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失敗を何よりも嫌う男、「世界一のマネーマスター」が明かす投資の極意(Forbes JAPAN)
http://www.asyura2.com/16/hasan111/msg/791.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 8 月 12 日 14:24:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

ブラックストーン本社44階にあるシュワルツマンのオフィスからはセントラルパークが一望できる。オフィスとつながっている会議室でいつもエスプレッソを飲み、静かなひと時を過ごす。


失敗を何よりも嫌う男、「世界一のマネーマスター」が明かす投資の極意
http://forbesjapan.com/articles/detail/13195
2016/08/12 08:30 Forbes JAPAN

ブラックストーン・グループは危機のたびに大きく成長し、世界最大の投資ファンド運用会社にまで上り詰めた。失敗を何よりも嫌う会長兼CEOスティーブン・シュワルツマンの哲学とは。

ウォール街の伝説的な投資家として名を馳せたJPモルガンの副会長、ジミー・リーはこの世を去る3カ月前の2015年3月、スティーブン・シュワルツマンに一本の電話をかけた。ゼネラル・エレクトリック(GE)はバランスシートを圧迫していた300億ドルに上る商業用不動産を処分しようとしており、リーはこれに手を貸していた。リーはシュワルツマンに不動産の売却こそ創業123年の老舗企業を再生させる計画の柱だと語った。

資産の売却で最大の難関となったのは、メキシコの倉庫や中東のオフィスビル、豪州の商業用モーゲージなど、多岐にわたる資産とその資金調達が組み込まれたポートフォリオを一手に引き受けてくれる買い手を見つけ出すことであった。

GEが保有する不動産と商業用モーゲージは、6カ国に散らばり、そのリスクは多様であった。GEのジェフリー・イメルト会長にしろ、リーにしろ、こうした世界各地にある数々の資産をすべて把握できる専門能力を有し、短期間で取引のクローズが可能で、ポートフォリオを一手に引き受けられる資金力を兼ね備えている企業として思いつくのはブラックストーンだけであった。

それから4週間後の4月10日、GEのイメルト会長は140億ドルの資産をブラックストーンに譲渡し、90億ドルの商業用不動産モーゲージをウェルズ・ファーゴに譲渡すると発表した。

ブラックストーンはイメルトに救いの手を差し伸べた形となり、それまで低迷していたGEの株価はこの発表を受けて11%上昇した。そして、この取引はブラックストーンにより多くの利益をもたらした。内部情報へのアクセスが可能だったブラックストーンは取引条件や価格交渉で優位に立ち、最終的に取得価格を引き下げることができた。

「あの取引はまさに我が社のための取引でした。グローバルな株式資産と不動産ローンポートフォリオ双方を購入できる態勢を整えている企業は我が社の他にありません」とシュワルツマンは胸を張る。

ブラックストーンが15年に行ったこの巨額の資産取得は、こうした分野を牛耳ってきたJPモルガンやゴールドマン・サックスがウォール街の王座から陥落したことを意味していた。ブラックストーンを頂点とする新たなヒエラルキーが誕生し、会長兼最高経営責任者(CEO)のシュワルツマンこそ、地球上最強のマネーマスターだと高らかに宣言する出来事だった。

■”年収8億ドル”の男

ウォール街の驚異的な収益力はリスクを取ることで生み出されてきたが、08年の金融危機以降、リスクを取ること自体が難しくなっている。かつてトレーディング分野で最強の名をほしいままにしたゴールドマン・サックスは、巨大金融機関の金融商品の購入や売却などを制限する「ボルカー・ルール」が導入されたことで、事実上、トレーディングが阻止された。以前であれば積極的に食いついたであろうJPモルガンやドイツ銀行などの大手銀行も同様に自己資本規制により融資業務やマーチャント・バンキング業務が制限されている。

このように従来の金融機関は比較優位を失い、「バイサイド」と呼ばれる資産運用会社の力が相対的に高まった。規制が殆ど及ばない3,440億ドル規模のプライベート・エクイティ(PE)帝国であるブラックストーン・グループにとって、非常に有利な状況だ。ブラックストーンの株主であるリバーパーク・ファンドのミッチ・ルービンはこう説明する。

「ゴールドマンやJPモルガン、ウェルズ・ファーゴは経営に問題はないものの、こうしたビジネスの一部を手がけることができなくなってしまった。ある日、突然、アマゾンが映像ストリーミング配信事業から締め出されたとすると、競合相手のネットフリックスにとって、好材料になるのと同じことです」

