からの逃避が目的になっているわけ。

それこそ、彼女たちは、珍妙な建物を「見ない」という選択すらできないわけですからね。

このような例は、「こんにゃくゼリー」を買わないという選択ができないこととも共通しています。

選択と向き合う姿勢も、市民団体と、創作者は正反対となっているわけ。

歴史的にみても、創作された作品に対し、市民の側が、「不道徳だ!不穏当だ!」と抗議の声を上げることは、いつものこと。このようなことは、今回のような、いかにもな市民団体でなくても、一般市民でもそんな反応をするものなんですね。

逆に言うと、そんな抗議の声も上がらないような作品は、市民の「良識」の枠を壊すこともなく、いわば規格品的な、別の言い方をすると、単なる商品に過ぎないわけ。

頻繁に書いていますが、独裁的な支配者というものは、「あの支配者をやっつけろ!」という反抗の声には動じない。しかし、

「あの支配者は実は何もわかっていないぞ!わかったふりをしているだけだ!」

「王様はハダカだ!」

という子供の声には、過敏に反応することになる。
だって、そんな子供の声こそが真実なんですからね。
だからこそ、そんな子供の声が出ないようにすることになる。

市民団体というものは、まさに、規格に安住することを求めている人たち。
だって、規格に安住していれば、自分で見なくてもいいし、自分で考えなくてもいいし、自分で判断しなくてもいい。

だからこそ、芸術家とは対立するものであるし、現実的には子供という存在にも対立しているものでしょ?

今回の抗議の女性の子供は、現在は家庭内でどんな状況なのか?

たぶん、親から押しつけられた規格に縛られて、窮屈な思いをしているんでしょうね。

逆に言うと、今の時点でその子供のサポートをしなければ、事件になってしまうわけです。
ダメダメな事件というのは、予想できたりするものなんですよ。
http://space.geocities.jp/kinoufuzennkazoku/08-11/08-11-29.html


13. 2016年4月14日 11:18:15 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2375]

まことちゃんハウス 動画
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%81%BE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9

楳図かずお邸 動画
https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A%E9%82%B8


14. 2016年4月14日 11:35:53 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2376]

タレント・漫画家・「楳図かずお」さんの別荘が見えます 2009/3/2(月)


雪が早朝10cm以上積もり、9時近くからは雨に変わり雪がどんどん解けていった日の宿舎近くの撮影ですが、


夏は木々の緑で見難いですが、冬は林の見通しが良くなり、良く見えます.


http://blogs.yahoo.co.jp/kanayama5818/GALLERY/show_image.html?id=47180491&no=0
長野県・原村内の赤白ライン別荘・・・・・この地で私はおかしくは感じません.


2007年に自宅(まことちゃんハウス)を赤と白のライン入り改築で、「景観を損ねる」として建設差し止め仮処分申請に発展して、有名になったかたの別荘です.

昨年10月12日に住民側の請求を却下。その後、損害賠償訴訟に変更されたものの、
東京地裁は2009年1月28日に請求を棄却し、落ち着いたばかりのようです。
http://blogs.yahoo.co.jp/kanayama5818/47180491.html

2013年 04月 20日 白樺の小径と宿り木

2013年の春から八ケ岳(原村)で暮らしています

先日、近くの白樺の小径に行く途中 漫画家の楳図かずおさんの別荘を通りました

http://aoituhat.exblog.jp/iv/detail/?s=18590384&i=201304%2F20%2F04%2Fd0253504_1331661.jpg


この建物が建ってから原村に規制が出来て原色使いの派手な建物は建てられなくなったそうです

となりの可愛い小屋も楳図さん好みなんですね(笑)

http://aoituhat.exblog.jp/iv/detail/?s=18590384&i=201304%2F20%2F04%2Fd0253504_13545254.jpg

原村のウォーキングコースになっている白樺の小径の木々には葉のかわりに
緑のボンボンのような宿り木がたくさんついてました。
http://aoituhat.exblog.jp/18590384/


15. 中川隆[2333] koaQ7Jey 2016年4月14日 14:22:32 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2380]

楳図かずお邸を実際に見てきた。景観上の問題は皆無だ 2009年2月 3日
http://www.kotono8.com/2009/02/03umezu.html


漫画家・楳図かずおさんの吉祥寺の自宅の「紅白しま模様」が景観上問題があるということで一部「住民」から訴訟を受けていた問題について、1月28日に「景観上問題はない」という判決が下った。

こういう問題については、実際に現場に足を運んでみるに限る。というわけで楳図かずお邸を見てきた。その感想は「楳図邸はむしろ景観に最大限の配慮を払った、すばらしい建物だ」。撮影した写真とともに報告する。


 「まことちゃん」などの作品で知られる漫画家の楳図かずおさん(72)が東京都武蔵野市に建てた自宅をめぐり、赤白横じま模様の外壁が近隣住民の景観利益を侵害するかが争われた訴訟の判決で、東京地裁は二十八日、「景観の調和を乱すとまでは認められない」として、外壁の撤去などを求めた近隣住民二人の請求を棄却した。

 畠山稔裁判長は、自宅が建設された場所が第一種低層住居専用地域として、閑静な住宅地を目指して整備された経緯を指摘した上で、「外壁の色彩には法的規制はなく、住民間での取り決めもない。景観利益を違法に侵害するとはいえない」と判断した。

 平穏に生活する権利を侵害するとの住民側主張は、「不快感を抱かせても、受忍限度を超えて侵害するとはいえない」と退けた。

■楳図邸は、通り過ぎてしまうほど「目立たない建物」だった

楳図かずお邸は「景観」問題によって話題になったが、それならば楳図邸だけの問題ではない。周囲の建物との調和がとれているかどうかが問題だろうと思った。しかし、わたしが見た範囲では、楳図邸の外観だけでなく、周囲との調和を調べているものはなかった。

楳図かずお邸については、「グーグル・ストリートビュー八分」されている(※「○○八分」という言葉は、正確性の問題からも、また極めて主観的な表現であることからも、使うべきではない言葉だと思うが、ここでは慣例に従う)。そこで、厳密な場所はわからないまま、おおよそのあたりをつけて、実際に行って調べてみることにした。

2月2日午前、最寄り駅となる吉祥寺駅南口に降り立った。ここから南に進むと、数分で井の頭公園である。楳図かずお邸にまっすぐ向かうため、井の頭通りで井の頭線吉祥寺駅ホームの下をくぐり、その先を曲がって再び井の頭線の高架の下をくぐった。

吉祥寺駅から井の頭線にまっすぐ向かうとおしゃれな店の並ぶストリートだが、そこからほんのわずかに外れた住宅地の中に、楳図邸があるはずだ。

駅から徒歩5分。そろそろこのあたりだが……と思って歩く。

ふと横を見ると、そこに楳図邸があった。「これか!」


楳図かずお邸

まったく気付かなかった。通り過ぎるまで、そこに「紅白しま模様で景観を壊す」と言われていた楳図邸が存在することに気付かなかったのだ。悪趣味なラブホテルか、センスのかけらもないパチンコ屋のようなけばけばしい建物が住宅地のど真ん中にあって自己主張しているのかと思っていたら、そんなことはまったくなかったのだ。むしろ、シックなたたずまいを見せているように感じられる。

その理由はいくつかある。

楳図邸の「紅白」の赤色だが、想像していたものとはまるで違っていた。けばけばしく自己主張の強いヴィヴィッドやストロングのトーンではなく、ディープレッドに近い。落ち着いた赤色である。

また、報道などでは強調されないが、道路から目線の高さで見たとき、玄関の深みのあるディープグリーンが圧倒的な存在感を示している。これはディープレッドとトーンを合わせた補色配色になっており、清潔感のある白とあいまって、非常にセンスのよい感じを与えているのである。

楳図かずお邸
正面から見れば、アメリカの家のような配色に見える。

楳図かずお邸
「周囲を見はっていて不気味だ」とされた塔も、愛嬌のあるものにしか見えない。


■楳図邸は景観に配慮していた

楳図邸が目につかなかったのは、配色だけが理由ではない。その建築計画においても、周囲からの見え方を十分に考慮して建てていたのだ。

その秘密は、楳図邸が「道路から数メートル奥まったところに建てられている」という事実に現われている。

楳図かずお邸
道路から建物の間にスペースが設けられている。

わたしが北側の道路から楳図邸に近づいたときには、隣家によって完全に隠されていた。「楳図邸の前のスペース」があるがゆえに、ほぼ正面にくるまでその存在が見えないのである。

楳図かずお邸
楳図邸前の道路を北から南に眺めたところ。三叉路の先、左手にある楳図邸が、この距離だとまったく見えない。

楳図かずお邸
もう少し南、楳図邸に近づいた。左側の白い壁の建物の向こうに、実はほんの少し楳図邸のしましまが覗いているのだが、知らないとまったくわからない。

楳図かずお邸
ここまできて、ようやくしましまが覗いて見えるが、前を見て歩いていると気付かなかった。むしろ右手の赤い服を着た菅直人のポスターの方が目立つくらいである。

楳図かずお邸
三叉路の角から無理矢理、楳図邸が見える角度で撮影した。最初通ったとき、わたしは左端の歩道ゾーンを歩いていたので、隣家のためにまったく見えなかった。

非常に慎ましやかな場所に建っている。それがわたしの受けた率直な印象だった。


楳図かずお邸
親子連れが数組、楳図邸見物に来ていた。左右の隣家と比べてもかなり奥まった位置に建てられていることがよくわかる。そして、周囲の景観とも調和しているように感じられる。

反対側から見てみよう。南側からの写真である。

楳図かずお邸
南側すぐの三叉路の角から。二軒南隣の家の立派な松の木の存在によって、楳図邸が完全に隠されている。


楳図かずお邸
少し北に歩いた。松の木の隙間にかすかに紅白しましまが見える程度である。それよりも、道の突き当たり(京王井の頭線の高架の向こう)のマンションのレンガ色の方が目立つ。

楳図かずお邸
ここまで近づいてようやく、「まことちゃんハウス」だと理解できる。そして、こうやって見てみると、それほど奇矯な建築であるようには見えない。

楳図かずお邸
確かに変わった建物ではあるが、周囲の風景に溶け込んでいるように見える。


■楳図邸には景観上の問題はない

撮影していると、何組かの親子連れなどが楳図邸を携帯で撮影しにやってきていた。自転車でやってきて、写真を撮って行く人もいた。高齢のご婦人がやってきて、楳図邸をひとしきり見上げた後、わたしに声をかけた。

「いろいろ言われているようだから見に来たけれども、全然、騒ぐほどのもんじゃないねえ」

わたしはその一言がすべてを物語っているように思われた。

結論として、わたしは「楳図かずお邸は周囲の景観に対して最大限の配慮を行ない、そして景観の中に溶け込んでいる」と感じた。それは、現場で実際に見た感想だ。

■楳図邸のご近所建築を歩く

楳図邸のある一画――吉祥寺駅の南東の住宅地、井の頭公園と京王井の頭公園に挟まれた場所――を少し歩いてみた。そこには、こんな建物があった。

吉祥寺の家
幾何学的でモダンな雰囲気。思わずカメラを向けたくなったデザイン。

吉祥寺の家
売り地になっていた家。昭和の風情を醸し出している。金があったらぜひ買いたい家。

吉祥寺の家
吉祥寺南町ハイツ。デザイン的には整っているが、周囲に配慮しすぎているようにも感じられる。

吉祥寺の家
これはまた風流なお宅。門構えの前の石が主張している。

吉祥寺の家
この二軒は、実は楳図邸と同じ通りに面している。楳図邸だけが飛び抜けて独特というわけでもない。

ところで、この楳図邸に対する裁判を起こしたのは、楳図邸から2km離れたところの住人二人だけであったと報じられている。また、実際の近隣の人たちは別に反対していないともいう。景観問題はもともと存在しなかったというべきではなかろうか。

【3/19追記】上記のように書いたが、「たけくまメモ : 「まことちゃんハウス」内部写真・解禁!」によると、

「※ちなみに、ネット内では楳図先生を訴えたのは隣町の住人だという噂が流れていましたが、これは間違いで、訴訟は実際にお隣と向かいの方から起こされたものだそうです」

とのことである。したがって、上記の情報は誤りであると思われるので訂正する。

なお、竹熊氏も

「実際お宅にお邪魔して強く感じましたが、一見赤・青・黄色・白で塗り分けられて派手な感じの家なんですけれども、配色には細心の注意が払われていて、ショッキングピンクのような目に刺さるような原色は避けられていたことです。

色のバランスがとれているので、派手な感じが意外としません。
反対にセンスがいいと思いました。」

との感想を述べており、この点についてはまったく同感である。(追記以上)


井の頭公園
楳図邸から数分とかからないところから、井の頭公園へ続く階段がのびている。
http://www.kotono8.com/2009/02/03umezu.html


16. 2016年4月15日 08:26:23 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2390]

楳図かずお エピソード

徹底的なオリジナル追求志向であり、他作品から影響を受けることを恐れて漫画や映画、アニメ、小説などには一切触れないという。また、オリジナリティをものにするには、まだ誰も手を付けていない未知の分野を積極的に開拓する姿勢が大切であるとも述べている。


宮崎駿の映画の大ファンで、「自分の作品を宮崎監督にアニメ化してもらいたい」
と公言しているが実現していない。自身以外の漫画キャラで一番好きなキャラは、『風の谷のナウシカ』のナウシカと答えるほどである。

映画「漂流教室」(大林宣彦監督)は、テーマやストーリーが大きく改変され、苦言を呈した。


アメリカの文化にも大きな影響を受けている。

エルヴィス・プレスリー(音楽活動)、マリリン・モンロー(わたしは真悟)アメリカ(14歳) など。

赤と白のボーダーシャツ(「ロヂャース」にて購入)を好む。
また赤と白のボーダーラインが自分のラッキーカラーであると語っている。

なぜ赤と白のボーダーラインが好きかについては、海賊の着ている服のイメージからだと答えており、そのイメージの源泉は子供の頃に読んだ手塚治虫の『新宝島』から得たと答えている。また漫画家の他になりたい職業は?という問いにも「やっぱり海賊」と答えた。


2007年に吉祥寺の自宅(まことちゃんハウス)を改築した際、外壁に赤と白のボーダーラインを入れた所、近隣住民2人から「景観を損ねる」として建設差し止め仮処分申請に発展したが、東京地裁は10月12日に住民側の請求を却下。

その後、原告側から塗装中止を求める訴訟も起こされたが、建物が完成したことに伴い、外壁を撤去するまで毎月10万円の損害賠償を請求する訴訟に変更されたものの、東京地裁は2009年1月28日に

「周囲の目を引くが、景観の調和を乱すとまでは認められない」

として請求を棄却した。


なお「まことちゃんハウス」の室内は壁の色が部屋により変えられており、

緑の玄関ホール、
白のリビング、
黄色の寝室、
青の書庫、
赤の屋根裏部屋

などがある。

別荘にも赤と白のボーダーラインを入れている。

また、吉祥寺以前に居住していた高尾の家の外壁は真黄色であった。

語学学習マニアである。

英・伊・仏・独・西の5か国語のNHKラジオ講座を数年間録音して聞き続けている。

行列のできる法律相談所の「カンボジア学校建設プロジェクト」にてオークションにまことちゃんの集団肖像画を出品した。作品は126万円で落札された。


閉所恐怖症気味で、生来の自動車嫌いである。

電車は利用するが、ほとんど徒歩で都内を移動する。

手品師のマギー司郎とは、高田馬場で偶然に出会って知り合いになり、楳図いわく「唯一のお友達」だという。


実弟の楳図良雄は博報堂DYホールディングスの元社員。

かつて日の丸文庫で「或る人非人」「人斬蔵」などの時代物の劇画を描いていた他、NET系テレビアニメ『アンデス少年ペペロの冒険』(1975年-1976年)の構成を担当していた。

もともと音楽にも志を持っていたかずおは、良雄の依頼で主題歌の作詞を手がけた。


吉祥寺・西荻窪の住民は楳図の姿が日常風景であるため、諸事情により楳図の姿が見えない期間が長期におよぶと不安を感じる者が多い。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A


17. 2016年4月15日 08:36:51 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2391]

楳図かずお 主要作品


連載作品

・ロマンスの薬(原題:ロマンスの薬あげます!!) - 『なかよし』(1962年)
惚れ薬をめぐって繰り広げられるギャグ作品。ラブコメディーの原点といわれる。


・紅グモ - 『週刊少女フレンド』(1965年47号 - 1966年10号)
シリーズこわい本に収録。『黒いねこ面』『のろいの館』と共に、サンデーコミックス(秋田書店)により、貸し本屋でロングセラーとなり、少女マンガを読まない人にも知られるようになった作品。


・半魚人 - 『週刊少年マガジン』(1965年48号 - 53号)
シリーズこわい本に収録。


・ひびわれ人間 - 『週刊少年マガジン』(1966年06号 - 12号)


・へび少女 - 『週刊少女フレンド』(1966年11号 - 25号)


・ウルトラマン - 『少年マガジン』(1966年 - 1967年)
テレビ特撮番組のコミカライズ。当初は少年マンガ調の画風だったが、連載途中から劇画ブームの時勢に合わせ、劇画風の緻密な絵柄に変わっている。バルタン星人やドドンゴの話には恐怖マンガを感じさせる描写もある。恐怖マンガの第一人者として、全国的に知られることになった作品。


・赤んぼ少女 - 『週刊少女フレンド』(1967年30号 - 39号)
のちに『のろいの館』『赤んぼう少女』とも改題される。

・SF異色短編集 - 『ビッグコミック』(1968年 - 1969年)


・映(かげ)像 - 『ティーンルック』(1968年)
後に『谷間のユリ』[15]と共にシリーズこわい本に収録。


・蝶の墓 - 『ティーンルック』(1968年)
初出時は作者名を伏せて発表された。(作者名当てクイズを懸賞として)シリーズこわい本に収録。


・猫目小僧 - 『少年画報』など(1968年 - 1976年)


・おそれ - 『ティーンルック』(1969年)
楳図作品に見られる「美しさの崩壊に対する恐れ」が描かれている作品。シリーズこわい本に収録。


・死者の行進


・おろち - 『週刊少年サンデー』(1969年25号 - 1970年35号)
不思議な能力を持つ美少女「おろち」が様々な人々や家族と関る。


・イアラ - 『ビッグコミック』(1970年1月10日号 - 9月25日号)


・怪獣ギョー - 『週刊少年サンデー』(1971年36号 - 37号)


・アゲイン - 『週刊少年サンデー』(1971年43号 - 1972年5号)
年老いた沢田元太郎が、偶然手に入れた薬「アゲイン」によって高校生に若返り、高校や実家の沢田家であばれまわる。ドタバタ劇のギャグ漫画だが、当時表面化しつつあった老人問題への目配りも見られる。沢田家の孫のまことに人気が集まり、後に『まことちゃん』が描かれる。


・漂流教室 - 『週刊少年サンデー』(1972年23号 - 1974年27号)
人類絶滅後の未来にタイムスリップした大和小学校の児童たちのサバイバルを描く近未来SF。


・洗礼 - 『少女コミック』(1974年 - 1976年)
年老いた女優が再び美しさを取り戻すため自分の娘と脳をいれかえる手術をする。


・恐怖 - 月刊誌『平凡』 高校生シリーズ。1976年文庫版初版。(秋田漫画文庫)


・まことちゃん - 『週刊少年サンデー』(1976年16号 - 1981年30号)
『アゲイン』に脇役として登場していた幼稚園児の沢田まことが主人公。
「グワシ」、「サバラ」などのセリフ(手の形もつく)で知られるギャグ漫画で、楳図最大のヒット作。作中には楳図自身も頻繁に登場した。
最終回などはなく、人気絶頂のまま突然終わっていた。
1989年に同誌で連載再開したものの、約1年半で終了。こちらでは最終回が描かれている。
後者は区別して「平成まことちゃん」と呼ばれることがある。


・わたしは真悟 - 『ビッグコミックスピリッツ』(1982年8号 - 1986年27号)
小学生さとるとまりんのひそかな遊びは、産業用ロボット・モンローに知識を与えることだった。離ればなれになることが決まった二人は、モンローに尋ねた「どうしたら二人の子供が作れるのか?」と


・楳図かずおの呪い - (1986年)
表題の3話と短編1話をまとめて1989年に単行本初版。


・神の左手悪魔の右手 - 『ビッグコミックスピリッツ』(1986年31号 - 1988年32号)


・14歳 - 『ビッグコミックスピリッツ』(1990年4・5合併号 - 1995年37号)
動植物・人間・神を問題として地球上の生命の連鎖とその終末を描いたSF作品。


読み切り

・愛の方程式 - 『高2時代』(1973年)
ギャグ作品。連載当時、『まことちゃん』の人気が高まっていたこともありお下劣内容である。


・ねがい - 『週刊少年サンデー』(1975年16号)
「友だちがほしい」と願い、“モクメ”という人形を造った少年が体験する恐怖を描く。


・男神 - 朝日ソノラマ『DUO』(創刊号)
55歳になったまことちゃんを見ることができる作品である。80年代の匂いを感じさせてくれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A


18. 中川隆[2337] koaQ7Jey 2016年4月15日 09:50:18 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2394]



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洗礼 1996年
http://www.bilibili.com/video/av1829858/
http://muryoueiga.com/blog-entry-8001.html


監督 吉原健一

原作 楳図かずお


キャスト

今村理恵
秋川リサ
田子千尋
網浜直子
吉田美江
楳図かずお
郷達也
鹿島信哉

母と娘の逃れられない宿命-楳図かずお『洗礼』
http://blog.livedoor.jp/yamadi99/archives/24186675.html

『洗礼』は小学館『週刊少女コミック』で連載されていた楳図かずお先生の漫画です。


ほんとーにごく簡単に話のあら筋を紹介すると、


小学生のさくらは顔に醜い大きなあざのある母親いずみと親子仲良く暮らしていた。しかしある時、脳みそを入れ替えることで母が自分の体を乗っ取ろうとたくらんでおり、今まで自分に向けられた優しさすべてがそのたくらみのためのものだったことを知る。母からの必死の逃亡を図るさくらだったが、あと一歩のところで捕まってしまう。

脳手術によりさくらになりかわることに成功したいずみは、入れ替わりの秘密を知ろうとする者や第2の人生の障害となる者を消し去りながら、新しい愛と生活を得ようと暗躍していく・・・

といった感じです。

主人公の上原さくらちゃん(小4)は楳図作品の中でも屈指の美少女。

もしかしたら作品既読の方は「あれっ?」と首を傾げたかもしれませんが、

『洗礼』という作品の構成上、当レビューではあえてネタバレになるようなことは避けています。


物語の導入部分は

【さくらがいずみの計画を知って母のもとから逃れようとするが、捕まり、脳手術をうける】


くだりとなっています。


あえていうと、『年老いていくものが若者の若さを何らかの方法で奪おうとする』というモチーフはホラー作品ではよくある筋書きです。ホラーの女王犬木加奈子先生も『老人の日』という短編で同じモチーフを扱っており、小学生だったゴゴに消えないトラウマを残しました。

自分よりも強く自らを守ってくれる存在である大人が実は自分に危害を加えようとしている、という想像は子供には怖いもんです。

とくにいずみの執拗さ・必死さ・小学生の娘に「悪いけどあなたには人生なんてないのよ」と言い捨てる残酷さは今読んでもぶるっとくるものがあります。おかあちゃん、本気で怖いです。


母親いずみ 綿密にかきこまれた痣が目を引きます

唯一の肉親であった優しいお母さんが、突如として自分を「若返りのための道具」として扱いだすのですから、さくらちゃんが本当にかわいそう。

母の魔の手からなんとか逃げきってほしいという読者の願いもむなしくつかまってしまいます。

きっとさくらちゃんは助かる、という小学生時代のゴゴの期待はあえなくこの後打ち砕かれます


「若さをもとめて子供を襲う狂気の大人」というモチーフでは、悪役の追跡から主人公が必死の抵抗を試みるところに恐怖の比重が多く置かれていますが、『洗礼』はかなり早い段階で脳移植によっていずみがさくらを捕まえて肉体を乗っ取ってしまいます。


乗っ取りの方法である脳移植の様子は非常に克明に描かれており(楳図先生いわく、よく調べずにかなり適当に書いたらしいのですが)、脳移植という SFフィクション的な要素を凄まじいリアルとしてありありと見せつけます。

『快感♥フレーズ』などが連載していた現代の『少女コミック』では間違いなく掲載できないんではないでしょうか。


ところで、ホラー作品にはセオリーといいますか、非常によくあるパターンがあります。

それはミステリーで言えば探偵役が犯人を突き止めて終了というように、

「主人公たちは必死に抵抗するものの、幽霊や化け物が最終的に目的を遂げて終る」

というパターンです。

有名どころだと『リング』や『呪怨』でもそうですね。悪霊が目的(怨念によって登場人物を殺す)を達成して終わるというラストシーンです。

この手法だと脅威は駆除されずに残り、「作品は終ったが恐怖は終っていない」と読後の不安を掻き立て、ホラー作品のインパクトと緊張感を強く残します。ゴゴの大好物です。


そこをふまえてみると、2人が入れ替わった時点で物語は終了するのがよくあるパターンなんですが、なんと入れ替わり後は主人公が変わって(さくらの体を乗っ取ったいずみになって)物語が続いていきます。

楳図御大が描きたいのはもっと深い恐怖なのです。


当然中身は大人のいずみになってしまったので、以降のさくらの表情は背筋が凍りつくほど大人びています。

小学校高学年ぐらいでしたら女の子の方が大人びているのはよくあることですが、中身がいずみのさくらは妖艶といったほうがいいかもしれません。背徳感がびしびし伝わってたまりません。

担任の谷川先生に抱きつくさくらちゃん

『洗礼』の魅力の1つはこうした巧みな心理描写です。

直接的でない恐怖表現といってもいいかもしれません。

入れ替わり後のさくら(いずみ)は子供らしい無邪気な表情をすることがないのです。いや、厳密にはすることはあるのですが、中身が入れ替わっているという事実を知っている読者から見ると、子供の表情に見えないんですね。

何気ないしぐさや表情にも、そのむこうにある異常性が見てとれることで一向に話に飽きが来ません。


左 入れ替わり前の自然な恐怖の表情 
右 入れ替わり後はある大事なシーンまで大きく表情が崩れない


さて、学校に通いだしたさくら(いずみ)は、娘の担任である谷川先生を見初めて先生と結ばれようと決意しますが、独身と偽っていた先生には妻と赤ん坊がいることがわかります。

しかし、さすがに自分の娘を美へのイケニエにしようとしただけあって、さくら(いずみ)はそんなことではへこたれませんでした。

大人の悪知恵と実行力で居候という立場で先生の家にもぐりこむと、先生の奥さんを追い出そうと昼ドラも真っ青の嫌がらせを行います。『真珠婦人』のたわしコロッケとか目じゃありません。


その後はサイコホラーのような様相が強くなっていき・・・・・・

さくら(いずみ)の様子が変わったので怪しみだした同級生を生き埋めにしようとしたり、

いずみの消息をおってきたルポライターを轢死にみせかけて始末しようとしたり、

可憐な少女の姿で次々と恐ろしい企みを実行していきます。


そしてついには谷川先生の奥さんになりかわろうと、再び悪魔の計画を実行しようとするのですが・・・・・

その結末に関しては是非皆様で確認してください。

この話の結末はただ文章にするだけでは台無しなんです。

解説は一読後に読んでいただき、youtubeにある楳図先生の『洗礼』についてのインタビューを聞いていただき、(削除されました)そのあとでこの作品をどうかもう一度始めから終わりまで読み返していただきたい。

読み返すことで物語はまったく違う様相になり、子供のころではわからない・額にしわができるようになってからでないとわからない恐怖が、読み返すたびに見つかるはずなんです。


楳図作品の素晴らしさは時代が変わっても全く作品の魅力がほころびないことにありますが、


親と子の心理を克明に描き出した『洗礼』の本当の恐怖は、

作品を読むものが誰かの子供でありいずれ誰かの親となる限り永遠に続いていくに違いありません。
http://blog.livedoor.jp/yamadi99/archives/24186675.html

『洗礼』とは、1974年に楳図かずおによって週刊少女コミックで連載された、夢見る少女達に精神的ブラクラを与えるべく制作されたホラー風ギャグ漫画である。


長きにわたり自身の美貌から第一線で活躍してきた大女優、若草いずみの顔に子役時代からの厚化粧や撮影所の強いライトの影響で顔に醜い痣が出来てしまう。

いつまでも若くなりたいと願ったいずみは、主治医である村上先生の助言に従い(後述)、企てを成就させるために女の子をつくり、唐突に引退する。

そして10年程たった後、娘のさくらを乗っ取って小学生の若い体を手に入れたいずみは、10歳以上離れた妻子持ちの担任教師を手に入れるべく、ただものではない手管を駆使して奪い取ろうとするのだが……。


ツッコミどころ

麻酔なしで脳手術を行いたい時 →ツボ押し用の針で代用する

ゴキブリは食わせるもの

普通の女の子はムカデを見ても嫌がらない

ルポライターの行為は問われない


小学生としての教師誘惑法
→ 相手が入浴している途中、裸で入って媚を売る
→ 意識のはっきりしていない相手を早く布団に寝かせた後、自分もその布団で寝る。起きた後は相手が忍んで来たと言い張る


尾行されている時の対処法
→ コンクリート壁に矢印を書いて追跡者を廃倉庫へ誘導し閉じ込めた後、工事のブルドーザーに轢かせる
→ 後ろから追跡者の首に針を刺し、眠らせた後に線路の上に寝かせる
気絶したら3週間以上飲まず食わずでいられる


登場人物

・若草いずみ(本名:上原松子)
小さい頃から大女優として活躍してきたためか、幼い頃から先輩女優に対し

「わたしはあの人みたいにぶさいくじゃないわ」

と言ってのける、唯我独尊が人の皮をかぶって出来たような女性。

小学生は人の数に入っていない。手術によってさくらの体を手に入れた(ことになっている)後は、権謀術数の限りを尽くしてさくらの担任である谷川を手に入れようとする。


・上原さくら
いずみの娘。
良い子であるが、さくらとしての登場は少ないまま意識を母に乗っ取られる。

・谷川正彦
さくら達の担任。
教え子に好かれあげくに惚れられてしまった、ある意味羨ましい人。
さくら(いずみ)の求愛行動が激しいため、受け入れた振りをしながら妻とは離婚せず状況改善を模索した。

・谷川和代(旧姓:森本)
谷川先生の奥さん。
貢という子供あり。
さくら(いずみ)によってゴキブリを食べさせられたり、息子を放り投げられたり、カミソリで指を傷つけられたり、首をつられそうになったりと様々な嫌がらせを受け、発狂しそうになるものの、最終的に妻の座を守ることに成功した。

・中島
さくらの同級生かつ犠牲者その1。
野球はやらない。探偵マニアであり、さくら(いずみ)の秘密を暴き出そうとするが気づかれてしまい、ブルドーザーで轢き殺されそうになる。
命は助かるものの、髪が白髪になって放心状態となる。


・良子
さくらの親友。
ちびまるこちゃんにおける玉ちゃん的存在。
さくら(いずみ)に振り回され続けるものの、最終的にさくらの正気化に貢献する。

・波多あきみ
犠牲者その2。
若草いずみを調べているルポライター。
いずみのことを調査する過程でさくら(いずみ)の謎に気づき、それを解明しかけるも、さくら(いずみ)によって間接的に殺される。

・村上先生
若草いずみの主治医だったが終盤で本人は既に亡くなっており、いずみのスタンドになっていたことが判明する。さくらが正気化すると同時に砂となって崩壊した。

補足

『洗礼』の文庫版第1巻あとがきで、手塚眞は2巻以降の展開を書いており、そのためアマゾンレビューでは手塚のネタばらし行為に批判が寄せられているが、これは楳図の神がかったホラー描写に惑わされること無く、本質であるギャグ要素を楽しめるようにする為の手塚と小学館による配慮である。
http://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E6%B4%97%E7%A4%BC_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)


19. 2016年4月15日 12:32:33 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2395]

洗礼 - ストーリーを教えてもらうスレ まとめ Wiki

若草いずみ。

幼い頃からその美しさでスターとして生きてきた大女優。

美しさは彼女の誇りだが、同時に美しさをなくすことを恐れ、その事で熱を出すほどであった。

その度に主治医に慰められ、恋もせず一筋に生きてきたが、そんなある日、その美しい顔にシミやシワが……!

それを隠すためにした化粧のせいでますます酷くなってゆく。

仕事を終えた後、いずみ はばあやを追い払ったマンションでたった一人で泣き苦しんでいた。

…その夜、数年ぶりに電話で主治医を呼ぶいずみ。

主治医がどのように、どんな言葉でいずみを慰めたのかは誰にもわからない。
だがその後、いずみは事あるごとに「自分の子供が欲しい」と言うようになった。

そしてある夜、誰とも知らぬハンサムな男と一緒のところを目撃され話題となった。

やがていずみは病院で彼女によく似た可愛い女の子を産む。

父親はどこの誰なのかも知らない、自分はただ可愛い子供が欲しかったのだと言う。

そしてある日、突然あっさりと芸能界を引退、ばあやがマンションを訪れると もぬけの殻で、いずみは娘と共に行方をくらましてしまった―――。

数年後。

ある町はずれにとても仲のよい母娘が住んでいた。

顔に大きな痣のあるでっぷりとした母と、とても可愛らしい小学生のさくら。

母は生まれた時から痣のせいで誰にも相手にされず、ずうっと世間から隠れて生きてきた。

だから一度も結婚ができなかったのだが、どうしても子供が欲しかったから誰とも知らない人との間にさくらを産むしかなかったと言う。

だから娘のさくらには美人に育って欲しい。それが母の生きがいだった。

ある日、さくらが額に小さな傷をこさえて帰ってくる。

バレーの練習でクラスメイトの良子さんの手がぶつかったのだと言う。

「これくらい別になんともないわ」

「傷を!!良子さんが私の可愛いさくらの顔に傷を!!」

ものすごい形相で家を飛び出してゆく母。
良子の家に行くと、出てきた良子を何度も何度も殴りつけた。

良子の母と追いかけてきたさくらが必死に止めると、母はやっと正気に戻った。
自分のした事に気付き、良子と良子の母に平謝りする母。
とぼとぼと帰宅するさくらと母。

「お母さんはいつもそうよ。私があんまり大切すぎてこんな風になるのよ」

私は普通でいいのよ、と言うさくら。

が、母は自分の顔を見せ、お前だけはこんなにしたくない、お前は私の望みのすべてだと言う。

突然やってきた大型トラックから さくらをかばい、撥ねられてしまう母。

「さくらが車に撥ねられるっ!!わたしのさくらがっ!!あーっ!!」

病院でさくらの名を呼びうなされる母。
飛び起きた母は さくらを見て「無事だったんだね」と抱きしめるのだった。


「上原さくらさんの作文『わたしのやさしいおかあさん』が文部大臣賞を受賞しました」

さくらの担任の男の先生が、みんなの前で報告する。

さくらの誕生日には必ず帽子を買ってあげる母。
そして母もその帽子を被り、「お前もずいぶん大きくなったね」というくだりが
深い親子のつながりを感じさせる、と。

「おかあさんと2人テレビに出てもらいたいということです」

良子と仲良く帰宅するさくら。先日の母の失礼を心から詫びる。
良子は全然気にしていなかった。さくらちゃんがよっぽど可愛いのねと逆に感心している。

良子はまださくらの家に遊びに行った事がない。母が他人と話をするのが好きじゃないからだ。

「でもいつか遊びに来てね良子さん」

帰宅してさっそくテレビに出ることを報告するさくら。

顔の痣に手をやり、「おかあさんは出ないわ!」と叫んでしまう。

「おかあさんがダメなら私一人でもいいんだって」

「お断りしなさいっ!!テレビなんか絶対に出てはダメよ!いいわねっ!!」

必死に止める母だった。


――その夜。ふと目を覚ましたさくらは、隣のベッドで寝ているはずの母がいないことに気付く。

玄関の戸が開いている。

そこからこっそり覗くと、母が昼間作ったダンゴを皿にのせて地面に置き、玄関でそれを見つめていた。やがて野良犬がそれを食べに来ると、いきなり犬を捕まえる母。

犬は母の手に噛み付くが、ぐったりとしてしまう。「眠り薬が効いてきた」
腕から血を流したまま、犬を引きずって2階へ行く母。

「2階の先生のところへいくのだわ!」

母の子供の頃からの主治医である先生は、ずっと2階に閉じこもって研究をしているらしい。

さくらは一度も会ったことがないその主治医の存在を不気味に感じていた。

2階から聞こえる犬の悲鳴に、恐ろしくなってベッドに潜り込む。
が、天井から さくらの布団に血が落ちてきた!

「ギャッ」悲鳴をあげて気絶してしまう…。


翌朝、目を覚ましたさくらは真っ先に布団の血の跡を確認する。

が、どこにもそんな跡はない。

「目が覚めたかい ずいぶんよく眠ったねえ」

穏やかな顔で母が挨拶をする。 肩に置かれた右手には包帯が巻かれている。

「おかあさん、その手は…」

「ちょっと手入れをしていて怪我したのよ。
お母さんの身体なんかどうだっていいの、お前さえ健康なら」

これからお祝いをすると言う。お母さんのためのお祝いを。

「今までよくないお母さんだったわね。すぐカッとなったり良子さんをぶったりして…
でももうあんなことしなくても済むようになるの。心から優しい人になれるのよ。


――先生の実験が成功したの」

キッチンには豪華な料理。「もうすぐ先生もおいでになるわ」

2階から迫ってくる不気味な足音に耐えきれず、学校へ行くと飛び出してしまった。

図画のカバンを忘れたことに気付き、引き返すさくら。

自分の部屋にカバンを取りに行くと、カレンダーに印がついていた。

「おかあさんがつけたんだわ。15日っていえばもうすぐだわ」

1階では母が先生に何やら話しかけている声がする。

思いきって2階の部屋を確かめてみよう、とこっそり忍び込むことにした。


……部屋には、一面に猫や犬、サルや蛇などの動物が血まみれのバラバラで散乱していた。

脳をくりぬかれている夕べの野良犬。思わず後ずさった足に当たるサルの頭。

「ヒイッ」とっさに飛びついた布がめくれ、山と積まれた犬の首は、すべてに脳がない。

転がってくる首の山に慄き手を伸ばした先にテーブルのような物がある。

よく見ると、それは人の形にくりぬかれた拘束台だった。

「私にちょうどぴったりだわ」

隣にはふたまわりは大きい人の形にくりぬかれた台が……。

「もしやこれは私の……そしてあっちのは……ゲエッ」

恐怖に顔を歪め、嘔吐するさくら。

研究室の電話が鳴る。ベルの音にせかされるように受話器を取ってしまう。

「先生、さっきのお話ですけど…予定の日まではとても待てません。
さくらの頭の中へ私の脳を移しかえても大丈夫です!!
さくらの顔に傷ひとつつけずに育て上げたのも何もかも私のものになると思えば……
そのためにさくらを産んだのよ!!」

「そのためにわたしを………産んだ」

「さくら!!」

受話器を取り落とすさくら。
実験室の二つの台、手術道具……たまらずさくらは飛び出した!

切れた電話に2階へと走る母と、階段を挟んで鉢合わせる……。

「さくら!!」

「お………おかあさん」

涙ぐみながらすがるように母の元へ飛びつくさくら。

「ふん!!」

「あっ!!」

そのさくらの腕を思いきりつかみあげた!

「今のはすべて本当のことだよ そのためにお前を産んだのだよ!!」

絶叫し、気を失うさくら。

「ホッホッホッホッホッ……」

母の高笑いが屋敷に響く…。


自室のベッドでうなされるさくら。目が覚めると、母が自分の額に手をやっていた!!

「おやさくらお前熱があるねえ。勝手に2階にあがるからだよ」

学校へは風邪で休むと連絡しておいた、麻酔の注射をして眠ってしまえば終わりだからね、

頭の手術をする時に着る服ももうすぐできあがるよ、と縫いかけの手術着を見せる母。

「おかあさんは気が変になったのねっ!!」

「何もかも昔からの計画通りよ。あなたはそのために産んだのよ。

悪いけどあなたには人生なんてないのよ。わかった?」

真面目に、笑顔で答える母。「おかあさん!!」泣き叫ぶさくら。

逃げるといけないから、と身体を紐で結わえられていた。
紐がきつくて痣ができたら大変、と気を遣う。

嬉しそうに身体のサイズを測ってゆく。

「毎年まだかまだかと思いながら測ったのよ」

「今まで帽子を買ってあげてその後おかあさんが被ってみて
お前の頭が大きくなったかどうか調べたものよ」

でももう芝居はごめんだわ、お前に知られてスッキリしたと話し出す母。

「2階にあった美しい女の写真を見なかったかい?
あれはおかあさんの若い頃の写真なのだよ。

若い頃から痣があって醜かったというのは嘘よ!
お前には信用できないだろうから見せてあげるわ」

歌いながら部屋を出てゆく母。必死に紐を噛み切って玄関に通じるドアを開けた!


「やっぱり逃げるつもりだったんだねさくら 外で立って待ってたんだよ」

バラの華やかな模様の膨らんだ袖のワンピースをピチピチに着こなし、
ごつい輪郭に痣の目立つ顔にはけばけばしい化粧、

似合わぬかつらにリボンをつけた おぞましい姿の母が、同じ格好をした若草いずみのパネル写真と共に立っていた。

「これがかつてのおかあさんなのだよ。似てるだろう そら そら」

さくらの目の前に自分とパネルとを見せつける母。

「よして〜〜っ!!」

「信じないのだね!!おかあさんがおかしくなったと思っているのね!
無理もないわすっかり太って醜くなってしまったんだもの」

パネルを割り、足で踏みつける母。

「でもまもなくこんな過去とはさよならできるのよ。
人生をやり直すの。お前のこの身体で」

わめいても外へは聞こえない、この家を買う時にちゃんと調べて買ったのだと言う。

さくらをベッドに連れて行き、今度はもっと丁寧に紐で結わえ、麻酔薬を注射する。

動けないさくらの前で、歌いながら姿見の前で踊る母。
かつらを外し、鏡にうつる自分の顔に別れを告げる母。

「今度は誠実な男の人と結婚して幸せな女の一生を送るわ」

ピンポーン。見舞いに来た良子がさくらの家のインターホンを鳴らす。

ちょうど遺産相続の件でやってきた男と共に、母はさくらの部屋へと招き入れる。

良子に「声をかけないでくださいね」と釘を刺し、その場で遺産相続の話を進める母。

自分の名義になっている財産をすべてさくらのものに書きかえて欲しいと言う。

近々さくらを置いて外国へ行く、そのわけはこの顔を見ればお分かりいただけるでしょう…。

さくらが目を開け、何か言っているようだ。注射をしそのまま眠らせる母。

良子に「よくなったらすぐに行くから、その時はよろしくね」と言い、良子を帰らせる。

帰り道、良子はちょっと不思議がる。

「まるでおばさんが学校に来るような変な言い方ねえ。
それにさくらちゃんの唇の動きが助けてって言ってるみたいだったけど…
でも熱があるから苦しくてそれで助けてって言ってんだわ……」


2階で先生が歩き回る音がする。手術を承知してくれたのだそうだ。

さくらはもう3日も何も食べていない。美しい顔がやつれたと嘆く母。
無理やり食べさせるが、さくらは吐き出してしまう。

「脳を入れかえるってどういうことなの 脳を入れかえたらどうなるの」

さくらを安心させるために優しく説明する母。

「お前はちっとも変わりゃしないのだよ。このままの美しい姿でまた学校に通うんだよ。
この身体で……そしておかあさんの身体はいらなくなって捨てるの…。

だっておかあさんの脳みそがお前のこの頭の中に入るんだもの。
でもお前の脳みそは捨ててしまうのよ」


「いや〜〜〜っ!!」

手術着を着せるために紐を解くと、すぐに逃げようとした。
が、少しも食べていないし結わえられてて体が痺れてロクに動けない。

研究室へ連れて行かれる途中、思わすつかんだドアのノブがとれ、2本の鋭いとげがむき出しになった。

さくらはそれを自分の顔につきたてると脅して外へ逃げ出した!
が、結局連れ戻されてしまう。

ぐったりとしたさくらは運ばれながらも家の敷地で大きな石をこっそり拾う……。

研究室の拘束台に乗せられ、手術のために髪の毛を剃られてしまう。

再び逃げようと抵抗するさくらは、はずみで母を石で殴りつけてしまう。
倒れたまま動かぬ母。

「いかん!!すぐはじめなくては」

先生の声が遠くで聞こえる…。

いつの間にか意識を失っていたさくらが気がつくと、母と共に拘束台に乗せられていた。

先生が菜箸のように長く太い針をたくさん持って立っていた。

「この針を身体中のツボにつき立てて麻酔をする。これが私の方法なのだ」

「私から先にやってください。さくらの身体に針が突き刺さるところはとても見ていられないから」

太い針が母の身体のあちこちに突き立てられてゆく。
ブスッと音を立て、たらりと血が流れる。

「平気だわ 若く美しくなれるんだもの…」

母は笑みさえ浮かべているが、さくらは恐怖に打ち震えている…。

目を見開いたまま、意識を失う母。

頭皮をめくられ、剥き出しになった頭蓋骨に穴があけられる。

円を書くようにいくつもあけられた穴同士を糸ノコでガリガリと削り、頭蓋骨を丸く切り取った。

脳を剥き出しにされた母を放置し、さくらの手術が開始される。

何本も刺される麻酔針。ところが恐怖のせいか、さくらの意識は残ったままだ。

「いいかげんに意識をなくした方がいい。
頭の骨に穴をあけるところまで自分で味わうことになる」

頭皮にメスが入る。ガリガリと嫌な音がする。
めくった頭皮を針で固定し、ドリルのような物でいくつも穴をあけられる。
そして糸ノコでガリッガリッと骨を削られ脳を出される…。

そのひとつひとつを味わうさくら。

ペシャッ。床に落とされるさくらの脳。
母の脳を取り出し、さくらの頭に入れる。

神経をひとつひとつ結束させるという、難しい手術がはじまった……。

………一週間後、「さくら」が目を覚まし、よろよろと起き上がる。

近くの台に乗せられたコップの水を一気に飲み干し、再びぐったりと横になる。

「もう大丈夫だ。それでは私は行くよ。
どうか悔いのない人生を送ってくれ。影で祈っているよ」

先生が去ってゆく。カツン、カツンと遠ざかる足音を、さくらはただ聞いていた…。

置いてあったサンドイッチをむさぼり食い、やっと一息つくさくら。

視界に入った鏡に飛びつき、自分の姿に笑みを浮かべる。
後頭部には大きな傷跡が残ったが、そんなものはどうにでもなる。

鏡に映し出される、床に放置されたさくらの脳みそ。
それをブチュッと踏み潰し、笑う「さくら」。

「これでもうさくらはこの世のどこにもいないのよ!!
ハハハ…ホホホホホ…
もうこんな醜い身体を毎日見ながら暮らさなくてもすむのよ!」

拘束台に横たわる母の顔に、ペッと唾を吐きかける……。


――その夜。さくらは母の身体を引きずって庭に出る。

事前に掘られていた大穴に母を入れ埋めてしまうが、見ていた野良猫をスコップで殴り殺す。

「どうかみんな私を邪魔しないでおくれっ!!
私はこれから普通の人生を送りたいのだから」

映写機に映し出されるかつてのさくら。
テープに録音されたさくらのおしゃべり。
それを見て癖やしゃべり方を記憶する「さくら」。

学校のことや友だちの名前なども調べてはいたが、自分が知らずに他のみんなが知っている「さくら」の記憶や行動まではわからない。

「特に良子さんには気をつけなくちゃ。私の知らない約束や秘密があるかもしれない」

翌朝、かつらを被りさくらの服を着て家を出るさくら。町の人は普通に歩いている。

「誰も感づかないわ。そうよ感づくはずがないわ」

「あれはさくらちゃんだわ。病気がよくなったのだわ」

学校へ向かう良子は前の方を歩くさくらに気付き、驚かそうとこっそり近寄る。

「変だわ。歩き方や後姿が何となく違うみたい…。
でもさくらちゃんならこの次の花屋さんの前で必ず立ち止まるわ」

しかし花屋を素通りしてゆく。追い越して何気なく振り返る。やはりさくらだ。

「後ろから見たら別の人かと思っちゃったわ。きっと病気をしたせいだったのね。
さあ早く学校に行きましょう!みんな大喜びするわよ」

手をとって走り出そうとする良子をさくらが止める。

「私まだ走ることができないの。まだ熱がすっかり戻ってないの。
だから時々変なことがあるかもしれないけど気にしないでちょうだい」

「ええ。私気になんかしないわ」

ゆっくり歩き出す2人。

「でも何だかさくらちゃんのしゃべり方ったらお母さんそっくりねえ」

さくらの眉がピクリと動く……。

「学校に着いたわ」

見当違いの下駄箱をあけるさくら。「こっちよ」と良子が教える。

「ちょっとお休みしてる間にカンが狂っちゃったみたい」

「さくらちゃーん!病気がよくなったのねー」

廊下にいた女子たちが我先にと走り寄る。それをかばって良子が言う。

「だめよ乱暴しちゃ。さくらちゃんはまだすっかりよくなってないのよ」

「まさか自分の席まで忘れてるなんてことないでしょうね」

笑いながら冗談を言う女子。

「あの、私ちょっと先生に挨拶してくるわ」

だから私の机においといてくれない?とカバンを良子に渡して職員室へと向かうさくら。

職員室に入ると、担任の谷川先生はすぐに気付いてくれた。

「さくらじゃないかっ!学校に出てこれるようになったか!」

「せ 先生!!」

ひしと抱き合う先生とさくら。一見感動的な光景だが、さくらの目は見定めるように光り、 先生の背中に回された手はしっかりつかんで離さない……。

お母さんはどうした、との問いに「ヨーロッパへ行きました」と手紙を渡すさくら。

さくらをくれぐれもよろしくと書いてある。どうしてさくらを残してまで、と不思議がる先生。

「お母さんは醜い自分の姿を気にしなくてもすむところへ行きたいといつも言っていました」

「さくらはお母さんをそんなに醜いと思うかね?」

「それでは先生は醜くなかったとお思いですか 
顔のこんなところに大きな痣があったのですよ
それに太っていてシワだらけで!!

年よりもうんと老けて見えるんです!!
きっと先生は人ごとだからそんなことを平気でおっしゃるのです!!」


熱弁するさくら。いつの間にか泣いていた。

「もしいくら若くてもそんな女が先生のお嫁さんになりたいと言ったら先生は断るでしょう!!そうでしょう!!」

慌てて慰める先生。

「日曜に先生の家でお祝いのパーティーをやろう」

「は はい………」

パッと笑顔になる。

「さあ、教室に戻りなさい」

教室に戻ったさくらは自分のカバンの置かれた座席に座る。途端にまわりが笑い出した。

「さくらちゃんたらやっぱり自分の席を忘れているんだわ」

隣の席の女子が笑う。

「そこは私の席なの。わざとさくらちゃんのカバンを置いといたのよ……」

みんなが笑ってる。他愛のない子供の悪戯だ。

「ひどいじゃないのっ!!」

だがさくらは真剣に怒り出した。

「ごめんなさい、そんなに怒るとは思わなかったの。みんながやれって言うから……
あなたの席はこっちよ、すぐに変わるわ」

自分の座っていた席を空ける女子。

「あら フフフ」コロッと笑顔になるさくら。

「あーあ、ずいぶんお休みしているうちに私ってぼけちゃったのね。
早くもとに戻らなくっちゃ」

みんなと一緒に微笑むが、目が笑っていない…。


「さあみんな勉強をはじめよう。それではまずさくらにやってもらおうかな」

社会科の第4章の勉強するテーマ、前に習ったことだから教科書を見てはだめだと言う。

「さくらのことだからちゃんと覚えているはずだ」

「ウウ、ウウウッ!ちょっと頭が……じっとしていればすぐによくなります、大丈夫です」

机に突っ伏するさくら。先生は質問を他の人に答えてもらうことにする。
隣の女子が手を上げた。

「中島か……よし、言ってみろ」

正しく答えた中島が逆に質問を返す。

「先生はいつお嫁さんをもらうんですか?」

むせて真っ赤になる先生。冷やかされてますます赤面する。笑う生徒たち。

「私大きくなったら先生のお嫁さんになろうかしら」

みんなの笑い声の中、突っ伏したままのさくらの目がぎろりと光る……。
放課後、先生にまとわりつく女生徒たち。

「先生は私たちのクラスの女子で誰が好きなの?
言わなくても知ってるわ!
中島さんでしょ、………それから最後に上原さくらさんよ。
女の子って敏感なんだから」

そんな先生と女生徒たちを、さくらは遠くで見つめていた。

「あなたは誰にもあげないわ、私だけのものよ!
そして私の女としての幸せをはじめるのよ。これが私の第2の目的よ!!」

そこへ良子がやってくる。

「島くんが帰り道で待ってるって」

「島くん……?」

中島が今日はにわとり小屋の掃除当番の日だとさくらを引き止める。

「にわとりのピコはさくらちゃんにしか馴れないんだから」

掃除に行くさくらを追いかけようとした良子を中島が引き止める。

「さくらちゃん少し変だと思わない?さくらちゃんじゃないみたいな感じよ」

後をつけて様子を見ると言う中島を追って良子も走り出した…。

にわとり小屋に入るさくらに、にわとりが飛び掛ってきた!
さくらの顔や手を傷だらけにするにわとり。カッとして思わずひねり潰してしまう。

小屋を出た傷だらけのさくらを見て、どうしたのと驚く中島と良子。
震える手で顔に手をやるさくら。
心配する良子をよそに、1人で帰ると歩いてゆく…。

1人で歩く帰り道、突然男子生徒が声をかけてきた。

「ぼくだよ。今朝廊下ですれ違ったのに知らない顔してるんだから。
声をかけようとしたけど、クラスの奴がいたから冷やかされるだろ…」

「なんですって?」

「きみ病気だったからずいぶん心配してたんだ……
でも僕のこと きみのお母さんも知らないだろ?」

そうか、彼が「島くん」で、「さくら」はこの少年と……。

「ホホホホホ」高笑いするさくら。

「あんたなんかもうなんとも思ってやしないわ!
子供なんて相手にしないわ。私の欲しいのは大人の愛よ」

呆然とする島くんを置いて、さくらは去ってゆく。

「何としても先生を私のものにしてみせるわ。あの人は前から私の理想の人だった!!
あの人は独身だし、今の私ならあの人をものにするのは簡単だわ」

若く美しい女性の身体を手に入れ、暴走するさくら。

「あの人のあたたかい胸は私に幸せを与えてくれるわ!
私もあの人に心から仕えてきっときっといい奥さんになるわ!」

日曜においでと言われたけどとても待てやしない、今夜行ってみよう。
あの人の大好きなのり巻きを持って先生の家へと向かう。

「あの家だわ。きっと1人で本でも読んでいるわ」

開いていた窓からこっそり様子を見ると………

「あなた、お食事の用意ができましたわ」

赤ん坊を抱いた女性が、先生を「あなた」と呼んでいる!

「和代、今度の日曜に上原の退院祝いパーティーをやろうと思うんだ。
その日は実家に行っててくれないか?みんなは俺を独身だと思ってるんだ」

あきれた和代が真実を言えばいいと言うが、どんなデマが広がるかわからない、
ウチのクラスにはすごく口の悪い女の子がいるんだと先生は必死に頼む。

じゃあせめて料理の下ごしらえだけはしておきますと実家に帰ることを承諾する和代。

2人の笑い声を背に、さくらはある決意を秘めた顔で去ってゆく……。

翌日、さくらの家に良子が迎えに来た。

日曜のパーティーのメンバーに良子や島くんも加わっていると言う。
話ながらさくらの腕をとる。さくらはそれを振り払った。

「さくらちゃんのことお母さんに話したら家へ来たらどうかしらって」

「いいのよ気を遣ってくれなくても」

「昨日島くんとてもがっかりしていたわ、なにかあったの?」

「なんでもないわ」

今日も授業が始まる。憲法の話になる。

「女子は16歳になると結婚してもよいことに……」

「フフフ……」中島が笑う。ギクリとする先生。先生は彼女に悩まされているようだ。

「先生は何歳でしょうかー」

「そんなくだらないことを大きい声で聞くな!」

「だって日本の法律によると先生はあと7年は結婚できないことになってるわ」

「えっ!?な……なぜ……」

「あらにぶいのねえ……だってあと7年経たなきゃ私16歳にならないじゃない」

こんなやり取りはいつものことらしく、みんな大笑い。

放課後、当番の良子はさくらを先に帰す。

そこに話しかけてくる中島。彼女はさくらを怪しんでいるようだ。

「今日の書き取りのさくらちゃんの字、大人びた書き方だったわ。
これには絶対秘密があるのよ。私絶対突き止めてみせるわ。」

日曜日。今日はパーティーの日だ。

放置して腐らせた残飯を小瓶につめて持参するさくら。

先生の家はとても手入れが行き届いていた。きれいに飾り付けもされている。
食事の用意もできてるとの言葉に、大喜びでキッチンへ行く生徒たち。

鍋にはスープ、冷蔵庫にはアイスクリーム。

隙を見てさくらは小瓶の中身を鍋に入れる…。

「さくらの病気全快、おめでとう!それではスープで乾杯といこう!」

「先生がこんな美味しそうなスープを作ることができるなんて夢にも思わなかったわ。
一刻も早く私が先生のお嫁さんにならなくちゃ…このままじゃ妻になってもすることがなくなっちゃう」

中島は今日も相変わらずだ。

「スープで乾杯!」


みんなでスープを飲むが、中島だけは飲まない。

「実はあたしケーキの方が目当てなんだ」

「おいおい、そんな食い意地の張った嫁さんはもらわないぞ!」

「まあ……ということは先生ったら私を………」

真っ赤になって照れる中島。

「おいおい、そんな意味で言ったんじゃないぞ、変な中島…」

大笑いするみんなの中、1人静かに座ってるさくら。

「おや、どうして さくらだけ笑わないのだね」

「なんでもないの、ちょっとつまらないことを考えていたから」

思わせぶりなことを言う。

中島がみんなと一緒に聞きだした。

「じゃ言うわ。もしかしてほんとは先生に奥さんがいるんじゃないかしら。
もしそうなら中島さんは先生の奥さんにはなれないわね」

「まあっ、なんてことを言うの」

「ふふふただの空想よ。だからちゃんともしかしてって言ったでしょ。
もしかして先生には奥さんやお子さんがいてそれで今日のパーティーのために
どこかに行ってもらったりしてたら……」

「まあ!さくらちゃんったら失礼ねえ。そんなバカなことがあるわけないわよねえ先生」

「うっうん……さ、さあレコードでもかけよう」

楽しい音楽で盛り上がるみんな。


島の様子が何だかおかしい。

「なんだかお腹が変なんです……」

「そういえば私も……良子さんはなんともない?」

他の女子も苦しそうだ。

「ええ……ほんとは私もさっきから我慢していたの………」

「変ね私はなんともないわよ」

ケーキをぱくつきながら平然としている中島。

「お腹が痛い!」「あーっ苦しいっ!!」

一斉にテーブルに突っ伏し苦しむ生徒たち。
先生と中島が慌てて介抱するが、先生も腹痛に襲われた!

「中島、病院へ電話してくれっ!
それから女房の和代に電話して帰るように言ってくれ……」

「えっ!?女房 それじゃ………」

動揺しながらも病院と和代に電話する中島。
医者はすぐ来てくれたが、和代は近所のお宮に行っているとのことだった。
生徒たちの家族が子供を連れて帰りに来た。女房の作ったスープが悪かったようだと謝る先生。

大半の生徒が帰ったあと、和代はやっと帰ってきた。
良子の母がさくらも一緒に連れて帰ろうかと言うが、先生は自分の責任だからとそのままにしておく。

和代に

「俺のことはいいから さくらの面倒を見ろ、お前のスープにあたったんだ」

と怒る。

寝ているさくらの元に、赤ちゃんを抱いたままやってくる和代。

「大丈夫ですか…?」

大袈裟に苦しむさくらに驚き、赤ちゃんを放り出してさくらの背を撫でる和代。

「先生!先生!」

必死に手を伸ばし苦しむさくら。

「あなた!」

やってきた先生が背中を撫でてやると、やっと静まった。

あなたは休んでてくださいと止める和代。

さくらは「ここにいて、私怖いっ」と引き止める。

先生はさくらの隣に布団を敷いてもらい、さくらに手を握られて横になった。
泣いてる赤ちゃんを放ったまま和代は悩む。

「なぜこんなことになったのかしら……私が疑われているような様子だったわ!」

「私はわかっているわ。先生の奥さんがそんなことをしたんじゃないって…ちゃんと知っているんです」

弱々しく答えるさくら。先生はさくらにお礼を言う。

「なぜ中島さんだけスープを飲まなかったのかしら……私、眠くなったわ………」

和代は生徒の家に見舞いに行き、帰宅する。
2人とも落ち着いたのか、ぐっすり眠っていた――。


翌朝。先生は学校へ行くと言う。さくらはまだ具合が悪いようだ。
和代は治るまで家で預かるのかと不満そうだ。

「さくらは誰も身寄りがないんだ、ちゃんと治るまではな」

「私スープを作る時ちゃんと確かめました」

泣く和代をなだめる先生。
先生もまだ具合はよくない。中島の他はみんな休むそうだ。
が、自分まで休むわけにはいかない、みんなの家にも様子を見に行かねばと無理して出かけた。

学校では、中島が昨日の騒動をみんなにしゃべっていた。

「先生に奥さんがいたのよ!赤ちゃんまでいるんだから!!

夕べ先生の奥さんが訪ねてきたのよそれでなんて言ったと思う?

