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円高で企業利益は見通しよりも確実に悪化する(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/164.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 7 月 21 日 11:11:00: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

円高で企業利益は見通しよりも確実に悪化する
http://diamond.jp/articles/-/96176
2016年7月21日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] ダイヤモンド・オンライン



円高は、輸出産業の業績には、強い逆風になる


 この数年間、日本の大企業の利益は、軒並み史上最高益を記録していた。


 その大部分は、円安によって円建ての売上高が増加したことによるものだった。したがって、為替レートが円高になると、利益は減少する。すでに多くの企業が円高による減益見通しを公表しているが、これらは英EU離脱以前のものだ。その後さらに円高が進んだので、減益額はさらに大きくなる可能性が強い。


■2015年秋以降円高が進む
 企業利益の動向も変化


 2015年の秋以降、為替レートの動向が変わり、円高への動きが進んでいる。15年6〜8月には1ドル123円程度だったが、9、10月には120円程度になった。円高への動きは、今年に入ってからさらに顕著になり、4、5月には110円程度となった。さらに6月には105円程度となっている。


 こうした動きの背景として、これまで増加してきた企業利益の動向が変化している。


 これまでの企業の利益の推移を法人企業統計によって見ると、図表1〜3のとおりだ。


 15年7〜9月期の世界経済混乱以降の3四半期における経常利益の減少が注目される。


 全産業、全規模では、16年1〜3月期の経常利益は15年4〜6月期から21.6%減少し、異次元緩和直後の13年4〜6月期の水準にまで減少した。


 製造業では、13年1〜3月期と比べると、営業利益がほぼ同じだが、経常利益はかなり減っている。とくに、15年7〜9期以降の落ち込みが顕著だ。16年1〜3月期の経常利益は、15年4〜6月期から41.4%減少し、12年10〜12月期に近い水準にまで落ち込んだ。また、営業利益も16年1〜3月期には前期より減少している。


 非製造業では、13年1〜3月期よりは多いが、15年4〜6月期よりは少ない。15年7〜9月期以降伸び悩んでいることが分かる。15年4〜6月期から16年1〜3月期の期間で、経常利益が約10.7%減少している。


 上記の期間には、原材料価格の下落や、原油価格下落の効果もあったはずである。それにもかかわらず利益が伸び悩み、あるいは落ち込んでいるのが問題だ。


◆図表1:営業利益と経常利益(全産業、全規模)

(資料)法人企業統計


◆図表2:営業利益と経常利益(製造業、全規模)

(資料)法人企業統計


◆図表3:営業利益と経常利益(非製造業、全規模)

(資料)法人企業統計


■円高で輸出産業には強い逆風
 とくに製造業には影響が大


 では、今後の企業利益はどうなるだろうか?


 円高は、輸出産業の業績には、強い逆風になる。


 2015年の輸出総額は、国際収支ベースで75.9兆円である。このうち、ドルなどの外貨建ての取引が約7割を占める。


 仮にドルベースの輸出額が不変な場合に、為替レートが1割円高になれば、円ベースの輸出額は5.3兆円程度減少するだろう。


 原材料費や人件費が不変とすれば、営業利益は同額だけ減少する。企業の営業利益は、15年において60.0兆円であったので、5.3兆円は8.8%となる。


 輸出産業は製造業だけだとして製造業だけを取れば、15年の営業利益は17.8兆円であり、5.3兆円はこの30.0%に当たる。したがって、15年から為替レートが1割円高になるだけで、営業利益は3割減少するわけだ。


 実際には、円高によって輸入原材料費は減少し、これが営業利益を増やすように働く。したがって、営業利益の減少は上記の計算値よりは小さくなるだろう。


 しかし、次項で見るように、多くの輸出企業の個別計数で計算すると、この程度の率の営業利益減少はありうることなのである。


■トヨタで見る円高の影響
 減益見通し額の8割超が為替要因


 以下では、個別企業について、円高が営業利益に与える影響を見ることとしよう。


 トヨタ自動車は、2016年3月期 決算短信(16年5月11日)の中で、17年3月期(16年4月1日から17年3月31日)の連結業績を、前期比40%減(1兆1540億円減)の1兆7000億円と見込んでいる。


 減益見通しのうち9350億円(81.0%)が「為替変動の影響」とされており、原価改善(3400億円の増益通し)や営業努力(1350億円の増益見通し)より遥かに大きくなっている。


 なお、売上高は、 前期比マイナス6.7%の26兆5000億円を見込んでいる。


◆図表4:トヨタ自動車の連結決算

(資料)トヨタ自動車


 前提となる為替レートは、通期平均で1米ドル=105円、1ユーロ=120円だ。なお、16年3月期の為替レート実績は、米ドルが120円、ユーロが133円となっていた。


