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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 4章 構造改革のための二五のプログラム
http://www.asyura2.com/09/senkyo68/msg/1073.html
投稿者 たけしくん 日時 2009 年 8 月 27 日 20:44:49: IjE7a7tISZsr6
 

(回答先: 日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 3章 公共事業という名の収奪システム 投稿者 たけしくん 日時 2009 年 8 月 27 日 20:43:13)

日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569614140/asyuracom-22


第四章 構造改革のための二五のプログラム

第一節 官企業の全廃がもたらす経済の覚醒

プログラム一 既得権益と闘う国民政権をつくる

 これまで三つの章にわたって、わが国を危機に陥れている「官制経済体制」
 の現状と問題点を述べてきた。本書の末尾となるこの章では、こうした現状
を変革するための具体的な処方箋を二五のプログラムとして示したい。

 今日の、わが国に根付いている「官制経済システム」とは、経済に対する政
治・行政権力の支配であり、その意味で一種の社会主義体制である。こうした
体制においては市場の競争原理は抹殺され、価値の創出は減殺され、資本の拡
大再生産機能が失われる。一定の経済水準に達した社会における社会主義は極
めて危険である。それはソ連邦の崩壊や東欧社会主義諸国の末期において、す
でに実証されている。経済は市場と不可分なのだ。今日わが国において市場経
済を樹立するには、体制の変革が必須である。体制変革とは、すなわち革命で
ある。

 わが国の官制経済体制には政官権力の利益と既得権が貫徹している。さまざ
まな制度や、意識、社会システムがそれを支えている。こうした既得権の集大
成を打破するためには、ある程度の社会的混乱は避けられない。社会的混乱は
二つの要因から起こる可能性がある。一つは、既得権益に依拠する勢力とその
犠牲になってきた民間企業や勤労者との対立からだ。もう一つは、補助金団体
や天下り団体、そのファミリー企業において多数の失職者が出現することから
だ。こうした事態に対処し、改革を成功させるためには、民主的で強力なイニ
シアティブが不可欠である。

 したがって、真の構造改革の断行を可能にするには、総選挙において改革の
プログラムを明確に問い、政治責任を明示した公約を掲げ、四年間の信任を得
た、強力で有能な国民政権の樹立が必要になる。

 この政権がつくるプログラムは、三年間で国家の基本的モデルチェンジを断
行し、変革の成果を得なければならない。そして、遅くとも五年後には経済の
快調な走りを実現することに責任を持たなければならない。

 小泉内閣は国民の熱狂的な支持を受け、平成二二年の参議院選挙で勝利し
た。しかし、それは単に、従来の政治に対する幻滅が期待となった人気に基づ
くもので、構造改革のプログラムを明示して国民に選択を求めたものではな
い。

 小泉氏に真の構造改革を断行する決意があるならば、彼は改めて早急に国民
が確信を持てる改革プログラムを提示し、そのための体制を確立すべきであ
る。さもなくば新たな革命的政権にとって替わる必要がある。


プログラム二 すべての特殊法人廃止を急ぐ

 特殊法人は廃止すべきである。この場合、特殊法人という組織のあり方の問
題と、それぞれの特殊法人・認可法人が行っている事業内容の問題がある。存
在のあり方、すなわち、特殊法人という組織形態は無条件に廃止しなければな
らない。その理由は第二章で述べたように、わが国の法体系に矛盾する不当な
存在だからである。事業内容については、特殊法人・認可法人は主として民間
が行うべき活動を行っているので、この観点からも原則的に廃止しなければな
らない。

 ただし、廃止の時期、方法などは、それぞれの特殊法人がかかえている借金
の整理、特恵的な法制、税制、政策との関係で異なってくる。

 また、各特殊法人とも多数の“事業”に進出しているが、それらの“事業”
のなかには基礎科学研究分野などで優れた人材を有しているものもある。この
ような、経済活動以外の分野での人材や技術は大学などに吸収する手立てが必
要であろう。逆に、福祉や教育、環境など、耳あたりよい領域に進出して融資
事業を行っている特殊法人もあるが、これらの仕事は直接国が予算をつけるべ
きものか、または民間がやるべきものか、どちらかであるから、一律に廃止す
ればよい。

 特殊法人改革を進めるにあたっての基本原則は次の二つである。


一、経済活動に属する事業・組織はすべて廃止すること。

 小泉首相の言う「民間にできることは民間に」は間違っている。このような
ことをいっていては、またしても、(政府系金融機関が実施している)長期固
定低金利の大量資金融資などは「制度上民間にはできない」ということにな
り、存続されてしまう。必要なのは福祉、教育、医療、治安、防衛といった行
政の事務以外は「すべて民間がやるべき」と宣明することである。特殊法人な
どが行っているさまざまな事業のうち、経済分野のものは自然と市場の論理で
民間に吸収されるであろうし、行政が担うべきものは国と地方の行政機関が予
算の許す範囲でやればよい。


二、特殊法人の民営化(株式会社化) は原則として行うべきではない。

 国の金と権力で巨大化し経済を侵蝕した独占企業を民営化することは、決し
て経済全体にとって好ましいことではないばかりか、政治・行政のモラルを踏
みはずす。そもそも彼らは政府による法的、政策的、財政的後ろ盾(だて)が
あって、はじめて存在できる組織であるから、民間の水にはなじまない。民営
化があり得るのは、基幹的社会資本整備部内で類似のものが民間にない企業体
だけであろう。NTT、JRが民営化された今日、残るは道路関係の公団ぐらいし
かない。

プログラム三 高速道の建設を凍結する

 以上の原則に基づいて特殊法人を具体的にどう改革するか。小泉内閣の特殊
法人改革で最大の問題になっている道路四公団の問題から始めよう。

 この間題を考えるには、わが国の道路行政が完全に行き詰まっているという
認識を明確にする必要がある。わが国にはトータルな交通運輸政策がなく、狭
い島国で旧運輸省は空港、港湾、新幹線を、旧建設省は高速道路などを、それ
ぞれ局ごとに作れ作れでやってきた。その結果、港湾は一〇九三、空港は一〇
〇ヵ所、新幹線は現在工事中を含め総延長二四六五キロメートル、高速道路は
六六〇〇キロメートルとなったが、ごく少数の路線、施設を除いては、すべて
不採算の状態で、各省庁の利用予測は他の公共事業と同様、大きく狂ってい
る。

 これを抜本的に改革するには、まず、国土全体の将来像を作り、その中で交
通機関全体の有機的、機能的組み合わせに自然環境、経済・社会のあり方を長
期的に考慮した「国土と交通のあり方」の基本構想を策定することが必要だ。
そして、建設は、原則として政府自らが指揮をとったり金を出したりするので
はなく、市場経済と社会が必要な限りにおいて建設、維持することにする。

 こうした原則にたって高速道路建設計画を全面的に見直し、向こう二〇年間
の建設凍結(モラトリアム)を決定するのだ。なぜなら、今後大きな需要の増
加は見込めないし、これ以上、自然環境、生活環境を犠牲にすることはできな
いからだ。さらに高速道路を造り続ければ、社会資本としての経済性が失われ
るばかりか、マクロの社会・経済生活にコスト高というマイナス効果をもたら
す。とくに、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神道路公団、本四連絡橋公
団、アクアラインなどは財政破綻を来している。このまま放置すれば悲劇的事
態に至るのは明白である。

プログラム四 日本道路公団の借金は二〇年で償却する

 日本道路公団については民営化せよとの意見もあるが、性急な民営化論は正
しくない。なぜなら、公団には多額の料金収入が入ってくるため、新規建設を
止め利権による収奪システムを再編しさえすれば、国民の大きな負担で作られ
た、この道路という資産は将来(孫子の世代ではあるが)日本経済に貢献する
ことができるからである。

 近い将来の民営化となれば、二七兆円(平成一三年現在)もの借金を引き受
ける民間組織はあり得ないから結局、国鉄清算事業団方式のように、いったん
別枠の、名実ともに国民の借金の形に付け替え計上せざるを得ない。民営化さ
れた会社の「株」は、現状ではマイナス評価だから全額政府保有となる。これ
では、いずれにしても民営化とはいえないし、特殊法人廃止の趣旨とも矛盾す
る。

 しかも、形式上の経営形態が株式会社となれば、経営方針、経理、財務状況
について、原則的に国会は口を出せない。法令で経営・経理の内容を規制する
ことは構造改革の趣旨にも反する。

