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10−12月期GDPについて(在野のアナリスト)
http://www.asyura2.com/16/hasan105/msg/579.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 2 月 15 日 23:41:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

10−12月期GDPについて
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/
2016年02月15日 在野のアナリスト


日経平均が1000円を越える大幅高で、16000円を回復しました。ただ、3日間大きく売った日系大手が2日分、今日1日で買い越しており、ちょうどそのときの下げ幅が1100円。その分がもどったという展開です。ただ現物の売買高は週初なので減っているのに、戻りが鈍い。やはり円高是正とはいえ、113円台後半にしかなっておらず、他の主体の動きが緩慢といった影響もあるのでしょう。2日つづきで大陽線という形をつくって、底打ちムードを出したいと考えたとしても、実体経済はますます悪化していることが、10-12月期のGDPでもよりはっきりしてきました。

10-12月期実質GDPが前期比0.4%減、年率換算で1.4%減と、大幅な減少となりました。中身はかなり悪く、民間最終消費支出が実質で前期比0.8%減と、大きく足を引っ張りました。原油安や暖冬の影響と説明しますが、それだけではこれほど大きく落ち込みません。暖冬で冬物衣料は暖房用品が減っても、その分外出する機会が増えれば支出も増えます。そうでないのは、昨年の実質賃金が大きく減っていることが影響し、消費を押し上げなかった状況がうかがえるからです。

民間住宅は実質で1.2%減。いよいよ中国の爆買い減速の影響が、不動産市場にも現れ始めている印象です。昨年の7月から上海市場が変調をきたしており、マネーバブルが弾けている。また株の大幅下落で投資家が痛んでいる現状もあって、資産価値として不動産に目をむけようという人は少ない。不動産ローンの金利が下がり…と、マイナス金利の効果をかたる人もいますが、終の棲家として購入するなら、金利重視でも良いでしょうが、資産価値としては今後も期待できません。ここまでGDPの成長を引っ張ってきた住宅関連が、今後は足を引っ張ることになりそうです。

設備投資は実質で1.4%増ですが、マイナンバー制度への対応か、ソフト関連が多い。設備投資のマイナスが目立ったことからも、今後には期待できない。民間在庫が0.1%減と、こちらはプラス寄与ですが、消費がこれだけ下がって在庫が減ったのなら、生産はかなり調整していなければならず、これでは賃上げになどなるはずもありません。輸出は0.9%減、輸入は1.4%減で、差し引きではGDPを0.1pt押し上げたものの、どちらも減ったのなら経済的には縮小を示しています。

どれも1-3月期には下がる方向としか思えない。2期ぶりマイナス、としか報じませんが、一部では設備投資が2四半期連続でプラスに寄与したのも、これまで計算に入れていなかったものを算入することで、数字の辻褄を合わせたのでは? とも勘繰られています。それがなければ3四半期連続でマイナス、景気後退を示していたのであり、7-9月期の奇妙な2次速報のプラス改定がなければ、ファンダメンタルズがいいなどと、とても言えない状況だったことにもなるのでしょう。

しかも、マイナス金利で不動産ローンの金利が下がっていますが、預金金利も下がっている。日本は少子高齢化がさらにすすむのであって、ローンを組んでまで家を買おうという人より、老後に備えて貯蓄しようという人が、今後も増える傾向にあります。しかし預金しても金利がつかず、年金保険など運用に失敗している可能性が高くて、安倍首相が言明したようにGPIFの運用損は、年金支給に影響する。老後の不安から、消費が伸びない傾向が今後もつづくのであって、マイナス金利の効果とは、日本の現状に照らせばマイナス効果しかない、ということになるのです。

2年連続でのマイナス成長が見えてきた日本。安倍政権は確実に、歴史に名を残すことになりました。そして安倍ノミクスという言葉も、もはや失敗の象徴として今後は語られることになるのでしょう。そんな安倍ノミクスの終幕につけられたタイトルが『マイナス金利』です。マイナス金利、マイナス成長、マイナスという言葉がより相応しくなってきましたが、これらをひっくるめると安倍ノマイナス、という現状が今、起きつつあるのでしょう。これで株価まで安倍ノミクス開始以来のマイナスに沈んだら、安倍のベアは笑い話にならなくなるのでしょうね。

 

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1. 2016年2月16日 00:48:35 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[268]

日本株ボラティリティ、2011年震災時来の揺れ−急騰後も消えない懐疑
2016/02/16 00:00 JST


    (ブルームバーグ):日本株相場が荒れている。世界的な景気の減速リスクや為替の急激な円高、一部欧州金融機関の信用不安などが直撃し、わずか3営業日で日経平均株価は2000円以上急落したと思いきや、たった1日で1000円以上戻した。変動率の大きさを示す主要株価指数のボラティリティは、東日本大震災が起きた2011年3月以来の高水準に達し、投資家の間で安心と不安が交錯する。
日経平均とTOPIXのヒストリカル・ボラティリティ(HV、10日平均)は15日に59.77、65.07に上昇、ともに11年3月28日に記録した77.86、73.86以来の高水準となった。ブルームバーグ・データによると、TOPIXの30日HVでは48.6と世界の中でイタリア、アルゼンチンを抑えトップとなっている。
15日の取引では、前週末に公表された米国消費統計の堅調や欧州の銀行株上昇、円高一服、国際原油市況の大幅高を受けグローバル投資家のリスク回避姿勢が和らぎ、幅広い業種で買い戻しの動きが活発化。日経平均は昨年9月9日以来、上げ幅が1000円を超え、TOPIXの上げ幅はリーマン・ショック直後の08年10月以来の大きさを記録した。財務懸念が浮上していたドイツ銀行は12日、ユーロ建てとドル建て債の買い戻し計画を発表。ドル・円相場は一時1ドル=114円台まで円安方向に戻した。11日には110円99銭と14年10月以来のドル安・円高水準を付けた。
CLSAの日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は「市場はパニック売りを受けてきたが、ついに目を覚ました。パニックは止まりつつある」と指摘。15日の急騰はショート(売り)ポジションの巻き戻しが中心と分析しているが、「投資家はバリュエーションをみており、現状は明らかにおかしい。市場が底を付けたとは思わないが、バリュエーションから判断すると今後6−12カ月で高値を目指す好機」と受け止める。
東証1部の予想株価収益率(PER)は13.69倍と、12年11月以来の水準にまで低下。ブルームバーグ・データによれば、米S&P500種株価指数の15.5倍、ストックス欧州600指数の14.2倍を下回っている。
記録的な日本株の急騰は、足元で低調な国内経済をサポートとする政策発動への期待感も後押しした。15日朝に発表された昨年10−12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率1.4%減と2期ぶりのマイナス成長となり、市場予想の0.8%減より悪かった。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、「株価・為替の変調、世界経済の先行きに下振れリスクが増していることを考えると、再び消費増税が先送りされる可能性も十分考えられる」と指摘。さらに、日本銀行は6月にも「再度付利を20ベーシスポイント引き下げる」と予想する。
UBS証券では、このまま円高基調が止まらない場合、財務省と日銀による為替介入の可能性が高まっているとみており、26ー27日に上海で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の行方に注目する考えを示した。
ただし、このまま日本株が急速に反転上昇していく可能性については懐疑的な見方も依然として多い。りそな銀行の戸田浩司チーフ・ファンド・マネジャーは、15日の急騰に対し「恐怖感さえ覚える。動きだしたら際限なく上がり、下がる時も際限なく下がってしまう。これでよし買いだ、という受け止め方はなかなかされない」と言う。UBS証の大川智宏エクイティ・ストラテジストも、「日本の要因で動いているのではなく、今の市場のリスクは米利上げの延期とドイツ。マクロの善しあしで乱高下する」との認識だ。
プリンシパル・グローバル・インベスターズのファンドマネジャー、ビナイ・チャンゴシア氏(香港在勤)は「昨年末にかけ、ポートフォリオの中でリスク資産をいくらか減らした。現時点ではそのポジションを維持している。われわれは長期で資産を運用しており、こういう時期には短期のリターンを期待されている投資家よりも少し仕事がしやすい」と話す。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長も、「あすは何が起こるか分からない。割安だと思う株に投資し、長期目線を持つのは変わらない」と乱高下する相場に惑わされないよう努めている。 
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KXIL6TTDS101.html


 


 
円高・株安に官邸危機感、経済対策へ

2016年2月16日(火)安藤 毅

世界的な金融市場の混乱でアベノミクスが大きな試練を迎えている。政府・日銀の対応には手詰まり感がにじむ。政府は経済対策の検討を始めたが、首相官邸からは消費増税先送りも選択肢との声が漏れ始めた。

(写真=AP/アフロ)
 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が世界的な金融市場の動乱に大きく揺さぶられている。円相場は一時1ドル=110円台に急伸。日経平均株価は2月12日、約1年4カ月ぶりに1万5000円を割り込んだ。

 市場関係者だけでなく、安倍首相の周辺も重要な節目として意識していたのが、1ドル=115円、日経平均1万6000円という水準だった。この一線から大きくかい離すると、2014年10月に日銀が実施した追加緩和の効果がほぼ消えてしまうことになるからだ。

広がる疑心暗鬼の連鎖

 だが、市場に広がる疑心暗鬼の連鎖の前にこの「防衛ライン」はあっさり突破されてしまった。

 15日は円高が一服し、株価も急反発したものの、市場は当面、神経質な展開が続く見通しだ。安倍首相の側近は「日本企業の業績は好調だったのに、海外発の要因にここまで揺さぶられるのは想定外だった」と漏らす。

 「株価連動政権」と称されるほど堅調な株価を政権運営の生命線と位置付けてきた安倍首相。急速な円高・株安への反転による政権への打撃に警戒感を強めている。

 まずは、国内の実体経済への波及だ。このまま円高が続けば自動車や電機など輸出企業の業績への影響は避けられそうにない。中国をはじめとする新興国の株安や景気不安もあり、訪日客の消費活動にブレーキが掛かる懸念も広がってきた。

 内閣府が15日発表した2015年10〜12月期のGDP(国内総生産)速報値は、物価変動の影響を除く実質の季節調整値で前期比0.4%減、年率換算では1.4%減と、2四半期ぶりでマイナス成長に転じた。

 大企業を中心とする好調な業績を背景に賃上げと設備投資の増加につなげ、日本経済の不振を一時的なものにとどめる。政府は最近まで、こんなシナリオを描いていた。

 だが、海外経済の不透明要因が増し、企業の設備投資計画や、本格化した春闘の賃上げ交渉に冷や水を浴びせた格好だ。株安による資産効果の圧縮も必至で、政権が掲げる「アベノミクスの好循環」に危険信号が点滅している。

 首相官邸は株安がもたらす世論へのマイナス効果も警戒している。

 「景気とは、空気の景色を意味する。世の中の雰囲気に左右されるものだけに、安倍首相も菅義偉官房長官も日本経済の先行きの明るさや底堅さをアピールして、明るい空気を広げるのに腐心してきた」