 トヨタ自動車の場合、円高が1円進むと年間400億円の減益といわれており、トヨタグループ全体の損失は数千億円規模になると言われる。


 ユーロを含めて現在の為替水準が続けば、今後の営業利益がさらに落ち込む可能性がある。


 いくつかの製造業の大企業について、決算短信で示された営業利益と想定為替レートの見通しは、図表5のとおりだ。


 トヨタ自動車の4割減益は飛び抜けて大きいが、コマツやTDKも2割を超える減益を予想している。日産や日立は1割台の減益だ。ソニーは、わずかながら増益となっている。


 ただし、これらの見通しが作成されたのは、イギリスの国民投票の前であり、ソニー、日立、TDKの場合、為替レートの見通しは1ドル=110円となっている。


 現在の為替レートは、これより円高になっており、この見通しは見直さざるをえなくなるだろう。


◆図表5:営業利益と想定為替レート

(資料)各社決算書等の計数を用いて計算


■ 1ドル=100円になれば
 トヨタの減益率は5割を超える


 図表5で見るように、1ドル=105円までの円高を想定している企業はあるが、それ以上の円高は想定していない。しかし、そうなることは、十分ありうる。実際、イギリスEU離脱決定直後の6月24日には、1ドル=99円までの円高が進んだ。


 今後の状況によっては、さらに円高が進む可能性を否定できない。前回述べた購買力平価の検討からも、それは十分ありうることだ。


 そこで、1ドル=100、90円となった場合に、輸出産業の利益がどうなるかを試算してみよう(注)。この結果は、図表5の右半分に示してある。


 1ドル=100円の場合、トヨタ自動車の減益率は、54%となる。日立は3割近く、コマツは3割を超える減益率となる。


 1ドル=90円の場合には、トヨタ自動車は8割の減益となり、コマツ、TDKが5割を超える減益となる。


 こうなるのは、冒頭で述べたように、これまでの利益増が企業活動の実体の変化に基づくものでなく、単に為替レートの変化によるものであったからだ。


(注)ここでは、企業が予測する営業利益減をもとに、単純に為替レートの変化との比例で計算した。厳密に言えば、この方法は正確でない。本来は、企業が予測する営業利益減のうち為替レートの変化による額につき、比例計算を行なうべきである。しかし、営業利益減のうち為替レートの変化による額が分からない場合もあるので、このように近似した。


■減少が始まった外国人旅行客
 今後は半減さえありうる


 外国人旅行客も、円安によって顕著に増加してきた。その状況は、図表6に示すとおりだ。


 2012年には年間70万人程度であったが、13年に100万人に近くなり、14年にはこれを突破し、月によっては120万人を超えた。


 15年にはさらに増加して150万人を超え、16年3、4月には200万人を超えた。


 しかし、5月には189万人に減少している。円安によって増加してきたトレンドに、歯止めがかかったと考えられる。


 今後、年間150万人程度の水準まで減少するのは、十分に考えられることだ。


 また、円高に加え、中国の経済成長が減速することの影響もあるだろう。


 そうしたことを考えれば、外国人旅行客数が半減することさえありうる。


 外国人旅行客が増加したのも、日本の魅力が増したからではない。単に円安が進んで、ドル建てで見た旅行価格が安くなっただけの理由によるものだ。


 したがって、為替レートが円高になれば、簡単に元に戻ってしまうのである。


◆図表6:外国人旅行客の推移

(資料)日本政府観光局


■日銀短観には反映されていない
 英EU離脱の影響


 日本銀行が7月1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)においては、2016年度の売上高、経常利益は、全規模、全産業で下方修正された。前年度比は減収・減益見通しだ。とくに大企業・製造業では経常利益の下方修正幅が2桁となり、輸出産業を中心に減益拡大見通しとなっている。


 ただし、この見通しには、為替レートの最近の動きが反映されていない。


 日銀が回答基準日に定めた6月13日までには、7割強の企業が回答していた。そして、英EU離脱が決まった24日には、ほぼ集まっていた。


 実際、大企業製造業の16年度の想定為替レートは1ドル=111.41円だった。現在の為替レートは、これよりかなり円高だ。


 輸出企業が多い大企業製造業の売上高は、16年度に前年度比1.6%減を見込んでいる。しかし、円高によってさらに減少する可能性が高い。そうであれば、利益はさらに減少するだろう。


 いずれにせよ、「何もせずに利益が増え、そして株価が上昇する」というここ数年の状況は、明らかに終了したのである。持続するはずがない事態が終了しただけであり、何の不思議もない。


 問題は、そうした状況の中で、日本経済が好転したと誤解した人が少なからずいたことだ。いま、そうした幻想から脱却し、企業の収益性と経済構造とを、真剣に見直す努力が行なわれなければならない。


 

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コメント
 
1. 2016年7月21日 11:19:39 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[1982]

>円高で企業利益は見通しよりも確実に悪化

みんな知ってる

>日本経済が好転したと誤解した人が少なからず

そんなやつは、かなりの少数派だろ

だからインフレ率も投資も消費も下ぶれるのだ


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