 これでは、最終的に二七兆円を国民の負担にされた国鉄の轍を踏むことにな
りかねない。また、現状では採算のとれる路線は東名、東北道、名神などに限
られているので、経営の分割は極めて困難であるし、一方、基幹道路となった
多くの不採算路線を営利的観点からのみ捉えることにも問題が出よう。結論的
に、日本道路公団の民営化は一五年早いのだ。

 では、国民の立場からどうしたらよいか。現状の財務状況を基に改革の方向
を探ってみよう。

 道路公団の経営は、国の補助金を除き、収入は二・二兆円(主に通行料)し
かないのに借金返済は三・三兆円という、恐るべき“サラ金地獄”状態にあ
る。にもかかわらず、厚かましくも約三兆円の新たな借金をして道路を作って
いる。別の言い方をすれば、収入をまるまる充てて新規道路を造り、借金返済
のために借金をし、それでも足りない返済部分に税金を注ぎ込んでいるのだ。

 この“地獄”状態から脱出する途は、一刻も早く日本道路公団を廃止し、財
務省の直接管理とし、同時に新規道路建設を全面ストップすることから始めな
ければならない。財務省の直接管理となる新「組織」の仕事は、借金返済と既
存道路の維持・管理だ。

 返済すべき借金額は年間で三・三兆円もあるが、これは次のような方法で捻
出できる。すなわち、まずは料金収入などの二・二兆円。次に公団ファミリー
の道路サービス機構、ハイウェイ交流センターの両財団法人等を廃止し、彼ら
が独占している収益事業を直接管理することによって四〇〇〇〜五〇〇〇億円
の収益を見込む。さらに、公団が保有している遊休土地および支社等の土地資
産(購入価格二五兆円余り)の売却を行い収入を確保することも必要である。
その他、子会社・孫会社の整理などによる収入も計上できる。

 これでも完全な返済には足りないので、当分の間、七〇〇〇〜八〇〇〇億円
程度の借入金(公団債等)が必要となろう。これは当然、漸減していく。

 新規工事の中止と補修等でのファミリー企業への高額な工事発注を止め、天
下り、高額退職金の廃止、人件費の減少、管理費の軽減等によって、収支は少
なくとも年間二・六〜二・七兆円は改善されると考えられる。今後、維持・補
修事業は公正・厳格な競争入札で発注し、現在ある一四ヵ所の地方支社、七五
の工事事務所、九八の管理事務所、八ヵ所の技術事務所は大幅に縮小する。総
裁以下の高給役員はすべて不要となる。もちろん、毎年注入されてきた約三五
〇〇億円(平成二年度) の税金も必要なくなる。

プログラム五 公団のファミリー企業から資産を回収する

 さらに、第二章第三節で述べた公団ファミリー企業の不当な株売却をやり直
して資産の回収をはかり、そのうえで、(財)道路サービス機構と(財)ハイ
ウェイ交流センターを解散させることが必要である。これで一兆円から一兆数
千億円が国庫に戻ることになろう。

 以上、私が提案した抜本的改革を実行すれば、日本道路公団の借金は一五〜
二〇年間で完済の目途が立つ。この時点で、はじめて民営化を俎上に上げ得る
状態となろう。

 この際、借り入れた財投資金の返済方法については規則の変更(繰り上げ返
済の制限など)が必要となろう。また、首都高、阪神高等の改革との関連もあ
り、流動的な要素は少なくないが、おおむね改革の基本線は以上の方法以外に
ないであろう。

 日本道路公団に注ぎ込まれてきた国費(税金)は最近の一〇年間で約三兆円
であるから、民営化の際には、今後さらに投じられる国費も含め、それを上回
る株価評価が達成されるべきである。その後は、民営化してその利益からあが
る「税収」に期待するか、民営化せず年間二兆数千億円の道路収入を直接国庫
で確保する途を採るか、それとも通行料金を下げることで国民に尽くすか、選
択肢は広がる。

 大きな問題は日本道路公団がかかえている八八〇〇人の職員の雇用問題であ
る。これらの職員は、サービスエリア等の管理業務が増えるとしても、その六
割を削減すべきだ。その方法は自然減と「特別保障退職制度」のようなものを
新設して処遇する以外にない。しかし、一方では一連の真の構造改革の進展の
なかで国民の将来への不安が薄らぎ、金融や住宅建設・不動産などの分野を中
心に経済に活力が生じてくることを認識すべきである。

 一方、道路の補修・メンテナンスなどの工事を行うファミリー企業の清算・
整理後の運命については、公正な競争入札に適応する民間の生存競争が発生す
るだけである。また、現場工事業者にとってはむしろ中間搾取が減るメリット
が生じるだろう。

 高速道路の新規建設事業がなくなることによってゼネコンに影響は出る。し
かし、将来のゼネコンの行き方としても、行政の下請け、政治のサイフとして
公団や役所に玩ばれる存在ではなく、行政から離れて大きく創出される住宅及
び都市整備事業などの主役として経済のリード役を果たすべきである。この意
味でゼネコンは体質と構造の転換を迫られる。

 なお、この「プログラム五」にあげたファミリー企業の整理方針について
は、道路公団に限らず、政府系官企業すべてについて、基本的に第二章第三節
に述べた通り、整理・清算または純資産方式による処分を行うべきである。

プログラム六 都市基盤整備公団などは、民営化でなく解体する

 都市基盤整備公団は、総資産の規模で民間最大手の三井不動産の八倍強であ
り、年間売り上げでは四倍もの巨大組織である。そのうえ、多数の子会社を有
している。

 わが国の公的な不動産・建設事業機関としては、都市基盤整備公団のほか
に、雇用促進事業団の住宅事業部門があるし、民都機構や都道府県の住宅供給
公社、土地公社などもある。いずれも行政の天下りビジネスであり、その資本
規模を合わせると民間が占めるそれにほぼ匹敵する。道路公団、鉄建公団、地
域振興整備公団、緑資源公団、水資源開発公団等の不動産事業も少なくない。

 これらすべてを廃止すべきである。住宅、不動産の行政企業が解体されれ
ば、膨大な仕事が直接市場のものとなり、しかも“仕事が仕事を生む”生きた
経済を創り出す。したがって一時的に職場を失う人々の何倍もの雇用が創出さ
れるのだ。

 この際、公団などの「廃止」は決して民営への移行ではなく、あくまで清算
手続きを行うことが重要である。なぜなら、特殊法人は「設置法」などによっ
て行政ビジネスとして「政策遂行」を建て前に予算が投入されてきた既得権益
の一種である。市場の水には合わず「民営化」にそぐわない。げんに「設置
法」には廃止に際しては清算するよう謳(うた)われている。

 都市基盤整備公団の清算・廃止に当たっては、いま、公団本体に四八三一
人、系列子会社等に三五九四人の合計八四二五人いる職員の雇用間道が生ず
る。系列会社等についても原則として廃止すべきであるが規模の縮小で存続で
きるものは雇用問題の観点から存続させてもよいと思われる。また公団の中で
も賃貸住宅については国の“政策”に従って入居した方々が多数存在している
のであるから、これには財務省が直接責任を持って今後とも別の形態(固有財
産管理として)で、その管理を継続しなければならない。このための人員とし
て一〇〇名程度が必要と考えられる。家賃収入は借金返済と高齢者福祉などの
財源にあてられる。

 結局、整理対象となる人数は四七〇〇人くらいとなろう。雇用促進事業団の
住宅部門、民都機構、地方公社等の住宅・不動産関係の行政企業全体で二万人
ほどと考えられる。これについては道路公団の場合と同様の対策を考えなくて
はならない。

プログラム七 住宅ローン証券化で公庫を保証機関にする

 住宅金融公庫の貸付金残高は平成一二年度末で七六兆円に達している。財投
からの借入残高は七四兆円八〇〇〇億円で、これまでに国が支出した補助金の
累計額は九兆二〇〇〇億円である。今日これほど巨額の金融事業を政府機関で
担うことは市場経済にとっても国の財政負担にとっても大きなマイナスであ
る。

 私は平成九年三月の衆議院建設委員会において、住宅金融公庫(住公)の保
証機関化と住宅ローンの証券化を提唱した。

 その意義は大きい。まず、民間金融機関のローン提供能力が向上するなか
で、七六兆円という大規模な融資事業が住公から民間に放出されれば、民間金
融市場の活性化に役立つ。一方、住公は保証機関として主に低所得者層への国
の住宅政策遂行を助ければよい。当面は代位弁済等のほか、必要な利子補給を
行える体制はあってもよいが、住宅ローンの証券化によって利子の引き下げ、
保証資金のストックが可能となる。