 菅氏と頻繁に意見交換する間柄の竹中平蔵・慶応義塾大学教授はこう指摘する。

株価下落で空気が変わってしまう

 景気の先行指標ともいえる株価が上昇すれば、景況感が高まり、政権への期待や評価につながる――。「経済最優先」を掲げる安倍首相の政権運営の要諦の1つはここにあるのだ。

 それが、海外発の要因が大きいとはいえ、株安傾向はしばらく続きそうだ。しかも、日銀のマイナス金利政策導入の決定直後に株安が顕著になったことで、「世の中に日銀の失策と受け止められ出している」と政府関係者は話す。

 株安が消費者の心理を冷やし続ければ、景気回復への期待が押し下げられ、消費行動が低下するうえに内閣への批判も誘発しかねない。政権内では夏の参院選を控え、株安が政権に与えるダメージへの懸念が急速に広がっている。

 こうした状況に政府・日銀は焦りを隠さない。麻生太郎財務相は今月26〜27日に中国・上海で開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で「政策協調について検討を進めたい」と明言。為替介入についても「必要に応じて適切に対応していく」と踏み込んだ。

 2011年秋以降封印している「伝家の宝刀」をちらつかせ、市場をけん制したのだ。

 12日には安倍首相と日銀の黒田東彦総裁の会談が急きょセットされた。会談後、黒田氏は金融緩和の必要性について「必要になれば躊躇なく政策を調整する」と強調してみせた。

 だが、最近の市場の混乱は中国経済の減速や欧州発の信用不安など複雑な海外要因が絡み合っており、日本政府や日銀の対応には自ずと限界がある。

 相場の動きが急であれば、政府・日銀は為替介入に踏み切る見通しだが、市場関係者の間では日本が単独で実施しても効果は限定的との見方が出ている。

 焦りを募らす官邸から財務省、経済産業省幹部らに有効策の検討を急ぐよう指示が飛んでいる。だが、両省幹部は異口同音に「為替変動などに日本単独で打つ手は本当に限られている」と嘆く。

政府・日銀に漂う無力感

 政府・日銀は当面、口先介入でしのぐとともに、好調な実体経済を積極的に市場関係者に発信していく構えだ。 

 月末のG20での国際協調メッセージを市場安定への材料と見込むが、各国の利害関係が絡むだけに、説得力のある具体策を打ち出せるのか不透明だ。

 政府・日銀内に手詰まり感が漂う中、与野党内では今後の政治カレンダーを巡る様々な憶測が飛び交っている。

 安倍首相は5月末の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け外交成果を着実に積み上げ、夏の参院選になだれ込む戦略を思い描いてきた。だが、アベノミクスの失速がより鮮明になれば、参院選対策や衆院解散戦略に影響が出るのは必至だ。

 2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げの見送りも現実味を帯びてきた。

 「今度は前回のような景気判断はせず、リーマンショック級の世界的な出来事が起こらない限り、我々は予定通り引き上げていく考えだ」。財政健全化への配慮から消費増税についてこう語っていた安倍首相だが、世界的な金融不安の広がりで、引き上げに耐えられるような国内経済の環境整備が進むのか見通せなくなってきた。

 既に官邸からは「株価下落のスピードなどからして、今はリーマンショックに近い状況だ」との声も漏れ始めている。

 石原伸晃経済財政・再生相は現時点で否定するものの、経済の下振れリスクの高まりを受け、政府は2016年度予算案の成立後、早期に参院選に備えた経済対策を取りまとめる方向で検討に着手した。だが、政策期待だけで市場や企業、家計の不安を収められるのかは不透明だ。

 仮に安倍首相が消費増税の見送りに踏み切るなら、夏の参院選に合わせた衆参同日選か、年末または来年初めの衆院解散の可能性が大きくなる。

 「株価が2万円を目指すような上昇トレンドの中で参院選を迎えるのがベストだ」。年初にこうした思惑を親しい関係者に語っていた安倍首相だが、激変する市場環境の前に、こうした理想的な流れは遠のきつつある。

 株価下落が野党に政権批判の材料を提供する点も見逃せない。昨年末、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年7〜9月期の運用成績が7兆8899億円の赤字だったことが話題になったが、年明け以降の株安で運用環境は相当厳しくなっている。民主党幹部は「有権者の関心が高いテーマ。アベノミクスの負の側面が鮮明になった」と話す。

 閣僚や自民党議員の失態が相次ぎ、北朝鮮のミサイル発射など国内外の懸案に追われる安倍政権。攻め手を欠く野党の対応にも救われて高い内閣支持率を維持してきたが、為替や株価の変動がアベノミクスの先行きや今後の政権運営を左右する展開となりそうだ。

このコラムについて
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/021500254/


 


 
金融市場の動揺を抑える「4つの手段」

2016年2月16日(火)須永 太一朗

 金融市場の動揺が続いている。2月15日の日経平均株価は終値で1万6000円台を回復したが、2015年末に比べるとなお15%ほど安い水準。弱気に傾いている投資家の姿勢を変える手段として、専門家は4つの政策対応を掲げる。ただ実現可能性が低い手も多く、実効性には疑問符が付く。

シティグループ証券の飯塚尚己チーフストラテジスト
 15日はひとまず円安・株高の動きとなったが、日経平均で2万円台、対ドルの円相場で1ドル=120円台をつけていた昨年の水準に比べると、その回復は鈍い。金融市場の動揺を抑える有効な対応は何か。シティグループ証券の飯塚尚己・日本株チーフストラテジストは、4つの手段を挙げる。

 まずは世界の主要中央銀行が、現在の金融政策を維持、またはさらに緩和的な方向に持っていくこと。具体的には日銀とECB(欧州中央銀行)がさらに金融緩和を打ち出すこと。そしてFRB(米連邦準備理事会)と英イングランド銀行が現状の金融政策を維持することだ。FRBについては、利上げを当面見送るといった対応を期待する。

ドイツの財政出動に期待

 2つ目に挙げたのが、財政余力がある各国政府による財政出動だ。一例として挙げたのがドイツと北欧諸国。これらの国は、世界のGDP(国内総生産)構成比率では合わせても1割に満たないが、政府の積極的な姿勢を見せることが、不安心理を鎮めるのに一定の効果があるとみる。

 そして3つ目が「人民元の秩序だった調整」だ。中国では3月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)で人民元が切り下げられる可能性があるが、ここに国際社会が関与して切り下げ幅を適正にコントロールし、新興国間での通貨安競争を招かないようにする必要があると指摘する。

 最後が「中東の産油国が足並みをそろえた減産」だ。これは金融市場の不安の震源が、原油安によるものとの見解に基づく。各国の協調で原油相場が回復に向かえば、投資家の動揺も収まるとみる。

 飯塚氏は、4つの対応策のうち「主要中銀による緩和強化または維持」が、最も手を打ちやすいと挙げた。「2月下旬に開催予定のG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議で議論し、合意形成もしやすい」と話す。

 飯塚氏は以上、実行しやすい順に並べたうえで、4番目の産油国そろい踏みでの減産を最も実現のハードルが高いとしている。「今年1月、中東の二大産油国であるサウジアラビアとイランが国交を断絶。中東情勢の緊張が高まっており、協調は難しい」としている。

 また、現在の金融市場の状況と今後について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストにも見通しを聞いた。


三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジスト
 芳賀沼氏はまず、金融市場で続くリスク回避の動きについて、「政策に対する信認が薄れていることを示す」と指摘する。日銀が2月16日から導入するマイナス金利も、「十分に準備できていない中での導入となりそうだ」とみる。

 背景にあるのは、日銀やFRB、ECBなど、従来は市場から独立した存在であったはずの中央銀行が、国債などを購入する金融緩和策によって市場の主要なプレイヤーとなり、位置づけが変わってしまったことだ。「独立した存在という権威が失われつつあるため、投資家に足元を見られるようになった」と話す。

配当利回りに注目

 一方で「弱気に傾きすぎるのは禁物」とも指摘する。金融緩和によりマイナス近辺で推移する日本国債の利回りに比べて、株式の配当利回りは2%を超える。

 業績の先行きへの警戒感から配当予想を引き下げる企業が今後増える可能性はあるが、それでもゼロ近辺の国債に比べると、はるかに高い利回りを獲得できるとみる。15日の日経平均が大幅に上昇したのも、3月期末で権利が得られる配当を見込んだ買いが一部に入ったためと見られる。

 今後の焦点は、国内の企業業績の動向だ。米国や中国景気の先行き不安、リスク回避の円高が進み、2016年度の国内企業は、今年度に比べ減益となる可能性がある。

 だが芳賀沼氏は「減益率が1ケタにとどまったり、ほぼ横ばいでとどまったりするという『思ったほど悪くはない』という見通しが出てくれば、安心感が広がり、日本株を買い直す動きが出やすい」とみている。

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今日からマイナス金利、景気失速で早期緩和と消費増税見送り観測も
2016/02/16 00:01 JST