規制当局は、シティグループやモルガン・スタンレーの従業員報酬の制限に躍起になっているが、規制対象外のブラックストーンのシュワルツマンは15年に合計8億ドルの収入を得ている。これは、ゴールドマン・サックスのトップであるロイド・ブランクファインが得た収入2,300万ドルの35倍でJPモルガンCEOのジェイミー・ダイモンが手にした報酬2,700万ドルの30倍である。シュワルツマンの純資産は102億ドルに達する。ブラックストーンはこれまでに、シュワルツマンを含め資産規模10億ドル以上の資産家を5人誕生させている。これはウォール街史上、最も多い。

ブラックストーンの中核事業であるPE事業では、1987年に第1号ファンドの運用を開始して以来、これまでに損失を計上したファンドはない。年率平均リターンはPEファンドが19%、不動産ファンドが20%、クレジットファンドが14%であり、すべてS&P500指数(過去30年間で年平均リターン9.7%)を上回っている。そして、過去8年間にシュワルツマン率いるブラックストーンが残してきた足跡は、どのような観点から見ても、非の打ちどころがない。

金融危機以降、ブラックストーンの資産は4倍近くに増加した。この間に導入された新商品は2桁に上る。

また、ヒルトン・ホテルズやマイケルズ・ストアーズ、そして有名ブランドのベルサーチやライカ・カメラなど92社の大株主に名を連ねている。さらに、マンハッタンのスタイヴェサント・タウンやシカゴのウィリス・タワーなど数千件の商業用不動産とPE投資会社の中で最も多い一戸建て住宅を米国全土で保有している。ヘッジファンドやクレジットファンドなど、ブラックストーンは、手がけているほぼすべての事業分野で市場の”リーダー”となっている。創業から30年にわたって高いリターンを生み出してきたのがブラックストーンだ。シュワルツマンはこう語る。

「高いリターンを30年間続けたからといって、31年目のリターンも高くなる保証はないと言われます。しかし、その根拠はどこにあるのでしょう。創業間もない頃から、世間にはそう言われてきました。長年の結果をみれば当社の”仕組み”は十分に機能していると断言できます」

シュワルツマンは、やり手の大富豪にありがちな華美な出で立ちとは無縁で173cmの体に身につけるのは地味でゆったりとしたスーツで、その態度は控えめである。それでも、シュワルツマンの言動や暮らしぶりが世間の注目を集めたことも何度かある。

シュワルツマンはマンハッタンのパーク・アベニューに、過去にジョン・D・ロックフェラーが所有していた部屋数が34もある豪華な住居を保有している他、パームビーチやイースト・ハンプトン、ジャマイカ、セント・トロペズのオーシャン・フロントにも住宅を保有している。07年にはロッド・スチュワートやパティ・ラベル、マーティン・ショートといった著名人を招いてニューヨークのパーク・アベニュー・アーモリーで300万ドルをかけた誕生パーティーを開き、大衆の怒りを買った。

また、オバマ大統領がPE投資の成功報酬に対する税の優遇措置の打ち切りを示唆すると、シュワルツマンはナチスによる領土侵略になぞらえて反対した。しかし、この優遇措置は、PE投資会社の所得に対する税率を、通常の所得税率より低いキャピタルゲイン税と同率とするもので、恐らく米国の税制の中で最も弁明の余地のない抜け穴と言われる。シュワルツマンは最終的に謝罪に追い込まれた。

米国の大統領選挙ではすべての候補者が例外なくウォール街を批判する。昨今、莫大な富を持つ金融界の帝王となることは「モラルに欠ける」との烙印を押されることに等しい。シュワルツマンは「ある種の象徴やターゲットになってしまう。私がこの業界で働き始めた頃は、地位の高い仕事とされていたのですが」と嘆く。

■「何よりも損をするな」

巨万の富は危機的状況で生み出されることが多い。たとえば、1907年の世界恐慌が発生したときには、株価が暴落し銀行の取り付け騒ぎが起きたが、機を見るに敏な銀行家ジョン・ピアポント・モルガンが銀行救済を進めた。セオドア・ルーズベルト大統領はその見返りにモルガンの保有するUSスチールを反トラスト法規制の対象から外す優遇措置を導入した。USスチールは競合相手を次々に買収。圧倒的な独占体制を確立していった。鉄鋼はモルガンの巨大な富を支える中核資産の一つであった。

30年代の大恐慌時には広く知られている通り、J・ポール・ゲティが資金繰りに窮した石油会社を次々に買収し、石油業界で新たな帝国を築き上げ、世界有数の大富豪にのし上がった。