私がスープに何か入れたみたいな言い方をするのよ!
ウチのお父さんもお母さんももうカンカンよ!」

「もしかして奥さんがわざとやったんじゃない?嫉妬して」

先生が来たので話はいったん中断された……。

夕方、帰宅した先生は和代を責める。

「お前が変なことを言うから生徒たちの様子が変だ、お前がやったって噂が広まってしまった」

さくらは「具合が悪い」と何も食べないでいたと言う。
医者にはもう大丈夫と言われているのだが…。

「先生、今夜はついていてくれなくてもいいわ」「どうして?」

「だって奥さんに悪いもの。先生の奥さんって優しくて本当にいい人ね。
私先生の奥さんが大好きよ。私ずっと先生のおうちにいられたらどんなにいいかしら。
でもよくなったらすぐに出て行くわ」

2人の話を、和代は障子越しに聞いていた……。

翌日。「ハアハア」と苦しそうにしているさくら。
おかゆを持って和代がやってきた。

「いいの。まだ具合が悪いの」

先生はまだ学校にいる。他の人たちももう登校しているそうだ。

「気分がよくなったら一口でも食べてちょうだい」

とおかゆを置いて、 息子の貢が寝ているうちにとマーケットへと出かけて行く。

買い物かごを手に急いで戻る。ドアを開けるとガスの臭いが充満していた!

「貢!!」

買い物かごを放り出して家中走り出すが、階段を踏み外して落ちてしまう。

よろけながら子供部屋に行くが、貢はいない。

ガスの苦しさに耐えられなくなり、外に出ると、そこに貢を抱っこしたさくらがいた。

「赤ちゃんは私が助けました。ガスの元栓もちゃんとしめておきました」

安心して倒れる和代。手と足をくじいてしまって動けない…。

「私、いろんなことを考えていてそれで元栓をしめ忘れたのだわ…」

「私がお掃除やらお洗濯やら赤ちゃんの世話やらなんでもするわ。いいでしょう?
だって奥さんが動けないのですもの、それくらいするの当たり前だわ。
今まですっかりお世話になったんだもの、恩返ししなくちゃ」

「さ さくら………」

「いいでしょ。もう決めたっと。奥さんがよくなるまでそうするわ。
ああよかった。私これで少しの間ここにいられるわ!ねっ貢ちゃん!!」

赤ちゃんを抱っこし、返事を待たずに決定する さくらだった。

翌朝。先生がキッチンに行くと、もう朝食ができていた。

「私お料理は得意なの」「ほう、これはうまい……」

先生を先に学校へ行かせ、奥さんに食事を持ってゆくさくら。

「奥さんのお食事はここへ置いておきます。私は学校に行ってきます」

ベッドの上で小さい土鍋のふたを開ける。

中にはゴキブリだらけのおかゆが入っていた………!

「ギャーーーーーッ」

慌ててふたを閉め、「誰か!!」と叫ぶ和代。そこにさくらが入ってくる…。

包帯の巻かれた手を思いきりつかみ、「横になっていなくちゃ」と押さえつける。
貢はビックリして泣き始めた。

「私のこしらえたおかゆをどうして食べないの。食べさせてあげるわ」

口をあけないとこぼして火傷する、あけないと怪我したところをひねるわよと脅し、ゴキブリがゆをすくったスプーンを口に持ってゆく。

強引に口に入れられ、背中を押されて飲み込んでしまう。

必死に抵抗しておかゆを床に落とすが、自分もベッドから落ちてしまった。

「ふん!ずっとそうやっているといいわ。」

泣いてる貢をよしよしと抱っこする。

「貢ちゃん、あなたのママは今日からこの私よ。先生によく似ていてなんて可愛いのかしら」

「よしてっ!!」

泣き止むのよ、と大きく放り投げて高い高いをする。

「やめて!!」

「おっと」

受け止めそこなって落としそうになる姿を見て、和代は気絶してしまう……。

高らかに笑いながら学校へ行くさくら。
みんなにずっと先生のうちにいることを報告する。

「それに先生の奥さんが怪我して動けないから代わりに私が色々してあげなくては」

「怪我!!いったいどうしたの?」「なんでもないの」

「奥さんが怪我して動けないって言ったじゃないの」「あら私そんなこと言ったかしら」

「言ったわよ、なぜ動けないほどの怪我をしたのよ」

「じゃあ言うわ……ガスの元栓をしめ忘れたらしいのよ」

「まあっ危ない それで奥さんはどこにいたの?」「買い物に行ってて家にはいなかったわ」

「まあ無責任ねえ、家には誰もいなかったの?」

「私がまだ具合が悪くて寝ていたわ……それに2階には赤ちゃんがいたの」

「まあっ!!もしかしたら奥さんはさくらちゃんと赤ちゃんをガス中毒にさせるつもりだったんじゃないの?先生との仲が上手くいってなかったのよ!」

奥さんを責める女生徒たちを必死に止めるさくら。

「みんなそんな風に言わないで、お願い!!先生の奥さんはとってもいい人なのよ。
先生とも仲がいいし私にも優しいわ。奥さんは他のことには目もくれず赤ちゃんを助けようと駆けていってそれで階段から落ちて怪我をしたの」

「それじゃさくらちゃんはどうでもよかったのね」「い いえ そ そんな……」

「そうに決まっているわ、それで誰が赤ちゃんとさくらちゃんを助けたの?」

「私が助けたの。気付いたらガスが充満していて……でも必死に元栓をしめて
赤ちゃんを抱いて外に出たわ。外へ出たら力尽きてしまって………」

「まあ酷い………先生もよく我慢できるわねえ………」

そっと顔を背けるさくらをよそに悪口に花を咲かせる女生徒たち。
さくらはこっそり舌を出した……。


先生が家に帰ると、さくらが晩御飯の用意もできていると出迎えた。

「おや まるで主婦のようだ」

玄関脇に荷物が置いてある。さくらの布団と洋服で、後から机やイスも届くそうだ。

「あの……奥さんがさっきから先生の帰りを待っておられます」

さくらとともに和代の部屋に行くと、和代は半狂乱でさくらを追い出せと叫んだ。

「私にゴキブリを食べさせたのよ!それに貢を放りあげたりしたのよ」

きょとんとする先生の後ろから腕にしがみついたさくらが顔を出した。

「よしてっ、うちの人に触らないでっあなたそいつを追い出してっ」

「いったいどうしたというんだっ!!」

嬉しそうに笑うさくら。

「あっ笑ったわ!!」

先生が振り向くが、さくらは硬い表情のままだ。

「今笑ったのよほんとよ!!」

「私にゴキブリ入りのおかゆを食べさせたのよ、ほらおかゆのこぼれた跡が!!
それに貢をバスケットボールみたいに放り投げたのよほんとよ!」

ワッと泣き出すさくら。

「私……赤ちゃんをあやしただけですそんなことしません。
それにゴキブリだなんてあんまりです」

「嘘よっあなたでたらめよ信じては駄目よ!
あなたっあの子は悪魔よっ!!すぐに追い出してっ今に殺されるわっ」

「あんまりですっ」

1階に駆け下り、キッチンで泣くさくら。

「和代は少し頭が混乱しているんだ」

「私……やっぱり先生のお家にいてはいけないんだわ」

出てゆこうとするさくらを必死に止める。そこに運送屋がやってきた。

「こっちへ運んでください、ここをさくらの部屋にしよう」

「先生!あ ありがとう」


運送屋が荷物を置いて帰っていった。さくらは先生に着替えるように言う。
肌着もちゃんと取り替えるように言うが、先生は脱衣所でそのままズボンだけ履き替えようとする。
そこへさくらが入ってきた!

「だめよ そのパンツを脱いでちょうだい」

パンツに手をかけるさくら。そこへ和代が乱入してきた!

「なぜこの子がこんなところにいるの、よく恥ずかしくないものね……」

「さくらはまだ4年生だっまだ子どもだっ」

「ごめんなさい私洗濯をしようとしてそれでそれで」

さくらを突き飛ばして制止する和代に、先生は手を上げる。
悲鳴をあげて自分の部屋に逃げ込むさくら。

追おうとする和代をみっともないと怒り、2階に連れてゆく。

その声を聞きながら、さくらは歌って踊る……。

「あの子は悪魔だ、大人のような口のききかたをする」

と主張する和代。だが先生は信じない。

「もういいわほっといてっあなたは向こうへ行ってっ」

「そうか俺も疲れたから書斎へ行く、書斎で寝る」

そして夜。先生の書斎にさくらが訪れる。

「お勉強を教えて欲しいの」

2人で楽しそうに勉強するさくらと先生。

「いやだっ先生のおひげくすぐったい!くすぐったいわ!!ハハハハ」

楽しそうな笑い声が和代の寝ているベッドにまで響きわたる。和代は悔し泣きをした……。

こっそりと起き出して1階に降り、電話をかけようと受話器をとる和代。

ダイヤル(昔懐かし黒電話)を回すが、間にカッターの刃が仕込まれていて右指を切ってしまう。

「あの子だわ!」

刃を取り除き、ダイヤルを回す。

実家の母に明日来てもらう約束を取り付け、受話器を置く。
そこへいきなり電話のベルが!
降りてきた先生と鉢合わせて焦る和代。

「おトイレにきたのよ」

学校の教頭から、生徒が警察に保護されているからすぐ来て欲しいとのこと。
行かないでと和代は止める。

電話のダイヤルの刃のことを言うが、「早く薬をつけるんだ」と取り合ってくれない。先生は行ってしまった。

和代の包帯の巻かれた足を思いきり蹴るさくら。痛みにうずくまる和代を無視して

「用心が悪いから」とノブに紐を結わえつけてまで戸締りをし、「おやすみなさい」と行ってしまった。

「手を怪我してほどけないのを知っていてわざとやったのね!!」

2階で貢の泣き声がする。

「またなにか酷いことをっ……」

慌てて2階に這って行くと、貢がベビーベッドで泣いていた。

布団を剥ぐと、脳をくりぬかれた猫の死体を紐で身体に結わえられていた!

紐を歯で噛み切り、死体を投げ捨て貢を抱きしめる。

「なんて酷いことを!!」

突然明かりが消える。目の前にさくらのシルエット。
しかし頭に獣のような耳がついている。

「いったい何が目的なのよ!私のうちに入り込んできて」

暗闇に目が慣れてきた。脳をくりぬかれた犬の首をかぶったさくらだった。

「ギャーーーッ」火がついたように貢が泣き喚く。

「貢がひきつけを起こしてしまう、やめてっ!!」


逃げる和代の行き先に立ちふさがり、「そっちへ行くのよ」と誘導してゆく。

窓を開け、ベランダに出る。…と、首にロープがかかった。輪になっている…。

「そのまま手すりの外へぶら下がるのよ。みんなはきっとノイローゼで自殺したと思うわ」

不自由な手で必死にロープを首から外すが、あまりのショックに気絶してしまう。

「ふん。倒れても自分の子どもだけはしっかり抱いているわ」

和代を室内に引きずり込む。

「あんたには別に怨みはないけど一緒に住んでるうちに憎しみでどうしようもなくなってくるわ!
睡眠薬を飲ませておけば朝まで何にも知らずにぐっすりよ」

口にコップで流し込み、背中を叩いて無理やり飲ませた。


――深夜、先生が帰ってきた。さくらが貢をあやしながら出迎える。

「貢ちゃんが泣いてどうしても眠らないからあやしているの。留守中変わりはなかったわ」

和代は眠っていると言う。きっと疲れたのだろう。
さくらにも寝るように言い、寝室に行くと、和代はいびきをかいて眠っていた…。


――翌朝。先生が起きると家中ピカピカになっていた。靴も磨かれきれいになっている。

「今日はゴミの日だから台所のゴミを出しておかなくちゃ」

バケツを持って外に行こうとするさくらを止める和代。

「その中に猫の死骸と犬の頭が入っているのよ!こっそり捨てる気なのね!」

バケツを奪い取ろうとする和代に悲鳴をあげてていこうするさくら。

「なによわざと悲鳴なんかあげたりして。夕べはあんなに恐ろしいことをしたくせに」

もみ合ってるうちにさくらが倒れ、バケツの中をぶちまけてしまう。

「ない!!ないわっ!!だだましたのねっ!!」

先生に他のゴミの中を探すように訴える和代。夕べのことも話すが先生は取り合わない。

「夕べはぐうぐういびきをかいて寝ていたくせに、それに朝は朝でいつまで寝ているんだっ」

「あなた!!そそれは違いますっ」

和代を責める先生をさくらが止め、一緒に学校へ行ってしまう。
和代はゴミの散乱した廊下で泣き続ける…。

先生と別れ、教室に入るさくら。

「さくらちゃんがきたわよ」

中島が女生徒たちと何やらたくらんでいる。

「あれがほんとのさくらちゃんならビックリするはずよ。
だってこの中にはさくらちゃんの大嫌いな物が生きたままではさんであるんだもの」

さくらに1冊の絵本を差し出す中島。

「前に読みたいって言ってたでしょ」

「ありがとう。私この本読みたかったの」

みんなの前で席につき、絵本を開く。

「あっ!!キャーーーッ!!」

大きなムカデが1匹はさまっているのを見て、さくらは本を投げ出して廊下へ駆け出した!
逃げるムカデを瓶に詰める中島。

「さくらちゃんの驚く様子見た?」

「廊下で震えているわよ、やっぱりあれはさくらちゃんよ、思い過ごしよ」

「ますます変だわ。私でたらめ言ったんだもの。この本さくらちゃんはとっくに図書室で読んでたの私知ってるのに、「これ読みたかったの」だって……」

「それなら読んだの忘れちゃったのよ、私たちしょっちゅうだもんねえ!」

大笑いする女生徒たち。さくらは廊下で「いけないいけない」と舌を出す……。

放課後。ムカデの瓶がないと騒ぐ中島を尻目に下校するさくらと良子。

「中島さんがあんなにいじわるするのは、先生のお家にいるからヤキモチやいてるのよ。
ところでお母さんからは連絡ない?」

「ないわ。お母さんは可哀想な人なの…。今まで普通の人が味わう幸せを知らずに年をとったの。
だからあの人を自由にさせてあげたいの。……それじゃ良子さんここでさよならするわ」

「そうよ。私はただ幸せになりたいだけよ。何としても平凡な女の幸せをつかんでみせるわ!!」

実家の母を招いてさくらの事を話す和代。だが母はなかなか信じてくれない。
そこへさくらが帰ってきた。来客に挨拶をする。
和代は母を廊下へ連れ出す。

「おとなしそうな可愛い女の子じゃないの」

「あれは見かけだけよ」

「様子を見てみないとわからないから明日から来てみるわ」

応接室に戻る二人。さくらはコートかけの近くに立って待っていた。

コートを羽織って車で帰ってゆく母。運転中、コートの中から首筋にムカデが這い出てくる……。

ムカデに驚きハンドルから手を離してしまい、事故を起こしてしまう…。

電話のベルが鳴る。和代より早くさくらが受話器をとった。

「えっ奥さんのお母さんが交通事故で 亡くなられた!!」

「なんですって!?」

「市立病院ですねすぐ行きます」

そのまま電話を切ってしまう。


頭を抑える和代にさくらが話しかけてくる。

「奥さんのお母さんが交通事故で…」

「わかってるわよ今聞いたわっ!!」

家を飛び出してゆく和代。

さくらはピアノを指で一音一音鳴らす。悲しい音色が部屋に響く……。

「おや今のピアノはさくらだったのか。聞いたこともないとても悲しいメロディーだった」

「先生!!」

帰宅した先生にしがみついて泣くさくら。

「どうしてだかわからない…とても悲しいの。先生!私が好き?」

「ああ好きさどうして?」

「私をどこへもやらないでね」

「もちろんさ……」

そこへ和代が血相を変えて飛び込んできた!
二人を無理に引き剥がし、さくらの首を締め上げる。
必死に止める先生。

「お母さんが亡くなっただなんてよくも嘘をついたわねっ」

「先生!!奥さんは私の言うことをなんにも聞かないで飛び出して行ったんです」

「こいつがお母さんまで殺そうとしたのよっ
怪我はたいしたことなかったけど入院しなくてはならなくなったのよっ
みんなこいつのせいよ!」

「俺がいない時にお母さんが来たのか!」

明日から来てもらうことになっていたと聞き、勝手なことをと怒る先生。

「さくらは気にせず部屋に行って勉強しなさい」


深夜。包帯の取れた和代がさくらの部屋に忍び込む。

寝ているさくらの鼻と口に濡れタオルを被せ、窒息死させようとする!
目を覚まし唸るさくら。力を込めるためにさくらの上に覆いかぶさった。

「ギャッ」胸を押さえて布団から離れる和代。布団から何本も突き出ていた針が刺さったのだ。

「ふん、たぶんこんなことだろうと思って待っていたわ」

呼吸を整え、アイロンを和代の前にかざす。

「熱を最高にしてあるのよ。大きな声を出したければ出せばいいわ。
でもそうしたら先生が目を覚ましてやってくるわ。それとも私が悲鳴をあげようかしら…
どっちにしてもこんなところにいるあなたが責められるだけね」

裸になるのよ、と頭にアイロンを押し付ける。

「ジュッ」髪の毛が焦げる音がする。

熱さによろける和代に馬乗りになり、ネグリジェを裾からまくり上げた!

茶巾絞りのように首から上をネグリジェに覆われて動けない和代に机を乗せ、重しにイスを乗せた。

「あなたの一番大事なところを焼きつぶしてやる!」

和代のショーツに手をかけ、思い切り引き下ろす。

そして馬乗りになったさくらが足を開き、股間にアイロンを押し当てた!

「ウ〜〜〜〜ン」

「ホホ……残念ねえ……コードがはずれていたわ。
どう?まだここにいる気?
今度は私が悲鳴をあげてみましょうか?」

裸の胸を揉み、顔を寄せる。おぞましさに和代がうめく。

「先生がこんなところを見たらどうなるかしらねえ。先生は今に私のものになるわ。
私は先生を愛しているわ。先生も私を愛しているのよ」

部屋を出て行く和代。さくらは笑いながら布団に入りなおした――。

早朝。和代は話があると先生をキッチンに呼び出した。

「あなた!あの子と私のどちらを愛しているのですかっ!!」

その様子をさくらは陰で見ている………。

「なんというくだらないことを!こんな話がさくらに聞こえたらどうするんだっ!
さくらの純真な心をキズつけ汚すだけだっ」

「あの子が純真ですって?」笑い飛ばす和代。

「私が愛しているのは残念ながらお前だっ!!」

「あなた……」

愛だのなんだのと薄汚い言葉を言わせてくれたなと怒る先生。

「愛という言葉を利用してお題目にしているだけじゃないかっ!!」

「私を愛してくれているのはわかったわ。それじゃあの子をどう思っているの?」

「もちろん愛している。教え子として……」

「教え子として……」さくらは涙を必死に堪えた。

「こんなことをしゃべらせたお前とは口もききたくない!」部屋を出る先生。

「さくら!今のを聞いてしまったのか」「いいえ私今起きてきたの…」

「人事みたいな言い方しないでよ!何もかも自分が仕掛けたくせに!!
何が純真よこいつは子どもじゃないわ!そうよ子どもの皮を被ったおとなのバケモノよ!」

「おはようございまーす」

勝手口の方から声がする。出てみるとずんぐりとした男が立っていた。

「まん丸商店です。今日はお入用の物は?美味しい干物が入っていますよ」

朝早くからと思ったが通りかかったものだから…と照れる御用聞き。和代に気があるらしい。
和代はそれに気付かない。

「夕方2人分だけ届けてちょうだい」

「たしか女の子がいるのじゃ……」

「いないわよ、私と主人と2人よ。貢がいるけどまだ小さいから」

それじゃあ、とドアを閉める和代。御用聞きはその閉まったドアをいつまでも見つめていた――。


「また私のことで何かあったのね」

先生と登校中ぽつりとつぶやくさくら。

「勉強が終わったら一緒に遊ぼう」と先生は誘う。

放課後、喫茶店で飲み物を飲む。

「こんなところへ入るの初めて……」

デパートで可愛いブローチを買ってもらって涙を流して喜ぶさくら。

「今日は楽しみに来たのだぞ!」

「これは嬉し涙です。こんな幸せは初めてだから……」

「映画を見よう」と映画館の入口に立つ2人。

「あっ!!」

看板に書かれた「若草いずみ」の文字。いずみの似顔絵。

「永遠の美女と言われたかつての大女優のリバイバル映画だ」

家中の鏡を叩き割り、どうか私に美しさを返してくださいと泣くいずみ。
泣きながら主治医を電話で呼び出すいずみ。

でっぷりとした身体にいずみの服を着て、さくらに「これがお母さんなのだよ」とパネルを見せつける…。

手術から逃げるさくらを追いかけ、「もう離さない」とつかまえる。

逃げようとしたさくらを追うが石で頭を殴られ、意識を失う……。

やがて、恐ろしい手術の風景。取り出された脳がさくらの頭の中に入れられる……。

次々浮かぶ光景に、強張った顔で頭をおさえるさくら。

「私この映画見たくないんです」

「色々まわって疲れたんだな。公園へ行って休もう」

公園につく。さくらは「良子さんに電話をかけたい」と10円を借り、近くの電話ボックスへ入った。

「もしもしまん丸商店さん、あーらあなたね。私よ谷川よ今朝はどうもありがとう。
例の干物のことだけど今すぐ持ってきて欲しいの」

声色を変え、御用聞きと話し出すさくら。

「今朝あなたに会った時の私の目の合図がわかった?
主人は今日は遅くなるって言ってたから大丈夫よ。

私前からあなたのこと好きだったのあなたに滅茶苦茶にされたいの。
お勝手口の鍵は壊してあるわ。待っているわ」

電話を済ませ、先生の元に戻るさくら。

「ずいぶん楽しそうに話していたな」

「ええ良子さんったら冗談言うんだもの」

さっそく遊具で遊びだすさくら。照れる先生も強引に滑り台を滑らせる。


「次はブランコよ」2人楽しく遊びはじめる――。

干物を手に、勝手口から中に入って和代のいる2階へ行く御用聞き。
物音に出てきた和代にいきなり抱きついてきた!

「奥さん、好きだ」「よ よしてっ、ああっ」

いきなりスカートの中に手が入ってくる……。


無邪気に笑いながらブランコをこぐさくら。先生も一緒になって笑っている…。

「やめてっ!!」

腕に噛み付き、慌てて部屋に逃げ込む和代。追ってくる御用聞きの指がドアにはさまった!

血が流れるのも構わず思いきりノブを引っ張る。

「早く出て行ってちょうだい、警察を呼ぶわよ」

「自分で電話して呼んだくせにっ」「電話なんかしないわっ!!」

「間違いなくあんたの声だったっそれに今朝は目で合図をしたじゃないかっ!!」

「そんなものしないわっ!!早く早く出て行ってっ」

御用聞きはやっと諦めて出て行った。貢を抱き怯える和代。

「あなた!早く帰って来て!!」

ブランコに乗ったまま、夕焼けを眺める2人。

「これでとうとう昼は終わったのね。今日はとても楽しかったわ」

帰宅すると、誰もいない。

「貢を連れて病院の母のところで泊まります」

とメモがあった。

迎えに行ったらどうかと言うさくらにクセになるからと無視する先生。

「今日はご馳走にしよう、おかずを買ってくる」

「私はご飯の支度をするわ」

先生が出かけ、家にはさくら1人だけ。

「もうすぐもうすぐこの家は私のものになるのよ。先生と私とここで暮らすのよ」

ラララとキッチンで踊りだす…。


先生がたくさん食材を買って帰って来た。先にお風呂に入るよう言われて浴室に行く。

身体を洗い出すと、そこに全裸のさくらが入って来た!

「先生 背中を流すわ」

広い背中をごしごしこする。

背中にぴったり顔を寄せる。

「こうしていると先生じゃないみたい……まるでお父さんみたい」

泡だらけになりながら身体中を洗うさくら。

「あっよせっくすぐったい」

ハハハと笑いながら立ち上がる先生。

「先生って意外と毛深いのね……」

「えっ……」

さくらが下半身をまじまじと見ていた。

「あらどうして隠すのへんねえ。平気よ」

ちょっと見るだけだからと隠す手を外す。

「こんな風になってたの……私もう先生のこと誰よりも一番よく知っているのね」

ふふふと喜ぶさくら。

「ハアハア」(←原文ママ)汗をかき動揺する先生。

「今度は先生がさくらの背中を流してあげる……よし、これで終わりだ」

お風呂から出て、食事を食べる2人。

「何だか私先生の奥さんになったみたい」

「ごちそうさま。……先生はちょっと外へ出てくるよ」

「奥さんのところへ行くのね」

ばつ悪そうにうなずく先生に「奥さんを連れて帰ってあげてね」と見送るさくら。

「ここの奥さんだけどねえ……だんなさんの留守の間に他の男の人と浮気してるってもっぱらの噂よ。………あら、ご主人よ」

近所の主婦が噂話をしている。先生は横目で睨み、病院へ向かった――。

「奥さんは帰らないわ」

自分の部屋をきれいに飾りつけ」、布団のカバーを取り替えて部屋中に香水をふりまく。
ネグリジェを着て先生の帰りを待つさくら。

……酔っ払った先生が帰って来た。玄関先で倒れ込んでいる。

「お酒を飲んできたのね。和代さんとケンカをして、バーでお酒を飲んで……
たぶんこうなるんじゃないかと思っていたわ」

妖しく微笑むさくら。

「あなた………しっかりしてちょうだい、ここで寝ちゃ駄目よ」

「さくらか………」

先生を自分の部屋へと連れてゆく。

「おっ!!いいにおいが……」

布団の上に倒れこんで眠る先生の服を脱がし、口付ける。

「好きよ 愛しているわ……やっとつかまえたわ もう私のものよ!」

ズボンの中に手を伸ばすさくら。


森の中。さくらがチョウチョをつかまえる。

寝返りを打った先生がさくらを抱きしめる。

「抱いて!もっと強く!もう離さないわ!」


素裸のさくらが森の中を自由に駆け回る。
咲いている一輪の花を、幸せそうにその胸に抱きしめる――


翌朝。目覚めた先生は腕の中で寝ているさくらに気付く。

さくらの胸に乗っている手を慌てて離す。
ネグリジェを着ているが、その裾は乱れている…。

「さくら!!」ゆっくりと目覚めるさくら。

「おはよう」

「先生は夕べお酒を飲んで酔っ払っていたんだ、夕べのことはよくわからないんだ」

「それじゃ先生が私の寝ているところへ入って来たことも……」


「さくら……もしやお前に何かしたのでは………」

しばしの間。

「いいの。私は平気よ」

「そ それじゃ…やっぱり」

ガクガクと震え、うずくまって苦悩する先生。

「そんなに気にすることないわ。だって私先生が好きだもの、先生も私が好きでしょ。
それに私今はまだ子どもだけどすぐにおとなになるわ。そうしたら何も気にすることなくなるわ」

軽く慰め、さあ朝ごはんを作らなくちゃ、と立ち上がった……。

楽しそうに朝食をテーブルに置くさくら。

「いっぱい食べなきゃ駄目よ」

先生はテーブルに着いてはいるが、暗い顔でうつむいている。

「今日は奥さんが帰るわね。奥さんと別れるのよ。そして私たちで暮らしましょう」

先生の肩に手を置き、耳元で話しかけるさくら。

「私きっといい奥さんになるわ。今の奥さんよりもっともっといい奥さんになるわ。
そうだわ、奥さんの物を全部私の部屋に入れて私は2階で先生と一緒に生活するのよ」

2階へ行き、和代の服や持ち物を自分の部屋に放り込む。

「あなたも手伝ってちょうだい」

「さ さくら………」

「いいわやっぱり私が1人でやるわ」

あとは自分の物を2階へ運べばいいだけの状態で、二人は学校へと向かった――。

「いいわねきっと奥さんと別れるのよ」

別れ際にそういって、さっさと教室へ走って行くさくら。

集まっている中島たちに「また何か私の噂をしていたの」と声をかける。

焦る中島に軽く笑い、「もう恐れる物はなくなったの」と言い、席に着いた。

「やっぱり変よ…なんか急におとなびたみたいで薄気味悪いわ」

ほんとのさくらは殺されて、誰かがさくらになりすましてるのだと言う中島。

それを聞いた良子はたしなめるが、中島は昔さくらが押した手のスタンプを持ってきて、こっそり手に入れてきたアルミ粉で今の指紋をとって調べようと言う…。

わざとらしくさくらの前に三角定規を落とし、それを拾わせることで指紋の採取に成功した。
休み時間に集まって調べるが、指紋はすべて一致した。

「指紋が同じだからって疑いが晴れたわけじゃないわよ!
何者かがとりついているということだってあるわ!」

必死に主張するが、他の女子たちはあきれて去ってゆく。

「私さくらちゃんを疑って悪いことしたわ」

他の女子に慰められながら良子も去る。

「見てるといいわ。絶対に私1人で正体を暴いてあっと言わせてやるから」

放課後、良子や他の女子がさくらを追いかける。

「ごめんなさいさくらちゃん、なんだか仲間はずれみたいにしちゃって」

「いいのよ。私仲間はずれの方がいいの、ほっといて」

スタスタ去ってゆくさくら。

「機嫌を悪くしただけだからすぐに戻るわよ」

泣き出した良子をみんな慰めた。

「ふん!もう元には戻らないわ。誰があんな子どもなんかと……」

先生の家とは違う方向へ行くさくらを、中島が怪しんでつけていた。
時々立ち止まり、壁に矢印を書き込んでいる。

「何のために……?ますます怪しいわ」

見失ってしまったが、矢印が残っていたのであとを辿ることができた。

「だんだん寂しいところに行くわ……地下室の跡だわ」

まわりを砂利の山に囲まれた、建物の残骸。その地下室へと向かうドアに矢印があった。

中に入ってみるが、中には誰もいない。「さくらちゃーん」

突然ドアが閉じられた!

「あけてっ助けてーっ」

必死に叫び、ドアを叩く中島。

外ではさくらがコンクリの塊を置いてドアを開かないようにしていた。
そのまま立ち去り、砂利の山の上から建物を見下ろすさくら。

「トラクターが来たわ」

砂利の山を崩し、建物を埋めてゆく……。

「キャ〜ッ」

「さよなら中島さん。飛んで火にいる夏の虫って…あなたのことね」


「あの女はきっともう帰っているわ…そしてあの人はまだ帰ってないわ」

家から少し離れた電柱の影に立ち、家を見つめているさくらに、
買い物かごを持ったお婆さんが「どうしたの?」と声をかけた。

「なんでもないの。あのドアのところまで何歩で歩けるか考えていたのよ」

子どもってくだらないことするんだねえ、とお婆さんは行ってしまった。
門を開けて玄関まで入る。

「きっと私を待ち伏せているわ…
それとも鍵をかけて家に入れないようにするか……その手は食わないわ」

ノブに手をかける。そこに電流が流れた!

「ギャーッ」

感電し気絶するさくら。

電気コードを手にした和代が、さくらを引きずって家に入れる…。
意識を取り戻して呻くさくらを動けないように羽交い絞めにする。

「ごめんなさい許しておばさん、あたしこれからいい子になるから許してっお願い」

「ふん!そんなか細い声出したってもう騙されないわ!」

テーブルの角にあごを乗せ、首を絞める。

「今日は今までみたいにはいかないわ、今日で私の苦しみは終わりにするわ」

「ふん!この浮気女!自分の夫がいないうちによその男といつも何をしてるのよ。
近所じゃあんたのことをどんな風に噂してるか知ってるのかい」

「お前が何もかも仕組んだのよっ悪魔っ!!悪魔っ!!」

後ろ手に縛り上げ、猿轡をする。両足首も縛って袋に詰める。

和代の部屋に袋を持ってゆく。

「よくも部屋の中をこんなにして……」

押入れに放り投げてふすまを閉めてしまう。

ピンポーン。「うちの人が帰ってきたわ」

慌てて出迎える。

「さくらは」

「あの子はいないわ。もう飽きたから出て行くって言って出て行ったわ」

「どこへ行ったって言うんだっ」

「知らないわ。もうここへは戻らないようだった。これでようやくホッとしたわ」

「変ねえ。女の子なら家へ入るところを見たんだけどね」

先生の後ろから、さっきのお婆さんが顔を出した。

「いえねさっきこの前を通りかかると可愛らしい女の子が立ち止まっていてね、」

先ほどのさくらとのやりとりを説明するお婆さん。

「子どもなんてのはなんてバカバカしいことをするんだろうと思って通り過ぎたんだけど気になって振り返って見ていると…

確かにこのドアのところへ来てそれからしばらくしてギャッていう悲鳴が聞こえたから……

変だなと思ってたらこの人が帰ってきたんで説明したのさ」

「し 知らないわ」

お婆さんはそれだけ言って帰ってゆく。和代を問い詰める先生。

「知らないったら知らないわ さっき勝手口の方から出て行ったわ」

泣き出す和代。嘘をついてると気付いた先生は家中を探し回る。
和代は先回りして、袋詰めのさくらに布団を被せて隠しておいた。

一通り探し回った先生はさくらの家へ探しに走った。
いつの間にかあたりはすっかり暗くなっていた。

「今のうちに早く……そうだわ、電車に轢かれたことにすれば…」

袋ごと貢の乳母車に乗せ、踏切まで転がして走る。
遠くで電車の音がした。

「来た!」

袋からさくらを出し、戒めを解いて線路に横たわらせた。
降りる遮断機をくぐって出ると、そこに先生が立っていた!

「様子がおかしいから隠れてずっと見ていたら……」

踏み切りの中に入り、さくらを助け出す。

危機一髪、電車は通り過ぎていった――。

布団に横になっているさくら。和代は下の部屋でわめいている…。

「明日…気付かれないように上手く病院へ連れて行くのよ。
あの人は正気じゃないのよ…やっとわかったでしょう」

「わかった……そうしよう………」

重々しく先生は頷いた。

「私じゃない!!私じゃない!!
私が悪いのじゃないわっあいつのせいよ、だからよ!」

キッチンのテーブルを何度も叩き、叫ぶ和代。

「あなたっ私は悪くないわ聞いてちょうだい話し合いをすればわかるわ」

やって来た先生に必死に訴えかける。

「何であんなことをしたのか自分でもわからないの あなたっ疑っているのね!」

和代の両肩をつかみ、落ち着かせようとする先生。だが……。

「あなたの目は疑っているわ、私があいつを殺そうとしたって言ってるわ」

話し合えばわかると言われ、「離して」と抵抗するうちに……、

「ヒーッハハハハハ ホホホホホ………」

さくらのいる階段まで和代の笑い声が響く。

「とうとうほんとにおかしくなってしまったのね………
もうあなたはここにはいることができないのね さよなら」

翌朝。散々騒いで放心状態の和代。

「私じゃない 私じゃない」

頭を抱えて呟いている。
タクシーが来たから病院へ行こうと和代を誘う。

「嫌よ!!私病気じゃないわ」

病院のお母さんをお見舞いに行くんだ、貢も置いてきたままじゃないかと説得し、
共にタクシーに乗って病院へと向かう夫婦……。

「私の勝ちね。これでとうとうこの家は私のものだわ!
私の願いがやっとかなったのだわ!こんな生活がしたかった!!」

キッチンで勝ち誇るさくら。床に跪き両手を組み合わせる。

「どうか…どうかもうこれからは誰も邪魔などしないで欲しい!
私はただ普通に……普通に生きたいだけだから」

さくらは泣きながら祈りを捧げる――。

歌いながら学校へ走るさくら。良子に声をかける。
良子はビックリしている。

「こんなこと言っていいかしら……私今までさくらちゃんとお友だちだったけど
今までのうちで今日は一番晴れ晴れとした顔をしているわ」

校内に入ると、女生徒たちが集まってなにやら話していた。

「また私の噂話?」

「ち違うわ……中島さんのことよ」

「「昨日埋立地で埋められてしまったところを見つかったのよ」

「見つかった!?中島さんが助かった!?……よ よかったわね……」

今は家で寝ていると言う。放課後みんなで見舞いに行くことにした。

「どうして今日は谷川先生は学校を休んじゃったのかしら」

「ええ……ちょっと奥さんが……前から具合が悪かったから…」

「あれっそうかなあ、ちっとも具合が悪そうじゃなかったけど…」

「身体のことじゃないのよ。もうその話はやーめよ!中島さんのお家はもうすぐだっけ」

中島の家に行くと、母親は泣き出した。

「会っても無駄だけど」と案内された。
恐怖のために髪の毛が真っ白になった中島が、ベッドに横たわっていた。

目を開いたまま、何を言っても反応しない――。

帰り道、

「どうしてあんなことになってしまったのかしら」

「あの人探偵に凝ってたからまた何か考え付いたのよ」

「きっとまた私の秘密でも探り当てたんじゃない?」

さくらの一言にみんな笑い出す。良子も笑ってしまい、慌てて口を押さえた。

さくらは「ふふ……」と笑い、楽しそうにみんなと別れて帰って行った……。

帰宅するさくら。

「さあ今日はうんとご馳走をこしらえてお祝いするのよ!
あの人と2人きりの生活が始まるんだもの」

てきぱきと準備を進める。

「私今日から心から優しい人になるわ。そうだわ誰よりも一番優しい人になるわ!!
そしてどんな人にも優しくしてあげることができるわ」

先生が帰宅すると、さくらはずっと玄関で待っていたのか飛びついてきた。

「奥さんを病院に入院させた?」

「上手く言いくるめるのに苦労したがね」

医者に診てもらったら潜在的な病気のせいだったと言う。それが突然あのように現れたと。
さくらに乱暴を働いたのもそのせいで、さくらがいなければ貢を乱暴しただろうと……。

和代は元々病気だったと言う言葉に、安心して一瞬意識を失うさくら。

「よかった………」

目を閉じたまま、小さく呟く。

「私のこと好き?愛している?」「好きだよ。愛しているよ」

「これからずっと一緒に暮らせるのね。嬉しい!」

抱きついて喜ぶさくら。

「私じきにおとなになるわ。そして赤ちゃんも産むわ!さあお祝いしなくちゃ」

キッチンへ案内する。テーブルにはきれいなバラや食べ物がたくさん並んでいた。

「これをさくらが しかしこれを作るための費用はいったい」

「お母さんが預金通帳をくれたから。私の名前になってるでしょう。
中身もちゃんと入っているわ。必要なことに使いなさいって」

通帳を見せるさくら。

「300万!!こんなに!」

「私に預けた方が安全なんですって。ちゃんとよく考えて使うわ。
そして必ずあなたに見せるわ、あなたと結婚するまでずっと」

「さくら……」

「私あなたのためにうんときれいになるわ!
あなたに恥ずかしい思いをさせない人になるわ!
そして嘘をつかない素直な優しい人になります!」

「さくら 愛しているよ」「嬉しい!」

見せたいものがあると2階へ行くさくら。ドレスに着替えて階段を下りてくる。
きれいだとの言葉に喜んで駆け寄ろうとするが、足を滑らせて軽く転んでしまう。

「大丈夫よ、夢中だったからつい足がもつれたの」

ぶどう酒で乾杯する2人。先生は口をつけなかったが、さくらは一気に飲み干した。

レコードをかけ、ワルツを踊る。「ラララ」踊りながら口ずさむさくら。

「今何て言ったんだ?」

「あらいやだ何にも言わないわ、ラララって言っただけよ」

真顔になる先生。ちょっと休むと言って席に着き、たばこに火をつける…。

「おやレコードが終わりそうだ」

吸いかけのタバコを置いてレコードをかけなおす先生。
さくらはその間にタバコに火をつけ、ひとふかしして再び踊り始めた…。

「おや?」

席に戻った先生が一つ増えた吸殻を見て不思議そうにさくらを見つめる――。

さくらは酔いしれながら軽やかに踊っていた、つもりだった。
だがその足取りは鈍く、声はまるで年取った女のように聞こえた。

それでもさくらは歌い、踊り続けた……何も気付くことなく……。

「ああ楽しかったわ。疲れたわ……あんまり幸せだと帰って疲れるのね。
どうかこの幸せが永遠に続きますように………」

涙ぐむさくらに、熱いコーヒーを入れてやる。

「あなたがこんなに優しいと何だか怖いわ……」

「さくららしくないぞ。コーヒーでもう一度乾杯をしよう」

コーヒーを飲むさくらのひたいにホクロを見つける先生。

「いいえホクロなんかないわ、さっきちょっとお化粧したから汚れがついたのよ」

洋服を着替える、と2階に上がる。鏡で見てみると、ひたいに黒い点があった!

「こんなところにホクロなんかなかったはずだわ!
いつもあんなに観察してたんだから見落とすはずがない!
たかがホクロくらいどうと言うことないわ」

様子を見に来た先生を「疲れたから1人でぐっすり眠りたい」と部屋から出す…。

考え込みながら眠りにつくさくら。

「美人になんかならなくていい」と言うさくらに自分の痣を見せる母。

あなたはそのために産んだ、あなたには人生などないと言う。

さくらの頭の大きさを測る母。

鏡の中の自分に別れを告げ、高らかに笑う……。

「嫌な夢ばかり見たわ」

今日は日曜だが寝過ごしてしまった。起きてすぐに鏡を見る。

「大きくなっている!!」

ホクロだと思っていた黒い点は、小さな痣のようになっていた。
精神安定剤の瓶をよろよろと拾うさくらの姿が鏡にうつる。

「動作も元のままだわ!!このまま元に戻ってしまうんだわっ!!」

一気に薬を飲みくだす。
先生の元へ走って行き、朝食の準備をしている彼にしがみついた。

「お願い、私を捨てないで!!どんなことがあっても!!」

「何を言ってるんだ捨てるなどと…私が愛しているのはお前だけだよ」

やっと落ち着いたさくらをドライブに誘い出す先生。海の方へ出る。

「これからちょっと病院へ寄ってみようか。和代の入院している病院だ。
離婚の手続きをするために……」

「行きたくない」と言うさくらを「そのほうが決心がつく」と連れ出した―−。

「和代はここの病棟にいるんだ。ここで待っていてくれたまえ」

ある部屋に案内され、座って待つさくら。

窓の外についたオリを見て不快になり、和代の病室を探しに廊下に出た。
受付で聞くとそんな人は入院していないと言う。

「何のために私をこんな病院へ……先生はどこに……」

ある部屋から先生の声がする。
開いたドアから後姿が見えた。

「待たせてあります……お話したようにごく普通の少女なのです…
ただちょっと私の妻が怯えまして」

「感づかれないように診てみましょう」

医者らしい男の声もする。

さくらは慌てて病院を飛び出した!
誰もいない部屋を見て気付かれたかと焦る先生と医者。

先生の車に「先に帰って待っています」とメモを残し、タクシーで和代の実家へ向かう……。

和代がいた。貢を抱いて縁側に座っている。楽しそうに笑っている。

「やっぱり!!私は騙されていたんだ……入院させただなんて嘘をついて…
先生は私を…」

車を飛ばして先生がやってくる。和代にさくらが病院から帰ってしまったと言う。

「まさか感づいたんじゃ…つけられたんじゃないでしょうね」

まさかどこからかここを見ているのでは、と怯える和代。

すぐに帰宅しないといけないが、顔を見たくて寄ったんだと言い、お茶を飲みに家に入ってゆく…。

誰もいない海に出る。岩場に立ち、風に吹かれながら泣き続けるさくら。
やがてある決意を秘めた顔で、その場を立ち去った――。

先生が家に帰ると、さくらは笑顔で出迎えた。

「出し抜けにいなくなるから心配したぞ!」

「ごめんなさい、だって私1人を放っておいてなかなか戻ってきてくれないのですもの。
それにあの病室のどこかに和代さんがいると思ったらじっとしていられなかったわ」

「和代が離婚を承知したのだ」

離婚届を見せる。

これを役所に持ってゆけば和代とはもう他人だと言い明日一緒に行くかと聞く。が、あなた1人で行ってと断った。

「ニセの離婚届なんかこしらえたって私にはすぐわかるわ。
役所へ持って行ってどのようにごまかす手はずがついているのか知らないけど。
私を愛してなんかいないのだわ、そのうち様子をみて私をここから出すつもりよ」

食事後、さくらの母について訊ねる先生。その話はしたくないと拒むさくら。

「お母さんも思い出して欲しくないと思うわ……醜くて年よりもずっと老けていて……
ここに……こ ここにこんな大きな痣があったから……」

震えながら額に手をやる。

「でもきっと今に手紙をくれるわ」

外の空気を吸ってくる、と先生は家を出てゆく。

「どうせ和代さんに電話をかけるつもりだわ。私の様子を知らせるためにね。
でもあなたは誰にも渡さないわ、どんなことをしても!!」

不安になり鏡を見に行く。痣はますます大きくなっていた…!

「キャ〜〜〜ッ!!」床に倒れ、パニックを起こすさくら。

「このままじゃまた元へ戻ってしまう!!何もかも終わりになってしまう!!
せっかく美しい女の子に生まれ変わったというのにまた元に戻ってしまう!!

嫌だ!!私は元の醜い姿に戻りたくない!!」

「せ 先生!!」

1階へ駆け寄り、受話器を手に取る。

「もう一度先生に手術を!!それより他に方法がない!!」

数回のコールで先生は出てくれた。

「私は元に戻ってしまいます、もう間もなくさくらではなくなるでしょう!!
身体にまで脳の影響が出て来るなんて!!こんなバカなことがあるのでしょうかっ!?」

先生が帰ってきた。

「悲鳴が聞こえたようだが」

「さっき階段を踏み外して転んだ時に悲鳴をあげたんだわ。
それから今良子さんに電話をかけていたの。それじゃおやすみなさい」

さっさと部屋に戻ってゆくさくら。


その頃、良子はさくらを心配していた。
お母さんのことで悩みでもあるのかもしれない、いつもお母さんをかばっていた。

人に会うのを嫌がって授業参観に来なかったけど怨んでなんかいなかった。
前は何でも打ち明けてくれたけど…。

「明日は思いきってさくらちゃんに話しかけてみよう!!」

そう決意して布団に入った。

翌朝、さくらが通る道に立って待っていると、後ろからさくらが話しかけてきた。
顔の左半分に包帯を巻いている……。

「ど どうしたのっ!?」

「きっとここで待っていてくれると思っていたわ。良子さんに電話したらもう出かけたって言うから きっと私のこと心配して待ってくれるのだとわかったわ。
だって小さい頃からのお友だちだもの」

路地の奥に連れ出し、誰にもしゃべらないでと約束して、包帯を外す――。

「さくらちゃん ど どうしたというのっ!!」

「一昨日は小さなホクロだったのよ!!」

先生にはとても言えない、だから先生は知らないと言い、良子に助けてと懇願する。
このまま包帯をしていたらみんなに聞かれる。そうしたら先生も確かめようとする。
だから怪我をした事にしたい、みんなの見てる前で自分を突き飛ばして欲しいと頼む。

仲良しのさくらちゃんを突き飛ばすなんてできないと言うが、これは私のためだ、
ただのお芝居だからと説得し、学校の門の近くですることにした。

クラスの女子がやってくる。良子が彼女らに挨拶する。

「あらあれはさくらちゃんだわ」

前の方を歩くさくらに気付いたふりをする。

「そっと近付いて後ろからおどかすわ」

「わっ!!」と軽く突き飛ばす。

が、さくらは大きくよろめき、 近くの工事現場の鉄条網に顔をぶつけてしまう。

「さくらちゃん大丈夫!?」

さくらが振り向く。手で押さえたところからだらだらと血が流れ出る……。

「キャーッ血が!!」「良子さん打ち合わせ通りにするのよ、早くっ」

動揺する良子にてきぱき指示するさくら。

「さくらちゃんごめんなさい、私が突き飛ばしたばかりに怪我を…」

みんなが集まってくる。

「大丈夫よ たいしたことないの」

「近くに病院があったから診てもらいましょう」

さくらを連れてみんなから離れる良子。

ついてゆこうとするみんなを、「遅刻するわ」と先に行くようとさくらは止めた…。


路地裏に行き、良子に包帯を巻いてもらう。

「ほんとに怪我をしてしまったのね、ごめんなさい」

「いいのよ。私の秘密を誰にも言わないでね」

学校へ行く。クラスメイトたちが心配して駆け寄ってきた。

「そんなにたいした怪我じゃないわ、ただちょっと……ホホホ」

笑うさくらの陰で、暗い表情で黙り込む良子。
クラスのみんなが良子をひそひそと批難するが、良子は懸命に堪えた。

「何を言われても平気よ、さくらちゃんのためだもの。
それに私が怪我をさせてしまったのだから……」

授業中、さくらの朗読を聞きながら良子は思う。

このごろのさくらはお母さんそっくりだ、しゃべり方や笑い方、しぐさまでも。
それに同じところに大きな痣まである……。

「誰かがさくらちゃんになりすましているのよ」

中島の言葉が頭に浮かぶ…。

図画の時間、みんなで校庭に写生に出た。さくらと並んで植物をスケッチする。

「さくらちゃんのいつもの描き方とちょっとだけ違うわ」

描いた絵をさくらの分も一緒に提出すると預かった。持って行きながら何気なく見る。

「上原松子!さくらちゃんのお母さんの名前じゃないの!
なぜお母さんの名前なんか」

こっそり消して書き換えようとする良子に、さくらが近寄る。

「名前を書き間違えたのね!いつの間に!」

放課後、

「ぜひあなたに聞いてもらいたいことがある」とさくらの家に良子を招く。

「私の部屋へ………」

さくらの部屋を素通りし、母の部屋へ行く。

「私の部屋よ」

紅茶を入れ、向かい合わせに椅子に座る。

「あなたならきっと私の話を信じてくれると思うわ!信じてくれるわね」

「さくらちゃんのことなら何でも信じるわ」

さくらは、本当のことだと前置きして、身の上話をはじめる――。


今から48年も昔、さくらの母は生まれた。彼女の家はとても貧しかった。

が、ふとしたことで4歳の時に映画監督の目にとまり、たちまちスターとなった。
彼女はたった4歳で父や母を養わなければならなかった。

彼女の出演する映画はすべて大当たりをとった。彼女の芸名は若草いずみ。

いずみはますます美しくなり、いつもどこへ行っても評判の的だった。

そのことは彼女自身もよく知っており、それが自分の美貌にあることもわかっていた。
仕事のない時など1日中鏡を覗き込んでいた。

ある時、とある名作のヒロインの子ども時代の役を演じることになった。

彼女の大人時代を演じるのは当時の有名美人女優だった。

そしてドラマは撮り進められ、いずみの子役の最後の場面が終わろうとしていた。
そばで大人役の女優がメイクを終えて待っていた。

演技にも熱が入り、みんなが固唾を呑んで見守る中、突然いずみが泣き出した!
慌ててカットし、どうしたんだと集まるスタッフ。泣き続けるいずみにわけを聞く。

「私はあの人みたいにぶさいくじゃないわ!!
なのにあの人が私の大人になった時の役だなんて!」

いずみの暴言に唖然とする一同。
謝りなさいと言われるが、「本当のことを言って何が悪い」と泣く。

女優は眉をひそめたものの、さすがおとなである。

「私はなんとも思っていませんから」

自分はあちらに行ってますから撮影を続けてくださいとその場を離れた。

映画は無事撮影を終え、大ヒット。
美しくかれんな彼女の姿に観客はみんな涙を流した。

いずみは日ごとに美しくなっていた。おとなでさえその美貌にたじろいだ。
まして同じ子役同士顔を合わせた時、いずみはまったく相手にしなかった。

彼女はいつでも不動のスターだった。人々は絶えず彼女に熱情と期待を寄せた。

彼女にはいつでも仕事が待っていた。仕事の中で彼女の精神は年齢以上に成熟していった。

彼女の身の回りの世話は母親がしたが、他人の目にはとても親子には見えなかっただろう。

きれいな服を着た美少女と貧しい身なりの女、それはスターとそれに仕える人だった。
娘に養われているという気持ちが母親を後ろめたくさせた。病身の父親でさえそうだった。
父親は片隅でひっそり生き、母親はひたすら娘に仕え、娘が少しでも病気や怪我をした時は狂奔して看病した。


その夜、いずみは熱を出した。

「没落する前はかかりつけの先生が側におられたのに」

お医者様に来てもらおうと出て行く母。
苦しんでいるいずみの元にある男がやって来た。

「安心しなさい、私はかかりつけの医者だよ。
お母さんも後からすぐ帰るからね。……すごい熱だ。どうしたのだね」

誰にも言っちゃいやよといういずみに、医者は必ず秘密は守らなくてはいけないんだと約束した。

「お母さんがこしらえたリボンを破いちゃったの……気に入らなかったのじゃないわ、
お母さんがリボンをつけようとして近付いたからよ。お母さんたら白髪があるのよ。
手のシワだってはっきりと見えたわ。私ちゃんと知ってるわ、誰でも必ず年をとるんですって!!

私お母さんみたいになりたくないの!!だからお母さんをぶったの!!」

思いを吐露するいずみの頭を、先生は優しく撫でる。

「心配しなくてもいいんだよ、そんな時が来たら必ず私があなたを助けてあげる。
何もかも話したら気分が楽になっただろう?さあ心配しないで眠りなさい」

息を切らして帰ってくる母。

「熱が下がっているわ!!ど どうして………」

それからの彼女は母親が近寄るのを嫌った。母は遠くから娘を見守るしかなかった。

美しく成長するいずみ。この美しさを失いたくないと彼女はたびたび熱に倒れた。
誰もその訳を理解することができなかった。

その都度幼い頃からのかかりつけの先生の世話になるしかなかった。

「不思議ね、先生に会っただけで心が落ち着くの」

「それは私があなたがなんにも知らない頃からのかかりつけの医者だからだ…。
私はずっとあなたの側にいます。あなたを愛しているからです」

やがて父も母も死に、成人した彼女は1人となった。
でも悲しくはなかった。美しさをなくすことに比べれば…。


彼女の人気はさらに高まり、永遠の聖美女と呼ばれた。
人々の期待に答えなければならなかった。

次から次へと待っている仕事。厚いドーラン、強すぎるライト…。

そして今若さの最中にあるというのにもう彼女は若さを失いつつあった!

苦悩するいずみ。どんなことをしてももう元には戻らなかった。
それでも彼女は仕事をやめることは許されなかった。

再びドーランで顔を隠し、ライトに照らされ、スターでなければならなかった。

その頃からサングラスをかけるようになり、人を避けるようになった。
休みの日は部屋に閉じこもって誰にも会わなかった。

でもある時、彼女は顔半分がくすんでいるような気がした。光の影かと思いよく確かめてみた。

が、気のせいではないと気付いた時の驚き!先生の慰めだけが彼女の支えだった。
医者はいずみを助けるために研究に励んでいると言う…。

月日と共に痣はくっきりと形を表していた。化粧のしすぎだった………たぶん。
美しい花は少しの間咲き誇り、たちまちしおれて散ってしまう…。

ある日いずみは苦悩のあまり家中の鏡を叩き割り、先生を電話で呼びつける。
やって来た先生がいずみにとある方法を説明した。

「あなたを救う方法はただ1つ、もう一度生まれ変わることです。
それには可愛い女の子を産むことです。その子が大きくなったら脳みそを取り出し
そこへあなたの脳を入れるのです」

思いもよらぬ言葉に驚愕するいずみ。

「どうして私が今もあなたの主治医でいるのかご存知ですか?
このことを成功させたいからです!!
これはあなたの…自分の子どもでなければできないのです」

先生の説得にいずみは耳を傾け始める…。

「これには大きい賭けがあります。
それはあなたが果たして女の子を産むかどうかと言うことです。
もし男の子なら…殺すのです……どうです、やってみますか」

「やります…必ず可愛い女の子を産むわ、そして大切に育てるわ!!
脳の手術のできる日がくるまで」

もうどんなに醜くなっても平気だと安心して先生の胸で泣くいずみ……。


ティーカップをカチャカチャと震わせ、良子が話を中断する。

「ま まさかその子供というのは………さくらちゃんのことじゃ………」

「そうよ」

「ヒイッ」

「でもまだ話は終わってないわ。おしまいまでちゃんと聞くのよ」

ある夜、いずみははじめて人に隠れて外に出た。そして行きずりの男と一緒だった。
……やがて彼女に子どもが産まれた。女の子だった。

彼女の喜びはたとえようもなかった!!念願の女の子だったのだから。
誰も本当の心を知る者はいない……女の子の名前をさくらと名づけた。

ある朝ばあやが訪ねてみると、そこで空き部屋だけを見たことだろう…。

彼女は新しい街へと向かった。もう顔の醜さを隠す必要もなかった。

こうして電車に乗っているのが大女優であることに気づく者など1人もいなかった。
先生も一緒だった。人目にとまらない街はずれの古びた洋館……この家へ。

2階では先生が生体実験をくり返していた。彼女はさくらの成長だけを待った。

灰色の目で見守りながら……さくらは何も知らずに美しい少女に成長していった。
でもさすがに何かを感じたのだろう、さくらは決して2階へは行きたがらなかった…。

彼女はさくらに帽子を買ってやっては頭の大きさを測った。そしてついにその日が来た!!

先生へかけた電話をさくらが聞き、手術を知って逃げ出すさくら。

その手をつかみ高らかに笑う。

「そんな時良子さんあなたが訪ねてきたのよ。あの時さくらは麻酔薬を注射していたのよ」

そしてついに手術をすることになった!!

さくらは信じられないほどの抵抗をした。
石で頭を殴りつける。……でもとうとう手術は行われた。

さくらの脳は取り出し捨てられ、かわりにいずみの脳がさくらの頭の中へ……。

「そうよこの中へ……この中へ入れたのよ」

頭を指差すさくら。

ガチャン、ティーカップを床に取り落とす良子。

「まさか……それじゃあなたは!!」

包帯とかつらを外し、顔の痣と頭の傷跡を見せ付ける。

「これがそのときの手術の跡よ」

椅子から倒れ落ち、ランドセルの中身をばら撒いてしまう。
床に伏したままの良子を椅子に座らせる。

「どうか力になってくれるわね。あなたはさくらのお友だちですもの…
まだ話は終わっていないのよ」

手術が終わって何日か経って、私は目が覚めた。私はよろけながらも起き上がった。

気がつくとさくらの脳みそが落ちていた。私はそれを踏み潰した。

さくらは死んだ……でもさくらの脳みそはとっくに腐っていた。

体力を回復させるために休んだ私は、元の身体を庭の穴に埋め、2階にある動物の死体を始末した。
手術台も床も壊して床にこびりついた血を拭き取った。

そしてみんなかたがついて学校に出かけることとなった。

さくらの癖などについては前から詳しく調べておいたが、一番心配だったのは良子のことだった。
でも優しい良子はちっとも疑わなかった。私はついに新しい人生をやり直すことができるのだ!!

そしてすでに第2の目的を決めていた。谷川先生の奥さんになることだ!!
でも先生には奥さんがいた…。

…その時の驚きと悔しさは逆に決心を強めた。
みんなでパーティーをした時に腐った物を入れたのは私よ!!

こうして奥さんに罪を着せ先生の家に入り込むことに成功した。

先生がいなくなると私は奥さんをあらゆる方法でいたぶった。

ガスの元栓を開いておいたのも私よ。

奥さんはすっかりノイローゼになり先生との仲も悪くなっていった。

私はさりげなく先生を誘惑した。奥さんを病院に入れ、先生と奥さんは離婚することになった。
ついに私は勝ったのだ!!

だが喜びのすぐ後から顔に小さなホクロが。
そして瞬く間に元の痣そっくりに広がってしまった。

「それからの事は良子さん、あなたが1番知ってるはずよ。
私が先生の愛を勝ち取ったと思ったのはただの夢でしかなかったのよ。
先生は今でも奥さんを愛していた、そして2人とも私を疑っている!

私に残された方法はたった1つしかないのよ。それは私が奥さんになることよ!!」

良子に奥さんを上手く騙してここへ連れてくるように説得するさくら。

庭に連れ出し、元の体が埋まっている場所を見せ、家のカギの隠し場所を教える。

「私の秘密は何もかも話したわ。いいわね、手術は明日始めるわ。奥さんを連れてくるのよ」

母の動向を先生に聞かれているので、先手を打つために手紙を書いた。
外国の切手や消印を用意して、母から来たものと見せかけた手紙を作り、良子に先生の家に投函するように手渡す。

「私があの人と一緒にいる時に入れるのよ」


良子に先生が帰宅するまで外で待っているよう命令し、帰宅するさくら。

「良子さん!あなたの性質はよくわかっているわ。このさくらを裏切れないわ。
あなたは友だち思いだから」

キッチンで支度をしながらひとり呟く。

「あなた!……私はこの家から1歩も出ないわ。
あなたが私を愛していないことも知っているわ。
それならそれで結構よ。私はあなたが愛しているあの女になるわ!!
たとえそれから後どんな風になろうと構わない!あなたの女をつかみたい!!」

先生が帰ってきた。

「良子に突き飛ばされたそうだが怪我は大丈夫かい」

「大丈夫よ、お医者さんに見てもらったから」

お茶を入れるさくら。
カタン、外で音がする。

「手紙じゃないかしら。あなた見てきてくださらない?」

母からの手紙を、先生は持って戻ってきた――。

よろよろと帰宅する良子。
心配する母に大丈夫だと言い、横になりながら今日のことを思い出す。

母に呼ばれて夕食を食べる。平気なふりをしていないと母に感づかれる!

自室に戻り、ランドセルの中を整理する。が、お父さんの万年筆がない!

さくらの家に落として来たに違いない。散歩に行くと言って家を出た……。

「この家よ……幽霊屋敷と言うのは。苦しそうなうめき声が聞こえるそうよ」

近所の主婦がさくらの家の側を話しながら通りすぎて行く。

恐怖に震えながら良子は家に忍び込んだ。ところが万年筆は見つからない!

もしやと探しに2階へ行くと、中からくわえタバコの男が出てきた!