 わが国の証券体制も、確実性の高い住宅ローンの証券事業に十分成功し得る
レベルに達していると思われる。住公が、当面政府機関として(将来は民営
化)保証すれば、七六兆円を超える住宅ローン債権を魅力的な金融商品(資
産)として市場化することができ、回収された資金を新たな有望企業などに貸
し出すことができる。

 住宅ローン債権を購入した投資家には、政府保証付きであることにより、安
定した利息収入が得られるため、市場の活性化と高い経済効果が期待できる。
住公の住宅ローンには多数の代位弁済、ローン破綻が出ている現状を見ると
き、ローンを借りる当事者にとっても「借り易さ」や返済条件において決して
不利になるものではない。むしろ制度面において、従来より借り易く、利用者
に有利にすることは十分可能である。

 ちなみにアメリカでは、政府機関が信用を補完した住宅ローン証券(MBS)
市場が七〇兆円規模の産業に発展し、「ファニー・マエ」「ファニー・マッ
ク」および「GNMA」 の三社が住宅ローン債権の流動化機関として順調に活動
している。たとえば「ファニー・マエ」(Fannie Mae)は一九三八年に一〇〇
%政府保有の会社として設立された後、一九六八年に民間会社となり、一般の
住宅モーゲージローンの取得も認められるようになった。「ファニー・マッ
ク」(Fannie Mac)は一九八九年に同様の形態となった。「GNMA」は住宅モー
ゲージの二次市場の信用を補完する政府機関である。

 アメリカの住宅金融はモーゲージ融資が一般的である。モーゲージ融資と
は、融資を担保するために不動産等に抵当権を設定する融資方式であり、債務
者が債権者に対して人的に返済を約束する契約証書やこれを法的に保証する書
類の総称、または、その融資方式そのもののことをいう。

 モーゲージは自己資産として保有することも、流動化して第三者に譲渡する
ことも可能である。モーゲージを担保として発行させる証券が売買される二次
市場の成立も可能となる。このような仕組みを日本でも発達させていきたい。

プログラム八 政府系の公益法人と認可法人を即時廃止する

 現在、公益法人(財団法人、社団法人)は国、地方合わせて約二万六〇〇〇
団体あるが、このうち事実上、官公庁の天下りや政治の利権を目的としている
と見られるものは約一万法人である。この約一万団体を廃止し、子会社・孫会
社も整理・清算すべきだ。

 それらは税金で作られたものといってよく、そのまま民間会社化するわけに
はいかない。また、民間会社化したとしても、そもそもこうした系列会社は天
下りが行われているからこそ役所が仕事を割り当てているのであって、そうし
た関係が切れれば仕事は来なくなる。「民営化」は現実的でないのである。

 約一万の公益法人を廃止した場合、子会社・孫会社等を含め約五〇万人の職
に直接の影響が出ることになるが、このうち約二〇万人は官公庁からの再就職
(天下り) による役員であるから生活には困らない。対策が必要な失職者は
約三〇万人と考えられる。この対策については後に述べる。

 次に、八四ある認可法人は、子会社等を含む就業者数が約一〇万人、うち役
職員が約九万人という大所帯で、事業規模は全体で十数兆円に達する。にもか
かわらず納税はなきに等しいほどである。認可法人のうち、日銀は政府と独立
した機関として、日赤は民間の国家的機関として確固とした位置付けを行うべ
きである。認可法人も特殊法人と同様、経済活動に関連する団体は廃止し、研
究開発などの事業は大学や民間の機関にまかせるべきだ。政府は必要に応じて
ヒモのつかない支援を行えばよい。


図表4-1 公益法人の理事のうち公務員出身者のいる法人(平成9年度)

国 家 公 務 員 出 身 理 事
法人数 理事数 (うち常勤) (非常勤)
合    計 2,483 7,080 1,742 5,338
国 所 管 社 団 970 2,505 682 1,823
財 団 1,513 4,575 1,060 3,515

都道府県公務員出身理事
法人数 理事数 (うち常勤) (非常勤)
合    計 5,443 14,633 3,591 11,042
都道府県所管 社 団 2,069 4,661 1,423 3,238
財 団 3,374 9,972 2,168 7,804

全 国 公 益 法 人 数
社団法人 財団法人 合  計
国 所 管 3,583 3,284 6,867
(3,776) (3,579) (7,355)
都道府県所管 8,771 10,059 18,830
(8,779) (10,178) (18,957)
合    計 12,296 13,309 25,605
(12,555) (13,757) (26,312)

注:上段は共管法人の重複を除いた実数、             (以上、出所:旧総理府)
 下段()書きは、共管法人を含む延べ数である。

 特権的な地位にある公益法人、認可法人等の廃止は、計り知れない社会的、
国家的メリットを生む。

 第一に、不当に支出されてきた莫大な税金が救済される。たとえば、政府系
公益法人の役員の報酬や退職金は特殊法人並みに高額だ。公益法人からさらに
孫会社・曾孫会社(丸投げ先)と天下りルートがあり、そこでも巨額の報酬・
退職金が支払われている。官公庁からの委託費や補助金によって公益法人、認
可法人で養われている官公庁出身(課長職以上) の役員は図表4−1に示すよ
うに二万一七〇〇人余りもいる。

 第二に経済活動の素材を市場に戻し市場に活力を与える。公益法人のビジネ
スは官公庁の権限と権威、信用、資金を後ろ盾にしているため、民間は太刀打
ちできない。

 第三に市場での民間企業の活動量が拡大し、その活動に応じた納税によって
国民福祉の増進に貢献する。公益法人は税の優遇措置を与えられているが、多
くの事業が民間に開放されれば税収の増加が期待できる。

 第四に不当な特典や特権が消え、社会に公平感と勤労意欲が甦る。さらには
後述するように、税制の改革によって本来の公益に資する社会的活動である財
団法人やNPOなどが民間の企業や篤志家などに支えられ、真に社会による社会
のための社会が形成されることになる、という変革も期待できる。

プログラム九 地方公社と第三セクターを清算・整理する

 国の行政企業に倣(なら)って、地方においても行政企業としての「公社」
「特殊法人」「第三セクター」が一九六〇年代以降急速に増加した。前述の公
益法人等とは別に、都道府県、指定市、市町村、特別区にわたって作られてい
るこれらの行政企業は、なんと一万一三五(社)も存在している。構造も役割
も、国の場合とほぼ同じだ。

 地方自治体の財政破綻を招いた重大な要因もこれらにあるし、経済、社会全
体を歪め疲弊させた元凶の一つもここにあるといってよい。

 これらの多くは、まさしく地方公務員の天下り先として活用され、公費助成
の下に生産、流通、販売、管理など広範なビジネスを展開している。福祉、教
育、スポーツ、文化、娯楽、コンベンションなどの分野においても大きな事業
活動を行っている。

 土地、資本、設備投資、利子、納税の負担がほとんどなく、立ち行かない経
営に対する個人責任はまったく問われない。東京都だけでも外郭団体に対する
都民負担は年間百億円単位のものがある。それが、また地域から仕事を奪って
しまう。“公共の事業”が、いかに地域から経済を壊してきたかは各所に述べ
たが、卑近な例を私が住んでいる東京から一つだけ紹介してみよう。

 私の事務所のすぐそばに東京都世田谷区が区画整理事業で建てた高層ビルが
あり、そのいくつかのフロアを区の外郭団体が利用している。その一隅に、な
んとタダで印刷をしてくれる所があるのだ。「住民サービス」というわけで、
紙さえ持っていけばチラシやビラ、ちょっとした新聞の印刷ができる。二〇〇
枚までというが五回に分ければ一〇〇〇枚、一〇回なら二〇〇〇枚といくらで
もタダである。これでは近所の小さな印刷屋さんの仕事はますます減ってしま
う。

 類似のケースは日本全国枚挙に暇がない。地方公共団体も「純然たる行政事
務以外は民間で」の原則を肝に銘じてほしいものだ。

 地方公社と「三セク」および、その子会社等の廃止、清算も、国の改革と共
に大胆に進めることがきわめて重要である

プログラム一〇 真の公益法人を支える税制をつくる

 税制の抜本的改革は不可避である。国民すべてが相応の税を負担するのは当
然であるが、基本的には経済活動が主たる税の負担者とならなければならな
い。そして、その富をもって豊かな福祉、教育、医療、治安、防衛、外交、文
化を支えるのである。