こうした過去の例と同じく、シュワルツマンも危機をバネに資産を増やしてきた。00年にインターネット株が暴落し、アラン・グリーンスパンFRB(米連邦準備理事会)議長が金利を引き下げると株式市場から流出したマネーは株式市場と連動しないリターンを約束する、いわゆる「オルタナティブ投資」に流れた。だが、こうした動きに対するブラックストーンの”備え”は抜かりないものだった。

90年以降、ブラックストーンは、ヘッジファンド・ソリューションズを設立し、ヘッジファンド・マネジャーのジュリアン・ロバートソンにある程度の金額を投資してきた。同社にはブラックストーンのパートナーも自己資金を投じ、99年までにその規模13億ドル以上に拡大した。世の中の”流行”もあり、このファンドに関する顧客からの問い合わせは増加の一途をたどり、シュワルツマンは事業拡大を決め、既存顧客向けに販売を開始。結局、この「オルタナティブ投資」は大流行し、金融界だけでなく、実業界からも資金流入が続いた。さらに、史上最大の詐欺事件「バーナード・マドフ事件」が 起きると、投資家は大型ヘッジファンドの”安全性”を求め、ブラックストーンの預かり資産は269億ドル(07年)から690億ドルまで増加した。ブラックストーンはこうした成功例を踏まえて、ピーター・ミューラーのクオンツ・ファンドであるPDTパートナーズなど、過去数年間に誕生した重要なヘッジファンドの中で中心的パートナーになっている。

そして、ウォール街におけるブラックストーンの地位を揺るぎないものとしたのは、08年の金融危機であった。シュワルツマンは株式を新規公開し、時間に縛られない安定的資本、いわゆる「パーマネント・キャピタル」を強化した。PE投資会社やヘッジファンドは、パーマネント・キャピタルの欠如が常に経営のアキレス腱になる。なぜなら、一般的には7年以内にポジションを清算しファンドを解散して、一つのサイクルを終えることになるからだ。

ブラックストーンは金融危機の発生と株価暴落の直前の07年6月21日に41億ドルの株主資本を調達し、時価総額は336億ドルに達した。この新規公開は当初から人気を博した。中国の政府系ファンドはIPOの直前に30億ドルを非議決権株式に投資することを決めた。シュワルツマンは23%の株式を手元に残しつつ、4.93億ドル相当の株式を売却した。引退を間近に控えた共同設立者のピーターソンは、その時点で保有していた株式の大半を合計19億ドルで売却した。シュワルツマンはこう語る。

「私はかねてからパーマネント・キャピタルを確保したいと考えていました。何か良からぬことが起きるのではないかという気がしてならなかったからです。市場は上限に達しつつあり、”核の冬”に対する備えが必要と判断しました」

ブラックストーンは巨額の資金を得て十分な態勢を整え、さらに、規制当局がゴールドマン・サックスなどの競合相手に対する締め付けを強化したことで、一段と有利な立場に立った。現場の部隊に対するシュワルツマンからの指示は明確であった。

「賢明であれ。創造力を発揮せよ。だが、何よりも損をするな」

13年にはPEセカンダリーファンドを手がけるストラテジック・パートナーズをクレディ・スイスから買収した。クレディ・スイスは規制の強化で、90億ドル前後の運用資産のあるこの事業を売却せざるを得なかった。ブラックストーン傘下に入り、この事業の資産は当時の2倍以上となる190億ドルに増加している。

■「引退なんて私らしくないでしょう」

ヘッジファンド分野におけるブラックストーンの運用資産はすでに世界最大となった。とはいえ、従来型のヘッジファンドを取り巻く状況は厳しい。そこでシュワルツマンは再び新たな分野の開拓に乗り出した。内部で運用される複数のストラテジーに投資するタイプのヘッジファンドを静かに立ち上げたのだ。これがセンフィーナ・アドバイザースである。

この比較的新しいユニットはブラックストーン本社から1ブロック離れた場所にオフィスを構え、マネジャーが有望なポジションの発掘に専念できる態勢をとっている。現在、センフィーナの資産は20億ドルであり、各マネジャーの投資額は4.5億ドルに制限され、リスクは中央で集中的にヘッジしている。長期のポジションに集中投資することを推奨し、大手ヘッジファンドのジフ・ブラザーズやシタデルなどからの移籍組を中心に計8人のマネジャーが運用にあたっている。

またここにきて、シュワルツマンはウォーレン・バフェットやジャック・ボーグルといった”賢人”にならい、収益の不安定性を解決する画期的な方法を見つけ出した可能性がある。最近、不動産部門の商品に加えた「コアプラス」ファンドは、事実上のオープンエンド型投資商品であり、従来よりもレバレッジ水準を抑え、長い保有期間で安定的なリターンを追求する。

