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日本のホテルが超好況を素直に喜べない事情 「高い」「予約が取れない」…バブルへの警戒も
http://toyokeizai.net/articles/-/102989
2016年02月01日 許斐 健太 :東洋経済 記者
「普段数千円で泊まれる部屋が3倍以上するのは、いくら何でもやりすぎ」「特に大阪のホテルが異常に高すぎる」「会社の旅費規程の価格では、とても泊まれない」「変動幅が大きく、利用者を馬鹿にしている」「地方でも7000円以下の部屋が減ってきている」――。
週刊東洋経済は1月上旬、ビジネスホテルの不満や要望について利用者にアンケートを取った。その結果、多く寄せられたのは価格に対する不満である。価格と同様に、不満が爆発しているのが予約の取りづらさだ。
「駅の近くはどこでも混んでいる」「2カ月前から満室などあり得ない。オンライン予約にキャンセル待ちの仕組みを設けてほしい」
アンケートでは、利用者が「予約が取りにくい」と感じる地域は圧倒的に「東京」「大阪」とする声が多かった。また「予約が取りにくい」と感じる価格帯は、6000円〜1万円とする回答が5割を超えた。
■外国人だけでなくシニア客も増加
ビジネスパーソンにとって、高単価や部屋不足への不満が募るビジネスホテル。それは、未曽有の好需要の裏返しでもある。主因はインバウンド(訪日外国人)の増加だ。2015年の訪日外国人は1974万人と過去最高で、2年間で倍増する勢い。今や観光地に行けば、日本語より英語や中国語など、外国語のほうをよく耳にする時代だ。東京や大阪など、主要都市のホテルのロビーでは、スーツケース片手の外国人観光客がずらりと並ぶ。
中でもビジネスホテルの引き合いが強まっている。「最近増えているのは東南アジアからのお客。アジアからのお客は買い物を目的とされる方が多く、ホテルは寝るだけで十分と考える方も多い。そうするとビジネスホテルの居心地がいいようです」(大手ビジネスホテルチェーン担当者)。
インバウンドだけではない。シニア層も動いている。「最近はアクティブに動かれるシニアの方が多く、旅行の際も、宿泊はビジネスホテルでという方が増えている」(同)。
週刊東洋経済2月6日号(2月1日発売)の特集『ホテル激烈』は、ビジネスホテル市場の激戦の舞台裏に加え、開発ラッシュに沸くラグジュアリーホテルの最前線、上手なホテル予約テクニックなど、ホテルに取り巻く最新動向を網羅した。
今、ホテル業界は「30年に1度」と言われる活況を呈している。中国の景気減速や株式市場の混乱など、国内景気の先行きには不透明感も漂うが、ホテル業界はその中でも異質の熱狂に包まれている。「世間で発表されている経済指標よりも、私の肌感覚の景気はずっといい」とは、大手ビジネスホテル幹部の弁だ。
訪日外国人に人気の「アパホテル歌舞伎町タワー」(左)と「ホテルグレイスリー新宿」(右奥)(いずれも東京・新宿歌舞伎町)
需給はひっ迫している。2015年の全国のホテルの稼働率は83.6%(前年比1.5%増)と上昇、平均客室単価は1万4624円(同13.1%)に達した(英調査会社STRグローバル調べ)。
「20年までに自社と提携先を合わせた客室数を、現状の5.5万室から10万室に拡大する」。ビジネスホテル大手チェーン、アパグループの元谷外志雄代表は野心を隠さない。「いい条件のオーナーさえ見つかれば、すぐにでも出したい」。他社のホテル幹部も次々とそう口にする。
■過熱する付加価値競争
しかし、需給ひっ迫に伴う宿泊価格の高騰に戸惑いを示すホテル関係者も多い。「インバウンド需要が増えた結果、今までご利用していただいていたお客に提供できていないのが心苦しい」(中堅ビジネスホテルチェーン担当者)。また現在の活況を「バブル」と評する声もあり、「東京五輪後でも利用を続けてもらうために、今のうちにファンを増やさないと」と、リピーター獲得に意欲を示すホテル関係者も多い。
東京・大阪の街中では、スーツケース片手のアジアからの観光客を目にする機会が増えた
リピーター獲得へ向け過熱しているのが、ビジネスホテルの付加価値競争だ。東横インなどの大手は、大量出店によるコスト競争力を武器に「宿泊特化型」と言われる低価格ホテル路線を維持するが、その他のビジネスホテルは差別化に躍起だ。
「デザイン、サービス、設備それぞれで差別化を図る」。そう語るのはホテルココ・グラン高崎の牧本祐介・総括支配人。群馬・高崎駅直結の同ホテルは、ロビーに樹木を植え、小川を流すなど自然の雰囲気にこだわる。全室にマッサージチェアや電子レンジを完備するほか、顧客の要望を逐次データベース化し、サービスに活かしている。
同ホテルは、平均的なシングルルームから、1泊8万円のプレミアムスイートルームまで備える。「ハイクラス・ビジネスホテルというジャンルが認知されてきている」と、ホテルココ・グランを運営する木本製菓の木本貴丸専務は話す。
その他にも朝食だけでなく、夕食も無料にするホテル、温泉や有機野菜の料理など、「エコ・健康」を打ち出して女性ファンを取り込むホテルなど、差別化競争は過熱の一途。ホテル不足の裏側で、熾烈な競争が繰り広げられている。
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