フリールポライターだと言うその男は、若草いずみのその後の生活を記事にしようとここを調べ上げてきたと言う。

何かを知っているらしい良子に探りを入れる……。

必死に逃げ帰ってきた良子は、翌朝熱を出してうなされながら目を覚ます。
今日は学校を休みなさいと母に言われるが、ルポライターらしき男が道をたずねに家にやってきたことを知り、学校へ行くと飛び出した!

「ゆうべのことさくらちゃんに知らせなくちゃ!」

泣きながら走る良子。

「いくら脳みそがお母さんでもさくらちゃんに変わりはないわ!!」


その頃、さくらにルポライターが接近してきた。

「夕べ君の家を調べさせてもらったのさ」

動物の毛や血がびっしりついた2階の床のタイルの裏面を見せ付ける。
メスやピンセット、動物の死体もみつけたと言う。

慌てて家へ調べに帰るさくら。ところがそれは男の罠だった。カマをかけたのだ。

メスで刺し殺そうとするさくらの手をひねり上げた拍子に、包帯とかつらの下を見てしまう。

助けに入る良子に

「いずみは果たして本当に外国にいるのかな?」

と言って去って行く…。

登校すると、中島が復帰していた。
今朝変な男が来てさくらのことを色々聞いてきたと言う。

「今までのこと話してしまったわ。でもどうせたいしたことじゃないのでしょう?」

先生のうちに良子と帰ると、先生がお客が来ていると待っていた。

「ばっ……ばあ………」

「お嬢様っ」

1人の老女が飛びついてきた。ばあやだった。

「あの小さかったさくらお嬢ちゃんがあんなに大きくなられて…」

思わず涙を浮かべてしまうさくら。

「お母さんはよその国に行ってるわ、ヨーロッパのどこかよ」

「どうして突然お母様はあなたを連れて行方をお隠しになったのでしょう…。
今でもおきれいなのでしょうね」

本当にお母様そっくりだと喜ぶばあや。

「お母様はおきれいな女優でした」

「やめてっ!!」

さくらはばあやを突き飛ばす。

「私あんたなんか知らないわ。誰に頼まれてやって来たのよ」

「オレさ」

ルポライターの男だ。

「航空会社の知り合いに調べさせたが、この少女の母親は外国には行っていない。
この国の中にいると言うことです。だがこれ以上は私個人の仕事に関わることだから」

「どうして いずみ様は行き先もお知らせにならずに……」

「ばあやさん、あなたは何も知らないだろうがいずみはいまじゃすっかり醜くなって顔に包帯で隠さなきゃならないような痣があるんだ」

「やめてっ!!」叫ぶさくら。

「まさかあなた様のその包帯は………」

「ふん!安っぽちい人情劇にまんまと乗ってしまって、涙なんか出るはずがなかったのに」

いずみの地むき出しで はすっぱに話し出すさくら。

「そこにいる人間のクズのような男に1つだけ教えてやる。
いずみがどこにいるか
お前さんがどんなに探したって絶対にわからないだろうよ。
お前さんがどんな風に思っているかは知らないけどいずみは今もちゃんと生きているのだから」

「これからちょっと東京へ戻ってかかりつけの医者というのを調べてくる」

ばあやから話を聞き、とっくに医者を辞めているらしく住所はわからないが探し出してみせると言う。

去って行く男。ばあやはわけがわからないながらも帰ることにすると言う。

最後に昔の話をして。

「医者の先生についてですけど、1つだけおかしなことがあったのでございますよ……」

いずみがさくらを産む前のこと、いずみが取り乱したように帰宅して、ばあやに帰るように命令した。

ばあやは最近様子のおかしかった いずみが気になってドアのところで立っていた。

中からはいずみの泣く声がする。こっそり中に入ると部屋は真っ暗。

いずみは先生に電話をかけているようだった。気が変になりそうだ、すぐに来て欲しいと言う。

立ち聞きに耐えきれず一端帰宅するが、どうしても気になって眠れない。
夜が明けるのを待たずにいずみのマンションに向かうばあや。

かかりつけの先生に一度会ってみたかったからだ。再びドアの前で中の様子を聞くと、先生と話をしているらしいいずみの声がかすかに聞こえた。

帰るらしい先生の足音も近付いてきたので慌てて先回りして1階で待った。
ところがいくら待っても誰も降りてこない。出入り口はここしかないのに。

「一体先生はどこへ消えてしまったのでしょうか?」

人の出入りが何度かあったが、知らない人は誰も通らない。

いずみの部屋に行くと、晴れ晴れとした表情のいずみが迎えてくれた――。


かかりつけの先生の家に向かうルポライター。

いずみの肉体がこの世に存在せず、脳みそだけが娘の肉体に宿ったという恐ろしい考えが浮かぶ。

「この世に希望と知恵がある限り、人はいつも罪深い………」

編集部に電話を入れる男。記事のスペースをあけといてくれ、とスクープをほのめかす…。
さくらが先回りして、男を麻酔針で刺してきた!倒れて動けない男に口付ける。

「かわいそうだから最後にキスをしてあげるわ。もっとしてあげたいけどやめておくわ。
愛していないから……
私の愛している人はただ1人よ……谷川先生なの……私の夫よ」

顔面を何度も石で殴りつけ、お酒を流し込み、陸橋から線路に突き落とす。

落ちた男の上を電車が過ぎてゆく……。

執念深く追ってきた男は、さくらの目の前でトラックに轢かれて潰れて死んだ――。


男が死んだと良子に報告するさくら。

和代を自分の家へ連れてくるように言う。

「先生と私が一緒のところを見たと言って呼び出すのよ。
あなたが言えばビックリしてやって来るわ。
先生は私がどこかへ連れ出しておくわ」

暗くなった道を、1人帰宅するさくら。

「もうこうして隠してばかりおれないわ…」両手の甲をまじまじ見つめる。

「こんなにシワが…和代になるしかない…たとえまた同じことになったとしても……」

翌日。さくらは先生に別れの挨拶をする。

「私やっぱり1人の方がいいと思ったからです……あなたのこと心から愛しているわ……」

「さくら……私も……」

「何も言わなくていいわ……いつかきっとあなたとめぐり合う日が来るわ」

どういう意味だと聞く先生。さくらは答えず続ける。

「私も母の後を追って旅に出ようと思うのいつか……今日ここを出るわ。
たった1つだけお願いがあるの。
私が出て行ったことを奥さんには黙っていて欲しいの少しの間…
私の机や服なんかもそのままにしておいて欲しいの少しの間」

「いいとも。必ず約束するよ」


ああよかった、せいせいしたわと かつらと包帯を外すさくら。

「これは私の母が私に譲ったものよ。もしまたあなたがこれと同じ物を見たらそれが私よ…」

「わけを聞かせてくれないかね」

「言えないわ。わけなんてないのよ、
誰だって子どもは親に似るしかないのよ。ただそれだけよ」

これから外で一緒に最後の食事をしたいとレストランに連れ出した。

「私にビーフシチューを頼んでくれない?
うんとよく煮込んで欲しいって言ってね。
ちょっと疲れたから薬を買ってくるわ」

レストランを出るさくらは、待たせてあったタクシーで自分の家へ向かう――。

先生のライターを門の側に落としておき、準備を始めた。
良子が和代を連れてきた。

「ほんとにうちの人があの娘と一緒に……?」

「え ええ………」


ライターを見つけ、玄関から中に入る。

「うちの人のシャツが!!」

落ちていたシャツに手を伸ばす和代。仕掛けられていた罠に手を挟まれた!

「キャッ」

和代を拘束台に乗せるさくら。猿轡でしゃべれないようにする。

「良子さんごくろうさん、あなたの演技もすばらしかったわ。
女ってダメね。
いくら愛し合っていても夫が浮気をしていると聞かされるとすぐもしやと思ってしまうのだから…」

戸締りを良子に任せ、先生に電話をかけるさくら。

「先生、用意ができました」

震えながら見守る良子は、恐ろしいことに気づいた!

さくらが受話器を置いた。

「先生はすぐ来られるそうよ、タクシーで」

「今……今誰とお話していたの、本当にその人は来るの?」

「村上先生よ…今来るって話したばかりじゃないの」

怯えながら床を指差す良子。電話のコードが切れていた。

「そんなはずないわ。今先生とちゃんとお話したんだから。
あんたがコードを外したのね、
私が電話をかけ終わってからわざと外したのね、和代を助けるために」

コードで良子の首を絞めるさくら。いい子だからおとなしくしているのよ、と後ろ手に縛る。

呼び鈴が鳴る。

「先生が来られたのだわ」

窓から姿を確認するさくら。

「これから起きることが見えないようにきれを被せてあげるわ」

良子に布を被せ、先生を迎えに行く……。先生と一緒に研究室に入るさくら。
良子と和代を先生に紹介する。和代は目を見開いて震えだした。


「手術の道具はあそこに……なにもかも用意してあるわ。
今度のは最後の賭けだから先生の力を集結してやって欲しいの。
これが最後のお願いになるわ」

布きれから顔を出し、声の方を見る良子。

「さくらちゃん!!誰と話をしているのっ!!」

さくらがゆっくり振り向いた。

「誰って、先生とよ。他には誰もいないでしょう」

「どこに?どこに先生が……」

「ここにいるじゃないの」

隣にいる先生に触れ、教えるさくら。

「嘘よさくらちゃん、他には人など誰もいないのよ!」

『あの少女は気が触れているようです、構わずに……』

「そうね 恐怖のあまりおかしくなったのよ」

「さくらちゃん!!さくらちゃーん!!」

「バカねせっかくきれを被せてあげたのにとったりするから、
これから始まる一部始終を見なくてはならなくなったわ。さあ始めてちょうだい」

先生の指示で麻酔針を取り出すさくら。和代が暴れて逃げようとする。

「先生おさえてちょうだい!!私がやるわっ」

和代の足に針をあてる。先生の指示で思い切り突きたてようとするさくら!

「キャーッやめて!!」力の限り叫ぶ良子。

隠れていた谷川先生が飛び出してさくらを羽交い絞めにした!

「あなたっいつの間にっ!!騙してたのねっ」

針を手に叫ぶさくら。村上先生に救いを求める。

「先生!!先生!!助けてっ!!」

「そんな人はどこにもいない!!
村上主治医は何十年も前に亡くなってもういないのだよ、
きみのお母さんがまだ小さい頃に死んでいるんだよ」

「えっ!?」

『いずみお嬢様信じてはいけません嘘です!!
ほら私はちゃんとここにいます。
そんな男の言うことなど聞いてはいけません!!聞くのをおやめなさい!!』

針を手から離し、床にしゃがみ込むさくら。先生は和代を台から下ろす。

「怖かったわ……でもあなたの言うとおりにしたわ」


良子を助け、さくらを説得し始める先生。

「医者などどこにもいない、よく見るんだ!!」

『聞いてはいけない、耳を閉じるのだ』

「お前はどこにもいない人と電話をしていたんだっ電話線を切っておいたのは私だ、
お前は自分の中のまぼろしと話をしていただけだ、手術なんてなかったんだっ!!

聞いているのかっ!!脳の入れかえなんてなかったんだっ!!」

『聞いてはいけない!!いずみさまっ脳の手術は行われたんだっ!!

その痣とその頭の手術の跡が何よりの証拠だ!!』

微笑むさくら。

「そうよ手術は行われたのよ。この痣がそうよ」

かつらを外し、傷を見せるさくら。

「それにこの手術の跡が何よりの証拠よ」

「人間の脳の移植などできるはずがない!」

「村上先生にはできるのよ」

「それじゃ身体はどこにあるんだっ」

「それは言えないわ……」

良子をひと睨みすると、良子は怯えて震えだした。

『いずみさまもうしゃべるのはやめなさい、聞くのもやめなさい、耳を塞ぐのです。
この人たちはあなたの味方ではないのだから』

耳を塞ぎ、しゃがみ込むさくら。
そんなさくらを囲んで途方にくれる一同。

「わけはわからないがさくらには人に言いたくないわけがあるのだろう。
こうして我々がいる限り余計心を開いてはくれないだろう」

「でも放ってはおけないわ。なんとか方法がないのかしら」

和代が心配そうにさくらを見つめる。

「今のままでは無理だ……どこにもいないはずの医者がさくらに見える限り」

今もこの部屋のどこかに村上医師がいると言う。気味悪がる和代を安心させる先生。

「気味悪がることはない……さくらの頭の中での出来事だから。
さくらがどこへ行こうとそれはついて来るだろう。
それを消し去る方法が見つからないのだ」

すっかり日が暮れてしまった。良子はここに残ってさくらの元にいると言う。

「私ならただの普通の女の子だからさくらちゃんは別になんとも思わないのです。
それよりもさくらちゃんがとても可哀想で……さくらちゃんはとても寂しいんだと思います。
こうしてさくらちゃんが1人でいるんだから、私だって他に誰もいなくても我慢できるはずです」

私の母に説明してください、と先生たちに外に出るように言う。
ショック続きで熱を出した和代を連れて、すぐに戻るからと先生は外に出た。


しゃがみ込んでいるさくらと2人、屋敷に残る良子。

遠くからうめき声が聞こえてきた――。

声の方へ行くと、庭に出た。かつて いずみの身体を埋めた場所から、うめき声と共に手が出ている!

悲鳴をあげて地面に突っ伏し、震える良子。

振り向くと、中からいずみが這い出てきた……!

「キャ〜〜〜ッ!!」

さくらの元へ走り出す。

「お母さんがやって来る!!殺しにやって来るわ!!早く逃げなければ!!」

さくらを引っ張って階段を下りてゆく良子。

「先生!!助けて〜っ!!」

村上医師は、さくらの後ろをついて歩いている…。

げっそり痩せこけた いずみが土からようやく起き上がった。

「さくら……」

家に入る。姿が見えない……。

「さくら〜〜っ」

良子はさくらを引きずり、逃げていた。

そこへメスを手にした いずみが迫ってくる!

「さくらっもう逃がさない!!」

「お母さんだ!!さくらちゃんのお母さんだ!!
そうよお母さんは生きていたんだ!
さくらちゃん、この手をとって聞いてちょうだいっあれはお母さんよ!!
お母さんが生きているということは脳の手術なんてなかったのよ!!」

『そんな言葉など聞いてはいけない!!』

「さくら!!」

迫るいずみ。

「よく聞いて!!手術なんかしなかったのよ、
それはきっと さくらちゃんのただの想像だったのよ!

そうよ!今までのは何もかもただの幻想を見ていただけよ!
だから立って逃げるのよ!」

苦しむさくら。

『想像なんかではない!!今までのはみんな本当のできごとだっ!!』

「さくら〜〜〜っ!!」

すごい形相で いずみが走ってくる!!

「お母さん……お お母さん………」

『信じてはいけない……し 信じ………グワ〜〜ッ』

砂のように崩れ、消えてゆく医師。

目が合うさくらといずみ。

「お母さん………お母さんだっ!!」

メスを持ったいずみに向かって走る!

いずみはメスを取り落とし、さくらを受け止め、抱き合った!

しっかり抱き合って泣く母娘。走ってきた先生に、良子は飛びついて泣き出した。

「あっ!!見ろ!!さくらの頭の手術の跡が消えてゆく!!」

驚き、側に寄る先生と良子。泣いているさくらの顔から痣が消えていた。

「手術が行われたと強く思い込んだから……それであんな物が……できたんだ……」

時が過ぎ、さくら と いずみ…松子の入院している病院に来た良子と先生。

「もうよくなったかしら……」

「ああ……よくなったと思う…だけどずいぶん長い間の心の苦しみが原因だから
当分このままにしておいてあげよう」

「そうですね。さくらちゃんは自分でも気がつかないうちに心の底で苦しんでいたのですね」

病室のドアの前に、クラス一同からの花束を置き、歩き出した。

「良子はほんとに偉いな……よく1人で苦しみを耐えられたと思う。
良子のような友達がいる限り、さくら や さくらのお母さんはきっと幸せになれる」

お母さんが穴から出て来た時に、咄嗟に手術が行われなかったことに気づいた事を褒める先生。

「さくらちゃんの話じゃお母さんの脳がさくらちゃんの頭に入っているということだったんだもの、
それだったらさくらちゃんのお母さんは頭をくりぬかれて死んでるはずよ。
お母さんの頭には手術の跡なんてなかったわ」

「いや……咄嗟になかなかそこまで判断できないものだ」

「でもどうしてこんな出来事が起きたのかしら」

「それは一口には言えないと思う。さくらのお母さんが美しさをなくすことを恐れた時からだろう。
自分を救ってくれる者が欲しい…そこで主治医を作り出したのだ。
その時にはほんとの主治医は死んでたのだけどね」


主治医といる時だけ錯乱せずに済んだ……だが本当は逆だった。

主治医がいる時こそ錯乱している証拠だった。

母が主治医がこの世にいるものと信じていたから、だから さくらもそう信じていた。
そして さくらは手術をさせられることになった。
だが さくらは抵抗し、殴りつけた母が気絶し倒れた。

それから後、さくらだけの想像の世界が始まった。

想像の中で手術が行われ、さくらは母になりきっていた。でも手術は行われなかった。

さくらの心の中で母の望みをかなえてあげたい気持ちと母を憎む気持ちと、そして自分ではまだ気づかない おとなへの憧れと幸せになりたいと思う気持ちが今度の出来事を引き起こした……。

こちらを指差し、先生は言う。

「だが、さくらを誰が責めることができるだろうか!

さくらはただ敏感に感じ取ったのだ……自分の周りがいびつなことを…。

いびつな者は自分でそれを感じることはできない、
そしてそれを感じた者がいびつにされる!!

狂った世界の中にただ1人狂わない者がいたとしたら、果たしてどちらが狂っていると思うだろう?」
http://wikiwiki.jp/comic-story/?%C0%F6%CE%E9


20. 2016年4月15日 14:00:46 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2396]

『洗礼』の日次


•単行本で全6巻の『アゲイン』も、実質はほんの4〜5日間の出来事。11巻の『漂流教室』も2週間足らず。なんて濃密な時間。しかも、作者はそれを計算づくで描いている。沢田元太郎は、「きょうで4日目じゃ」などと言うのですから。

•『洗礼』も、同様に、しっかりした日付け意識のもとで描かれている。が、たまには楳図先生にも勘違いと思われるところが……。




1. 初めての錯乱

主演映画「虹の家族」のラッシュの日。容貌の衰えと左顔面に拡がりつつあるアザのために、帰宅後錯乱し、村上医師を想像の中で作り出す。

「あなたとお会いするのはなん年ぶりでしょう」(村上医師)

2. その後しばらくして

折に付け、自分の子どもが欲しいと真剣に語るようになる。


3. その後

だれともしらぬハンサムな男(ゆきずりの男)と一緒にいるところを目撃される。女の子を私生児として産む。あっさりと芸能界を引退し、行末もくらます。


4. ある日の夕方

コス・さくら、長袖のシャツにとがった襟と袖にストライプの上っ張りにスカート。
その上にすそに大きくひまわりの柄の入ったエプロン。
あたまにはヘアバント風のリボン。

:帰宅したさくらの顔に傷をつけたと母親が良子の家にどなりこむ。
さくらもそれを追う。
良子の家からの帰る途中でさくらをかばって母親交通事故、「救急医院」に運ばれる。


5. 数日後(学校)

コス・首、手首、に毛皮風のあしらいのある上着(ボタン無し)に、プリーツスカート。ハイソックス。(以下、コスチュームは省略する)

:さくらの作文「わたしのやさしいおかあさん」が文部大臣賞を授賞。テレビ出演決定。


(その夕方) :良子と帰宅する。良子は、さくらの家に遊びにいったことがない。
母に報告するが、テレビ出演を許可しない。母親団子を作っている。


(その夜) :団子をえさに犬を捕まえる母親を目撃。犬を携え母親は二階の主治医のところへゆく、さくらは思う。村上医師の実在に疑いは持っていない。

(寝室) :母と同室にツインベッドでねている。二階からさくらの部屋へ天井づたいに血がしたたり落ちる。


6. 翌朝

血痕は消えている。母親、主治医の実験が成功したとさくらに伝え、主治医をお祝いすると言うが、気味悪るがるさくら。
さくらは朝食もとらずに学校へ行く。

図画のカバンを忘れた事に気付き、登校途中に引返す。
ドアに「さくらの部屋」の札はない。


さくらの部屋のカレンダーの「15日(木曜日)」にマルのついているのをさくら見つける。

カレンダーは4ヶ月カレンダーの左上だから、1月、5月、9月のいずれか。

May 1974 初出の昭和49年5月のカレンダー
Su Mo Tu We Th Fr Sa
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31


そのまま二階にあがり、実験現場を発見。電話から母親の計画をしるが、母親に見付かり、気絶。

(午後から夕方) :気絶から醒め、母から計画を直接聞かされ動転する。鎮静剤を打たれ眠る。良子が見舞いに来る。母親は良子に、さくらが長期欠席することを告げる。

7. 2日後(夕方)

「3日も何も食べてない」さくらへ無理矢理食事をさせる。
 すきをついてさくらそとへ逃げる。この際に二階の出窓に主治医の影を観る。
良子の家に向かう。良子、気付かない。

良子母「良子/そろそろ/夕ごはんだ/から/窓をしめて/いらっしゃい」。

 タクシーで連れかえる。頭を剃る。が、かえりがけにこっそり拾った石で母親をなぐり気絶させる。主治医「いかん!!すぐはじめ/なくては」。さくら、気が遠くなる。

〔■効果線あり〕
 二人とも意識恢復。いずみは手術着に着替えている。手術が始る。麻酔は針によるもの。母親先に麻酔し頭蓋骨をひらき脳味噌が露出する。次にさくらに麻酔をかけるが、意識がなくならない。さくらは自分の頭蓋骨がひらかれ脳をとりだし捨てられるのを見ている。母親の脳をさくらに移植する。


8. 1週間ほど後

近所の人の言「ここ/1週間ほど/どなたも/みえない/みたいだ/けど……」

さくら目覚める。また眠る。

目覚める。主治医は去り、母親はさくらになったことを確信する。捨てられたさくらの脳味噌を素足で踏みつぶす。

〔■母の脳が入ったさくらと、そう思い込んでいるだけのさくら。初読では後者は最後に明かされるだけだが、再読以降はこの二重文脈を持つ作品となっていく。母が見ていた村上医師の幻想をさくらも見るようになる。〕

(その夜) :母親の死体を庭に埋める。さくらのくせを復習する。


9.翌日

カツラをかぶり登校する。途中、後ろから良子が追付くが、雰囲気が違うことに気付く。

(学校) :下駄箱を間違える。ランドセルを良子にゆだね、「谷川先生」に挨拶にゆく。抱付く。醜い姿をきにせずくらすため母はヨーロッパへ行ったと告げ、谷川先生あての母親からの手紙を渡す。

「拝啓 おだやかな今日こ……先生には相変らず……娘ともども感謝……さてこの」(時候の挨拶から察して、春だろうね)。

さくらは先生に、では母親はみにくくなかったと思うのか、という。家庭訪問・授業参観など想定され先生は母親に面識があったとすべき。


:逆上するさくらに、先生、今度の日曜日に先生に家で全快パーティを行う提案。

(授業前) :4年3組。机の取違え。隣の席は中島

(1時間目・社会) :第4章「人と社会構成」をあてられたさくらは答えられず頭痛を装う。中島答えるが、先生がいつ結婚するか質問し、教室にぎやか。

(放課後) :先生を自分のものにしようと決心する。「第二の目的」。ボーイフレンド島くん。にわとりのピコの掃除を中島に言われる。ピコあばれ、締殺す。

(下校途中) :良子と下校するが、途中で一人で帰るという。途中、島くんまちぶせ。しかし、「わたしの欲しいのはおとなの愛よ」

(夜) :先生のだいすきなのり巻きをもって、先生の家へゆく。タクシー使う。妻子のだんらんを観る。妻は和代。息子は貢。日曜日には妻を実家にかえすこと納得。

〔■谷川和代の存在は、谷川への愛情の最初の挫折を意味する。ふつうに暮らしたいという願望が、徐々にゆがんだ行動へと変容していく。〕


10. 翌日(朝)

迎えにきた良子と登校。

「日曜日に先生のおうちでパーティーをやるんですってね」(良子)。

良子、中島さん、花形さん、島くんが誘われている。昨日、島くんががっかりしていた、とも。

(一時間目・社会科) :先生「それでは今日も張り切って勉強をやろう」。

16歳で結婚できるという話。中島、先生はあと7年は結婚できないという。(中島は現在9歳)

11. 数日後(日曜日)

完全に腐ったスープをビンに詰める。皆が迎えにくる。チャイム「ピンポーン」。

谷川先生宅、部屋に飾付け、食事の用意がある。

レンジ台にスープの鍋、冷蔵庫にアイスクリームがある。冷蔵庫は流し台の右にあり、右開きの1ドア(使いにくい)。

さくら、すきをみて鍋に腐ったスープを入れる。

冷蔵庫から良子が「プリンと野菜サラダ」を運ぶ。

中島、「じゃ私はスープを運ぶわ」。

谷川先生、「さくらの病気全快おめでとう」「それではまずスープでかんぱいといこう!!」。乾杯のあと少し談笑。みなスープを飲み始める。

中島、さくらに飲むように進め、さくらスプーンで飲んだまねをする。中島は飲まない(中島が先生の奥さんになる云々)。ケーキがめあてという。また談笑(中島が先生の奥さんになる云々)。みな笑うがさくら笑わない。

中島、指摘する。さくら、先生に奥さんがいるのではないか、ならば中島は先生の奥さんになれぬという。先生もあきれたような困ったような顔をしているが、レコードを掛けようと言い話題を換える。

中島が腹痛を訴える。花形、良子も続く。中島は平気だが、みな倒れ始める。さくらも倒れている。

谷川先生も驚くが、腹痛。中島に、病院、および「女房の和代」に電話を指示する。暫くして医者と看護婦がタクシーでくる。注射を打、布団で眠る。

医師、「スープがいたんでいてあたったようだ」。

和代は貢を連れ近所のお宮に出かけており連絡がつかない。

谷川先生は「か 和代のヤツ!!」。



(その後) :次々にタクシーが来て母親が非難する。(花形の名前は純子)

和代が戻る。良子の母親がさくらも連れて帰ろうかと言うが、谷川先生は自分の責任だから自分で見ると言う。和代に、おまえがこしらえたスープがあたったのだからさくらの看病をせよと言う。

〔■谷川の家に居座ることが目的。そのための食中毒事件。〕

和代、さくらの寝ている部屋にゆく。布団のなかでさくら、わざとらしく苦しがり、谷川先生を呼ぶ。先生に、お願いここにいて、手をはなさないで、と頼む。

谷川先生はそこに布団を敷き一緒に眠る。

和代、スープの中に何があったのか、と疑う。それを聞いたさくらは、なぜ中島さんだけスープを飲まなかったのかしら、と言残し、眠る。和代は、貢を背負って冬物のコートを来て生徒の家にお見舞いにゆく。

和代、帰宅する。


12. 翌朝(月曜日・晴れ)

さくらはまだ寝床。しかし目を覚ましている。ダイニングキッチンのテーブルで夫婦の会話。和代が流し側の着座。谷川、さくらは癒るまで家で預らねばならぬという。和代は皆が自分を疑って居たと言い泣き崩れる。

谷川、学校へゆく。中島の他はみなお休みするそうだと和代言う。


(4年3組) :中島、クラス前の廊下でこの話題をふりまいている。事件のこと、先生に奥さんがいて、赤ん坊までいたこと。また奥さんが昨夜訪ねて来たときに、中島を疑うような発言があったと言い、お父さんお母さんがカンカンであるとも。谷川、教室にくる。谷川(たにがわ)ふりがなあり。


(夕方) :谷川、帰宅。和代に中島宅での発言を呵る。さくらは、医者は治っていると言うが、本人は寝ていて胸がまだムカムカするという。先生の奥さんが一日中看病してくれ、大好きであると言う。

13. 火曜日(午後)

「翌日……」。和代、寝ているさくらにおかゆを持ってくる。が、食べない。先生は? と聞くさくらに

「まだ学校から帰らないわ。ほかの人たちももう学校にきてるのですって」。
(つまり、確実に「翌日」)。

和代、貢が眠っている間にマーケットに行くという。「いそがなくてはマーケットがしまってしまうわ」。

買物かごをさげて帰る。中には、キャベツ・ジャガイモ・1リットルのパック牛乳など。

玄関に入るとガスの臭い。家中ガス漏れ状態になっている。「貢!!」と叫び二階へ向かうが階段をすべりおちる。はいあがり、貢のベビーベッドのある部屋に入るが貢がいない。ガスを吸っており、また階段から落ち、玄関へ一旦出たところで、貢を抱いたさくらに会う。

さくら「赤ちゃんはわたしがたすけました。ガスの元せんもちゃんとしめておきました」。和代は安心してその場に倒れる。

(夜) :和代、右腕に包帯・三角巾でベッドに寝ている。貢のベビーベッドも横に有るが、先程の部屋と同じかどうかちょっとよく分かりにくい。

谷川、「大丈夫かっ!!和代」。和代は自分がガスの元栓を締め忘れたと言う。手と足を挫き掃除も出来ない、という。

さくらはもう元気になっており、泣いている貢を抱きあげ、わたしがお掃除をするわという。わたしがなんでもする、恩返しだという。この時までさくらは日曜日から同じ服装(小さい水玉模様のワンピース。セーラー風の衿にリボン)


14. 水曜日(朝)

エプロン姿で、朝食を用意している。「おはようございます、先生」。

谷川起きてくる。谷川のメニューはご飯味噌汁に目玉焼き。奥さんへのおかゆ(一人用土鍋に伏せた茶碗)も用意している。うまいと誉める谷川。谷川を学校へ送り出す。「行ってらっしゃい。わたしもすぐに行くわ」。

和代へ朝食を持って二階にあがる。「それじゃわたしは学校に行ってきます」

和代、土鍋の蓋をあけると、ゴキブリの炊込みご飯になっている。和代、悲鳴をあげ、「だ だれか!!だれかーっ」と叫ぶ。

さくら、エプロンを脱いでいる。むりやりゴキブリご飯を食べさせる。抵抗した和代はベッドからずり落ちている。さくらは泣叫ぶ貢を抱上げ、宙にほうり投げるようにしてあやすが、一層泣叫ぶ。和代、おののく。

さくら、「ハハハ」「ホホホ」と笑いながら、駆けて登校する。病後、初登校。

(学校・時間未詳) :クラス、黒板の前でさくらを囲み女子生徒集っている。良子、花形純子ほか3人。さくらは谷川の家にずっと居ることになったと告げ、ガス事件について巧みに話し、みなに和代の失策と言わせるように仕向けている。さくらは影でにやりと笑い舌を出す。


(夜・星が出ている) :谷川、帰宅する。さくらの荷物(ふとんと洋服)が玄関に届いている。あとから机とイスも届くと告げる。

谷川はさくらと二階の和代の部屋に行くと、和代は狂ったように、さくらを追い出すように、という。

ゴキブリのこと、貢をほうり投げようとしたことを言う。

驚く谷川の右横で、さくらはにこにこ笑う。和代は「あっ。笑ったわ!!」と言うが、谷川が見ると普通の表情に戻す。ゴキブリも居ないと谷川が言うが、さくらが片付けたこと、貢をバスケットボールにようにほうり投げた事を言う。

さくらは「ワツ」と泣く。

和代は、悪魔などとまだ言い続けるが、さくらは泣いてキッチンへ行く。谷川は追いかけ、和代は「少し頭が混乱しているんだ」と言う。

運送屋が来る。さくらの机と洋服ダンスを運びいれる。谷川、一階の洋室(但しドアは襖)をさくらの部屋にする。

さくら、谷川に着替え(パジャマのようにも見えるが、普段着であろう。あと「はだ着」)を渡す。風呂場で着替える途中、さくらは覗き、パンツ一丁になっているところでドア(ガラスのドア)を開け、ちゃんとパンツも取替えるようにとぬがそうとする。

和代が飛込んできて、谷川を非難する。

谷川、「さくらはまだ四年生だっ。まだ子どもだっ」。さくら、突飛ばされる。(和代、左足に包帯)。自分の部屋に逃げかえる。谷川は和代を叱りなだめる。谷川はズボンだけはいている。

さくらは、谷川が和代を呵る声を聞きながら、「ほほほ」「ランランラン」と笑いスキップしている。

谷川は和代を寝室につれてゆき、なだめるが、和代はさくらを悪魔と言い、むこうへ行ってという。谷川はおちついて「そうか。オレも疲れたから、書さいへ行く。書さいで寝る」という。ここまで谷川うえだけ裸。この寝室はドア(窓無し)。
書斎、二階にある。ドア。さくら

勉強を教えてくれといって、書斎へゆく。

「いやだっ。先生のおひげ、くすぐったい」。

それを和代は聞いている。涙を流しながら、階下に電話を掛けにゆく。

三角巾で吊ってある右手は使えず、左手で受話器を取り首に挟み、左手でダイヤル。

ダイヤルにカミソリの刃が仕込んであり左人差指を切る。

カミソリをはずし再び電話、母親へ。明日のお昼までに来てくれるように頼みすぐに切る。

ピアノが廊下にある。電話が掛ってくる。和代、包帯は先と異なり右足になっている。谷川とさくら、階下へおりる。教頭の山藤(さんとう)先生。「生徒が警察に保護されているから補導を……、」。和代はいかないでと言うが谷川は行く。

玄関を一望出来る図あり。谷川が出た後すぐ、さくらは右足(包帯の足)を蹴り転ばす。さくら、玄関のドアノブを布で結わえておく。和代、両手をケガしており開けられない。二階で貢の泣声。

あがると、貢の右脇に脳をくり貫いた猫(犬じゃないよな。翌日和代は「猫の死がいと犬の頭が」という)を結わえ付けてある。和代、口で紐(包帯みたいなリボン状のもの)をほどき猫を捨てる。部屋の明かりが消える。

脳をくり貫いた犬の頭をかぶって出てくる。おどかし、二階物干しへ誘い出し、予め用意したロープで首吊りさせようとするが、和代倒れ、失敗。睡眠薬を飲ませ眠らせる。

谷川、帰宅。さくら、貢をあやし、和代は自分のベッドで「グーッグーッ」と寝ている。

15. 木曜日(朝)

玄関(一望出来る)、谷川のローファーの黒靴を磨きあげ、ゴミをだしにゆく。
谷川、アウトドア風の格好。

和代が、猫の死体がごみ箱にあるはずと指摘し、あらそうが出てこない。谷川、和代を昨夜はいびきをかいてねていたくせにと非難する。さくら、谷川に「今日はいっしょに学校へ行かない?」という。


(学校・授業前) :中島が、花形と男子女子(既出)とで本の間に「さくらちゃんのだいきらいなものがいきたままではさんである」本を渡す。童話『しあわせの国の少年』。

ムカデ、さくら驚き廊下に飛出す。本、中島はさくらは既に読んでいるものと言うが、花形はわたしたちはしょっちゅうという。ムカデは中島の弟が捕まえたもの。ビンにもどす。


(放課後) :ムカデのビンがないと中島騒いでいる。さくら、良子と下校する。


(谷川宅) :和代の母が車(4ドアセダン)できている。和代、訴えている。さくら帰宅する。母、貢を寝かせに二階にあがる。さくら、応接室のスタンドハンガーに掛けてある母のコートの横に立っている。コートを着て母は帰る。「正彦さんによろしくね」。


(母の車) :母は右ハンドルの車に左ドアから乗込む。運転途中、首からムカデが出てきて運転を誤り道のガケに激突、フロントガラス割れ、炎上。


(谷川宅) :電話あり、さくら出る。奥さんのお母さんが交通事故でなくなられたと言う。市立病院に入院。和代、右足に包帯。病院へゆく。

さくら、家でピアノを人差指だけで弾いている。谷川帰宅。すぐに和代も帰宅。

母は死んでいなくて、怒ってさくらの首締める。


(夜中) :和代、足の包帯は膝のみ。さくらの部屋に忍び入り、濡れた手拭いでさくらの顔を覆い窒息死させようとする。

布団のうえに針が仕込んであり、逆転。
さくら、パジャマ(花柄・綿のネグリジェ)。

和代、(ノーブラにリボンのワンポイントのパンティ、白のネグリジェ)。

熱したアイロンでさくらは和代を脅す。

髪をすこし焦し、ネグリジェを茶巾寿司状態にして、パンティを脱がして陰部を焼こうとするが、コードがはずれていた、と言う。和代、逃げかえる。

16. 金曜日(朝)

キッチンで和代、谷川に「あなたっ!」「あの子とわたしのどちらを」「どちらを愛しているのですか!!」と聞く。さくら、見ている。ネジュリジェのまま。

谷川、怒り、最後に「わたしが愛しているのは残念ながらおまえだっ!!」。さくらについて聞かれ、「もちろん愛している、教え子として……」。

さくら、両目から涙。キッチンから出る谷川、さくらに気付くが、今起きたばっかりという。後ろから和代、さくらを指差しながら、「なにが純真よ。こいつは子どもじゃないわ!」「そうよ。子どもの皮をかぶったおとなのバケモノよ!」

勝手口から、「まんまる商店」の御用聞きが声を掛ける。ひもの二人分たのむ。

〔■さくらをだます谷川夫婦の芝居/この二人の会話をさくらは物陰から聞いている。谷川夫婦はさくらがこの会話を聞いている事を知っている、と解釈するのは難しい。この夫婦の会話は芝居ではないだろう。

しかし、この当りから、谷川正彦は事態の異常さに気づき始め、翻弄されている外見とは裏腹に、冷静かつ客観的に状況を認識しようと努めていたと考えなければならないだろう。〕

(登校時) :さくらとあるく谷川、学校が終ったら映画を観たり買物をしたりして遊ぼう、と誘う。

(放課後) :校門に「曙小学校」。良子に断り、一人で帰る。帰途、谷川と待合わせ。「パーラー花」で飲物。谷川はコーヒー、さくらはジュースらしい。次にデパート。エスカレータで転ぶさくら。ブローチを買ってもらい涙ぐむ。


映画は、リバイバル映画「若草いずみ主演『真昼の夢』」の大きな看板、さくらは若いころから脳移植までの一連の事を思い出す。気分が悪くなり、映画は見たくないと言い、「公園」で休む。

〔■公然の秘密説/谷川が選んだ映画が若草いずみ主演映画であったことは、単なる偶然なのか。上原さくらの母はかつての大女優若草いずみの娘であることは、ある程度公然の秘密であり、知らぬは母子ばかりであったという可能性はあるのか。はたあきみの存在と齟齬するだろう。〕

〔■公然の秘密説2/さくらには、女優時代の母の記憶が存在している。母と同じく幻想の村上医師を見ることと、同じ程度だけ不可解な事態(つまり同じ程度には許容可能である)。

母は、さくらを産み育てる中で、毎年帽子こそ買ってはいたが、常に狂っていたわけではなく、時に狂い出すと理解したほうが良いと思う。普段は、愛情深い母親なのである。尤も、その愛情の根本には、脳の入れ替えが有るわけだが、普段その意識は抑圧されているのだ。〕

さくら、電話を掛ける。良子へと偽り、まん丸商店にかけ、和代を装い浮気を誘う。勝手口の鍵は壊してある、と言う(事前に壊したのか「あら、用心がわるいからよ。いつも一人のときはそうすることにいるのをごぞんじでしょう」いう発言がある)。さくら、谷川とすべり台、ブランコで遊ぶ。

まん丸商店、干物をもってきて勝手口から二階に上り和代を犯そうとするが、拒絶。まん丸商店の御用聞きは自転車で逃げかえる。

さくらたち、帰宅する。病院の母のところで泊るという置手紙、谷川はおかずをかいに出、さくらはご飯の用意をする。

買物をしてきた谷川に、風呂に入るように進める。谷川のあとからさくらも風呂に入る。


(夕食後) :谷川、服を背広に着替えて外出。奥さんのところであることは、さくらも了解している。外で、近所のおばさんが和代が浮気していると噂している。

さくら、自分の部屋を飾り付ける。香水なども振りまき、布団一つ敷いてある。午後10時4分、コス・白いネグリジェ、胸元はスクエアでフリルに黒い蝶リボン、裾は大きくフリル。に着替えている。
谷川酒に酔って帰ってくる。

〔■谷川夫妻の芝居/(谷川立人の意見)。この間、谷川正彦は妻に自分を信じるようにとだけ強く言い聞かせ、計画の具体的内容は話していない。谷川は、さくらの出方を見、かつ安心させるために、さくらに屈服したような芝居を独断で行い始める。〕

玄関で倒れている。二階へゆこうとする谷川を、自分の1階の部屋に引入れる。布団に寝かせ、服を脱がせ谷川にキスする。さくら、森の中でアゲハ蝶を捕まえる、イメージ。

コス・胸元に飾りがあり、側面にフリルのついたワンピース。はだか。

さくら、無意識に寝返りをうち被さってしまった谷川に「抱いて!もっと強く。もうはなさないわ!」。

そのまま一緒に眠る。さくら、裸で森のなかを走る夢。

17. 土曜日(朝)

目覚める谷川。記憶がない。さくらは、夜谷川が忍んできたという。
谷川、自分の行為におののく。さくらの目覚めの顔がかわゆい。

朝食。
コス・リスト。二階の和代の服や化粧品をさくらの部屋にもってゆき、さくらのものを二階へあげる。朝食時および登校時に、奥さんと別れるのよと言聞かす。谷川、無言。ネクタイ、昨日夜と同じものをしている。

〔■谷川夫妻の芝居/なお谷川正彦は、後に離婚届まで用意する。〕


(朝、教室) :さくら、中島に一言。中島、花形・良子、もう一人と話。昨日のさくらの行動(公園で谷川先生とブランコなど)や電話などを話し、すでにさくらは死んでおりだれかがさくらになりすましているという。1時間目の前に、中島、三角定規でさくらの指紋を取る。中島はさくらの左隣の席。二人掛けの机。


(休み時間) :「リンゴーン」チャイム。校庭で、中島以下3人、「さくらちゃんが病気で学校を休むよりずっとまえに習字の時間に取りっこしたのよ」という手帳の右手五本指の指紋。アルミ粉(ふん)を使って三角定規の指紋を調べる。羽ボウキでアルミ粉を払う。親指の指紋、同じ。裏についた他の指も調べるが、四本とも同じ。指紋の位置は、三角定規に対して、親指は面ともに同じ、ただし裏面の四本指の位置が違うと思う。花形、あきれる。中島、ひとりでも秘密を暴く、という。


(放課後) :「リンゴーン」チャイム。。校門外に先に行くさくらを、良子・花形・もうひとりが追いかけるが、仲間はずれのほうがいいといってさくら先に帰る。

中島、跡を付ける。「天ぷら」「木村書店」「女性自身」の看板見える。谷川宅と関係ないほうにあるいてゆくさくら、中島は秘密在りと確信する。さくらは壁に矢印をかいている。

中島、さくらを見失い、矢印の指示にむかってあるく。工場地に出、コンクリートの地下室跡を見つける。矢印は中に続いている。

中島、中に入るとさくらは居ず、ドアがしまる。さくら、そとからコンクリートのかたまりでドアに重しをのせ、ドアが開かない。

トラクタ(実際はブルドーザ)が来て、地下室跡を埋める。

さくら、「さようなら中島さん」。「飛んで火にいる夏の虫って……あなたのことね」。

さくら、家に帰る。家の前で立止まっている。お婆さんの質問に、何歩でドアまでゆけるか考えていたと答える。

和代の報復を予想しているが、ドアノブに触れると電流が流れ、ショックで気絶。

家の中に引きずられ、さくらは気絶から意識を回復しているが口と手足を縛られ袋にいれられる。さくらの部屋(一階)の押入にいれられる。

ピンポーン、谷川帰宅。さくらは出ていったと和代は言うが、さきほどのお婆さんが来て、女の子が何歩云々を言い、ここで悲鳴が聞えたと言う。谷川は家の中を捜すが、見つけられず家に帰ったかも知れないと外へ出る。

和代、貢の乳母車にのせ、電車に引かれたことにするため、外へ行く。

踏切りで袋をはずし、気絶したままのさくらを踏切りに置くと後ろに谷川。
さくら助かる。あたりはもう薄暗い。

〔■谷川夫婦の芝居/これは和代の単独行動。〕


(夜・星空) :帰宅、さくらは二階の部屋で寝ている。和代は下の部屋でわめいている、と谷川。「違う/話し合えばわかる」(谷川)。さくらは明日になったら和代を病院へいれろと言う。洋服のまま寝ている。

和代、下のキッチンで半狂乱になっている。谷川、なだめようとするが、和代、「ハハハ、ほほほ」と笑っている。
さくら、階段で様子を聞いている。服はさっきのまま。

18. 土曜日2(朝)

タクシーが来て、和代を病院につれてゆく。

「いやよ!!私は病気じゃないわ」(和代)、

「そうじゃないんだ/病院のお母さんを見舞いに行くんだ」(谷川)。

さくら、キッチンで勝利を確信し、「わたしはただふつうに……」「ふつうに生きたいだけだから」と涙ぐみ、手をあわせる。


教会の風景。
「今日は土曜日だわ」「そして明日は日曜日」。

学校へ行く。「ラララ、ランランラン」と走りながら。良子に会い、「はればれとした顔をしている」と言われる。

(校門前) :「曙小学校」。花形らが立話。中島が昨日埋め立て地で埋められてしまったところをみつかったと言う。

〔■さくらは結果的に人を殺害にまで追い込まずに済んでいる。はたあきみにしても、交通事故であり、かつ死んだとは限らない。これは作劇的配慮であり、読者にとっても救いである。これは高松翔に人を殺させてしまう『漂流教室』との大きな違いである。〕


(放課後) :「リンゴーン」チャイム。谷川、学校を休んだ。さくら、良子、花形、既出女子とで中島の見舞いにゆく。玄関に出てきたうなだれる中島の母「会ってもムダだけど」。中島、目を見開いたまま髪の毛真っ白になっている。みな帰宅。


土曜日2・夜:谷川帰宅。和代は潜在的に病気が在ったと告げる。さくらの「愛している?」にたいして「愛しているよ」と答える谷川。さくらには、母からの三百万円の貯金がある。上原さくら名儀。

〔■この土曜日、谷川正彦は和代を病院に連れて行くと称して朝で掛け、夕方帰宅している。学校は休暇を取りそのまま語りあった見ても良いし、朝実家に和代を届けて午後改めて訪問して語り合ったとしても良い。いずれにしても、この日、谷川正彦は和代をきちんと説得したはずである。その上で、偽の離婚届けまで書かせたわけである。「愛している?」の問いかけに対する態度の明らかな差異も、谷川の気構えの違いを意味している。〕

階段を降りるとき、足が持つれ倒れる。

葡萄酒で乾杯し、ワルツのレコードを掛け、ふたりで踊る。谷川、リラックスしたばこ(チェリー)を吸っている。谷川がレコードをもう一度かけに行った時、火のついたままのタバコとは別に、もう一本に日を付け、吸い、消す。帰ってきた谷川、煙草の吸殻を奇妙に思う。さくらの声は年取った女のようであった。

〔■さくらは幸福の絶頂にいる。勝利の美酒。同時に、退転への不安・予感。〕
本来はカラーページ。さくらの顔にゴミと指摘される。ほくろであった。二階の鏡台で確かめ、驚く。谷川がくる。「明日は日曜だしゆっくりおやすみ」。


19. 日曜(朝)

母親の夢を見ている。

〔■夢の内容はさくらにとっても既知のものであり、脳の入れ替えが無かった地点から読むときには、さくらの視点からの内容にしか見えない。〕

ほくろが大きくなっている。 「もとへもどってしまうんだわっ!!」。

「精神安定剤」の錠剤をのみ、階下に降りる。
谷川、レンタカーでのドライブを提案する。「そうだな。海なんかどうだろう」。

〔■谷川夫婦の芝居/海へのドライブは、シナリオ通りとみてよい。〕

(車の中) :コス・さくら、上がおおきなフリルのついた合せエリ、スカートは裾に一連の花模様のワンピース。薄い色が着いている。谷川、和代との離婚手続きのため、病院へ寄ろうと言う。さくらは行きたくない、というが、そのほうが離婚の決心がつくと言い、強引に誘う。


(病院) :精神科病棟に入り、壁に「精神科」の札。谷川は、さくらにある一室


(応接室)で待つように指示し行く。さくら、受付にゆき谷川和代の病室を聞く。看護婦、そんなひとは入院していないという。さくら、しょっく。「な なんのためにわたしをこんな病院へ……」。先生を探し病院内をうろつく。

診察室で、谷川は医師にさくらのことを話しているのをみつける。医師とつれだって部屋にゆくとさくらがいない。さくらは、レンタカー(黒)に「やっぱりさきに帰っています」の貼り紙をし、「丸田薬局」の看板あり、「個人タクシー」(車の天井)に一万円払い、奥さんの実家のほうへ行く。

海辺。家を見つける。「森本」。縁先で貢をあやしている和代を発見。そこへ谷川がくる。さくら、海辺へゆき、泣いている。
海辺で泣くさくら。

和代実家。四時五分過ぎ。谷川、帰る。
谷川帰宅。離婚届けを見せる。

(夜) :アザ大きくなっているのを見つける。おののき、村上医師に電話をする。
良子、部屋で宿題をしているが、には「根性」の額あり。さくらの心配をしている。明日思い切って話しをしようと思う。


20.(月曜日・朝)

良子、さくらを道の途中で待っている。さくら、裏道から現れる。細い横縞のワンピース、胸元に広く白い襟。左目にかけて鉢巻状の包帯をしている。

さくら、あなただけにうちあける、と言って包帯をとりアザを見せる。良子は、遺伝なのかと疑う。さくら、包帯について、ケガをしたことにしたいといい、みんなのいる前で突飛ばすよう、良子に協力を求める。学校の門の近く、「原山建設」の建設現場でみなが来るのを待受ける。「三和銀行」「清水建設」の看板もある。

くる友達三人。一人は花形さん。一足先を歩いているさくら(包帯はしてない)を、良子は、後ろから驚かそうといい、わっと言って後ろから押すと、さくらは道脇の空地にある鉄条網に顔をぶつける。左目のほうから血を出すさくら。八人くらいの子供達が集ってくる。良子も意外な展開に戦いている。さくらはみなに、大丈夫よと言って、良子と二人で裏道に入り、包帯を捲きなおす。


月曜日(授業前) :教室に入る。みな、「大ケガをしたんですって」と騒いでいる。さくらは、「そんなにたいしたケガじゃないわ」と言い、「ホホホ」と笑っている。良子は、さくらのためとは言え、自身の行為に暗い表情をしている。

授業中(教科は不明だが、教科書が縦書きだし国語か社会科だろう):クラスメイトが、良子がさくらをケガさせたと噂する。良子はそれを耳にとめるが、「なにを言われても平気よ。さくらちゃんのためだもの。それにわたしがケガをさせてしまったんだから……」と思う。

さくらが指名読みしている。それを見て良子は、「このごろさくらちゃんたらお母さんそっくり……」と思い、中島の「だれかがさくらちゃんになりすましているのよ」という言を思い起す。

(図画・校庭で写生) :みなはスケッチブックに、校庭のホーレンソウ・カボチャなどの写生をしている。良子、さくらと並んで写生している。さくらの絵が「いつものかきかたとちょっとちがうわ」と思う。

提出の時間となり、良子はさくらの分も持っていってやる。名前が「上原松子」と書いてある。良子、驚きこっそり書き直そうとしているところに、さくらが後ろからのぞきこみ、驚愕する。

(下校時) :さくらは良子に「わたしの秘密を……」打明ける、という。電柱に「引越しおまかせ下さい!マツミヤ運送TEL3091222」 ここでは言えないといい、自分の家に連れてゆく。

鍵をあけ、おやしきにはいり、「わたしの部屋へ」と案内するが、「さくらの部屋」のプレートのある部屋は通り過ぎ、母の部屋に良子を入れる。イスにすわらせ、紅茶を持ってくる(この紅茶は、良子の動揺の表現として効果的な小物)。

さくらは、自分の身の上話をはじめる。


今から、四十八年も前のこと。

さくらの母親の家は没落してとても貧しかった。四歳の時、映画監督の目に留まり、たちまちスターとなった。すでに、女性でもはっとするほどの美貌を持合わせていた。彼女の主演する映画はすべて大当りをとった。

彼女の芸名は若草いずみ。自身でも自分の美貌を自覚していた。

大津安二郎監督「にごり竹」のヒロインの子供時代の役が当てられたとき、おとな時代を演じるのは田中絹子。他に、佐戸利信、佐野周三、岡田寺彦。

田中絹子を見て、突然泣出し、訳をきくと、「わたしはあの人みたいにぶさいくじゃないわ」と言ったという。 「にごり竹」は大成功であった。

彼女は日増しに美しなり、彼女の精神は年齢以上に成熟していた。彼女の身の回りは実の母親がみていたが、その身なりや犠牲的な働きぶりは他人からは親子には見えなかった。父親は病身であった。ある時、撮影でちょっとしたアクセサリーが必要となったが、母親はいずみのために紙で花のついたりぼんをこしらえた。

翌日、撮影の折、それをやぶり捨てる。ここから本来カラーページ。母を平手打ちにする。

その夜、熱を出しうなされる。

母親「昔はよかった。いつもかかりつけの先生がそばにおられて。」と述懐し、医者を呼びにゆく。

母が留守の間に、医師が一人部屋に入ってきて、「安心しなさい。わたしはかかりつけの医者だよ。お母さんもあとからすぐ帰るからね」と。

さくらは、熱の原因を、りぼんをつけようとして近づき、その時に白髪や手のしわをみて、

「わたしちゃんと知ってるわ。だれでもかならず年をとるんですって!!」

「お母さんみたいになりたくないの!!」とさけぶ。

医師は、穏やかに話を聞き、「心配しなくてもいいんだよ。もしそんな時がきたら、かならずわたしがあなたを助けてあげるから。」と言う。いずみは安心して眠る。

その時母親が部屋に入ってくるが、熱が下がっていることに気付き、おどろく。医師がそこにいることには気付かない。その後、彼女は母親が近づくことをきらった。

〔■本当の、はじめての錯乱/老いて容貌が衰えることの自覚。それが錯乱を産みだした、ということ。

年を取った自分としての母、それを憎む話というのが本作の本質である。美に対するあこがれというよりは、(不可避な)醜に対する不安である。人(女)に必要なのは、老・醜を受け入れる、あるいは昇華することである。〕

その後、成長したが、たびたび激しい苦しみに襲われる。が、その理由はだれにも分からなかった。その都度、彼女はおさないころからの掛りつけの医者の世話になった。この医師にあうと、会うだけでいずみの心は安らいだ。

父母が死に、いずみは一人になったが、美しさをなくすことに較べれば、家族の死など哀しくなかった。彼女の人気はさらに高まり、永遠の聖美女と呼ばれた。

しかし彼女は、苛酷な仕事、厚いドーラン、強すぎるライトなどのために、今若さのさなかにあるというのに、もう若さを失いつつあった。

そして顔の左側のひたいから目尻にかけてくっきりと青いアザが出来始めていた。それが現実となり、半狂乱となるいずみに、医師は、女の子をうみ脳味噌をいれかえるという計画を話す。医師はその実験をしており、これは自身の子供でなくてはならないという。

大きなカケがあり、それはいずみがはたして女の子を産むかどうかである、男の子なら殺すのです、どうでうかやりますか、と決断を迫る。いずみのおそれの表情は、確固たる決意のそれにかわり、決断する。そして、もうどんなに醜くなっても平気だとおもい、安心する。

〔■安心を得た、母の穏やかの顔。しかし、それを保障しているのは狂気である。〕

一旦、現代にもどる。手に持つ紅茶のカップとスプーンが、良子のふるえによってガチガチと音を立て続ける。

いずみは、はじめて人に隠れて家を開けゆきずりのおとこと一晩をすごす。
やがて女の子が生まれ、さくらと名付ける。

あるとき、ばあやが訪ねてみると、空家であった。彼女は先生と一緒に新しい町へむかった。列車の中で村上医師は不自然な位置に立っている。完全に芸能界から失踪した。

こうしてこの街はずれの古びた洋館へやってきた。二階では先生が生体実験を繰返していた。さくらは何もしらずに美しい少女に成長していった。が、何かを感じたのだろうか、決して二階へ上がることはなかった。

彼女は、いつも帽子を買ってはさくらの頭の大きさを計った。

ついにその日が来た。

電話のシーン。「そのためにおまえを産んだんだよ」の「おまえ」が前と違うセリフ。直接会ってからの「そのためにさくらを産んだのよ」の「さくら」も前と違う。

そして、手術が行われ、さくらの脳味噌は捨てられた、と言う。

〔■さくらの記憶と母の記憶/当人しか知らぬはずの記憶を別人が持っていることは、通常では考えられない事態である。これは、極度の思い込みによって頭の手術痕を作り出すことと以上に不可解な事態と言える。

母親の異常性は、村上医師との計画以来ずっと常時その計画を意識に保持していたことでなく、むしろ途中でなんどもそれを抑圧し、時にそれが噴出するような所にあるのではないだろうか。

抑圧時すなわち平時には、自分が女優であったことも肯定しており、ほのめかす程度であるだろうがそれをさくらに語る。顔のアザにしても、そうした仕事で出来たものなのか、生まれつきなのか、さくらはこれまでに何度も齟齬する話を聞かされており、それがさくらの不安定な精神を醸成してきたのである。

生まれつきアザがあったというのはウソだ、という母親のせりふも、実は以前から何度か聞かされているのだ。そういう仮説。多少ご都合的にすぎるが、そうした齟齬・矛盾を、さくらは合理的な物語を作って解消しようときてきた。母親のほのめかしが具体的になればなるほど、さくらの解釈と母親の女優時代の現実とは近づいていく。もちろんさくらは、それゆえにかえって不安定な精神となるのである。〕


現在に戻る。

さくらは、カツラごととって、頭の手術跡を見せる。良子、驚きのあまり、イスから転げ落ちる。そのとき、イスの背凭れにかけたランドセルからものが飛出す。万年筆もそこで出る。

141、202、216頁に、ふたりの話をしている母親の部屋が描かれるが、これはいずれも辻褄があっている。机の横に電話あり。

そののち、手術から目覚めさくらの脳味噌を踏みつぶしたこと、母親の次第を用意していた穴に埋めたこと、動物の死骸を捨てたこと、など語る。

〔■動物の死骸は現実に存在している。村上医師は空想のもの。〕

そして、学校にゆき、谷川先生のお嫁さんになることを第二の人生とし、パーティでくさったものをいれたこと、先生の奥さんをいじめたこと、ガス栓のこと、先生を誘惑し勝ったこと、しかしホクロがアザに拡がったことまで、話す。

良子に、先生の奥さんへ脳味噌を移し変えるという計画を話し、だまして連れてくるように命令する。母親の埋っている場所を教え、明日手術をすることを告げる。鍵の置場所を教える。良子はもはや茫然と、あるいはヒキツケを起こしている。母親から、谷川先生宛の外国郵便も用意してあり、良子にポストに入れるように命令する。手紙の筆跡は母親のもの、切手はデパートで買いスタンプは判子屋にあつらえた。

谷川先生の家に帰り、良子は谷川が帰宅するまで近くで隠れているように言う。さくらは家にはいり、良子が裏切れないことを確信している。
さくら、フリルの襟のブラウスにひもリボン、つりスカート。
台所のテーブルに菓物とカーネーションの花束を生ける。

谷川、帰宅する。きゅうすでお茶を入れる。手紙がきた音、谷川にとりに行かせ、母親からと知って谷川驚く顔。

良子は困憊して帰宅し寝込む。先程の話を思い出して、だれにも言えない、と苦しむ。夕飯を食べるが、ノドに通らない。平気なふりをしていようと努め、勉強をしようとするが、ランドセルをあけて万年筆がないことに気付く。散歩といって、外に出る。

さくらの家のまえでは近所のおばさんが、幽霊屋敷とうさわしている。
良子、門の鍵をあけ、家の中にはいる。母親の部屋に万年筆はない。
二階にあがってゆくと、若い男がいる。

「ルポライター 波多あきみ」の名刺を出し、若草いずみのその後の生活を調べている。家まで突止めたという。知っていることを話せ、と一万円わたす。良子、逃出す。
家に帰ると、握っていた一万円札を引裂きごみ箱に捨てる。良子の机。


21. 火曜日(朝)

良子は布団の上でうなされている。母親、看病している。ドアを叩く音あり、母親出ると、ハンサムなひとだったという。良子、やっぱり学校へ行くと言って出てゆく。

「ゆうべのこと、さくらちゃんに知らせなくちゃ!いくら脳みそがお母さんでもさくらちゃんにかわりないわ!!」。

ランドセルの左のベルトを押えながら、走る良子の目には涙。

良子、道の途中でさくらを待っている。
さくら、歩いている。袖口が挑灯型でスカートの裾が白いワンピース。包帯はそのまま。

波多あきみ、さくらを待伏せる。若草いずみを調べているうちに別な事に興味を持った、という。家を調べたといい、動物の毛、タイルの裏の血を見せる。メスやピンセットもあった、という。

良子の手引で家に入った、と言う。良子の名前は、家のポストなどで確認したと思う。そして良子が何もかも話してくれた、という。

そこへ谷川先生。あきみは、さりげなく逃げる。
先生と歩き始めるが、忘れ物といってさくらは引返す。自分の家にゆく。

「さくらの部屋」をあけ、お人形の中にあったメスを確認し、庭の動物の死体を掘返して確認する。ワナか、と疑った時、あきみ後ろにいる。

あきみ「ほほう、なるほど。思ったとおり、やっぱりネコやイヌの手術は本当だったんだ」。

さくら、吐く。あきみ「どっ、どうしたんだ」、と近づくところへさくらメスを突刺す。が、あきみは左手で取押さえ、ねじふせる。包帯をとろうとして、カツラごととって驚く。

「手術のあと……。それに、アザ……」、

「動物の死体……。頭にくりぬいたあな……」。

あきみは連想し、じっくりきかせてもらおうという所へ良子がきて、機転を利かして「おまわりさん!!こっちですっ。早く来てくださいっ」と叫ぶ。が、あきみには見透かされている。あきみは余裕で、今日は引上げる。

さくらは、良子に喋ったのかと問いただすが良子は否定。カマをかけたのかのか、本当になにか感づいたのか……とさくらは疑う。さくらは、知られても平気よ、どうせ手がらを自分のものにしたいから人にはしゃべらないから、それに……ころすのだから、とさくら。

「今日はこのまま学校へ行くのよ。」、奥さんのことは後回しにする。「良子さん…あなたにはこれからがんばってもらわなくちゃ」。良子をささえながら登校する

校門のところで中島が走りよる。中島は回復している。中島さん、さくらに疑ってごめん反省しているというが、朝早くへんな男が訪ねてきたのでついしゃべったという、でもたいしたことないでしょう、といい、走去る。


(学校ひける) :さくら、良子にあきみの旅館をつきとめるように命令、しかし、案の定待伏せしている。

あきみの顔につばをはきつける。あきみ、あんたに会せたい人が入る、とうそぶく。まっすぐ谷川先生の家に帰る。谷川が作に帰っていて門前で待受けている。」
谷川先生は、「お客さんがみえているという電話が学校にあったもんだから、先に帰ってきたんだ」という。

〔■誰が電話したんだ? 「お客さんがみえているという」という語感には、家族からの電話のようなニュアンスがないか。あきみが電話したとは思われない。なるほど、近所の人を使って電話かけさせたのだな。〕

見れば、玄関先に「ばあや」がすわっている。さくらは思わず、「ばっ……」「ばあ……」と叫びそうになる。ばあやは「お嬢さまっ」と叫んで泣きながら縋り付く。ばあやのに持ちはハンドバッグ一つだけ。

ばあやは、「あの小さかったさくらお嬢ちゃんが、こんなに大きくなられて……」と言う。

〔■(ここはおかしい)。さくらが記憶に無いばあやをみて、すぐにばあやだと分るのもおかしいが、ばあやにしてもそれは同様である。二人共に思い込みである。可能性のある疑いとして、ばあやがはたあきみのこしらえた贋者であった、ということが考えられよう。しかし、ばあやは図像的にも母の女優時代のそれと同一であり、かつ村上医師が幻想であることの事前の証拠の発言者として存在していて、贋者ということはあり得ない。〕

さくらは涙をながしている。

「あなたがお生れになった時、お母さまはどんなに……どんなにお喜びになられたことか……」

「それなのに、あなたがたは突然……突然お姿をおかくしになられて……どうしたのかと、心配で心配で……」。

さくらは、平静さをとりもどしつつある。

ばあやは、母のことを尋ね始めるが、さくらは拒絶する。そして、

「わたし、あんたなんか知らないわ。あんたはいったいだれに頼まれてやってきたのよ」。

後ろから、あきみが、「オレさ」。そして、

「航空会社の知りあいに調べさせたが、この少女の母親は、外国には行ってない」

という。谷川先生は冷静に、「それはどういうことかね」と聞く。

「外国にいないということは、国の中にいるということです」

と言い、それ以上は「わたし個人の仕事にかかわることだから」言いたくないという。

さくらは、「安っぽい人情劇にまんまとのってしまって、涙なんか出るはずがなかったのに」。そして、あきみを指差し、人間のくずのようなおとこと言い、

「いずみがどこにいるかおまえさんが探しても絶対にわからないだろうよ。おまえさんがどんなふうに思っているかは知らないけど、いずみは今もちゃんといきているのだから」。

あきみは、これから東京へもどっていずみのかかりつけの医者というのを調べる、と言う。

ばあやは、「お嬢さま。あなたのお母さまのかかりつけの村上先生のことは、わたしが申し上げました……いけなかったでしょうか……?」と言う。

〔■ばあやは、いずみの意識の中にしか実在しない村上医師のことを知っている。足音も聞いている。ただし、ばあやが錯乱しているというわけではないはず。〕

あきみは、「村上はとっくに医者をやめているらしくて、はっしりした住所はわからないが、みつけ出すのにそれほど時間はかからないだろう」といい、出てゆく。

ばあやは、かえりがけに、村上の奇妙な出来事についてかたる。さくらの生まれる少し前、いずみが取乱した様子で帰り、ばあやも帰ろうとしたが、心配だったのでドアにミミを当てると、いずみのすすり泣き、同じ階下のだれかが来たので部屋にはいると、真っ暗で、いずみはだれかに電話をしていた。あいては村上先生だとすぐわかった。 そのままバスに乗って帰ったが、眠れなかった。

翌朝、夜明け前に出かけると、話し声。ばあやは村上先生の顔をみたことがない。 村上先生の帰る声がしたので、あわててエレベータにかくれ1階におりたが、だれも降りてこなかった。 そのままいずみのへやにあがったが、すでに村上医師はいなかった。

谷川は、ばあやを駅まで送りに行く。

さくらは、行かないという。ばあやは、「でございましょう……お嬢さまは生れたばかりでわたしのことなんか、覚えておいでじゃありませんもの……」(53p)

さくらは良子の家で勉強してくるといって、ふたりでゆく。玄関から出て、左方向に良子の家がある。谷川はばあやを駅に送る。これは、学校の方角で右側。

途中、タバコ屋の赤電話で村上先生へあきみのことを連絡する。「もしもし、先生。わたしです。いずみです。」「いそぎますから、例の話はあとでゆっくり……」 〔■良子の家の方角と、電柱との関係が奇妙。〕

良子の家にゆき、部屋に入り、さくらだけ窓からそとへ出る。くつははいていない。ソックスのまま通りに出て、タクシーを止める。「東京へやってちょうだいっ。いそいで」。

タクシーのなかで、包帯とカツラをとる。運転手おどろく。

あきみ、電車からおり、歩きながら、「もしや!!」と気付く。

「脳みそだけが娘の肉体に宿り……まさか!!」

「だが……、しかし……。人は……真理にしたがって生きるよりも……、作り出したかりそめのありえぬ夢に、自分自身をなぞらえ…人生を作りあげていこうとする。このオレのように……」。

とかっこよく決める。そして、走出し、

「そうさ。この世に希望と知恵があるかぎり、人はいつも罪深い……」。

〔■はたあきみは、おそらく正しい推理において、この推測にたどり着いているはずである。それは、読者も含めてだまされた話である。〕

公衆電話ボックス(黄色電話)に走り、「週刊ホスト」の編集部に電話し、自分のスペースを確保しておくよう頼む。

後ろから、手袋をした手で首筋に大きな針を刺す。

(Q最初は服の襟を通して刺してあるが、次のは首に直接刺してある。)
あきみはそのまま外へ出る。

道で、医者をしていた村上さんのお宅を尋ねる。道行く主婦が角を曲って五軒目という。右側に「岩山」という表札が有る。「なんだ、違うじゃないか。」。しかしあるくと、左側に「村上」の門の表札がある。が、門は崩れ、空地。空地に驚く。

急に針が効いてきて、倒れる。うしろにさくらがいる。「あがいてもムダよ。意識は有っても動けないのだから」。靴は履いている。

〔■実際の5件目が、村上医師の(かつて)の家だったのであろう。二人とも広い東京の同一地点に集合できたのであるから、そこがやはり村上医師の家なのである。そして、5件目の表札を替え、空き地におびき寄せているのである。40年以上前に死んでいる「村上医師」の(子孫の)家を訪ね当てるのは難しいのではないか。〕

表札はさくらがつけておいたもの。「かわいそうだから、最後にキスしてあげるわ」。

顔を、傍らの医師で何度も殴りつける。ブランデーをのませ、線路近くまで引きずってゆき、落す。「どうしても村上先生にあわせたくなかったのよ」。
あきみ、線路の上に落ちる。かばんは轢かれるが、本人は無事。

〔■針を抜かれて石で殴られていた段階で既に手を防御している。針麻酔は完全ではなかったのだろう〕

帰るために、タクシーを待っていると、道の向こう側に血だらけのあきみがいる。あきみ、道を渡って走ってくる。下り車線のトラックに轢かれ、右腕が吹っ飛ぶ。

〔■あきみは死んだのか? 死は確認されていない。「あの男は死んだわ…。自分から……ダンプカーにひきつぶされて」と良子に語るが、予断の可能性もある。はたあきみ=君は怨(あた)、見飽きたは。〕

さくらは走り逃げ、タクシーをつかまえ乗って、良子の家に帰る。
窓から入ってくる。靴は脱いでいる。

良子に、先生の奥さんを誘出すように命令する。先生はわたしがどこかへつれ出しておくわ。良子の母に挨拶して、さくらかえる。

さくら、和代になるしかないと思う。手にもしわが出来始めている。「たとえまた、同じ子になったとしても」


22. 水曜日(午後放校後か)

さくら、花模様のブラウス。胸元にフリル、腰にはリボンのベルト。白いフリフリのミニスカート。包帯はしてない。

母のあとを追って旅に出ると、谷川に告げる。「あなたのこと、心から愛しているわ……」。「わたしも………………」という谷川の言葉をさえぎり、「いつかきっと、あなたとめぐりあう日がくるわ。」

(Q谷川先生はさくらのことを愛しているのではないか?)