このファンドは、ブラックストーンにとって「安全な利回り」に対する顧客からの強い需要に対応する絶好の手段である。従来型の「オポチュニティファンド」(投資家へのリターンは高いがリスクも高い)と異なり、手数料は1%の運用報酬と10%の成功報酬で構成され、その運用はブラックストーンがこれまで得意としてきた「購入し、立て直し、売却する」戦略とは一線を画している。

たとえば、15年に53億ドルで取得したマンハッタンのイーストビレッジ北側にある築68年の110戸のスタイヴェサント・タウン複合住宅、通称「スタイタウン」は、今後、きわめて長期間の家賃収入を生み出すと期待される。「コアプラス不動産ストラテジー」は、16年第1四半期だけで4.4%のリターンを生み出しており、預かり資産はすでに120億ドルを超えている。

シュワルツマンの業績に汚点があるとすれば、それはブラックストーンの株価だろう。過去3年間のリターンは63%に達しているものの、依然としてIPO価格を下回っており、他の資産運用会社と比較すると株価収益率(PER)は大幅に低い。それは株価が不安定で一般株主が購入を控えるからだ。

なぜ、そうなるのかー。それは、ブラックストーンの業績は資産売却のタイミングと時価調整に大きく左右されるからだ。たとえば、16年3月31日までの12カ月間にブラックストーンが生み出した純利益は8.99億ドルで、前年の52億ドルから83%の減益となった。また、第1四半期には原油価格と各国中央銀行の政策の影響を受け、世界的に株式市場とクレジット市場が乱高下したためブラックストーンは保有資産の評価額を16億ドル引き下げた。

しかし、前述のコアプラスの導入で一般株主を満足させ、弱点を克服しようとしている。ブラックスト-ンの社長兼最高執行責任者(COO)、トニー・ジェームズは「伝統的なドローダウン型ファンドは資金を集めてそれを運用し、資産を売却して投資家に資金を返すプロセスを繰り返します。これに対して、長期間にわたって資産を保有し続けられることが、コアプラスの強みです」と説明する。

この最新のイノベーションは、10年以内に1,000億ドルに達する可能性もあり、成功すればシュワルツマンが自ら考えるように、金融界の巨人たちと肩を並べる存在になるであろう。

また、シュワルツマンは、かつてのアンドリュー・カーネギーと同じく社会貢献にも大金を注いでいる。08年にニューヨーク公共図書館に1億ドルを寄付し、その中心的建物は「シュワルツマン・ビル」に改称された。昨年は、母校イェール大学に1.5億ドルを寄付した。これは115年の歴史を有する同大学の学生食堂にかわって建設される総面積88,300平方フィートの最先端複合施設である「シュワルツマン・センター」の資金となる。この施設には演劇や芸能のためのスペースや食堂、会議室、展示スペースが設けられる予定である。さらに、伝統あるローズ奨学金を手本に1億ドルを投じて北京の清華大学でシュワルツマン奨学金プログラムを発足させた。

ブラックストーンのビジネスは、あらゆる角度から見て拡大している。ファンドの預かり資産は過去12カ月間で800億ドル増加し、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やカーライル・グループ、アポロといったライバルを圧倒している。それ以上に注目すべきは、エリート校の学生たちのあいだでブラックストーンのアナリスト養成プログラムが一番人気となっていることだ。15年には84人の定員に対し、アイビーリーグ全大学から合計1.5万人の応募があった。競争倍率は180倍近い水準であり、ゴールドマン・サックスのアナリスト養成プログラムの競争倍率25倍をはるかに上回っている。

シュワルツマンは間もなく70歳の誕生日を迎えるが、CEOを退任する気は全くない。08年からブラックストーンの最高財務責任者(CFO)を務め、15年にエアビーアンドビーに移籍したローレンス・トシも「スティーブは死ぬまで会長職に留まるでしょう」という。

パークアベニューのブラックストーン本社44階にある、セントラルパークが一望できるオフィスで、そのことをたずねるとシュワルツマンは次のように答えた。

「引退なんて私らしくないでしょう」


文=スティーブン・シェーファー


 

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コメント
 
1. 2016年8月12日 23:47:41 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2245]

>何よりも損をするな

バフェットほどではないが

シュワルツマンも寄付も多い

高度人材育成の教育プログラムに対して150億円、寄付している

ビジネスには厳しいが、使うべきところには使うという点で

中国のような自称共産主義国以上に、厳しい再分配が行われている

日本の大衆富裕層などとは桁が違いすぎるということだな

http://schwarzmanscholars.org/ja/%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E8%80%85%E5%90%91%E3%81%91%E6%83%85%E5%A0%B1/


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