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日本の不動産価格のインフレーション―アメリカが主導権を握っている 『ニューノーマル』不動産市場を通して読む
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/499.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 9 月 22 日 14:40:52: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

日本の不動産価格のインフレーション―アメリカが主導権を握っている―(1/4ページ)
『ニューノーマル』―不動産市場を通して読む―(第1回)
2016.09.21(早稲田大学ビジネススクール教授 川口有一郎)
1 不動産価格インフレ
 ご存知の方もいるかと思うが、2013年7月頃から日本では不動産価格が高騰している。だが今回の不動産市場のブームは過去の不動産バブルとは異なる。図1.1に過去30年間の東証不動産業種の株価指数の推移を示す。このグラフから次のことが分かる。この間に三回の不動産市場のブームがあったが、今回の不動産株価のピークは過去二回のバブルの頂点に比べて約8割程度と低い。
図1.1 過去30年間における不動産価格の推移

出所:Quick Astra-managerを用いて筆者作成
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/317968/091300034/zu1.jpg?__scale=w:800,h:525&_sh=0860fd0206
 また、今回の不動産株価の上昇は中央銀行によるリフレーション政策のタイミングと一致している。つまり、米連邦準備理事会(FRB)の三度目の量的緩和が発表された2012年9月から日銀による異次元の金融緩和がアナウンスされた2013年4月にかけて不動産株価が急上昇した。これに対して、前回の不動産バブルでは、その発生の時期と金融政策のタイミングの関係が明確ではない。つまり、日銀は、2001年3月から2006年3月の間、最初の金融緩和策・量的緩和策を実施した。この金融政策のタイミングと不動産バブルの発生時点(2005年7月)および終焉の時点(2007年5月)は一致していない。
 ところで、実物の不動産価格は上場不動産株価に対して約1年〜1年半の遅れをもって動くことが知られている。この関係から上記の二つのこと―価格の水準が前回のピークにくらべて明らかに低いこと、また今回の価格上昇は日銀およびFRBのリフレ政策によるものであること―は実物不動産市場についても言えることである。
 今回の不動産価格の上昇はバブルによるものではなくインフレである。これに対する反証は次である。例えば、不動産投資信託が保有するビルの賃料はこの期間ほとんど上昇していないのにその株価は1.7倍になった。また、例えば、東京銀座のビルの賃料は約3割程度しか上昇していないのに対してその価格は約2倍と賃料の伸びを大きく上回った。バブルとは資産価格のうち「経済の実体」から離れて上昇した部分をいう。ここでの経済の実体を賃料とするならば今回の不動産市場のブームはバブルと言える。
 この反証に対する反証は次である。不動産の賃料は硬直的であるのでその動きは価格に比べて緩慢である。また、この期間には不動産投資のベースとなる10年国債利回りは劇的に下がった。今ではマイナスの領域にまで下落している。今回の不動産価格の上昇は金利の下落でほぼ説明される。
 アベノミクス以降の不動産市場におけるマクロ的な過熱感の原因は、リフレ策―不動産市場に出回るお金が増えたこと、金利が劇的に低下したこと―による価格上昇である。なお、これはミクロ的には局地的に例外があることを否定するものではない。
次ページ:2 不動産価格インフレのメカニズム
2 不動産価格インフレのメカニズム
 アベノミクスは金融に依存した経済政策のパッケージである。アベノミクスの3本の矢―第1の矢は大胆な金融緩和政策、第2の矢は機動的な財政政策、および第3の矢は民間投資を喚起する成長戦略―のうち最も重要な矢は、次の理由で、第1の矢とされた。財政支出を増加させると金利が上昇するのでこれを防ぐためには大胆な金融緩和が必要であること。また、この金融緩和策は名目金利の上昇を抑制しつつ、予想インフレ率を引き下げるので、これらがあいまって企業が設備投資に積極的になる、というロジックである。つまり、実体経済を回復させるための必要条件は貨幣経済であると考えたのである。
 この信念は「貨幣数量説」と呼ばれている。これは、貨幣量と信用創造がn倍になったら物価水準もn倍になる、というシンプルな信仰に基づいている。一般的な物価水準の持続的な下落がデフレであるから、デフレから脱却するには貨幣量と信用創造を増やせばよい。つまり、世の中に出回るお金が増えるとインフレーションになるという信念である。
 現実はどうか? 世の中のお金(マネーストック)は1141兆5546億円(2013年3月)から1263兆8817億円(2016年8月)と10.7%伸びた。これによって、上記の信念によれば、一般物価の上昇率はプラス2%に達する予定であった。しかし、2015年度のインフレ率(コアCPI)は0%、また今年の春先からマイナスに落ち込んだ。
 日銀は9月20〜21日の金融政策決定会合で、この仮説が正しかったどうかを自ら検証してその結果を示す予定である。日銀に詳しい外部の専門家は「原油安と海外需要の低迷の影響が大きいと結論づける可能性がある」と予想している。しかし、「リーマンショックから立ち直った後の世界は先進国や新興国などの多極的な主体が政府主導で低成長を続ける」というニューノーマルの概念はアベノミクスの登場前(2009年〜)から日本でも知られていた。世界経済がニューノーマルにあることを前提に三本の矢を放ったのだからこれらは目標の不達成の理由にはならない。
 理由はともかくとして、日銀が想定したようには世の中にお金が回らなかった。その一つの例外は不動産である。まず、銀行の不動産業への貸出が増えた。日本の銀行の預貸率は7割である。貸し出しできず余剰となる残り3割の資金は国債等で運用されていた。日銀の異例の金融政策により、保有している国債を日銀に売ることになった。国債売却で得た資金は余剰となるので不動産業への貸し出しに振り向けられた。金利の低下によって不動産価格の上昇が正当化されるので貸し出しの機会が増えたからだ。また、日銀は不動産投資信託(REIT)を購入している。これによりREITの株価が上昇し、REITは増資と借入によって資金調達の量を増やした。さらに、相続税対策のため個人による貸家業を営む富裕層が増加し地域銀行による貸し出しが増えた。
 これらのルートを通じて、不動産については、貨幣数量説に基づいて価格が上昇しインフレーションが生じたと言えるだろう。
次ページ:3 なぜバブルにならない
3 なぜバブルにならない
 なぜ今回のブームはバブルにならなかったのだろうか? この問題を解くための1つのヒントは海運業が低迷していることである。図1.2に先に見た不動産株価および東証の海運業種の株価指数の推移を示す(1986年1月を100とした相対指数を示している)。この図から、過去2回の不動産バブルの時期には海運株価が不動産株価を大きく上回って急上昇したことが分かる。しかし、今回は海運株価が低迷し不動産株価を大きく下回っている。
図1.2 過去30年間における不動産価格と開運株価の推移