(Qテーブルの上のゴミみたいなのは何か?(102頁)文庫判にしかない。)

「たった一つだけ、お願いがあるの」、正確には二つだな。

「わたしが出ていったことは、奥さんにはだまっていてほしいの。少しのあいだ……」

「わたしの机や服なんかもそのままにしておいてほしいの。少しのあいだ」

カツラを取る。谷川には始めてみせるが、

「でももう、だいたい感づいていたわね」。アザを指さし、

「これはわたしの母がわたしにゆずったものよ」。

「もし、またあなたがこれと同じものをみたら、それがあたしよ……」。

訳は言えないといい、「わけなんてないのよ。だれだって子どもは親に似るしかないのよ。ただ、それだけよ。」

これはすごいテーマだな。
外に出て最後の食事をする。

さくらはビーフシチューを「うんとよく煮こんでほしい」と頼み、疲れたからクスリをかいに外へ出る。
タクシーに乗込み、お母さんが病気といって急がせる。「チップはうんとはずむわ」。

家にかえり、ライターを門のすぐ内側で落しておく。「これは和代があの人にプレゼントしたものだから……」。

〔■さくらがそれをいつ知ったのかなどはさほど問題ではない。〕家のなかに隠れている。

良子が和代をタクシーでつれてくる。

「ほんとうにうちの人があの娘といっしょに…………?」

「でも、そういえば、家に電話してもいないみたいだし……」。

ライターを見つける。玄関のドアをあけ、谷川のシャツをみつけ取ろうとするとバネ仕掛の大きなワナにかかる。ひもがゆわえてあり、和代は逃げられない。

〔■この段階で、良子は谷川に、和代も谷川に、状況を話しているはずである。また、良子と和代の二人同士も、計画を知っているはずである。〕

和代を手術台にのせる。二階の電話から村上先生に電話する。

「先生。わたしです」。

いずみとは言ってない。村上はタクシーでくるという。電話のコードが切れていることに良子が気付く。さくらも驚くが、確かに話をしたのだからそんなはずないという。電話が終ってから、良子がコードをはずしたと疑い、和代を助けるためかと、コードで良子の首を絞める。良子を後ろ手にしばり、ゆかのうえにきれをかけておく。

村上が来る。
和代も良子も、村上がみえない。いま明かされつつある真実。「手術台はこの前こわしたから、組立てるのに苦労したわ」。

〔■動物の死骸と同様、手術台も実在するのであろう。〕

麻酔針はさくらがもち、村上の指示で足の土踏まずから刺す。そこへ、谷川が来る。

「あなたっ。いつのまに。だましてたのねっ」

〔■Q何をだましたというのかな。〕

「しっかりしろっ。目をさますのだっ!!」

「さくら。村上主治医は、もう何十年も昔になくなって、もういないのだよ。きみのお母さんがまだ小さいころに死んでいるんだよ」。

「えっ!?」

「いずみお嬢さま。信じてはいけません。うそです!!ほらわたしは、ちゃんとここにいます。」

〔■村上医師は、さくらをさくらと呼んだことはなく、いずみと呼んでいる。つまり、いずみにしか見えないね。村上医師が見えるということが、いずみ=狂気であるのだね。ムラカミ=無から身〕

さくらは手に持っていた麻酔針を落し、放心状態となる。谷川は和代を助ける。

「こわかったわ……でもあなたの言うとおりにしたわ」。

「良子さん」と縛られている良子のコードからほどく。

(Qこの間の、谷川のうごきを推測すべきだね。)

「いずみさま」村上は、「アザと頭の手術のあとが、なによりの証拠だ」という。さくらはにっこり微笑み、

「そうよ。手術はおこなわれたのよ。このアザがそうよ。それにこの手術のあとがなによりの証拠よ」

と、カツラをとる。

「人間の脳の移植などできるはずがない!」

「村上先生にはできるのよ」

「それじゃ、からだはどこにあるんだっ」

「それはいえないわ……」

村上の指示があり、さくらは耳をふさぐ。



(時が経つ) :「わけはわからないが、なんだかさくらには人には言いたくないものがあるのだろう。こうしてわれわれがいるかぎり、よけい心を開いてはくれないだろう」

「でも、ほおってはおけないわ。なんとか方法がないのかしら。」

「今のままではムリだ……。どこにもいないはずの医者がさくらに見えるかぎり」

「今もこの部屋のどこかに村上医師がいるんだ」

「き 気味悪いわ」

「別に気味悪がることはない……それはただ、さくらの頭の中でのできごとだから」

「さくらをどこへつれて行こうと、それはついて来るだろう」「それを消し去る方法が見つからないのだ」。

(夜) :良子は、さくらちゃんといっしょにいる、という。

「わたしなら、ただのふつうの女の子だから、さくらちゃんは別になんとも思わないのです」。

〔■良子のこの、美醜からの自由の自覚!〕

良子は、母に説明してくれと頼む。それは危険だというが、和代が熱で倒れ、しかたなくすぐもどるからと谷川は和代を運びさる。

「ウーン」といううめき声が聞える。外へ出る良子。

地面から、手が伸び、「ウ〜ン」「ウウ〜ン」「さ、さくら」。

良子はいそいで二階に戻り、「お母さんが殺しにやってくる」とさくらを引きずり出す。道まで出る。いずみはメスをもって「も もう逃がさない!!」と言っている。良子は、母が生きていたことを確信する。

「さくらちゃん。この手をとってきいてちょうだい。あれはお母さんよ!!
お母さんが生きているこということは、脳の手術なんてなかったのよ」。

放心状態のさくらは、「お母さん……お、お母さん……」。

村上は、信じてはいけないというが、「グワ〜ッ」村上は砂のように崩れてゆく。さくらはお母さんをはっきりと認め、メスを持ってくるにも関わらず、走りより抱付く。いずみは思わずメスをおとし、母子抱合う。谷川、やってくる。さくらの頭の傷、そして顔のアザが消えてゆく。

〔■母の復活。問題は2点ある。一つは、二週間以上土中にいた母が生きているという不思議。だが、これは問わないでおこう。仮死状態であれば新陳代謝も弱まって、生きている可能性もあろうから。

今一つは、錯乱中であって脳移植手術を遂行中に倒れたままとなっているわけで、意識がさめた後も、その途中ではないか、ということ。実際、メスを持ってさくらを追いかけている。が、さくらの顔を見て、抱きつく。ここで、母と娘は和解する(ように見える)。

最初に書いたように、母は常時錯乱しているのではない、とうことである。ちょっとしたきっかけで錯乱したり正常になったりするのであろう。ちょっとしたきっかけとは、たとえばさくらの顔に傷が付く等。〕


23. 数日後

「クラス一同」と書いたリボンのある花束をもって、谷川と良子が見舞いにくるが、病室には入らない。

どうやら、母子で同じ病室にいるように思う。病室の前に花束をおいて、帰る。

「良子はほんとうにえらいな。よく一人で苦しみをたえられたと思う。良子のような友だちがいるかぎり、さくらやさくらのお母さんは、きっと幸せになれる。」

「それに……。さくらのお母さんが出て来た時に、とっさに、お母さんが生きていることは手術が行われなかったのだということに、よく気がついたものだ……」。

「でも、どうしてこんなできごとがおきたのかしら」

「それは一くちには言えないと思う……。」

「主治医といる時だけ、錯乱せずにすんだ……。だが、ほんとうはぎゃくなんだ。主治医といる時こそ、錯乱している証拠だった。お母さんは主治医がこの世にいるものと信じていた……。だからさくらもそう信じていた……」。

〔■谷川の解釈では、さくらは抵抗して、母親を石でなぐりつけ、気絶させたあとから、さくらの錯乱が始った、と見る。当該箇所を閲するにおそらくこれは正しい。いずれにせよ、髪の毛を剃るということが実際に行われ、手術は空想、という部分へ流れる、水も漏らさぬストーリー展開は絶妙。また、ここから谷川は一個の登場人物を超えて物語の語手としての地位にある。〕

「さくらの心の底で、お母さんの望みをかなえてあげたい気持ちと……、お母さんをにくむ気持ちと……、そして自分ではまだ気づかないおとなへのあこがれと……、そして幸せになりたいと思う気持ちが……、今度のできごとをひきおこした……」。

なるほど、谷川先生が標的になったのは、さくらの願望なんだね。

「だが、さくらをだれがせめることができるだろうか!」

「さくらはただ、敏感に感じとったのだ……、自分のまわりがいびつなことを……」

「いびつな者は、自分でそれを感じることはできない。そしてそれを感じたものがいびつにされる!」

「狂った世界の中にただ一人狂わない者がいたとしたら、はたしてどちらが狂っていると思うだろう?」

〔■さくら(あるいは母)がまっすぐで、一般人がいびつである、という意味の発言である。これは本作に沿った解釈なのだろうか?私には到底そうは思えない。

母が狂っており、さくらもそれに感染したとしか思えない。しかし、楳図の最終結論は決して、狂気(という恐怖)を外部のものとして置いて安心を保障するものではないのだ。恐怖はわれわれ読者も含めて、自己の内部にある。そう迫ろうとするのだ。これを、こけおどしとして気楽に本を閉じる者もいるだろう。が、他方、敏感な人間は自分の中に母=さくら的なものを感じ取り、恐怖が本の中でとどまるものでないことを知るわけである。

現実と虚構とは二律背反的に存在するものではなく、また現実が実在し虚構は空想なのでもなく、現実こそ虚構において成立するのである。実在するのはフュレー(質料)=ディナミスだけである。しかし、そこにエイドス(形相)=エネルゲイアを見いだすのが、人間的生であるから。

「人は……質料にしたがって生きるよりも……、作り出したかりそめのありえぬ形相に、自分自身をなぞらえ…人生を作りあげていこうとする。このオレのように……」〕

〔■アザ。それは、単なる転落へのヴィジュアル的効果ではない。自身の中に母の刻印があるということだ。「わけなんてないのよ。だれだって子どもは親に似るしかないのよ。ただ、それだけよ」。しかしこれはまた、母親の錯乱の感染を意味しているだけでもなかろう。母と娘の、不可逆的な関係。すなわち……〕

「神にとって人とは何か?
人にとって神とは何か?
そして………
神は人に何を与えたか?」


〔■神はみずからに似せて人を作った。しかし、神と人とは決して調和しない他者である。〕

参考として『わたしは真悟』。モノ―人―神―子供への遡及的な関係。 ラストで主人公が出ないのは『漂流教室』などと同じ。
http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/hobby/senrei1.htm


21. 2016年4月15日 14:39:04 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2397]

謎の日本人の部屋 楳図かずお

洗礼B 2011.12.28

 今回お母さん主役の話が多い内容です。(アンチお母さん派の私としては彼女の自分勝手な過去など別にどうでもよかったり…ゲフッ!)

実在の女優のパロディである田中絹子というキャラが登場し(田中絹代さん。最優秀女優賞まで取った本物の大物女優。今年の大河ドラマ「龍馬伝」に出てる寺島しのぶさんが35年ぶりに日本人で同じ賞を取ったことで一緒に名前が報道されてました。

そんな偉大な人のパロディになんてこと言いやがる、松子!)時代を感じた話でもありました。


 谷川先生…奥さんとの離婚届を持っていましたが日本の離婚制度は用紙の記入だけで成立するほどアバウトではなく戸籍謄本を添付しないと受け付けられない事になっています。

彼はおそらく区役所に用紙だけ提出した後さくらを連れてとっとと帰り

「谷川さん、この用紙なんですけれども必要書類が欠けていまして…あれ?谷川さん?谷川さーん!?」

という展開でさくらを騙すつもりだったのでしょう。(そもそも「愛は薄汚い。」発言をしたあの谷川先生が「好きだよ。」「愛してるよ。」などという寒い発言を連発している時点でさくらは気付くべきでした。)

奥様との仲も修復し(近くの病院に来たついでにしゃあしゃあと実家の彼女に会いに来ている。)さくらを精神科にかからせようとしたり、やっと真っ向からさくらと戦う気になったようです。


 上原松子(若草いずみ)…さくらの母親。田中絹子さんへの暴言については

「あの人は私みたいに不細工じゃないわ!」

の間違いだろと思わずツッコミを入れてしまいました。

(事実その後の彼女の醜い変貌ぶりは田中さんの比ではない。)

いつまでも美しくいたい気持は同じ女として分かりますがそれはそれとして性格の美しさも大切ではないのかと今一つ(一つどころか十個くらい。)共感できなかった女性です。

養われているからと言って親が常に彼女に媚びへつらっていたのも性格が歪んだ要因でもあるのでしょうね。

(「地下鉄に乗って」のアムールは毎日電車で通う距離を歩いて働きに出て親を養う日銭を稼いでいたし、昔なら子が親を養っているのもそう珍しいことではありません。そして当たり前のことですが金銭関係と親子関係は別の関係なんです。)

手術計画については何故男の子じゃいけないのか?という当たり前の疑問が今更ながら引っかかりました。美形の男の子になってまるで違う人生を歩むのも1つの手だと思うのですけど、ね。(そんなにスカートがはきたいんですか?)

 良子さん…さくらの親友。

「中身はお母さんでも体はさくらちゃんなのだから。」

と彼女の為に奔走してますが中身はどうでもいいのかい!と私は逆にツッコミを入れてしまいました。

記者にさくらの秘密を漏らしたくないあまりに貰った一万円札を破いていましたがそんなことをしたら返しようがなくなるという当たり前の現実はまだまだ見えていないようです。さくらの為に狂言に参加したり奥さんを騙す手はずを整えたり底抜けのいい人でもあります。そんな流されやすい性格だからいいように利用されてしまうんですよ、良子さん。


 上原さくら…人気絶頂の女優だったにしては三百万円の貯金は少なすぎやしないか?
(日本ではほぼあり得ない広大な洋館をバブルの絶頂で買ってしまったのと今まで無職で金が出ていくままにさくらと9年間過ごしたのが原因で貯金を食いつぶしてしまったのだろうか?)と預金通帳の額に疑問を持ってしまいました。

「大切に使う。」と言っておきながらタクシーの運転手に1万円丸ごとあげていたり(チップにしてもあげ過ぎです!)金銭感覚のきっちりしていない母子だったようです。

土地税も考えると物語終了後あの母子が路頭に迷うのもそう遠い未来ではないのかもしれません…ゴフッ!


洗礼C 2011.12.28

 まさか、まさかの展開の最終巻です。今までの展開を「脳移植なんてそんな、まさか。」と思いつつも信じて疑わなかった私としては最終巻でさわやかに騙された感を味わいました。

「娘の体を乗っ取った母親の話」ではなくて「娘の体を乗っ取った母親を演じる娘の話」(ややこしいなあ、もう!)だったとは夢にも思っていなかったのであの終わり方には救われました。

怪物など外界からの恐怖ではなく人間の内面から来る恐怖を描くのに楳図先生以上の人はそうそういないのではないでしょうか?

まさに人間心理からくる恐怖を描いた第1級の作品と言えます。
思わず1巻から読み返してしまいました。


 上原さくら…登場人物、読者を含んだほとんどの人間は彼女に秘密(脳移植。)があると信じてそれを暴こうと躍起になっていましたが実は秘密なんて始めから無くて全てはさくらの妄想だった(それはそれで危ないが。)というまさかの展開を盛り上げてくれた主人公です。

(ということはガス事件、ゴキブリおかゆ事件、ムカデの自動車事故事件等々は全て母親でなくこの子の頭で計画した物ということになる。そう考えると許し難いキャラでもある。)

その妄想に騙された者に囲まれた中で1人だけ正気の者がいたとしたらはたしてどちらが異質と見られるだろうか?と谷川先生も言っていますが

(セリフを読み解いてみるとここでいう「正気の者」って妄想に浸かっているさくらじゃなくて谷川先生の事では?)

その通り全てはまやかしだったのです。

1巻から読み直してみると「今度こそは普通の女の幸せをつかむわ。」と言っていた母親のセリフをさくらは震えながらも聞いていたし(しかしあれで普通の生活といえるかは大いに疑問ですが。)幼い頃から女優業をやっていてプライベートの無かった母親の人生を探るのは案外簡単なことだったんでしょうね。

(リバイバル映画が大スクリーンで再放映されているくらいだし人気があった分関連事項も見つけやすかったのでしょう。)

ところで、谷川先生宅、良子さん、廃屋に生き埋めにした中島さん、殺害した記者(正確には前方不注意によるひき逃げという事故だが、展開を考えるとさくらが殺したも同然な気が…ゲフッ!)と水に流すには多大すぎる迷惑をかけているのですが、事後処理はどうなるんでしょう?


 上原松子(若草いずみ)…1週間以上飲まず食わずで生き埋めにされていたのに何故か無事だったさくらの母親です。

(そもそもどうやって呼吸ができたのだろうか?)絶食の影響か少しスリムになっています。

彼女の子供時代の写真に良子さんがハッとしている辺りさくらはやっぱり母親似のようですね。

物語は彼女が美しさを失う事を恐れるあまりの強迫観念から架空の医者を捏造する所から始まりますが、改めて読み返すと当時のアパートの壁中に自分の写真を飾りまくっていた(しかも全部大判ポートレート…ゴフッ!)ナルシストぶりが分かり改めて引いてしまった女性です。

さくらが成長した後も「信じられないだろうから持ってきてあげるわ。」と持って来たのはやっぱり大判ポートレートで(そんなに美しく取っておいたんなら飾っておけば?)よっぽど自分大好きだったんだなあ〜と改めて認識しました。

でもね、人間最後にものを言うのは見た目の美しさでなく心の美しさなのよ…と、言った所で見た目の美しさだけで十年以上も稼いできた人には響かないんでしょうね、きっと。

 谷川先生…今回の事件で1番迷惑を被ったご家庭。(特に奥様。)

先生自身は知ったかぶりで物語をまとめていますが、和代さんの立場からすると「妄想だからしょうがないよ。」と軽〜く流せるかどうかは大いに疑問だったりもします。(私なら「取りあえず気の済むまで殴らせろ!」と暴挙に出てしまいそうです…ゴフッ!)

最後は奥様の方も熱で倒れてしまったし、おばあちゃんは交通事故で入院したままだし(さくらといい松子といい女性陣は入院してばっかりです。)本当にあれでいいのか、許せるか、と被害状況を考えるとやっぱり今一つ冷たさを感じてしまう旦那様です。

(いや、男とはそういう生き物なのかもしれないけれど。でも嫉妬深い女としては納得しきれないものが残るのよ、先生。)

 良子さん…小学生であそこまで友情に殉じることができるのはすごいと思いました。(現実は厄介事に関わりたくないとばかりに遠のいていく人がほとんどなのですが。偉すぎます。)

あの広大で不気味な屋敷で子供2人で過ごすだけでも怖い上に、母親の埋め立て場所から手が出てきたときにはパニックを起こさずさくらと共に逃げ出そうとした(ほとんどの人は怖さの余り1人で逃げるだろう。)勇気には感銘を受けました。地味系だけど(禁句。)とてもいい子ですよね、彼女。
http://nazononihonjin.blog10.fc2.com/blog-category-7.html


22. 中川隆[2338] koaQ7Jey 2016年4月15日 15:10:39 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2398]

憧れのマンガメシ(食材:ゴキブリ)2010.12.24
Posted by giriko | Filed Under 虫食エッセイ
http://mushikui.net/?p=32

むしくいが目指すべき憧れの皿

登山家がエベレストを目指すように、自転車乗りがツール・ド・フランスを目指すように、むしくいにも目指すべき皿がある。

それは楳図かずおのマンガに登場するゴキブリ粥だ。

ホラーマンガには何かと「トラウマ」がつきまとうが、ゴキブリ粥は実に多くの人のココロに悪夢をぶちまけたひと皿なのだ。

ゴキブリ粥が登場するのは、1974年から「週刊少女コミック」(小学館)で連載された『洗礼』という作品。

「人生をやりなおしたいわ!」と渇望する元大女優の母に脳を入れ替えられた少女が巻き起こす愛憎劇で、生まれ変わったヒロインさくらは「普通の女の幸せが欲しい」と担任教師に目をつける

(繰り返すが週刊“少女”コミック連載です)。

ところがどっこい独身だと思っていた担任には妻と子どもが!

しかしそこでホラーヒロインがサックリ諦めるはずもなく、妻の座を奪うべく(小学生なのに…)、陰険極まりない攻撃が始まるわけです。

そしてすったもんだした挙句、怪我を負ってしまった奥さんに さくら が かいがいしく作ってさしあげるのが、嫌がらせ度200%のゴキブリ粥。

包帯姿で床に伏せっている美人妻。そこへ朝食をしずしず食事を運んでくるさくら。

そして土鍋の蓋をパカッと開けると……

ゴキブリ! ゴキブリ! ゴキブリ! ゴキブリ!

ぎゃーーーーーー! だ、だれかーーーー!

ちなみにお米もちゃんと入っています。

私が『洗礼』を読んだのは5歳の時だ。

教会のバザーで手に入れたものの(1冊10円也)、

「脳ミソ手術」と「ゴキ粥」の強烈なおぞましさに、半泣きで おむかいのおばちゃんに引き取ってもらった。捨ててしまうと呪われそうな気がして、だからといって家に置いておくのもチビりそうなほどに恐ろしかったので……。

そうして一端は手放したものの、ゴキブリ粥はあまりにもインパクトが強かった。

怖いもの見たさで「ゴキブリ粥をもう一度!」と、中学高校大学社会人、気づけは『洗礼』を繰り返し繰り返し読むハメに。

そして……ジワジワと……

ど ん な 味 が す る ん だ ろ う?

これをきっかけに、マンガの登場人物たちが口にする虫の味に興味を持ち、今に至るわけです。

さくらちゃんが調達したゴキブリは、何ゴキブリか?

昆虫食にも草分け的存在はいるもので、日本で唯一の昆虫料理研究家・内山昭一氏は今では私の師匠的存在だ。

マンガの虫への興味から師匠が主催している昆虫料理イベントへ参加するようになり、最初はなんとなくハードルが高い気がしてゴキブリを食べる回は避けていたものの、慣れとはコワイもので2年もたつとだんだんと普通に食べられるようになっていた。

これでゴキブリ粥が食べられる! 思えば長い道のりです。

『洗礼』のヒロイン・さくらがお粥に入れたのは、日本の家庭で見られるクロゴキブリかチャバネゴキブリだと思われる。

ゴキ粥のシーンを見直してみると、ざっと20匹は入っている具沢山粥だ。

マダガスカルゴキブリなどの南方系ゴキブリと比べると、日本のゴキブリは動きがとても素早い。

粘着シートタイプの駆除アイテムを使ったとしても、20匹も集めるのはさぞかしご苦労だったに違いない。恐るべし、女の執念。

ああでもいるよな、嫌がらせには惜しみなく労力を発揮するタイプって。

もしくはさくらの家の2階には、頭をくりぬかれた犬猫の死骸がゴロゴロ転がっているので、雑食性の虫は捕まえやすかったのかもしれない。想像したくないけど。

しかし残念(?)なことに、我が家には短期間で20匹ものゴキブリをおびき寄せるようなエサがない。そこで師匠の家で食用に飼育しているものを譲ってもらうことにした。

厚意でゆずってもらうのだから、もちろん用途は説明する。

えーと、『洗礼』という漫画に登場するゴキブリ粥がありましてね……。

「ああ、ゴキブリは病人にぴったりですよ。免疫力が高まりますし、

養●酒を飲むよりずっといいんじゃないかな」

おお、ゴキブリ粥が昆虫料理研究家のお墨付きになった!

そもそもゴキブリは薬として利用されていた歴史がある。

破傷風には煎茶、風邪にはゴキブリ酒、寝小便には黒焼き、霜焼けにはペースト。

そんな民間療法もあれば、漢方ではサツマゴキブリが血管拡大の特効薬とされているので、ED(勃起不全)改善にも効果が期待できるという。

チャバネゴキブリは西洋で心臓病の薬に利用されていたという。

つまりゴキブリ粥には、嫌がらせとは言い切れない薬効がありそうなのだ。

ゴキブリの成虫は少々殻が固いため胃腸に疾患があるような病人には向かないが、

さくらがお粥をこさえた相手がふせっていた理由は“捻挫”である。不本意なビンゴ!

入魂の一撃をくらわせたはずが(くらってるけど)、

結果としては回復を助けるメニューになっている。

なんとまあ、さくらはどこまでも報われない娘でございますことよ……。

ゴキブリの薬効を知り、ホラー・ヒロインの悲哀がより深まる。

いよいよ試食! ゴキブリたちがお粥になる日

そしていよいよゴキブリ粥の試作当日。

昆虫食に理解のありそうな知人らに「ゴキブリ粥を作ります!」と宣言すると

『ぐわし! 楳図かずおです』の伊藤監督がビデオをまわしてくれるといい、

雑誌『ナックルズ』も来るという。

その他おなじみの虫食いメンバーも加わり、ちょっとしたゴキ粥パーティ状態になった。

まあ楽しい。さくらのようにらららと踊りたくなる。

師匠に譲ってもらったアルゼンチンゴキブリは全部で8匹、

さくらちゃん粥(勝手に命名)を再現するには少し少ない気がするので、ボリュームのあるマダガスカルゴキブリも数匹加えることにした。

ちなみに師匠の家で繁殖されているマダガスカルゴキブリは、もとはといえば『ナックルズ』から持ち込まれたものだ。帰れ、ふるさと(の胃)へ。

会場となる店に集まり、試食メンバーそれぞれがカメラに食材を収めたら、いよいよ調理である。


http://mushikui.net/wp/wp-content/uploads/2010/12/be84746bea9c07a7b9b91a2cd6258a1f.jpg
↑こちらがナックルズ企画の子孫。

海外では「手乗りゴキブリ」と呼ばれているだけあり、おとなしくくつろいでいる様子が可愛らしい。

(まあ、いくら可愛らしくしていても、食べるんですがね・・・)

『洗礼』では”ギャー”と床にこぼしてしまい、結局ゴキブリは1匹しか食べなかったが、せっかく作るのならば全部しっかりたいらげたい。

殻ごと全部美味しく食べられるよう、素揚げにしてトッピングすることにする。

以下、簡単ではありますが、レシピをご紹介します。

★さくら特製 ゴキブリ粥(ムシモアゼルバージョン)★

■材料

・ゴキブリ(今回はアルゼンチンゴキブリとマダガスカルゴキブリを使用)

・市販の白粥

・しょうが

・油、塩、こしょう


■作り方

@ レトルトの白粥を温めて器にあけ、好みですりおろしたしょうがを加える。

Aゴキブリを水で洗ってゴミをおとし、キッチンペーパーで水気をぬぐう。※のんびりした動きのゴキブリも、このときばかりは逃げようと必死になるのでご注意を。

B油を熱し、ゴキブリを約3分揚げる。※油に放つと体の中身がはぜて危険なので、熱した油に虫を入れたら、すぐに蓋をしましょう。


http://mushikui.net/wp/wp-content/uploads/2010/12/a4042828365ceacd9f525c64bdac34d3.jpg
こんがり揚がったゴキブリ

Cカラッと揚がったゴキブリを皿にとったら塩こしょうをして、@の上にトッピングして完成。


http://mushikui.net/wp/wp-content/uploads/2010/12/763b70655a5c8db68ccd26a47f343ab0.jpg
できた! できた! さくらちゃんのゴキブリ粥ができた!

蓋をパカッとあけると、ふっくら白い米の上に

照りのあるゴキブリが映え、なかなかのインパクトだ。

いただきますの合図は、楳図マンガ風に「ぎゃっ!」

冷めないうちに米と揚げゴキブリを一緒に口に入れ、

殻が少し固いので奥歯でしっかり噛み締める。甘みや旨みがあまり感じられないのは、

揚げたことで体の中 身がはじけて出てしまい、肉が少なくなったせいかもしれない。

ゴキブリは白身魚や小エビのような味といわれているだけあり、味そのものにクセはない。素揚 げにしても意外とさっぱりしている。決して不味くはないが“争って我れ先に”とまでは言い難いかも? ネコはウニャウミャとゴキブリを食べるらしいが、う ん、お腹が空いていたら食べますかね、くらいの味である。

ナックルズチームも恐々口へ……

肝心の味は、アルゼンチンゴキブリと比べるとマダガスカルゴキブリは身がたっぷりしていて食べごたえがあり、スパイスやハーブとよくあう独特な風味があった。

今回は”さくらちゃん粥”として白粥にショウガを加えたが、

ゴマ油とネギをたっぷり加えた中華風粥にすると、もっと美味しいので

ぜひお試しを(注:自己責任で)。

後日、参加メンバーから感想が寄せられ

ナックルズチーム:「歯に何かがつまっているから引っ張り出したらゴキの羽だった。絶えられないわよ」

虫食初体験S氏:「あの後ハンバーグを食べましたが、胃からせりあがってくるのは

土と草をまぜたようなあの虫の香りばかり」

とのことだった。また、試食会当日風邪をひいていたというメンバーは

「翌日咳が減ってきた! 薬効効果!」

と色めきだっていたが、うん、それ多分、自然治癒。

ホラー漫画を読み始めてから三十うん年、

憧れ続けてきた料理もこうして食べてしまうと意外とあっけなく、少し寂しい。

次は何を食べようか。


【 ゴキブリ調理メモ 】

★ゴキブリは中までしっかり火を通しましょう

★生きたまま油に放つと油がはねて危険なので、熱湯をかけて下処理してから調理してもいいでしょう。

★ 成虫を使う場合は殻が固いので、脚は切り落とし、腹をひらいてから、中の身だけをこそげとるようにして食べます。

★マダガスカルゴキブリの肉は独特な風味があるので、ハーブやスパイスで臭みを消すと食べやすくなります。

★ゴキブリは雑食なので、何を食べているか分りません。身近なものを捕まえて使う場合は3日〜1週間ほど絶食させて糞抜きをするとより衛生的に食べられます。さらに味をよくしたい場合は、絶食後、しばらくの間果物などを与えるといいでしょう。

★捕獲したゴキブリをすぐに食べたい場合は、頭と一緒に消化器官を引き抜くか、キッチンバサミ等でお腹を開き消化器官を取り除きましょう。
http://mushikui.net/?p=32

(おまけ)

こちらから、ゴキブリ粥制作風景をご覧いただけます↓

■動画「恐怖! ゴキブリ粥」

https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B4%E3%82%AD%E3%83%96%E3%83%AA%E7%B2%A5

コレを友人の同僚が自宅で見ていたところ「なんてものを見てるのよ!」と、奥様に怒鳴られたそうです。閲覧は自己責任でお願いします。ぐわし!


23. 2016年4月15日 20:12:57 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2401]

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楳図かずお ヘビ女シリーズ


「口が耳までさける時(1960年・全34ページ)」

「ヘビおばさん(1964年・全131ページ)」

「ママがこわい (1965年)」

「まだらの少女 (1965年)」

「へび少女(1966年・約210頁)」

「蛇娘と白髪魔(1968年・全43ページ)」

____

へび女 (ビッグコミックススペシャル) 楳図 かずお


オリジナル版が読みたい投稿者 タダ 投稿日 2009/4/17

面白い話なのですが初出にかなり手が加えられています。
絵もそうなんですが「へび少女」等は結末も変更されています。

オリジナルでは洋子は助かり元気になりますがこれでは…。
これはこれで面白いのかも知れませんがやはり最初のがいいですね。
三作品とも花文庫版の復刻を望みます。


せっかくの名作が台無し 投稿者 浪花元子 投稿日 2012/6/26

収録されている3作品はどれも名作なのに改変しすぎです。

最後の「へび少女」を無理やり最初の「ママがこわい」に繋がるようにラストを変えてますが破綻した展開。

絵柄の違うコマ、ページの挿入でその次のページとの繋がりが悪い。
オリジナルを知っている者にはちょっと・・・
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%B8%E3%81%B3%E5%A5%B3-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB-%E6%A5%B3%E5%9B%B3-%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A/dp/4091878911


オリジナル版 『ママがこわい』『まだらの少女』 (講談社漫画文庫)
http://www.amazon.co.jp/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A%E7%94%BB%E6%A5%AD55th%E8%A8%98%E5%BF%B5-%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89-%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3-%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E7%89%88%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%861-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%BC%AB%E7%94%BB%E6%96%87%E5%BA%AB/dp/4063707628/ref=pd_bxgy_14_img_2?ie=UTF8&refRID=1KC26PB1QRS989R9NX3V

オリジナル版 『へび少女』 (講談社漫画文庫)
http://www.amazon.co.jp/%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A%E7%94%BB%E6%A5%AD55th%E8%A8%98%E5%BF%B5-%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89-%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3-%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E7%89%88%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%863-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E6%BC%AB%E7%94%BB%E6%96%87%E5%BA%AB/dp/4063707687/ref=pd_sim_14_4?ie=UTF8&dpID=51qWbWmr4-L&dpSrc=sims&preST=_AC_UL160_SR114%2C160_&refRID=0BGZ80Y10NVPN6QMENK3

近年出版の物は、初出原稿から大幅に加筆・増補されてて終わり方も全く違うので、今回ようやくオリジナルバージョンで読めて非常に嬉しかった。

ただし、加筆されたバージョンの方が絵に迫力があるのは間違いないので、初めて「へび少女」を読むって人には、加筆後の作品の方がより楽しめるだろうなとは思います。


____


映画 まだらの少女
http://www.bilibili.com/video/av1658708/


出演

山川京子:成海璃子
中村弓子:中村有沙
山川マリ子:鈴木理子
京子の母:田中美奈子
京子の父:嶋田久作
蛇女:中原翔子
医師:安井昌二

スタッフ監督:井口昇
脚本:小中千昭


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へび女たちの墓標-楳図かずお
http://blog.livedoor.jp/yamadi99/archives/39389330.html


楳図先生は故郷である奈良県宇陀郡曽爾村、曽爾高原お亀池に伝わるへび女伝説に由来するところが大きいとおっしゃてます。

@ 「口が耳までさける時(1960年・全34ページ)」


遂にホラー漫画の歴史を語る上で絶対に欠かすことのできない作品を語る時が来ました。『口が耳までさける時』を語る時です。

1961年の貸本漫画『虹』29号に掲載。

主人公はさくらちゃんと言います。

生まれた家は大変貧乏だったため、さくらちゃんは泣く泣く養子に出されることとなりました。どれくらい貧乏かというと、雨が降ると屋根の隙間からあちこち雨漏りする程度の貧乏です。

もらわれた先は大変立派なお屋敷でした。迎えに来たばあやに案内されて邸内に足を踏み入れると、頭上から大きな蛇が降ってきてさくらは悲鳴をあげます。

震えるさくらに、ばあやはへびは奥様の大事に飼っているものだから手荒に扱ってはいけないと忠告します。

新しいお母さんはどんな人なのかしら。さくらは緊張と不安でいっぱいでした。


案内された部屋でさくらはとうとう養母と顔を合わせます。

裾の長いドレスを華奢に着こなした背の高い婦人は、とても美しい人でした。

ですが今までの環境とは違いすぎて、さくらには何もかも異質で異様に見えました。


母さんと呼んでと差し出された手をさくらちゃんは恐る恐る握り返します。

養母の手は驚くほど冷たかったのですが、それ以上に驚いたのは、養母の首が伸びてまるでへびのような恐ろしい姿に見えたことでした。


後に他の作家も多用した首が伸びる母の伝説的カット


屋敷には異様なことが多くあり、さくらの部屋には自分のものではない子供の衣服が残されていました。はやくも実母が恋しくなったさくらは、与えられた部屋でまくらを涙で濡らしながら眠りにつきます。


すっかりさくらが寝入ってしまうと、ドアを静かに開けてスルスルと長いドレスの裾をへびのように引きずって養母が入ってきました。

さくらの寝顔を覗き込んでご馳走でも見るかのようによだれを垂らし、部屋を出て行きます。

吸い込まれそうな黒ベタです

翌日、疑惑を募らせたさくらは入ってはいけないと言われた養母の部屋に忍び込みます。

そこで目にしてしまったのは、生きたカエルに喜々としてむしゃぶりつく豹変した養母の姿でした。なんと養母はへび女だったのです。


へび女は寒い時期を冬眠して過ごすために毎年貧しい少女を養子に貰ってきては自分の栄養としていたのです。

はたしてさくらは無事に本当のお母さんの元に戻れるのでしょうか!?


とにかく!へび女はここに誕生した!

だかしかーし! へび女との戦いはまだまだこれからだ!

次は1964年の『へびおばさん』


A へびおばさん


この『へびおばさん』 は資本漫画なのであまり有名じゃないね。

へびにはヤニがきくというのはこれが最初です。


2作目にしてもはや伝統美を感じる終盤の追われるシーン


低迷を始めていた貸本漫画に作品を寄せながら、楳図先生は少女漫画誌にも作品を寄せるようになっていました。当時の少女漫画誌はまだ草創期で、多種多様な作家陣を取り込んでいたのです。

「うれしい、たのしい、こわい」が当時の少女漫画誌の三本の柱として据えられていました。

その一柱「こわい」が爆発したのが 1965年『ママがこわい!』が『少女フレンド』に連載になった時です。


B ママがこわい


退院を明日に控えた母親の様子を見に病院に来た弓子は、隔離病棟にいるへび女の噂を耳にする。

興味本位で足を運んだ病棟には、噂のようにウロコで覆われた恐ろしい容貌の女はいなかった。

ただ一人、母に瓜二つの美しい女性が重い鉄の扉の向こうに閉じ込められているのみであった。

弓子に「カエルを持っていないか、絵でもいいから欲しい」と鬼気迫る様子で迫る女性は、見た目は普通だがどうやら狂人のようである。

薄気味の悪さを感じた弓子は、なかば奪われるような形で教科書にあったカエルの絵をくれてやり、その場を後にする。


翌日、退院する母を迎えに来た弓子は思いもよらないことを医師から聞かされた。

昨晩母の身に何事かが起こり、記憶喪失になってしまったというのである。

自宅療養となり帰ってきた母は、記憶喪失だとはいえどこか気味が悪く、まるで違う人のようだった。

体は驚くほど冷たく、以前とは違って生肉や生卵を食べたがるようになり、寝床には得体の知れないウロコが落ちている。

「本当は病院で見たへび女なのではないだろうか」

心の中で沸いた疑念を確かめるために、弓子は採ってきたカエルを母に見せ、ある罠を張った。

その夜のこと。

追い詰めたつもりが逆手に取られ、父も祖母も出払ってしまった家で弓子は母―へび女に追い詰められ、その正体を明かされる。

弓子が思っていたとおり、病院でヘビ女は実母と入れ替わっており、へび女は弓子をとって食ってやろうと狙っていたのである。

折良く帰宅した父と祖母にその場は助けられたが、母が実はへび女だという弓子の言葉を鵜呑みにするものはいなかった。

まんまと家の中に侵入した魔物の陰に怯えながら、弓子は必死に逃げ道を探す。

何がこわいって、一番ゴゴがやだなぁと思うところは、このへび女、ただのキ⚪︎ガイなんですね。

初代も含めてへび女は自分をへびの生まれ変わりだと思い込んでるただの人間なんです。


この『ママがこわい』の大反響により、楳図先生は恐怖漫画家の第一人者となりました。

そして同時に、へび女は狼男や吸血鬼と同じようにポピュラーな恐怖の怪物として扱われていくようになったのです。

「ママがこわい!」によってへび女のブームは到来し、女児だけではなく男の子までも恐怖作品を読んで狂喜する時代が到来しました!

この1965-1970年頃のムーブメントが第一次ホラー漫画ブームです。

ヒット作ということで、「少女フレンド」は恐怖漫画を必ず一作は誌面に入れるようになりました。

次いで描かれたへび女ものが、「ママがこわい」の続編「まだらの少女」です。

ヘビ女との戦いはまだまだまだこれからだ!!


C まだらの少女


へび女の恐ろしい出来事から数日が経過し、弓子は親戚の家を目指し、単身長野県の山深い村を訪れていた

だがたどり着いた村の人たちはどこか様子がおかしい。

彼らは東京からくると予言されていたヘビ女のことを恐れて、同じく東京から来た弓子を邪険に扱うのだった。

唯一人優しく接してくれる親戚の京子に案内されて村を回るうちに、何か見えない力に誘われるかのように、二人は村はずれの廃墟に迷い込む。

かつてヘビの子を産んだ血筋の者が住んでいたというその屋敷はへび屋敷と呼ばれ恐れられ、今は住むものもなく荒れ果てて無数のヘビの住処となっていた。

しかし、そこで二人を待ち構えていたのはヘビだけではなかった。

なんと東京の病院にいるはずのあのヘビ女が姿を現し、牙を剥いて襲い掛かってきたのである。

なんとか逃げ切った二人だが、途中で京子はまむしに足をかまれ、治療のために病院で血清を注入することとなる。

ところが、その血清には二人の後を追ってきたヘビ女の血が混入されていた。

怪物の話を聞いた村人の手によってヘビ女は屋敷とともに火をかけられ、哀れな最期を遂げる。

その死により弓子の疑いも晴れたのだが、本当におかしなことが起きはじめたのはそれからだった。

ヘビ女の騒動から京子は歯が牙のように鋭くなり、無意識のうちにカエルを採ろうとしたり奇行が目立つようになってきていた。

それだけでなく、当事者しか知りえないはずの東京でのヘビ女との出来事をまるで見てきたように語り、とうとうへび女そのものになったかのように振る舞い、弓子に襲い掛かってきたのである。

へびの血が体内に入ったことで京子はへび女になってしまったのだ。


身の危険を感じた弓子は東京へ帰ろうと思い立つが、京子の妹マリ子に阻まれて帰る術を無くしてしまう。

京子に噛まれたマリ子はへびの神通力によって、主である京子の意のままに操られるようになっていた。

遂には家主であるおじとおばも京子に操られてしまい、味方のいなくなった弓子は京子ー復讐に燃えるへび女にとらわれてしまう。


果たして弓子の運命やいかに?!と、いうわけで正体不明のへび女に襲われる恐怖からプラスアルファ、へび女に友達も周りの大人も操られていくようになる侵略 SF的な恐怖が新たに追加されています。

この後先生は1966年の「へび少女」では、自分がへびになってしまう恐怖を描きました。

とんで1968年の「うろこの顔」「蛇娘と白髪魔」を最後に、一旦楳図先生はへび女ものから距離を取ります。ハマー的へび女は必見!
http://blog.livedoor.jp/yamadi99/archives/39389330.html



24. 2016年4月15日 20:27:46 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2402]


へび女/楳図かずお 2008年01月10日


さて、この「へび女」。。。。

Amazon のレビューにも、今50歳代の母上様が小学当時に泣きながら読まれたというコメントが載っていて、今よりも刺激物の少なかったあの当時、小学校の女の子には相当怖かったんだろうなぁとお察し申し上げる事です。

「ママがこわい」「まだらの少女」「へび女」の連作集となっていて、「ママがこわい」では主人公の弓子の母親が入院中に、へびに取って代わられてしまうのです。

ともかく、自分の母親がいつの間にかへび女にすり替わってしまっていて、生卵を飲み込んだり かえるを見てヨダレをたらしたりと言う異常行動をとる事の恐ろしさ。

母であって母でない、一番身近で一番頼り切っている存在の母が、実はへびであるという…なんともその設定が残酷で恐ろしいですね。

「まだらの少女」は、「ママがこわい」でいったん倒れたへびが、執拗に弓子を追いかけてくるお話です。

気分転換に行った親戚の家、美土路村(『みどろ』村というこの響きがまたなんとも!!)には、実はお母さんの実家があるだけじゃなくへび女の実家もあったという。。。

このへび女が絶命しても、恐怖は終らないというお話ですが、へび女の絶命のシーンはなかなか壮絶で、そりゃトラウマにもなるわなぁって言う感じですね。

「へび女」は、実は一連の「へび女」の誕生を紐解く漫画。

明治40年8月に中村利平が沼のぬしである大蛇を猟銃で撃ってしまいます。

その後利平は不可思議な死を遂げるのですが、時が流れてその孫である洋子という少女に降りかかるへびの惨劇!!そして洋子は…!!

ネタバレ↓

「洋子はこのまま、冒頭の「ママがこわい」に登場するへび女になってゆくという、めぐり合わせの物語で最後は「は!」っとさせられますよ。」

わたしの中で楳図作品のへび女系で好きなのは「うろこの顔」が一番かな。

余談ですが、寝ている少女たちの見上げる天井の上で「ずり、ずり」と、へびの這う音がして恐怖を誘うのですが、うちの昔の家もこんな感じでしたよ。

うちはネズミがものすごく多くって、よく天井を右から左、左から右と走り回っていました。ネズミの運動会と言うやつです。そりゃもう大きな音がして、ほこりも落ちるし迷惑千万。

で、時々そのネズミを食べにへびが入り込むらしく、そういうときにへびが動く音が聞こえたものです。わたしたちはネズミがともかく嫌だったので、へびは救世主みたいなもんで、何匹か住み着いてもらえないだろうかと真剣に思っていました。猫を飼ったこともあるけど、母親がアレルギーを起こして喘息になってしまうし、そもそもヘタレな猫でネズミ退治なんてしないし。

イタチなどもネズミを食べに来るのですが、イタチだとネズミと同じ感覚なのです。へびは人間には実害がないので我が家としては「へび、大いにウェルカム!」だったんだけど、、、。

まぁ、ペットにするほどは好きじゃないけど、背に腹は変えられないという感じでした。
昔の話です(^^ゞ
http://narenohate.blog25.fc2.com/blog-entry-514.html


25. 2016年4月15日 20:32:14 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2403]


(熱血!マンガ学)へび少女 「ズルズル」「ザザザーッ」…恐怖の世界へ 

伊藤遊 2007年09月04日

 クモや猫、蛇などに私たちが抱く生理的な怖さをいやというほど増幅させた楳図かずお の初期の代表作だ。

 物語は明治40年夏、主(ぬし)がすむという沼へ利平が狩りに行く場面から始まる。

沼から大蛇が現れ、利平は片目を撃ち抜いたが、帰宅後、たたり殺される。

時は流れて、利平の孫娘の洋子は身内が亡くなり、隣村の金持ちの養女になる。

しかし、片目に眼帯をしたその女主人は、主の生まれ変わりの蛇女だった。

洋子への復讐が始まった。

 蛇女は洋子を蛇にするため、そぎ落とした自らの鱗や生きた蛇を無理やり飲ませようと、逃げても逃げても「ズルズル」「ザザザーッ」とはって追ってくる。

狂気の眼と裂けた口を強調した蛇女の細密な描写。

追われる美少女たちの表情のアップ。

絵も筋立ても、あらゆる恐怖の技法を駆使した楳図ワールドに読者は引き込まれていく。

 洋子は結局、抵抗むなしくへび少女と化す。

読み進むうち、多くの読者が、親友や愛する母が蛇になり自分を襲う状況を想像させられ、身震いするだろう。そして自分自身が、地面をはい、口が裂けて蛇に変身してしまうことも。その恐怖は底知れない。

 家族や知人、そして自身が、不可抗力的に別の何者かになってしまうという不安は、例えば「老いる」ことも含め、楳図のテーマの一つなのである。
 (京都国際マンガミュージアム研究員 伊藤遊)
http://book.asahi.com/reviews/column/2011072800086.html


26. 2016年4月15日 21:31:00 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2405]

楳図/ヘビ・シリーズ
http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/umezu/kazumi/kazumi02.htm

樫原かずみと高橋半魚の楳図対談です。
対談期間: 2000-02-15〜03-15

◆ はじめに

半魚 今回第二弾は、「へびモノ」と称して、楳図作品のうちのヘビ作品全体を捉えてみたいとおもいます。

樫原 これなら、大抵のヒトなら「ああ、ヘビ少女ね!」と興味を持って読んでくれそうですねー。

半魚 しっかし、おおきなテーマ設定をしてしまったなあ、と少々後悔もしていますよ(笑)。
資料的にも、まだまだ全然揃ってないところなので、僕自身は、すっごく不安なんです、あはは。

樫原 でも、数えるとそれほど多く描いてないような気もしますよね。

半魚 そうなんですよねえ。「楳図=ヘビ」みたいな図式があるわりには、ねぇ。

樫原 それだけ、強烈な印象を読者に与えているんでしょうねえ。

半魚 そういうことですね(笑)。

楳図のヘビ全般について考え始めると、たぶん物凄い根気が要ると思うのですけど、で、それじゃあ、大変すぎますから、ともかく気楽に、おいしいとこ採りでやろうかなーっと、思うことにしました。あとは、樫原さんまかせです。

◆ 楳図の自注

半魚 秋田漫画文庫『怪』(1978年刊)第3巻の楳図の「あとがき」で、「へび少女の怪」に触れて、次のような自注があります。


――ヘビ少女の怪――

多分、多くの方々に知っていただくことになった"へび少女"です。

「怪」に収録することになり、広く男性女性を問わず読んで頂きたいと願い、"ヘビ少女の怪"とし、いくぶん少女っぽい雰囲気をおさえることにしました。

蛇に関する作品は、つなぎ合せると一本のシリーズになるくらい本数があり、しかもうまくつなぎ合わさっています。

昔、単行本に描いていたもので、皆さんの目にあまりふれてないものを全部合せて順にかいていくと……


1.、"口が耳までさける時"
2.、"へびおばさん"
3.、"ママがこわい"
4.、"まだらの少女"
5.、"へび少女"
6.、"うろこの顔"
7.、"蛇娘と白髪魔"
8.、"蛇"


……とこれだけ続きます。単行本に収録されてないものも、いずれまとめてみたいと思っております。

とまあ、とりあえずこういう作品群が、今回の対象です。

あらすじなんかは、最初に紹介する必要は……、ないですよね(笑)。ほんとは、作品毎に、登場人物名とか役割とかストーリー展開とか結末とかを一覧表とかを作るんですけどね、いわゆるふるい国文学者(笑)だと。

樫原 大変な作業になってしまいますよねー、そうすると・・・。でも、見比べて見たい気も・・・。(笑)

半魚 ブタもおだてていただくと、春休みにでも作るかも(笑)。

樫原 いやー、半魚さんなら何があっても作ってくださいますよ(笑)。「人食い不動」の鬼丸さまのような方ですもの!

半魚 ひょえー、カッチョいいーッ。では、樫原さんはさしずめ、「わび助」ですか。

樫原 それ、どんなヤツでしたっけ?(笑)

半魚 イアイア、イアラの。やたら意志の強い土麿や土達より、僕は一番好きですよ。

樫原 いかん、忘れとるばい!やっぱ買おうかなあ・・・。

半魚 ふつうなら、「買ってくださいよ〜」とか言うべきところですけど、基本的な部分は樫原さんの脳裏に焼き付いてらっしゃるようですからねえ。

樫原 いえいえ、やはり買う方向に走ってマス・・・。ネット通販で買うだろうなあ。

半魚 案外、売ってますね。

樫原 地方探せば・・・格安でないかな?

◆ 初出と所収

半魚 最初に、これらの作品について、初出や所収をまとめておきます。所収は、貸本系単行本などまだ完璧ではないですが、詳しくは「作品目録」をみて頂くこととして、簡単に書くことにします。

なお、対談にあたっては、それぞれが依拠したテキストを明確にすべきなのですが、ほんとに、楳図作品は、佐藤プロ本、朝日ソノラマ、秋田書店、小学館と、かなり広く所収されているので、ここはまあ、僕等がそれぞれに持ってる本で、テキトーに、つうことにしましょう(笑)。

それから、初出に関しては、ほとんど資料はありません、とほほ。


作品 年 初出 所収(佐藤プロ 講談社 集英社 秋田書店 朝日ソノラマ 小学館)

口が耳までさける時 1960 虹 29 AC『鬼姫』 「こわい本」

へびおばさん 1964 花 1〜7 単行本 AC『黒い猫面』 「こわい本」

ママがこわい 1965 フレンド
32〜36 ? ? 『まだらの少女』 デーコミ『まだらの恐怖』 『恐怖劇場』

まだらの少女 1965 フレンド
37〜45 単行本 『なかよし』附録 『まだらの少女』 デーコミ『まだらの恐怖』 『恐怖劇場』

へび少女 1966 フレンド
11〜25 単行本 『なかよし』附録 デーコミ『怪』 『恐怖劇場』

うろこの顔 1968 フレンド
9〜23 サンコミ、ハロ少女

蛇娘と白髪魔 1968 ティーンルック AC『恐怖』 「こわい本」

蛇 1975 サンデー AC『恐怖』 『洗礼』『恐怖劇場』

半魚 さっきの楳図の自注は1978年時のものですが、その後、基本的にへびモノは、これら以外に描かれていませんよね。それと、最後の「蛇」を除いて、みな1960年代に集中的に発表してますね。

樫原 いやー、しかしここまでよく調べられましたねー。感心します(笑)。

半魚 とんでもない(笑)。このテードで、ホメ合っていてはいけません(笑)。

樫原 ところで

「闇のアルバム」の「蛇」 はこれには含まれない・・・んですよね(笑)。

半魚 あー、あったあった(笑)。じゃあ、含みましょう。

『猫目小僧』の「約束」とかも。


樫原 あ、すみません・・・「約束」ってヘビものなんでしたっけ?内容忘れちゃった〜(笑)。

半魚 これはまさに「パパがこわい」ですよね(笑)。「ママがこわい」は、継母とかとっかえ母だけど、「約束」はパパ自体がヘビだった……というような、設定的には窮極ですよ。

樫原 これは、もう一度見てみます。忘れてる・・・オレ・・・。というか、これ見たことないです(笑)。いっくら考えても内容が思い出せないはずです。

半魚 初出所収誌、コピーして送りましょうか。去年買いましたが、結構、ラクに見つかりました。

樫原 うわ!そうしていただけるのならぜひ見てみたいです。僕も何かお返ししなきゃあなあ・・・。

半魚 いえいえ、ぜんぜん(笑)。対談していただいてるだけで嬉しいです。って、だったら返事遅れるなって(ペコ)。


樫原 
拙作「ロッカー室」を送りたいと思っています。(あまり欲しくもないでしょうけど・・・苦笑)

半魚 いえいえ、ぜひお願いします。「イジメ」問題なんかも、まさに現代的な心理恐怖の一つですし。

樫原 ああ、ウソでもうれしいです。ありがとうございます。

半魚 ひとをウソツキよばわりするなー(笑)。

樫原 すみません(笑)。

◆ 猫目小僧『約束』

半魚 (ここで、郵送した)

樫原 「約束」・・・魅入ってしまいましたー(笑)。初めて見ましたよー、これ。感動です。

あのヘビ男の「目」まん丸ですげーかわいー
と思いました。
半魚 (ふつ〜、思いません。(心の声、笑))

樫原 やたらと表情がないワリには、妙な存在感のあるヘビ男!ああ、好き!!猫目が包丁で眉間を叩くときなど、あの固さが伝わってきます。

半魚 そうですね、固いですね、あれ。

樫原 あの頃の楳図かずおの「線」ってやたら細くありませんか?