 本格的な税制論議は本書の目的を超えるので、ここでは真に社会的に必要な
活動を支えることができる税制についてのみ触れよう。

 憲法第八九条は民間の私的な慈善事業や教育活動などに公金を支出してはな
らない、と規定している。つまり、福祉や教育は国(公)の仕事であるから、
その費用は税金で賄うべきだと述べるとともに、民間の慈善活動に権力は介入
してはならず、また利用してはならない。それは、あくまで民間(社会)が支
えるものでなければならないといっているのである。

 米国のような民主的イニシアティブを重んずる国においては、税制において
もこの考えが貰かれている。つまり、国民は負担額のすべてを政府に納める
か、あるいは一部を社会団体に寄付するか、選択できるようになっている。具
体的には、公益団体(NPO)に対する寄付は税額から控除され、事実上、税金
の納付と同じ扱いとなる。自らの経済活動の果実を自らの自由な意志で自らの
社会を作るために“納付”できるのである。

 わが国においても、市場経済の形成とともに、市場の成果の一部を自らの国
づくりのために自らの意志で処分する税制が求められる。

プログラム一一 二〇〇万人が失職するが六〇〇万人の職が生まれる

 以上、述べてきた“行政企業”の廃止にともなって、二〇〇万人以上の離職
者が出るだろう。二〇〇万人というのは、特殊法人・認可法人関係の約七割と
公益法人・地方公社関係の約四割を合わせた人数である。

 しかし、官制経済から市場経済への革命が行われれば、市場の一部が活性化
され、行政企業に活動を封じられていた経済分野で、当面、少なくとも六〇〇
万人の職が創出されるだろう。これまで行政企業が占有していた事業が市場に
放出されると同時に、行政企業維持のために設けられていた行政の権限や法規
制が取り払われ、市場で資本の拡大再生産活動が生まれるからだ。

 しかも、二〇〇万人の離職者と言っても、この中には公務員などとして官公
庁からすでに退職金を受けたことがあり、年金なども十分に保障されている
人々も多い。たとえば地方公社に勤める五〇万人のうちの半数はそのような
人々である。残りの人々にしても、厳しい民間の雇用環境からみればおおかた
左うちわの行政企業が廃止となったもので、一時的に職を失ったからといって
も、それは理解してもらわなくてはならない。(雇用問題については別途触れ
る)

 とはいえ、一般の職員に対しては、二年間ぐらいの「特別失職保障」を準備
すべきである。このための予算は、莫大な無駄遣いからすればわずかなもので
ある。こうした一連の断固たる措置のうえに、第二段、第三段の変革プログラ
ムを打ち出すのである。

第四章 構造改革のための二五のプログラム

第二節 権力の市場からの退却

プログラム一二 特別会計、財投、補助金を原則廃止する

 わが国の財政が「特別会計」や「財政投融資」という“裏帳簿”と「補助
金」という“魔薬”によって構成された利権システムに堕していることは、第
一章で説明した。権力による市場支配を財政面で支えているこの呪われた「御
三家」を取り除くことは、経済の再生と健全な社会の復活にとって不可欠であ
る。

「特別会計」については原則として五年間で原則として全廃することを前提に
見直すべきだ。また、省庁ごとの所管制を止め、とりあえず、二〜三年の暫定
措置として全体を財務省の所管として国民に見えるものにすべきである。その
さい、現行の三八種類を一本化するとともに、少なくとも四分の一の規模(約
八〇兆円)に縮小し、透明かつ簡素にする必要がある。

 廃止または抜本的見直しの方法や緊急度は、事業系、保険系、管理系、融資
系、整理系など特別会計の性格によって異なる。港湾整備、空港整備、道路整
備など事業系の特別会計と、産業投資、開発資金融通など融資系特別会計、お
よび電源開発促進、石油・エネルギーなどの整理系特別会計の大部分は直ちに
廃止すべきである。

 また、従来から九種類の税金が一般会計に入らず直接特別会計に投入され、
国民にとってみれば納めた税金の具体的使途が国会の議決に付されないため半
ば行方不明の状態であった。こうした不透明を放置するわけにはいかない。税
金はすべて正規の一般会計に入れるべきである。

 さらに、従来から国家公務員の給与等人件費も、半分以上が特別会計から支
出されている。国家運営の基本的支出の一つである人件費・管理費について、
このような不透明・不明朗は許されない。

 年間四〇兆円の規模をもつ 「財政投融資」制度は市場破綻の元凶であるか
ら早急に廃止すべきである。

「補助金」も、基本的に好ましからざる制度である。したがって “公共事業
” や財投活動に関わる

「補助金」はスケジュールを立てて早急に全廃しなければならない。

 ただし、現実問題としてすべての補助金を一挙に廃止するわけにはいかな
い。とくに教育、福祉、環境保護関係と仕掛かり中“公共事業”の地方負担分
に対する交付金等は経過的な措置が取られなければならない。

 また、民間が担っている福祉事業等に関する補助は将来、市場経済への移行
と税制改革の進展の中で、(税の選択的納付としての)民間からの寄付に支え
られるような誘導が必要である。もちろん、基礎的な福祉・教育・医療は中
央・地方の政府予算で責任を持つのが憲法上も当然であり、それが前提の話で
ある。

プログラム一三 「開発」「整備」「事業」法を撤廃する

 政官の権力が経済の分野から“メシの種”を取りあげ、行政権力の支配下に
治めるための法律は「○○開発法」「○○整備法」「○○事業法」など、開
発、整備、事業の名を冠した法律のほか、多くの「○○振興法」「○○促進
法」などである。

 こうした“事業法”は、主だった大きなものを拾い上げただけでも事業関係
一二八、振興関係一二一、整備関係四一などである。これらの法律には、すべ
て省庁や省庁関係機関の経済活動への関与に関する権限が規定されている。わ
が国の法律は全部で約一六〇〇本ぐらいだが、そのほぼ五分の一は、こうした
“事業法”関係である。関係法令、規則などをあげればダンボールで山積みさ
れるほど大部のものとなる。

 これを見れば法制度の面からも、いかに経済(市場)の分野の仕事を政官が
支配しているかがわかる。同時に、いかにわが国が、経済的にも中央集権の官
制経済で、市場性が薄く、競争機能が失われた一種の計画経済であるかが明瞭
になる。

 したがって、市場経済体制の確立のためには、まず、一連の“事業法≠フ全
面的な見直しと廃止に取り組むことが不可欠である。

プログラム一四 公共事業長期計画を廃止する

第三章で問題点を詳しく述べた、わが国特有の“公共事業”の早急な廃止もま
た必要だ。

 国が直接手掛けることが許されるべき社会資本整備は(離島や遠隔地などの
例外を除いて)、新幹線を含む幹線鉄道と、高速を含む幹線国道、主要空港、
重要港湾、さらには電信電話などの交通通信、それに防衛、治安上の基幹的整
備に限られるべきだ。しかも、これとても、市場経済と国民生活にとってコス
ト上のメリットを生ずることが絶対条件である。

 交通・運輸インフラを例にとれば、わが国は平野部が少なく、起伏に富み、
人口が多く、長細い列島である。こうした自然条件と地域的特性を重視した総
体的見地から、その整備を考え、陸、海、空を機能的に連関させた、より効率
の高い交通体系をつくらなければならない。

 北海道から九州に至る列島縦断の幹線鉄道や幹線道路は、すでに整備されて
いる。重要なのは、これに空路の開発や新幹線をどのように有機的に位置づけ
るか、である。どこもかしこも開発するなどということは、もはやできない。
幹線道路、幹線鉄道を横につなぐ支線あるいは都市地域の交通網については、
地方の経済界など民間のイニシアティブが発揮できるよう、民間の要望に応じ
て法制上の整備をしておけばよい。幹線の交通インフラも原則として「国営」
を止め、民間企業に移管すべきである。

 航空交通については、せいぜい北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中
国、四国、九州、沖縄、の一〇ヵ所と一部離島に国内空港があればよい。大き
な国際空港は現在のところ、東京圏、大阪圏、九州圏にあれば充分だ。海上交
通もほぼ同様である。
 いま、わが国では、国がこれらのほかに、港湾および周辺開発、漁港整備、
ダム、橋、都市開発、区画整理、農道、林道、治山・治水、農業構造改善・土
地改良など多岐多様な土木事業を実施しているが、これらの大部分は政府が所
管している結果、政治家と中央省庁の裁量権が働き、予算が無駄に使われてい
る。これを改めるには、地方の工事計画や発注は民間の責任において行うよう
に改めるべきだ。有政はあくまで協力者にとどまるべきであって、事業主体と
なるべきではない。公共事業の全面見直しによって巨額な公共事業支出は大幅
に削減することができる。少なくとも当面、国、地方、特殊法人を合わせて年
間に二〇兆円程度減らすことは困難ではない。

