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田舎で見つけた古民家、 買って後悔しないと思えた理由とは?(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/304.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 9 月 16 日 09:33:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

田舎で見つけた古民家、買って後悔しないと思えた理由とは?
http://diamond.jp/articles/-/99067
2016年9月16日 馬場未織 ダイヤモンド・オンライン


平日は都会で働き、週末は田舎で過ごす。東京生まれ、会社勤め、共働き、こども3人。「田舎素人」の一家が始めた「二地域居住」。彼らが田舎で見つけた古民家を、買っても後悔しないと思えた理由とは?新しい暮らし方として今、大きな注目を集める『週末は田舎暮らし』から一部を抜粋して紹介する。

◆これまでのあらすじ◆
東京生まれ、会社勤め、共働き、こども3人。「田舎素人」だが、「二地域居住」に憧れる一家。彼らは夢の田舎暮らしを始めるために、神奈川、千葉の不動産屋を歩き回り、ようやく「運命の土地」にめぐり会う。しかし、それは想像を絶する広大な「農地」だった……。

■運命の土地

 分からないことだらけの物件探しで学んだことは、「分からないことは不動産屋さんに直接質問するに限る」。すぐさまこの南房総の物件に関する問い合わせフォームに、もっとも知りたかった2点を記入、送信しました。

「平坦地はどれくらいありますか?」
「農地の売買はできるのですか?」

 すると、ほどなくこんな返事が返ってきました。

「平坦地は2500坪以上あります」
「農地は、物件に居住していただければ取得できます」

 これを見た夫は、普段からぎょろんとした目をさらにくわっと開けて叫びました。

「おお!広いぞ!それでポルシェ価格か?現実的じゃないか。とりあえず見に行く価値はあるよなあ!」

 そうだねえ、と相槌を打ちながら、わたしはでもなんとなく半身引いていました。農地って本当に住むだけで取得できるのか?“南房総市”ということは房総半島の南端、遠すぎやしないか?そして広すぎやしないか?第一、安すぎやしないか?と。わたしがもうひとつ学んでいたことは「質問への回答は、重要さも重大さも重さ半減で表現されている場合が多い」ですから。

「まあでもさ、見るだけ見てみようよ。何しろ、8700坪だぜ!インフラ完備だぜ!」

 お金に目が眩む人はよくいますが、これまで「使用可否不明井戸あり上水なし」や「廃屋あり現状渡し」の物件を見続けているためか、広さだとか、インフラだとかに目が眩む夫。まあ、百聞は一見にしかずです。

 早速不動産屋さんとアポをとり、現地へと向かったのは、翌々日の早朝のことでした。この日はまず、仲介の不動産事務所で待ち合わせ。聞けばこの物件、売り主さんが月に数回来て農地や家の管理をしているらしく、「鍵をあずかっていますんで、家の中にも入れますよ」とのこと。本当に即入居が可能なようです。

 それから、あのー、わたしたち農家じゃないですけれども、”本当に”農地を買うことができるんですか?と一番気になることを直接確認すると、「宅地のようにすぐに登記できるってわけにはいかないんですがね、まあ段取りを踏めば大丈夫ですよ」と、さらり。

 さらりと言われたからといって、さらりと進むわけないんだよな、だいたい段取りってなんだろうと訝りつつも、「とりあえず細かいことは、土地を見てみてからお話ししましょうか」とおっとり笑う不動産屋さんの赤い車についていきました。

 鋸南町にある事務所を出発し、南房総市へと向かいます。物件のある場所は、市町村合併前は「三芳村」と言われていたとのこと。ああ、「村!」という響きにキュンとしちゃう。

 きっと「村!」にはこどもたちが一日中駆けまわって遊べる山があり、川があり、生きものがたくさんいて、「田舎のおばあちゃんち」があって……畑をつくって、釣りをして、星を見て……いいぞ、田舎のおばあちゃんはいないけれど、そんな家での暮らしはできそうだぞ……タイトな物件探しでげっそり失われつつあった田舎暮らし妄想が、久々にむくむく湧いてきます。