半魚 かなり細くなってますよね。かなり、現代風な感じがします。

樫原 もしかしたら、楳図キャラでいちばん好きかもしれなくなりました。あの丸い目で舌を「シャー」と出す顔がすごくいいです!しかも、この作品は解釈の仕方がすごくありそうで興味ある内容です。

半魚 では、これもおいおい。

樫原 しかし、あれはパラドックスを描いてみたかったのでしょうかねえ?実はかわいいあまりに食べてしまいたいという、愛情から・・・

半魚 んー。まあ、気軽に口約束をしてしまってヘビが本気にする……という、「ヘビ婿」説話の基本バリエーションではありますね。

樫原 猫目小僧はあんまり活躍しませんでしたね。ナタ(?)でパックリと頭を殴るくらいしか・・・。

◆ やっぱり『うろこの顔』か?

半魚 樫原さんは、ヘビものの中では、どれが一番好きですか。

樫原 僕は個人的には「サンコミックス」版の「うろこの顔」ですかねえ。

半魚 あっ、そうですか。なーんだ、僕もです。ハナっから一致してしまいましたね(笑)。

樫原 半魚さんも、ですか?あの頃の絵柄がやっぱイチバンですよねー。

半魚 ほんとは、立場的には「ノスタルジックにならないように」というつもりですから、「80年以降や90年代以降のほうがいい」と言いたいんですけど、内心は、やっぱこの時期が……(笑)。

樫原 楳図本人もいちばん好きなトキではなかったでしょうか?ノって描いてるような風がありますからねえ。

半魚 30代前半ですよね、だいたい。



樫原 ああ、そうなんですよねー。アブラが乗り切った状態だったんだなー。

エマニエル夫人然としていすに座ってるうろこの顔と、楳図魔子と陽子(?)ちゃんの表情!サイコーですね。


半魚 なるほど、エマニエル夫人か(笑)。納得なっとく、です。で、ぼくも楳図魔子のファンですよ。手塚嫌いの楳図先生は、御自分でベレー帽をかぶらない分、魔子ちゃんにかぶらせてますからね。その点でも、意味深なキャラクターですよ。

樫原 ああ、あれはそういう意味があったんですか?

半魚 いやあ、そーとしか、考えらんないでしょう(笑)。

樫原 なるほど・・・。しかし楳図先生ご本人も登場してるわりには、後ろ姿で残念ですよねえ。

半魚 いやあ、魔子ちゃんが前面に出て、兄が後ろ姿だけで、しかも怪談なんか実は全然信じてない、なんてあたりが心憎いっすよ(笑)。

樫原 そうそう、いやにクールなんですよねー。「地球最後の日」では正面切ってハチマキまでして登場してんのに・・・。

半魚 あ、ほんとだ。結構昔から、楳図は出演するのですよね。佐藤プロの貸本のものにも出てるのがありました。後になれば、そっか、『まことちゃん』では、でずっぱりですね。

樫原 あの頃から、壊れ始めたのかも・・。

半魚 あははは。でも、壊れた感じを大切にするギャグのセンスは、結構昔から顕在してたのでは?などとも最近思うようになってきました。

樫原 楳図かずおはツボをうまく押さえますよね(笑)。

半魚 マッチョメ体操で、肩こり無し。冗談はともかく、話をもどしますと。

樫原 僕は子供心(っつても中坊)に「魔子」なんてかわいそうな名前だなー、と同情しておりました(笑)。

半魚 いい名前じゃないですか。緑魔子みたいだな、とは思いましたが。ただ、僕は、ハタチ過ぎで読んだんですけど。

樫原 あれは、やっぱ意識してますかねえ?似てるといえば似てるんですよねえ、「緑魔子」・・・。

半魚 いえいえ、こちらが勝ってに「似てるかなあ」と思っただけで。貧困な連想です。「緑魔子」ほどには、気色悪くはないですし(笑)。

樫原 あはは!「緑魔子」かわいそう!

半魚 ともかく、楳図かずおには魔子という妹がいた、という設定。

樫原 半分事実なのかと思ってたのかも・・・。

半魚 そういう、美しき誤解が楳図伝説を産み出してゆくのですね(笑)。「ローソクの火でマンガ描いてる」とか。

樫原 ははは!棺桶に入って描いてるなんてのもありましたよねー。

半魚 あ、そうですか。それ知らんかった。

樫原 僕も知りません(笑)。

半魚 おーい、じゃあどっちなんすか(笑)。カンオケ、入ってたの?入ってないの?(笑)

樫原 すみません・・・そういう話があった記憶だけで・・・。詳しくは・・・(しどろもどろ)

半魚 あははは。

◆ 楳図のタイプB

半魚 それはともかく、戻りましょう。アブラの乗切った時代、でしたね。

樫原 あ、内容的には似た雰囲気のいわゆるリメイク的作品もあり、その判断とかで面白さが判別されるとは思うんですが、「ヘビおばさん」はそのまま「紅グモ」にいってるし、

半魚 ふむふむ。

樫原 「口が耳までさけるとき」は「へび少女」の原型版みたいなもので

半魚 うんうん。

樫原 「蛇娘と白髪魔」にいたっては、「赤んぼう少女」ベースの「ママがこわい」「紅グモ」、ラストは「ミイラ先生」、というごった煮状態の作品ですよね。

半魚 なーるほどねえ。

樫原 「絵」的には「うろこの顔」の頃が最盛期の「絵」でその緻密な描写は目を見張るものがありますよねー。

半魚 そうなんですよね。この時期と『恐怖』シリーズや『ティーンルック』あたりが、なんか最盛期っていうか、ブレイク前の一番美味しい時期っていうか、そういう気がしますよ。

樫原 そうそう、[あかんぼう少女」「影姫」「映像(かげ)」「うろこの顔」といったタイプBの「目」ですよね。(タイプB?)

半魚 んん?では、タイプAは、「ヘビ少女」など?

樫原 はい!「紅グモ」「ヘビ少女」「ねこ目の少女」「黒い猫面」などの下マツゲなしのお人形さんのような顔!

半魚 なるほど、マツゲで見るんですね。

樫原 そうですね。主人公の描き方ですね。変化してるといえば、「目」と「背景」くらいだと思うのですが・・・。

AとBの間に「ミイラ先生」「ロマンスの薬あげます」などのなんかセンスないというのが入り、

半魚 「なんかセンスない」……(笑)。

樫原 んー、ないワケではないんですが、「あかんぼう少女」の頃からロマンスもうまい具合に取り入れたりしてるものだから・・・。

半魚 ふむ。

樫原 Bタイプがイチバン際だった頃の作品群ですね。

それからCタイプで「イアラ」「おろち」「洗礼」といった今に近い描き方に僕は分類しているのです。

半魚 なるほど。ぼくは、「ティーンルック」作品は、Cともちょっと違う印象を受けるのですけど、どうですか。Bダッシュというか。

樫原 そうですねー、細かい分類だとそうなりますねー(笑)。

半魚 細かい分類の基準や方法を期待してますよ。

で、『うろこの顔』の話でしたっけ。

樫原 単に怖いというだけではなく、その裏にある女の子の妬みや美に対する執着心があらわに描き出されてて、好きな作品です。

半魚 そうですね。『うろこの顔』については、もうちょっと後で、またくわーしく掘り下げましょう。たのしみ(笑)。

樫原 はは、はい。

◆ 『ママがこわい』/『まだらの少女』

半魚 さて、一作品づつ年代順に……というのが、一番オーソドックスなんですが、能も無いし、結構それも大変そうだし、(もうだいぶあちこち行ってますし)、突然「まだらの恐怖」(「ママがこわい/まだらの少女」)から、行かしてもらいます。

樫原 ははは、まあ無難なトコでしょうねえ。

半魚 秋田書店サンデーコミックス(『まだらの恐怖』)だと、カバーの袖に作者の言葉が有るのですよね。このデーコミなんかは何時でも(今でも)手に入るから、あまり有り難がられないだろうけど、でもこの「作者の言葉」よくよく読むと、凄いですよ。

多くの中には、恐怖・怪奇ストーリーを、まったくわからないパターンを持つ人がいる。

だが、怪談に属するこれらは、すべて自然界に対する人々の謙きょな恐れから出発すると説明すれば、少なくとも今、何に対して恐れをいだかなければならないかを知ることができるのではないだろうか?

まだらの恐怖は、わたしの最大に好きなドラマです。

もう、悪文の典型的見本みたいな文章ですけど(笑)、推敲もせずにそのまま載っけてしまう秋田書店て、えらいなあ。

それはともかく、要旨は「恐怖とは、自然に対する恐れであり、かつ人間は自然への恐れを持たねばならない」てな事ですよね(なんか要旨も悪文)。まさに、

樫原流の「山の魔」説ですね。

樫原 いやあ(照)。ここでいう「自然」とは生まれながらに「ヘビ」として生まれたあのおばさんをさしているのでしょうか?なんか、すごい論説ですね。

半魚 まあ誰かを指してる、というよりは、思いの丈をぶつけたまま、みたいな荒っぽさがありますけどね。でもまあ、たしかに、スゴイ論説なことだけは確かです(笑)。

樫原 この作品は「ママがこわい」とその続編「まだらの少女」を合併して「まだらの恐怖」として刊行しているのですよねえ。

半魚 そうですね。

樫原 この「ママがこわい」では楳図かずおは珍しいコマなしのいわゆる「少女マンガ」にありがちなコマを何箇所か描いてますねえ。

半魚 ワク線無しってことですね。ほんとですね、気付かなかった。少女雑誌ってことを意識してですかね。

樫原 この辺の謎はぜひご本人に確かめたいトコなんですよねー。「恐怖劇場」版ではコマに納めてましたねえ。


小学館・恐怖劇場 | 秋田書店デーコミ

半魚 あ、ほんとだ。そうですねえ。それに最初のほうの「北の病棟だといったわ」ってセリフのあるコマ、「精神科」って札が不自然に消されてますね(笑)。

樫原 「き○○い」という言葉は見事に削除してますよねえ。「紅グモ」でも昔のは「おとうさんがクモき○○いだからよ」が「おとうさんがクモマニアだからよ」はイけてる!と思いました。

半魚 イケてます。おとうさん、みょうにオタクな感じになりました(笑)。

樫原 この話は「紅グモ」がテーマとして挙げられたらば、心ゆくまでお話しいたしましょう(笑)(言いたいことすんごくあるんですが、また脱線しそうなので・・・)

半魚 じゃあ、3回目は『紅グモ』ですかね(笑)。

樫原 (笑)。半魚さんにおまかせします。

半魚 うーむ(笑)。対談は片道キップだから……。

樫原 ははは!

それから、「デーコミ」では弓子さんがヘビ女の想像図を描いているのですが、「恐怖劇場」では消されてるんですよねー。僕はあの何気ないユーモア好きだったんだけどなあ・・・。

半魚 そうそう。これ、なんで削除したんですかねえ。ほんとユーモラスでいいんですけどねえ。

樫原 もったいないですよねー(笑)。猿飛少年も、運送屋のおにいちゃんも顔、描きかえてるし・・・。

半魚 ああ、そうですね。

樫原 いい味出してる、ギャグ系のモノを全て排除してますよねえ。

半魚 楳図先生御本人の意図なんですかね。そもそも『恐怖劇場』なんてネーミングも安易だし、「もっと怖く描き直してくださいよお」などと編集サイドで言ったような感じだなあ、と僕なんか勝手に思ってしまいます。

樫原 あっ、そうかもしれませんね。コミカルなのは修正してください!なんて言われてしぶしぶ描き変えたのかも・・・。うーん、それも不本意な感じだなー!

半魚 作家楳図先生は、小学館の不本意の生産物ですよ(笑)。もう、許せん(笑)。

樫原 あそこまでして、描きかえる必要は絶対ないですよね。どうせなら、新しく描けばいいのに、と思いません?読者もそれを期待すると思いますけどねー。

あ、「ママがこわい」の話題に戻ります。そして、冒頭の個所の書き込み方は、すごい熱の入れようで、この作品に対する熱意が伝わってきます。

1頁の半分を使い「ヘビ女」のアップを挿入するシーン!

カエルの絵を見て「グググッ」というトコですねー(笑)

いやあ、美しいおばさんがあんなになるんだから当時の女の子が失神するはずですよねー。


半魚 この絵はデーコミも恐怖劇場も同じですけど、口の裂け具合いの描き方は、ちょっとエロいっすよ(笑)。

樫原 そう、見たか・・・。僕は「半魚人」同様トラウマになりそうなほどイヤなシーンです・・・。

半魚 このコマも、今良く見ると、デーコミの段階で、切貼りの補筆みたいですねえ。気付かなかった。まあ、あんまり言いたくないけど(笑)、この辺の少女モノは、リアルタイムで読んではいなくて、とほほ。

樫原 え?そうですか?気づかなかった・・・。

(たしか、公園あたりで弓子を追いかけるおかあさん)裂けまくった口と、あの「目」、そして陰影のすばらしさ。

半魚 あの追いかけシーンは、スリルありますね。公園での陰影は、デーコミと恐怖劇場とで、違いますね。恐怖劇場でちょっと補筆してますね。

樫原 あ、そうそうかなり影をつけてダークにしてますね。

半魚 たしかに、どっちが良いかと言われれば、補筆してあるから必ずしもよくなってるとは言い難い気もしてきます。

樫原 かえって「あざとさ」が目立ってるって言うか・・・。やらなくても立派に美しい絵だと、僕は思うんですけどねえ。

半魚 そういう点は、言えますね。前のままで、ナニが不満なのかいまいち分かりませんよね。補筆して、キャラクターと背景のギャップも目についてしまうし。

樫原 そうそう(笑)。見る人が見たら「おみっちゃんが今夜もやってくる」のような錯覚を受けかねませんよねえ。

半魚 「おみちゃん……」、私らの中では、なんか最悪のパターンみたいな評価になりつつありますね(笑)。おみつ、可哀相(笑)。

樫原 決して悪い作品ではないんですがねえ(笑)。

半魚 ほんと、すごい作品ですよ。

樫原 (笑)。ここまで話題に乗るってことは名作ですね!

半魚 ともかく名作です。

◆ ヘビ少女ごっこをしてた……

樫原 これで、かなり教育委員会からは、とやかく言われたのではないでしょうか?

半魚 あはは。とか笑いながらも、僕は楳図の弾劾史にはあんまり詳しくないのですけど。

樫原 僕も、そういえば現役のはずなのにあまり詳しくないなあ・・・。それほど情報的には氾濫してなかったんでしょうかねえ。

半魚 ただまあ、みんなキャーキャー言いながら読んでたわけですね。

樫原 僕は、いつもネタにして「ヘビ少女」ごっことか、「あかんぼう少女」ごっこしてました(笑)。今日はおまえがさつきとカンナでおまえが洋子だっ!みたいな(笑)。

半魚 かなり危険な子供たち(笑)。教育委員会も、それじゃあ黙ってませんね。

樫原 (爆笑)。全国の子供で同じようなコトやってたのがいるかも・・・。

半魚 そのまま成長してれば、日本はもっといい国になってたでしょうにね。

樫原 はははは!なってない!なってない!

半魚 さて、では、それはともかく。

樫原 確かに当時の女の子が見たら発狂(?)しそうなほど怖い絵ですよねー。

半魚 こわいこわい。オーソドックスな展開なのでしょうけど、ともかく弓子じたいが、「へび女の化けの皮をはがしてやる」、などと挑戦的な女の子だから、始末に追えませんよ。「おいおい、もっとおとなしくしてろって」って、言いたくなる。読者は、「きゃー、弓子さん、やめて!」って感じだと思いますよ。

樫原 (爆)。当時はこの「怖い少女マンガ」を読むために男の子も読んでいたんですよね(かくいう私もそうでした)とにかく、ビンボーだった僕は、姉が友達から借りてくるんです。んで、姉の目を盗んで「楳図かずお」のとこだけ何回も読んでは恐怖におののいていました。もう続きになると来週が気になって気になってどうしょうもなかったですねー。(思い出にひたる樫原)

半魚 僕も姉がほしかった(笑)。でも、小さい頃は極度のこわがりだったからなあ。

樫原 僕も、そうだったんですよー、でも「怖いもの見たさ」の心理ってのは確かにありますねー。だから見てたんだと思います(笑)。

半魚 いや、そういうのは僕にすれば、それじゃぜんぜん怖がりじゃない人ですよ(笑)。僕なんか、『少年サンデー』だったかなあ、それらなんかも後のほうは開かないようにしてました。秋田の『怪』の宣伝が入ってて、人面瘡のカットがあったから。「うわー、おっかねえ」なんて言いながら見てる弟の気が知れませんでしたよ。

樫原 ははは、ホントに「怖がり」だったんですねえ?

ところで、口内炎ってありますでしょ?あれ、自分の舌でたまーに触ってみたりしません?「あ、少し治ってきたかなー」なんて。僕、怖いもの見たさってこれに似てるトコあるって思うんですよねー。

半魚 いやー。そういう、直ってるかどうか気になってしまって、傷口を開いたり見たり触ったり(して傷が悪化)するのは平気なんですよ。子供の頃は、単純に幽霊とか暗闇とか異形の者とかが恐かったです。僕は、小学4年の時、なんで赤ちゃんは生まれるのかってことを近所の上級生に無理矢理聞かされて以来、人間のほうが恐いと思い、心理的恐怖に移って行ったのです。

樫原 おお!トラウマですね。しかも「性」に関する・・・。

半魚 あはは、トラウマは大袈裟です。もう完全に直ってますから(笑)。

樫原 僕は今だに怖い・・・(笑)。

半魚 あはは。

樫原 僕はといえば、テレビで怖いものをやるといえば、怖いシーンのトコは目をつぶってるくせに薄目をあけて見てるような、まさに怖いものみたさだけの子供でした(笑)。

半魚 ぼくはどっちだったかなあ。どちらかというと、へーきな顔して見ている強がりなのですが、後で思い出してとてつもなく怖くなる、という……。夢でうなされたりとか。

樫原 好奇心丸出しの樫原に平然と見ている半魚さんかー(笑)。

半魚 ははは。そんな平然とでもないです。

樫原 ヘビ男のように・・・。(すみません)

半魚 わはは、無機質に(笑)。そっか、平然というよりは、単に止ってるだけかも知れませんね。話もどしますか(笑)。

◆ 大器の弓子さん

樫原 かわいそうな弓子は助かったと思いきや、「へび女」の逆恨みを一心に受け新たなる恐怖へと展開するのですねー。

半魚 そうそう、おかあさんに化けていたへび女は、多鱗症という「超堂体質(ちょうどうたいしつ)」によって、自分がヘビだと思い込む病気だったのですね。

この「超堂体質」って、なーんだろうなあ、
とずっと思ってましたが、恐怖劇場では「超常体質(ちょうじょうたいしつ)」とありました(笑)。


樫原 あ、そうなんですか?僕その辺全然気にしないで読んでました(笑)。ああいうところも、大人の男がそれらしく解説してますよねえ、「洗礼」と一緒!少女まんが版楳図作品の定例的なものですね。

半魚 あの、したり顔に講釈する大人には、ちと違和感も、なくもないです。と、谷川先生嫌いの弁でした(笑)。

樫原 まあまあ!半魚さんにはこの話題フると、怒りが出そうだから・・・あんまり刺激するのはやめましょう・・・。

半魚 あははは。ああいう、立派な兄的存在ってのが、嫌いなんだなあ(笑)。

樫原 まあまあ・・・どうどう・・・(笑)。

半魚 ひひーん。まあ、それは兎も角。

樫原 それを、さらりと

「こわかったけど、もういいの。おかあさんが帰ってきたんですもの」とかわす弓子さん。大物の器ですね。


半魚 あはは、大物か。まあ、その弓子のおおらかさは、少女マンガていうか、当時のマンガのおおらかさでもあるでしょうけど、普遍的に「女のずぶとさ」を描いている、とも言えますねえ。

樫原 (爆)言いえて妙!

半魚 これが一番、心理的恐怖かもしれませんね。(なんか楳図作品、コケにしてる?)。

樫原 いやいや、これがひいては「美しさにこだわったためのなれの果て」に続く「洗礼」などに踏襲されているのかも・・・。

半魚 こういう形で捉えてゆくのは、重要な指摘かも知れませんねえ。

樫原 なんだか、楳図かずおのテーマがひとつに固まってゆくような・・・。

半魚 ふむふむ、それがこの対談のいいとこですね(笑)。それはともかく……。

樫原 「ママがこわい」は序盤にすぎなかった!ということでしょうか?

半魚 「ママがこわい」で、一旦は「解決!」って感じになってるんですよね。ところが、そうでない。こういう、「一件落着と思わせて」という手法は、楳図先生は大好きですね。

で、「弓子……今に見ておいで……」という逆恨み(笑)。

樫原 第2部ってカンジですよね(笑)。

そして、「まだらの少女」に続くわけですが、おそらく他の類似作品を当時描かれてるマンガ家の先生方もこれの亜流として作られてる方が多いのではないでしょうか?

半魚 ふむふむ。

◆ 『まだらの少女』のエッセンス

樫原 それほどまでにこの「まだらの少女」は基本を作った作品だと思えます。

まず


1.「田舎」が舞台。

都会にはめったにヘビなんていませんからね。
半魚 なるほど。そういや、精神病院とかから始っている物語なのに、結局、田舎に舞台が移ってますね。

「美土路(みどろ)村」、字面は奇麗なのに、いやーなネーミングです(笑)。

樫原 長野県なんですよねえ・・・ホントにあるんですか?

半魚 あーいや、「奈良県吉野郡」って書いてありますよ。楳図の地元ですか。

楳図かずおの奈良趣味(補説 : 2002-04-15 )

地図はマピオンのものに手を加えた


位置 地名

A3 高野山 1936年9月3日、高野山に生まれる。

C2 曽爾村 生後、しばらく曽爾村で暮らした。

B2 五条市(岡口) 七歳の時、五条市に引越しする。JR和歌山線五条駅のすぐ北側の岡口に楳図の実家がある。上京する1963年26歳までここに住む。


B2 吉野町 「吉野のあらし」
『偶然を呼ぶ手紙』 六田の砦や村上義光の墓などがある。吉野(南奈良)の人は、とうぜん南朝びいき。楠正行の辞世歌「かへらじとかねて思へば梓弓なき数に入る名をぞとどむる」は、『吉野のあらし』の裏テーマだし、『偶然を呼ぶ手紙』にも架空の「美空郡山中町」として、この歌と正行討死の如意輪寺が見える。

A3 野迫川村 「まだらの少女」 「野追川」は誤字。
奥吉野 やまびこ姉妹さつきとかんなの住所

C3 川上村

C3 大峰山 『猫目小僧』 「妖怪水まねき」で描かれる、猫目小僧が生れた場所。大峰連山は、北部を金峯山(きんぶせん)といい、南部を大峰山というが、その大峰山の中心が山上ヶ岳。役行者開山の修験道根本道場。また、母多由をみつけた吉野義一は吉野郡高市町に住む。高市町ってのがよくわからないが、下市町(B2)のことじゃないのかな。あと、「妖怪肉玉」では五条市が舞台で、桜木家の先祖が肉玉を見たのが金剛山(A2)。それと、「大台の一本足」は「大台ヶ原」(C3)

B2 桜井市 「吉野のあらし」
「母よぶこえ」 倭迹々日百襲姫(やまとととひももそひめ)の墓といわれる箸墓がある。この百襲姫が卑弥呼のことだと言われたりするが、これらの初期作品で卑弥呼が何度か出てくる。奈良県人は、とうぜん邪馬臺国は大和説。

B1 奈良市 「イアラ」
『漂流教室』 東大寺の大仏がある。また、大和小学校の大和は、日本ってよりは、奈良の大和じゃないかなー、って気がしてきた。これら、楳図の奈良趣味が基調になっているだろう。


ほかにもあるでしょうが、とりあえず。また追加します。





樫原 あ、あれ?おやまあ、「恐怖劇場」では「美土路村は長野の山奥にある小さな村です」となってます。「デーコミ」は奈良県吉野郡なんですねー。

半魚 あらら。そうですねえ、「長野」ですね。この変更、意味不明ですね。「精神病院」が山梨に在る、ってことで近隣県にしたんですかねえ。でも、トランクに入って旅するだけですから、どこでもよさそうですけどねえ。

樫原 ああ、そうか!「山梨県」というのがあったんですねえ。納得!

半魚 いやいや、僕は納得しませんよ。

樫原 ははは、そうですか?「ミドロ」と「マダラ」は同じ韻を踏んでますねえ。わざとかな?

半魚 ははーん、なるほど。子音が同じだ(笑)。これは重要な指摘ですよ。

樫原 そうですか?(笑)大発見かな?

半魚 はい、大発見。

樫原 次に、


2.徐々に変貌してゆく美少女の顔 (この過程が基本中の基本ですね)


半魚 ほんとほんと。

樫原 それから、僕が感心するのは弓子と京子の「目」の描き分けなんですよ。

ちょっと意地の悪そうな京子の目。すばらしい画力だと思います。「へび少女」でも洋子さんの目は少し黒めを大きめに描いて見事に描き分けてますよねえ・・・。いや基本中の基本ですけどねえ、やっぱうまい!と思います。


半魚 なるほど。こういう、ふつう(?)の、可愛らしい女の子を描くための典型的な少女マンガの作画法の中で、恐い顔を造型してくってのも、なかなか難しいのでしょうね。

樫原 当時は黒目がちを、少し白目がちにすれば、「ははーん、こいつは何かが憑いたな!」と判断できたんですよねえ。「変身一歩手前だよ」みたいな分かりやすさがあったんですがねえ・・・。今は分かりません(笑)。

半魚 今って、その後の楳図作品ですか。あんまり憑依すること自体がなくなってますかねえ。

樫原 「ヘビ少女」の頃はまだ線が単調だったのでその変化を見て取れるのですが、そう描き込みが複雑になった「あかんぼう少女」や「うろこの顔」ではそういう変化というものが描いても目立たなくなっているような気がします。

まんがまんがしてなく、人物描写がリアルになったというべきか・・・。むしろ、いっきに変身してしまっているような?まんま「うろこの顔」やん!みたいな・・・。

半魚 まんま「うろこの顔」(笑)。なんとなく、仰しゃること、分かってきました。後でも述べますが、『うろこの顔』の場合は、表情の変化とかでなくて、

ずばり、べりべりっと剥げてくる、ってところがミソなんですかね。


樫原 あれは、すごいカタルシスを感じるシーンですねえ。新しい恐怖の形を生み出したのではないでしょうか?他に「ヘビ」ものであんなすごいものを描いた人知ってます?


半魚 んー、とりあえず、知りませんねえ。しかし(笑)、カタルシスって言いますかねえ、ふつー(笑)。

樫原 いやー、よくぞここまで読者の希望に答えるようなすさまじいマンガを描いてくだすった〜!って僕的にはあれは、最高に恐怖の集大成を見る感覚での「カタルシス」でしたねえ。

半魚 えー、まー、そういう意味なんだろうなー、とは思いましたけど(笑)。

樫原 まぎらわしい表現ですみません・・・(笑)。

半魚 あはは。

樫原 とにかく、脱皮にしろ、ばあやがイッキに胴体が伸びてヘビになるシーンなど、カタルシスの連続で、僕は「うひょー」もので喜んだものです(笑)。


半魚 なるほど、なるほど。

樫原 かなり大きくなってから「うろこの顔」は読んだのですが、あのシーンだけは怖い以上に新しい形の恐怖まんが!というイメージでしたねえ・・・。

ところで、あのシーンがそのまま映像化されたアメリカのTV映画「V」を見て僕は「うろこの顔」だーっと叫んだのは言うまでもありません。

今だったら、簡単に映像化されちゃうけど、あの作品はそういう技術もなかった昭和40年代ですからねえ、スゴイ!としか言いようがないです。

半魚 「V」は、ヘビ宇宙人みたいなのが出てくるんですよね。ちらっとしか見たこと無いんですよ。

樫原 ・・・「トカゲ型宇宙人」だそうです・・・。(笑)。

半魚 ひえー。

樫原 それから、


3.この「ヘビ」が連鎖して移ってゆくという恐怖!!

いわゆるボディスナッチャー的な心理的恐怖ですね。


半魚 そうそう、ボディスナッチャーですね。単純に、外からやってくるとか自分が食われてしまうとかいう恐怖ではなくて、自分がそれになってしまう恐怖ですね。

樫原 乗り移るってんなら、話は簡単なんだけど、連鎖して別モノに変貌してゆく恐怖ってのはじわじわときますねえ。誰も信じられなくなってしまう!怖いことですよねえ・・・。

半魚 ああ、そっか。乗り移るとか、病気が伝染するとか、そういうイメージともまた違いますね。

樫原 そうそう、そして究極的には「うろこの顔」の主人公「陽子」でしたっけ?

自分自身すら信じられなくなるというカタストロフィ!
これが恐怖の源だーっみたいなカンジがしてなりません・・・。


半魚 「自分とは、何者だーっ」みたいな(笑)。

樫原 そうそう(笑)。これは「ヘビ少女」にも踏襲されており、かの古賀新一先生も「週刊少女マーガレット」で対抗馬として亜流作品を描いておられました。

(記憶は定かではないのですが、こういうヘビものも描いてましたよねえ)

半魚 ですよね。『少女フレンド』の1966年15号の「へび少女」では、アオリに

「(おことわり>さいきん、べつの少女週刊誌にのっているへびのまんがは、楳図かずお先生が名まえをかえてかいている作品ではありません。」

という編集部からの告知がありますよ。



古賀新一「白へび館」

樫原 そうそう、絵柄もそっくりで僕もよく見ないとダマされそうになりましたもん!

半魚 でまあ、古賀新一なんてサイテーですよ(笑)。黒井ミサは好きだったけど、私の不徳の致すところです。

樫原 ははは!まあまあ。「黒井ミサ」は何となく「おろち」っぽくありません?僕はそう見てたんですが・・・。

半魚 古賀新一版「おろち」だったのか!納得(笑)。古賀先生に掛ると、あんな感じに翻訳されてしまうのだろうなあ。

樫原 ホンヤク・・・(笑)。パロディ?

そういえば、私忘れましたが「ガロ」か何かでどなたかが、見事な「おろち」の「姉妹」のパロディを描いていらっしゃったのを記憶しています。コマ割りからキャラクターまであのまんま・・・でムチャパロディなんですよ。思わず引き込まれて大笑いした記憶があります。

半魚 そんなのがあるのですか。楳図ファンクラブの会報という『ウメズムvol.1』に出てる、パロディ・マンガがそれですかねえ。

樫原 あ、それは知りません。読めば思い出すかも・・・。

◆ 田舎が舞台・再説

樫原 また、「田舎」というと「因習」や「家の造り」がそのままシチュエーションに活かされるという利点もありますよねえ。今はないでしょうが天井裏から覗く目。

半魚 そうそう。

樫原 このマンガのせいで僕は天井の木目のスキマが怖くて見られなかった(笑)。

半魚 あはは。

樫原 家の軒下の狭い狭い隙間・・・。あるんですよねえこういう家今でも・・・。

半魚 そうですよ。現代の子供たちは、こういう恐怖を味わえなくて、可哀相ですよね。いまでも子供たちは、木目やシミが恐い顔に見えたりしてるんですかねえ。

樫原 僕はいまだに・・・(笑)。

そして、占いやたたりを信じる村人・・・これと似た映画もありましたねえ「八つ墓村」かぁ・・・。

半魚 土着的な因習性なんてのがドラマにならなくなってしまって、日本も不幸な時代に入ってきてますよ(笑)。

樫原 今はどちらかといえば「理論派」型ドラマですよね。いかに読者を納得せしめるかと、いう。

半魚 京極夏彦なんかは、妖怪とかの復権を目指していますけど、妖怪をストレートにリアリティが持てた時代ではもちろんもう無くて、今ではメディア内でのヴァーチャルな実在ですね。

樫原 そう、もう形式化されたというか、美化された存在なんですよねえ。魑魅魍魎なんて、今の子供には通用しないでしょうねえ。「暗闇」というもの自体が今の日本には少ないですから・・・。

半魚 そうですね……といいたい所ですが、よくよく思い出せば、金沢には結構真っ暗なところが多いです。けっこう、こわい(笑)。

樫原 ウチも大分のド田舎ですが、けっこう暗いトコはあります。探せば、日本のどこかにはまだ、昔ながらの因習や雰囲気を伝えてる場所ってありそうですよね。

半魚 いまは、六本木や新宿を歩いてる人達を怖がらせる必要がありますからねえ。

樫原 あいつらは、「妖怪百人会」の仲間かー?みたいな?

半魚 あはは。話、逆ぎゃく(爆笑)。

◆ 『恐怖劇場』でのリライトをどう評価するか

樫原 さて、「まだらの恐怖」は後に「へび少女」とまとめて冒頭の自注にあるようにひとつにまとめられて、「楳図かずおの恐怖劇場」なんてのにリニューアルされていましたねえ。

惜しむらくはこの作品は各コマを拡大縮小しながら貼り合わせ、後筆も加えられており、(イチファンながら)できれば、オリジナルのままの方がよかった・・・と思う作品でした。

確かにつながりはしますけどねえ。何もそこまでしなくても・・・と思った樫原でした。

半魚 はいはい。それについては、すこし詳しく検討しましょうよ。とは言っても、初出の『フレンド』自体をきちんと見てないので、ちゃんとした検討にはなりませんけど(とほほ)。

一応、この対談の読者のために(笑)、概略だけ紹介しておくと、

初出 『少女フレンド』

トレースか 『少女フレンド』附録

すこし補筆か 秋田・サンデーコミックス

けっこう改変 小学館・恐怖劇場


こういう感じで、たぶんデーコミでもそれなりに補筆はしてるはずなんですよ。

でも、一番の大きな違いは、小学館の恐怖劇場になった際の補筆、リニューアルで、樫原さんの仰しゃりたいのもそういうことですよね。

樫原 そうです(笑)。

半魚 でまあ、絵の継ぎ接ぎは、たしかに無惨な面がありますね。ただ、僕自身は、ストーリーを円環的に繋げているあの処理じたいは、案外いいなあとおもうんですけど(笑)。やっぱ、ヘビだから、輪っかで繋がる……って(笑)。

樫原 コマ運びなんかは確かに見やすくなっていますね。スラスラと読めましたし、うまい具合につなげてるとは思います。ヘビ女の生まれた家でへび女が登場するシーンで1頁まるまる使ってましたよねえ、あれは久々に「楳図まんが」ってカンジがしました。

半魚 ああ、ほんと。ここは、「これでもかっ!」って感じでの、ベタなクロースアップを使ってますねえ。絵柄的には、タイプDかEくらいですか。

樫原 みーんなひっくるめてCタイプです(笑)。

半魚 いやあ、もうちょっとブンルイの基準を作ってくださいよ(笑)。

樫原 これ、「わたしは真悟」の頃ですかねえ?だとしたら、FかGかな?



補筆の一例『へび少女』

半魚 時期的には、そんなもんですかね。でも、なんか、僕には「真悟」のタッチとも結び付かないんですけど。

樫原 そうですねえ・・・でもあの時期がいちばん楳図かずおの集大成の時期だったのではないでしょうか?

半魚 ヘビとか、外部的な恐怖の集大成の時期とは言えますね。

樫原 その後に続く「神の左手悪魔の右手」への序盤というか・・・?

◆ 樫原マンガのヘビはエロ(!?)

樫原 ここで半魚さんもまだ見ていないと思いますが、樫原かずみの過去履歴作品表をご紹介します(笑)。

半魚 おおっ!これも、いい話題ですね。

樫原 http://ww.freepage.total.co.jp/mamoruei/history.htm

半魚 でも、開かないですよ(笑)。

樫原 すみません!「w」がいっこ足りませんでした(笑)。

http://www.freepage.total.co.jp/mamoruei/history.htm

これが、そうです。

半魚 おお、たくさん御作がありますね。これはすごい。

樫原 がんばって清書しなければ・・・(笑)。

半魚 お願いしますよ……(笑)。

樫原 そうそう、「三姉妹」は着々と進んでおりますよ。65ページの樫原にしては大作長編なので、下絵にがんばっております(笑)。

半魚 おおっ!それは楽しみです。

樫原 当然のごとく楳図といえば「ヘビ」ということで樫原かずみも「ヘビ」ものを何作か描いております。超短編もあり、中編もありますが今、「ヘビ」ものを描くとしたら「性的」なものとしてしか、描けない題材であるとしか思えないほど、樫原かずみは「エロ」的なヘビものを描いてます。

半魚 そうきましたか!

樫原 はい、しかもハンパじゃなくヘビ=エロの象徴そのものみたいな(笑)。

「蛇達の宴」「蛇女」「WARM」(この3つだけだ〜。(笑))

半魚 「猫」、よみましたよ(笑)。いいですね。赤裸裸に描いてあって(笑)。こういう、ほのぼの系もいいです。

樫原 あはは〜。ありがとうございます(照)。実はこういうものの方が知人には受けるんですよねえ・・・。

半魚 猫好きにも受けますね。

◆ 通過儀礼としてのヘビ

樫原 こじつけ臭くなりますけど、「ヘビ」=「男性器の象徴」みたいな捕え方があり、少女は無意識的に男性への畏怖の念から、恐れと、甘美な題材として
この作品にハまったのではないでしょうか?


半魚 少女がどうしてハまったか……に至っては、そりゃこじつけ臭いけど(笑)、ヘビが男性器の象徴ってのは、有りですかね。西洋的ですかね。ヘルメスとか?日本的だと、ヘビ女房とか、やっぱり女っぽい気もしますね。

樫原 ヘビが執念深いってのはどこからきてるんですかねえ?そのイメージで行くと、ヘビは女の象徴でもあるような気もします。

まさに子供(ここでは少女)が女として男を意識し始める通過儀礼のような・・・。

それを懸念したPTAは弾劾をしたのではないだろうか、と考える樫原です。

半魚 PTAがどうして弾劾したのか……は、それもコジツケ臭いですが(って、いちおうやっぱりツッコミ入れておいたほうがいいでしょう?)、女の子の通過儀礼ってのは、どのようなものなんですかね。案外いけそうなセンという気もしますね。

僕自身は、女の子の通過儀礼については、全然ピンと来ないのですけど、やっぱり初潮とか初体験とか、肉体的な変化そのものが通過儀礼でしょう、なーんて言ったら、すごい女性差別でしょうね^^;。すぐ撤回します。


樫原 僕的には半魚さんの仰る肉体的な変化を言ってるつもりなんですが、まあ、それに伴う「心」の女性としての目覚めみたいな・・?男性を意識しはじめるときは、同時に男性を「怖い」または「汚らわしく」見える時期でもあるらしいです。「蛹」の時期なんですかねえ。それを過ぎると、もう平気みたいな・・・。

男の場合は通過儀礼なんて無く、性的な方向へと一直線ですから(笑)。「蛹」の時期なんてないのではないのでしょうか・・・。(これも差別的かなあ?)


半魚 あはは。通過儀礼は、男の場合だと、近代になってからは、肉体的な体験・変化よりも、かなり精神化されていて、『漂流教室』や『わたしは真悟』なんかも典型だと思いますけど、ああいう体験自体が「子供を棄てる」ってな意味になってゆくのではないですかね。

樫原 うーん、この辺は「漂流教室」とか「私は真悟」あたりで詳しく掘り下げてみたいテーマでありますねえ。

半魚 あと、細かい事を言っておくと、『ママがこわい』では、猿飛少年が一回だけ出てきますね。どーでもいいことですけど。

樫原 カエルを取る少年ですね(笑)。

◆ 『へび少女』

半魚 「へび少女」、いきますか。

冒頭の「利平どん」の話は、これは「へび女房」説話だとかにも典型な、「ヘビ=鉄砲=池」っていう説話のパターンを使ってるのですね。

楳図は、子供のころ、おとうさんから地元に伝わる昔話ってのを多く聞かされたと言ってますが、それらの話も、日本的な広がりをもつ典型的な土着的説話なんですね。


樫原 ああ、これは楳図先生本人からも聞いたことがありますねえ。このあたりは「へビおばさん」も同じ展開ですよねえ。

原型は「ヘビおばさん」だと考えたほうが無難なのかなー。グレードアップしたのが「ヘビ少女」ですかね。

半魚 パワーアップつうか。しかし、さつきとカンナ姉妹は、ヘビに逢ったりキツネにあったり、忙しいですね。「楳図を読んでトラウマになった」というけど、

彼女ら姉妹のトラウマのほうが心配です。

樫原 ははは!じゃあ高校生記者「絵美子」と「夏彦」もですね?

半魚 ははは。

◆ 楳図先生、がんばって!

半魚 『まだらの少女』だと、ワク線なしのコマがありましたね。こっちは、デーコミ等でみる限りは、コマわりは重なってたりはしてませんけど、初出ではどうだったのでしょうかね。やっぱり直してる可能性が高そうですねえ。

樫原 ・・・ですねえ・・・。オリジナル版を見てみたいものですねえ・・・。

半魚 国立国会図書館にゆけば、見られましょうけどねえ。

樫原 え?マンガも保管してあるんですか?知らなかったー(笑)。

半魚 ありますよ〜。僕は閲覧したことなかったですけど。いま、在京してれば、日参して、雑誌初出情報なんかは完璧に仕上げるんですけどねえ。

樫原 今度行ったらゆっくりと探してみよう(笑)。

昔、「現代古本(貸し本)図書館?」とかいうトコロで探したんですけど、目ぼしいのがなかった記憶があるんですよねー。早稲田の近くかな?

半魚 内記氏がやってるところですかね。

樫原 かな?僕も詳しくは知らないんですよー。

半魚 僕も東京に居たころは真面目で貧乏な学生だったんで、貸本マンガなんを見たり買った余裕もなかったっすよ(なはは、言い訳)。

樫原 貸し本全盛時代の頃にタイムスリップして、心ゆくまでウメズカズオと書かれた背表紙を探して読んでみたいですねえ・・・。

半魚 かなわぬ夢ですねえ。それ以前に、子供のころ買った『少年サンデー』を取っておくだけも、やってりゃよかった(笑)。

樫原 僕は、今でも「古本屋」さんで探してる「夢」を見ます。ひたすら探してるんですよねえ。「楳図かずお」と書かれた背表紙を・・・。

半魚 夢でも現実でも、楳図の本は最近、少なくなりましたねえ(笑)。

樫原 確かに!悲しいほど「過去」のヒトになりつつありますねえ。

半魚 んー、過去の人かあ。イアラの頃のような短編パワーも、また長編を描く体力も、いまはないのかも知れないけど、僕は絶対に復活すると信じることにしました(笑)。

樫原 僕はいつ「訃報」がニュースに出るのかと・・・それだけが心配です。

半魚 あはは。そういう縁起でもないことを言ってはいけません。

◆ ヘビに変化してゆく洋子のスリル

半魚 サツキとカンナのおばあさん、ウメって名前なんですね。楳図のウメかな。

樫原 ははは!

半魚 ああ、うめ組のウメだよなあ(笑)。

樫原 はははは!

半魚 あーいや、梅干しババアのウメですね。

この、ウメばあちゃんや、カンナまでもにヘビが化けたり連鎖したりしてゆくのが、ちょっと危機的な恐怖感がありますよね。「おいおい、ストーリーの収拾がつくの?」って心配になりそうなくらい(笑)。

樫原 いやー、あの破綻が読者を恐怖の世界で引きずり込むのでは?ハラハラドキドキしながら読んでましたよー、僕・・・。

半魚 破綻しそうで、けっして投げやりな破綻はないですよね。それが、古賀先生を始めとするひばり・立風系の二流作家先生がたと大きく違うところですね(笑)。

樫原 うん、それは言えますね。骨子が整ってるっていうか・・・。ストーリーの展開上に成り立ってますねえ。

半魚 洋子さんがヘビに取り憑かれるところ、フスマをやぶって出てくるコマ、口からぴょろっとヘビが出てますよね。このシーン、デーコミだとヘビが消して有りますね。やっぱり、ショッキングなコマなので、当時は検閲されたんですかね。

樫原 (大爆笑)。すみません!久々に爆笑しました!!「ぴょろっと」に大笑いしてしまいましたー。確かにそういうカンジですよねー。

かわいいヘビだー(笑)。

半魚 ああ、ウケましたか。言われてみると、ほんとぴょろっと可愛いヘビですね。

樫原 もう、今度からこのコマを見るたびに「あっ、ぴょろっとくんだー」と言ってしまいそうですよー(笑)。

半魚 あはは。

樫原 いやー、どうなんでしょう?でも部分的に残ってませんでしたっけ?もしかしたら、ホワイトで修正しようとして失敗したのかも・・・なーんて思ったりもしたんですが・・・。

半魚 そうそう、ホワイト掛け損ない、みたいな。

樫原 何かやろうとしてたんですかね?(笑)

半魚 忘れたまま、だったんですかね?

樫原 うーん、この謎も解き明かしてみたいですよねえ・・・。

しかし、あの洋子をヘビへと変えてゆくシークエンスは「半魚人」と通じる残酷さがありますねえ。見ていてこれでもか、これでもか、ってカンジですよねー。因果とはいえここまで残酷な仕打ちを受けるなんて・・・と思いません?

半魚 そりゃそうですよ。洋子にしたって、「顔も知らない祖父さんの恨みを、なんで私にはらす!」って。

でも、因果とは言え、本人にはあずかりしらぬ、つまり不条理の因果だからこそ恐いわけですよね。


樫原 うむむ。これいいですねえ・・・。今後も使えそうなネタですね(笑)。

半魚 『うろこの顔』のラストはちょうと逆とも言えますが、ヘビが口の中にはいる、あるいはヘビを食っちゃうってのは、なかなかシチュエーションとしては強烈ですよね。

樫原 確かに。

究極の反撃みたいな・・。


半魚 「究極の反撃」かあ。なるほど、その通りですね。的確ですね。まさに、食うか食われるか。

◆ 楳図の好きなナレーション

半魚 別の話題ですが、さつきとカンナのやまびこ姉妹はまだ主要な脇役ですけど、楳図魔子なんかはもう、進行役というか、狂言廻しというか、おろちや猫目小僧やに代表される傍観者的存在ですよね。

手塚なんかの大河ドラマは、「例えば、シュマリや手塚良庵なんかは、主人公じゃなくて、時代を描くための狂言廻しなんだ」なんぞと、高尚な事を言うわけですが、楳図の場合は、そういうわけでもなくて、ほんと「ただいるだけ」って部分も多いですよね。

このあたり、何を具体的に質問しようとしてるのか、自分でもよくわからないのですけど(笑)、また一方で楳図は、物語的な作りというか、ナレーションを被せるのがすごく好きなわけです。

ともかく、なんか、こういうの気になるんですけどね。


樫原 ふむふむ。これは市川崑版の金田一耕助なんですが、まさにそういう存在の下で製作してるらしいです。

これは、いわゆる手法のひとつで、読者的な立場で見ていることで実際の読者はそれにオーバーラップされてそこに行ったらダメだぞーとか危ないぞーとかハラハラさせられる、感情移入の表現のひとつではないでしょうかねえ?(表現が上手くできなくてスミマセン)


半魚 なーるほど。探偵小説の探偵ってのは、そもそもそういう役ですね。横溝なんかは特に、傍観者的立場の典型なのかもしれませんね。

樫原 某マンガスクールで、

ナレーションというのは極力避けるべきものです!なんて教えられましたが、
かの大島弓子(おお、弓子の字が「ママがこわい」「まだらの少女」と同じ!)先生はべらぼうなナレーションでかましてくれてました。読むのに一苦労!

プロになったら表現の自由というか、何でもありなんだなーと思っていたんですが・・・。
半魚さんの言いたいのはそういうことではないんですよねえ(笑)。

半魚 いやいや、ナレーションはマンガの禁じ手だったという事をはっきりおうかがいしただけでも充分に有難いです。なるほど、そうでしょうねえ。普通の演劇なんかでも、浄瑠璃(語り物)よりも、会話で成立する歌舞伎のほうが進化論的に(笑い)進んでる、という人が居たはずです。

樫原 確かに、「マンガ」であることの前提は「小説」っぽくだらだらと文字ばかりだと、読む方も疲れる、というのはありますからねえ。そもそも簡略化した風刺画が「マンガ」ですから・・・


実に楳図っぽい。『うろこの顔』より

半魚 ナレーションもそうですが、楳図作品にはふきだしのセリフ自体もやたら長かったりして、絵は目しか描いてない、とかありますからねえ。

樫原 これは、僕もけっこうやっております(笑)。

半魚 なーんだ(笑)。

樫原 説明しなければならない個所などはどうしても「言葉」の簡略化では通じない部分というのがあるもので・・・。実はこういうコマがわりと重要だったりします。

半魚 たしかに、そういうことはありますね。

樫原 うーん、でもここ何年かでマンガの世界は小説の世界を席巻している風でもあるから、ナレーションのくだくだと説明をするっていうのはむしろ、活字離れの現代っ子にはいいのかもしれないですねえ・・・。

半魚 活字離れは楳図を読め! って?

樫原 んで、トラウマになれって?(笑)。

◆ 『うろこの顔』ですね

樫原 そろそろ、二人のお気に入り「うろこの顔」に行きますか?

半魚 おお、そうですね。

冒頭の「豊島区堀之内六一」という住所は、実際に楳図が住んでた住所ですね。ただ、「林荘」ではなくて「みどり荘」のはずですけど。

ともかく、タイトルの「うろこ」ってのがいいですね。僕なんか、ヘビも嫌いだし、そんなきちんと観察もしなかったので、ヘビに鱗があるなんていまいちピンときませんでしたよ。「うろこは魚だろっ」って。

でも、そうじゃないんですね。ヘビの性質と恐怖を、うろこなどの物的モチーフによってほんとうまく表現してますよね。たんに、「長くて、にょろにょろ。執念深い」ってだけなら、これほどの作品にならなかったのではないかと思いますよ。

樫原 うーん、なるほど。

「うろこ」っていう響きも何となく気色悪いってイメージ与えますよね。


半魚 まあウロコ自体は、以前から使ってる訳ですが、『うろこの顔』に関しては、脱皮というのも大きなモチーフになってますよね。

自分の体の変化への恐怖という点は楳図も何度も強調していると思いますが、この

「一皮剥けば、自分もヘビかも」

という発想はすごいですよね。


樫原 特に美少女であるが故に、うろこの顔が露出したときの恐ろしさは格段に際立ってますよねえ・・・。

半魚 そうですね、やっぱり。山田すず子(偶然を呼ぶ手紙)からウロコが見えても、ねえ(笑)。

樫原 それも、ある意味怖いかも・・・(笑)。

半魚 あはは。でも、お気の毒なのが先に立って、怖がれない(笑)。

半魚 「ギャー」等のオノマトペは、比較的おとなしめではありませんか。特に、洋子が無事な前半は、おとなしいですよね。

樫原 すみません・・・この「オノマトペ」という語源はどっから来ているんですか?ここ2,3日頭の中を「オノマトペ」という言葉が渦を巻いて困っています・・・(笑)。

半魚 オノマトペは、フランス語ですかね。語源は分かりませんけど、日本語だと、擬音語、擬声語、擬態語、等とより細かい区別が合って、日本語のほうが進化してます。(笑い)んーでも、日本語も外来の翻訳語かもしんないけど。

樫原 謎は解けました(笑)。この頃オノマトペを描くたびに「オノマトペだ」「オノマトペだ」と頭の中で誰かが言うんです(笑)。

半魚 電波系ですよ(笑)。

樫原 やっとこの悪夢も消えつつあります。

半魚 でまあ、そのオノマトペですけど。後半では、だんだん毛付き刺付きになりますね。

樫原 じわりじわりと、核心に触れてゆくんですよねえ。

半魚 なるほど、そうですね。

樫原 「動けなくなったお姉さん」の陽子に対する嫉妬からヘビを殺してしまった「たたり」かと陽子は申し訳なく思いながらも、実は女の子特有の「悪魔気質」をはらみ死んだお姉さんに罪をなすりつけようと、悪企みをしたりする。

このあたりの描き方は「おろち」の「姉妹」や「おそれ」にも匹敵する「美しさへの執念」を醸し出していますねえ。


半魚 「悪魔気質」か! ああ、ほんとにそうですね。ストーリー的には「双頭のヘビの祟り」が原因ですから、心理的な問題よりも、山村の伝説的な色合いがまだ濃いなんて思ってましたが、これは浅はかな考えでしたね(笑)。

樫原 あれは、最後のこじつけだと思っておりました(笑)。



半魚 姉妹モノとして考えてみると、やまびこ姉妹は、まあ、基本的に仲好し姉妹ですね。「おそれ」や「姉妹」は、はっきりしたというか前面に押出したというか、ともかく憎しみ姉妹ですよね。「赤んぼう少女」のたまみと葉子とは、まだ妹(葉子)が姉を憐れみ、いじめられるという段階で、姉に対する憎しみや嫉妬はほとんど無いように描かれてますよねえ。

で、『うろこの顔』では、一見『赤んぼう少女』みたいな被害者の妹、みたいに見えますけど、決してそうじゃないですね。

樫原 そうそう、実は美しさを競いあってるみたいな?

半魚 おぞましいモノが渦巻いてますよ。

樫原 楳図かずおはこの作品以降こういうものがテーマになりましたよねえ。人間の心に渦巻く「悪い」心「ねたみ」「そねみ」「ひがみ」(まことちゃんにこの名前で3姉妹が出てませたよねー?)が常に最後にドーッと排出する作品。

半魚 三姉妹……(爆笑)。

樫原 あ、いやいや決してひっかけたワケではないんです(笑)。

半魚 ひっかけてください。ともかく、美人姉妹は恐怖の源泉ですかね。

樫原 楳図まんがは「美」と「醜」が最たる見せ場ですからねー。

半魚 そうですね。

樫原 あたかも人間の原罪を見るような身につまされる作品が多くなったような気がします。


半魚 人間であることそれ自体がもつ破綻、とでもいうか。美を求めること、醜を恐れること、こういう気持ちはプリミティブでありながらも、人間の限界でもありますよね。

樫原 ここまで、人間の原罪を追求した作品は他にあったでしょうか?僕には「手塚治虫」くらいしか思いつかないのですが・・・。

半魚 いやあ、手塚治虫はオモテのひと、楳図はウラの人(と、本人が言ってました)。

樫原 あ、それなんだか記憶にあります。いやー手塚先生が楳図先生を引き合いに出すんだーなんて思った記憶が蘇ってきました。

半魚 対抗意識、強いですよね。でも、息子の真(手塚)なんかは、楳図さんとも仲がよい様なんですよね。

樫原 ああ、そうなんですか?「マンガを描く」という共通項がないからかなあ?

◆ へびのメタファー

樫原 「なりたくない!ヘビになりたくない!」まさにメタファーなのではないでしょうか?

半魚 メタファー……とは?

樫原 ヘビとは執念深い生き物である・・・と同時に女性も然りだという観点からこの「うろこの顔」は生まれたのでは、と思うのです。

半魚 なるほど。女の持つ美等への執念の具現化として、ヘビがある、と。

樫原 誰もが忌み嫌う存在としての「ヘビ」を使ったのは最高に効果ありますよね。これほど人間に嫌われる生き物もないですから・・・。

半魚 手塚の『新・聊齋志異/女郎蜘蛛』に、「人間には、ヘビ嫌いとクモ嫌いと、2種類ある」とか書いてありました。楳図の場合は、ヘビを扱ってても、そういう単純でプリミティブな恐怖から、もうちょい進んだ怖がらせ方をさせてますね。

樫原 ああ、それは知りませんでした・・・。毛虫は、ヘビ嫌いの部類なのかな?(樫原は毛虫が(見るのさえ)ダメなんです)

半魚 毛虫はどっちですかね。僕は、芋虫のほうがこわいなあ。

楳図先生は、蜘蛛嫌いですよね。


樫原 つとに、有名ですね(笑)。僕は「毛」さえ生えてなきゃOKですけどね(笑)。

よく、

楳図かずおは「死ぬとその人のホントウの姿が見える」とか、そういうシチュエーションの作品を描いていますよね。

「その目が憎い」「消えた消しゴム(神の左手悪魔の右手)」「14歳」などなど・・・。


半魚 はいはい、あります、あります。そういう発想自体は、いままで「ちょっと単純だなあ」なんて思ってました(笑)。

樫原 人の心の奥底(深層心理や潜在意識)っていうのは自分では分からないでしょう?

