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やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる 日米の金利差だけで円安は続かない(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan104/msg/111.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 30 日 10:24:00: igsppGRN/E9PQ
 

           仮に円相場が110円を目指す展開になれば、日銀は追加緩和に踏み切るだろう(撮影:今井康一)


やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる 日米の金利差だけで円安は続かない
http://toyokeizai.net/articles/-/98453
2015年12月30日 中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 東洋経済


さまざまな経済メディアを見ていると、エコノミストや機関投資家を含めた市場関係者の間では依然として、日米の金利差拡大を根拠にして「円安が継続する」という見通しが多いようです。某銀行が主催する経済講演会で、某外資系証券のエコノミストの話を聞いてきたばかりですが、「米国の利上げにより円相場は130円を目指すだろう」と予想されていました。

ところが私は、円相場を予想するうえで重要なのは、さまざまな要因を俯瞰したうえで総合的に判断することであると考えております。日米の金利差拡大という要因だけで円安が続くと予想するのは、あまりに視野が狭い判断であり、歴史的な見地を軽視していると思うのです。

■円安トレンドはなぜ終わるのか

拙書『これから日本で起こること』および『経済はこう動く〔2016年版〕』では、米国の利上げをきっかけに、いよいよ円安トレンドは終わるだろうという見通しを述べさせていただきました。

その見通しの根拠となっているのは、経常収支や金利差、購買力平価、過去の歴史などであります。ドル円相場を短中期的に左右するのは、日米の経常収支や金利差であり、長期的な流れを左右するのは、何といっても購買力平価を置いて他にはないのです(詳しくは『円安終焉へのカウントダウンが始まった』(12月14日http://toyokeizai.net/articles/-/96061)を参照してください)。

さらには、その見通しを補完するために、市場の歴史を参考にする必要もあります。米国が1999年と2004年に利上げを開始した後、当時も日米の金利差が拡大したにもかかわらず、円安ではなく円高に振れたという事実を軽視してはいけません。いずれのケースでも、短期で見ると利上げ開始後は円安が進んでいたのですが、中長期で見ると大幅な円高に振れてしまったのです。

これらの歴史的な事実は、市場が米国の利上げを相応の期間をかけて織り込みに行っていた証左であるといえるでしょう。FRBは今回の利上げにおいても、1年にも渡って慎重に市場へのアナウンスを行ってきたので、市場では金利差はほとんど織り込まれていたと考えるのが自然であるといえるわけです。

それでは、仮に私の見通し通りに円安トレンドが終了した場合、円高基調がどのくらいの水準まで進むと考えるのが妥当であるのでしょうか。これも前回の記事の繰り返しになってくどいようですが、私は購買力平価(消費者物価ベース)の100円〜105円あたりがひとつの目安になるのではないかと考えています。

ただし、ここで意識しなければならないのは、仮に円相場が120円を割り込み、110円を目指すような展開になったとしたら、日銀の追加緩和が行われる可能性が徐々に高まっていくだろうということです。

日銀は2015年10月に株式市場が期待していた追加緩和を行いませんでしたが、それは株式市場の期待だけでは追加緩和が行われることはないという証左であります。これまでの安倍首相と黒田総裁の発言の変遷とその関係性を見ていると、日銀(黒田総裁)が追加緩和を行う強い動機は、今後は安倍政権の要請以外には考えられないといえるのです。

■外貨投資は難しい時期に入ってくる

ですから、円安から円高へとトレンド転換した相場がさしたる大きな抵抗もなく、ずるずると100円〜105円のレンジに近づいていくというのは、予想することができないわけです。円高が予想以上に進む過程では株価も大幅に下落していくので、株高が生命線である安倍政権が急きょ態度を変え、黒田総裁に追加緩和を催促するようになると考えるのが自然であるからです。

おそらくは、円相場が110円に接近するあたりには、株式市場でも追加緩和への期待が相当に高まっていくだけでなく、安倍首相の発言にも変化が見られ始め、実際に追加緩和が決定される可能性が高まっていくのではないでしょうか。

外貨投資の分野では、私は自らの予測に基づき、2012年12月にドルだけに集中投資を開始し、2015年11月〜12月にかけて123円台ですべて売却しましたが、2016年は安倍首相や黒田総裁の発言の変遷を見ながら、ドルの買い場を一回は探っても良いのではないかと考えております。追加緩和の内容にもよりますが、5円〜10円の幅で利益を得られる可能性は十分にあります。