 原則として残すべきは、文教施設、医療・社会福祉施設、一般道路整備、特
定の治山・治水事業、地方自治体に必要な事業、その他下水道整備や緑の保全
など、生活の安全と自然環境を守るための事務事業である。しかも、これらの
事業といえども、利権や天下り団体を介在させず、特別会計を用いることな
く、税金で直接実施するようにしなければならない。

プログラム一五 新しい民間の公共事業勃興策を打ち出す

 現在、公共事業を請け負う全国の土木建設関係企業は約六〇万社、そこに働
く職員は約七〇〇万人といわれている。公共事業の廃止によって職を失う、こ
れら従業員に対しては、まったく新しい社会資本形成の構想に着手することに
よって職場を提供しなければならない。

 インターネット、情報化時代に対応し、また、高齢化社会に対応し、さらに
は、自然環境の重視と人間性豊かな心の文化を築く社会資本の構想を地方で展
開することが必要である。

 具体的には、教育施設の地方移転推進や医療・福祉施設の大々的整備、情報
産業の地方への誘導、セカンドハウス建設運動、インターネットを通じた自家
菜園の供給など、地方を舞台とした新しい営みを、資金面でというより制度面
から大胆にバックアップするのである。税制でいえば、こうした事業に対して
不動産取得税や固定資産税の一〇年間無税化をはじめ、長期休暇制や労働時間
短縮など雇用労働政策とも連動した可能な限りの奨励策を打ち出すべきだ。

 その際、こうした施策が地方政府の負担とならないようにするだけでなく、
地方にとって、より大きなメリットを生むための措置を講じたい。

 また地方自治体を中心に、不要な“公共事業”施設の撤去と自然回復のため
の生活事業の展開などを推進すべきである。

 こうした事業は社会政策的経費として多少の予算がかかったとしても、従来
の公共事業や農業予算の無駄に比べれば未来の豊かさにつながる。

 国民に犠牲を強いる「公共事業」に替わるものは、中間搾取なしに地域経済
を活性化させる住民自身の自立した自由な営みを促進する「生活事業」であ
る。

 その一つは、地域下水道事業だ。従来のように毎年四兆円も使っていなが
ら、さっぱり普及しない利権型の「広域下水道」でなく、地方自治体に財政自
主権を航与した上で、合併浄化槽やコミュニティプラント方式などを組み合わ
せた地域生活型で推進すれば、急速に整備が進み、地域の活性化にも結びつ
く。

 文教・福祉・医療施設や生活道路の建設にあたっても、地域計画・実施・費
用などすべての面で民間パブリック密着型に改めるなら、「早く安く多く」が
実現し、地域経済に寄与するだろう。

プログラム一六 “政治農業”をやめ、産む農業をとりもどす

 農業も本来は第一次産業として自由競争・市場経済の一翼を担う存在だ。と
ころが、わが国では、伝統的に農業分野を“票田”―補助金―政治資金の対象
として扱ってきた。中央権力にとっていざというときのために好都合な存在に
してしまったのである。このようにして農業団体は補助金獲得をもっぱらの目
的とするようになり、政治・行政と表裏一体の構造が築かれてきた。

 政官の利権に踏みにじられて生気を失った農業経済を甦らせ活性化する第一
歩は、利権に直結する中間団体への補助金を止めることだ。そして、農業法人
または株式会社制の全面的導入や行政密着の農協制度見直しによる単位農協の
自立を実現することが重要である。

 さらに、大幅な税の優遇措置を設けるとともに、農業予算は使い道を指定す
ることなく、農業者数や農地面積など一定の基準の下に地方自治体に配分し、
名実ともに民間が行う農業基盤整備等を行政レベルで支援するようにすべき
だ。

 それにより中央省庁の権限がおよばなくなり、政治との癒着も不要となる。
地方レベルの癒着、利権の防止については、会計検査や行政監査権限の強化を
はかることで対応する。

 農業、とくに米価については対外的配慮も必要であるが、基本は市場の論理
を貫くべきだろう。自給率を向上させるという課題も、食管法依存では解決し
ない。地方ごとに自立した政策をとる体制ができれば、特色ある各地の美味し
い自然の産品が外国の安い食品に打ち勝つことは困難ではない。私が視察した
スイスの農畜産政策は、そのための手本になる。生きた農業のすばらしさを取
りもどすべきである。

 補助金制度と特殊法人・公益法人、農協系列などへの天下りと業界の政治献
金制度を抜本的に打破すれば、農業の生産コストは格段に改善する。そもそも
気候も土地もよく、技術力もあり、作高もよく、人も勤勉で粗食の日本の農産
物価格が欧米の二倍、三倍という実状は、全般的な利権構造に起因しているの
である。

“政治農業”をやめて官から離れること、官の管理を止めさせることこそが、
農業で流された汗が無駄なお荷物になるのではなく、反対に経済的価値を生み
国民生活の源泉として延る道なのである。

プログラム一七 徹底した地方分権を断行する

 中央に集積された予算が公共事業と補助金によって企業や業界・団体に配分
されるシステムは、既存の政治権力を支え、政治権力へ経済を隷属させる。こ
の財政システムの下で、政権にある政治家は地方と中央権力の仲介人となる。

 このようにして、政治家の“顔”は“金”をもたらし、その金の一部が今度
は“顔”を支えるのである。こうして政治家に還流した税金は、すでにみたよ
うに表に現れただけでも二二〇億円である。この不当な支出をなくすには、政
治家の“顔”をなくすことが必要だ。もちろん、無駄な公共事業が行われない
ため、無駄な補助金、委託事業費などが支出されないためにも、である。

 地方公共団体の総数は三二七六である。たいていの市町村には、ひときわ目
を惹(ひ)く庁舎が建っている。立派な議会棟や市民センター、博物館などと
ともに、多額の維持管理費と運営費が支出されている。ある市長は「市町村の
数は一〇分の一で十分」と言っている。かりに約三三〇〇の市町村を一〇分の
一の三三〇の基礎自治体に統合し、全国を一二程度の州(都、道)政府に分割
する「道州制」を導入するなら、行政経費は大幅に縮減される。ある試算によ
れば一五兆円の経費節減が可能だという。

 ちなみに、地方公共団体が支出した平成一〇年度の物件費は七・八兆円、維
持補修費は一・〇九兆円、議員報酬等は一・四六兆円、人件費は二七・〇五兆
円である。地方自治体の整理統合と併せ、行政経費は全体として事業系から、
福祉、医療、教育中心の事務系へ移行させるべきだ。さらに、公共事業経費や
“三セク”、外郭団体等を全面的に見直し、その無駄をなくすべきだ。それは
地方経済の活性化にも結びつく。

 現在の地方公共団体では、ある部分では国以上にズサンな財政運営が行われ
ている。特別会計が膨張し、特殊法人や公益法人、第三セクターなどの不要な
“サービス”と、議員、役人の特権がまかり通っている。行政監査制度は存在
しているが、いかにも不十分だ。利権や不正に対するより厳しいチェックと責
任追及の機能を果たすようにしなければならない。

 地方分権では地方の財政自主権の確立が重要である。財政の権限を中央政府
に押さえられている現状から脱却するため、抜本的な税制改革を行い、その中
で法人税、所得税など主要な税の徴税権を地方に移管し、地方独自の自主的財
政運営を保証しなければならない。そのさい、地方公共団体のあいだに存在す
る基本的格差を是正するための合理的な「財源調整基準」は必要だ。

 それは、人口、面積などの他、福祉、医療、教育、自然保護などの価値観を
導入した、箇所付けや事業指定のない直接配分によるものでなければならな
い。福祉施設などを多く受け入れる自治体や、自然を守る自治体、さらには都
市住民のセカンドハウスや菜園づくりを受け入れる自治体、自然の食材を供給
する自治体などには、それ相応のメリットを得られるシステムが必要であろ
う。

第四章 構造改革のための二五のプログラム

第三節 国家予算の半減

プログラム一八 五年で予算規模を二分の一に縮小する

 第一章で詳しく見たように、わが国には公的な借金が一〇六六兆円ある。借
金は国の分だけでも毎年四〇兆円以上増え続けている。国の借金に対する国民
負担は利息だけで軽く一日四〇〇億円を超えている。わが国は毎年毎年、元利
返済金額より新たな借金額の方が大きいという“サラ金地獄”に陥っているの
だ。