それを何とかして「形」や「目にみえるもの」として存在させるための手段として、楳図はこのモチーフを好んで使っているとしか思えないのですよね。「心」の底にある「真実の姿」の自分。

半魚 ああ、なるほど。
真実の姿のメタファーとして、ヘビであったり、死んだ姿であったり、
と。

樫原 はい、実はこれは人間ならばとても興味あることではないでしょうか?自分のホントウの姿が見えたとしたら・・・どんなモノだろう・・・。

半魚 んー、まあ実は、僕は「単純だなあ」と思った、つうのは、「いまのダメな俺はほんとの自分じゃない」とか思って自分を慰める構造が嫌いなんで、僕としては「今の姿以外にほんとうの姿はない」という思想的立場だからなんですよ。

ただ、こうして見てくると、楳図の場合は、そういう意味での「真実の姿(理想化された)」ではなくて、自己アイデンティティの崩壊というような、かなり恐ろしい「真実さ」ですよね。

樫原 自分自身の存在すらも危うくなりそうな、そんな限界を好んでいますよね。つきつめればこれって「存在理由」を問うているようなものですよね。邪悪な自分の存在を認めざるおえなくなるように徹底的に追い込もうとしてますよね。

陽子もある意味では、ホントウの心はあの脱皮した「うろこの顔」が真実の姿を現していたのでは、と考える樫原なのであります。

それを、ひきだしていたのが、あのばあやであり、復讐をしている双頭の蛇。ドス黒い女の心の裏側を復讐という形を借りて、本性をさらけ出すまで徹底的に描写したかったのでは?と思うのです。

半魚 ふーむ、陽子は単純な被害者ではなく、そもそも「悪魔気質」である、という御意見でしたよね。そうすると、「死ぬと見える真実の姿」としての「うろこの顔」だとすると、これは今まで思ってような単純な構造でもないですね。

だって、ヘビは執念のメタファーでありながら、同時に(美に対して)執念をもやす時の、その極致にある存在でもありますものね。

「なりたくない」ヘビ、それ自体が自分自身のメタファーですもんね。

「Aを求めてBを嫌う」という執念的なあり方こそが、じつはBだった……みたいな、パラドックスですよ。


樫原 そうですね、いくらAを装ってもBは決してAにはなれない!というしごく単純な答ですよね。「姉妹」や「おそれ」などでは、形としてその醜い部分がないけれど、(これはこれでかなり怖いけど)形として見える分、読者には分かり易い作品だとも思います。

半魚 いやあ、逆にカタチとしてヘビとかが見えてるから、それだけで怖がってきた、というような分かりにくさもありますよ(笑)。亜流作品と似た程度のものとして。

樫原 あはは、確かに楳図かずお本人は「ヘビ」ものをこの時期に描けば、ああいう感じで描くだけだったのかもしれないですね。ただ、この時期には楳図かずおのセンスがかなり際立っていたからこそ、僕も半魚さんもいちばん好きな作品になりえたのではないだろうか、と思えるのです。

半魚 そうですよ。物理的(外在的)な恐怖と心理的(内部的)な恐怖、という風に楳図の作風の変遷を分けてしまうけど、この時期の作品の多くや、あるいは『神の左手悪魔の右手』なんかも、複雑に入り組んでいますよね。

樫原 そうですね。「神の左手悪魔の右手」もストーリーよりも残酷描写が際だっていたせいで、そのお話そのものの奥深さを見誤っていたかもしれないですね。もう一度よく読んでみなきゃ(笑)。

そう考えると、この作品はかなり奥深い作品に位置づけられるかもしれませんねえ・・・。

半魚 ええ、深まってきましたよ。このまま一気に『洗礼』までやっちゃえそうですねえ(笑)。

樫原 おお、つながってきますよねー。

とにかく楳図かずおはこのCタイプの目の頃から「少女まんが」に美に対する執念と、それを失う恐れを前面的に描いてきたと思うのですよ。

半魚 なるほどねえ。

ああ、それから、これに触れておかないと(笑)。『ガモラ』のスネイクが、「おれの姿は死なないと見えない」と言ってた事。

樫原 あの頃から「死」=「真実の姿」という命題を考えていたのですね。

◆ おねえさんの死体の目

半魚 急に脱線しますけど、「姉妹」や「おそれ」もそうですけど、必ず妹のほうが一枚上手ですね(笑)。

樫原 あはは、そうですねー。これはどこの家庭でもそうだと思うんですけど、下の子供の方がかなりしたたかに育っていると思います。周囲の状況とか把握して、実にうまく立ち回るんですよ(実感)

半魚 僕は、長男ですけど、弟よりも立ち回りがうまかったのでは?と自責の念にかられてますけど(笑)。

樫原 ・・・。いえいえ僕の知る限り一番最初の子供というのはいちばん大切に育てられていますから、ワリとのんびり屋さんが多くて、2番目3番目は放任主義で育てられてるようです。従って、損をして得をする術をキチンと身につけているようですよ(笑)。半魚さんの知らないトコロで弟さんは「にやり」と笑っているかも・・・。

半魚 なら、安心しました(笑)。

樫原 で、個人的にこの作品で気に入ってる「絵」はお姉さんの死んだ顔の「目」なんです。

半魚 あー、はいはい、水槽のやつですね〜(力、出ない)。ぞっとしますね。

アップにしても、このクオリティ。原寸は3.5×4.8cm(サンコミ)

樫原 どんよりと濁って生気の全く無いあの描写は、僕は非常に難しいと思っているのですが、楳図先生はいとも簡単に(?)描いています・・・。これだけで僕のマイベスト1に入るかもしれない作品です。

半魚 ほんと、この目は、いま見ても、寒気がしますね。あー、きもちわるいです。

水槽のコマは全部で5つありますか。それぞれ、焦点はすこしづつ違うみたいですけど、アップになっている2つめのものなんかは、ほんとにこわいですね。

この目は、焦点は合ってますよね。すこし上のほうの無限遠点を見てる、という感じですかね。白目にも影を付けている部分などが、特に「生気のなさ」をかもし出しているのですかねえ。ちょっと解説してください。

樫原 死体の目というのは、描くのは困難だと思います。映画などでもよく死体が出ますが、みんな目がキラキラしてて生きてるってこと、一目瞭然なんですよね。

半魚 目をピクピクさせちゃう役者もいますね(笑)。

樫原 この死人の目を演じる役者がいれば、その人は名優ですね(笑)。

半魚 なるほど。

樫原 マンガでも、カラーならば「色」を使い表現はできるでしょうが、モノクロの世界でこれだけ、「濁った魚の目」を描くなんてのはこのマンガくらいではないでしょうか?誰が見ても「死体の目」なんですよね。


半魚 おみつの目もこれに近いですかね。「死体の目」で歩き回られるのは、いやですね。

それはともかく、描き手として説明してください。

樫原 まず。マンガ目の特徴は必ず光を受けてる白い丸があるんですけど、これを描かずに黒丸だけだと、単に驚いてる目なんですよねえ。

あえて斜をいれて「濁り」を作るトコロに「死体らしさ」ができるのですが、これはなかなか描けるというものでもありません。僕自身「死体」の生彩のない眼というのは未だに満足したものは描いておりません・・・。

だからこの死体の目の描写はお手本でもあり、ジェラシーを感じる部分でもあるのですよ(笑)。

半魚 最後のほうで、陽子が服のまま全身脱皮(笑)しますよね。で、うろこの顔になった陽子ちゃんが、シュミーズ姿でニョロニョロするあたり、妙に色っぽいのですけど、やっぱり恐いですね。

樫原 ははは!

◆ 楳図魔子は、やっぱカワイイよなあ

半魚 それから、何度も言いますが、魔子ちゃん、可愛いですよね(笑)。

樫原 かなり、気に入ってる様子ですねえ・・・。(笑)

半魚 特に、縦ライン入りのハイソックスがいいですね。「魔子の恐怖ノート」なんて書いてあるのは、これはスケッチブックですよねえ。ふつうならメモ帳だと思うんですが、小脇に抱えて、ちょっと邪魔そうにも見えるけど、動きやすさよりファッション性重視なんでしょうねえ。



樫原 1970年代のファッションそのものですか?ミニスカートでしたよねえ?

半魚 ともかく、楳図作品の女の子は、顔もカワイイけど、なんてったってファッションセンスですよね。

樫原 男性マンガ家であそこまで描けるというのは驚きですよ。今は、みなさん違わずお上手ですが・・・。

半魚 あはは、手厳しいですね。でまあ、僕はともかく楳図魔子ファンだと言いたいわけですけど。

樫原 半魚さんの好みのタイプがよーく分かりました(笑)。

半魚 最後には、無責任(?)にも、怖くて東京に逃げかえるわけですけど、こういうのも許せちゃいますねえ。

樫原 あれは・・・(笑)。おいおい!

それはあんまりだべー と笑ってしまった僕ですが・・・。

半魚 そりゃまあ、ツッコミようはありますけどねえ。「おまえー!単に興味本位じゃねえかーっ」って。

樫原 

高也なら、「見損なったよ!」とか言いそうですよね(笑)。
あっ、またヤバいこと言っちゃった!
半魚 あはは。かわいい魔子ちゃんを、ちょっと高也にイジめさせてみたくもなるなあ。

樫原 ああ、よかった(笑)。また怒りが来るのかと思った(笑)。

半魚 屈折したロリコン……ではありません。

それと、電車の窓に写るばあやさん。
これ、恐いですよ。初めて読んだ時、たぶん、ここが一番恐かったんじゃないかなあ。


樫原 ああ、ヘビを持って笑ってるんですよね・・・。

半魚 そうそう。

樫原 僕は、おとうさんが神の化身である双頭のヘビをぐちゃぐちゃに噛み砕いたシーンかなあ・・・。

楳図のいわゆる理性的かつ理論派の男性像があれで吹き飛んでしまったような
気がしています。

半魚 いやあ、あそこは意外な展開ですよね。むしろ、「強い男性像」そのままのような気もして、そこだけはちょっと気に入らない。谷川先生みたいな(笑)。

樫原 確かに、女性があれをやるとなると、かなりグロいですねえ。今なら、平気なんでしょうけど・・・。復讐のまた復讐の図みたいな・・・?(影亡者みたいですね)

半魚 そうか、そう解釈すれば、納得するなあ。

えーと、だいぶ話も出尽くしてきてますかね。やってなかった、他の作品についても触れてゆきませんか。お願いします。

◆ 『口が耳までさけるとき』

樫原 これは、当時(昭和30年代)少女マンガの定番である、「極貧」少女が「デラックス」な家の養子になって・・・という御伽噺的なお話から展開する作品ですが、とにかくこの作品は基本中の基本である楳図ヘビものの「エッセンス」をつくりあげています。(絵はともかく)

半魚 絵は、時期的に言っても、しょうがないですね。まあ、当時なら充分ショッキングではあったでしょうけどね。で、エッセンスとは、どんな感じですか。

樫原 えーと、


•「少女」を食べる(ママがこわい)、

•脱皮するお母さん(うろこの顔)、

•養女にする(決して自分の子供ではない。この逆もあり)(へび少女)、

•ばあやに連鎖する狂気(これは、その他の作品にも多々ありますね)、

•寒さに弱いことを利用して退治(?)する(ママがこわい)


という風に。



半魚 なるほど。特に、「ばあや」ってのは、今の庶民には分かりませんね。あれ、実祖母じゃ、面白くないですもんね。他人のばあやだからいいんですよね。それで、「紅グモ」だと、ねえさんのたか子がばあやになってしまう(笑)。

樫原 確かに(笑)。ばあやって今は「家政婦」さんかなあ?

半魚 うんうん、「家政婦」じゃあ、こわさ半減ですね。

樫原 ちなみにとぐろを巻いた帽子をかぶってるおかあさん、キュートです(笑)。



『口が耳までさける時』

半魚 これ、変わってますよね(笑)。ちょっと笑えますね。

樫原 とにかく「ヘビ」だと強調したかったんでしょうねえ・・・。

◆ 『へびおばさん』

樫原 「へび少女」の原型版がこれでしょうねえ。どう見ても(笑)。変形版が「紅グモ」ですね。

しかし、これはホンモノの「へび女」ではない!というところがミソでしょうねえ。

半魚 そうなんですよね。本質的には「へび女」ではないのですよねえ。

樫原 継子いじめの材料として「へび」を使うなんて、

まー才長けたおかあさんです。
ところが、フリをする内に、ウロコや顔がヘビそっくりになっていくなんてのは「内なる仮面」の走りですね。

「心」が「体」を作るのだ!
と言わんばかりの楳図かずおの主張が見え隠れする作品です。

半魚 これ、ほんとそう思います。「内なる仮面」であり、「キツネ目の少女」だとか、フリをする内に……ってのは、まさに楳図的心身問題ですよね。

樫原 しかし、これではさすがにマズイと思ったのか(どうかは分かりませんが)「ヘビ少女」では本物のヘビを使いましたねえ。

半魚 僕は、恐怖・ホラー関係の作品でひとつ許せないのは、「怪異現象は存在しません。すべて、なにかしらの人為です」という趣旨のものなんです。ここ10年は減ったように思いますが、以前は多かったですよね。

樫原 そうなんですか?

うーん、僕が怖いなと思うのはこの頃の若い人(?)の心霊現象とか、幽霊の存在とかを(信じる信じないは別として)本気で受け止めている姿勢の方が・・・。

半魚 ふーむ、それも確かに恐いなあ。ていうか困ったなあ。フィクションをフィクションとして楽しむ能力を持ってほしいもんです。

◆ 『蛇娘と白髪魔』

樫原 これは、前にも書いてますが、すごい寄せ集めの作品ですねえ。しかし、これは映画化されるから、こういう集大成的な作品を描いたのか?それとも何か他に意味があって描いたのか?一ファンとしては気になる作品です。

半魚 『赤んぼ少女』のリメイクですよね。初出の「ティーンルック」ってのは、リメイク作品ばっかり載っけていますよね。多分、編集者が楳図先生を口説き落したんでしょうね。

「ストーリーはリメイクで良いですから、先生ならスゴイ作品になりますよ」とか言っちゃって。「蛇娘と白髪魔」自体は僕はあんまり評価しない作品ですけど、「映像(かげ>」やら「蝶の墓」やらの名作を生んだ「ティーンルック」の編集担当者はエライです。

樫原 そうですね。確かに考えればリメイクですよねー。



姉・タマミ| 妹・小百合
ふたりとも美しいなあ

半魚 そんでもって、この「蛇娘」にも、ちょっくら「白髪魔」は「人為です」風がありますが、楳図の場合は、その処理の仕方は上手いとおもいます。

樫原 「紅グモ」に出てたおかあさんの演出した「クモのお化け」が「白髪魔」になり変わっていますよねえ。僕は映画では、「蛇娘」よりもこの「白髪魔」がとても怖かったという印象があります(笑)。

半魚 ああ、その映画、僕にも見せてくださーい(笑)。

◆ おしまい

あっ、最後に。そういえば、

『おろち』もヘビでしたね。


樫原 そうでしたねー(ここは震えるオノマトペでお願いします)。

半魚 あはは。トゲも付けますか。

樫原 いやー、これを忘れるなんてファン失格ですねー。(笑)
http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/umezu/kazumi/kazumi02.htm


27. 2016年4月15日 21:51:56 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2406]

楳図かずお へび女 電子書籍
https://books.google.co.jp/books?id=vD5aBAAAQBAJ&pg=PT89&lpg=PT89&dq=%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A+%E3%81%B8%E3%81%B3%E5%A5%B3&source=bl&ots=2DBMEwvUuG&sig=QJyPjvt-NozLdV9eVf5_T01a_T4&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwi-2pXX1pDMAhWBs5QKHeHqADI4KBDoAQg9MAY#v=onepage&q=%E6%A5%B3%E5%9B%B3%E3%81%8B%E3%81%9A%E3%81%8A%20%E3%81%B8%E3%81%B3%E5%A5%B3&f=false

28. 2016年4月15日 22:06:59 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2407]

[mixi]画業55th記念文庫 - 楳図かずお mixiコミュニティ


2010年11月02日 15:04
この8月から刊行されている、梅図かずお画業55th記念 オリジナル版作品集文庫本読みましたか?

とてもいいです。

楳図先生がメジャー雑誌に登場して以来の、講談社作品完全収録シリーズです。

週刊誌連載時のトビラ絵が毎号分完全収録されています。

小学館『漂流教室』完全版1〜3と同じ手法ですね。

さらに今まで単行本では読めなかった、雑誌連載時の予告編、当時の書き下ろし口絵、過去の単行本表紙絵、雑誌の柱(ページの欄外にある縦書きのアオリ文章)までもが再現されています。

しかし何よりいいのは雑誌掲載時のコマ割、段組がそのまま楽しめることではないでしょうか。

楳図先生の場合、絵が緻密なあまり単行本刊行時の改訂部分がはっきりとわかってしまいます。判形の違いに依る書き足し、削除などは淋しく感じていました。
諦めるしかなかった部分が、やっと完全再現に近い形で読めました。


11月に出るNo.3「へび少女」は今現在買える角川ホラー文庫、小学館 UMEZZ PERFECTION 共にエンディングがオリジナルとは違っています。

別の作品(ママがこわい)の一部が「へび少女」のエンディングになっています。

このシリーズでやっと「へび少女」がオリジナルの形で読めるようになると思うと、なにか胸のつかえがおりたようです。


2010年11月03日 08:39
ちょっと調べてみました。

写真の右がコンビニ版(1999年)で、左が小学館スーパービジュアルコミックス「恐怖劇場2 へび女」(1992年)です。

(これで、改変か?パーフェクション版と基本、同じ。セリフが一部違う。)

まずコンビニ版で、へび少女のラストにびっくりしたのですが、

まさか洋子が行方不明になって、記憶喪失で20年後に「ママがこわい」のへび女で再登場!ふらふらとは…

でも、だんだん違和感が…

角川ホラー文庫(2000年)は、順番がおかしいですね。なぜ、こんな順番にしたのだろうか。

オリジナル版「へび少女」を読んだら、逆にびっくりな方もいるでしょう。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1534&id=57619553


29. 2016年4月15日 23:37:55 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2408]

楳図かずお「ヘビ」もの
http://0720kk.fc2web.com/hebi.htm

「口が耳までさけるとき」

貸し本時代の「ヘビ」ものである。ある富裕な家の養女となった少女だが、その屋敷にはヘビの奥様がかわいい少女を養女にしては冬の食料としていたのである。というオソロしい話である。

後に「少女フレンド」誌掲載の「ヘビ少女」のベースとなっているのは、まず間違いない。

 

 「ヘビおばさん」

これも貸し本時代の「サツキとカンナ」の山びこ姉妹シリーズのものである。

とある田舎の後添いとなった女が、邪魔な先妻の娘(サツキとカンナの友達)を狂わせてしまおうと、「ヘビ」のふりをするが、ふりがほんものになってしまい…。まさしく「紅グモ」の原型となった作品

 

 「ママがこわい」「まだらの少女」

メジャー路線での「ヘビ」もの秋田書店より「まだらの恐怖」という単行本で刊行されている。

実際は「ママがこわい」から「まだらの少女」へと続く2部作。

自分が蛇だと思い込む女が、病院でそっくりの女と入れ替わる。そうとは知らない娘は、母親の奇行をいぶかしく思うが、母親であるヘビママは娘を食べようと…。

やっと助かった娘の後を追いかけてヘビ女は田舎へと娘を追いかけてゆく。そこで娘の親戚がまむしにかまれ、ヘビ女は、その血清を自分の血とすりかえてしまう。親戚の少女はそれから、ヘビ少女となってゆくのだった。

 


「へび少女」(秋田書店刊行「怪」第2巻「へび少女の怪」と同)

やはり「少女フレンド」に掲載された、「サツキとカンナ」の山びこ姉妹が主役のお話。

「うわばみ」の右目を鉄砲で撃った猟師がヘビの呪いで死んだ。その血を引く娘が養女となる。

しかし、引き取られたお屋敷の奥様は、実は「うわばみ」だったのだ。少女に復讐をするために引き取ったのだ。このあたりは「口が耳までさけるとき」の韻を踏んでいる。その後ヘビ少女となった

その少女がサツキに魔の手を伸ばす…。美少女が「ヘビ」になってゆく様はゾッとするほど怖い描写が続く。

たらいに入った水を飲んだ後の目つきが変わり、井戸に投げ込まれてやっと這い上がったとき、すでにヘビに変貌しているのだ。そこまで描くか楳図?!ってカンジ。

 「うろこの顔」

これは、かなり絵が定着された頃の作品。やはり「少女フレンド」に連載されていた。

連れ子として、大きな屋敷に来た娘の恐怖の体験。義理の姉がヘビのような性格になり、死んでゆく。

続いてその娘もヘビの顔になってゆく。美しい顔の皮がベリッとはがれ「うろこの顔」がむきだしになってゆく描写は楳図ならではのシーンである。結局は、父親が殺したご神体である双頭のヘビ神さまの呪いだったのだが…。

 「蛇娘と白髪魔」

はっきり言おう、これは「ママがこわい」「赤ん坊少女(後述)」「紅グモ」をミックスさせた作品である。

奇しくも大映でこの作品が映画化されている(同タイトル)。とある屋敷に孤児院から引き取られた少女。

その屋敷には、屋根裏に醜い姉(?)が住んでいた。ヘビのような姉に妹は虐待されるが、健気に辛抱する。

(この辺は「赤ん坊少女」)また、姉は蛙に異常な執着を持ち、妹は沼に蛙がたくさんいるといって、深夜に抜け出した姉を見て「姉さんはヘビよ」と主張する(このあたりは「ママがこわい」ですな。)

はたまた、「白髪魔」なるクモのお化けも出てくる。(「紅グモ」系?)

もうこうなると何が何だか分からない。楳図先生、どうしてこんな寄せ集めの作品を描いたのですか?

 

 「蛇」

「少年サンデー」誌に掲載された唯一「少年」もののヘビまんがである。

円熟味増した頃の作品で、ヘビに関するホラーはこれ以降描いていないようである。

後妻として、来た新しいお母さんが実はヘビだったという、これまでと代り映えのしないお話の展開。

生肉を2kgほどいっきに食うお母さんは、不気味でしたが…。

食べたいほどかわいらしい・・・食べさせてくれないから憎さ百倍!というのが根本的に作品には流れているのでしょうか?
http://0720kk.fc2web.com/hebi.htm


30. 中川隆[2342] koaQ7Jey 2016年4月16日 07:24:26 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2411]


鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱醯鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱
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鬱鬱鬱鬱鬱蠢蹟蠢蠧熨鬱影        ベY珀笠に∴3、                  `ベ介衍衒鐫鬱鬱鬱鬱
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鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠢,``                `ヨ召Y定ネ此                   ベ∃汾珀掘儲鬱鬱鬱
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鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠢』                  ベ三ヘベ鴪彭                ベ⊇⊇氾衒掘儲鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱ル                  ∃川シ  ヅ’                 ベベ3氾珀伽疆鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱』                  `当癶、        、  u∴     ベベ⊇Y珀雄鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱。                  ″  シ  、uムЩ糴庇     ∴シ⊇汾衍儲鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱監                      ∴、∃ヨ櫨鬱鬱齔      `3⊇氾珀遏T鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱テ                逧此払(錙鬱鬱鬱h     ベ3⊇氾衒鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠢』              『鬱JJ鬱鬱鬱鬱影忙      ベ⊇⊇浴郤弭儲鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠢=@             『鬱鬱鬱鬱鬱Г      ベジ⊇Y交氾据鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鹹              情苛泣罅         ∴3S川Γ ヨ据鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱醢=@           ヴ県戸”          ⊇⊇ジ   ∃据鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠧=@                       ⊇⊇゛    ヨ溷鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠧止.                  ベシ       旧疆鬱鬱鬱

楳図かずお 紅グモ[立ち読み版]
http://www.ebookjapan.jp/ebj/23293/
http://www.ebookjapan.jp/ebj/23293/volume2/


『ねこ目の少女』『ママがこわい』に続いて描かかれた初期ホラー作品の代表作。

「少女フレンド」に16回に渡って連載された著者の代表作の一つ。
カラーページも含めての完全復刻。※

「紅グモ」

クモマニアの先生(?)の元に嫁いだ女。実は財産をのっとろうという悪い女だ。

前の奥さんの子供二人をなきものにしようと、お姉さんの方に「紅グモ」なる毒グモを体内に入れてしまう。死んだと思われたお姉さん、棺の中で蘇る。

必死の思いで棺から出たが髪は真っ白になっていた。(江戸川乱歩の「白髪鬼」か?)

ばあやのふりをして屋敷に入り、奥さんへの復讐をする。

奥さんは奥さんで妹の方をどうやって殺そうかと思案している。

ところが、紅グモはお姉さんの体の中で繁殖していたのだ。

ひからびたお姉さんを尻目に紅グモは新しい体を求めて、妹の友達に寄生する。

その友達というのが性格悪いから大変なことになってしまう。

学校の時計塔に巣を作り獲物を見つけては血(?)をすするというありさま。
http://0720kk.fc2web.com/kumo.htm


Sadさんのトラウマ。楳図かずお「紅グモ」
http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/10156596.html

が〜ん!やっぱりあったのら〜!!

blog のお友達、Sad 姐さんのトラウマ漫画でございます。

「ワタシのコワイ漫画はおばあさんが咳をするたびに蜘蛛を吐く、って漫画。

その蜘蛛を風呂桶に溜めるので、お風呂に入る時に一斉に出てきて、・・・きゃ〜〜〜!!!」

というコメントをいただきまして、さっそく我が家の書庫をあさってみたら…

ひ〜っ!2冊もあったよ。表紙は違うけど、中身は一緒。

楳図かずおの「紅グモ」という作品でした。

美也子は姉のたか子とクモを研究しているお父さん、そして新しいお母さんと4人暮らし。


http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=1


しかし…母親は夫の研究室から恐ろしい紅グモを盗み出し、たか子の就寝中にしのばせ、たか子を殺害する。

http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=2


新しい母親は家族を殺し、保険金を独り占めしようとしていたのだ。

しかし、たか子は生き返る。正確には紅グモがたか子の体を支配しているのだ。

ショックでおばあさんのような容姿になっていたたか子は、老婆になりすまし、自分の家で家政婦としてはたらく。

妹の美也子に本当のことを知らせるために、美也子に近づくが、たか子の口からはクモが飛び出してしまい、美也子はかえっておびえ、たか子を拒絶してしまう。

http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=3


ある日、風呂場で物音がして、たか子が様子を見に行くと、風呂桶の中には無数のクモが…

http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=4


ますます美也子はたか子が恐ろしくなるのだった。真実を伝えたいたか子…

しかし、ついにたか子は美也子と母親の前で真実を語り、母親を殺害する。

ところが、たか子の命も風前の灯だった。
たか子の体は完全に紅グモの乗っ取られていたのだ。


http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=5


たか子のからだは抜け殻になってしまった。

乗っ取っていたクモは、今度は美也子の同級生・れい子の体にはいりこむ。


http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=6


しかし、父が持っていた薬によって紅グモを退治。
まだ体内をむしばまれていなかったれい子も一命をとりとめたのだった。

http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/GALLERY/show_image.html?id=10156596&no=7

Sadさん!これでしょ〜 ごめんね〜、また思い出させちゃって(^_^;

この作品は1965年から「少女フレンド」に連載されました。
そして、なんと!昨年、当時貸本で出版された単行本全2巻が完全復刻版で出てたのら〜!!
http://blogs.yahoo.co.jp/y_sirais/10156596.html


楳図かずお作『紅グモ』の、愛しのたか子ちゃん 2013.02.17



恐怖漫画の巨匠・楳図かずお氏の作品が、子どもの頃とても好きだった。

楳図かずお氏(1936〜)は、貸本漫画全盛期の1955年にデビュー。

長年にわたって数多くの作品を生み出し続けてきた人物だが。

1965年から68年にかけて『少女フレンド』や『なかよし』に少女向けの恐怖漫画を連載し、一大ブームを巻き起こしている。

私が楳図作品に夢中になったのは、まさにちょうどその時期で。

年齢にすると6才から9才、小学校に上がる前年から三年生にかけての頃だった。

口まで耳がぱっくりと裂けたヘビ女が登場する『ママがこわい』『まだらの少女』『へび少女』などのシリーズや、

化け猫ものの『ねこ目の少女』『黒い猫面』、

そして『紅グモ』『ミイラ先生』『赤んぼ少女』など等・・・。

楳図氏が当時描いた少女向け恐怖漫画のほとんどを、若干の時差はあるもののほぼリアルタイムで目にしている。


楳図作品の主人公は、読者と同じような年齢の、ごく普通の女の子。

ある日突然、少女は訳がわからないままに、思いもかけぬ恐怖に襲われることとなる。

夜の闇がゆっくりと広がっていくように、それはひたひたとじわじわと、少女を追い詰めていく。助けを求めても周囲の大人はそれに少しも気づかない。いつもと変わらない日常が続く中、少女だけが恐怖に怯えることとなり・・・


作品を読み進めていくうちに、読者の少女たちはいつの間にか主人公と同化。

彼女の恐怖を疑似体験していく。

読者もまた、ひたひたとじわじわと、恐怖に追い詰められていき・・・。

というプロセスが、たまらなく怖いのにたまらなく魅惑的でさえあった。

こわい漫画は他にもあったが、楳図氏が描く作品の怖さは明らかに特別なそれ、だった。

さて。幼い頃に夢中になった楳図作品の中で、最も深く印象に残っている作品。
それが今回取り上げる『紅グモ』だ。


『紅グモ』は1966年5月から15回にわたり、『週刊少女フレンド』に連載されている。

この年の4月、私は小学校に入学し、ささやかな額のお小遣いを貰えるようになっていた。そこで仲良しの友だちと交代で同誌を購入。それまで主に古本で見ていた楳図作品を、初めて連載ものとして楽しんだ思い出の作品でもある。

『紅グモ』の主人公は、たか子と美也子の美少女姉妹。

母親を早くに亡くした二人は、クモの研究家である父親とともに大きな屋敷に住んでいる。


物語はその屋敷に、父の再婚相手が登場するところからはじまる。

美しい継母は姉妹にやさしく接するが、その正体は実はとびきりの悪女だった。

一家の財産を狙い、継母は姉妹を亡き者にすることを計画。

夫の研究室で「紅グモ」(生き物の口や鼻から体内へと入り込み、その体を餌にして繁殖するという恐ろしい毒グモ)を見つけ、それを姉妹殺害に使うことを思いつく。

そして、継母は密かに紅グモを放つ。

姉のたか子は原因不明のまま苦しみ、呆気なく死んでしまう。

継母はさらに巧妙な手を使い、妹の美也子の命を奪おうとする。

が、死んだはずのたか子が紅グモの化身となって蘇り、義母への復讐を開始して・・・

というのが、同作品の主なあらすじだ。

楳図かずお氏お得意の「ぎゃ〜!もう勘弁して〜!」と叫びたくなるような展開。『紅グモ』においてもそれが、「これでもかっ!」といった具合に次々と描かれていく。

継母によって密かに放たれた紅グモは、寝室で眠るたか子の口から体内へと侵入し・・・なのだが。そのシーンの描き方がとにかくショッキング!だった。

異変を感じて目覚めたたか子が見たものは、不気味に笑う継母の姿。

しかし彼女は、頭をのぞく全身をクモの糸で縛られて動けない。

継母は恐怖におびえるたか子に近づき、その鼻を指で強くつまむ。

鼻で息ができないたか子は口を開かざるを得なくなり・・・。
大きく開かれたその口に、義母は手にした紅グモを押し込んでいく、のであった。


そして、たか子は死亡するも、数日後になんと墓の中で蘇生。

その墓場でのシーンがまた、たまらなく恐ろしさを覚えるものだった。

息を吹き返してすぐ、たか子は自らが土葬されていることを悟る。

息がどんどん苦しくなっていく中で、たか子は必死になって木製の棺桶を掻きむしる。

指を血だらけにしながら、棺桶に穴を開けて地中を這い進み、やがて・・・。

たか子は墓から脱するものの、想像を絶する恐怖によって白髪の老婆と化していた、のである。

その後。

憎き継母から妹の美也子を救うため、たか子は老婆となった姿を利用し、自らの家にお手伝いのおばあさんとして住み込むこととなる。やがて彼女は、自らの正体を愛する妹だけには知ってほしいと願い、ある晩遅くそれを決行する。

たか子は埋葬された時の服に着替え、美也子の部屋を訪ねる。

そして、自らが死んだはずの姉であることを告白するのだが・・・。

信じてもらうどころか恐ろしがられ、ついに家を追い出されてしまうのだ。


たか子の体内で育ち始めた紅グモによって、彼女はだんだんと「紅グモ」化していく。

異形の者となったたか子は再び屋敷へ戻り、義母への復讐を果たすのだが・・・。

もはや彼女はかつての彼女ではなくなっていた。

紅グモに身も心支配された結果、ついには愛する妹をも襲うようになる、のである。

ああ、なんて可哀想なたか子ちゃん・・・。

『紅グモ』の怖い怖い展開に胸をドキドキさせながらも、そんな風にたびたび想った幼き頃の私だった。


長い髪を腰まで垂らした たか子ちゃんは、少し内気な静かなる少女。

おさげ髪の美也子ちゃんの快活さとは対照的な、大人っぽい魅力をもつ妹想いのやさしい美少女だ。

そんなたか子ちゃんが残酷な運命の渦に飲み込まれ、異形の者と化していく様に、強い恐怖を覚えると同時に深い切なさを覚えた私でもあったのだ。

大きな瞳と長い黒髪が印象的なたか子ちゃんの姿を思い出すたびに、今も胸がきゅうん!としたりする。だから私は、楳図作品の中で一番、『紅グモ』が好きなのかもしれない、とも思う。『紅グモ』はおぞましいまでの恐怖を描いた作品であると同時に、「愛しのたか子ちゃん」の切ない切ない物語、なのだから。

あの頃の楳図作品を愛読していた世代の方はよくご存知と思うが、楳図氏が当時描いていた少女向け漫画の絵柄はとても美しい。

『紅グモ』のたか子&美也子姉妹もそうだが、初期のヒロインたちは皆、叙情性あふれる美しさと愛らしさに満ちていた。
(それもまた、あの頃の少女たちが楳図作品の虜となった要因のひとつといえると思う)

そうした美少女の一人がある出来事をきっかけに、ひどく残酷な仕打ちを受けた果てに、おぞましき異形の者へと化していく。

美少女は自らの運命を呪いながらも、必死でそこから逃げだそうとする。

が、負のエネルギーは強大であり、美少女はそれに肉体だけではなく心までをも取り込まれていくのである。


「ああ、なんて恐ろしい・・・」は、「ああ、なんて可哀想な・・・」でもある、というこの展開。

当時の楳図作品の代表的なパターンだったわけだが、あの時代の読者であった少女たちはそれにヤラれ、楳図作品の虜となった。なのかもしれないと思う。(少なくとも私はそのようだ)

ちなみに。当時の楳図作品では、「こわいよ〜」とただ怯えているだけの少女は、異形の者の餌食にはなっても異型の者にはならない。

異形の者に変身するのは、大抵の場合ある種の強い意志を心に秘めた少女だったりする。

たとえば『紅グモ』のたか子ちゃんの、妹を想うひたむきさのような・・・強い意志を宿した少女だったりする。

たか子ちゃんのひたむきな心は、彼女の姿同様に美しいものに違いない。が、それがあるきっかけで恐ろしいほどの執念や手段を選ばぬ残酷性になることも・・・とも考えられそうだ。だからこそたか子ちゃんは、ダークサイドに落ちなければならない運命の少女として描かれているのかもしれない。


美少女が変身した、おぞましき異形の姿。

それは美少女の内に秘められたある種の強い意志が、負の形で増大していったもの? 

その美しい姿と異形のおぞましき姿の対比は、人間の心の善悪が表裏一体であることを表すそれ? なんてことを、すっかりおばさんになった私は思ったり・・・だったりしている。

「こわい漫画」を描きはじめた若き日のことを、楳図かずお氏はこんな風に回想している。

そもそも恐怖漫画を描こうと思ったのは、18歳でプロになった時、みんなに読んでもらうにはインパクトがあって、ほかの人がやっていないものを描かなくてはならないと考えて。

当時は怪物や幽霊が出てくるような漫画はあっても、心理を描く恐怖漫画はまだなかったので、「あ、ここだ! このジャンルにしよう」と思ったんです。

さらに、自らの創作に対する姿勢についてこんな風に語っている。

「漫画って何だろうね」なんて論理的なことはわかっていなくても、プロになった時から「今、売れるためだけに描いていてはいけない」という意識はありました。

今のことだけを描いていたら、時代が過ぎていくとみんな過去のものになっちゃう。時代のにおいみたいなものはありつつも先を行かなければいけないし、時代を超えて不動のものがなければいけない。いつだってそういうところで仕事したいとか、勝負をかけたいと思うんですよ。

なるほどなぁ、すごいなぁ、楳図かずおって・・・

幼い頃にこの人の作品と出会えてよかった。と、しみじみと思った私であった。
http://mckotori.jugem.jp/?eid=393


31. 中川隆[2343] koaQ7Jey 2016年4月16日 09:02:25 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2413]


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マンガノゲンバ 「楳図かずおスペシャル」動画
https://www.youtube.com/watch?v=GFbx5HyBR0Y&feature=player_embedded

わたしは真悟
https://www.youtube.com/watch?v=Oe2Q8TU6m1U

「楳図かずおさんの『夢のびっくり!箱』」動画
http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2010/12/post-aa06.html


フェリシモ 神戸学校 楳図かずおさんレポート
http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2010/12/post-aa06.html


フェリシモ:
早速ですが、楳図さんの作品について触れたいと思います。

まず、ご経歴を紹介しますね。

楳図 かずおさん、なんと1936年生まれの74歳ということで……。

楳図さん:
そうですね。


フェリシモ:
プロデビューされたのは19歳。14歳のときに描かれた『森の兄弟』という作品ですね。


楳図さん:
そうですね。高校3年生のときに本になりました。

中学2年のころから、他府県の人たちと文通をしていたんですね。

で、その中のひとりが神戸の西岡さんという方で「『改漫クラブ』って漫画のクラブやっています。入りませんか?」と誘われて、入ったんですね。

その方が会長で1つ上の中学3年生、僕は中学2年生。。で、その西岡さんが、僕の描いた『森の兄弟』を売り込んでくださって……。それで高校3年生のときに本になったんです。西岡さんは神戸市灘区の方。もうお亡くなりになっていらっしゃらないんですけど、一度中学2年のときにお家を訪ねて行ったことあります。

フェリシモ:
どんなお家でした?


楳図さん:
えっと、ちっこいお家でした(笑)。
だけど、僕もお弁当持っていったんだけど、おもちだけでした。家で焼いてお醤油つけて持っていったんだけど、食べようと思ったらカチンカチンになっていて、すごい苦労して食べた思い出があります。

そんな感じでおあいこで、と言った感じで……(笑)。西岡さんは本当に面倒見のいい方で、売り込んでくださってありがたいなと思ってたら、なんと西岡さん、おじさんが画廊をやっておられて、それで後継いで、名古屋と東京の画廊「ユマニテ」をやってらっしゃって。ですので、中学のころから人の作品を売り込むっていうのは伝来の……。

フェリシモ:
お得意だったんですね。

楳図さん:
だったんですね。だから、本当に、神戸、懐かしいです。

フェリシモ:
神戸にゆかりがあった、これも運命と言うことで……。

楳図さん:
うんめいずかずお? どうもすみません。

(会場:笑)



1950年代の作品をご紹介

(画像:1950年代の作品のスライド)

フェリシモ:
では楳図さんの作品のご紹介をしたいと思います。まずは、1950年代の作品です。

楳図さん:
『ねこ目の少女』、『へび少女』、『猫目』! このころ、へびとか猫とか、動物ものに凝ってたんですよ。

なんと言っても、怖さのしょっぱなはやはりへび。
僕、こどものころ、なんと言っても怖いのはへびでした。

住んでたのが奈良県の山奥で。

高野山で生まれてその後、吉野熊野の山奥に住んでたら、何が怖いってやっぱりへびですよ。夜に歩いてたら、でかい20〜30mくらいあるようなうわばみが出てくるもんだ、って思ってましたもん。

僕の母親はずっと山の人だったんで。うわばみに出会ったときはどうするかって、その対策まで持ってて……。山の中で、そいつに出会ったときは……。

山の人だから手斧持ってるんですよ。それで歯向かっていっても、いくら歯向かって頭切りつけても勝てないって。へびは狙うのは頭じゃなくて、尻尾だって。尻尾をちょんと切っちゃうとそしたら大丈夫なんだって。

まあそういう、山のたわいない話かなと思って聞いてたんですけど……。

フェリシモ:
それで、こういうへび女とか、動物を題材に?

楳図さん:
描くようになりました。

でもそのへび(を題材とした作品)を描くきっかけっていうのは、奈良県に曽爾村という村があって、そこの村の伝説で「お亀池のへび女」という話があるんですが、それを父親が寝るときにいつも話して聞かせてくれるんです。

村の若者がきれいな奥さんもらって、赤ん坊が生まれてしあわせに暮らしていたんだけど、ふと気がつくと、そのお嫁さんが夜になるとどこかへ出かけていくんですって。

それに気がつくんだけど知らないふりして寝たふりしていると、お嫁さんが戻ってきて……。

朝起きてみると、廊下の上に水で濡れたお嫁さんの足跡がぺたぺたぺたとついていて……。

「これは?」と思ってあとをついていくと、そうするとお亀池に消えちゃって。

で、まあ赤ん坊がおっぱい欲しがって泣くので連れて行って……。

途中はしょりますけど。そしたらへびになって追っかけてきて……というような話。

これを僕はいつも父にリクエストしてました。それがいちばん怖かったものですから。この話がだいたいこの辺の(作品の)へび女の原型です。


(画像:1960年代の作品のスライド)

フェリシモ:
今度は1960年代です。

楳図さん:
『猫目小僧』とか『おろち』とか。それまでへびとか蜘蛛とかいっぱい動物シリーズを描いちゃったものですから。次は人間かなあと思って……。

フェリシモ:
人間の怖さを?

楳図さん:
人間でどういうのがいちばん怖いと思います?

意地悪するお母さんとか、鬼嫁とか、まあ怖いけど……。

どういう状態が怖いかっていうと、僕はかわいらしいのがいちばん怖い。

それで『赤んぼう少女』を描きました。赤んぼうってかわいいいじゃないですか。

それが怖かったら、やっぱり人間の究極の怖いやつかなあと思って。


フェリシモ:
いま(画像で)、抱っこされているのは赤ちゃんのタマミちゃんなんですけど。
タマミちゃんすごく怖いです。命吸い取りそうな赤ちゃんですよね。

楳図さん:
そうなんですよね。
でもこのタマミちゃん、お陰さまで、すごい人気がありまして……。

今度フィギュアになります。おろちがタマミちゃん抱いてるやつとか。
まことちゃんがタマミを抱いてるとか、そういうフィギュアです。

(画像:1970年代のスライド)

フェリシモ:
次は1970年代、出ました『まことちゃん』!

楳図さん:
まことちゃんでーす。

フェリシモ:
あとは『漂流教室』とか『洗礼』とか、少女漫画の代表作ですね。

楳図さん:
ずっと男の子の漫画ばかり描いてましたが、少女雑誌からの依頼があり『洗礼』を描きました。このころから、社会性があるというか、そういう作品が多くなりました。

フェリシモ:
では、1980年代から1990年代にかけて。『わたしは真悟』とか『14歳』、すごく精密な絵で楳図さんの最高傑作との呼び声高く、本当に素晴らしいです。


楳図さん:
『わたしは真悟』は相当下調べをしました。

下調べと言ってもビジュアル的なこと。

東京タワーを出したかったので、東京タワーをスケッチしに行きました。

タワーの下に行って双眼鏡で上の方がどうなっているかを下調べ。

(漫画に登場すると)キャラクター悟と真悟がずっと上の方まで登るので、双眼鏡で下から上を見上げてスケッチしたんです。双眼鏡でこうやって見てるとね、船酔いしたみたいになってくるんです。気持ち悪くなってやめたんですけど(笑)。


楳図さんの幼少~少年時代は?


フェリシモ:
楳図さんの幼少期のお話を伺いたいと思います。きりりとされてますね。


楳図さん:
まだこのころは歩けないからあんなところ(歩行器)に乗ってるんですけど。
で、母親がこんな子に紙と鉛筆持たせたらなんか描かせれば描くかなぁとかいって……。


フェリシモ:
では、最初に鉛筆と紙を持たせてくださったのはお母さんだったんですね。


楳図さん:
多分その辺に紙を置いて、鉛筆を持たせて「○ってこう描くんだよ」とか言って。そしたら描いたもんだから「あれ。こんな子でも○描ける」とか思って、で「○に○足して花!」とかいって複雑にしていったらしいです。

そしたら、そのうち「あれ描いて、これ描いて」って、むずかしい要求をし始めるようになったらしいんですね。母親が描けないものだから「ヤバイ」ってなって、それから自分で何でも読んだり描いたりできるように、絵本を与えて、読ませて聞かせて……。母親が言うには、それが僕が、絵を描くようになったはじまりだそうです。

母はそんなふうに、そして父親はへびの話をしてくれて、母親と父親で漫画家をつくっちゃったと言うような(笑)。


フェリシモ:
楳図さんをつくるルーツがお母さまとお父さまだったと……。次に行きます。


(画像:学生時代の写真)


楳図さん:
ガーン。出ました。僕、この写真持ってもないし見たこともないですね。
いちばんこっち(右端)にいるのがソノベくんですね、わかりますね。
(その隣)僕ですね。向こうはナコジくんで、その向こうはヤマモトくんで。

(会場:笑)

そいでその真ん中がハナノ先生っていう美術の先生で。
いちばん向こうは誰だろう。サカイくんかな? 女性の方は全然わからないです。


フェリシモ:
オクテだったんですかね?

(会場:笑)


楳図さん:
いやぁ、というよりか、ほとんど学校の方に神経が向いていなくて「どうやったらデビューできるんだろう」ばっかり考えて。だから他府県の……、神戸の西岡さんとやりとりばっかりで。でもね、向こうから3番目のヤマモトくんなんかは、2年生と3年生の時演劇で一緒に出たことがあります。


フェリシモ:
演劇にも興味があったんですか?



楳図さん:
演劇に出たいというわけじゃないんですが、なんかしょうもないものは全部僕の方に来ちゃう、そんな感じだったかなと思うんですね。ですので、いろいろなことをやりましたよ。高校2年のときには、走り幅跳びから水泳からいろいろなことやりました。


フェリシモ:
いろいろな経験が漫画に生かされたりとかありますか?


楳図さん:
生かされてますか?


フェリシモ:
生かされているんじゃないでしょうか。

楳図さん:
……に、しときましょう(笑)。


楳図さんの漫画について。
アナログな技法でデジタルのような細やかな絵に衝撃!


フェリシモ:
楳図さんといえばものすごく精密な絵で有名です。本当に素晴らしい絵を描かれていらっしゃいますので、少しご紹介します。

(映像:線の集合で書かれた3Dの絵(ロボット))

楳図さん:
これ、全部手で描きました。急いで描かないと間に合わないんで、こういう絵柄も、いっぱい時間がかかったとしても1日半くらいで描き上げないとだめなんです。


フェリシモ:
たった1日半でこれが描けるっていうのが本当に素晴らしいです。


楳図さん:
これややこしいのはね、ずっと塗っていって塗っていって、したら隣のところに戻ってきて全部緑色に塗りつぶしてっていうふうになっちゃうとやばい、っていう……。

その繋がり方が離れていないといけなくて。
そこはちょっと読んで塗りつぶしていかないといけなくて……。面倒くさいんですよね。


フェリシモ:
立体感がすごいですね。


楳図さん:
マジックペンで塗ったんです。


フェリシモ:
いまコンピューターでこういう加工ができますけれど……。


楳図さん:
これは全部手描きです。
まず最初に鉛筆でます目をつくっといて、それでその上に色を塗っていくんですけどね。やっぱります目をつくっておかないとできないですね。

で、ところどころ赤でぶれた部分とか入っているんですけど、画面でぶれてるんじゃなくてあの通り赤も入れてあるんです。

フェリシモ:
意図してこの赤を入れて立体感を出してたりしているんですね。でもすごく細かい。


楳図さん:
僕どっちかっていうと、思いっきりアナログ人間なんです。デジタルはダメなんですけど。

この(絵を描いた)ときだけは「やっぱりこれからの時代はデジタル!」って思ったものですから。デジタルをやってみました。


フェリシモ:
描かれているのはアナログの手で描かれているんですよね。
でも描かれている作品はものすごくデジタルというか近未来だったりとか……。


楳図さん:
そうなんですよね。
インターネットとか出てくるんですけど、僕はインターネットやらないし。携帯電話も持ってないし(笑)。

フェリシモ:
こちらも全部手描きですよね。ものすごい立体感!


楳図さん:
これはまあ点々で。おっきい点々、ちっこい点々。
あの印刷の、プリントした絵柄拡大していくとこういう感じになりますもんね。

(画像)

楳図さん:
こういうのは、下書きでまっすぐなところは定規で入れてあるんですけど、多分手でずっと追って描いていると思います。僕アナログな方が好きなんで。

コンピューターの機械の表面は嫌なんですけど、裏側のこういううじゃうじゃしたのってすごい好きなんで、こういうのはわりと気楽に描けます。

要するにお化けの世界だと思うんです。人工の世界と、自然界の世界……。

アナログって自然界の世界だと思う。人工のところはデジタル。

だからどっちがいいって言って両方大事。
自然は大事だけどやっぱり人工がないと人間は何のために進化しているか?とか、生きている価値は?とかってなってくると、そこを否定されたらじゃあクラゲのままでいいじゃないか……になっちゃうので。

やっぱり自然破壊とは言ったって人工の部分、人間が存在する価値みたいなものは大事だから。これ本当に人工と自然の裏表みたいなもの。両方のバランスがすごく大事ですよね。

フェリシモ:
そういう意図が隠されている1枚ですか?


楳図さん:
そんなつもりでは描いていないですけど(笑)。
あとで見返すとそういうふうに取れるなと思いつつ、言ってるだけなんです。
すいません(笑)。あんまり深くは考えてなくて、パッと思った瞬間に思ったとおりにやってるだけ。

深く追求じゃなくて、ストーリーもバランスであり「これちょっと違うよ」と思えば修正するって感じ。そういう感じでやっています。



『漂流教室』について

(画像)

フェリシモ:
次は『漂流教室』。あらすじを簡単にご紹介します。

主人公の小学校6年生の翔くんは、ある日些細なことをきっかけにお母さんと喧嘩してしまいます。

ひどいことを言ってますね。「ババア」とか言ってて、次に「もう二度と帰ってこないからな」とお母さんに言ってしまい、お母さんも「もう二度と帰ってきて欲しくない」って言うんですけど、本当にこれが最後の会話になってしまうんです。

それで、この後「ドーン」と大地震が起こります。地震があって、揺れがちょっとずつおさまってきて、おさまった時に、学校に遅刻してきた子が見た学校の風景っていうのがこれ。校庭ごと全部なくなっているんですね。

さて、じゃあ彼らはどこへ行ってしまったのか、っていうと翔くんたちが見た校庭の外はこんな風に泥と岩しかない。荒れ果てた近未来に飛ばされてしまったっていう話からはじまります。

で、この近未来に連れて行かれた先生たちはどんどんおかしくなってしまって、先生同士で殺し合いをしたり、こどもたちを殺そうとしたりと、どんどんおかしくなってしまうんです。でも、こどもたちはこの世界で力を合わせて生きていくっていう話です。


楳図さん:
そうですね。神戸も阪神・淡路大震災で大変でしたよね。

僕も神戸(の地震)はテレビで見たので、思い出すんですけど、ああいう状態って本当に突然やって来るっていうところが怖いですよね。自分たちの力ではもうどんなふうにもできないっていうことになってしまいますもんね。

で、まあこれは話の中のストーリー展開の順番で入っているだけなんですけど「もう帰ってこないよ」って言ったら「もう帰ってくるな」っていうそのやり取りが、ストーリの上ですけど予兆になっていると思うんです。


フェリシモ:
この作品をつくられるときに、どういうところから入られましたか?
ラストを考えて作品をつくる、とか?


楳図さん:
とりあえずノートにストーリーを全部書いてしまいました。


フェリシモ:
じゃあ『漂流教室』は、描き始める前からすべてのストーリーが決まっていたということですか?



楳図さん:
はい。全部ストーリー書きました。

もうちょっと基本的なことを言うと、テーマは「こども」っていうことで来ているものですから、こどもの決定版を描きたいなと思って……。

それでストーリーは全部ノートに書き起こしまして……。
で、担当者が「もうそれぐらいでいい」とか言ったくらい。


フェリシモ:
どんどんあふれ出てきたのですか?

楳図さん:
構成をきっちり詰めて、で、描きはじめたので、描きはじめたらすごく楽でした。楽しみながら描くだけ。描くという技術の作業だけ。

平日はアシスタントが来るので、抜けられないんですけど、日曜日はアシスタントも休みなので、鎌倉へブラブラ散歩に行っていました。

フェリシモ:
このころ、ものすごくお忙しかったのでは? 大丈夫だったんですか?


楳図さん:
忙しかったんですけど、それなりに大丈夫でした。

ここで自慢させていただきますが、僕、締め切りは一度も落としたことがないんです。

多いときに月刊3本、週刊3本をやっていて、間に読みきりも入れたり。
それで2日に1個ずつ仕上げてました。

『おろち』とかもそうですけど。みんな2日にひとつずつ、ポイポイポイポイ仕上げていました。

フェリシモ:
ものすごく繊細であんなに細かい絵を描かれているのに2日に1作品?


楳図さん:
この前『おろち』を映画化していただいて「新宿ガラス」っていう歌をよしこっていう女の子が流しで歌う歌があるんですけど、歌の文句なんだけどあんまり考えている間がなくて、適当に書いたんですけども。それでレコードにしていただきました。

僕思うんですけど、やっぱり集中の仕方かなあ。

出し抜けに今、あんな状態になれって言われてもなれないんですけど。

最初の『へび少女』とか出たころっていうのは週刊1個で。

僕「週刊1個なんて忙しいノルマこなせられるかなあ」って心配してたんですね。

で、まあやってるうちに増えていって、週刊3本、月刊3本になっちゃったんですけど。

そういうふうにじわじわと増えていくと、なんか時間の取り方が、普通の時間の流れの倍ぐらいの感覚になっていって、それでできてしまうっていう感じなんです。

外から見たらすごいせわしない動きしてるかなと思うんですけどね。

自分では1時間を2時間ぐらいの感覚でやってるもんだから、多分動きがパッパッパッパッだと思う。


フェリシモ:
アイデアの源っていうのはどこからくるんですか?


楳図さん:
源っていうのは特にないんです。


フェリシモ:
全部想像ですか?


楳図さん:
はい。だけどそれも根拠がないと想像になっていかないので、そこの根拠は僕の場合は、自分が今まで描いたパターンと全然違うパターンを描く、それだけのことなんです。

新しいやつ、ってその一言だけなんです。

そこで集中するっていうことだけなので、迷いはないんです。

そこにいくまで大分迷いがあって、結局は人のを参考にしたら人の何かが入っちゃうし、気にしたりするから、同じ気を使うんだったら最初から自分で考えた方がいい、そういう結論に達しました。

そうしたら気持ちもスッキリするじゃないですか。もう新しく自分でつくるって。

要するに「新しい」っていうそこがキーポイント。新しければどこにも触れてないはずなので。



『まことちゃん』について

フェリシモ:
次は『まことちゃん』ついてお伺いします。

『まことちゃん』は100%ギャグ漫画。これ、おならなんて全然いい方というか……、ママのお口に寝ションベンをしてしまったりとか……。

楳図さん:
そうなんですね。僕、こどものころ、トイレに行くのが怖いので、途中廊下におまるを置いてもらってそこでおしっこしてたんですね。

それで、1回(漫画に描いたような)こんなことがありました。
ママの顔をおまると間違えてしまって……。


フェリシモ:
これは実話だったんですね!?


楳図さん:
でも寝ぼけてるから。


フェリシモ:
『まことちゃん』のモデルは楳図さんなんですか。


楳図さん:
そうじゃないんです。(中略)

あのひとつ説明させてもらいますと、まことちゃんて目の上まで髪の毛かかってるんですね。で、走ってる姿見ると前髪がピローンとめくれ上がるんですけど、眉がないんです。これにはちょっと理由があって……。

人物を描くとき、眉ってその人の性格をいちばん表す部分だと思うんです。

だからその部分がないってことは、まだまことちゃんって子は人格形成ができてなくて、人間なんだけど半分動物そのものの存在、そういうような意味があるんですね。

最初、まことちゃんにいろいろな眉とか試してみたんですけど、やっぱり変なんですよ。

眉を描くと「こんなふうな子」って固定されてしまうんですね。

眉がないってことは、もう臨機応変。汚いことでも、ちょっと悪いことでもなんでもやっちゃうっていう、そこを眉がないっていうところで表現しているんです。

眉があってやっちゃうと「なんでそういう子がこんなことしてるの」になるんだけど「ああ、まことちゃんだからこんなことやるんだね」は、(眉の)あるなしで表現されてる。

ほら、怖い人ってちょっと眉を剃ったりするじゃないですか。
あれって要するに人格がどこに降りてるかわかりません、の表情。

女性の方は眉を描くと思うけど、眉は自分の状態を表現してしまうので、大事な作業ですよね。

平安時代の方も、上の方に点々だけど、あれもある意味、性格を隠しているというようなことが言えるんじゃないですか。性格見抜かれないための手段かな、とちょっと思います。



『洗礼』について

絶世の美女、若草いずみが最も怖いと思っているのが老けていくこと、年老いていくこと。

年老いていく彼女は「永遠の美とそして女としてのしあわせをもう一度生きたい」ということで、その永遠の美を手に入れるために考えた手法が「こどもを産んで、自分の娘に自分の脳を移植しよう」ということ。


フェリシモ:
『洗礼』もまず、あらすじをご紹介します。

楳図さん:
えーっ! 一気に結末を言ってしまったんですね(笑)。


フェリシモ:
でもこれから先がものすごくおもしろいので……。

楳図さん:
こっから先は絶対言っちゃだめよ。



フェリシモ:
この作品、ものすごい心理作戦。
この心理作戦を描いてみようと思ったきっかけはありますか。


楳図さん:
さきほど『猫目小僧』出てきましたよね。

『猫目小僧』のシリーズの中にみにくい男が脳みそをちゃんとした男に入れ替えちゃう「みにくい悪魔」という話があります。

その話は、すごく短いんだけど、そこをもうちょっと拡大して本格的に描いてみようと思ったのが『洗礼』です。


楳図さんの暮らす
「まことちゃんハウス」について

フェリシモ:
楳図さんの漫画以外の活動もお伺いしたいと思います。まず、楳図さんのお家をみなさまにご紹介します。

(画像)

フェリシモ:
これ、まことちゃんが「みなさんようこそ!」って迎えている門です。


楳図さん:
「グワシ」のマークがついています。
通りすがりにパッと見たらわからないですね。

蜘蛛の巣に「グワシ」の手が引っかかってるっていうそういう設定でデザインしました。

ポストは「POST」の「O」のところが「図」になっていて、「P図ST」になっているんです。


フェリシモ:
お家の内部は見事な赤白。とっても美しいです。隣の部屋はグリーン。

(画像)


フェリシモ:
これは『森の兄弟』の絵をステンドグラスに……。すごくきれいですよね。

楳図さん:
ステンドグラスって透明感があって、光で映る色ですので、曇りとか陰りとかない。
ですので、神聖な場所に使っているなあという感じはありますよね。

『森の兄弟』の裏表紙の絵をそのまま拡大してステンドグラスにしました。

(画像)


フェリシモ:
家の中は、赤白まみれですね。本当に赤白がお好きというのがよくわかる1枚です。


楳図さん:
しましまグッズ集めまくってます。
結構売っていないので、目につくと買うとまあそれなりに溜まっちゃったという感じ。

ときどきね、しましまのシャツが売れ残ってたりすることがあって、値段も下がってて(笑)。それこそ僕が買わないと他の人が買わない感じ。「僕のために」っていう感じ、しますよね。今日も、しましま着ていただいている方いらっしゃって……。ありがとうございます。


(画像)

フェリシモ:
漫画以外、音楽、ドラマ、テレビでもご活躍されていらっしゃいますね。
オロナミンCのCMにも出られてて、ほんとに元気ハツラツっていう言葉がよく似合います。
今年は大晦日にも?


楳図さん:
そうなんですね。今年でもう4回目なんですけど。TV番組「ガキの使い」に出させていただきました。

フェリシモ:
みなさま、楳図さんの魅力に迫っていただくことはできたでしょうか。


第2部

お客さまとのQ&A

お客さま:
いつも明るく笑顔でいらっしゃる楳図先生ですが、疲れちゃうこともありますか? ストレス解消法リラックスの方法があったら教えてください。

楳図さん:
なんだろう、僕は漫画描いていてストレスは一度もなかったんですがね。
でも、生活の中で思うとおりに行かないとそれはストレス。

僕だいたい「くたびれたな」って思ったら、コテンと寝ちゃいます。
僕夜更かし嫌いなんです。嫌いというかできない性質。

まあ、昼間でも、くたびれたなあとか思うとゴロンと横になりますね。やっぱり横になってゴロってしてるのがいちばんストレス解消。

僕歩くのも好きなんですけど、歩いて場所を変えていくというのは、ストレス解消になります。

同じ場所でとどまっているのはよくないですね。

アイデアを考えるときも、物事まとめようと思って考えるときも、部屋の中でぐっと固めて考えるっていうのもありますけど、だいたいは動きながら。

体動くのと脳みそ動くのと一体なので、脳が動いているときは体も動かした方がバランスがいいような、そんな気がします。だから自然に歩きながらものを考えています。

あ、これもの考える話じゃないんだ? ストレス解消なのよね?

発散させようと思ったら海辺がいいです。

海辺を歩くと楽しい気分になるし、わーっと出て行って発散できる。

けど、ものは考えられないので、ものを考えたいときは山の方に行って、発散したい時ときは海の方へ行くといいなと思います。

神戸にはちょうど海と山、両方ありますね。

お客さま:
『洗礼』について伺いたいです。私の超トラウマ漫画なんです。


楳図さん:
じゃあもう既に読んで下さっているっていうことなのかな。

『洗礼』は、1点すごいごまかしがあって……。

養老孟司さんが書いていらしたけど、まあ要するに見せ方で騙されちゃってしまうけどもって……。

まあ当然なんですよね、見せ方で騙してるけど、ありえない部分がある。

で、ありえないと思いつつも騙されてしまうという話なんです。

どこがありえないかって言ったら、脳を入れ替えるっていうこと自体がもうありえないですよね。ありえないけど「そうかな?」って思わせてしまって、最後に「ああそうなんだ」で終わらされるんです。そんな感じのかなり騙しのテクニックの入った話なんですよね。


お客さま:
精密な作画がとても素晴らしい楳図先生ですけれども、アシスタントさんはいらっしゃるんですか?


楳図さん:
アシスタントはいまいないです。

昔の月刊3本、週刊3本描いていたころは7人いました。

当時のアシスタントは中学を卒業したばっかりの人が多かったです。

だけど僕の漫画を見ていただくと、そんな中学を出たばかりの人が描いているようには絶対見えない。見えないようにうまくアシスタントを使っています。

と言うのは、それぞれ得意分野があるんですよ。
この人はすごい斜線がいいとか、点々がいいとか、いいところを見つけて、そこの部分はその人に描いてもらいます。

普通は、すごくできるアシスタントが2人いれば充分だと思います。

でも、途中7人では足りなくて『おろち』のときだけは虫プロから1人慣れた方に来ていただいて、その人と僕と2人でやってました。

漫画も瞬間的なものだから、アシスタントとのお付き合いも瞬間的なものなんですけどね。でも、そのときはもうそうじゃないと成り立たないというぐらいの必要な一瞬なわけですから。それが漫画本として形に残って……。いま見てもそうやって思い出すっていうところがあります。


お客さま:
先生が普段読まれている本とか漫画、見ている映画を教えていただけますか?


楳図さん:
僕ほとんど読みません。映画もほとんど見ません。

でもテレビは、そこでなんかやっていれば見ちゃうという感じ。

なんだろう、自分が描いてただけにあんまりそっちの世界には擦り寄りたくないっていうのもあるのかなと思います。


お客さま:
楳図先生がいま実在の人物と脳みそを入れ替えて、他の人物として人生を歩むことができたら、誰の脳みそと交換したいですか。


楳図さん:
物理でノーベル賞をもらった人と入れ替えて、急に漫画を描き始めたらおもしろいだろうなとか思いますけどね(笑)。


お客さま:
実在した人物で、もう、いまいない方では?


楳図さん:
じゃあ、アインシュタイン。

お客さま:
楳図先生にとってプロとはなんでしょうか。

楳図さん:
プロっていうのは大人っていうふうに考えています。
プロでないのはこども、大人はみんなプロだと思います。

こどもってどこに進んでるかっていうのは「どこに行こうかな」、「どこに行こうかな」、「こっちの方がいいかな」と、これから見分ける状態。

だけど、大人は「ここです」っていうところに来てる。

中には来てない方もいらっしゃるかもしれないけど、とりあえず大人はみんなプロです。


お客さま:
先生の奥深さをすごく感じています。テレビで拝見する限り、先生は全然変わってなくて、とても元気でパワフル、全然お歳を感じません

先生のパワーの源を教えていただきたいです。


楳図さん:
そうですね、なんだろう。自分が「楽しいな」っていう目的に向かってその瞬間、一所懸命がんばっている一瞬が源ですよね。

フェリシモ:
いままで本当に多くの作品を生み出してこられた楳図さん、将来世代に向けて伝えたいことをお願いします。


楳図さん:
「元気」という言葉で!