    (ブルームバーグ):金融市場の混乱が続き、景気の停滞が続く中、日本銀行のマイナス金利の適用が16日から始まる。金融市場では早くも追加緩和観測が強まっており、2017年4月から予定される消費増税の先送り観測も出始めている。
昨年10−12月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前期比年率で1.4%減と、2期ぶりのマイナス成長となった。 マイナス成長はアベノミクスが始まって以来5回目で、特に全体の約6割を占める個人消費が前期比0.8%減と大きく落ち込んだ。
石原伸晃経済再生相は個人消費について「記録的な暖冬から冬物衣料などが落ち込んだ」と記者会見で述べたが、東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは15日付のリポートで、今回のような大幅な減少のすべてを「暖冬効果」で説明するのは無理があると指摘。昨年8月以降の世界的な金融市場の混乱により、企業や家計の経済活動が「当初の想定以上に慎重化している可能性がある」という。
そうした中、日銀が1月決定したマイナス金利が16日から適用される。各金融機関の昨年の年間平均残高に相応する日銀当座預金は従来通り0.1%、所要準備額に相当する残高や貸出支援基金残高に相応する準備額などは0%が適用される。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「16日に新制度が開始される段階でマイナス金利が適用されるのは10兆円程度」と当座預金残高全体の4%にとどまるとみる。
マイナス金利は逆効果
マイナス金利の決定直後こそ市場は円安・株高で反応したが、サプライズ効果は数日しか持たず、その後は円高・株安に転じ、足元まで乱高下が続いている。黒田東彦総裁は国会などで繰り返し、「個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えてない」と述べ、消費者の不安を払しょくする発言を繰り返しているが、低迷が続く個人消費に対してマイナス金利は逆効果という見方も増えつつある。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストはGDP発表後のリポートで、「既に預貯金金利がゼロ制約に直面しているので、利子収入減少の影響はわずかであろうが、将来的な預貯金金利マイナス化への懸念で『老後への不安』が増し、現在の消費を抑制するインセンティブともなり得る」という。
ドイツ証券の小山賢太郎エコノミストは同日のリポートで、「今年に入ってからの急激な円高、株安は個人消費、設備投資にとっては逆風である。また、このタイミングでの円高株安は、春闘の交渉にもマイナスの影響を与える可能性がある」と指摘。「日銀のマイナス金利も、消費者の貯蓄要因を高める可能性がある」とした上で、「16年の成長が鈍化するリスクは高まりつつある」とみる。
3月緩和、臨時会合も視野に
こうした中、早くも追加緩和観測が強まりつつある。JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは2期ぶりのマイナス成長を受けて、「日銀の早期追加緩和の可能性は高まった」と指摘。3月14、15日の金融政策決定会合での追加緩和をメーンシナリオとしながらも、「今後の市場動向次第では、次回決定会合前に臨時会合が開催され、そこでの追加緩和もあり得る」と予想する。
バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストも同日のリポートで、ドル円相場が1ドル=115円を下回る状態が続くことを前提に、メーンシナリオとして3月会合での追加緩和を想定。円高が急進する場合は「臨時の金融政策決定会合の開催」も視野に入るとみている。
14年4月の消費増税以降、個人消費の停滞が続いていることで、17年4月に延期された2度目の消費増税が再び延期されるとの見方も増えつつある。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストはGDP発表後のリポートで、個人消費は「14年の消費増税以降、ほとんど伸びていない」と指摘。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストも「耐久財消費は2015年1−3月期以降、4四半期連続で減少した。消費税率が引き上げられた14年4−6月期以降では7四半期中6四半期で前期比がマイナスとなる異常事態になっている」という。
高まった消費増税のハードル
伊藤忠経済研究所の武田淳主任研究員は15日付のリポートで、「年明け以降の内外の環境変化は、復調の兆しを見せる設備投資に冷や水を浴びせる恐れもある。次回の消費増税を予定通り行うためのハードルは相当に高まった」とみる。
河野氏は15日付のリポートで、「株価・為替の変調、および世界経済の先行きに下振れリスクが増していることを考えると、政治的には再び消費増税が先送りされる可能性も十分考えられる」と指摘。金融政策についても「円高圧力が一段と高まれば、政権からプッシュされ、副作用の大きい政策しか残っていないとしても日銀は静観するわけにはいかないだろう」という。
一方で、武田氏は電話取材に対し、「株が落ち着き上昇してくれば、マイナス金利政策に対するネガティブな印象は払しょくされるだろう」との見方も示し、マイナス金利政策は本来「円高を止めて株価の回復に貢献する政策のはず」としている。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2KYBK6KLVRU01.html


 

 
限界・副作用が早くも露呈した「マイナス金利」マネーで実物は動かせない

2016年2月16日(火)上野 泰也


 1月28、29日に開催された日銀金融政策決定会合で、黒田東彦総裁が主導して突然導入された「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」。すでに筆者のコメントを日経ビジネスオンラインでも伝えているが(1月29日配信【ニュースを斬る】「いかにも実験的で危ういマイナス金利」参照)、ここでは筆者の見解を追加でお伝えしたい。

 まず、日銀による今回の突然のマイナス金利導入について、そのタイミングから「甘利明氏の閣僚辞任で苦しくなった安倍内閣を救った」とも言われるが、何が直接のきっかけになったのだろうか。これに関しては市場の内外でさまざまな見方が出ているわけだが、黒田総裁が追加緩和に今回ゴーサインを出す上では、以下の3点が直接の契機になったのだろうと筆者はみている。

@年初来の世界的な金融市場不安定化の中で、円高ドル安が115.85円(昨年1月16日に記録した水準)を超えて一段と進んでいくことへの警戒感が強まったこと(今年1月20日には一時115.97円までつけていた)。

A物価の基調は改善していると日銀が主張する上で大きな根拠になってきた日銀版CPIコア(生鮮食品及びエネルギーを除いた消費者物価指数)についても、前年同月比プラス幅が近く縮小していく流れが見えてきていたこと。

 会合2日目である29日の朝に発表された1月の東京都区部CPIコア(生鮮食品を除いた消費者物価指数)が、「教養娯楽用耐久財」「生鮮食品を除く食料」「家庭用耐久財」などの押し下げ寄与によって前年同月比▲0.1%に沈んだことが、ダメ押しになったとみられる。

B1月の会合に対しては市場やマスコミの警戒度合いが下がっており、サプライズを演出して、2%の物価目標実現に向けた日銀の強い意志を効果的にアピールするには格好のタイミングだと判断されたこと。

サプライズ狙いの政策運営はいかがなものか

 それにしても、B(サプライズの演出)は毎回巧妙で、追加緩和があると予想していても、実際にそれが打ち出されるタイミングがずれてしまう。

 これについて、サプライズ狙いの金融政策運営は、望ましい手法だとは言い難い。「市場との対話」を犠牲にしていることは明らか。日銀からの情報発信を素直に受け止めた上で、ロジカルに政策の動向を予想するといった、地道なBOJ(日銀)ウォッチの作業を続けるのが空しくなってしまう人もいるだろう。

予想が2度外れた筆者の言い分

 「黒田日銀」発足後、政策変更のタイミングが予想からずれてしまう事態に、筆者は2度直面した。1度目は、2014年10月の追加緩和。筆者は2015年1月の追加緩和を予想していたのだが、3カ月手前で黒田総裁は動いた。次が、今回(2016年1月)の追加緩和。筆者は2015年10月の追加緩和を予想していたのだが、3カ月後ろで黒田総裁は動いた。

 「マイナス金利の世界は無限で、日銀はいくらでも下げられる」という声もあるようだが、そうではないと筆者は考えている。論理的には無限であるとしても、あるいは現金を引き出して大量に保管する金融機関が出てこないよう日銀がペナルティーを定めているとしても、現実の世界では、マイナス金利幅の拡大には自ずと限界がある。

 マイナス金利は、預金者や金融機関の収益に負担を強いる政策である。一般の預金者向けの金利も市場金利に合わせてマイナスにすれば(たとえば口座管理手数料を課すケースが考えられる)、金融機関の収益が圧迫される度合いは軽減されるわけだが、レピュテーションのリスクなども考えると、現実にそうした動きに出る金融機関は現れない可能性が高い。

 その一方で、市場金利の一層の低下や貸し出し競争のさらなる激化をうけて、資金の運用利回りは低下せざるを得ない。したがって、日銀がマイナス金利幅を拡大して市場金利の低下が進めば進むほど、金融機関の収益は圧迫される。

 貸し出しを含む金融システム全体の円滑な作動にとっては明らかにネガティブな話であり、無理にマイナス金利政策を推し進めていくと、実体経済に悪影響が及んでくる。実際、日銀がマイナス金利を導入した後に、収益悪化懸念から東証上場の銀行株は大幅に下落している。

 また、金融市場での運用難が一段と強まる中で、金融機関が無理なリスクテイクに追い込まれかねないことも危惧される。マネーゲームは、勝者だけで成り立つわけではない。

 なお、甘利氏の後任である石原伸晃経済再生相は2月2日の記者会見で、マイナス金利による金融機関の収益力低下などの副作用についても「知り合いの地銀頭取らから聞いている」と述べ、マイナス金利の影響については「もう少し見守ることが必要」とした。

 そのことは、マイナス金利導入直後のドル/円相場の上昇が1月29日の121.70円で頭打ちになり、その後120円割れ、115円割れ、さらに2月11日には一時110円台まで円高ドル安が急速に進んで、マイナス金利導入の効果があっさり打ち消されたことから確認されたと言えるだろう。

 日銀が今回導入したマイナス金利のスキームは、当座預金残高のうちごく一部にのみ0.1%をチャージするものであり、金融機関の収益に一定の配慮をする代わりに、為替相場に及ぶ効果は限定的なものになった。

 また、ドル/円相場は、日本側の材料だけで動くわけではなく、米国側の材料、中でもFRB(連邦準備制度理事会)による今後の金融政策運営(利上げ回数や利下げ転換の有無)によって、大きく左右される。米国の利上げが当面困難であることがイエレン米FRB議長の議会証言で確認されると(当コラム1月26日配信「昨年末の米利上げは2000年の日本そっくり 」参照)、円買いドル売りが加速した。

 さらに、「原油価格下落」と「中国経済不安(さらには不信)」という、「リスクオフ」の円高に市場が傾斜する原因となる2つの大きな材料が厳然と存在し続けていることも、非常に重要である(当コラム 2月9日配信「『リーマンショック2』は来るのか 中国『不信』・原油『底なし』、2つのビッグリスク」参照)。その上、仮に日銀が今後マイナス金利幅を拡大する場合でも、市場に対するサプライズ効果はもはや期待しにくいという事情もある。

 さて、今回のマイナス金利導入に対する一般の預金者の反応はどうなのか。

 新しい準備預金の積み期間が始まり、日銀当座預金残高のうち「政策金利残高」に対して0.1%のマイナス金利が適用され始める2月16日を待たずに、多くの銀行で定期預金の金利が引き下げられたり、MMFなど短期の公社債で運用する投資信託の購入受付が停止されたりするなどしており、新聞各紙はそうした動きを大きく取り上げている。

預金者にとっては大差なし

 だが、預貯金の金利がきわめてゼロに近いことが長期化・常態化しているため、金利のさらなる微細な低下に対して、預金者が目立った動きに出るようなことはないだろう。

 ただし、多くの預金者にとって、「増えない」ことと「減る」こととは、意識の面でまったく違う。したがって、既に述べた通り、一般の(小口の)預金者から口座管理手数料を徴収するのは、現実問題として非常に困難である。

 なお、マイナス金利の導入を有権者がどのように受け止めているかについては、1月30〜31日(決定の直後)に実施された読売新聞の世論調査が参考になる。

 質問「日本銀行は、初めて『マイナス金利』を導入する追加の金融緩和策を決めました。あなたは、この緩和策が景気の回復につながると思いますか、思いませんか」に対する回答は、「思う」(24%)、「思わない」(47%)、答えない(28%)になった。

 金利をマイナスの領域まで無理に引き下げても景気回復につながるとは思わないという、筆者の意見ではきわめて妥当な見方をとった回答が、半分近くになった。

このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー

景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/021200032/?ST=print


 

 


経済の危機的状況が見えない世界の指導者たち

新たな金融危機の足音が聞こえる

2016.2.16(火) 柯 隆
中国、対欧州の新たな輸出ネットワークを強化へ
中国の李克強首相は中国経済はこのまま穏やかな成長が続くと主張しているが・・・(2014年12月16日撮影)。(c)AFP/ALEXA STANKOVIC〔AFPBB News〕
 中国の李克強首相は、中国経済は穏やかな成長が続いていると繰り返す。