ただし、ドル投資の黄金の3年間はすでに終わってしまったと認識するべきでしょうし、だからといって、新興国通貨を買うのも拙速すぎると考えております。2016年以降の大きな流れでは、外貨投資は非常に難しい時期に入ってくるのではないでしょうか。

また、株式市場や原油価格の大きな流れについては、『日本株は、いよいよバブルの領域に入った』(6月25日http://toyokeizai.net/articles/-/74621)や『原油価格、「1バレル30ドル時代」が来る』(8月11日http://toyokeizai.net/articles/-/80075)で述べていますが、新しい流れの兆候が感じられた時は、この連載やブログ等で触れたいと思っております。

 

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コメント
 
1. 佐助[3147] jbKPlQ 2015年12月30日 16:09:03 : cLoPFxP7a2 : QkvC_PQ6Z0A[38]
ドル一極集中から複数通貨の多極化へと進む,そして「日本の商品の世界的優性」は2019年から少しずつ後進国に抜かれます。さらに別の理由で2040年まで「日本の商品の世界的優性」は維持します。そのため円安では成り立たないのです,

一時的に為替は固定化や安定化させなければならない.すなわち「発行する国債又は通貨発行高を保有する金とリンクさせる」とドルとユーロが約束すれば、為替の乱高下と、国債をデフォルトする危機は収束できると断言できるのです。

米国の政治と経済の指導者は、金融恐慌を認め,利上げを宣言したので世界の通貨と信用は、三年する再び不安定になります。

ところがドルとユーロはお互いのテレトリー(縄張り)の既得権益擁護が障害となり、簡単に収束できないのです。もちろん日本も米国の顔色見るために後手後手にまわります。

そこで、33 年のルーズベルト大統領にならい、金の輸出輸入を国家管理にし、原価百円の1万円札紙幣で、国民から金価格相場にプレミヤムを付けて買上げると、円は間違いなくドルとユーロと共に、25%の金を保有して、第三の基軸通貨となる。そして、現在進行形の第二次世界恐慌は、今回はドル・ユーロ・円が、世界の75%の金とリンクすることで収束できる。しかし政府日銀はアベノミクスだけでなく,ゴミ理論と抹殺拒絶します。そのために日本は古今未曾有のパニックを向かえます。即ち明治の政府官僚と同じ大失敗をします。これはかなり自信があります。

経済学者や良識人は指摘しますが,アカ(共産主義者)や左翼の戯言として無視される。そして銀行・証券・為替の一時閉鎖でその地獄絵図化の幕を開ける。


2. 佐助[3148] jbKPlQ 2015年12月30日 16:17:59 : cLoPFxP7a2 : QkvC_PQ6Z0A[39]
追記
ドルが即時に第三次金本位制採用を宣言すれば、ユーロや円の追随時期も早まります。又、ユーロや円がドルよりも早く第三次金本位制を採用すれば、世界の信用恐慌は、三年で収束します。

米国は第三次金本位制採用に反転すると、ドルは円より高くなります。


3. taked4700[4749] dGFrZWQ0NzAw 2015年12月30日 22:26:33 : Y3eWna1RvE : nZRtuErV090[5]
中原 圭介さん、有名な、そしてかなり信頼性があると言われている評論家ですね。

しかし、やはり円高に向かうというのは違うと思います。

為替を経済指標で判断することは間違いです。為替を判断するときに、最も重視するべきは政治情勢、それも国際的な政治です。実際に国際金融を支配している欧米金融資本が究極的に何をねらっているかを見極める必要があります。

>米国が1999年と2004年に利上げを開始した後、当時も日米の金利差が拡大したにもかかわらず、円安ではなく円高に振れたという事実を軽視してはいけません。

この時期、日本は失われた20年間と言われたわけです。国内産業の空洞化が進み、大手企業だけでなく、中小企業までが中国やアジアの国へ移転しました。結果的に、円安になっても貿易収支が改善しないという、輸出力が無くなった時期であったのです。その結果、現在、日本は、化石燃料輸入を続けるわけにいかず、結局原発再稼働を強いられているわけです。そうしないと、貿易赤字がかさみ、経常収支赤字に転落し、国債残高の巨額さが危険視されて円安が急激に始まってしまうからです。