いつまでもやっぱり自分が元気じゃないと、他にもできません。
ぜひ「元気」でお願いしたいと思います。

今日いらしてくださったお客さまも、こうやってお会いした限りはもう仲間といいますか、お友だちといいますか、知り合いというか、強い絆で結ばれたような気がするので。ぜひ病気とかなさらずに、ぜひ元気で。またお会いするときに、元気なお顔を見せていただけるとうれしいなと思います。ですので、日々生活のいろいろなところに注意をされて、ケガとか病気とかしないようにがんばっていただきたいと思います。また元気にお会いしましょう。
http://www.kobegakkou-blog.com/blog/2010/12/post-aa06.html


32. 2016年4月16日 09:15:40 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2414]

楳図かずお インタヴュー 2012/08/03

本質を理解するには、目線を二つ持たなくてはいけません
一番大事なのは、両極端の視線を持つことです。



環境破壊、異常気象、人口増加、原発問題……。楳図かずおがかつて描いた漫画には、まるで今の状況を予言するような描写が多く登場する。

現在休筆中である楳図が最後に描いた長編『14歳』のテーマは人類の破滅——。

彼の描いた未来は現実になるのだろうか。そうならないためには、何をすべきなのか。

——3・11の震災をどう捉えていますか?

「生物は思わぬ困った出来事が起こったときに、それを克服しようとして進化をしてきました。震災はとてつもない災難でしたが、それをきっかけに進化しなさいと言われている気がします。

進化のやり方はいろいろだけれど、できる限り自然の摂理に則る状態がいいと思います。自然そのものに逆らわない、無理のない方法を見つければ、自然と人工の誤差を減らせると思うんです。

私たちは、自然に対して謙虚な気持ちを完璧に忘れてしまった。傲慢な気持ちでいたから、しっぺ返しがきたんだと思います。原発の問題は、その典型でしょうね。どうしたら破滅が起きるかという法則を、しっかり考えてこなかったんです」


——破滅の法則とは?

「進化は破滅と比例していて、表裏一体なんです。

進化とは、自然とどれだけ違うものをつくりだすかということですが、自然は自然に戻ろうとする力が働くので、進化の度合いが高くなれば、破滅の度合いも高くなる。

なのに、多くの人が原発=進化、進化=安全と思ってしまい、自然を人工が超えた時、破滅がくると思わなかった。

賢そうな人がいっぱいいるのに、なぜだろうと思います。きっと賢くなりすぎて、目の前の自分の損得に負けちゃったんですね」


——それはある意味で愚かと言えますよね。

「愚かです。

ものを見る目線が賢くなるほど、細かいことに辻褄を合わせようとしすぎる。

それが日本人のいちばん悪いところです。

近所付き合いなどの身近な所では、その細やかさはいい面として作用します。

でもスケール大きい地球環境や国同士の対立になると、細かい事情を言っても通用しません。

尖閣諸島で中国船が日本船にぶつかった時も、『ぶつかったことは、そのまま事実です』から出発すればいい。理由も何もないわけです。

細かい事情や感情を言ってる場合じゃないのに、そこから物事を判断するから、変な方向にいってしまう。

細部を大事にするのは、日本人のいい所でもあるけど、もっと大きな死ぬか生きるかの選択の時にはどうなるんだって思います。この先情勢が変わって、世界がひとつになることがあれば、すごく弱い立場にいっちゃいますよね」


——もっと大局を見るべきだと。でも私たちに物事を見極める力はありますか?

「ない! 日本人には美術性も技術性もない! 

茶色と灰色ばかりで、赤や黄色のような、くっきりしたものを上手く手なずける能力がないんです。

美術性に対するコンプレックスや、自信のなさの表れです」


——楳図さんは、どうしてそのような考え方ができるんでしょう?

「目線が違うんだと思います。

僕はものをつくる立場だから、学者や研究者とは違う、現実を無視した、引いた立場からみています。

物事は主観だけでなく、客観視しないといけない。

両方の目線でみないと本質は理解できません。

だから人間の眼は2つあるんです。体がそれを教えてくれている。

同時に、何事においても両極端を持つことが一番大事です。
『正義』も、もう一方に『悪』があるから、何が正義かがわかる。
両極端、幅広く目線をとることが必要です」


——以前「未来は人間の考え方がつくる」と言っていましたね。

「そうです。今までは、人々の考えが『大金持ちになりたい』とかだったから、経済を発展させる方向に重点がいきすぎてしまったんですね。

僕は、芸術をもっと大事にしましょうと言いたい。

例えば、経済を立て直すためにものを作ろうとすると、材料やエネルギーが必要になる。

けれど芸術は精神的な問題なので、ややこしい要素がありません。
例えば色によってものが変わるんだったら、こんなに簡単なことはない」


——色を変えるだけで世の中が変わると。

「すごく変わるはずです。お金もかからず、ある意味、お金を循環させることもできる。

『あそこの街はすごく楽しいから見に行こう!』って。

僕はすべてが赤と白のシマシマの街ができたら、それだけで相当インパクトがあると思う。費用はペンキ代だけだし、本当は簡単なんです。

それができない日本人の愚かさがあると思います。

頑張ろうとする人を応援しない所もダメ。

足を引っ張るようなケチをつけたり、文句ばかり言ったりするから、結局は全体が停滞してしまうんです。

今回の震災でも、当初海外の人たちは『あんなひどい目にあったのに、泥棒もいなくて素晴らしい』と感心してたのに、その後の政治の様子をみて、今は『日本人はただの何もできない人たちなんだ』っていうイメージを持たれていると思う。

『ああいう優柔不断な国はつけ込めば一発だよ』と思われても仕方がない。

確固たる態度を示せるところと、品行方正なところの両方があるから素晴らしいのに、物事に流されるばかりだから『やっぱり日本人はダメなんだね』って言われてしまう」


——以前からそういうことを考えていた?

「本来はまったく考えない質だったんです。政治もぜんぜん興味ないはずなのに、気になってしまって。

僕みたいな人間が考えてしまうくらいだから、今は相当おかしいんだと思います」


——未来を予見するような漫画を描いていますが、危機感はあったんですか?

「危機感はないんですが、こんな風になるのかなって想像でした。
社会的なメッセージのつもりもないんです」


——今、未来は絶望的だと思いますか?

「そうは思いません。ウキウキするような状況ではないけれど、時間の流れ、自然の流れに沿っていくしかないという気持ちです。

ただ、どこかで転換していかないといけないとは思います。

原発も、今実際にあるわけですから、使うのは仕方なくても、別の方向に進もうという考えもないと。

反対をする時は、中庸をとらずはっきりしないといけません。

日本人は、すぐ中間の意見を言います。

本当は相手と話し合った中で間に落ち着けなきゃいけないのに、自分から先にいってどうするのって。

自信をもって嫌なものは嫌!って言えばいい。原発も反対じゃなくて、嫌い!でいいんです」


——今は知識もなく、感情で言ってはいけないという空気もある気がします。

「正確な方へいこうとし過ぎているんですね。

でもみんなが専門ではないし、未来は誰にもみえないのに、確かなことを言えるわけがない。

もっと生物的な感覚でいい。好き嫌いの感覚はすごく大切です。

生物はそうして選り分けて生きてきた。その能力は人間にも備わっているんですから」
http://www.rollingstonejapan.com/articles/detail/14743



33. 中川隆[2344] koaQ7Jey 2016年4月16日 10:19:04 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2415]

吉祥寺webマガジン 楳図 かずお さん

インタビュー・文:萩谷美也子 / 写真:吉祥寺webマガジン編集部
http://www.kichijoji.ne.jp/vol11/jojijin/umezu.html

 ドアを開けるとそこはすでに楳図ワールド。

星条旗をデザインのベースにしたお部屋に、懐かしの楳図漫画キャラクター達がてんこもりに並んでいる。

「最近、豆おかきに凝っているんですよ」という楳図さんおすすめの豆おかきと、自ら入れてくださったミントティーをまえにインタビューが始まった。

楳図さんのお散歩ルートをめぐる謎


―― まずは、楳図さんの散歩の謎というところからお聞きしたいと思います
本当によく吉祥寺を歩いてらっしゃいますよね。

  私もよくすれちがうんですが、頭の中でなにか構想中のときに声をおかけするとまずいかな、と思って、いつもご挨拶もせずに失礼してます。

 声をかける方もいますよ。大丈夫です。考えているときは、声をかけても耳にはいっていないですから。知り合いの方に声をかけられても気がつかずに、すいすい行っちゃって「楳図さんて近眼なんですか?」と聞かれるくらいですから。

―― 目はいいんですか。

 疲れてるときは視力も落ちてしまうんですが、体調が戻れば回復しますよ。もともと目はいいんです。あの細かい絵を描いてきて、ずっと眼鏡のお世話にならずに済んでます。


―― すごい細かい描き込みですもんね。

 話を元に戻しますが、吉祥寺に住んでいて、楳図さんとすれちがったことのない人は「モグリ」ということになっていまして。

 吉祥寺に来て、僕に会わない人は吉祥寺にくる資格がないです(笑)。

 僕が歩いてるのは吉祥寺だけじゃないんですよ。高尾あたりで会う人は僕が高尾に住んでると思うし、中野で会う人は僕が中野に住んでると思ってるし、もっと範囲が広いんです。

―― 電車の中でお見かけしたという人もいます。

 電車の中では、さすがにそこに住んでると思う人はいないでしょうけど(笑)。

 僕は高尾にも家があるんで、高田馬場あたりから高尾、立川、国分寺あたりもよく行きますよ。よく電車を国分寺で降りて武蔵小金井まで歩くんで、そのあたりで会った人は僕がそのへんに住んでると思うでしょうね。

 でも、吉祥寺が拠点なので、ここで僕と会う回数が一番多いはずです。

―― お住まいもお仕事も吉祥寺が拠点なんですね。

 ええ、ここが一番ぴったり。吉祥寺っていう場所がいいですよね。

―― 吉祥寺のどういうところが気に入っているんですか?

 まず自然があるのと、それに街自体がへんにビジネス街っぽくないじゃないですか。店も個人の家でやっているという感じで。吉祥寺はサンフランシスコよりは、対岸のサウス・サリットの街並みたいなんですよね。

 大都会の街なかじゃなくて、ちょっとおみやげ屋さんがあったりする、外れの観光地みたいで。


―― そこはかとなく寂しさも漂ったりして。

 だって吉祥寺は夜8時を過ぎるとお店が閉まって一気に寂しくなるじゃないですか。
へたすると人影も、ま・ば・らという感じで。

―― これまでインタービューしたなかで、吉祥寺をアメリカのどこかにたとえられたかたは、初めてなんですけれど、そのサウス・サリットにはよく行かれるんですか?

 いえ、一回だけですけど。実をいうと、サンフランシスコにも家をもっているんです。


―― えっ? 高尾に家をお持ちで、吉祥寺にもあって…

 吉祥寺には倉庫にしていあるところもあるんで2つですね。場所は内緒だけど。

 家の数を自慢しても、しようがないんすけどね。別荘を一番最初に買って、役に立つかどうかわからないものから先に買ったんで。一番大事なのはここ、吉祥寺の家です。

 最初に買ったのはサンフランシスコの別荘だったかな。いまは他の人に貸してます。

―― アメリカがお好きなんですね。

 いえ、アメリカなんかあまり好きじゃない、というところもあるんですよ。国旗のデザインとか、デザイン面では好きなんですけどね、アメリカ人の性格とか、あまり好きじゃないかもしれない。日本が一番好きです。

 でも日本に住んでいると、日本じゃないところに目が向くじゃないですか。はたも気になるというか。

 吉祥寺に住んでたら、ちょっと中野とか高円寺とか、阿佐谷の商店街を歩いてみたくなる。よその街を探検したいという気持ちが起きてしまうんですよね。

 吉祥寺が一番好きなんだけれど、つい出かけてしまって、お台場とかにも行きます。

最近、今ふうの街って増えてますよね。お台場とか横浜のみなと・みらいとか、多摩センターとか。

最近見つけたのは、東戸塚のモールです。

僕は鎌倉によく行くんですけれど、その途中に「モール」って書いてあるでっかいビルがあるんです。あんなにでっかいと中はどうなっているんだろうと思って、行ってみると中がすごいんですよ。

山の傾斜のところにあるんで、最初のデパートがあって坂があって、また次のデパートがあって、3つくらいつながっているんですね。

―― 段々畑じゃなくて段々デパートですね。

 それから、中央線でずっと行った塩津の駅で降りると、山の上まで、ちょうど「14歳」に出てくるようなドーム型の通路がななめにあってエスカレーターで上っていく。

あれもなかなかのもんで、「これは探検しなければ」というので行ってきましたけどね。


―― さっそく行かれたんですね。

 ええ、もうとっくに。

サンフランシスコは「中央線」沿線である


―― 塩津って、山梨じゃないですか。たしかに中央線で一本ですけれど。

 僕は行動範囲を中央線でまとめているんですよ。

中央線で吉祥寺、高尾、そのままずっといくと長野の別荘の方に行きます。

反対に東の方へ行くと、海になっちゃうけど、飛行機に乗るとサンフランシスコ。中央線で東西に移動しているんです。

―― 中央線がサンフランシスコにつながっているんですね。

 そうです。中央線はサンフランシスコにつながっているんです。

 上下(南北方向)に移動するのは気持ちが悪いんですよ。上下にいくのは地球の遠心力に逆らっているような気がするんですね。

 飛行機に乗ってヨーロッパやアメリカにいくと、地球の自転に逆らわないほうが気持ちがいいですよね。逆らうときついでしょ。上下の移動はさらによくないんじゃないかと。移動は線でまとめたほうが楽ですよ。これは歩き回った挙げ句に自分で納得した結果です。

 これが例えば別荘が軽井沢や伊豆だと、ずれが生じるでしょ。

行くのがおっくうになると思うんですよ。同じ沿線上にあったって、遠いとおっくうになりがちですからね。ずれるとさらにおっくうになると思います。沿線でまとめる。それがコツです。


―― それは経験から導きだされたわけですね。

   ええ、えらく賢いんです(笑)。

―― 子供のころから歩くのはお好きだったんですか?

 好きというのか…。今でも好きとか嫌いとか特に意識していないし、子供のころは尚更ですからね。

 僕は奈良県の山のほうで生まれたんですよ。

本籍は五条市なんですけれど、実際に住んでいたのはうんと山奥なんです。

最近でこそ車道ができましたが、それまでは山奥に入っていくには歩くしかなかったんです。

 もの心ついた瞬間から歩いていたという感じでね。しかもうんと山深いんですよ。

そんなところを父親と母親に手を引っ張られて歩いていた記憶があります。
もっと小さいときはザックに入れられて背負われていましたね。

 だから僕にとって歩くということは特別な状態じゃないんです。

 僕は逆に車がきらいなんですよ。車酔いするんです。理由は揺れるとか、カーブの時に気持ち悪いとか、においが嫌とかいろいろあるんですけれど、車は他の人が乗るもので自分が乗るものではないという考えが初めから出来上がっているものですから、車に乗る人がうらやましくもなんともない。

 自転車も田舎にいるころはわりと乗っていたんですけれども、東京では止めました。街の中で乗るもんじゃない、と思ったりして。

 特に僕は絶え間なく仕事をやっていたから、アイディアを練ったりずっと連続してものを考えているわけです。自転車に乗ってものを考えていたら、絶対危ないですよ。

 普通に歩いていても最近危ないですからね。

それで僕は、最近吉祥寺近辺では玉川上水沿いを歩いているんです。

三鷹から上水沿いに歩いたり、井の頭公園に行って上水沿いを久我山まで行って電車に乗って帰ってきたりします。昨日も行ってきたんですよ。

 久我山から西荻まで歩いて、そこから電車に乗ることもあります。

―― そう一言であっさりおっしゃいますけれど、久我山までけっこう距離がありますよ。

 30分ですよ。久我山まで。そんなに急いで歩かなくても。

―― えっ、ほんとですか。それはすごい。速いですよ、かなり。

 岡田さんのお話では「楳図さんは一日5時間は歩いている」ということですが、それくらい歩いているんでしょうか。


 そうですね。気がつかないうちにそれくらい歩いているかもしれませんね。
 僕は家の中にいるのがあまり好きじゃないんですよ。

―― こんな居心地のよいお宅なのにですか?

 なんとかして出よう出ようと考えているんです。雨の日でも出ちゃいます。さすがに雨の日は歩きにくいので、普段よりは家にいますが、それでも一日に1、2回は外に出ないと。

 一日中家にいる生活なんて信じられないですね。
 これで足とか具合悪くなって歩けなくなったらどうしようかと思います。


歩くのは平気、でも夜ふかしが苦手

―― 漫画家ってずっと家にいて、座って原稿を描いているというイメージですが。


 僕はじっと座ってなにかやっていると具合が悪いんですよ。

―― それじゃ連載をたくさん持たれていたころは、いつお描きになっていたんですか。


 けっこう僕は手が速いんです。大急ぎで早く描き上げなきゃという感じで。


―― あんなに細かい絵なのに…


 一時期はほんとにたくさん描いてて、週刊誌3本に月刊誌3本とか。
だから、もたもたしてなくて速いんですよ。「猫目小僧」なんかお化けが一杯出てくるんですが、考えて描いてないんです。


―― 自動筆記で描いているとか。


 それに近いです。ぱっとその瞬間的なイメージで描いてます。

下描きを取るときにとりあえず鉛筆でぐりぐり大まかに描いておくんですよ。
そのぐりぐりの線を見た瞬間にいろいろなお化けの姿に見えるじゃないですか。
そこからいろいろなふうに膨らませてしまうんです。

 僕の絵を「デッサンが狂ってる」とかいう人もいるんですけれど、ろくに下描きを取らないでわっと描いてるから、ときどき右手より左手の方が長かったりとか、いろいろあるんです。

―― 楳図さんはそれだけの量のお仕事をしていても、締め切りを守るので有名だと聞いて驚いたことがあります。


 それはぜひ驚いてください(笑)。

漫画の世界では作品は評価されるけど、そのときの作家の状態とか姿勢とかは全然評価に入らないですよね。それでもまあ、いいんですけど、その人がどういう状態で描いたか、評価されても悪くないんじゃないでしょうか。

 僕はめちゃくちゃ忙しかったときでも、一度も原稿を落としたことはないです。これは本当に自慢できる。連載の本数がたくさんあって、そこに予定外の仕事がはいってスケジュールが変形しても、それはそれですべて無事にこなせたのは僕の自慢です。

 しかも夜仕事しないですから。普通の漫画家は夜型が多いんですよね。

―― 普通の漫画家さんはあまり外出ないし歩かないですしね。
 それじゃ、楳図さんは毎日早寝早起きなんですか。


 子供のころから夜ふかしは苦手だったんです。とりあえず「勉強しなきゃ」と思って、机の前に座って勉強するんだけれど、だんだん座っているのがおっくうになって「そうだ、布団の中に入って勉強しよう」と布団にはいると寝ちゃうんですね。夜起きてられない子供だったんです。

 ところが漫画描いていると、徹夜はしないけど夜まで起きていますよね。
そういう生活していると肩凝ったりするんですよ。

漫画家になったら1日2時間しか寝れない生活が4年くらい続いちゃったんです。子供のころは夜起きていられなかったのに、今度は夜寝れない。


―― なんでこんな生活になっちゃったのか、と…


 そうなんです。ほんとに、そうなると自分の生き方が変わっちゃいますよね。「早く有名になりたい」とは思わなくなって、「とにかく健康だ」になっちゃうんです。「運が向いたときに頑張ろう」とか、無理はせずに「とりあえず流れに添って行かなければ」というふうになります。

 4年間もそんな悲惨な生活が続くと、芯からそう思うわけです。

 その後東京に出てきて、最初は池袋に住んだんです。

すごいボロいマンションに入ったんですけれど、質素な生活でも、へんな高望みの欲望はないし、そんな貧乏したという感じではなかったです。

―― 確か高校生の時にデビューなさったんですよね。


 高校3年生の時です。僕は小学校4年生から漫画を描きまくっていて、高校2年生のころにはもう飽きていたんです。


―― じゃあ、デビューしたときはすでに漫画に飽きていたわけですね。


 飽きていたのに、本が出てしまったので戻させられた感じです。そういうふうに体の波が下がっているときに活動してしまったので、夜寝れなくなっちゃったりということが引き続いて起こったわけです。

体のリズムが上がっているときにはいくら頑張ってもいいけれど、下がっているときに無茶すると、その一瞬でみんなコケてしまいます。

そういうことですね、そのとき自分が「悟った」のは。


 池袋に来たころは、やっと直りつつあったので、すごく用心しながら生活していました。漫画を描くのは昼間だけ、夜は絶対描かない。TVを見ると目が疲れると思ったので、TVも見ない。

 やっぱり細かい仕事なので、目にくるのはわかっていたから、目は大事にしなければと思っていたんです。

 でも、東京に来たら一気に忙しくなって、夜でも机にしがみついて描いていて、たいへんでした。

2日に1個原稿を上げるというスケジュールです。
「猫目小僧」とか「おろち」とか、みんなそんな感じで描いていました。

―― その状態がずっと続いたんですか?


 ある瞬間、「これじゃ明日死んでしまう」と思って、週刊誌1本に絞ったんです。

それが「アゲイン」のころ。それまではめちゃくちゃいっぱい描いてました。

 でも週刊1本に絞っったつもりでも、結局それだけにはならなかったんですけどね。1本になったら「さあ作詞をしよう」と思ったんです。それまではバンドはやっていなかったんですが、歌をやりたかったんですね。

 「アゲイン」のときから週刊1本になったので「わあ、楽だ」と思って、ノート持って歩き回りながら詞を1日1個作ることにしたんです。

 最初のころは1日1個できていたんですけれど、だんだんできなくなってきて、しまいには無理だったんですけれど。

散歩にも創作にも直感とリズムが大事


―― 作詞もやはり、歩き回りながらなんですね。


 歩き回りながら考えます。

目的を作らないと考えにくいので、なじみの喫茶店が何軒かあるから「あの喫茶店にはいるまでに考えよう」、喫茶店を出たら今度は「家に帰るまでに考えよう」と区切りをつけて考えるんです。

 夜になってもいくら考えても出なくって、寝ながら考えると絶対いけないです。うなされちゃいます。頭が「ウワー」となっちゃって。

 寝る瞬間までに思いつかないときは、「もう考えるのを止めよう」とスイッチをオフにしないと、寝付きも悪いしへんな感じになるし、そのへんのけじめのつけ方が大事ですね。


―― 夜はあまり活動しないほうがいいんでしょうか。


 でも、夜の方が考えやすいんですね。
歩いていて目にいろいろ余計なものが入ってこないので集中しやすいんです。

 でも最近の夜はちょっと…、集中よりも用心の方に気が取られちゃって。
夜道を歩きながら考えるのは吉祥寺でもちょっと気持ち悪いですね。
井の頭公園なんか、夜は絶対歩けないです。

 昔高田馬場に住んでた最初のころは、夜の12時1時ごろに平気で新宿や池袋とかをぶらぶら考えながら歩いていても、全然平気だったんです。危ないとか怖いとかいう雰囲気がどこにもなかったんですけれどね。

 何が原因ってことはないけど、ある時点から「これはなんか危ないぞ」と感じるようになりました。


―― きっとなにかあるんですね。


 ハワイなんかもそうですね。ホノルルは7回くらい行っているんですけれど、やっぱりある時点から「街を外れるのは危ない」と思うようになったり。なんとなくそう感じてしまう時点ってあるんですよ。

 それは直感だから大事です。風景の組み合わせとか「どこかが違う、危ない」という信号を察知していると思うんですね。そう思ったときはそれを大事にしたほうがよくて、「いやいや警官もいるし」とかへんに理屈で考えると危ないです。

直感で危ないと思ったら、さっと戻るようにしないと。
最近は吉祥寺でも、歩いていて「ちょっとと危なそうだから戻ろう」ということもけっこうあるんです。

―― 街歩きの達人の勘ですからね。吉祥寺のどのあたりが危ない感じがします?

 やっぱり僕は夜の井の頭公園は行きたくないですね。

とくに駅から公園の池の橋を渡ってあっち側がちょっと…。
陰陽で言うと、池のこっち側が「陽」で、あっちが「陰」なんですね。

 たまに雰囲気のよいときはあっち側にも行きますけれど、なるだけこっち側を歩いてます。

こういうと差別的な感じがするかもしれないけれど、場所にはやっぱり全体の醸し出す雰囲気とか、空気や水の流れってあるんですよ。池の魚も死ぬときはみんな向こうの西の端に行って死ぬという話を聞いたこともあるので、僕はあっち側は「陰」だと思っている。

 別にそこにお化けがでるとかいうわけじゃなくて、何が怖いといって、人間が一番怖いんです。だから「陰」のところであまり人に会いたくないんです。

「陰」のところで会う人と「陽」のところで会う人のタイプはやっぱり違うんですよ。
「陰」の方が人が怪しいんです。

―― 同じ人でも、その場の雰囲気によって、怪しい面が出てしまったりしますものね。


 だからあそこで、夜に人に会いたくないです。

 目に見えないけれど、そういうものってあると思うんですよ。物があると物同士で引力が生じるように、場所にはエネルギーとか気とかも生じるんじゃないかと思います。

 僕は家を選ぶときも、すごく真剣に丁寧に調べます。吉祥寺でもいろいろ見たんですけれど、やはりここがいいと思って決めたんです。

 高尾の家を選ぶときも、吉祥寺から高尾の間をくまなく見てまわりました

不動産屋が「団地が空いてます」というので、もう下調べしてどういうところかわかっていたんですけど「じゃあ、見るだけ」といって一緒に歩いていったら、その途中に空いているところがあって「ここがいい!」って決めたんです。

不動産屋が「うちはここ担当していません」というのを、「そんなこと言わないでやってくださいよ」と頼んで。

 やっぱり歩いているといろいろ見つかりますよ。

―― 歩いているときには直感が完全に開放されているのかもしれませんね。


 開放されてると思いますよ。なぜかというと、体が動いているときは頭も動いているんですよね。それは考えているというよりも、きちんとサイクルが回っているという感じです。だから無理なく頭のなかに物事が入ってくる。

 へんに考えてると、考えにこだわっちゃって、逆にいろいろな情報がスムーズに入ってこれなかったりとか、間違った捉え方をしていまうんです。

 僕は頭を空っぽにすることは大事だと思うんだけど、そういうことを言うとへんな宗教家につなげられて嫌なんです。僕の言っていることは全然違うんですけどね。

―― 楳図さんの漫画は、怖いんですけど、気持ちいい部分がありますよね。
不思議なことに、夢に出てくるほど鮮明に覚えているシーンがある一方で、だいたい結末を忘れてしまっているんです。ちゃんと最後まで読んだはずなのに。おそらく気持ちよく読んで忘れちゃうんでしょうね。あれはなぜででしょう。

 それはリズムだと思う。

ものを描いていて、自分でも「この流れって、自然にするすると行くかどうか」というのを非常に気にしながら描いています。

人間の感覚としてストーリーの流れも「このへんでこう来るとピッタリくるんでは」と、いつもリズムを考えていますね。それがないと、読者が読んだときに抵抗感なく入って行けない状態になってしまうんで。

 それはものづくりの大事な要素のひとつです。

 歌なんか特にそうなんですけれど、僕が作った歌をどなたかアレンジャーが演奏したりするとき、「あれっ、違うな」と思ったり「なんか気持ち悪いな」と思ったりするときがあります。

個人個人のテンポや速度があるんですね。

自分のテンポと少しだけずれていたりすると、すごく気持ち悪いんです。

 それはすごく生活のなかでも大事だと思うんですよ。

よく「家庭内なんとか」とかが起きるのは、家族の間でリズムの幅がちがうんだと思うんです。誰かのリズム上がっているときに、もうひとりは下がっていたりして同調できない。それがずっと重なっていくとおかしくなる。


 逆になんだかわからないけど気が合うっていうのは、このへんで上がって、このへんで下がる、その切り替えのリズムが合うんだと思うんですね。

理由がなくても子供がぐれたりするのには、おそらくリズムの問題もあって、理詰めで理由を考えても出てこなかったりする。

リズムはその人の持っている基本的なものだから、難しいところがありますよね。理屈で変えるわけにもいかないし。


チキン・ジョージと食べものの復讐


―― 以前、パソコンの箱をお持ちのところをお見かけしたんですけれど、マックだったような気がするんですが、違います?


 当たりです。音楽の打ち込みをやろうと思ったんですよ。

でも僕はあまりパソコンと相性がよくないらしくて…。打ち込みってけっこう難しいんです。特にドラムの音なんか、音の強弱と長さを1個1個指定しなくちゃならなくて、結局「そんなしんきくさいこと、やっとられへん」と。

―― じゃあCGをご自分でやられたりとかは?


 やらない、やらない(笑)

―― 楳図さんがCGやったら別の人になっちゃうかも(笑)。


 私たちも世代によって、読んでいた作品が違うんですけれど。小学校のときに「へび女」の回し読みをしていたり、赤んぼう少女たまみちゃんの影響で「たまみ」という名前の子がどうしても好きになれなかったりとか。

 「漂流教室」も印象的でした。「試行錯誤」という言葉をあれで覚えたんです。ところで「14歳」のチキン・ジョージって、吉祥寺のもじりなんですか?

 ええ、そうなんですよね。自然にそうなったんです。

 今はもうなくなっちゃったんですが、伊勢丹の下にファンシーグッズ屋があって、へんてこグッズをいっぱい売っていたんです。

 そこでこういうの(鶏の頭の形をしたマスク)を売っていたんですよ。僕はぱっと見て、「これをください」といったんですね。そしたら店の人が、「実はこれは胴体もついている」というので「胴体もください」といったんですが、「いまはない」とかいわれて、結局頭も売ってくれなかったんです。

 でもそのイメージがすごく残っていて、チキン・ジョージになったんです。

 あの漫画は、ほんとうは動物漫画のつもりだったんです。動物漫画の極地を描こうと。


―― えっ?


 それで「14歳」にはいろいろな動物が出てくるんです。そのつもりで読んでもらうとわかりやすいんですけど。
 漫画にもいろいろ分野があるけれど、今度は絶対動物漫画を描こうと。

―― 「14歳」を動物漫画と思って読んでた人って…。


 いないと思うけど。でも動物たくさん出てくるでしょ? 

「動物漫画だから動物がいろいろ出てくるんだな」と思ってもらえれば。ふつう動物漫画って「シートン動物記」みたいに、動物の生態があって感動があって別れがあってみたいになってるけれど、それとは違う動物漫画を描きたいな、と。


―― チキン・ジョージが食肉の培養槽から生まれてくるというショッキングなストーリーで、今のバイオ技術を先取りするような「14歳」が、実は動物漫画だったんですね。


 あれは僕が「にわとりって何のために生存しているんだろう」って考えたのが、そもそものはじめなんです。

「世の中に食べられるだけの存在ってあるんだろうか」

「そんなものが、自然にこの世の中に生まれてくるもんなんだろうか」

って考えたのがきっかけなんですね。


―― 確かに、ブロイラーって狭いゲージのなかで一生を終えるから、人間からすれば食べられるためにいるようなものです。

 でもにわとり本人が「食べられるために生まれてきた」って思っているかどうか…。
思ってなくてもどこかでそれを感じ取っている部分があると思うんですよ。それを感じ取る感覚が、ある結果を引き起こすと僕は思う。

 単にこの世は弱肉強食で、弱いものは喰われるだけで終るんだろうか? 
それが疑問なんですよね。

 そうして考えると食べものだって、「単に食べられるだけじゃすまさないぞ」というところが絶対あると思うんです。それは「病気」っていうことで現われると思う。

 例えば、肉ばっかり食べるとコレステロールがたまって病気になりますよね。
それは単に食べ過ぎっていうよりも、食べられた牛とか豚がコレステロールを利用して食べた人に復讐するんではないか、と僕は思ったもんだから、にわとりだって食べられるままではすまさない、という気持ちがどこかにあるんじゃないか。

 それはミカンだっていえると思うんですよ(と、篭に盛ってあるミカンを指差す)。
ミカンばっかりたべているとミカンの復讐でミカン人間になってしまうとか(笑)。

―― それは怖い。


 世の中は食べものの復讐で満ち溢れているから、そこからどうやって復讐の槍先をはぐらかすかが、生きていくうえでの知恵だと思っているんです。

 普通にいうとお医者さんのいう「いろんなものを万遍なくバランス良く食べなさい」になっちゃうんだけど、復讐という観点から考えると、ひとつの復讐がきそうだなと思ったら、さっとかわして他のものを食べるということだと思うんですよね。すると万遍なく食べなきゃいけない。復讐に気をつけて食べる。

―― そうですか。私は最近鍋ものが続いて白菜ばかり食べているんですが。


 白菜の復讐は怖いですよ(笑)。白菜キムチの復讐とか。

ウルトラマン連載秘話


―― 話はかわりますが、ウルトラマンの第何話かを楳図さんがお書きになったという噂を聞いたのですけれど。


 実はTVよりも先駆けて、少年マガジンに一等先にお目見えしたのが僕のウルトラマンなんですね。

今でこそウルトラマンといえば誰でも知っているけど、当時は誰にも知られていませんでしたから。だからとりあえず漫画で先鞭をつけて世の中に広めようというので、僕が少年マガジンに描いて3カ月後にTV放映が始まったわけです。

 当時僕が京都でウルトラマンのサイン会をしたんですけど、「何マン? アンマン? ブタマン?」という感じで、全然知られていなくて…。結局1年半くらい描いたんですよね。


―― えっ、知らなかった!


 だから円谷プロにはずいぶん貢献していると思うんですよ。でも、連載を始めるとき直接円谷プロの人に会ったわけじゃなくて、編集部の人が突然「こんなの描きませんか?」って話をもってきたんです。

「えーっ、原作つき? せっかくここまで恐怖ものでやってきて、そのイメージがあるのに。でもデビューしたてだし、編集部の言うこともきかなきゃまずいかな。とりあえず何でもやってみようか」というので始めたんです。

 描くときはTBSに行ってバルタン星人のフィルムとか見せてもらって、そのころはコピー機がないから、目でしっかり覚えてくるか、あとは少し写真がある程度で描いている。

だから「あれ、ここのところどうなっているんだろう」とか思っても、なんとかごまかして描いてました。しかたがないんですよ。ウルトラマンの手の後ろ側とか、どうなっているのかわからないしね。今とはだいぶ状況が違いますから。

 それなのに、この間BSでウルトラマン特集があって僕も呼ばれていったけど、僕がウルトラマンの漫画で有名になったことにされていたり、もうめちゃめちゃ。


―― 本当はその反対なのに。

 でも、いろいろなことをやれてよかったと思います。

 

7ヵ国語をしゃべって歌って踊る!


―― 今は漫画は描かれていないんですか?


 手が痛くなっちゃって、描けないんですね。前は漫画が空いているときに作詞していたんですけど、いまは外国語をやっているんです。

―― 外国語ですか? 


 ええ、いろいろやっているんですよ。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語。

―― まるでNHKのラジオ外国語講座じゃないですか。


 そうなんですよ。NHK第2の外国語講座はその順番なんです。

―― 5ヶ国語いっぺんにですか?


 いっぺんにやっています。

―― 混乱しませんか?


 混乱します。
 基本的には勉強はラジオでやっています。歩きながらラジオの講座を聞くんです。でもここ2年間でかなりテープにとったので、ウォークマンでリピートして聞いてます。

 5ヵ国語のなかで英語は絶対必須ですよ。僕はイタリア語が好きなんだけれど、幅を利かせるんだったらフランス語だから、とりあえずフランス語をやろうと思って、そちらを先にやっているんです。

 一番できてないのがドイツ語なんですよ。だからそのあとドイツ語をやって、イタリア語はいまのところもっともたくさん勉強していてなじみがあるので、とりあえずいいか、ということで。ドイツ語のつぎはスペイン語で、その後イタリア語やって、最後にまた日本語に戻る予定です。

 漫画描いていると漢字書かなくなって、漢字がボロボロなんですよ。だから日本語をきちんとやり直す。

―― 我々もワープロソフトのせいで漢字はボロボロですね。


 僕が前からいっているのは「7ヶ国語しゃべれて歌えて踊れる漫画家」というキャッチフレーズなんだけれども、一番先に漫画家が抜けてしまった。

 7ヵ国語にはまだ外国語が足りないんで、最近は中国語のテープをとっているんですよ。中国語は北京語と広東語があってめんどくさいんだけど、その二つにはあまり大きな差はないみたいなので、とりあえず北京語をやっておけばいいかと。
 今テープにとっているので、あとはテープで気楽に聞くつもりです。


―― 語学をやるならNHKのラジオ第2はいいですよね。


 いいですよ。TVはその前に座らないといけないけれど、ラジオは携帯ラジオがあれば歩きながら聞けるし。テープにとればリピートできますしね。

 でもフランス語のテープを聞きながら外を歩いていると、いつもは気づかないんだけど、「なんてこの世は騒音が多いんだ」と思います。

フランス語って曖昧音が多いじゃないですか。そうするとちょっとした雑音でも、そこのところが聞き取れなくなるんですよね。

やっぱりフランス語は玉川上水じゃないと。「タマガーワジョウス〜ィ」とかいって(笑)。

―― 7ヵ国語しゃべれて歌えてはわかりますけど、踊りは? どういう踊りを踊るんですか。


 踊るのは僕けっこう得意なんですよ。要するにディスコダンスみたいなものなんですけどね。昔から音楽をやっているから、ライブはいやというほどやっているんで。ライブの演奏のときただ突っ立てるわけにはいかないから、その都度工夫して踊っていたんです。
(ここで幻の「末広バンド」に楳図さんを誘うメンバーたち)

―― それじゃ末広バンドも7ヵ国語で歌わなきゃ。


 シャンソンじゃないけど、フランス語で歌詞を作るとか。僕はスペイン語でラテンをやってみたいんですね。


―― 作詞もスペイン語でやるんですね?


 そうです。


―― それはおもしろそう。でも暇な時間はないですよね。


 まあ、勉強というより余暇というか遊びの感覚でやっていますから。そんなに大急ぎで身につけようというわけじゃないし。少しずつ繰り返してやっています。でも何度も繰り返していると、だんだん言葉の大まかな仕組みがわかって身についていくんです。

 お店とかにいっても、たとえば「メルカド」ってなんだろうと、お店の人に聞くんですね。食べもの屋さんは語学の宝庫です。なにか知らない言葉があるし。


―― 店名やメニューとか食材とか外国語ですもんね。食べ歩きとかはなさるんですか?


 ええ、けっこう食べ歩きは好きなんですよね。僕はごはんを食べるのが毎日のけじめでもあるし楽しみなので。朝はたいしたもの食べないけど、晩ごはんは「どこにいって食べようかな」、「何を食べようかな」、「食べものの復讐を避けるために(笑)、昨日とは違うものにしよう」とかいろいろ考えます。

 やはり週に2回食べると復讐が怖いので、週1回までで止めておくんです。

豆おかき、おいしいですからどうぞ。
(ここでみんなで「豆の復讐が…」といいながら豆おかきを食べる)


子供はどうしてトイレが怖い?


―― まことちゃん人形、かわいいですね。まことちゃんには「グワシ!」とかいろいろ語録があるんですよね。

 「まことちゃん」はそれまでの路線とはちょっとかわった漫画でしたよね。

 前からずっと幼稚園児を描きたいと思っていたんです。だから小学生くらいの子供が登場すると、その付録に幼稚園児も出るというパターンがわりと多かったんですよ。

 僕が一番しっくりくるのは小学生くらいを描いているときなんですね。

でも仕事上、雑誌のタイプによって、子供じゃなくてもっと上の年令を描かなければならなくなっちゃうので、その時にバランスを取るために子供を出してしまうんです。

 結局振り返ってみると、子供を描いている作品の方が成功率が高いというのがあって、大人の雑誌はあまり描きたくないんですよ。

 でも最近、少年サンデーとかマガジンが、ほんとうに少年向けの雑誌じゃなくなってしまったんですね。


―― 大人が読んでますもんね。子供は漫画を読まないでゲームばっかりで。


 だから、そこらへんがどうなるのかと思って。

―― じゃあ、発表の場も難しいですね。


 そう、スピリッツあたりが読者層の年令としては上限ですね。
あれから上はいきたくないです。

 スピリッツでもだいたい子供を主人公にして描いてきたんです。
「神の左手悪魔の右手」も小学生の男の子とそのお姉さんだったし。

 いまは「思いっきり子供」っていう枠がなくなっちゃって、僕は寂しいんだけれども。

 今回、NHKの「こどものうた」の仕事をしたけれど、わりとみんな上の方の年令に向けていて、ほんとうに子供向きの歌ってあまりないんですね。

―― 「みんなトイレがこわかった」のトイレの話には共感がもてました。私もトイレがとても遠い家に住んでいたんで。家のなかなんだけど、土間を降りて靴を履きかえて、もうひとつ扉があって、なかにまた扉があって。


 僕の母親の実家はもっとすごかったですよ。
トイレが別棟で牛小屋の近くで、真っ暗。

―― 学校のトイレも怪談の巣でしたよね。


 本能的にトイレが怖いっていうのは、今の子供でもあるみたいです。NHKで「みんなのうた」のライブがあったとき、進行係の女の人が「トイレこわい人っ!」ていうと、3、4歳くらいの子供がダダダダって外に逃げちゃうんです。あれは絶対怖いんですよ。

―― 今のトイレは明るいのに。


 昔のトイレならわかりますけどね。でも、今のトイレでも、なんかあるんですよ。

―― 便器がこわいですよね。他の世界につながっているという感じで。


 昔母親につれられて伊勢神宮に行ったら、宿屋のトイレがガラス張りで、下に鯉が泳いでた。それもちょっと怖いかも。食べられそうで。

―― 今の子供たちは「トイレの花子さん」とかで頭からトイレの怖いイメージが入っているのかもしれないですね。


 でも私たちのころって、トイレの穴から実際に手がでてきそうな雰囲気ってあったでしょ。

 僕の田舎だと、トイレから「赤い紙か白い紙か」っていう声が聞こえて、赤い紙と答えると赤い手が、白い紙って答えると白い手がでてくると言われて脅えてたんだけど、今考えるとばかばかしいよね。じゃ「緑!」って答えたら、出かけた手がしゅるしゅるしゅるって引っ込んだりして。

 それで毎回、「緑」とか「紫」とか答えてたらトイレが覚えちゃって、「赤い紙か白い紙か緑の紙か紫の紙か…」って言っている間に済まして出ちゃえばいいんだもん。

 そのつぎ知らずに入った人のときに、全色出てきちゃったりして。


ホラー漫画のもとになった山奥での子供時代


 僕の母親の田舎のトイレは牛小屋の横でしょ。だから夜、オオカミが来てふんを食べるという話を父親がしてました。ふんを食べないと目が光らないから、夜目が見えないんだって。

 父親はそういうことを怖がらせようとして話すんじゃなくて、実際にあったこととして淡々と話すのね。だから僕の漫画の「へび女」の話も父親から聞いたんですけどね。

 そのシチュエーションがね、夜寝ながら電気を消したところで話をするの。

子供だから自分から話をせがんだりもしたんだろうし、繰り返し聞いたことがホラー漫画のもとになっている。

 場所は奈良県の曽爾村っていうところで、そこに伝わる話なんですね。

蛇女がいて、「おかめヶ池」っていう池があって、その池のなかに蛇女が消えてしまい、またそこから出て追いかけてくるんですけれど。

 NHKの番組でそこを訪ねるというのをやらせてもらって、おかめヶ池に行ったら、今はすごくきれいになって、なにも出そうな感じじゃなくて、ちょっとがっがりした。

 僕は子供のころに実際そこに行ったことはないので、イメージのなかで、こう杉並木が欝蒼と暗くて、まわりにはススキや葦が生えていて、って想像していたんだけれど、実際には日あたりさんさんでボーイスカウトがいて、明るすぎる。

 明るすぎるとそういう想像は生まれてこないですね。

 前にフランスに行ったときに、フランスにもそういう話があるのかな、と思って向こうに住んでいる人に聞いてもらったら、「フランスにはそういう話はない」っていうのね。

「猟奇的な話はあるけれど、そういう怪談っぽいのはない」って。

なぜかというと「フランスにも森はあるけれど、みんな木漏れ日の森でどこかに日がさしているから」というんだけど、僕はフランス人にも心のなかにはなにか怖いものがあると思う。彼らは格好をつけて言わないだけなんじゃないかな。家に帰るとほんとうはトイレが怖くて、「ママー」なんていっていたりして。

―― でも、人って怖いと感じることは大事なんじゃないかなと思います。


 ひとつには怖さは自己防衛のシグナルだから、アンテナを張りながら歩いていないと危ないです。怖くなくなったものほど怖いものはないですから。

 たとえば車の流れや高いところがまったく怖くなかったら、身の破滅ですよね。

怖さって、まわりのものと自分との関係がいいのか悪いのか察知できる感覚だから、怖さがわからなくなった人は何をやりだすかわからない。

そういえば子供って、怖いお話しをしてもらうのが好きですよね。

 子供ってまだなにもわかっていない状態で、この世の中をどう生きていくかという知識がほしい。その好奇心と、見えないものに対する探求心を表現すると「怖い」っていう言葉になるんじゃないかと思いますよ。

 「怖い」という言葉にはいろいろな意味が含まれている。未知なもの、わからないもの、いまはまだ手のなかにないなにかを一括りに「怖い」という言葉にするんだから、人間ってすごいと思います。お化けもそれと同じで、なにかよくわからないものを形に現すとお化けで、言葉にすると怖いになる。だから子供はお化けや怖い話が好きなんでしょうね。

 怖いものが好きと嫌いは背中合わせです。そこに怖いものがあっても、見る前は「ほんとに怖いのか」「それがどの程度怖いのか」はわからないから、やっぱり「見たい」。つまり自分が進んでそれに近づきたい気持ちがあるんですね。

 だから「怖い」と思ってもつい見ちゃって、「やっぱり怖かったよー」と逃げるわけです。自然にそういう仕組みになっているんですね。怖いんなら見なきゃいいのに、納得して怖がって「ギャー!」とかいってる。

―― 見ないとそれはまたそれで、もっと怖かったりするし。


 見て確かめないと、どこかに引っ掛かってますからね。それよりは見て確かめて、やっぱり怖かったほうがすっきりする。

楳図さんの怖かった体験とは


―― 昔は大人もていねいに子供の「怖い」に付き合ってくれましたね。
楳図さんのお父様もそうですが。

 また、昔は全体にそういう条件のなかにいたから。怖いものが好きとか嫌いに関わらず、「その事件が起きた場所はここだよ」とかいう場所が具体的にあったりするんですよ。さらっと通り過ぎるわけにはいかないんですよね。 

 父親なんか、僕を自転車に乗せて「ほら、小太郎岩はあそこでね」と教えるんですよ。
怖い話の舞台となった現物がちゃんとあるんです。

小太郎岩というのは、昔小太郎という子供が重い病気になったとき、お母さんが「これからいいところにつれていってあげる」といって、岩の上に乗せて後ろから突き飛ばした。

それだけの話なんですけれど、怖いんですよね。「それが、あれだよ」というわけです。


 父親は自転車のハンドルのところに座布団をのっけて、そこに僕を乗せているんです。


それで茶店についたら「ちょっと寄っていくから。カズ坊はここにいるんだよ」って、そのままいっちゃうんですよ。僕は自転車ごとコケるんじゃないかと怖くて怖くて、お化けの話よりもそのほうがよほど怖かった記憶があります。


 動いたら転びそうだし。ほんとは転んじゃえばいいんだけど、小さなころって自転車の高さはすごく高く感じるんです。

 僕は山に住んでいたせいか、木のないところはなんか落ち着かなくて。たとえ池の向こう側の気持ち悪い「陰」のところだって木が生えてますから、ないよりもずっといいです。

 それに井の頭公園なんて奈良県の山奥に比べたら闇が薄いです。

奈良県の吉野郡の山奥って、底がないくらいどーっと真黒ですので、蛇女が出ても全然不思議がないような深さや重々しさがあって、その中にほうり出されているという感じがあります。

 住んでいる人も狸に化かされたという話がいっぱいあるんですよ。化かされて、いつまで経っても目的地にたどり着けなかったとか。

 僕の母親の母親なんか、木を切ったりするときに使うさらに山奥の山小屋にひとりで住んでたりしたんです。高野山から当時半日がかりで歩いて着くというところですから、そんなところによく住んでいましたよね。

 子供のころはそんなところでも怖いと思わずに歩いていたのを、今考えるとぞっとしますね。

 長野県の別荘のあたりも真っ暗なんですよ。去年行ったときに、それまでだいぶ行っていなかったので置いてあったバイクが故障して、修理してもらったんです。そのバイクで山の上にぽつんとあるレストランまで行ったら、着いた瞬間に走らなくなっちゃって(笑)、レストランに助けを求めに行ったら、その日休みで、あるいて帰らなければならなくなったんです。

―― うわー。


 何が怖いって、熊が出たらどうしようっていうのが一番怖い。前に別荘に来た大工さんに、「川のこっち側にはいないけど、川を渡ったらいるよ」っていわれてたのに、その時は川を渡っていたんですよね。怖かった。

 バイクをそこに置いて、最悪別荘まで歩いて帰らなきゃならないと思って歩いていたんですけれど、途中にホテルがあるんで、「そこに入れば晩ごはん食べられるし」と思っていたんです。

 ところがホテルでは「予約がないと材料を準備しないから、食事はできない」っていうんですね。「じゃあ、コーヒー」といっても、コーヒーも飲めない。

 結局そこでタクシーを呼んでもらったんですが、そのタクシーのなかで運転手さんに「運がよかったですね。普段はこんなところに来ないんですけれど、今日はたまたま通りかかって」といわれたんですよ。

 それを考えると、僕の母親の田舎なんかオオカミがいるという話もあったり、ツチノコもいるっていう話もあるし、ツキノワグマかヒグマだかがいるはずだし、よくそんなところを歩いて出会わなかったな、と思って。父親なんか、夜も歩いてたし。

でもうちの父親は、「やっぱり人間が一番怖い」っていってましたけどね。
 それに比べたら井の頭公園なんて、なんのなんの。

―― でも井の頭公園でも人間が一番怖いかもしれませんね。


 そうですよ。僕はときどきへんな人に声かけられることがあるから。

 といっても、ファンのかたが声をかけてくれることもあるし、全員にむげにもできない。だから僕は、一瞬ちょっと間を置いて、さっと振り向いて顔を見て、「はい」とかあっさりめに答えて様子を見るんです。
それでふつうのファンのかただなと判断したら、僕もふつうにするんですけど。
 
いっぱい人の集まるところって、どうしてもへんな人いますから。

―― 前に楳図さんに声をかけたいけど、なにか考えている最中だったら悪いし、あまり「楳図さんだー!」って騒がれたくないかもしれないし、どうしようか考えて、すれちがいざまに「グワシッ!」ってやって逃げようかと思ったんですけど。すれちがうまでに指を用意していたりして。

 それで逃げる途中にコケちゃったりして。そのまま歩いて踏んずけちゃうぞ(笑)

―― でもみんな、悩んでいたんですよ。ご挨拶すべきかどうか。


 でも、年配のゴツい男の人で、出し抜けに「グワシ!」ってやった人いますよ。似合わない似合わないって、笑ったんですけど。
 飛行機に向かって「グワシ!」ってやって、飛行機からも「グワシ!」って返ってきたら面白いでしょうね。


―― じゃあ、これからはご挨拶しますね。我々はけして怪しいものではありませんので。

 このあと、お部屋拝見。

2年かけてとりためた語学テープコレクション(言語ごとに色分けしてブリキの缶に収納されている)や、長野の別荘の写真などを見せていただく。

長野の別荘は赤と白のボーダー柄で、とってもキュートであった。

 お部屋のインテリアも凝っている。

楳図さんのお宅は、それぞれ一種のアートなんですね。不思議に居心地のいい空間でした。

 ああ、まことちゃん人形を連れて帰りたかった…。
 楳図さん、大勢で押しかけたのにいろいろありがとうございました。
 豆おかき、おいしかったです。グワシ!


