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深刻な中国経済の停滞  ドラギ総裁独りではユーロは救えない
http://www.asyura2.com/12/hasan77/msg/584.html
投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 13 日 02:25:45: cT5Wxjlo3Xe3.
 

(回答先: 中国の経済不均衡、当面は正しい路線  好調な豪経済、「資源ブームと崩壊」サイクル食い止める 投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 11 日 18:44:34)

深刻な中国経済の停滞

 ヨーロッパ中央銀行(ECB)が南欧国債の無制限買い入れを決定した。

 これまで欧州金融安定化策の中心になると考えられていたのは、ESM(欧州安定メカニズム European Stability Mechanism)を中心とした問題国国債の買い入れだ。これは、基金を積み立てて国債を購入する方式だ。

 それに対して、ECBの購入は、通貨を増発して国債を購入する。つまり、国債の貨幣化である。その意味で大きな方向転換だ。「欧州連合の基本条約が禁じる中央銀行による財政支援」だとして、ドイツが最後まで反対したのは当然だ。

 ECBのドラギ総裁は、数カ月前に「ユーロ防衛のため、ECBが無制限に支援する」と述べていた。しかし、その後、ドイツの反対があって後退していた。数カ月の遅れをもって、「際限なく買う」方式を実現したわけだ。

 一般には、条件とされている財政緊縮をスペインが受け入れるか否かが問題とされている。しかし、本当の問題は、ユーロも国債の貨幣化に踏み切ったことであり、それによってユーロが弱くなることだ。以下では、この観点から今回の決定の意味を考えることとしよう。

これまではEFSF
という救済基金方式

 これまでのユーロ圏の金融安定化策は、2つの流れで行なわれてきた。第1は、救済基金方式だ。これまではEFSF(欧州金融安定ファシリティー European Financial Stability Facility)を中心に行なわれ、今年10月からはESMに引き継がれる。

 第2は、ECBによる国債購入である。これらについて、これまでの経緯を見ると、つぎのとおりだ。

 2009年10月にギリシャの財政赤字粉飾が暴露され、それまで5%程度だった10年債利回りが上昇し、国債の発行が困難となった。このため、10年5月に、IMF(国際通貨基金)から300億ユーロ、EU(欧州連合)経由で800億ユーロの合計1100億ユーロの融資が実行されることとなった(ギリシャ第1次支援)。

 問題がギリシャに留まらないことが明らかになったため、10年6月、ユーロ参加17カ国によって、特別目的会社であるEFSFが、13年6月までの時限措置として設立された。融資枠は4400億ユーロで、必要な資金は、債券の発行によって調達することとされた。

 アイルランドが最初の支援先となり、10年11月に実行された。11年5月には、ポルトガルへの融資が合意された。11年7月には12年以降にギリシャへ追加支援を行なうことが合意された(12年2月に本格合意:ギリシャ第2次支援)。

 救済基金を恒久的な組織とするため、ユーロ加盟17カ国によって設立されたのがESMだ。融資枠は、EFSFの未活用分との合計で5000億ユーロ。必要な資金は、債券の発行と融資によって調達する。

 EFSFやESMのような基金方式は、「強い国(ドイツなど)が資金を拠出し、弱い国(ギリシャ、スペイン、イタリアなど)を支援する」という方式だ。これは、国家間の資金の直接的な移転であり、通貨発行額に直接の影響は及ばない。

ユーロも「国債の貨幣化」
に踏み切った

 それに対して、第2の流れであるECBの国債購入は、通貨増発による国債の貨幣化(マネタイゼーション)、すなわち、中央銀行による財政支援である。

 この連載ですでに指摘してきたように、日本の量的緩和、アメリカのQEは、国債のマネタイゼーションである。

 ユーロの場合、主要加盟国であるドイツが金融緩和に反対の立場を取るため、日本やアメリカに比べて、貨幣化は遅れた。

 ユーロが貨幣化に加わることで、全世界的に国債の貨幣化が行なわれることになる。

 もっとも、ECBの国債購入は、今回が初めてではない。すでに2010年5月に導入された「証券市場プログラム(SMP:Securities Markets Program)にしたがって行なわれてきた。11年8月に規模を拡大し、10年春から今年3月までで、約2000億ユーロのユーロ国債を購入した。

 今回の購入計画は、「国債購入プログラム」(OMT:Outright Monetary Transactions)と呼ばれる。

 ECBが購入する国債は、残存期間が1年から3年の国債で、対象国は公表されていないが、スペイン、イタリアなどの南欧が中心と見られる。国債購入資金はすべて不胎化される(他の市場での公開市場操作で資金を吸収し、貨幣供給量が増えないようにする)とされる。