現代の国際政治は、原発、それも原発から出た核廃棄物を中心として動いているのです。

多分、2017年ごろから原油価格上昇に転じます。サウジが石油増産に耐えられなくなるからです。サウジ自身が原発導入をしようとし、また、インドや中国で原発建設の話が出るでしょう。結局、原発が実際に作られることはないはずですが、見せかけで原発新設の話がでるはずです。

その頃には確実に円安です。日本に原発再稼働を強制するためです。

結局、その後、いつ巨大地震が起こるかの問題であり、若狭湾か静岡県か、または九州か四国の原発が地震に直撃されるまで原発は動き続けます。

遅くともその時には、つまり、巨大地震が原発直撃をするときには日本は経済破たん、財政破たんとなるしかありません。

中東も相当に混乱するでしょう。シリアは結局、内戦を続けるはずです。ただし、サウジやクエートにISは侵攻しないと思います。結局、これらの国は原発導入に向けて、原発メーカーと契約まではするはずですから。そして、その契約を得る相手が日本の原発メーカーで、その契約の見返りに日本が使用済みウラン燃料を責任を持って処分するという契約をさせられるのだと思います。多分、日本で大地震が起こらないとして、2020年ごろにはそうなるはずです。

その後、ISが中東全域に一気に攻勢をかけ、サウジもクエートも戦場になるのではと予想します。当然、日本からの原発輸出はチャラになり、結果的に日本はアメリカとイギリスの核廃棄物を引き受けることになるのではと考えています。

まあ、日本とかヨーロッパ、またはアメリカなどで大地震が2020年ごろまで起こらないという前提での話です。大地震がどこかで起こると、また違った話になると思います。


4. 2015年12月30日 23:22:44 : aQq0UGoaxY : pNHEWTkf6T8[37]
円高論は誤り、来年は1ドル135円に向かう(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan104/msg/117.html

こういう矛盾した記事を載せる東洋経済を「ゴミ箱へポイ」することが正しい選択です。


5. 2016年1月01日 00:25:12 : oLShHzBbYM : Eeyw9@1MG64[17]

コラム:アベノミクス初の円高局面入りか=山田修輔氏
バンクオブアメリカ・メリルリンチ チーフ日本FXストラテジスト
[東京 28日] - 国内外の市場関係者の中では、ここ2―3年は「円安派」が多勢だったが、2016年は「円安派」と「円高派」に割れそうだ。筆者もこれまで円安派だったが、16年に関しては円高派に属する。16年は、アベノミクスの円安要因が剥落する中で外部環境がドル円を支配する展開を予想する。

安倍政権下での円安進行、円高圧力軽減は、以下の3つの要因が支えてきた。

●安倍政権は支持層を広げ政治基盤を強化すべく、リフレ的で、株式市場・ドル円・景気に対してフレンドリーな経済政策を優先している。

●その根幹として、政府・日銀がデフレ脱却と2%の物価安定目標の達成を目指し日銀が量的質的緩和(QQE)を遂行する一方、米連邦準備理事会(FRB)が正常化に向かう中、日米金融政策の乖(かい)離が進む。

●そうした政策環境が直接的、間接的に国内投資家の安全資産からリスク資産へのポートフォリオリバランスを推し進める。

この政策パッケージは円安(13年、14年)要因であり、円高圧力を軽減しドル円の歴史的安定(15年)に寄与した。また、こうしたストーリーの下、海外マネーもドル買い円売りを進めた。しかし、この円安環境に陰りが見える。

対外環境は15年にすでにドル高・円高圧力をかけていたが、その構図が継続し、筆者は安倍政権下では16年に初めて対ドルでも多少の円高を見込んでいる。16年3月までは政策かい離を背景にドル円がドル高円安方向への上昇トレンドを維持する可能性はなお小さくないが、春先以降のリスクはドル安円高方向への下振れである。

<人民元下落がドル円下落に作用する可能性>

FRBが利上げに踏み切り、市場ではひとまず米国短期金利が上昇している。ただ、当社は16年に3回の利上げを予想しており、約2回の利上げを織り込んでいる市場の追加的織り込み余地は大きくない。

よって、ドルに対するリスク要因は外部から舞い込んでくる可能性が大きい。日本の政策当局も現行の為替水準を適当と見なしている可能性が高いため、為替に関してはより消極的な政策対応が予想される。