 日本の安倍総理は、企業業績が改善され、賃金も上昇しており、日本経済はもはやデフレを脱却したと国会で豪語する。

 アメリカのオバマ大統領は経済についてほとんど言及しないが、FRBのイエレン議長が2015年暮れに利上げを実施し、金融緩和から引締めへの出口政策が取られた。

 こうしてみると、世界主要国の指導者および政策担当者のほとんどは、景気動向、経済の先行きについてポジティブに判断しているようだ。

 しかし、世界経済は本当に良い方向へ進んでいるのだろうか。新年早々、上海の株価は大暴落した。それは単なる投機筋の空売りによるものではない。その前に発表された2015年12月のPMI(購買担当者指数)は予想よりはるかに悪い値だった。中国経済は一段の減速が避けられないとの見方は、もはや世界金融市場でコンセンサスになっている。中国の需要低迷を受けて、原油価格は1バレル=30ドルを下回り、26ドルを記録した場面もあった。原油価格の急落は金融市場を直撃し、世界の景気に悪影響をもたらす。

 日本経済は日銀の異次元緩和により円安が進み、株価も大きく上昇した。この動きだけをみれば、アベノミクスは成功したかのように見える。しかし、2015年の年央に発表されたアベノミクスの新3本の矢はいずれも政策の体を成していない。500兆円のGDPを5年で600兆円に拡大するというが、単なる絵に描いた餅を見せられただけといえよう。

 アメリカでは、製造業のアメリカへの回帰などにより経済は回復軌道にあるとの見方が現れている。だが、新規雇用の増加が予想を下回っているため、投資家のマインドに水を差している。冷静に考えれば、FRBの利上げは時期尚早と言わざるを得ない。

 つまり、冷静かつ客観的に判断すれば、世界の指導者および政策担当者の景気判断は間違っている。世界経済は新たな金融危機へと突進しているのかもしれない。

構造転換が進まない中国経済

 中国政府の公式見解は別として、マーケットウォッチャーとアナリストたちは、中国経済はクラッシュする可能性こそ低いが減速を続けるだろうとの見方が圧倒的に多い。

 ジョージ・ソロス氏のような、中国で「股神」(株式投資の神様)と祭り上げられている投資家は、中国経済がハードランディングするとみている。香港の華人財閥「長江」グループの李嘉誠氏も同じ見方を示し、中国国内の金融資産を2年前から引き揚げている。

 一部の研究者は中国経済についてそれほど心配はいらないと主張する。重厚長大の産業はいろいろな問題を抱えているが、ネット通販などのECビジネスは好調に拡大しているというのがその理由だ。確かに中国には6億人のネット利用人口がいて、若者を中心にネット通販で買い物をする傾向が強い。しかし、そのしわ寄せで店舗を構える店の倒産が増えている。

 実は、中国経済の本当の問題はここにない。李克強首相が就任当初から公約した「構造転換」がほとんど進んでいないことこそが、中国経済が持続的な成長を続けられない原因である。

 転換すべき構造は2つある。まず、投資依存の経済から消費依存の経済への転換だ。だが、消費はそれほど拡大していない。もう1つの構造転換は、低付加価値の経済から中付加価値の経済へ、さらに高付加価値の経済へ、という産業構造の高度化である。しかし、カギとなるイノベーションは起きず、産業構造の高度化は果たせていない。

 何よりも産業構造の高度化を妨げているのは、市場を独占支配する国有企業の存在である。競争が妨げられている市場ではイノベーションは起こりにくい。中国では知的財産権が十分に保護されていないのも問題である。思い切った改革を断行しなければ、中国経済はこのまま慢性的な停滞に陥るだろう。

アベノミクスは挫折する可能性が大

 次に日本経済の先行きはどうか。

 アベノミクスの1本目の矢、異次元の金融緩和は一定の成功を収めたといってよい。しかし、異次元であるからこそ長期にわたって続けるべきではない。日銀は出口政策を考えるべきだった。にもかかわらず、実体経済が安定しているなかで日銀は唐突にマイナス金利を導入した。それによって市場は大混乱してしまった。

 マイナス金利はいわば劇薬である。日本経済が非常事態にあるならやむを得ないが、この状況でマイナス金利を導入した日銀の舵取りには問題がある。中央銀行は独立性を確保することが重要だが、今の日銀の政策の取り方をみると、独立性は完全に失われてしまっている。

 景気回復のためになりふり構わない日銀の舵取りをみると、風車に立ち向かうドン・キホーテのようにもみえる。黒田総裁はやれることを何でもやると豪語しているが、今は日銀の出番ではない。

 おそらく安倍総理の頭の中は、景気を良くすることよりも、憲法改正が最終的なゴールなのだろう。景気を良くしなければ、憲法改正に支障が出るというわけだ。しかし、景気回復に向けて重要な役割を果たしていた甘利大臣は辞任を余儀なくされ、「景気回復 → 憲法改正」のシナリオは崩れてしまった。官邸はさらなる金融緩和を日銀に期待しているわけだが、おそらくこのままでは、2017年の消費税引き上げは実施できないだろう。

失われたアメリカのリーダーシップ

 アメリカは4年に一度の大統領選という政治ショーの季節に突入した。

 今回の大統領選は、アメリカの国家像がどの方向へ進むかという分かれ道になる。アメリカでは経済格差が大きな問題になっている。それに対して、自由競争を尊重する保守的な道を歩むのか、民主社会主義的な道を歩むのか、さもなければ第三の道を模索するのかということだ。また、テロにいかに打ち勝つかも、大統領選の大きな争点である。

 世界はテロ問題、難民問題、国際秩序の乱れ、国連の機能低下といったさまざまな問題を抱え、まさに混沌としている。北朝鮮が核実験しようが、ミサイルを発射しようが、国際社会はなすすべはない。

 乱世においては国際協調が求められているが、アメリカのリーダーシップ低下によって国際協調も取れていない。

 当初、アメリカがTPPの拡充を主導することで新たな市場が構築され、主要国の経済は一気に活性化すると期待されていた。しかし、TPPの締結から新たな市場の構築まではかなり長い時間を要する。また、欧州の景気後退の長期化はアメリカにとって予想外の展開であった。

 新たな経済危機に突入してしまう危険性が日増しに大きくなっていると言わざるを得ない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46053

 


Business | 2016年 02月 16日 00:35 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
ECB、低インフレ長期化なら3月に追加緩和の用意=ドラギ総裁

[ブリュッセル/フランクフルト 15日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は15日、このところの金融市場の混乱、もしくはエネルギー価格の長期的な下落によりユーロ圏のインフレ率が低水準にとどまる状況が長引く恐れがある場合、ECBは3月の理事会で政策緩和に踏み切る用意があると述べた。

ドラギ総裁は欧州議会で行った証言で「ECBは先ず、域外からの低インフレ要因が域内の賃金、物価形成、インフレ期待に及ぼす影響がどの程度強いのか検証する」とし、「次に、このところの金融市場の混乱を踏まえ、われわれの金融上の措置が金融システムを通してどのように波及しているのか、特に銀行を通した波及について検証する」と述べた。

そのうえで、「これらのうち1つでも物価安定に対する下向き圧力となっていることが判明すれば、ECBは躊躇せず行動を起こす」と述べた。

ドラギ総裁は前回の理事会後の記者会見で、3月の理事会で一段の緩和措置が打ち出される可能性があることを示唆している。

ユーロ圏の株式指数.STOXXEは年初から約13%下落しており、なかでも銀行株指数.SX7Eは22%下落。こうしたなか銀行の資金調達コストが上昇し、その結果融資が手控えられれば、ECBが実施している緩和措置の効果が薄れる恐れがある。

ドラギ総裁は「銀行セクターをめぐる状況は2012年から大きく変化した」と指摘。ユーロ圏の銀行の資本状況は過去数年間に大幅に改善したとしながらも、一部銀行はリストラ関連費用や不良債権問題のほか、訴訟問題をめぐる先行き不透明性などの課題になお直面しているとの認識を示した。

そのうえで、ECBには責務を果たす用意があるとする一方、各国政府も公共投資拡大などの景気支援的な財政政策を打ち出す必要があるとの考えを示した。

ECBの中銀預金金利は現在マイナス0.3%。市場では年末までに2回の引き下げで同金利をマイナス0.5%とするとの予想がすでに織り込まれているが、アナリストの間では1回の引き下げでマイナス0.4%とするとのやや慎重な見方が出ている。
http://jp.reuters.com/article/ecb-chief-reiterates-readiness-to-ease-p-idJPKCN0VO1SX

 


欧州金融市場、戻って来た「有害な双子」銀行株が軒並み急落、最初のユーロ圏危機との違いは?
2016.2.16(火) Financial Times
(2016年2月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ドイツ銀行、顧客に7200億円を誤送金 報道
欧州銀行株が総崩れしている(写真は、その震源地とも呼べるドイツ銀行本社)〔AFPBB News〕
 先週の欧州金融市場の総崩れは、重大な転機となる出来事だった。我々が目の当たりにしたものは、必ずしも株式の弱気相場の始まりではなく、将来の景気後退の不確かな前触れでもなかった。我々が見たものは――少なくとも、ここ欧州では――、金融危機の再来だ。

 ユーロ圏危機のバージョン2.0は、いくつかの点では最初の危機ほど恐ろしく見えないかもしれないが、別の点ではさらにひどい。

 債券利回りは、当時ほど高くない。ユーロ圏には今、救済の傘が備わっている。銀行のレバレッジの水準は、当時より低い。

 しかし、銀行システムの問題は一掃されておらず、ゾンビ金融機関がたくさん存在し、2010年とは対照的に我々はデフレ環境に置かれている。欧州中央銀行(ECB)はこれまで4年間、インフレ目標を達成できておらず、今後何年も達成できない可能性が極めて高い。

銀行と国債の悪しき相互作用が復活

 市場は4つの明確なメッセージを送っている。最初の最も重要なメッセージは、有害な双子が戻って来たということだ。つまり、銀行とその本拠の国家との相互作用である。先週の銀行株の暴落は、ユーロ圏周縁国の債券利回り上昇と同時に起きた。このパターンは2010〜12年に起きたこととよく似ている。国債利回りは当時と同じような目のくらむ高さには達していないが、ポルトガルの10年債利回りは4%に迫っている。

 高い国債利回り、拡張的な財政政策、持続的に高い公的部門・民間部門の債務水準、それに低い経済成長率という組み合わせは、明らかに持続し得ない。イタリアの状況はポルトガルのそれよりましかもしれないが、それでも持続不能だ。

 イタリアの10年債利回りは1.7%を超えた。これに対し、ドイツ国債の利回りは0.2%を若干上回る程度だ。この利回り格差、いわゆるスプレッド(利回り格差)は、金融システム内のストレスを示す尺度であり、その基準は再び高まっている。