 この事態への対応策として政府がとってきたのは、さらなる行政主導の投資
政策だが、こうした官制経済の拡大は悪夢が悪夢を呼ぶ結果をもたらすに過ぎ
ない。

 小泉首相は平成二四年度予算で新規国債の発行を三〇兆円以内にすると公約
しているが、この程度の方針では悪夢から脱出する展望は生まれない。

 わが国の国家予算の規模は一般に信じられている八五兆円(平成一二年度)
ではなく、実際には財政運営の主体となっている特別会計を軸とした二六〇兆
円である。税収(四七兆円)に照らして、国の予算がこのように異常な規模に
なった大きな要因は、郵貯(総額二五五兆円)、年金積立金(総額一四〇兆
円)、簡保(総額二〇兆円)などから特別会計で借金をし、事業予算に充てる
仕組みだ。

 もちろん、これ以外に国債の乱発もある。平成一三年度予算でみて、二五〇
兆円の歳出(純計)のうち補助金は、一般会計で二二・一兆円、特別会計で三
一・九兆円の合計五四兆円が計上されている。このうち、地方交付税交付金
(一部公共事業関係費も含む)と特殊法人等へ支払われるもの、および福祉・
教育関係を除いたもの、すなわち公共事業関係と企業、業界等の経済関係のも
のは、合わせて三〇兆円を超えている。また、公共事業費は(相当部分は補助
金と重複するが)約三〇兆円あり、これに公共事業人件費、公共事業借金(建
設国債等)負担などを含めると公共事業費と補助金総体の予算額はさらに数十
兆円増える。

 こうした実態からすれば、公共事業費と行政企業を含めた補助金の総額のう
ち、五年間かかって、年間予算を三〇兆円削減することは決して困難ではな
い。

 さらに、向こう五年間で二六〇兆円の歳出すべてを抜本的に見直し、中央政
府の予算規模をせめてドイツ、フランスの五倍、アメリカ(連邦政府)とほぼ
同じ一九〇兆円程度に縮小することが必要である。つまり、会計全体の整理・
簡素化と合わせて、歳入・歳出を一〇〇兆円縮小する。これをどう達成する
か。

 さて、おおかたの読者は、国家予算を一〇〇兆円も減らすなど、空想的で非
現実的な話だと思われるかもしれない。しかし、そんなことはないのだ。歳出
を大幅に圧縮する鍵は、一般会計(八五兆円)から五一・六兆円を受け入れ、
総額三三六・七兆円(歳入)にも膨れ上がっている特別会計にある。差し当た
り大幅に整理・縮小できる予算事項と歳出は、次のようなものである。

▽まず地方交付税特別会計である。地方交付税交付金は、一般会計から交付税
特会を通して地方公共団体に支払われる。一般会計から交付税特会に入るのは
約一七兆円なのに、地方へは約二〇兆円が渡されている。約四兆円もの差が生
まれているのは、竹下登首相時代に創設された地方単独の公共事業への交付補
助(最大五五%) や、公共事業の地方起債分への裏補助など、一般会計から
出せないものがあるので、特会を用いて、このような姿になったのであろう。

 その約四兆円は、交付税特会が資金運用部(現・財政融資資金)から借り入
れている。借りても返せないから、利息も含めて毎年、上積みで借り替えを行
う。返済財源のない借金である。その結果、平成一三年度の借り替え額は四
二・五兆円に達した。四二・五兆円を借り入れて三八・八兆円を返済する。そ
の返済は、国債整理基金特会を通して資金運用部へ渡る。複雑怪奇、奇妙奇天
烈だ。

 この四二・五兆円は、第一章に示した国の借金 (「借入金」) に計上さ
れている。このような不明朗な特別会計は廃止し、地方交付金は一般会計が直
接処理すべきである。地方単独事業への補助交付や地方起債への裏補助も見直
すことで歳出の削減ができる。すなわち、国の予算上の歳出(特別会計)四
二・五兆円と歳入三八・八兆円(実債約四兆円)は整理・削減することができ
る。

▽特別会計の中の「財政融資資金への繰り入れ」(約四四兆円)は、特殊法人
を廃止することによって、ほぼ不要となる。平成一三年度予算で見ると、財政
融資資金特別会計が財投債の形で調達する約四三兆円がそのまま財政融資資金
に繰り入れられる。したがって、財投制度の抜本的見直しと特殊法人等の廃止
によって、四三兆円は次第に縮小し、ゼロに近づけることができる。これは、
まさに、郵貯や年金という国民の資産から借金をして国の予算に充てている不
正常な歳入・歳出であるから廃止することが重要である。

▽郵便貯金(二・五兆円)、郵便事業(七・五兆円)の両特別会計は、平成一
五年の郵政公社化とともに廃止されるのが当然であろう。

▽特別会計のうち、道路整備(四・五兆円)、港湾整備(四五八八億円)、空
港整備(四八〇〇億円)、治水(二五兆円)、土地改良(五五〇〇億円)など
公共事業関係の支出も一般会計に移行し、原則として税収の範囲内で管理する
ことになれば、相当規模の歳出削減が可能となる。

▽平成三一年度予算における特殊法人・認可法人への政府予算支出は、一般会
計から四兆円、特別会計から三・五兆円、計七兆五〇〇〇億円である。これは
早晩ゼロにしなければならない。

 以上、大どころだけをざっとあげてみたが、さらに特別会計全般や施設費や
省庁予算の中には山ほど無駄な事項・分類が含まれている。

プログラム一九 国債の新規発行をゼロにする

さて、前項では基本的に会計の整理を中心に歳入・歳出の縮小について述べた
が、今度は、それとは別の角度から財政の改善と構造改革の課題に触れてみよ
う。

 すでに述べたように、補助金及び公共事業費の削減によって早期に三〇兆円
の歳出節減を実現できる。また、最優先課題として断行されるべき政府系公益
法人や特殊法人、認可法人、地方公社など、官企業の廃止は市場の活性化とい
う重要な効果を生む。

 これらが独占している膨大な事業が順次市場化し、経済全体に相乗的活力を
発揮するからである。これによって三年後以降には顕著な税収の伸びが期待で
きる。

 従来、官企業であるがゆえに免除されていた税金分と合わせて、五年以内
に、年間三〇兆円程度の税収増が実現できよう。三〇兆円の削減と三〇兆円の
税収増で計六〇兆円の調整幅ができることになる。このうちの三〇兆円によっ
て新規国債発行ゼロを実現できるのである。

 さらに、その後の健全な市場経済の発展と「簡素な政府」実現の中で大幅な
歳出縮減と税収の増大を実現することができれば、必然的に国の借金は減少の
軌道に乗る。同時に行政企業と利権の多くが姿を消すことによって国民の公共
料金と税金負担が大幅に軽減される。

 この間に地方分権を進め、税配分や徴税権の大幅な地方への移転が行われる
べきだから、そうなれば当然、国レベルの予算規模は実際には前記の数字より
大幅に縮小されることになる。一〇年後のさらなる目標としての国家予算の規
模は一〇〇兆円を限度とすべきであろう。つまり、国税による歳入一〇〇兆円
以内ということである。ここで、はじめて真の意味でのプライマリーバランス
が回復することになる (この点で年金の扱いが問題である。私は年金は基本
的に税によるべきと考えるが、ここではそれを含めない)。

 さて、当面する平成一四年度予算の編成においては、以上の立場から少なく
とも二〇兆円の公共事業・補助金の削減を実行し、一〇兆円を構造改革のコス
トに投ずるべきである。そして、新規国債の発行額は、(小泉内閣が目指す三
〇兆円でなく)二〇兆円以内に抑えなければならない。そのさいには、いわゆ
る「成長率」が三〜五%程度下がることも宣明し(マイナス成長)、これは景
気の指標とは異なるものであることも合わせて明らかにすべきであろう。

 わが国の財政構造の現状からすると、(すでに述べたように)財政支出が減
少すればGDPも下がり、したがって、成長率も下がるからである。このさい日
本国の痛の病は加速度的に進行しているのであるから、煮え切らない改革はか
えって事態を悪化させることを付言しておく。