14年後半から「ドル高・原油安」が市場を形づくっている。この間、米国が金融政策正常化を模索する中、新興国の金融環境はタイト化し、供給側要因も相まって、コモディティーの需給バランスが急激に緩み、「交易条件ショック」が発生した。

為替相場ではドルの需給が逼迫(ひっぱく)したが、ドル指数が90を超えるあたりからドル高の弊害が米国株式市場でより明確に認識され、コモディティーや新興国通貨下落の圧力がドル買いのみでなく、ファンディング通貨である円買いにも波及した。

ドル高、新興国通貨安の水準調整が進んだことで、16年に過去18カ月間見られた規模のショックは予想されない。しかし、調整の終わってない可能性が高い通貨がある。中国人民元である。FRBが利上げに踏み切る一方で、中国は金融緩和を模索しており、中国人民銀行が徐々に為替介入を緩める中で人民元が市場想定を超えて下落する可能性が高い。

人民元下落は新興国(アジア)通貨全般にもネガティブで、一時的に中国からの資本流出を伴いドル需給の逼迫が予想される一方、中国の購買力低下はコモディティー需給にネガティブな意味合いを持つ。

ブレント原油価格が16年に底打ちするシナリオを描いてはいるものの、反転の勢いは弱く、下方リスクを見ている。もし原油価格下落に歯止めがかからなければ、サウジアラビアによる通貨切り下げという「究極のテイルリスク」が現実味を帯びてくる。

<追加緩和でも「質」重視なら為替への影響は限定的>

当社は16年もドルが(円や、いくつかの通貨を除き)全体としては上昇すると予想しているが、米国経済が依然として2%そこそこの成長基調にある中、さらなる米国経済成長の加速に裏付けられない(外部要因が引き起こす)追加的なドル高は、緩慢な利上げサイクルの加速を拒み、米国の実質金利を押し下げる可能性がある。

過去の原油価格下落と米国実質金利低下の局面では、円は買われてきた。よって、ドルが円やユーロといったファンディング通貨対比で上昇するためには、日銀と欧州中銀(ECB)の追加緩和が必要となる。

確かに、経済物価情勢や政治日程を考慮すると、16年前半に日銀が追加緩和に踏み切る可能性は残っている。米利上げサイクル入り直後に追加緩和が発動されれば、政策かい離が印象付けられ、一時的にドル円は125円を超えて上振れる可能性もある。しかし、追加緩和があるとしても、上場投資信託(ETF)購入ペース倍増など質的緩和の側面が強く、為替への持続的影響は限定的となろう。

12月の日銀政策決定会合で発表された補完措置に対し、ドル円や日本株がネガティブに反応したのも、市場が日銀の緩和オプションの限界について警戒を強めている証左と言える。

<国際収支についても資金流出ペースは減速へ>

次に国際収支の基調だ。筆者の試算では、14年夏に本格化した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と3共済の外国証券へのリバランスはすでに半分以上進展しており、残り数兆円が15年度末までに大方終了すると推測される。

それまではドル円サポート要因だろうが、これら公的年金のリバランスが終了すれば、対外証券投資は鈍化するだろう。FRBの緩慢な利上げサイクルや依然緩やかな世界経済成長(15年の3.1%から3.4%へわずかに加速)を前提とすると、他の投資家層が年金の買い越し減少分を取り戻すほど外国証券投資を活発化させるとは予想し難い。

また、確かに原油価格が回復すれば経常黒字は16年にわずかに縮小するかもしれないが、対外直接投資も円安や内需主導の成長により減速する可能性がある。

総じて、基礎的国際収支の対外流出傾向は恐らく保たれるだろうが、より中立的となり、この円相場の水準をさらに押し下げる力に欠けるだろう。

<「無敵の日銀」前提が崩れれば、ドル110円も視野に>

最後に政治だ。16年は7月に参議院選が予定されている。この選挙は、その後の衆議院解散や総裁任期の特別延長がなければ、自民党総裁の任期が18年に到来する安倍首相にとって最後の国政選挙となる見込みだ。また、政治日程を考慮するとダブル選挙となる可能性も指摘されている。

与党圧勝となる可能性は十分あるものの、憲法改正を自らの政治使命としてきた安倍首相が、選挙後にこれまでと同等に経済政策に政治的資本を最優先に投下する確約はない。経済政策の優先度が相対的に低下すれば、市場の期待に影響が及ぶ可能性もあろう。