 ロードサイドに店がなくなり、次第に田園風景へと移りゆく様に、わたしたちは心を奪われました。山あいの平野部に広がる田畑は「村!」という響きにぴったり。まるでジブリの映画のワンシーンのように美しくひなびた風景で、気分は次第に上がっていきます。

「うわぁ……時代が違うみたい。ここが東京の隣の県って驚くねえ」
「本当に。三芳村って有機農法で有名なところらしいね。あ、花卉のビニールハウスもある」

 これまで見てきた物件はどちらかと言うと辺鄙な場所の雑種地ばかりだったので、農地としてまっとうに「働いている土地」というのがなんだか立派に見えます。農業をナリワイとしている人々が守っている土地。憧れのような、畏れのような気持ちを抱きながら車窓を眺め続けました。

「平久里川」という細い河川に沿った県道を行き、ほどなくその川をひょいと渡り、車二台はちょっとした山あい(ほんとうにちょっとした山です)の小さな集落の中に入っていきました。

 青々と光る田んぼの間を縫って、右に曲がり、左に曲がり、もうどこに向かって進んでいるのやら方向がまったくわからないというほど奥まで続く農道をのぼりつめていくと、行き止まりに雨戸の閉じた人家が一軒、建っていました。不動産屋さんの赤い車は、その家の前にすっと停まりました。

■8700坪という桁違いな広さ

「こっちに来て見てみれば分かりますかね?」

 不動産屋さんは、その家の裏側に回り込んでさらに手招きし、夫は小走りに向かいました。家の西側にそびえ立つ大木の隣りに立った夫が、木々の切れ目から風景をぼおっと眺める姿が見え、わたしもこどもたちを連れて急ぎます。

「ここから見える一帯は、ほとんどこの物件の土地ですよ」

 これは……なんて素晴らしい……。

 風景を目にしたわたしは、息をのみました。失われた「秦野の物件」との出合い以来はじめて、そして土地探しをはじめてから二度目の、感動の瞬間でした。この家は小さな山の中腹にあり、眼下にはまるで「日本列島小さな旅」のタイトルバックのように完璧な、日本の田園風景が広がっていました。

 遠く下の方に見える県道まで続く、美しく整った田んぼ、畑、花畑。はるか彼方には小高く連なる山々のシルエットが空を縁取り、頭上にはゆったりと横切るトンビ、足元からは虫の声。

 ひたすらぼんやり佇むわたしたちに、土地の公図を手にした不動産屋さんがタイミングを見て話しかけてきました。

「この物件の範囲は見える限りじゃないんですよ。北の方にも広い田畑があって、山もあって、裏の竹藪もそうです」

 はっと我に返り公図を見せてもらうと、地目が「田」「畑」「宅地」、そして「山林」「原野」「墳墓地」とあります。墳墓ってなに?やっぱり農地がずいぶんあるぞ?と気になりつつも、ここがわたしたちの掲げている条件をほぼ網羅する土地であることが分かりました。

(1)広い、(2)平ら、(3)明るい、(4)見晴らしがよい、(5)ケータイ旗3本立つ。

 そしてこの広さにしてポルシェ価格。交渉次第では、(6)金銭的にクリアできる、かもしれない。圧倒的な広さに驚くけれど、実は購入実現性の高い土地かもしれない。で、もしここを手にしてしまったら、8700坪の、地主だ。

 こーんな素敵な景色をつくっている、このひろーいひろーい土地の、地主だ!……考えれば考えるほど興奮で血が湧きたち、わぁーいと叫びだしたくなるのです。しかしながら、すぐに歓喜の感情の暴走にブレーキがかかります。

(勘違いするな、今はただの見学者だ、まだ自分の土地じゃないぞ)
(本当に大丈夫か?問題はないのか?確かあっただろ?)