 金融市場は我々に、2012年のマリオ・ドラギECB総裁の誓いに対する信頼を市場が失いつつあることを告げている。ユーロ圏の加盟国を投機的な攻撃から守るために「必要なことを何でも」すると約束した時のことだ。ドラギ総裁はこの約束でユーロ圏危機の第1段階を終わらせたが、それには代償が伴った。根本的な構造問題を解決する切迫感が、突如、消えてしまったのだ。

銀行同盟の失敗

 2つ目のメッセージは、欧州の銀行同盟が失敗したということだ。欧州連合(EU)が行き着いた銀行同盟は、ひどい妥協の産物だった。銀行の監督権限と破綻処理制度が一元化されたが、預金保険はなく、経営難に陥った金融機関を救済する政府のバックストップ(安全装置)もないのだ。

 ちょうど欧州の「銀行再建・破綻処理指令(BRRD)」が完全に発効したタイミングで銀行株が急落したのは偶然ではない。

 この指令は、破綻しかけた銀行のための共通のベイルイン・メカニズムを定めている。

 イタリアは昨年、地方銀行4行の救済でこの法を適用し、債券保有者に損失を負わせた。ほかの銀行の投資家は、自分たちもベイルインの対象になることを恐れている。

 ドイツ銀行の投資家が先週、パニックし始めた理由の1つは、同行の発行した大量の偶発転換社債(CoCo債=ココ債)だった。ドイツ銀行が問題に陥った場合、これらの社債は株式に転換され、もし破綻処理の手続きが発動されるようなことがあれば、即座に無価値になる。

インフレ目標を達成できないECBへの不信感

 3つ目のメッセージは、将来のインフレに対する市場の予想が恒久的な変化に見舞われたということだ。ECBは市場に基づく将来のインフレ予想を真剣に受け止めている。もしかしたら、真に受けすぎているのかもしれない。

 ECBが好む基準は、今日から5年、10年先までを視野に入れたインフレ率だ。この基準は先週、ぎりぎり1.4%強という史上最低水準まで落ち込んだ。この事実は、市場はもはや、ECBが長期的にも2%未満というインフレ目標を達成すると思っていないことを教えてくれている。

市場が恐れるマイナス金利

 4つ目のメッセージは、市場がマイナス金利を恐れているということだ。なぜなら、およそ6000行ある欧州の銀行の圧倒的大多数が、旧態依然とした貯蓄貸付銀行だからだ。預金を預かり、その資金を貸し出すのだ。

 銀行は通常、貯蓄者に提供する金利を、自分たちがECBに課される金利に沿って調整し、2つの金利の間で利ザヤを維持する。

 だが、ECBが市中銀行にマイナス金利を課すと、その仕組みがもう機能しなくなる。

 市中銀行が貯蓄口座にマイナス金利を課せば、小口の貯蓄者はお金を引き出して逃げる。

 銀行はもちろん、中央銀行に預けておく準備金を減らし、代わりに資金を貸し出すこともできる。あるいは、リスクの高い証券に投資することもできる。しかし、その展望も、必ずしも銀行の株主にとって安心できるものではない。貸し付けや投資の良い機会が見当たらない場合は特にそうだ。

 振り返ってみると、欧州の当局が犯した重大なミスは、2008年に米リーマン・ブラザーズが破綻した後、欧州の銀行システムを一掃できなかったことだ。これが原罪だった。その後、ほかの多くの過ちが問題を悪化させた。景気循環を増幅させる財政緊縮、度重なるECBの政策の失敗、きちんとした銀行同盟の創設失敗といった過ちだ。そうした決断がことごとく、突き詰めるとドイツの政策立案者によってもたらされた圧力の結果だったことは、興味深い。

By Wolfgang Münchau

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46075

 
ドイツ銀は高リスク債の利払い可能、今年も来年も−ムーディーズ
2016/02/15 22:18 JST

    (ブルームバーグ):ドイツ銀行はリスクの高い「その他Tier1債」(AT1債)の利払いを今年も来年も履行できるとの見方を、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが示した。
ムーディーズのアナリスト、ピーター・ナービー氏は15日の発表文で、ドイツ銀は今年4月に期限が到来する利払いが可能であり、「重大かつ予想外の出来事」がない限り来年も履行が可能だと指摘した。ムーディーズがドイツ銀AT1債に付与している格付けは、ジャンク級(投機的格付け)の上から3番目の「Ba3」。
ドイツ銀は業績や財務への懸念から株価と社債相場が下落。信頼回復に取り組む同行は、12日には債券買い戻し計画を発表した。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、ドイツ銀が債務を履行する能力を制限しかねない損失が今後発表される恐れがあるとして、AT1債の格付けを1段階引き下げ、ジャンク級の上から4番目の「B+」とした。
原題:Deutsche Bank Can Make Payments on Riskiest Debt, Moody’s Says(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Katie Linsell klinsell@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Shelley Smith ssmith118@bloomberg.net
更新日時: 2016/02/15 22:18 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O2L9WS6S972F01.html

 

 
ついに自国民を抱えきれなくなってきたサウジ
原油価格下落で問題噴出、雇用先延ばしのために大学を増設?
2016.2.16(火) 堀川 晃菜
女性初参加のサウジ地方選、メッカ州で女性当選
サウジアラビアのジッダで、票を投じる女性(2015年12月12日撮影)〔AFPBB News〕
 原油市場の底値が見えない状況が続く中、財源の7割以上を石油関連収入に頼るサウジアラビアでは、2015年の財政赤字が1000億ドルを超えている(参考:1月15日「サウジアラビアを崩壊に導く独断専行の副皇太子」JBpress)。

「当面はオイルマネーの切り崩しで乗り切れたとしても、国家百年の計として見れば、雇用、教育、民主化などサウジはいま大きな問題に直面しています」と中東経済を研究する國學院大学経済学部の細井長(ほそい・たける)教授は話す。

 若年層の雇用問題はすでに顕在化し、雇用を先送りするために大学の数を増やして若者を押し込んでいるのだという。

深刻化する雇用問題

──原油価格の下落でダメージを受けるのはサウジに限らないと思いますが、なぜサウジでは雇用問題がそこまで深刻なのでしょうか。

細井長氏(以下、敬称略):サウジが他の中東諸国と違う一番の点は自国民の多さです。UAEやカタールは極端に外国人が多いので、外国人と自国民の割合は9対1ですが、人口の多いサウジでは半々程度です。

──外国人労働者をめぐる変化も起きているのでしょうか。

細井:原油価格の下落が続くことで、企業に自国民の雇用を促す「サウダイゼーション」の強制力が強まっています。中東諸国は労働力の自国民化を掲げていて、サウジなら「サウダイゼーション」、UAE(United Arab Emirates)なら「エミライゼーション」と呼ばれています。

──具体的にはどのような施策がとられているのですか。

細井:サウジでは、タクシー運転手など一部の職業は自国民しか就けないようになっています。また、「ニタカット・プログラム」では、会社が雇用しているサウジ人の割合に応じて、その企業で働く外国人の滞在(就労)を許可する期間をコントロールしたり、サウジ人の割合が低い企業にはペナルティを与えています。また、外国企業でも人事部門のトップは必ずサウジ人でなければいけないことになっています。

細井長(ほそい・たける)氏。國學院大學経済学部教授。2004年立命館大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。主著に『中東の経済開発戦略』、『アラブ首長国連邦(UAE)を知るための60章』
──雇用に関して特に大きな課題は何でしょうか。

細井:若者の雇用問題です。サウジでは30歳未満の人口が国民の約7割を占めています。このままいくと、2030年までに労働人口が2倍になるとも予想されています。女性の雇用となると、さらに厳しいですね。

──女性の就労が難しいのは、やはり宗教的な理由からですか。

細井:イスラムの中でもサウジは厳格な方で、宗教的な理由から女性の社会進出はかなり制限されています。まず、車を運転することができない(認められていない)ので、移動が制約されます。親族の男性に運転してもらうか、運転手を雇わないと仕事に行けません。また、家族以外の男性には顔を見せられないこともあって、勤めに出ること自体が難しい状況にあります。

 一方で、女性でなければ就けない職業もあります。UAEの学校では男女で授業を分けていますが、サウジの場合は小学校から大学まで、学校自体が完全に男女別です。だから女子校では当然、教員も女性に限られます。その他にも、銀行の女性専用コーナーや、婦人服の販売員などは女性に限られますが、ごく一部の職業だけです。

 女性抜きで成り立っている労働市場、経済構造を簡単に変えることは、かなり難しいと思います。だからサウジでは女子大生がものすごく多いんですよ。

溢れる大学生、就職先延ばしのため?

──女子大学生が多いということは、進学率は高いのですね。

細井:サウジは国家予算の多くを教育分野に割り当てていて、公立学校は大学まで学費無料。近年は大学の数をかなり増やしています。

 ただし、表向きは教育に力を入れているということになりますが、実態としては、若者の雇用を4年間先送りする意味合いが大きいのではないでしょうか。

──なるほど。でも、卒業を迎えたらどうするのですか。

細井:女性の場合は、結婚相手も親が決めるので、大学生でも結婚していて、出産のために休学するケースは珍しくありません。卒業後はそのまま家庭に入る女子学生も多いです。

 喫緊の課題は、若い男性の就職先がないことです。待遇の良い公務員が一番人気ですが、サウジは人口が多い分、競争率も高くなります。国営企業(石油会社など)もダメなら民間ということになりますが、国営と民間では歴然とした給料の差があるので、行きたがらない。

 企業からしてみても、サウジ人よりも低賃金で仕事のできるインド人やフィリピン人に働いてもらった方が効率的です。

──それでは失業者が増える一方ですね。

細井:失業保険に相当するものがあり、暮らしていく分には困らないのですが、原油価格がここまで下がると、さすがに悠長なことを言っていられないという危機感はあります。

国の在り方が問われている

──大学の教育レベルという点では、キング・ファハド石油・鉱物大学は2008年にアラブの大学で唯一、Times Higher Education の大学世界ランキングに入っていますね。

細井:やはり国の基盤となる分野ですから、石油に関する教育は相当レベルが高いですね。また、優秀な人材は国が留学費用を全額負担して、海外に留学させます。その中でも特に優秀な人材では、帰国後に初任給200万円級のエリート公務員になる人もいます。

 一方、いわゆる“時間稼ぎ”のための大学では、例えば、授業で行う実験でも、準備から片づけまで、すべて助手がお膳立てをして、学生は薬を混ぜて終わり。そんな話も耳にします。職員よりも学生の方が高級車に乗っているくらいですから。家にメイドがいるように教育現場でも助手が大勢いるのです。

──国民全体の教育レベルを底上げするという方向にはならないのですか。

細井:単純に、増える若年層に対して教育現場が追いつていない面もあると思いますが、かなりうがった見方をすれば、国民の反発を避けるために「あえて賢くさせないようにしている」とも受け取れます。

