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前FRB議長のベン・バーナンキ氏が安倍晋三首相と会談。政府は「ヘリコプターマネー」を行うのか Photo:首相官邸HP
「ヘリコプターマネー」の効果はアベノミクスとほぼ同じ
http://diamond.jp/articles/-/95525
2016年7月14日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■バーナンキ氏と安倍首相が会談
政府が「ヘリマネ」政策を検討!?
前FRB議長のベン・バーナンキ氏が11日に日銀の黒田東彦総裁と、12日に安倍晋三首相と会談した。
これに対して、政府で「ヘリコプターマネー」を検討しているという報道があり、菅義偉官房長官は13日午前の会見で、「ヘリコプターマネー」政策を政府が検討している事実はないと述べた。
ただ、菅官房長官は、12日の会見で、「ヘリコプターマネー」について特段の言及はなかったが、財政政策で名目GDPを上げるとともに、それと協調して金融政策はやるべきと説明している。
まず、「ヘリコプターマネー」を整理しておきたい。
ネット界隈では、「ヘリマネ」といわれる。もっとも、ヘリコプターの語源は、helicopterはギリシャ語 héikos 「らせんの」+pteró「翼」。ドラえもんでは「タケコプター」というが、本来なら「タケ+プター」だろう。ちょっと「ヘリマネ」とはいいにくい。
■ノーベル賞経済学者フリードマン氏が論じ
バーナンキ氏が再び取り上げて注目された
ヘリコプターマネーのもともとの意味は、中央銀行がカネを刷ってヘリコプターから人々にばら撒くというものだ。ただし、実際にこれを行うのは難しい。「いつどこにヘリコプターが行くのか教えてほしい」というジョークすらある。現在のように中央銀行と政府が役割分担している世界では、中央銀行が新発国債を直接引き受けることで財政赤字を直接賄うことをいうことが多い。
このアイデアは、かつてノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏によって論じられ、2003年にバーナンキ氏(当時FRB理事、その後FRB議長)によって、再び取り上げられたものである。そのバーナンキ氏が黒田総裁や安倍首相と会談したので、先述した通り、「政府がヘリマネを検討」との報道があったのだろう。
バーナンキ氏は名目金利ゼロに直面していた日本経済への再生アドバイスとして、具体的な手法として国民への給付金の支給あるいは企業に対する減税を国債発行で賄い、同時に中央銀行がその国債の買い入れることを提案している。
中央銀行が国債を買い入れると通貨が発行されるわけなので、中央銀行と政府のそれぞれの行動を合わせてみれば、中央銀行の発行した通貨が給付金や減税を通じて国民や企業にばら撒かれていることになる。その意味で、バーナンキ氏の日本経済に対する提案は、ヘリコプターマネーと本質的に同じというわけだ。
経済学者からみれば、政府が国債発行で財政支出を行って中央銀行が新発国債を直接引き受けることと、政府が国債発行で財政支出を行って中央銀行が既発国債を買って量的緩和を行うことは、経済的には同じである。
ただし、法律的な立場から見れば、前者は中央銀行の国債引受であるが、後者は中央銀行による既発国債の買いオペなので、異なる。
もっとも、しばしば日銀引受は禁じ手とされているが、これは勉強不足といえよう。今の制度では日銀保有国債額の範囲であれば認められている。筆者が現役の大蔵官僚で理財局国債課にいたとき、毎年日銀引受は行われていた。ちなみに、2016年度でも日銀引受は8兆円行われる予定だ。
■政府はヘリマネを検討しない
すでにアベノミクスと同じ効果
いずれにしても、「財政支出+日銀引受」をヘリコプターマネーといえば、それを検討することはない。というのは、すでにアベノミクスで行われている「財政支出+量的緩和」と同じ効果だし、それを行えばいいからだ。
こう考えると、冒頭の菅官房長官の発言はすっきりと理解できるだろう。
なお、この方法は、ノーベル賞経済学者のスティグリッツ氏が主張した政府紙幣発行によって給付金・減税を行うものと本質的には同じである。
また、この方法の特徴は、実質的な政府の債務残高を増加させないことだ。この点は、2015年12月17日付けの本コラム「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か」(http://diamond.jp/articles/-/83391)に詳しく書かれているので、参照していただきたい。
その結果、家計・企業は減税に伴う将来の増税懸念がないというメリットがある。となると、消費が増加する。金融政策と財政政策は名目消費を押し上げ、それが一般物価を押し上げる。
もちろん、この政策は国債の貨幣化であり、過度に行えばインフレを招くだけであるが、デフレによって悩まされているのであれば、経済回復を促進することになる。しかも、先進国ではインフレ目標という歯止めもあるので、インフレが過熱しコントロールできなくおそれもない。
この手法を今の日本経済に応用すれば、政府が国債発行によって補正予算をつくるとともに、日銀が国債買いオペによって量的緩和を行えばいい。今のGDPギャップ10兆円程度を考慮すれば、20兆円の国債発行による補正予算と20兆円の量的緩和であれば、今後の経済を活性化するはずだ。しかも、酷いインフレにもなりにくい。
この財政政策と金融政策の合わせ技は、実質的な債務残高の増加にならず、財政赤字悪化にならない。日銀保有国債については、利払い費や償還負担が発生しないからだ。まさに、デフレ時には、デフレ脱却の適切な手段となるだろう。
興味深いことに、米国の大恐慌中、1933年農業調整法トーマス修正条項として、大統領に政府紙幣の発行権限も与えられたという事実がある(1945年6月に廃止)。1933年当時の米国名目GDPはだいたい600億ドル位で、政府紙幣の発行権限枠は30億ドルだった。GDPの5%に相当するヘリコプターマネーといってもいい。
■20兆円の「景気対策+量的緩和」で
事実上20兆円のヘリマネ
20兆円の「景気対策+量的緩和」で、事実上20兆円のヘリコプターマネーである。この程度なら悪性インフレにはならない。その上、今検討されているのは、インフラ整備であり、有効需要増加のためにはそれでもいい。
別案として、社会保険料なしという政策も頭の体操としてはいい。全国民の基礎年金保険料を1年間タダまたは大きく軽減できるので、景気回復に有効だ。いずれにしても、どのような財政支出をするのかについて、よく検討してもらいたい。
「景気対策+量的緩和」というのは、アベノミクスの「第1の矢」と「第2の矢」である。2014年4月の消費増税の前までは、アベノミクスは「ヘリコプターマネー」であったといってもいい。いまさら「ヘリコプターマネー」というのは、アベノミクスをさらに真面目にやれということだ。
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