これまで痛い目にさんざんあってきたことで、ぬか喜びできない体質にちゃんと変わっていたようです。
それに引き換え、こどもたちの何とありのままなことよ。

「すげ〜〜!ひっろ〜〜〜〜〜い!ヨーロヨーロヨッホッホーイヨッホッホーイヨッホッホー!」

 息子のニイニはハイジのつもりかペーターのつもりか、まだ二歳の妹ポチンを連れて草の上を走りまわります。やめなさいあなたたち、まだヨソサマの土地ですよと、追いかけるわたしなど見向きもしません。

「ここでいいよママー!ここにしよー!」

 こどもたちも週末ごとの土地探しに付き合ってきたためか、もういいよ、ここに根を下ろそうよというシグナルを発します。ありがとう、ごめんね、もうちょっとだからね、たぶん。

■古い農家に宿る魅力

 ひととおり土地を見学した後は、いよいよお宅拝見です。「築100年以上らしいんですが、まだまだ大丈夫そうですよ」とポケットからちゃりんと鍵を出し、玄関の扉を開け、「おじゃましますー」と先陣を切って中に入り、勝手知ったる様子で雨戸も開ける不動産屋さん。

 がらがら、がらがら、がらがら。がらがら、がらがら、がらがら。真っ暗な室内にさーっと光が射し込むと同時に、夫とわたしは感嘆の声をあげました。

「すごい……広い!」

 10畳ほどの部屋が3つ、奥には6畳ほどの部屋が3つ、襖で仕切られています。襖をすべて取り払うと宴会場のように広くなるため、冠婚葬祭が家の中で行えるようになっている、ということでしょう。

 ただ、玄関入ってすぐの仏間は薄暗く、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。額に入ったご先祖代々の白黒写真が、鴨居の上に何人も何人も。これって、田舎では普通のインテリアなのだろうか(こ、この写真は、引き渡しのときに撤去してもらえるのかしら……)。

 額の中のお顔がこぞってわたしたちを見ているような、何とも言えない居心地の悪さを振り払おうとするのですが、公図にあった「墳墓」という文字が頭をよぎり、ますますおどろおどろしい。

「トイレはね、ここですよ」

 不動産屋さんののんきな声に救われて、ぐるりと和室群を取り囲む縁側の行き止まりを見れば、”使用中”と”空き”と書いた札の下がったトイレの扉。まさに日本家屋、農家の典型的なプランです。

「そうそう、トイレはね、ぽっとんですよ」

 おお、ぽっとん便所ですか!それは興味深い。さっそく中を見せてもらうことに。見かけは普通の洋式トイレですが、蓋をあけると漆黒の闇。そしてやっぱり、かぐわしい……何とも言えない、公衆便所のニオイを煎じ詰めたような、強烈なたくわんのような、ニオイ。

 まあでも、慣れてしまえばギリギリ耐えられるかなあ。正直、このトイレを使うのか、とドキドキしなくもありませんでしたが、「ぽっとん便所はやだー」と思う人間は農的暮らしをする資格がないという気がして、「へー、この中をどうやってバキュームするんだろう」などと言いながらトイレのつくりを観察します。バキュームのホースが出入りする掃出し窓があったりと、なかなか興味深い。

 水洗トイレしか目にせず、猫も杓子も消臭殺菌という日常を生きているわたしにとっては、こういう匂いの空間が家にあるという状態は新鮮でした。親の世代はこれしかなかったんだよねえと考えると隔世の感を禁じ得ません。きっと、昔はもっと生活のあらゆる匂いがさまざまなところで発せられていたはずです。匂いなしは当たり前でキレイキレイに潔癖化する世の中と、どっちが健やかなのかな。

 一方、そんな感慨も遠慮もないニイニは「オエーーーッ。くせーーーーっ」と叫び、地団駄を踏み、夫に頭を小突かれていました。

 それにしても、古い農家というだけで、個人の趣味を超えた魅力を感じるのはなぜだろう?ぎしぎし鳴る廊下をゆっくり歩きながら、わたしは何とも言えず心地よく、ほっとすることに気がつきました。これからつくろうと思っても、絶対につくれないような家。

 この土地の風土にすっかり溶け込んでしまって、デザインとか自意識みたいなものがまったくない家。この焼けた畳に寝転んでカルピスを飲み、空の色を見ながら過ごせればいい。他にいろいろいらないや。シンプルで飾らない生活を思わせるこの家に、わたしは今までにないほど強く強く惹かれました。

 そして「おばけの写真だー」「きゃー!」と畳の上をドタバタ走りまわっているこどもたちをたしなめるのも忘れ、この家とこの土地の入手可能性についてすっかり考え込んでしまいました。

(第10回に続く)

 

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