──それでも、お金で国民を満足させられなくなれば、反発も強まるのではないでしょうか。国際通貨基金(IMF)の見込みでは、歳出維持に必要な資産が5年以内に底を尽くと言われています。

細井:IMFの勧告を受け、サウジを含む湾岸6カ国では、付加価値税(VAT:Value Added Tax)の導入が検討されています。VATは日本でいう消費税に相当するで、ヨーロッパやアジア諸国で導入されている税制度です。けれども、税金を徴収すると国民に選挙の機会を与えなければならないので(地方選挙制度はあるが)、それは避けたいというのが本音でしょう。

 今は不要不急の公共事業を先延ばしにするなど予算の圧縮や、積立金を取り崩す、補助金を削減するなどして、どうにか食いつないでいる状況です。しかし、このままでは税制のあり方を検討せざるを得ない状況になるでしょう。その場合、一から徴税システムを築けるのか、という別の問題があります。

 いずれにしても、このまま原油価格が下落し続ければ、今までオイルマネーで抑え込んできた国民のさまざまな不満が噴出する可能性が高まります。「今をしのげるか」ではなく、長期的な国のあり方が大きく問われている時期だと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45976

 



世界一会社を信頼していない国、ニッポン_経営トップと従業員の関係、「不倫発覚夫と妻」と同じ?
2016年2月16日(火)河合 薫


 先日公開されたある調査結果が、ちょっとした話題だ。
 なんと、ニッポンのビジネスパーソンは、「世界一、会社を信頼していない」ことがわかったのである。
 「2016 エデルマン・トラストバロメーター」(2016 Edelman Trust Barometer) と題されたこの調査は、米国のPR会社Edelman(エデルマン)が世界28カ国の約3万3000人以上を対象に、2015年10月13日から11月16日にかけて実施したもの。
 調査は毎年行われていて、16回目にあたる今回初めて、以下の質問が加えられた。
「あなたはあなたが働いている会社を、信頼していますか?」(回答は「大いに信頼している」から「全く信頼していない」の9件法で、信頼度を算出)。
 なぜ、今年「会社への信頼」が問われたのか? 理由は明記されていないのであくまでも想像だが、会社へのエンゲージメント(=信頼、あるいはコミットメント)が米国を中心に注目されていることが考えられる。
 で、その新たな質問に対し、日本の“残念な現実”が明らかになってしまったのだ。
 「信頼している」とした日本人は40%で、世界28カ国中、最下位。米国(64%)、イギリス(57%)、中国(79%)、インド(83%)よりはるかに低く、ロシア(48%)よりも低い。そして、栄光のトップは、「メキシコ」の89%だ。

エデルマン社のホームページより
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“バラ色の国”メキシコ
 メキシコがトップという結果に、「?」となった方もいるかもしれないが、実はメキシコは知る人ぞ知る、“バラ色の雇用環境国”。その歴史は古く、メキシコ革命から引き継がれる保護的な労働法制が今も続いているのだ。
 もっとも背景にあるのは中南米諸国の堅調な経済成長。メキシコは、他の国に比べると賃金増加は緩やかだが、“労働者を守る”目的で定められたきめ細かい法律が「会社への信頼」を高くしているのだろう。
 法律では原則として、賃金や福利厚生内容を引き下げることはできないと定められている。また、税引き前利益の10%を、労働者の貢献度に関係なく、労働者に報酬として配分する「労働者利益分配金制度」(PTU)がある。
 時間外労働は、1日3時間、週9時間を超えてはダメ。1時間当たりの残業代は通常の2倍(割増賃金率100%)。仮に9時間を超えて残業させた場合には、3倍(割増賃金率200%)となり、日曜日の勤務には、 25%の割増賃金の支払いが求められる。
 しかも「もう9時間超えちゃってるから、僕、働かな〜い」といった拒否権が労働者に与えられているのだ。
 また、福利厚生の充実度は高く、食費補助、交通費補助以外にも、貯蓄基金の運営、民間医療保険への加入などなど至れり尽くせり。バーケーション(休暇)は勤続1年で6日間、その後勤続4年目まで毎年2日ずつ増え、勤続5年目以降は5年ごとに2日ずつ増える。 休暇期間中は通常の給与に加え、1日最低 25%以上のバケーションボーナス(休暇手当)が支払われる。
 なんとも…。問題山積みの日本からしたら、夢のような制度。羨ましすぎるぞ。
 もちろん問題もある。非正規の増加だ。メキシコで創出される正規雇用者数は、毎年、50万〜60万人程度。一方、生産年齢人口(15〜64歳)は毎年 100 万人以上増加し続けており、若年世代の多くが非正規(有期雇用)に流れているのだ。
 とはいえ、メキシコでは無期雇用が原則で、有期契約でも労働者が不利にならないような取り決めがされているため、私たちが想像する“非正規”とは若干異なり、“光ある非正規”なのだ。
「想像できない結果だ。これは経営者への警鐘である」
「でもさ、日本だって高度成長期は、そんな感じだったよね?」
「そうそう。親戚の就職先までめんどうみてくれた会社もあった」
「私なんて自宅なのに、住宅手当、月2万円ももらえていたし……」
 はい。そのとおりです。
 「ってことは、同じ調査を1970年代とかにやったら、日本はトップ?」……その可能性は高い。
 かつての日本人は“会社人間”と揶揄されたが、これはその時代のお父さんたちが望んだ働き方でもあった。日本全体が「アメリカに追いつけ、追い越せ」という価値観を共有していたことに加え、終身雇用制と年功序列という、いわば労働者と企業の間で成立していたギブアンドテイクの関係が存在した。つまり、企業はお父さんたちを「大切な人」として扱ってくれたし、お父さんたちも「会社は僕をちゃんと守ってくれるから」と、「会社のため」に働いたのだ。
 だが、今は……。“早期退職”という名のリストラで、経営者の尻拭いをさせられるご時世だ。非正規という“身分”の賃金は低い。労働者を守るための労働基準法も、抜け穴だらけだ。
 「今回の“日本の結果”は、愛社精神や長時間残業を厭わず献身的に働くライフスタイルからは、想像できない内容だ。これは経営者への警鐘である」
 これは、調査を行ったエデルマン・ジャパンのロス・ローブリー社長の言葉である。
 経営者への警鐘――。ニッポンのトップの方たちは、このお言葉をどう受け止めるだろうか?
 「信頼」は、企業経営に多大な影響を及ぼす。競争が厳しくなればなるほど、従業員同士、上司部下、経営者と従業員、会社と働く人、各々の間に存在する目に見えない変数=「信頼」が、経営に与える影響は高まっていく。
 信頼の背景には、常に期待(expectation)が存在するが、働く人たちはそもそも何を期待しているのか?
 そこで今回は、この調査の“もう一つの興味深い結果”を基に、「信頼」について、考えてみます。
経営者に対する日本人従業員の視線
 まずは、下の表をご覧下さい。
 これは
  「(従業員から)CEOへの信頼を築く上での、重要な要因」(=重要度)と、
「CEOの実施度」(=パフォーマンス)を尋ね、
「その差」(=差)を算出したモノ。
 さて、この結果を見て、どう思いますか?