プログラム二〇 「中高年一〇〇万人のボランタリー公務員制度」をつくる

 このように公共事業費の削減や補助金の大幅カットを実施すれば、経済に対
し一時的に大きな負の作用を及ぼすことは避けられない。多数の職員等が一時
的に失職するからだ。先にも述べた通り、総体で二〇〇万人と想定される失職
が、金融では政府系金融機関、不動産・土木建設では中央・地方の特殊法人な
どと相当数の系列子会社で発生する。この一大失職状況への適切な対応こそ、
構造改革戦略の要諦となる。

 政治の舵取りとして重要なことは、これまでは行政企業が掌握してきたビジ
ネス領域で民間企業が自由に腕を振るえるよう、税制、金融、法制度面等で十
分な環境整備を行うことである。同時に、徹底した労働時間の短縮、長期休暇
制の導入、賃金体系の見直しも必要だ。さらにたとえば地方の土建会社のよう
な、公共事業需要によって生きてきた民間企業などに対しては、自然環境保全
事業や福祉環境・教育環境整備事業などにシフトできるよう、政府の誘導と支
援が必要である。

 そのさい、将来の高齢化・健康文化社会に向けて、あるいは経済活性化のた
めにも、都市と農村の大交流策を打ち出すべきだ。たとえば、農村地方に都市
住民が一定面積の土地、菜園、建物を取得することや、あるいは大学などの文
教施設や医療・福祉施設の移転・建設に対して、大幅な優遇措置を講じるの
だ。これによって地域の自立的経済活動を盛り上げることができる。

 こうした一連の積極的な新しい社会を築くためには、多様な技能や知識、意
欲を持って、これを手助けする相当な人材が必要となる。これには公に奉仕す
る社会経験豊かな五〇歳以上の中高年こそ出番である。半ば、ボランティア精
神で次世代社会づくりの役割を果たしてもらうべきであろう。このために「中
高年一〇〇万人のボランタリー公務員制度」を導入し、福祉や社会教育、職
業・技術指導、伝統文化や環境保護事業、生活支援など幅広い分野・地域に中
高年を動員すべきである。

プログラム二一 二〇兆円を社会保障、一〇兆円を環境保全に追加する

 今後、これらの失業対策、雇用の移動、地方における新たな事業の喚起、そ
して農業および土木建設業対策を進めるに当たっては、相当の予算が必要であ
る。予算をつけるにあたっては、次の原則を守る必要がある。

 すなわち、@補助金ではなく、税その他の条件整備策に依ること。しかし、
従来のように投資事業は行わないこと。Aそのための団体・法人を置かないこ
と。B議会が決め、行政の直接の責任の下に財務管理を行うこと。C不特定多
数の国民の利益に直結する方法ですすめること、などである。下水道や河川、
一般道路整備などは、こうした改革を行うことによって予算が正しく効率的に
使われ急速に進捗するはずだ。

 向こう三年間を改革調整期間として、この間、新規に必要な予算額として
は、年三〇兆円と考えられる。従来型の公共事業や補助金からのシフトでこれ
を執行するべきである。

 三〇兆円の中身は、失職対策や雇用移動を含む広い意味での社会保障費が二
〇兆円、地方の民間による自然保護や福祉・教育・生活環境整備や自然食生産
などの自立した事業展開を奨励する自治体のための予算が一〇兆円である。

 これらの措置は、調整期間終了後も、国民の将来への安心と地方の自立のた
めに継続されるべきである。これによって転換期の混乱を最小限に止め、同時
に構造改革によって生まれる新たな市場経済の躍進と国家財政の危機脱却をは
かることができる。

プログラム二二 大規模減税を実現する

 真の構造改革を掲げる政権は、三年後の大規模減税を国民に公約すべきであ
る。

 日本の企業は全般に、重い公共料金と行政手続き負担のため生産コストが高
水準となり、同時に従業員の生活コストが著しく高いため、人件費の高騰を招
いている。こうした経営を束縛する社会的重負担構造は公共事業長期計画の廃
止や行政企業の廃止によって格段に改善されるが、さらに、企業の成長力を改
善し、国民の消費能力を高めるには法人税、所得税等の減税が必要である。

 また税制抜本改革のなかで固定資産税、相続税の大幅減税を断行し、可処分
所得のさらなる増大をはかることも不可欠であろう。食料品や医療、福祉サー
ビス等にかかる消費税の撤廃も重要である。

 年金改革については当面、年金資金運用基金を廃止し、国が直接管理する積
み立て方式に改めるとともに、一定の所得水準以上の加入者に対する給付の引
き下げと国庫負担割合の増大を実施すべきである。将来的には「税による年
金」「税による医療」「社会による介護」の目標を掲げ、先に述べた「中高年
一〇〇万人のボランタリー公務員制度」をつくって高度福祉社会の実現をめざ
すべきだ。

 健全な市場経済にあっては、こうした経済活動の活性化と将来不安の解消の
ための一連の改革と税収の増大とは相互に一体のものとなる。それが国民福祉
の向上につながるのである。

第四節 品格ある「公務」の復活

プログラム二三 「公務分限法」を制定する

 行政は権力であり、出過ぎてはならない。行政の使命は社会の公正と安全を
保持すること、つまり、必要かつひかえ目に税金を使って福祉、医療、教育、
治安、外交、防衛の事務にあたることである。

 教育は健全に進んでいるか、福祉の行き届かないところはないか、治安に欠
落や行き過ぎはないか、法は守られているかをチェックし、その事務を遂行す
ることである。

 また、行政担当者は自ら姿勢を正し、公に奉仕し、間違っても私利私欲を追
求するなどあってはならないし、不必要なところに国民の金を使ってはならな
いのである。こうした趣旨を「公務分限法」として定めるべきだ。

 憲法八六条は税金の使い途について厳しい態度をとっている。すなわち「内
閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経
なければならない」「予見し難しい予算の不足に充てるため、国会の議決に基
いて予備員を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と現定してい
る。

 つまり、憲法は、国の会計は各会計年度ごとに完結するもので、かつ年度当
初に金額が予定できなければならないことを定めているのである (単年度主
義)。

 これによって、儲かるか損をするかわからない事業、長期短期の投資活動な
どを排除しているのである。

 裏を返せば、この国の経済活動の担い手は民間であり、経済、すなわち、市
場の活動に行政が立ち入ることを予定していない。今日のわが国の財政運営は
明らかに憲法違反の疑いがある。

 行政が民間事業に補助金を出したり、公共事業と称してビジネスに手を出し
たりすれば、市場の資源が経済活動から行政事務のものとなり、たちまち経済
を壊し、市場を狭め、負担を増やす結果を招く。

 事実、行政がやっている年間数百兆円のビジネスの中で、どの事業・業種を
とってみても採算の合っているものはない。子会社・孫会社は座っているだけ
でお金が入ってくるが、国から見れば際限のない借金の山が築かれているの
だ。

 憲法の定めるところに従って、政府は中央・地方にわたって原則として投資
事業を止め、それらを経済の領域に戻さなければならない。

 憲法をはじめとする基本的法律に照らして、行政の範囲と権限、責任を明確
にすべきである。いかなる形をとろうとも税金が政治家、公務員に直接間接に
流用されたり、儲かるか損をするかわからないビジネス (各種投資等) に
用いられたりしてはならない。

 しかも、一年単位で見て一円たりとも不明であってはならない、そういうも
のだということを、はっきりさせる必要がある。

 また、政治家、公務員は国家国民のため、未来のために奉仕し、仕事をする
という重い使命を持った誇りある存在であると同時に、重い責任を負うべき存
在であることを明確に規定する必要がある (ちなみに、政治家と行政官がお
手盛りでやっている叙勲制度などは、業界への褒章も含めて即刻廃止した方が
よい)。天下りや二重退職金などはもってのほかである。

 同様の主旨で「行政監察院」と「政治監察院」を設けるべきである。いま行
政監察は総務省が行っているが、行政自身が行うのではなく、権威と権限を持
った国民の機関が必要である。

 また、政治家自身が多数決で選挙法を決めたり、報酬や政治資金を決めたり
するのではなく、厳正な国民によって作られる政治監察院によるべきである。

 そして、政治家や政党は企業や団体から金をもらうのではなく、国政に献身
することと引き替えに政策調査と立法活動のための必要な費用を保障され、言
論の自由を侵されることなくその使途を監察されるべきである。

プログラム二四 行政監察を徹底し、会計検査院を強化する

 憲法第九〇条は「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検
査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなけ
ればならない」と定めている。

 しかし、会計検査院の検査はとうてい国の収入支出のすべてに及んでいない
し、検査報告は国会に提出されても次の年度にもその次の年度にも、実際には
審議されていない。この点でもわが国の政治は憲法に則していない。