このように見ていくと、16年春以降は、これまでドル円を支えてきた環境が変化する可能性が高い。16年末のドル円予想は120円とするが、さらなる円高方向のリスクには注意が必要だ。円高が発生した場合、1ドル=115円と想定される黒田プットが試される。過去3年間、市場は「日銀に逆らわない」姿勢を学んできたが、市場では昨今、日銀の手詰まり感が意識され始めており、日銀の信認が試される形でドル円、クロス円ともに下落圧力が強まるシナリオも念頭に置きたい。

円高に対応できなかった場合、「無敵の日銀」の前提が崩れ、ドル円が110円程度まで下落する可能性も16年に関しては無視できず、付利引き下げを含む政策フレームワーク変更の可能性も出てくる。

*山田修輔氏はバンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ日本FXストラテジスト。PIMCOをはじめとして米国の金融機関でマクロ経済、市場分析に従事し、2013年より現職。2005年マサチューセッツ工科大学(MIT)学士課程卒、2008年スタンフォード大学修士課程卒。CFA協会認定証券アナリスト。石川県小松市出身。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-shusukeyamada-idJPKBN0UA0A920151228?sp=true

コラム:円高ロジックの落とし穴=政井貴子氏
新生銀行 執行役員・金融市場調査部長
[東京 28日] - 「2016年の為替は」と問われて、「15年よりも円高傾向だろう」と答える方が、体内時計には素直だ。というのも、変動相場制移行後、4年以上継続した円安局面はない。いわゆるローソク足で年足を見た場合、年初の始値よりも年末の終値が円安水準となる年、つまり「陽線」が連続するのはせいぜい2年だ。

3年目には年初の始値が年末の終値よりも円高で終了し、後続年も円高傾向で推移するパターンが多い。3年目も年足が陽線となっているのは、1995年から97年と、今回の円安局面である2012年から14年の2回のみだ。

このうち1995年から続いた円安局面は、4年目の98年に1ドル=147円台の大幅円安をつけたものの、ロシア危機が勃発。非常に短期間の間に暴力的に円の買い戻しが進行し、年間の高安差が約36円という振れ幅を伴う円高の年となった。

また、わずか1年で60円を超える円高を誘発し、その後の日本経済に大きな影響を与えたプラザ合意のあった1985年の前数年は、カーター政権のドル防衛策や米金利の高止まりによって円の安値が年々ドル高方向へ切り下がるドル高円安傾向が続いていた。つまり、円安傾向が長期間続けば続くほど、円高方向への揺り戻しは、大きいものだったという苦い経験則がある。

翻って、2015年は円安傾向4年目となり、前年の円の安値を超え125.86円をつけたものの、年間取引レンジが約10円という変動相場制以降で最小の変動幅で終わろうとしており、異例だ。これまでの経験則からすれば、16年あたりには円高に切り返すほうが、しっくりくる。

また、現象面からも一層の円安は限界的に見えやすい。まず、約10.4兆円の貿易赤字を記録し約2.6兆円という過去最小の経常黒字だった2014年と比べて、15年は10月時点ですでに経常黒字が10兆円を超えて通年で久しぶりに11年来の規模になることが確実だ。貿易赤字も15年は10月までで約5700億円と、10兆円近くの円安フローが消滅した。対外直接投資は15年も10兆円規模を維持しているが、相当改善されている。

当局の姿勢にも変化が見られる。2015年7月の国際通貨基金(IMF)による対日4条協議の総括では、円の水準がファンダメンタルと整合的な水準よりも減価していると評価した上で、円安に過度に依存した状態を回避すべきだと指摘している。

また、市場心理も、これ以上の円安進行は輸入物価上昇につながり消費マインドを冷やすとの見方から、政府・日銀がこれ以上の円安を望んでいないのではないかとの思惑に傾きやすい。さらに、米議会が日本の輸出優位につながる実質円安水準(1970年代並みの実質実効為替レート)を容認しないのではないかとの憶測もある。こうしたことから、一層の円安予想が難しくなっている。

<緩やかな米利上げペースとともに円も「じり安」へ>

しかし、果たして足元で過度な円安は本当に進行しているのだろうか。実は、2014年に比べれば、一方的な円安は解消されつつある。ドル以外のその他通貨に対して、15年は円高が進行した年だった。