エデルマン社のホームページより
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 信頼を得るのにもっとも重要な要因のトップは、「従業員を大切にする」(43%)。次いで「問題や危機に対処するために責任ある行動をとる」(42%)、「倫理的な行動をとる」(39%)。
 一方、差は「誠実さ」「エンゲージメント」のカテゴリーで高く、具体的には「従業員を大切にする」(37ポイント差)、「オープンで透明性のある行動をとる」(36ポイント差)、「倫理的な行動をとる」(34ポイント差)の順となった。
 つまり、これらの結果を、すご〜くわかりやすくすると……、
「うちのトップって、ちっとも“従業員のこと大切にしない”よなぁ?。結局は、コストなんだよね?」
「だいたい会社で何が起きてるのか分からないじゃん。リストラやるって、朝刊広げたら書いてあって、ビックリだよ」
「なんで、もっとこう“オープンで、透明性のある行動”がとれないのかね?」
「そうだよ。どこ向いて経営してるんだって、感じることあるよ。最近、不正とかあるけど、“倫理的に行動”してるのか。心配になるよ」
っといった具合だ。
「社員にわざわざ話したところで、どうにもならない」
 さらに、表を見てわかるように、パフォーマンスで最低になっているのが、「自社の状況について、頻繁かつ誠実にコミュニケーションをとる」。
 つまり、働く人たちはトップに「情報の共有」を期待しているのに、トップはそれをないがしろにする。その結果、「自分たちはちっとも大切にされていない」と感じている。「もっと大切にして欲しい」のに、誠実なコミュニケーションもとってくれないから、「やっぱり大切にしてないのね」との確信につながる。
 そんな悪循環が、「会社への信頼感」を低下させていると読み取れる結果が、示されているのである。
 もともと年功序列に代表されるヒエラルキー型の日本の企業は、「情報の共有」が苦手。いや、違う。「社員にわざわざ話したところで、どうにもならない」とか、「余計な不安を煽るだけ」と考えるトップが、いまだに多いのである。
 日本がまだ元気で、社会全体が同じ方向を向き、日本型雇用形態である、終身雇用制や年功序列が当たり前だった時代は、情報の共有など必要なかった。
 会社は「会社のために仕事をちゃんとやってくれるだろう」と労働者に期待し、労働者は「自分のためにちゃんと賃金をくれるだろう」と会社を期待し、どちらも期待どおりにできたし、期待どおりにするのが“フツー”だったので、「会社にすべて任せておけば大丈夫」と誰もが信じ、揺るぎない信頼関係が成立していたのだ。
 だが、会社は「期待」を裏切った。リストラを断行したのだ。
 しかも、それは唐突に、そう、実に唐突に行ったのである。
 ある日、突然“白い封筒”が送られてきたり、朝、新聞を広げたらそこに「自分の会社が大規模なリストラを行うこと」が書かれていたり、「パパ、大変! パパの会社3000人リストラするって言ってたよ!」とテレビを見ていた子どもに教えられたり。
 アノ山一のとき、私はたまたま足裏マッサージ店の待ち合い室にいたのだが、目の前の男性の携帯が鳴り、青ざめていく様子に偶然にも遭遇した。彼は、「えっ?ウソ!テレビでやってるの?……(無言)……。わかった。ちょっと部長に連絡してみる」と電話を切り、慌てた様子でその場を去った。家に帰るとテレビは「山一」のニュースだらけで。おそらく、そうおそらく彼も、山一の関係者だったのだろう。
 その後も突然のリストラはあちらこちらで敢行され、完全に労働者と会社の信頼関係は崩壊してしまったのだ。
 そこで働く人たちが求めたのが、「きちんとした情報」だったのである。
信頼関係が崩れた後には、疑念しか残らない
 なぜ、信頼関係が崩壊すると、人は「情報」を求めるのか? これは夫婦に置き換えてみると実によくわかる。
 ある日、夫の浮気がバレたとしよう。浮気を決定づける、“真っ黒”の物的証拠が見つかったのだ。
 「もう、信じられない!アンタ、ナニやってるの!」
 ぶち切れた妻は、激怒。夫は「もうしない。キミとやり直したい(ん?どこぞの会見で聞いた言葉だ)。キミと子どものために、これからはちゃんとするから信じて欲しい」と土下座。
 「アンタがアホなことやってるとき、私がどれだけ大変だったかわかってるの!」。 妻は怒りが一向に収まらない。
 ならば「離婚!」と割り切れればいいが、人間の感情は実に複雑で、そう簡単に行くもんじゃない。三行半を突きつけるにも、それ相当の勇気と覚悟がいるのだ。
 そこで妻は「やり直す」ことは受け入れるが、「彼への信頼」が戻ったわけじゃない。それからというもの、妻は夫が休日出勤したり、ちょっとでも帰りが遅くなたりすると「もしかして…」「まさか…」と、不安になる。不安で、不安で、その不安をどうにかしたくて、夫の携帯やLINEをチェックしたり、領収書を盗み見たり……、夫の行動への徹底的な“身体検査”を始めるのだ。
 ところが、夫は夫であらぬ疑念をもたれたくないので、「アレ言うのやめとこ」と、隠し事をする。そのウソを妻は敏感に感じとる。そうなのだ。「裏切られた」妻は、「裏切った」夫が想像する以上に、敏感に隠し事に反応するのである。
 ……っとまぁ、これと全く同じことが、会社と働く人たちの間で起きているのだ。
 そう。働く人たちは常に心のどこかで、
「自分たちも突然、解雇されるのではないか?」
「うちの会社も、突然、倒産するのではないか?」
「うちの経営陣は、不正を行っていやしないか?」
といった不安のタネを抱えている。ひょっとすると当人に自覚はないかもしれないが……。
 それでも会社のありとあらゆる情報を、ポジティブなものだけでなくネガティブなものまで、社員一人ひとりが知ることができる権利と、会社が労働者に知らせる義務を果たさない限り、壊れた信頼関係を取り戻せやしない。情報は自動的にすべて公開されて、初めて価値を持つ。
 もちろんだからといって、リストラがなくなるわけではないかもしれない。しかし大切なのは、隠し事をしない、安心できる関係を作る努力を怠らないこと。それしかないのである
シャープと東芝の違い?
 実際、リストラを行う場合でも、会社が時間をかけて情報を徹底的に開示し、労働者が知りたがっていること、不安に思っていることを把握するための努力をすると、従業員の不安は軽減され、信頼関係が保たれ、精神健康の悪化も防げることが、いくつもの実証研究で示されている。
 例えば、シャープの高橋興三社長は、「社内の風通しを良くするくらいしか、成果を上げられなかった」と揶揄されるが、数カ月前に早期退職(リストラです)した方にインタビューしたときには、
「シャープはいい会社です。社長も現場によく来ていたし、経営失敗というより戦いに破れたって感じのほうが強い」
と話してくれた。
 業界の中では低いとされる役員報酬を、社長自らが7割〜5割カットしたシャープ。転職先探しの際にも、かなり丁寧なケアをしてくれたそうだ。
東日本大震災以降、組織への信頼が低下した理由
 古い話になるが、リクルートの創業者、江副浩正氏が徹底してこだわったのは、情報の開示が日常化されている組織風土作りだった。経営情報はすべて社内に公開し、社員はもとよりアルバイトに至るまで自由に情報にアクセスでき、すべての情報が共有された。
 情報の鮮度にもこだわった。役員会議の内容は翌朝には公開され、社員全員が会社の経営状況を把握できた。その結果、社員一人ひとりが考えながら仕事に取り組み、人材の育成に役立ったとされている。
 信頼関係という言葉があるとおり、信頼は相手と自分の相互関係の中で生まれるモノ。各々に、「相手を信頼したい」とか「信頼してほしい」という気持ちがない限り、信頼関係は成立しない。
 最後に、件の調査のもうひとつ結果を紹介しておこう。日本では、東日本大震災以降、政府、企業、メディア、NGO/NPOの全ての組織への信頼が低下していた。
 あのときのことを思い出せば、経営者への警鐘を、しかと受け止めてもらえますかね。
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http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/021200034/?ST=print

インバウンドは「数」から「質」に

3000万人時代へ、案内表示やWi-Fi環境より重要なこと

2016年2月16日(火)西頭 恒明

 今年も「春節」の時期に合わせ、多くの中国人観光客が日本を訪れた。「インバウンド3000万人時代」と、人数にばかり目が向かいがちだが、三菱総合研究所の宮崎俊哉主席研究員は「これからは『質』を求める施策も重要になる」と指摘する。
 今後、安定的にインバウンド市場を拡大するには固定客の獲得が欠かせない。外国語表記の案内表示やクレジットカードの利用拡大、Wi-Fi環境の整備などの課題がよく指摘されるが、最も重要なのは、「観光業や観光地が外国人観光客を本当に受け入れるために意識を変えること」だという。
(聞き手は西頭 恒明)
先週の「春節」も、中国から大勢の観光客が訪れて話題になりました。訪日外国人客は2015年にほぼ2000万人に達し、3000万人時代もいよいよ視野に捉えています。とはいえ、日本の観光誘致策が奏功した結果というよりも、アジアなどで中間層が増大したことによる世界的な海外旅行ブームに乗っている面が大きいようにも感じます。


宮崎俊哉(みやざき・としや)氏
三菱総合研究所社会公共マネジメント研究本部主席研究員、観光立国実現支援チームリーダー。 1968年生まれ。92年東京工業大学社会開発工学専攻修士課程修了、同年三菱総合研究所入社。 ツーリズム・アナリストとして国・地方の観光施策の立案、評価、運用に関する調査研究業務に従事。専門は観光統計の設計・分析、観光施策・事業のマネジメント。
宮崎:日本のインバウンドの数は2013年に初めて1000万人を超えました。それまでの10年ほどの伸びは、指摘されたように世界の海外旅行市場が伸びていることによる面が大きく、日本そのものが特に選ばれているわけではありませんでした。

 しかし、この2年ほどの一気の伸びは、それだけでは説明できません。円安がきっかけになっていることもありますし、ビザの緩和も呼び水になっていますが、ここまで数が増えたのは一種の日本ブームが起こっているからだと言えるでしょう。近隣の市場で国際航空旅客が増える中、「どこを行き先に選ぶか」という時に日本が思い浮かぶといったことが大きく影響していると思います。

ブームの“火付け役”のようなものはあるのですか。

宮崎:特に大きいのはICT(情報通信技術)の進展です。マスメディアによるキャンペーンというよりも、一度日本に訪れた観光客が発信した情報が、それぞれの国で一気に圧倒的な量で拡散されて、「日本っていいところだね」とブームを巻き起こしているんです。SNS(交流サイト)はもちろん、「YouTube」や「Instagram」でも、我々がお客様とする海外の方たちが日本の情報に触れる機会は圧倒的に増えています。

 ICTの進展は別の効果ももたらしています。日本の場合、ほかの国に比べて言語の問題が生じます。英語がどこでも通じるわけではないということです。そんな時にスマートフォンがとても役に立つ。どこに行くにしても地図アプリを使えば、自分の母語で地図を表示できますし、目的地まで案内もしてくれます。

 あるいは、日本に来た外国人が京都の伏見稲荷に行きたいと思えば、スマホで写真を見せて指をさせば、英語が通じない日本人にもそれで伝わります。これが日本へのバリアを限りなく低くして、インバウンドの伸びにつながっていると見ています。

スマホの普及などまさにそうですが、外的な環境の変化がインバウンド市場拡大の追い風になっているわけですね。

宮崎:そうです。ただ、だからと言って日本政府や自治体の施策による効果がないわけではありません。我々の分析によると、ビザの緩和は国の政策として非常に効果が大きかった。円安でもインバウンド増の効果は得られますが、ビザの緩和は実施した場合とそうでない場合とで次元が変わるほどのインパクトをもたらします。

 プロモーションについては、「特にこれが」というより、絶え間なく続けてきたことがよかったと思います。予算額は韓国やタイなどと比べるとまだ少ないですが、2016年度はすごく増えています。こうしたプロモーションも継続して実施することが重要です。

これを一過性のブームに終わらせず、安定的にインバウンド市場を伸ばしていくには何が必要でしょうか。

観光業や観光地の「意識改革」こそ重要

宮崎: 少し大きな話になりますが、外国人を受け入れるための環境づくりで重要なことがあります。

 インバウンド市場は確かに右肩上がりに伸びています。しかし、観光業とか各観光地という視点で見ると、まだまだ日本人相手の方が多いですし、消費額もずっと大きい。別にわざわざ外国人客に頼らなくても、日本人観光客の相手だけで何とかやっていけるという観光地も少なくありません。そんな中でどれだけ本気になって取り組むか、インバウンドに対応するか、という受け入れる側の意識の問題が挙げられると思います。

語学の問題などあるでしょうし、日本人を相手にするよりも手間がかかるのは確かですから、「何も外国人に来てもらわなくたって十分だ」と考える業者や観光地があっても不思議ではありませんね。

宮崎:でも、言葉の問題というのは特に語学堪能な人が欠かせないというわけではないんです。さっきのスマホの例もありますし、各自治体が取り組んでいますが、それこそ指さし確認表のようなものを作って示せば手間やコストは掛かりません。そもそもやろうと思うかどうかの話です。ですから、観光業者や観光地の店などが本気で外国人客を取り込もうと真剣に取り組めば、受け入れ側の態勢はぐっと高まるでしょう。

 インバウンド客を受け入れるための課題として、標識などで外国語表記を増やすとか、Wi-Fi環境をどうするかとか、決済にクレジットカードをもっと使えるようにするといったことがよく指摘されます。こうしたハードの問題は分かりやすいのでよく言われますが、これは次の段階の話なのではないかと思います。

 これから安定的にインバウンド客を増やすことを考えるなら、地域全体で受け入れる側の意識をまず変えるべきです。特に今はまだ固定客というのはどこもそれほど多くはありませんが、今後安定的に受け入れるには固定ファンをつくることも重要になります。それには地域全体で迎える姿勢が大事です。

日本の観光業の多くは零細業者

日本の観光業界はほとんどが零細企業と言われています。訪日外国人を受け入れるといっても、使えるお金も限られるでしょうね。

宮崎:そうです。観光庁の「観光地経済調査」を基に我々が作成したデータによると、国内の観光業者のうち、従業員数が4人以下の零細事業者が63.4%と、ほぼ3分の2を占めています。彼らの年間設備投資額は30万円ほどにすぎません。外国人観光客の受け入れ環境を整えようとしても、予算が限られます。