34. 2016年4月16日 11:05:05 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2417]

仕事とは? 漫画家 楳図かずお 2012年8月1日


荒れ果てた未来にタイムスリップし、極限状態に置かれる子どもたちを描いた『漂流教室』

震災後の世相をこの作品に重ね合わせる読者も少なくなく、新聞やブログなどさまざまなメディアで取り上げられた。

楳図氏の作品は未来を予見したものが多く、『漂流教室』の続編ともいえる『14歳』でものちに起こった鳥インフルエンザや狂牛病を思わせる内容が描かれている。

「予言しようとは思っていませんでした。ただ、新しいことを描こうと思ったら、今起きていないことを常に考えることになる。それは何かを人間の心理から追究していたら、当たっちゃった(笑)」と楳図氏。


「芸術」と「生活」、「専門性」と「一般」。正反対の要素を意識する


僕の漫画を読んでトラウマになったとよく言われます。

好き嫌いを超えて多くの方に読んでいただいているということですから、うれしいですね。

そもそも恐怖漫画を描こうと思ったのは、18歳でプロになった時、みんなに読んでもらうにはインパクトがあって、ほかの人がやっていないものを描かなくてはならないと考えて。

当時は怪物や幽霊が出てくるような漫画はあっても、心理を描く恐怖漫画はまだなかったので、「あ、ここだ! このジャンルにしよう」と思ったんです。

直感的でしたが、どこで一歩を踏み出すかを考えたのはよかったです。

陸で生きるか海で生きるかとか、肉食か草食かが原始時代の生物の存亡の分かれ目になったりするでしょう。なんだか、それに近いところがあったと思います。


僕の作品には長編も多いのですが、最後まで投げ出さずに読んでもらえているのは、単純にお話を作る方法論みたいなところも影響していると思います。

例えば、漫画界では「ヒキ」と呼んでいるのですが、ひとつの話の最後に疑問とか、不安とか次号への興味を湧き立たせるような要素を必ず入れておくんです。

プロになったばかりのころは特に、このヒキをどうするのかが大きな問題でした。

もちろん、興味をひくだけではダメなんですよ。核になる哲学というか、何らかの新しく思いついた意見とか、そういうものが入っていないと、読み終えた時に何も残らない。

ただ、核だけを出しても面白みがないですよね。核になる部分が大事だからこそ、それとは正反対の面白く描くということ、世の中の人たちに認めてもらうということをおろそかにしてはいけないと思うんです。


よく「芸術ひと筋」と言いますよね。聞こえはいいけど、その芸術が社会生活とつながっていなければどうでしょうか。

どんなに素晴らしい芸術も人に見向きもされないんじゃさみしい。

漫画は芸術だと僕は思っていますが、自分だけで完結していて誰かに見てもらえないとなったら、張り合いがなくて絶対にやっていなかったです。

「芸術」と「生活」もそうですけど、物事はすべて「正反対」の要素がないと機能しない気がします。恐怖漫画もただ気持ち悪くて汚いとなると、興味をひいたとたんに「シッ!シッ!」と追い払われてしまうという最悪の事態に…。


じゃあ、恐怖とは何か。気持ち悪くて怖いのに、なぜ人は恐怖にひかれるのか。

恐怖といえばグロテスクなものを想像されがちなんですけど、その裏側には目を向けずにはいられない綺麗なものがある。

「気持ち悪い」とは正反対の「綺麗」も描かれていないと、のめりこんで読んでもらえるような作品にはならないんです。

これはビジネスの世界でも同じかもしれません。

専門性の高い理論を編み出したら、今度はそれを製品やサービスにしたり、売ったり、誰でもわかる形にしていく過程が必要だし、一時的な消費に終わらない仕事をするには、利潤を追求する一方で「これはこうあるべきだ」という美意識のようなものがないといけない。

ひとつの要素だけにとらわれそうになったときは、その正反対を意識してみるといいんじゃないかなあと思います。


心の中のわだかまりやうじうじは、ためこんでおいた方がいい

僕の作品には恐怖漫画もコメディーもありますが、そこで何を描いてきたかというと、人間の深い本質のようなもの。

面白く読んでもらえるものを目指しつつも、人間の持っている心理の奥深い本質をそこから取り出せたらと思って描いてきました。ただ、そういう目的みたいなものって、デビュー当時からはっきりしていたというわけではないんですよ。

僕は小学生の時からプロの漫画家になると決めていたし、目的意識がはっきりしていたように見えるかもしれないけれど、逆に言えば、漫画を描く以外にできることが思いつかなかったんです。

「僕にはこれしかないのね」と思っていたから、学生時代に一緒に漫画を描いていた仲間たちが会社員や公務員になったり、出版社から「君の作品は芸術的すぎて売れない」と言われても焦りみたいなものはなかった。ほかに選択肢がないからひたすら努力をしているうちに、「もしかしたらこれが目的かも?」というものが後から勝手に出てきた感じなんです。

だから、大学を出て就職をする人が「何をやりたいのかわからない」なんて言いますけど、そんなのは当たり前だと思うんですよね。大学を卒業したら一人前とか、何かになれるという考えそのものが違う気がする。

それぞれが自分の状況の中で許されたことを一生懸命やって、理想の生き方はありつつも、「現実にはこれがやりたかったのかな」というのを見つけていくのが普通なんじゃないかなあ。

逆に、第1志望の会社に入っただけで満足したり、好きな仕事ではないから生活の糧と割り切って適当にやろうなんて思ったら、気持ちはスッキリするかもしれないけど、スカスカの仕事しかできないかもしれないですね。

「何かが物足りないなあ」というどこか完結しない気持ちとか、「この仕事の本当の目的って何だろう」というような心の中の わだかまりや うじうじはためこんでおいた方がいい。コレだというチャンスがきた時の起爆剤になりますから。


それから、物事がうまくいかない時期は準備期間だと思うといいかもしれないです。

僕は27歳で上京してきて仕事が忙しくなり、週刊3本、月刊3本の連載を抱えてギリギリの生活を送っていた時期がありましたが、アイデアに困ったことはありませんでした。

それは上京前に肩こりから不眠症になって思うように描けない時期があって、その時にアイデアをストックしていたからなんです。準備をしておくというのはすごく大事なことなんですよ。

腱鞘炎が悪化して『14歳』の連載終了(1995年)から漫画を描くのは休んでいますが、さみしさはなかったです。『14歳』は描いているうちに自然と僕の集大成のような内容になって、まっとうしたような感じ。ただ、まだ物足りない部分というのはあって、「今後はそれを埋め合わせするような、これまでとは違うことがあるかもなあ」という期待感がありました。それが、音楽活動など漫画以外の世界につながったのだと思います。

でも、やっぱり、自分が描いてきた漫画をいろいろな世代の人に読んでもらえているというのが一番うれしいですね。僕の作品って「子どものころは怖くてイヤだったけど、大人になって読んでみたら違う印象だった」と言ってくれる方も多いんです。

少女漫画や少年漫画は主人公を読んでくれる子どもと同じ年代に合わせているから、読者は主人公に感情移入してただ怖いと感じるけれど、心理的成長が進んでくると「それだけなのかな」と深く考えるようになる。

すると、怖い登場人物にもそれだけの理由があるんだなという人間の心理みたいなものが読めてきて別の面白さが出てくるのだと思います。

「漫画って何だろうね」なんて論理的なことはわかっていなくても、プロになった時から「今、売れるためだけに描いていてはいけない」という意識はありました。

今のことだけを描いていたら、時代が過ぎていくとみんな過去のものになっちゃう。

時代のにおいみたいなものはありつつも先を行かなければいけないし、時代を超えて不動のものがなければいけない。

いつだってそういうところで仕事したいとか、勝負をかけたいと思うんですよ。


最後にこれから社会に出るみなさんに言いたいのは、美意識を持って仕事をしてほしいということ。

美意識なんて無駄なものだと思っている人もいるかもしれないけれど、生活のために経済だけを追求していると、どこかでひずみが出てしまう。

創作だけでなく、発言も考え方も美意識があってこそ人に一目置いてもらえるんです。

「美意識が高い」と言われるヨーロッパの文化が一番だとは僕は思わないけれど、今の日本人はやはり美意識が弱いと思う。

日本人は自然を尊ぶけれど、「綺麗な自然」というのは無作為ではあり得ません。「こういう自然が綺麗だよね」という美意識があってこそ存在するんです。
もっと能動的にならないと。

自分たちの美意識がいい街や国を作っていくんだということに気づいてほしいなと思います。
http://journal.rikunabi.com/work/job/job_vol78.html


35. 2016年4月16日 11:20:34 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2418]


楳図かずおが「まことちゃん」を描きはじめた危ない理由 2013年04月05日


ホラーばかり描いていた楳図かずおが、ギャグ漫画「まことちゃん」を描き始めたのには、こんな理由があった。

「おろち」「漂流教室」「洗礼」など、ホラー漫画ばかり描いていた楳図かずお。
彼が、その方針を一転してギャグ漫画「まことちゃん」をはじめたのには、実は、ホラーな理由があった。

とある日。
楳図かずおが、夜中に仕事をしていたらと、インターフォンが鳴った。
ドアの覗き穴を見ると、生気のない、ぼんやりとした女が立っている。


さすがの彼も薄気味が悪く、ドアを開けずに対応した。

どうやら彼女はファンらしいのだが、なにかに怒っているようだ。
ボソボソ喋る彼女の話しを、くわしく聞いていくと

「なんで、先生は私の生活を知っているの? なぜ、それを漫画にするの?」


と執拗に主張しているのだ。
この出来事をきっかけにとホラー漫画をいったん封印。

どんな読者にも”自分の生活だと誤解されない”、ぶっとんだ設定のギャグ漫画「まことちゃん」を描きはじめたんだとか。

ぐわし。
http://toshi.ldblog.jp/archives/25344356.html


36. 2016年4月16日 17:24:04 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2428]

2012年08月23日
漫画家「楳図かずお」(レモンイエローと白にペイントされた八王子高尾邸)
http://welovehachioji.seesaa.net/article/287720603.html


 漫画家「楳図かずお」の家が、八王子の高尾の住宅地にあるのを知ってますか。
 
以前は、高尾が自宅で、吉祥寺が仕事場でしたが、吉祥寺に自宅兼仕事場を新築し、現在は、そちらに移転しています。

 高尾の家は、そのまま所有し、ときどきリフレッシュを兼ねて戻ってきているそうですよわーい(嬉しい顔) 

高尾駅周辺の人なら見かけたことがあるかもしれませんねわーい(嬉しい顔)


2階にある「一応、ここは仕事部屋」にて。

赤と緑に加え、カラフルな花柄のテーブルクロスとカーペットが、独特の楳図ワールドを語ります

http://welovehachioji.seesaa.net/upload/detail/image/E6A5B3E59BB3E3818BE3819AE3818AE9AB98E5B0BEE982B82-thumbnail2.jpg.html


緑豊かな高尾、閑静な住宅地に建つ楳図邸。

レモンイエローと白にペイントされた外観は、明るく爽やかな印象


http://welovehachioji.seesaa.net/upload/detail/image/E6A5B3E59BB3E3818BE3819AE3818AE9AB98E5B0BEE982B8-thumbnail2.jpg.html
http://welovehachioji.seesaa.net/upload/detail/image/E6A5B3E59BB3E3818BE3819AE3818AE9AB98E5B0BEE982B83-thumbnail2.jpg.html


まことちゃんが席に着くテーブルでは、今にもパーティが始まりそう。色鮮やかな食器類が、ダイニングルームの雰囲気を盛り上げます
http://welovehachioji.seesaa.net/article/287720603.html


37. 中川隆[2351] koaQ7Jey 2016年4月16日 18:00:04 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2429]

映画『MOTHER』(楳図かずお)では楳図自身の家(吉祥寺にある方ではなく、高尾にある方)がロケに使われていた。

ぼくは大学を出てから十年以上、高尾にアトリエをもっていて、アトリエに行く度に真っ黄色な楳図邸の前を通っていたのだが、あの黄色い家の内部の様子が初めて見られてうれしかった。赤と緑の皿は実際にあそこにあるのだろうか。

(高尾の楳図邸のすぐ向いには中学の校門があって、その斜面に咲くアジサイが、異常なくらい長く、鮮やかなままで咲いているという記憶がある。)
http://d.hatena.ne.jp/furuyatoshihiro/20150427


高尾にある黄色い家も「赤白にしたかったんだけど近所の子供に石投げられそうだから」と当時のインタビューで答えておったんじゃが
(笑(07年08月15日 15時23分29秒)
http://matinoakari.net/news/item_62524.html


楳図先生の現在の自宅、高尾の黄色一色の家は随分、地元に受け入れられていて、悪い噂も聞かないんですけどねー。

地元の人も歓迎しているみたいなんで、高尾で建て直して欲しかったんですが、吉祥寺の方が便利でしょうからね…うーん。
Posted by waka at 2007年08月04日 08:35

原告団(おばちゃん二人w)の存在がすでに暴力のような気も……。

裁判やったら原告が負けるんじゃないかなぁ。
景観条例も存在しないし、どう考えても法でケリをつける問題じゃない。

まぁ、楳図先生に常識を求めるのが間違いですね。
あの人は、日本における、おそらく最後の天才ですから。
Posted by SUSI at 2007年08月04日 09:26

>wakaさま

高尾の家はあくまで別荘ですからね。自宅と事務所はずっと吉祥寺だったみたいですから、やっぱり住むならそっちのほうがいいんでしょう。

>SUSIさま

服装と作風以外は常識人ではないかと思います。
テレビのインタビューでも穏やかな物言いでしたしね。
テレビの印象だけで判断すれば、隣に越してきてほしくないのは楳図先生よりもあの奥様方ですね(笑)。
Posted by atsu at 2007年08月05日 21:12
http://atsupeugeot.seesaa.net/article/50200393.html

2009/03/18
「まことちゃんハウス」内部写真・解禁!
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-4481.html

楳図邸外観。 何人もの通行人が「わ!まことちゃんハウスだ!」とケータイで写真を撮っていた。すっかり吉祥寺の観光名所となっている。

おととい16日、フジテレビの『とくダネ!』にて、噂の楳図かずお先生の新居「まことちゃんハウス」の内部が初公開されましたが、ご覧になった方もいらっしゃると思います。

これを受けまして、俺が2月1日に参加した「楳図邸新居完成披露パーティ」の際に撮影した内部写真の公開が解禁されました。なので一挙掲載したいと思います。披露パーティを仕切っていたウメズドットコムの人から、「新居がマスコミで公開されるまでは、ブログ掲載は控えて欲しいと楳図先生は希望されている」とのことでした。

http://umezz.com/jp/
↑UMEZZ.COM


ここに掲載いたしましたのはすべて俺がデジカメで撮ったものですが、素人写真であることもそうですが、改めて確認しましたら「あ。あの大事な部分を撮ってない!」といちいち舌打ちしてしまいました。ほかの部分は、今後ウメズドットコム等にも載ると思いますのでご勘弁ください。

というわけで、いちいち解説は入れませんが、どのような雰囲気のお宅かは写真を見ればおわかりになるかと思います。

印象に残ったのは、家のどこにも「行き止まり」がなく、必ず奥にもうひとつトビラがあって、抜けられるようになっていたことです。

これは楳図先生が、考え事をしながら家の中をどこまでも歩いて行けるようにと、このような設計にしたものだそうです。

うっかり撮り忘れて今になって「しまった」と思ったのは書庫です。ちょうどリビングの壁の裏側に隠し部屋のように細長い廊下のような緑色の部屋があり、壁の両側一面に作り付けのガラス戸つき本棚がズラリと並んであって書庫になっていました。

書庫に入ってビックリしたことは、すべての本棚に楳図先生以外の本が一冊もないということでした。(金子デメリンさんの「ウメゾロジー」はありました。どうやらこの本だけは楳図作品と同格にされているようです。デメリンさんおめでとうございます)。

あと、実際お宅にお邪魔して強く感じましたが、一見赤・青・黄色・白で塗り分けられて派手な感じの家なんですけれども、配色には細心の注意が払われていて、ショッキングピンクのような目に刺さるような原色は避けられていたことです。色のバランスがとれているので、派手な感じが意外としません。反対にセンスがいいと思いました。

裁判になった主婦のお宅はすぐお隣にあるそうで(裁判は原告の提訴が棄却され、楳図先生の勝訴が確定した)、回覧板が回ってきた・または回覧板を回す羽目になったららどうするんだろうと人ごとながら心配になり、おそるおそる先生に聞いてみましたところ、「それは僕も心配だったんだけど、この一角には町内会がなくって、回覧板もないんだよ」とホッとした表情でお答えになられていました。

※ちなみに、ネット内では楳図先生を訴えたのは隣町の住人だという噂が流れていましたが、これは間違いで、訴訟は実際にお隣と向かいの方から起こされたものだそうです。

お宅にお邪魔して強く感じましたことは、この「まことちゃんハウス」は、建物自体がまぎれもなく100%純粋な楳図作品だということです。武蔵野市におかれましては、次の議会で市の重要文化財に指定するべき逸品ではないでしょうか。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-4481.html


2009/03/19 楳図先生はスゴイ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-4940.html


●ステンドグラスとカーテン

ステンドグラスについては写真を載せました(左図)。これ、何のキャラクターだかわからない人も多かったと思うんですが、楳図先生の処女作『森の兄妹』からのものです。この作品については、以前エントリにしたことがあります。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_dd81.html
↑楳図かずお・幻のデビュー作品


ステンドグラスは埼玉県の専門工場に特注したもので、ン千万かかったとか。しかも夜になると、スイッチひとつで庭からの専用照明が当たって綺麗にライトアップされるのですが、この日は照明が故障してしまい、見ることができませんでした。

さらに写真ではよくわかりませんが、このステンドグラスは2階の天井まで吹き抜けになっていまして、上から床まで赤いカーテンが掛かっているのです。このカーテンはイタリア製で、数百万したと聞いております。

●音楽トイレ

昨日載せた中にはトイレの写真がありましたが、あれは二階のトイレでして、実は一階にもお客さん専用のトイレがあるのです。これがもの凄いトイレで、なぜ写真を撮らなかったか悔やまれます。壁紙がジャングルになってまして、それも『漂流教室』に出てくる「怪虫の森」みたいな絵なんですよ(壁紙は楳図先生が偶然見つけたもの)、それで、お客さんが便座の前に立つと自動的にフタがせり上がる構造で、音楽まで流れるんですね。まあ音楽は写真に撮ることができませんが、壁紙だけでもお見せしたかったです。

●ヘビの目が光る玄関

Umezudscn0398 Umezudscn03982 これ、昨日載せた写真のひとつでチラリと確認できるんですがね。左の写真の奥なんですが、わかりますかね。右隣に拡大写真を載せます。

わかりますか? これ玄関なんですけど、靴脱いで上がるところがヘビの頭になっていて、しかも目が青く光っているんですよ!さすがは楳図先生の玄関です。

Umezudscn0417 ●鏡が隠しトビラ

リビングから二階に上がる階段が印象的な家ですが、階段が二股に別れていまして、正面に大きな姿見の鏡がはめ込んであります。実はこれが隠しトビラになっていまして、楳図先生の姿が見えないぞと思ったら、いきなりリビングが暗くなり、鏡にスポットライトが当たってそこから楳図先生が登場する仕掛けになっています。

これには全員度肝を抜かれました。ちなみにこの裏側にある部屋が、楳図先生の著作しか収納していない書庫です。書庫への正式な入り口はリビングの左右の端にあります。

『まことちゃん』の中に、沢田家に忍び込むほっかむりした泥棒のエピソードが出てきますが、あのドロボーが楳図邸に忍び込んだら、途方に暮れるのではないでしょうか。

「楳図ハウス」に関しては実はもうひとつ大ネタ、いや中ネタがあるんですけれども、これについては時期が来れば発表します。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-4940.html


38. 中川隆[2357] koaQ7Jey 2016年4月16日 23:21:11 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[2436]


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鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠢』                  ベ三ヘベ鴪彭                ベ⊇⊇氾衒掘儲鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱ル                  ∃川シ  ヅ’                 ベベ3氾珀伽疆鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱』                  `当癶、        、  u∴     ベベ⊇Y珀雄鬱鬱鬱鬱
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鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鹹              情苛泣罅         ∴3S川Γ ヨ据鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱醢=@           ヴ県戸”          ⊇⊇ジ   ∃据鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠧=@                       ⊇⊇゛    ヨ溷鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱蠧止.                  ベシ       旧疆鬱鬱鬱


楳図かずお 猫面 - 電子書籍
http://www.ebookjapan.jp/ebj/23573/

楳図かずお猫面を語る
https://www.youtube.com/watch?v=Np_m5lRGhDw

残酷表現の頂点!楳図かずお 「猫面」のおぞましさ 2009/12/22(火)
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/59293375.html

ホラー漫画の第一人者、楳図かずおの作品をいくつか載せてきましたが、今回は初期の頂点に位置すると言われている「猫面」をご紹介します。

以前にも述べましたが私は楳図かずおの作品を少年・少女週刊誌に載る前の貸本時代から読んでいて、その頃の作品のほうが怖かった記憶がありました。

大手の出版社の子供向けを意識した作品はある程度表現もセーブされます。

しかし読者の対象を子供だけと考えない貸本時代の作品は、社会的な規制も緩い頃だったのと相まって恐怖度、残酷度ともにパワー全開で表現されていました。

その中でも昭和38年に単行本で発表された「猫面」は残酷描写の凄まじさで頂点に立つものでした。


http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=0
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=1

あまりの残酷さにホラー漫画好きの私も強い衝撃を受けました。

そして家族ぐるみで付き合ってた近所のおじさんに見せると「これは子供に見せる漫画じゃない・・・」と唸ったのを覚えています。

学校へも持っていって友だちにも見せましたが全員が声もなく、真面目で大人しい印象を持たれていた私がこんな漫画を知っている事で感心されたほどでした(笑)

眼を覆う残酷さと救いのないラストまで一気に読ませる楳図かずお入魂の「猫面」は最近になってやっと本格的に復刊されました。

私もあの時以来の46年ぶりに読み返して改めて作品の凄さを味わいました。
興味のある方、お好きな方は是非読んでみて下さいね。


http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=2
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=3

内容は極端な猫嫌いの城主が猫を見つけ次第残虐な手段で殺し続けました。

そのたたりか、生まれたわが子は猫にそっくりな顔でした。

悲鳴を上げて殺そうとする城主を、大事な跡継ぎだからと家臣たちが必死に止めて育てます。

成長した猫面の嫡男は親に嫌われ人に怖れられたのがそうさせたのか残酷な性格に育ちます。成人すると父親を牢屋に押し込め城主となり気の向くままに振る舞います。父親が嫌っていた猫もいつの間にか城の中へ集まってきて猫面の城主を慕います。


http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=4
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=5

城の中に閉じこもっていた猫面はある夜、城内で恋人と会っていた腰元の美しさに魅入られます。

女の身元を探って家臣の娘である事を突き止めると、親を呼び出して妻にと持ちかけますが、当然断られます。

すると卑劣な罠で親を罪人にして拷問を加えます。

そして娘を呼んで妻になるなら助けてやると迫ります。

露骨な手段に親も娘も拒みます。

娘の口から妻になりますと言わせたい猫面は親を拷問死させると娘の恋人も捕らえます。

それでも屈しない娘に恋人への拷問は残酷度を増してゆきます。

狂気の猫面は「それほど猫面を嫌うなら恋人の顔を猫面に変えてやる」と娘の眼前で悪魔の所業を実行してみせます。

片眼を潰され口を裂かれて耳や鼻を削がれて、猫の顔に変わっていく恋人…。

しかし正常な感情を失った娘は悲鳴をあげながらも承知しませんでした。


http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=6
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=7

ある日、牢屋を抜け出した猫面の父親はすでに狂っていて城に火をつけました。
その混乱に紛れて脱出した恋人は猫面と入れ替わります。

そっくりな顔を利用して城主に成りすました恋人は娘を呼んで入れ替わった事を告げますが、娘はその手に乗らないと受け付けません。

必死に訴える恋人を拒否して捕らえられている猫面に抱きつきます。
逆上した恋人は思わず娘の首を…。
気が付くと娘は死んでいました。

呆然とする恋人は自分がされた拷問と同じ残虐な手段で猫面を痛めつけます。

いつしか猫面と性格までそっくりになって人々から怖れられる猫面城主となってしまいました。


http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=8
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=9
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=10
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/GALLERY/show_image.html?id=59293375&no=11


文章で表現してもとても追いつけない残酷な描写は本をご覧になって確かめて下さい。「猫面」は若き楳図かずおのパワーが漲る作品でした。

コメント


その昔、貸本屋という本屋があってマンガをレンタルしてくれるんですね。
(今はビデオレンタルショップでもコミックをレンタルできるとか)
この手の漫画はよく貸本屋にありました。
2009/12/23(水) 午前 0:15GH


恐ろしい物語ですね。読みたいけど、読むのが怖いくらい

この漫画が書店で普通に手に入るんですか? それが不思議な気すらします。
貸本マンガ時代には数々の名作が生まれたと聞いていますが、27歳でこの作品を残した楳図かずおの恐怖に対する向き合い方。尋常でないとすら思えます。
文句なしにポチです。
2009/12/23(水) 午前 0:35パットマンX

GH字幕さん、漫画を買えるほどお小遣いがない子供がほとんどだった当時は貸本屋さんが全盛を誇りましたね。
最近は漫画喫茶が繁盛していて漫画文化が消える事はありません。
2009/12/23(水) 午前 1:01ギドラキュラ


パットマンXさん、普通に買えますよ(笑)
子供の頃は1冊10円ぐらいで借りる事が出来ました。

現在なら驚かない残酷さも当時では極限と言えるほどの凄さです。
規制の緩かった時代だからこその作品ですね。
楳図かずおも本作で残酷描写の限界に挑戦したとコメントしてます。
恐れを知らぬ若さがあった頃ですね。
2009/12/23(水) 午前 1:15ギドラキュラ


貸本時代はかなり問題がある作品も読む事が出来ました。
その描写のどぎつさはもちろん現在のほうが上ですが、当時の人の素朴な感覚では恐怖度が違いました。
子供の頃に見たものが決定的なイメージで残りますね。
2009/12/24(木) 午前 0:33ギドラキュラ


怪獣の怖さとは異質ですね。
楳図かずおさんの作品は貸本時代が凄かったのです。
読んでは夢に見てうなされました(笑)
2009/12/24(木) 午前 0:41ギドラキュラ


千草さん、よほどのファンじゃないと知らない作品ですね。
解説にも書かれているように「猫面」は後の作品にも影響しています。

残酷さはこの作品で限界ぎりぎりまで描きつくし、
「黒い猫面」はもう少し子供向けに描いたのでしょうね。
悪霊や物の怪は出てきませんが、最も怖い人間を表しました。
2009/12/24(木) 午前 0:53ギドラキュラ


えりっぺさん、楳図かずおさんは単行本の時代には少女が主人公とは限らず、かなり自由な作品を描いていました。

他にもタイトルを覚えていないけど大人の男たちが中心で女の呪いで死んでいく作品もありました。

「へび女」も強烈でしたね。
貸本時代にも蛇の化身のような女の作品がありましたよ。
楳図漫画はとにかく怖かった・・・。
2009/12/24(木) 午前 1:04ギドラキュラ

美狂さん、これはお薦めですよ。
人間の狂気を限界まで描いています。

怖いのは猫面だけではなくて惚れられた娘も、その恋人も異常な面を表しています。

少女漫画に発表した作品と違って救いのないラストまで読むものの心を暗い闇に引きずり込む内容です。
美狂さんの好みにピッタリ(笑)
2009/12/24(木) 午前 1:22ギドラキュラ

「半魚人」もインパクト大でしたが、「猫面」少年週刊誌には載せられないおぞましさです。
妖怪よりも怖いのが人間だと子供心に心底染み込まされました。
是非読んでみて下さい。新品だと2000円ちょっとです(笑)
2009/12/24(木) 午前 1:53ギドラキュラ


規制だらけでがんじがらめの現代では生まれにくい作品ですね。
芸術品はモラルの枠を超えたところから誕生する。

SMの気のある人なら興奮するかも(笑)
2009/12/25(金) 午後 11:26ギドラキュラ


江東のマサさん、人間の残虐性を描いた怖〜い作品です。
これを20代で描いた楳図かずおさんはやはり非凡な作家ですね。
2009/12/25(金) 午後 11:29ギドラキュラ


よっっちゃんさん、一番凄い画は載せませんでした。
娘の父親への拷問、恋人の顔を猫面に変えていく詳細な場面…
凄過ぎますよ…。
2009/12/25(金) 午後 11:34ギドラキュラ


こんな凄い作品があるとは知りませんでした。まさにR指定の漫画。

猫面の城主。入れ替わった恋人。誰も望んでそうなった訳でないのに・・・・。

元々は、前城主の猫嫌いが呪いの発端だけど、それ以前にも曰くがありそう。
人間の業が因縁となってるのか。残酷描写だけでなく考えさせられる作品ですね。
2009/12/26(土) 午前 6:52tirusonia


すさまじい作品ですね。
ところで、有名なマンガ家でも初期の絵は稚拙な場合が多いのですが、楳図かずおの絵は初期の頃からうまいですね。
だからこそ、この異常な世界に引っ張り込まれるのでしょうね。
2009/12/26(土) 午後 3:39アノニマ


救いが無い上に凄まじい残酷描写でしたね(^^;)。
貸本漫画のエネルギーここに極まれりという典型的な作品です。

規制がゆるかったことも幸いしてか、情け容赦のない描写になってます。
2009/12/26(土) 午後 10:18kms*30


チルソニアさん、猫面の父親が何故極端な猫嫌いになったのかは明らかになってませんが、いくつかの諸説があります(笑)

猫面にされた恋人と猫面城主は少し顔が違っていましたが、最後はそっくりそのままに…。
人間はどこまで残酷になれるか?
言われるように人間の業が描かれていますね。
2009/12/26(土) 午後 11:55ギドラキュラ

楳図かずおさんは青年向けの貸本時代の作品のほうが
劇画タッチでした。

週刊誌に連載するようになって子供向きの絵に変わったのですよ。
だから初期の作品から怖かったのです。凄いですね。
2009/12/27(日) 午前 0:00ギドラキュラ


貸本時代のパワーは日本が経済成長を遂げてゆく過程を象徴してますね。
とにかく勢いがありました。
戦後が遠のき、新しい娯楽として漫画が全盛を迎えつつある時期でした。
規制が少なく自由な描写の作品が溢れていましたね。
2009/12/27(日) 午前 0:18ギドラキュラ返


楳図かずおさんの作品ってメジャーなのをちょっと読んだくらい
なんですが、貸本っぽい迫力というか熱を感じました。

水木さんの自伝の中で、貸本の出版社に白土三平が原稿持ち込んだがボツに
するとその場で原稿の裏に漫画描いて再度頼み込んでた、とか逸話が書いてあった。

また、貸本の世界は当時の漫画家の底辺みたいな感じだったし、そこで生き抜くためには上手いとかではなく、そういうパワーが必用であった、とも書いてあった。

楳図かずおさんって割とひょうひょうとしたイメージでとらえてたんですが、
やはり気迫ある漫画家人生だったんでしょうね。
2009/12/27(日) 午前 6:58路じうら小僧

貸本時代の興味あるエピソードですね。
特に昭和30年代の前半はおびただしい数の貸本がありました。
その中で生き抜いて漫画家として成功するのは大変だったでしょうね。

楳図かずおさんはホラー漫画という独自の世界を形成したからこそ残れたのでしょうね。
水木さんと持ち味が違っていたのが良かったです。
同じだと…潰されていた?

まだまだ復刻してほしい漫画が沢山あるけど、
題名も覚えていないのがほとんどで・・・歴史の闇に埋もれたままの作品がありますね。
2009/12/28(月) 午前 0:42ギドラキュラ


この頃の作品が一番怖いですね。
若さゆえにブレーキが利かないと言うか…(笑)
他にも復刻してほしいのがいくつもありますが
多数読んでいるので題名が分からない…
2010/1/7(木) 午後 11:25ギドラキュラ


楳図かずおとは恐ろしい人だと思っていましたから「まことちゃん」を見た時は信じられませんでした(笑)

「ひびわれ人間」や「半魚人」もご覧になりましたか?
2011/10/5(水) 午前 1:58ギドラキュラ
http://blogs.yahoo.co.jp/kpgcm339/59293375.html


猫面【楳図かずお残酷表現の頂点】 2013.01.03
http://musekininhiroko.blog.fc2.com/blog-entry-6.html

この本は、私がこれまでに読んだ楳図漫画の中で最も残酷だと思われる作品。
残酷表現の頂点などと言われています。

1963年に貸本漫画用の単行本として描き下ろされた作品で、楳図先生が27歳の上京直後に描かれた意欲作。

絵のタッチも、表現も躊躇することなく描かれていてダイナミック。

初めて読んだときには、途中で一旦本を閉じてしまい、この人大丈夫なのだろうか?って呆然としました。

物語はいきなり、主人公で猫嫌いの長屋右衛門正信が、次々と猫を虐殺していくところから始まる。

その長屋右衛門正信の子として産まれた秀信は、猫好きな猫のような顔をした子供。
のちに猫面城主と呼ばれ、猫を粗末にしたものに仕返しをしていく。

拷問のシーンがあまりにも残酷で目を塞ぎます。
救いようがないままクライマックスへと展開します(笑)

読み終わったらなんとも言えない脱力感です。

「人こぶの怪」や、「うろこの顔」、そういえば顔にまつわる物語が多いですよね。
ディズニー映画なら野獣に愛を注ぐヒロインが現れて、ラストには呪縛が解け、ハッピーエンド〜!になるのですが、そうはいかない楳図漫画。

ですが、先生曰く、恐怖と愛が一緒になった第一号。。。って嘘つけ〜!!!(笑)

まあでも、きれいごとではなく、そういったハッピーエンドでは片付かない世界は実際にあるので、後の作品でも色々と考えさせられたことも実際にありました。

楳図漫画には答えがないので、読み手によって解釈が違うというところも好きです。

この作品を初めて見た時、「楳図先生って大丈夫な人なのかなあ(笑)」って
ちょっと思っちゃいましたが、これを見たら、そんなことすら吹っ飛んでしまうよ。

のびのびと〜!
生楳図先生は、まことにぶっ飛んでるぅ〜!!(笑)
大好きです。

注:猫好きの人は絶対読まないでね!
http://musekininhiroko.blog.fc2.com/blog-entry-6.html


楳図かずお ネコもの


「ネコ」は因縁ものの定番としては「佐賀の化け猫騒動」という江戸時代の小説(?)より始まり

以来、過去の罪業を糺すために成敗(?)をするというパターンが多い。


楳図かずおもご多分にもれず、少女まんがに掲載するときはこのパターンを踏襲している。


しかし、楳図の「ネコ」ものはそう多くないのである。

「猫面」(1963.佐藤プロ.単行本)

「半魚人」「影姫」の礎となっている作品。
極悪非道の拷問シーン,人間改造シーンは目を被うばかり!


ストーリー: 猫のような顔をした城主の横恋慕により美男の家来と、娘の父親が残酷な目にあうお話。


城主そっくりに改造された美男子が復讐のために結局は城主を殺し、なりすますが…。

「ねこ目の少女」(1965.講談社.少女フレンド.連載4回)

加賀の城主のネコぎらいから、生まれた双子の娘のひとりは「ネコ」そっくりだった!

それから現代、血筋の双子の娘のひとりが突然「ネコ」のような行動を取るようになる。

事故により、ネコ目の少女は死ぬが嵐の晩、墓場からよみがえり…。

「黒いねこ面」(1966.講談社「少女フレンド」.連載16回)

同じく因縁ものの定番。城主のわがままにより殺されたご典医の愛猫「クロ」が

復讐を果たす。がその呪いは現代にまで続いており、血を引く柴田家で生まれた子供は「ねこ」そっくりだった!
こっそりと子供を取り替えたが、12年後その「ねこ」娘が整形してくれと、柴田家のもとを訪れる…。


「怪談・呪いの整形美女」というタイトルでもTV化されている。

「ねこ目小僧」(1968~1968.少年画報社「少年画報」「少年キング」連載.

1976.小学館「少年サンデー」)


妖怪「ねこまた」が生んだ子供は半分ねこで半分人間のできそこないだった。

「ねこ目小僧」のゆく所で不気味な事件が発生する!
昨今のホラーエッセンスを巧みに織り交ぜた作品の数々は、今なお語り継がれる内容ではないだろうか?
http://th3291.web.fc2.com/cat.htm



39. 中川隆[2730] koaQ7Jey 2016年6月04日 09:40:14 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[3002]

June 26, 2012 21:11
16歳の息子とセ●クスした32歳の母親が逮捕される アメリカ
http://rajic.2chblog.jp/archives/51985533.html


【近親相姦】16歳の息子と肉体関係に溺れまくって、逮捕された32歳の母親ミスティ・アトキンソン! 壮絶肉欲とは? 2014.03.16.
http://tocana.jp/2014/03/post_3811_entry.html


 全国性的暴力反対連合ウィスコンシン(WCASA)の公式サイトによると、アメリカで性的虐待を受ける子どものうち43%が近親者によるものであり、家庭内で幼児/小児性的虐待が行われているケースが非常に高い。

 性的虐待を受けた子供は自分が悪いのだと責めることが多く、誰にも相談しないことが多いため、水面下に隠れているケースもかなりあると見られている。

 また、近親相姦の加害者は、一般人には理解できない異常な精神を持つ悪魔のような人間だと定義づけられることが多いが、しかし、乳児期に離れ離れになった親子が長い年月を経て再開したときに惹かれあい性的関係を持つことは「ジェネティック・セクシュアル・アトラクション」と呼ばれる現象によるものであり、仕方ないのだと主張する者がいる。


■息子との情事に溺れまくった母親・ミスティ

 2012年にカリフォルニア州の静かな田舎町ユカイアで近親相姦の現場を押さえられ逮捕された32歳のミスティ・レベッカ・アトキンソンも、15年ぶりに再会した16歳の息子と性の快楽に溺れるようになったのは「ジェネティック・セクシュアル・アトラクション」が原因だったのだから仕方ないと主張。世間を唖然とさせた1人だった。

 ロックバンドのグルーピーのようなイケイケおばさん的風貌のミスティは、16歳で男児を出産。その息子が2歳のときに子育てを放棄し、以来、一度も面会することなく離れ離れに暮らしていた。アメリカでは子どもの親権は両親が共同で持つことが多いが、彼女の息子の親権は100%父親が取得。ミスティが親権を取り戻そうとしたり、子育てに関わろうと努力したことはなかったようで、Facebookに掲載された彼女の自撮り写真を見ると、これまで自由気ままに奔放的に生きてきたのだろうなと察することができる。

■きっかけはFacebook


 そんなミスティが息子に興味を持つようになったのは2011年半ばのこと。何気なくインターネットで息子の名を検索したところ、彼のFacebookのページにたどり着くことができたのだ。ミスティは初め、軽い気持ちで「わたしがママよ」とコンタクトしたものと思われるが、メッセージを交換するうちに2人の気持ちは盛り上がり、9月には電話で話すように。それから間もなくして実際に会いセックスをする仲になって、2人の禁断の秘め事が発覚したのは2011年10月のこと。当時、カリフォルニア州ナパ郡在住していた息子の親族が、少年がFacebookでミスティーといやらしいメッセージを送りあっていることに気がついたのがきっかけだった。


■母親に狂う息子

 親族から、「少年が赤ん坊の頃から離れ離れとなっていた生みの母親と、Facebookで不適切なメッセージを送りあっている」と通報を受けた警察はただちに調査を開始。息子のとんでもない逢瀬を知った父親は、ミスティと引き離すため少年をメンドシーノ郡ユカイアに住む父方の祖母の元に移動させ、ミスティが息子に近づけないよう12月には裁判所から接近禁止命令を取得した。

 だが、母親とのセックスにどっぷりとはまり抜け出せなくなっていた息子は、ミスティと離そうとする父親や親族に激怒し大暴れ。携帯電話でミスティに連絡を取り続け、祖母の目を盗み家を抜け出してはモーテルにしけこみ母親との肉情に溺れた。2012年2月に警察の事情聴取を受けた祖母は、「少年が手に負えない」と困り果た表情を浮かべていたと伝えられている。

 警察はその後、息子の携帯電話を調べ、保存ファイルの中に2月3日と2月4日付けで撮影された「ミスティが息子のいちもつを舐めまくるフェラチオ動画」「ミスティが息子と性器を交えるセックス動画」を発見。動画のほかにも、大量に保存されたミスティの写真が見つかった。ほかにも、ミスティから送られた挑発的なエロい自撮り写真が添付された電子メールも見つかり、警察はミスティを近親相姦罪で逮捕する令状をとった。


■殺人まで計画した2人

 3月2日、ミスティはカリフォルニア州メンドシーノ郡ユカイアにあるモーテルの一室で息子と一緒にいるところを、警察に乗り込まれ逮捕。近親相姦罪、未成年者へのオーラルセックス行為、未成年への猥褻行為、未成年への猥褻物の配付の4つの重罪容疑で起訴された。保釈金が20万ドル(約2000万円)に設定された同月9日の予備審問でミスティは無実を主張。

 しかし、5月に行われた審問で彼女は4つの重罪全ての容疑を認めた。証拠は出揃っていたし、父親が怒りを露にしながら、

「息子とコンタクトを取り始めたミスティは、母、息子の関係ではなく、カノジョ、カレシの関係を結ぶことを選んだ。盛り上がった2人は、邪魔者である自分(父親)を殺害し、ミスティが同棲している交際相手も殺そうと話すようになっていた。彼女は息子に裸体の写真を送り誘惑したのだ。こんな関係は直ちに止めなければならない。ミスティにも息子にもそう言ったのだが、2人とも無視し連絡を取り続けた。不健全この上ない。2人は引き離さなければならない」

 と証言しており、言い逃れられなかったからである。2人が駆け落ちようと計画していたことも明かされてしまい、このままだと、殺人を企てた、未成年を殺人者にしようとそそのかしたなど、さらに重い罪に問われる可能性も出てくるため、ミスティは潔く容疑を認めることで刑を下げてもらう道を選んだのだ。

 この申し立ては認められ、6月21日に下された判決でミスティは禁錮4年8ヶ月に処された。自分が近親相姦したという罪を認めたミスティだが、往生際は悪く裁判官に向かって、

「近親相姦で起訴されることは適切ではないと感じています。長い間、離れ離れになっていた血縁関係者が再会したとき、50%の確率で“ジェネティック・セクシュアル・アトラクション”が起こりますが、わたしもこのとてもパワフルな現象に見舞われたからです」と主張。世間から「気持ち悪い母親」だとバッシングを受けた。なお、自分を産んでくれた母親だと知りながらセックスをし続けた息子に対しても、「16歳とはいえ、母親と肉体関係を結ぶことが良いか悪いかは分かるだろう」と批難する声が上がった。

 減刑してもらうため近親相姦の罪を認めたが、反省の色はないミスティ。刑務所での素行が良ければたった2年4カ月で仮出所できるため、再びインターネットで息子を探し肉体交渉に誘い込む可能性は高い。「ジェネティック・セクシュアル・アトラクション」を免罪符のように掲げる彼女だが、もしまた同じ過ちを犯した場合には重い罰が科せられることになるだろうと見られている。


40. 中川隆[2737] koaQ7Jey 2016年6月04日 14:18:50 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[3009]


実の息子と恋人同士を暴露した母親に15年の刑期も。全英を驚かせたニュース! 2016.04.10


今、全英で話題になっているのがイギリス人母と息子の許されぬ恋愛事件。

ロシアや中国、スペイン、ブラジルなど実は近親相姦は合意であれば違法ではないとしている国も意外に多く、アメリカでは州によりその法律は異なります。筆者の住むイギリスでは近親相姦は立派な犯罪です。

先日のショッキングな新聞の見出し
出典 http://www.dailymail.co.uk

そんなイギリスで、今大きくニュースになっているのが実の息子との恋愛をメディアに暴露した母子。キム・ウエスト(51歳)は30年前に産んだ息子、ベンを事情により養子に出しました。以来二人は音信不通に。

ところが、2013年に突然ベンがキムに連絡を取って来たのです。19歳の時に米カリフォルニアで当時の恋人との間にベンを妊娠・出産したキムは、成人になったベンと再会したのですが、30年という年月は二人の間に「親子」の感情を生むには長過ぎたようです。


51歳の母キムと32歳のベンは恋人関係に


再会したキムとベンの間には世間がいうところの「モラル」は存在しなかったようです。ただ惹かれ合った二人は恋人として暮らしていくことに。ところが実はベンは既婚者だったのです。そして驚くべきことに実母との恋愛のために、妻と別れたのです。

更にはキムが「ベンとの子供を欲しいと思っている」とメディアに発言したことでも世間を驚かせています。


現在、アメリカのミシガン州に住んでいる二人。この州では、近親相姦にある程度の理解はあるものの、万が一周りの誰かがその行為を犯罪と認めて通報すれば警察が動き、キムは近親相姦罪で15年間服役する可能性もあるということだそう。
http://spotlight-media.jp/article/267996474290725178


41. 中川隆[-12212] koaQ7Jey 2020年6月28日 08:35:50 : rhl6twI2q6 : a3kzajdjUUsxVXM=[2] 報告

ホラー漫画家・楳図かずお(83)赤白の「まことちゃんハウス」が庭木伸び放題で廃墟寸前? 本人は……
「文春オンライン」特集班 2020/06/28

「雑草が背丈まで生い茂り、庭木は荒れ果てて、道路から建物の外観はほとんど見えません。以前は散歩する楳図さんとすれ違いましたが、最近は見掛けない。コロナのこともあって心配しています」(近所の女性住人)

 東京でも有数の人気を誇る住宅街・吉祥寺の閑静な一角に建つ、三角屋根の赤と白のボーダー柄の洋風建築。所有者はギャグ漫画「まことちゃん」、ホラーSF漫画「漂流教室」などの代表作で知られる漫画家、楳図かずお氏(83)だ。

© 文春オンライン “まことちゃんハウス”の家主・楳図かずお氏 ©文藝春秋

13年前の“まことちゃんハウス”騒動

 楳図氏といえば、その作品が漫画界に止まらない幅広いクリエーターに影響を与えるなど、業界の“レジェンド”とされる一人。赤白のボーダー柄のTシャツがトレードマークの楳図氏のユニークなキャラクターは、テレビのバラエティ番組でも人気だった。

 そんな楳図氏がニュースやワイドショーで大きな注目を浴びたのが、この自宅の建築を巡る騒動だった。建築当時に取材したスポーツ紙デスクが振り返る。

「吉祥寺の自宅、通称 “まことちゃんハウス”が話題になったのは13年前の2007年7月のこと。当時建築中だった赤と白のボーダー柄を外壁に施した自宅に対して、近隣住人から『周囲の景観を無視した奇っ怪な建物』『色彩の暴力』などとして、建築工事差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てたのです。この騒動は連日大きく報じられて、いつしか観光地化し、まことちゃんハウス前で記念撮影する人が絶えなかった」

 この建築工事差し止めの仮処分申し立てについて、東京地裁は近隣住民の訴えを却下。さらに楳図さんは、近隣住民から赤白のボーダー柄の外壁撤去を求めた民事訴訟を起こされ、これにも09年1月に勝訴している。

 赤白のボーダー柄について、法廷で「赤は元気で生きてる印、白は無垢で何にもないという余白。ストライプはまとまって見せて、エネルギーを感じさせてくれる」と語っていた楳図氏。2年を要した裁判後には、「近隣住人との関係は、時間が解決してくれると思う」とも打ち明けていた。


荒れ果ててしまった豪邸

 しかし今や、その家に楳図氏が姿を現さないばかりか、荒れ果てているという。屋根にある、あの"グワシ"のポーズの「まことちゃん像」が目印の建物は、いまどうなっているのか。

 確認のため取材班が現場へ向かうと、「まことちゃんハウス」は事前の情報の通り、雑草で覆われ、完成当初の面影はなかった。ライトやセキュリティ関係は作動しているようだが、玄関にアプローチする通路や階段は何年も人が通った形跡がないように見える荒れ具合だ。

「昨年からずっと手付かずのままで、庭は草が伸び放題。石畳や石垣は埋もれてしまっています。庭の木々は道路側まで広がり、落ち葉も歩道に落ちたまま。高齢者が多い地域なので避けて歩かなければならない状況です。もはやあの家が楳図さんの家だと気づく人は少ない。周辺はお屋敷街で庭の手入れも行き届いた家ばかりですから、別の意味で目立っています」(地域住民)

楳図氏に直接、真意を尋ねると……

 楳図さんの近況について、スポーツ紙記者が解説する。

「昨年も、漫画家としての活動が評価されて文化庁長官表彰を受けています。漫画のグッズも人気でいまでも定期的に楳図先生監修のキャラクターグッズが発売されていますが、最近はテレビでの露出は減りましたね」

 6月中旬の夕方、「まことちゃんハウス」から徒歩数分の距離にある楳図氏の自宅兼事務所マンション近くで見覚えのある赤と白のボーダー柄の服で歩くマスク姿の楳図氏を発見。話を聞いた。

――「まことちゃんハウス」が草木で埋もれてしまって、廃墟のようになっていますが、どうされたんですか?

「あの辺りに近づくだけで、ゾッとするんで行ってないんです。前まではお掃除しに毎日行っていたんですけど、最後にあの家に行ったのはいつだろう……去年ですね。台風でシンボルにしていたモミの木が倒れちゃったんですよ。庭師の方に引き取ってもらって、それから気分的に行かなくなりました。もう1年近く行ってないですね。前にも近所の人から『木を切っていいですか』と聞かれたので、『どうぞ、お好きなように』という感じです」

――「まことちゃんハウス」が完成して10年以上が経ちますが、どのくらい住まれたんですか?

「最初の頃に4、5日くらいいたかもしれませんけど、あそこに行くこと自体嫌なんです。庭の手入れは最初の頃からいろいろな庭師の方や業者にもお願いしていたのですが、いまはくたびれてしまったんです」

 近隣住人との裁判沙汰が、10年以上の時を経ても楳図氏のトラウマとなっているようだ。

「まことちゃんハウス」の意外な用途

 30年以上前から吉祥寺に居を構えている楳図氏は、自宅兼事務所マンションのほかに八王子に一戸建て、八ヶ岳に別荘も所有しているという。そもそも楳図氏曰く、「まことちゃんハウス」は自宅ではなく、来賓を迎える“ゲストハウス”だったと打ち明ける。

「建物の基本って、僕はギリシャにあると思うんです。僕のお家(まことちゃんハウス)の玄関も半円形の屋根を4本の円柱が支えている。だけど近所の人にしたら、“派手”か“地味”の二択で、『派手だから悪い』となってしまった。

 以前は、『外国に向けて日本を背負っている』という気も半分くらいあった。それで、あの家は“見栄え優先”で、外国から来た大事なお客さんとかをご招待して、あそこで応対したりしていました。インタビューとかの仕事もあの家で受けたりしていました。けど、今は(事務所のような)貧相な所で受けても理解してもらえるので」

 すでに楳図氏の中では「まことちゃんハウス」は、過去のものになっているようだ。現在、マンションで一人暮らしの楳図氏だが、コロナ禍ではどのような生活をしていたのだろうか。

「僕、基本的に病院というのは行ったことがないんですね。前に転んで頭を打ったときにお医者さんから悪いところは何もありませんと言われまして、元気です。ひとりで身の回りのこと、お仕事、(事務的な)連絡、すべてやっています。ここ何年もテレビは見てないですね。ラジオで外国語の勉強を30年くらいしています」

――今後「まことちゃんハウス」を手放す可能性はありますか?

「家を買うのは簡単だけど、売るのは面倒くさいんですよ。僕の気持ちは今、あの家にはなくて、あの家は今、眠っています。ただ、僕はまだ隠居しているつもりはないですよ。今はまだ言えませんが、皆さんがびっくりするようなことが年末に公表されると思うので、楽しみにしていてください。(近々「まことちゃんハウス」に行く予定は?)ないです」

 近所の住人が語る。

「吉祥寺には、水島新司さん(『ドカベン』)、原哲夫さん(『北斗の拳』)ら日本を代表する多くの漫画家が住んでいて、以前は楳図さんのファンと思われる外国人の方たちをたくさん見かけて、カメラ片手にあの家(まことちゃんハウス)を熱心に見ていました。楳図さんは地元の宝ですが、観光客やファンが今のまことちゃんハウスを見たら、少し複雑な気持ちになるかもしれません」

 取材を終えて立ち去るとき、建物に立つまことちゃんの表情がどこか寂しそうに見えた。主が戻る日はくるのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/ホラー漫画家-楳図かずお-83-赤白の-まことちゃんハウス-が庭木伸び放題で廃墟寸前-本人は/ar-BB162MRO?ocid=ientp

42. 中川隆[-15905] koaQ7Jey 2021年10月22日 16:01:43 : rwUVP6iK1U : akZLN1hRRkZzZms=[6] 報告
2021.10.22
今こそ漂流教室を
https://golden-tamatama.com/blog-entry-hyoryukyoshitsu2021.html


ヒャッハー!

ところで皆さん漂流教室という作品知ってるでしょうか。

楳図かずお氏原作の漫画ですね。

この作品は今まで、何度も映画やドラマ化されてます。


生徒達が荒廃した未来にタイムスリップする話。

いや、もうワタスは漂流教室の大ファンなのですた。

なぜかって、この作品はワタスが伝えたいメッセージそのまんまを凝縮されてるから。

以下は、もうかれこれ20年前にドラマ化された作品です。

窪塚洋介さん常盤貴子さん主演 ロングラブレター・漂流教室。
youtubeに全編がアップされてるので絶対見るべし。
見るとハマる。

第1話





2話 3話 4話 5話 6話  7話 8話 9話 10話 11話
https://www.youtube.com/results?search_query=%E6%BC%82%E6%B5%81%E6%95%99%E5%AE%A4+%E8%A9%B1%E3%83%95%E3%83%AB++Yuu+LAchannel


このドラマは横浜の高校の生徒と教師の話です。

ある日、突然、大きな地震が起きる。
そして気づくと、高校だけを残し、周りの建物がすべて消え、辺りは砂と岩で覆われた世界になってしまうのでした。

何が起きたんだ?
最初はみんな核戦争が起きたと勘違いする。

核戦争で回りの建物がすべて吹っ飛び、自分たちだけが生き残ったと勘違いしたのです。

そして、その日、日食が起きる。
おかしい。

ある生徒がこの日に日食なんて起きるはずがないという。

そして、砂で覆われたまわりを探し回ると電車の残骸を見つける。
でも、その形は今の時代にはない新幹線でした。

ヒカリでもコダマでもない。イノリという名前の新幹線でした。

学校に置いてあった自動車のGPSは壊れていました。
修理すると一瞬表示された年は2020年12月5日でした。

まさか。。
僕たちは未来に来てしまったのか?

核戦争と思ってたら、実は未来にタイムスリップしていた。
現代では、高校のあった場所は巨大なシンクホールになっていたのでした。


2020年12月の未来の世界は、食料もなく荒廃していました。
生徒や先生は生き延びようと必死に頑張る。

そして最後に、体が変異した新人類たちに会う。
未来では人類はまったく違う化け物のような姿に進化していたのでした。


いや、このドラマ凄すぎでしょう。

あの当時、遺伝子変異した人類を言い当ててるとは。
それも設定が2020年12月以降です。

ちなみにこのドラマのキャラと漫画は性別が逆になってますね。

IQ200の天才 我猛君は漫画では男子生徒、ドラマでは女子生徒です。

食料を独り占めして皆を困らせる関谷は、ドラマでは女性教師。


このドラマに出演したタレントは、その後みんな大物になりますた。

窪塚洋介、常盤貴子、山田孝之、山下 智久、妻夫木聡、加里奈、鈴木えみ、水川あさみ。等々。


ワタスが大ファンになったのは、
このドラマが伝えたいメッセージです。

自分達の手で環境をぶっ壊したら、未来はこうなるよ。

ドラマ中、どんどん違法産廃してる業者が出てきます。

我々のような存在がいなけりゃあんた達は綺麗で清潔な暮らしができないでしょう。

そして未来に行くと壊れたロボットが言うのです。
ようこそテクノロジーの進化した地上天国へ

砂漠化した中でその声がむなしく響く。

生徒達は言うのでした、なにが天国だ。。
自分たちの手でこんな世界を作り出してしまったのか。

ひじょーに深いドラマなのです。

なぜ、ワタスはイベント名に漂流教室と入れたかというと。

現在、過去、未来を見るタイムウェーバーなる機械もあるし。
なにより学校でやる。
そしてみんなで、電気を発電する。

いや、それよりも何よりもたった今の状況が酷似し過ぎてる。

正常な遺伝子の人類は完全な少数派になって
まわりは遺伝子組み換え人間ばかりになってしまった。

こりゃ完全に漂流教室そのまんまでしょう。

と言う訳で、当日はみんなで小学校借りて漂流教室ごっこをやるのですた。

漂流教室ファンは来るべし。
まだ見てない参加者も全編視聴してから来るべし。

とにかく漂流教室するんだ。

https://golden-tamatama.com/blog-entry-hyoryukyoshitsu2021.html
43. 2022年2月22日 18:20:59 : 8wE9VECBbI : ZUgzZGVEQkJQVlU=[11] 報告
楳図かずおが描く“人間の楽しさの根源” 展覧会の101枚の新作絵画から見える楳図作品の真髄を聞く
2022/02/21
https://www.msn.com/ja-jp/news/entertainment/e6-a5-b3-e5-9b-b3-e3-81-8b-e3-81-9a-e3-81-8a-e3-81-8c-e6-8f-8f-e3-81-8f-e2-80-9c-e4-ba-ba-e9-96-93-e3-81-ae-e6-a5-bd-e3-81-97-e3-81-95-e3-81-ae-e6-a0-b9-e6-ba-90-e2-80-9d-e5-b1-95-e8-a6-a7-e4-bc-9a-e3-81-ae101-e6-9e-9a-e3-81-ae-e6-96-b0-e4-bd-9c-e7-b5-b5-e7/ar-AAU6yif?ocid=uxbndlbing

うめず・かずお/1936年生まれ。小4から漫画を描き始め、高3のとき『別世界』『森の兄妹』を出版しデビュー。『漂流教室』で小学館漫画賞を受賞。タレントや歌手、映画監督など多ジャンルで活躍(c)楳図かずお© AERA dot. 提供 うめず・かずお/1936年生まれ。小4から漫画を描き始め、高3のとき『別世界』『森の兄妹』を出版しデビュー。『漂流教室』で小学館漫画賞を受賞。タレントや歌手、映画監督など多ジャンルで活…

 恐怖漫画のレジェンドである楳図かずおさんが、27年ぶりの新作をメインにした展覧会「楳図かずお大美術展」を開く。楳図さんに展覧会への思いを聞いた。AERA 2022年2月14日号の記事から。

*  *  *

──芸術家として初の展覧会ですね。

「僕はもともと芸術家のつもりですが、みなさんの認識は漫画家だと思うんです。漫画では一番上に上ってきたな、という自負はありますが、さらに『わたしは真悟』で、悟(さとる)と真鈴(まりん)が東京タワーのてっぺんから飛ぶイメージでもう一歩飛んでみようと、絵画に挑戦しました」

──27年ぶりの新作に取りかかったきっかけは?

「はたと『あ、やらなきゃ!』と思った瞬間がありました。2018年にフランスのアングレーム国際漫画祭で、『わたしは真悟』が賞をいただいたことも理由のひとつです。それから4年間、じっと描き続けました」

──なぜ101枚の絵画という方法を選んだのでしょう?

「漫画でも絵画でもない、新しい表現を目指しました。創作とは常に新しいことをやらないと意味がないと思うんです。今回は漫画と絵画、両方のいいところを取り入れてみようと。漫画というものは連続体なんです。つなぎの芸術。コマが続いていってストーリーになっていく。いっぽう絵画は単体の芸術で、ひとつひとつがクライマックスです。今回の101枚の作品はつながってもいるけれど、ひとつを取り出してみても『クライマックスだな』とも思えるように描きました。それに額縁にも注目してください。僕の好きな緑と赤を使って、かなり大胆だと思います。僕は額縁も芸術の一部と捉えているんです」

──絵画制作のおもしろさはどんなところにありますか?

「コピーや印刷物ではなかなか表現しにくい、金や銀の色を使いたかったんです。普段なかなか使わない色なので、絵の具や色の楽しさをとても感じながら描きました。絵を描いているとすごく心が落ち着くんです。精神を整える作業には写経などもあるけれど、絵を描くことにも同じ効果があると感じました。奇麗な色に触れて、それだけで別の世界に入っていく気がする。特に『オペラ』という名前のきれいなピンク色が素晴らしくて、絵のなかの女の子のスカートをみんなそれで塗りました」

──楳図作品は決して古びることがありません。未来を予見するような世界観があり、いつの時代でも、子どもでも大人でも楽しむことができます。

「それはですね、何を描こうかと思った時に、人間が持っている一番根源的なところを描こうと思って描いているので、どの時代にもあまりぶれがないのだと思います。絵画、というと堅苦しく聞こえるかもしれないけれど、スリルやサスペンス、ドキドキや恐怖や不安──。そうした“楽しさの根源”もしっかり描きましたので、その世界に入り込んでさまざまを感じてもらいたいです。自信満々の展覧会ができたのでゆっくり楽しんでください」(オープニングセレモニーで)

(フリーランス記者・中村千晶)

※AERA 2022年2月21日号

44. 2022年2月22日 18:25:11 : 8wE9VECBbI : ZUgzZGVEQkJQVlU=[14] 報告
楳図かずおさん 27年ぶりの新作で描いた“人類の未来とは”
2022.01.31
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2022/01/story/story_220131/


「ぐわし!!」

インタビューは、このことばから始まった。

「漂流教室」や「わたしは真悟」など、ホラーやSFを中心に数多くの名作を生み出してきた、漫画家の楳図かずおさん。
1995年以降、漫画の創作からは遠ざかっていたが、ことし1月、27年ぶりとなる新作を発表。それも漫画ではなく、101点の連作絵画という初めての試みだった。
85歳にして新しい表現の形に挑んだ楳図さんに、その思いを聞いた。

「ホラーまんがの神様」 休筆の理由は・・・

「へび少女」や「おろち」などのヒット作を手がけ、ホラー漫画の第一人者として活躍を続けてきた、楳図かずおさん。

手がけるテーマは、ホラーにとどまらず、「まことちゃん」に代表されるギャグ漫画、そして「漂流教室」や「14歳」といったSFなど、ストーリーテラーとしての類いまれな才能で数々のヒット作を生み出した。

しかし1995年以降は新作の発表はなく、漫画の創作からは長らく遠ざかっていた。

それから四半世紀、楳図さんが27年ぶりに新作を発表するというニュースが去年の秋に報じられ、漫画界のみならず注目が集まった。

楳図かずおさん
新作の発表を前に、楳図さんがインタビュー取材に応じてくれた。

「こんにちはー、よろしくお願いしまーす。ぐわし!!」

赤と白のおなじみの服装を身にまとった楳図さんは、声や姿も以前とほとんど変わらず、85歳とは思えないほど、エネルギーに満ちあふれていた。

まず尋ねたのは、27年もの間、創作から離れていた理由について。

当時は手のけんしょう炎が原因だとされていたが、実はそれだけではなかったことを明かしてくれた。
「ずっと漫画書いていても評価も何もなく、褒められることって全然なくて、『もう怖い漫画はないと思う』とか言われたこともありました。それだったら残っていても悪いし、面白くも何もないので、それでやめちゃったんです。ちょうどそのころ60歳ぐらいで、本当は70歳ぐらいまで書こうかなと思ったんですが、それでも残念とかそういう気持ちはなくて、単純に切り替えだけで、『さあ、あとは今までやってなかったようなことをしよう』と考えを変えました」
世界で高まる評価が後押しに

2018年 アングレーム国際漫画祭で遺産賞に
作品に対する評価に納得できず、漫画の創作から離れた楳図さんは、その後、テレビのバラエティー番組に出演したり、映画監督を務めたりするなど、新しいジャンルに活動の幅を広げていった。
私生活でも、英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語の勉強を始めるなど、これまでできなかったことに積極的に打ち込んでいったという。

そんな中、楳図さんの気持ちを揺り動かす出来事があった。

2018年、「漫画界のカンヌ」とも呼ばれる「アングレーム国際漫画祭」で、楳図さんの代表作「わたしは真悟」が、「永久に残すべき作品」として「遺産賞」を受賞したのだ。
日本人では水木しげるさんらに次ぐ、3人目の快挙だった。

思いがけない世界からの評価は、再び創作の場へと向かわせる原動力となったと振り返る。
「それまで(国際的な)賞なんて考えたこともなくて、どこからも、何ももらったことなかったので、だから嬉しかったですね。それで『あ、描くわ』となったんです。だから新作は日本で見ていただくだけじゃなく外国の人に見ていただきたいっていうのが大きいですね。(アングレームのある)フランスだったら、ルーブル美術館に飾ってもらって見てもらいたい」
漫画の価値を高めるための「連作絵画」

創作の意欲を取り戻した楳図さんが4年がかりで完成させたのは、紙の漫画ではなく、101点の連作絵画だった。縦40センチ・横30センチほどの紙に、絵を鉛筆で素描し、その上にアクリル絵具で着色して描かれた作品。

新作の1点 ©楳図かずお
1点で独立した絵画として鑑賞できるだけでなく、作品を順番に観ていくことで、漫画のコマを読み進めるようにストーリーを楽しむこともできる。まさに漫画と絵画の長所を兼ね備えた、新しい表現の形だ。
「漫画っていうのはコマが多くて、ある意味『つなぎの芸術』なんですね。でもつなぎだけで終わっちゃって、しょうもない漫画もいっぱいある。ここで何が抜けてるかっていったら、クライマックスなんですね。一方で絵画はクライマックスしかない。だから僕が今回描いたのはつなぎがない、やにわにクライマックスが来ちゃう、連作絵画なんです。
漫画っていうすばらしいメディアをもっと格調高く持っていかないとイヤだなっていう思いがあったので、漫画の良さもあるし絵画の良さもある、どちらの面から見ても『これはすごい』って言ってもらえるものを作らなきゃと思って描きました」
「壊れてしまう前に戻ろうよ」

代表作「わたしは真悟」
今回の連作絵画で描いた物語は、世界でも評価された代表作、「わたしは真悟」の続編だ。
「わたしは真悟」では、自我が芽生えた産業用ロボットがネットワークを通じて進化していく姿を描くことで、デジタル化していく社会に警鐘を鳴らし、人間とは何かを問いかけた。

新作の展覧会 ©楳図かずお
新作は、人類が滅び、ロボットだけになってしまった未来が舞台。

現代の人間が、競争ばかりに目を向けて「進化」を続けていることに危機感を感じているという楳図さん。

いま、人間はあえて退化する必要性があるのではないかといいます。

新作の1点 ©楳図かずお
「今の世の中見ていて、競争競争で、あっちより先にこっちだという競争みたいなのが主流になっている気がして、そこ怖いですよね。それだったら、退化をしましょう、進化してどんどんいっちゃってあふれてしまって壊れてしまう前に元に戻りましょうよ、もうちょっと忘れてしまってもいいから戻ろうよ、と言いたいんですね」

作品を読み進めることで、「わたしは真悟」との関係性が明らかになるという仕掛けも施されている今作。楳図さんは、「わたしは真悟」で描いた世界観は、決して過去のものではないという。
「今に通じるリアリティーはあるので、過去にやっていたからおしまい、とはとられたくない。未来から見て、過去っていったら厳然たる原因を作っているもので、それが未来に影響を及ぼしてるっていう揺るがせない存在としてそこにある。そういう意味でも、今回の作品を作った意義というか、大きな価値があると思っています。新しいパターンで面白いと思ってもらえるぐらいに、スリルサスペンスに満ちた、見始めたら終いまで見ないと気が済まない状況に絶対になると思う。これは僕、物書きの感覚からいって間違いないんです」
「圧倒的」「ここまで天才だったのか」

新作の展覧会 ©楳図かずお
1月27日、関係者向けの内覧会で、101点の作品が初めて披露された。

作品を鑑賞し終えた出席者の様子を見ると、興奮した面持ちを浮かべる人あり、作品に圧倒されてぼう然としている人あり、さらに目に涙を浮かべる人までいた。

第一線で活躍する漫画家らからも、驚きと称賛の声が聞かれた。
(楳図さんの元アシスタント/「土竜の唄」作者・高橋のぼるさん)
「圧倒されてしまいました。もう涙が出そうなほどに感動していて、ここまで天才だったのかって驚いています。27年のブランクを感じないどころか、むしろパワーアップしているように思いました」

(ホラー漫画家/「うずまき」作者・伊藤潤二さん)
「時代を超越してますし、楳図先生そのものが宇宙的な存在なんじゃないかという、何かすごみを感じますね。年齢を全く感じさせない力強いタッチで、ぜひ生で見てもらいたい作品です」

(ホラー漫画家で楳図さんの長年のファン/山咲トオルさん)
「『わたしは真悟』の物語がちゃんと継続してつながっているんだっていうことにまず驚きましたし、パーフェクトな色の配置にも圧倒されました。ようやく漫画が文化として世界に認められてこうやって発信された楳図先生の作品なので、実際に見て感じてもらいたいです」

(楳図さんの長年のファン/中川翔子さん)
「漫画のエッセンスもありながら、これまでの作品を彷彿とさせるテーマで、それが全部カラーで見られるのは大感動。見る角度によって違った輝きが楽しめます。世界中の全人類早く見て!という感じです」
「さらに大波が来る」

漫画家として、そしてアーティストとして、85歳にして新境地を切り開いた楳図さん。
現在の肩書きは何か聞いたところ、「『大芸術家』がいいですね。『大』をつけるとちょっと嘘っぽくなるからそこがいいな」と笑って答えてくれた。

「大芸術家」として、今後、どんな創作が見られるのだろうか。
「すごい強烈なアイデアは一つあるけど、思っているだけで具体性は全然なくて、それは描くか描かないか分からない。ただ僕は間違いなくこのあと、今回だって大波だと思うけど、もう一個さらに大波が来る予感があるんです。たわいのない言い方で申し訳ないけど、僕前々からすごく運がいいんです。今回もめちゃくちゃいい運いただいているんですけど、まだ大きいのが僕の運の中で来る気がするんです。だから今後のことは何するというよりかは今後の成り行きをぜひ楽しみたいって、そこにつきますね。今後の抱負は何をするということはないけど、『負けないぞー!』という感じ。それしかないですね」
漫画や芸術について語る楳図さんは、85歳という年齢を感じさせず、まるで少年のように生き生きと目を輝かせ、これからの未来に向けた期待に満ちあふれていた。

そんな楳図さんの姿、そして、これからも生み出される作品たちは、コロナ禍で閉塞感に包まれたこの世界を、私たちを、きっと勇気づけてくれるに違いない。
この展覧会「楳図かずお大美術展」は、3月25日まで東京シティビューで開かれています。(事前予約制)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2022/01/story/story_220131/

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