 OMTの発動には、当該国がEFSF/ESMに財政支援を要請し、財政と経済再建のための計画を実行することが条件とされる。

 OMTの目的は、「兌換性プレミアムの除去」だと言われる。

「兌換性プレミアム」とは、ギリシャ、スペイン、イタリアなど問題国の国債利回りを高めている要因だ。例えばギリシャの場合、ユーロを離脱してドラクマを通貨とすれば、必ずユーロに対して下落する。だから、国債金利にそれだけのプレミアムがついているのだ。

 仮に兌換性プレミアムを除去できれば、問題国国債の利回りとドイツ国債の利回りとの格差を半分程度に縮めることができるはずだという。

SMPは、ユーロ下落と
問題国金利の上昇を招いた

 発表直後、問題国国債の利回りが低下した。スペイン10年物国債は6.1%に、イタリア10年債も5.3%になった。また、ユーロも上昇し、1ユーロ99円80銭になった。ダウ平均も大幅高になった。

 これは、「欧州債務問題への懸念が後退したことを市場が好感したため」と報じられた。ユーロ情勢が行き詰まって世界の金融市場が混乱する事態が、ひとまず収まったことからそうした反応になったのだろう。

 一方で、「ユーロの買い戻しは限定的」との指摘もある。ただし、その理由として挙げられているのは、ドイツ憲法裁判所のESM合憲判断のゆくえ、オランダ総選挙、そして、スペインが緊縮財政条件を受け入れるか否か、というようなことだ。

 しかし、この問題を考える基本は、「今回の措置は金融緩和政策なので、短期金利が低下し、ユーロは下落するはず」ということだ。ユーロの買い戻しはこれとは逆行する動きであり、したがってごく短期的なリアクションに過ぎないと考えられるのである。

 この点を確かめるために、前回の購入措置であるSMPが決定された2010年の状況を見ると、図表1のとおりである。

 ユーロは、09年には1ユーロ=135円程度であったが、ECBの国債購入が始まった10年春から急落し、1ユーロ=110円程度にまでなった。

 つまり、ECBによる国債購入決定は、ユーロを強くしたのではなく、弱くしたのだ。これは、ユーロ圏の短期金利が下落したために、資金がユーロから流出したためである。

 そして、問題国の国債の金利は低下せず、むしろ上昇した。

 スペイン10年国債の利回りは、10年4月頃までは4%程度、あるいはそれ未満の水準だった。ところが6月頃から急上昇して、4%台の後半になった。その後低下したものの、秋から再び急上昇し、12月には5%台の後半にまで高騰した。

 イタリア10年国債の利回りも、10年上半期には4%程度であったが、10年秋には5%近くまで上昇した。

 それは、流出資金額が、ECBによる購入額を上回ったからだ。

 前回の図表3で示したように、イギリスの対スペイン対外資産は、09年末の3050億ポンドから10年末の2816億ポンドまで、234億ポンドも減少した。ECBによる国債購入の内訳は公表されていないので、10年においてスペイン国債がどれだけ購入されたかはわからないのだが、おそらく数百億ユーロであろう。そうだとすれば、ECB購入額を上回る規模で資金がスペインから流出した可能性が大いにある。

 資本移動が自由な世界においては、金融政策はきわめて難しい。少なくとも、それが引き起こす国際的な資金の流れを無視することはできないのである。

 しかも、2000億ユーロという購入総額は、必ずしも十分な規模のものではない。例えば、10年11月から11年6月に行なわれたアメリカのQE2が総額6000億ドルの米国債を買い上げたことと比較すれば、数分の1でしかない。

 今回は、購入総額に限度は付されておらず、「無制限」ということになっている。しかし、対象となる国債発行国の政府がユーロ圏に支援を要請し、財政赤字削減策を提出することが義務付けられている。したがって、実際には、購入額が結果として限定される可能性も大いにある。

貨幣化の帰結は?

 OMTが期待どおりに機能すれば、ユーロから資金が流出する。すると、日本に流入する資金はさらに増える。日本国債のバブルは、さらに進行するだろう。

 一方で、円高がさらに進む。また、ユーロ安によって中国の対EU輸出がさらに減少する。結果的には、古典的な利下げ競争になるかもしれない。

 国債の貨幣化が長期的にいかなる結末をもたらすのか、現時点では必ずしもはっきりしない点もある。

 インフレになるのか? それとも、日本やアメリカのように、結局何も起こらないで終わりなのか?

 モールディンとテッパーは、『エンドゲーム』(プレジデント社、2012年)の中で、行き着く先はインフレとスーパーインフレだとしている。そう考えるのがもっとも理に適っているのだろう。しかし、これまでのところ、現実の世界でそのような動きは見えない。


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