これだけインバウンドが増え、中国人などの爆買いがあっても、それによって潤っているのがホテルや一部の小売りなどに偏っていて、地域やそこで事業をする観光業者にはあまりカネが落ちないという現実もあります。いわゆる地方の観光業が恩恵を受けていないことが、意識改革につながらない原因なのではないでしょうか。

宮崎:確かに、たくさん人が来ているのにあまりうまくいっていないじゃないかという状況は各地で見られます。

 例えば、大型のクルーズ船を寄港地として誘致して、1000人、2000人規模の団体客を呼び込んでいる町があります。国の施策によって港で免税手続きができるようにして、訪れた人を何十台ものバスに乗せて近くのショッピングセンターなどに送り込んでいます。

 でも、彼らがいくらショッピングセンター内のドラッグストアなどで大量に買い物をしたとしても、結局、地元にはおカネはあまり落ちません。それでは「バタバタと人はやってきたけれど、あれは一体何だったんだ」となりかねません。

現に九州や西日本ではそういうケースが見られますね。

宮崎:今、クルーズ客が一番多いのが九州ですが、このところ少し意識の変化や施策の見直しも見られます。クルーズも量を追い求めるだけじゃく、質も大事なんじゃないかと。

 大きな船で大勢の人に来てもらい、大量に買い物をしてもらうことを否定するわけではなく、その利便性はこれからも高めていく。同時に、例えば少し小型のクルーズ船で九州各地の世界遺産などをゆっくりと回って過ごしてもらうといったプランも提供する。そういう動きが出てきています。

 そうすることで、一度に来る客は少なくても、その地域にお金が落ちるように消費してもらうことを促すのです。これからのインバウンド政策を考える上で、「量」ばかりではなく「質」を求めていく、そうすることで継続的に来てくれるリピーターを増やすというのはとても重要なことだと思います。

顧客像を設定し、目的重視の旅を提案

ターゲットを明確に定めてアプローチするということですね。


「ターゲットのライフスタイルまで分析して訴求することが重要」と話す宮崎主席研究員
宮崎:そうですね。そうすると、一つはSIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)のような明確な目的を持ったツアーが挙げられますね。

 例えば、徳島県の祖谷でアレックス・カーさんがプロデュースしている「桃源郷祖谷の山里」などです。何もない山奥の古民家で過ごす体験を提供するわけですが、「どの国の何百万人」といった大きなターゲットではなく、もっと細かなペルソナ(顧客像)を設定し、そこに向けたチャネルをしっかりと作ることで固定ファンをつかんでいます。

北海道のニセコなどもそうですね。

宮崎:ニセコは最初、スキーではなく、夏のラフティングをアピールすることから始めてオーストラリアの観光客が増えてきたのですが、その後に冬のパウダースノーも人気を呼び、スキー客が集まってくるようになりました。そのパウダースノーは海外のスキー雑誌に写真入りで紹介されたのがきっかけだそうなんです。そこに地元の町長などが目を付けて、パウダースノーを前面に打ち出して成功したんですね。

 このケースなどはまさにそうですが、誘客を旅行会社に頼ったり、旅行雑誌で大きく宣伝したりするのがいいのか、もっと絞り込んでスキー雑誌などで紹介してもらうのか。ターゲットのライフスタイルまで分析し、ふさわしい海外旅行をしつらえて提供するといったことが、これからますます重要になると思います。

タイの人気タレントが日本でロケをした映画がヒットしたおかげで、佐賀にタイの観光客が大勢訪れるようになったという話もありますが、もっとターゲットを絞って訴求した方がいいのでしょうか。

宮崎:そういうフィルムツーリズムのようなものがあっても全然構わないと思います。マスマーケットを狙ったものも、そうでないものも、両方あっていいと思うんですよ。ただ、地道なやり方がこれからは絶対に必要になってくるでしょう。

このコラムについて
キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/021500133/?ST=print


Business | 2016年 02月 16日 00:08 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
中国経済、多大な困難と新たな不確実性に直面=李首相

[北京 15日 ロイター] - 中国の李克強首相は、世界経済の環境や様々な国で株式相場が下落していることを受け、中国経済は多大な困難と新たな不確実性に直面しているとの認識を示した。国営メディアが報じた。

また安定的な雇用水準を確保する一方で、警戒を強め金融市場の安定を維持する必要があるとした。

首相は「現在の国際市場の継続的下落が中国経済を大きく圧迫している」と述べた。

ただ貯蓄率の高さを踏まえると、中国にはなお多くの可能性と切り抜ける余地があるとも指摘した。

また過去1年の株、為替相場の変動は中国にとり教訓となったとし、これには内部管理や効果的かつ時宜を得た対応、技術レベルでの措置に関する問題が含まれると述べた。
http://jp.reuters.com/article/china-economy-li-idJPKCN0VO1PF


 

 

「世界を揺さぶる チャイルショック」
ガーナ、白菜1玉1500円の衝撃

チャイルショックでアフリカが直面するきついツケ

2016年2月16日(火)蛯谷 敏

世界経済にとって、最後のフロンティアとして期待されてきたアフリカ諸国。だが今、中国経済の失速と原油など資源安の直撃を受け、苦しんでいる。2月8日号日経ビジネス特集「世界を揺さぶる チャイルショック リーマンより怖い現実」では、影響が世界中に拡散していることをリポートした。アフリカ諸国の中でも、深刻さが際立つガーナの悲劇を詳報する。

ガーナでは、各地で頻発する計画停電に抗議するデモが繰り返されている。
 4年前からガーナに駐在する、ある日系企業の駐在員。昨年夏ころから、週末の食卓に異変が起きている。「鍋料理に使う野菜をどうしようか」。家族で頭を悩ませる。理由は、具材に使う輸入野菜の高騰だ。東京なら1玉200円程度の白菜が、ガーナでは現地通貨で約50セディ(約1500円)もする。

 キャベツ、ブロッコリーなど輸入野菜はいずれも、赴任した当時の約3倍に高騰した。理由は、下がり続けるガーナ通貨、セディの影響だ。対ドルレートは2013年に比べて、半値以下になった。この結果、輸入品価格は軒並み急上昇している。

 現在は値上がりは国内産品にまで広がっている。そのきっかけが、2015年末に政府が決めた増税策だ。2016年1月から、石油製品に対する課税額を上げる措置を決め、石油製品の価格は18〜27%と上昇した。苦しい国家財政を、政府が少しでも補てんするのが狙いだ。

 急上昇したガソリン価格の影響を受け、公共交通機関も年初から次々と運賃引き上げを決めた。輸送コストが増えた結果、その増加分を商品価格に転嫁する小売店が急増している。

 世界的な原油安にもかかわらず、ガーナは逆に石油製品価格が上昇するという考えられない事態が起きている。「アフリカの中でも比較的穏健なガーナ国民だから我慢しているが、他のアフリカの国ならば、とっくに暴動が起きている」と、ガーナに拠点を置く日本企業の担当者は言う。

トランシーバーのような巨大スマホがバカ売れ

 ガーナの首都アクラなどでは今、中国製のトランシーバーのような巨大なスマートフォンが売れている。謳い文句は「1度の充電で1週間の連続使用が可能」。その理由は、ガーナの主要都市で続く、慢性的な電力不足だ。政府は電力対策のため、12時間通電、その後24時間停電するという計画停電を繰り返している。

 ガーナでは、2007年にガーナ沖で石油鉱床が発見され、2010年から原油生産が始まり、アフリカの新興産油国の仲間入りを果たす。金、カカオ豆、木材が代表的な輸出品目だったガーナでは、その後原油が突出するようになった。

 資源ブームに踊ったガーナは、調達した資金を、インフラに対する新規投資やメンテナンスに回さず、公務員の給料引き上げやエネルギー補助金の引き上げに浪費した。そのツケの一端が、電力不足問題となって、ガーナ全体を蝕みつつある。

 IMF(国際通貨基金)や先進国などからのODA(政府開発援助)に頼らず、自力で財政管理をするために、ユーロ建ての国債も発行。旺盛な海外投資家と資源ブームの追い風に乗り、これまでに37億5000万ドルを調達した。しかし、原油価格の下落と中国失速に伴う資源価格の低迷により、宴は瞬く間に終わる。

 通貨の下落によって金利負担は増加し、財政状況は急速に悪化。困窮したガーナ政府は昨年、IMF(国際通貨基金)に緊急支援を要請している。ガーナだけではない。アフリカ最大の経済国であるナイジェリアも今年1月に世界銀行とアフリカ開発銀行に対し、35億ドルの緊急融資を要請。ザンビア、モザンビークなども資源安に苦しむ。

日本企業も被弾、アフリカ進出ブームに冷や水

 急激に悪化するアフリカ経済は、最後のフロンティアとして多くの企業が流れ込んでいたトレンドにも影響を及ぼしつつある。その象徴が、ネスレの方針転換だ。世界食品最大手のネスレは昨年、アフリカの中間層向けの事業縮小を決断。スイスの資源大手グレンコアも、市況悪化により昨年、ザンビアの鉱山を閉鎖した。

 日本企業も例外ではない。日本企業でも住友商事は1月13日、マダガスカルのアンバトビー・ニッケルプロジェクトに関して、市況の下落を主因に2015年度第3四半期(10〜12月期)に約770億円の減損損失を計上すると発表した。

 東アフリカで中古車の輸入事業を展開するカービュー。昨年から、ザンビアやモザンビークといった資源国での中古車売り上げが減少し始めている。ケニアのナイロビで日本食チェーンを展開するトリドールも、昨年2店舗を開いたが、「夏以降、売り上げが鈍化してきた」と池光正弘ゼネラルマネージャーは警戒する。

 日本でも、数年前からアフリカ進出ブームが起きた。2009年以降の5年間で、進出した日本企業は35%増加した。ところが、急激な外部環境の変化によって、進出を延期・凍結させる日本企業が出てきそうだ。

 今年は夏にケニアで安倍晋三首相が主催するアフリカ経済開発会議が開催されるが、4年前の様相とは状況が変わる。「最後のフロンティアという、夢のような評価も今は昔。より現実に即した戦略転換があらゆる日本企業に求められている」とジェトロ理事の平野克己氏は指摘する。

このコラムについて
世界を揺さぶる チャイルショック

「チャイルショック」に世界が揺れている。「中国(チャイナ)」は経済減速への不安が広がり、株式相場は大きく下落。「原油(オイル)」など資源価格の下落が新興国経済に打撃を与え、新興国成長の恩恵を受けてきた先進国にも異変が迫る。中国減速と資源価格の下落を背景に、主要な国々の経済がむしばまれる現象を弊誌は「チャイルショック」と名付けた。この連載では世界で起きているチャイルショックを追う。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020400006/021200005/?ST=print


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