 そもそも、納税した税金が適切かつ有効に使われているかどうかを国民がチ
ェックすることは世界共通の民主主義的権利である。

 わが国の制度では、地方公共団体の場合、自治体に監査委員会があり住民が
監査請求権をもっている。

 国の場合は議会に決算行政監視委員会(参議院は決算委員会)が置かれ、“
独立”(現実には孤立”と言った方がよい)した会計検査院があるが、国民
には監査請求権が与えられていない。それに替わって会計検査院の検査がある
という建て前なのだ。

 したがって、国の機関の決算や補助金の検査を行う会計検査院は、きわめて
重要な機関のはずだ。国の収入支出の決算について検査し、内閣が国会に決算
書を提出するさいに、検査報告を添えなければならないことになっている。

 会計検査院の検査対象は、@「必ず検査しなければならないもの」(必要的
検査対象)と、A「検査院が必要と認めたときに検査することができるもの」
(選択的検査対象)に分かれる。

 @の対象は、国の毎月の収入支出、国が資本金の二分の一以上を出資してい
る法人(たとえば政府関係機関や特殊法人)の会計、国が資本金を出資したも
のがさらに出資しているもの(たとえば農協系団体や特殊法人の子会社) の
会計、などとなっている。

 それら検査対象となる機関・団体等の数は、検査院によれば約三万八〇〇〇
ヵ所とされている。後述するように実際はこれよりはるかに多いはずである
が、三万八〇〇〇ヵ所ですら、検査院の調査官七〇四人(職員総数一二五一
人) で検査し切れるものではない。

 実際、実地検査が行われるのは約八・五パーセントの三二〇〇ヵ所である。
それでも仕事量からすれば実態はかなり過重である。

 検査院は検査の結果を、@不当事項(法令等に違反、または不経済・非効率
な事態)、A意見表示・処置要求事項(改善要求)、B処置済事項(改善され
た事項の記述)、C特記事項(予算の効果、事業成績が適切でない事態の問題
提起)、D国会からの検査要請に対する検査状況Iの五分類で内閣に報告す
る。

 平成一一年度では@が二五二件、Aが六件、Bが三七件、Cが一件の計二九
六件、金額にして二一四億円であった。

 以上のような会計検査制度には多くの問題があり、根本的な改革が必要であ
る。

 第一の問題点は権威である。会計検査院はこれまで様々な無駄遣いや非効率
を指摘してきた。中海干拓や藤前干潟の干拓事業から、高速道路事業や港湾建
設事業、さらにはODAや国有林野事業の無駄遣いなどだ。

 しかし、検査院には強制権限がなく、いうなれば「指摘」するだけで終わっ
てしまう。省庁などは「指摘」を受けた事業を中止したり責任をとったりする
義務はない。また、検査院にとって、予算配分権を持ち族議員を抱えている各
省庁に対して強く物をいいにくいのも事実である。検査官は「先方が資料を出
してくれない」とよく嘆いているが、実際のところ、相手が省庁の場合、「調
べさせていただきたいのでご協力を」という感じである。

 第二の問題は検査対象の範囲である。本来、税金の使途については、わずか
でむ不明があってはならないので、チェックのシステムが隅々まで行き届いて
いなければならないはずである。

 しかし、わが国の財政制度では国民のおカネが補助金の形で約六万カ所、事
業費としては一〇〇万カ所以上にわたっている。これでは検査院の規模を一〇
倍にしても、とうてい検査し切れない。

 しかも、これ以外に、税金で作られた一万(社)を超える行政系列の株式会
社などがある。公益法人、認可法人とその子会社・孫会社、特殊法人の子会
社・孫会社、地方公社、「三セク」などだ。これらは私企業または民間法人の
形をとっているため検査院の検査権限が及ばない。そもそも、こうした企業
(団体)を作ること自体、公金を私企業の資産とする行為であり、憲法違反、
公金横領なのである。

 このようなことになった原因は、利権政治であり、天下り構造である。言い
方を替えれば、利権政治が民主主義のシステムである会計検査をマヒさせてし
まったのだ。

 その結果、「会計検査院法」そのものが憲法の規定を逸脱してしまった。検
査院の検査対象には「会計検査院法」が制定された後に付け加えられたものが
多い。

 そもそも憲法が想定していない税金による「出資先」や孫出資先の株式会社
や公益法人、「補助金」交付先の業界団体や企業など、あってはならないもの
ができてしまった。次々に生まれるそれらも検査対象として明記せざるを得な
くなり、「会計検査院法」そのものが憲法上矛盾をきたしてきた。

 つまり、税金で私企業をつくり、公金を私物化することを法律上認める結果
をつくりだしてしまったのである。

 第三は会計検査院の独立性の問題である。検査院は「内閣に対し独立の地位
を有する」と会計検査院法には明記されているが、その独立性を保障する根拠
はどこにもない。検査院の職員は公務員の一般職試験によるもので少なくとも
他省庁と横並びであるし、予算や定員は財務省の厳しい査定と族議員が支配的
な国会に縛られている。

 さらに重要なのは、検査院は政府や省庁の政策や事業そのものに対する是非
の判断が実際にはできないことである。

 無駄な事業や利権性の強い誤った事業の中止や責任を問うことができないた
め、「無駄」 の指摘も計算間違い程度の小額のものとなり、全体でも検査院
自体の運営予算額程度に限られてしまっている。

 第四の問題は調査官の人数と待遇である。調査官の人数は少なくとも現状の
五〜六倍は必要不可欠であるし、全体の職員数も五〇〇〇人以上でなければ最
小限の検査もできまい。

 こうした問題点を克服し、会計検査院に本来あるべき機能を発揮してもらう
にはどうしたらよいだろうか。私の改革試案は次の三点からなる。


一、会計検査院に予算、職員採用、待遇などの面で大幅な独立性を持たせるた
め、職員の身分を特別職公務員とし、行政定員から除外し、予算にも独自性を
持たせる。

二、検査そのものに強い権限を付与し、政策や事業に対しても判断を示し、誤
りや不正を追及する権限を与える。

三、(検査院制度ではないが)子会社や事業団体の設立を禁止し、それらの団
体への補助金等を廃止し、予算の行き先を行政機関と行政機関の物品購入先の
みに限るという、行財政のあるべき公明な姿に戻す。この結果、検査院の検査
対象が明確となり、会計検査が制度上合理性を持つこととなる。

プログラム二五 天下り禁止法を急いで定める

 国でも地方でも行政権限を笠に着た公務員の天下りが野放し状態である。天
下り先の外郭団体の退職金も国民の不公平感、不信感を増大させている。

 全国で数十万人にのぼる天下り役員に支払われる公金は、莫大な金額であ
る。しかも、すでに触れた通り、中には五回も六回も行政の系列を天下り、ひ
とりで三億円、四億円という報酬・退職金を手にしている者も少なくない。

 私は平成一〇年、国家公務員の(国の機関と密接な関係にある団体への)天
下りと高額退職金の重ね取りを禁ずるための法律案を作った。

 この法案は、その後、民主党の案として国会に提出されているが、いまだに
審議されないままとなっている。

 法案の内容は、国家公務員は離職後五年間は、国の機関と密接な関係を持つ
団体等の地位に就いてはならないこととし、同時に定年前の退職勧奨も禁じ
る。

 また、外郭団体の給与は公務員と同等以下とする、というものだ。公務員の
退職金は生涯一回のみにすべき、と思っている。

 要するに“天下り”を公務離職後五年間禁止することで、実際上、(元)公
務員としての影響力と六五歳以上 (六〇歳定年)という年齢によって天下り
をほとんど無意味にしようというものだ。給与や退職金も一般社会と大きな差
はなくなる。

 この法律ができれば、中央省庁にとって公益法人やファミリー企業を作る意
味は半減し、税金の無駄遣いも減ることになる。地方自治体でも、条例等で天
下り・退職金を規制すべきである。

第四章 ここまで

日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 目次
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 序章
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 1−1 利権財政の御三家―特別会計、財投、補助金 誰も知らない日本
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 1−2 究極の“裏帳簿”特別会計
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 1−3 官制経済を支える“闇予算”財投
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 2−1 経済むしばむ“官企業”―特殊法人と公益法人など
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 2−2 民間経済の上に君臨する特殊法人
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 2−3 世界一のゼネコン ― 日本道路公団
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 2−4 利権に利用される公益法人
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 2−5 官企業の就業人口は、なんと四〇〇万人
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日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著)  全文 3章 公共事業という名の収奪システム
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