ブラジルレアルや南アフリカランド、トルコリラといった通貨に対しては、20%以上の円高。カナダ、ノルウェー、オーストラリアといった先進国の資源国通貨に対しても10%以上の円高だ。量的緩和を強化しているユーロに対しても円高が進行している。わずかながらでも年初来円安となっているのは、対スイスフランとドルぐらいだ。追加緩和政策の影響で、全方位的に円安が進行した2014年とは対照的だ。また、ドル円を見ても、14年後半以降、単純移動平均に対して実勢レートの円安方向へのかい離が進んだが、今ではほぼ解消している。

日米の貿易財価格比、実質金利差やマネタリーベースを基にした為替の推計値と実勢レートを比較しても、まだ円安方向にかい離はしているものの縮小傾向だ。長期的な円の方向性を示唆する日米物価格差を基に計算される購買力平価は、原油安で日米ともに名目インフレ率はゼロ近辺で推移しており、傾きは失われた状況が続いている。

米国側から見た、ドルの貿易加重平均為替レートを確認すると、確かにドル高は進行しているが、日本を含む主な貿易相手国7カ国ベースの指数は94程度と、過去の平均値近くでの推移となっており、ここ数年の歴史的なドル安水準から平均値に回帰してきたとの見方ができよう。

また、円キャリーの規模を図る1つの目安とされる外国銀行在日支店の本支店勘定の資産規模を確認すると、2015年5月の約11兆円をピークに10月は約7兆円と縮小傾向。過去最大規模(07年の20兆円超)より相当に小さい。何らかのショックでキャリー解消が急激に起こったとしても、リーマンショック時ほどの事態は考えにくい。

こうした状況に鑑みれば、過度な円安が進行中だとは言い切れない。120円台といった絶対値に対する経験上の高値認識はあるものの、日米金融政策の方向性を素直に評価し、2016年を見通すべきではないかと考えている。

米国は、12月に9年半ぶりに政策金利を引き上げた。その折、ドル円は120円台からじわじわと円が売られ、123円をうかがう展開となった。日米2年債金利差は1%に迫り、短期の金利差が実際に拡大すれば相応に円安に反応することを確認したと言えよう。

2016年中の利上げ回数は米連邦公開市場員会(FOMC)のメンバーの予想で4回。市場の先物価格によれば、約2回の利上げが織り込まれている。16年も、低成長、低設備投資、金融緩和傾向継続から、金利差優位が全体のメインシナリオとなるのであれば、緩やかなペースの米利上げとともに、円もじり安傾向と見ている。この見通し通りに米国が進むかを見極めるために、原油安の企業業績への影響、大統領選挙といった様々な材料が市場の関心事となっていくだろう。

<市場に脱デフレの本気度を問われている>

最後に、円の水準感をつかむ1つの目安として、2013年以降の日米2年債金利差とドル円の関係を確認すると、金利差が1%に拡大した時のドル円の水準は130円超えとなっている。120円を割れそうな足元の地合いからは、かなりかい離した風景だ。

この原因は、資源価格安を主因とした株安が不安心理を増幅し、安全通貨としての円の価値を高めているという部分もあるかもしれない。だが筆者は、市場が日本のデフレ脱却に対する本気度を確認している側面もあるのではないかと受け止めている。短期的には次のように解釈できるのではないだろうか。

12月18日に日銀による補完措置発表後、金融政策の専門家以外にはわかりにくかった側面もあり、123円台から円が急騰、年末に向かって徐々に流動性が失われる中、テクニカルにドルの上値を重くしてしまい、年内反発のきっかけはつかみにくい状況となっている。そんな中、補完措置に関して専門家の中には、手詰まり感を指摘する声が多いように見受けられる。量的な緩和余地が乏しいとの発想から、円買い戻しとの整理だ。

2016年は、1月4日に通常国会が召集される。1月末には再び日銀の政策決定会合が予定されている。改めて政府・日銀のデフレ脱却姿勢が確認されれば、日米金利差に準じた緩やかな円安傾向に回帰するだろうと見ている。

*政井貴子氏は、新生銀行執行役員・金融市場調査部長。トロントドミニオン銀行、クレディ・アグリコル銀行などを経て、2007年5月新生銀行に入行。キャピタルマーケッツ部部長、市場営業部部長などを歴任後、2013年4月に新生銀行初の女性執行役員として、市場営業本部市場調査室長に着任。同年7月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-takakomasai-idJPKBN0U80RD20151228?sp=true


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