出所:Quick Astra-managerを用いて筆者作成
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/317968/091300034/zu2.jpg?__scale=w:800,h:540&_sh=0d202808a0
 また、不動産株価と海運株価の間には、統計的という意味ではあるが、因果関係がある。不動産株価の上昇(下落)に先んじて海運株価が上昇(下落)するという関係である。この事実が示唆することは、過去2回の不動産バブル期にはその構造的な要因として、貿易立国としての日本の実体経済の将来について大いなる成長期待があった。この成長期待が当時の海運株価を力強く上昇させた。これ自体はバブルではない。実体経済の成長期待を必要条件として、金融緩和および文化的・心理的な要因が十分条件としてそろってはじめてバブルが生じる。そして、値上がりが値上がり期待を高め、資産価格を引き上げるという予想が自己実現することでバブルが膨らむ。現在の日本では、不動産市場の参加者をこうした自己催眠的な心理に引き上げるような、将来の実体経済に対する大きな成長期待は存在しない。
 いま日本にバブルが存在するとすれば不動産ではなく国債である。10年の国債利回りはマイナスである。これをもってバブルの領域に入ったと判断する投資家もいる。マイナス金利ということは国債の価格が日本経済の実体から大きく乖離し上振れしている可能性があるからだ。
 私は今年2月に不動産投資の実務家の方々と「2016年の不動産市場を占う」というテーマのパネルディスカッションを開催した。その後の懇親会の席上で中心となった話題は「高騰した価格で今の不動産を誰が買うのか?」であった。約10年前にも同様の懇親会に参加したが、そのときにはほとんどの実務家が「理由は分からないけど価格が上昇するから買う」と発言していた。
 私のバブルの理論はこうだ。まず、市場には楽観派、悲観派、および中間派の3つのグループがある。楽観派と悲観派は常に楽観的でありまた悲観的である。これらは固定層である。中間層はそうではなく移ろいやすく局面が変化すると楽観的あるいは悲観的になる。大勢の中間派が楽観派に転じるとバブルが生じる。また、彼らはもともと浮動層であるので悲観に転じるのも早い。これがバブルの崩壊である。私は不動産市場の現場でこれらのグループの動きに触れる機会がある。また、これを確認するデータの一つは銀行の貸出動向(日本銀行)である。過去2回の不動産バブル期には全産業に対して不動産業へ著しく偏った貸出が行われていた。今回はそうではない。
 インフレーションでは通貨の膨張によって価格は上昇するが、市場参加者の楽観、悲観、および中間の各集団のシェアは変化しない。
次ページ:4 アメリカが主導権を握っている
4 アメリカが主導権を握っている
 日本の不動産価格は下落に転じている。直近では、これを肯定する意見が不動産市場の現場のプロたちからも聞かれるようになった。また、統計データもこれを支持している。例えば、日本の不動産投資総額は2014年以降減少に転じている。東京銀座の地価上昇も直近では鈍化している。首都圏マンションに関するアンケート調査でも過半のデベロッパーが価格上昇の余地には否定的である。これが正しいとすれば、日銀が金融緩和を続けているにも関わらず不動産価格が下落するのはどういう理由によるのだろうか? 結論を先に述べれば、日本の不動産価格インフレの行方は日銀ではなくアメリカが握っているということだ。
 その証拠は次の通りである。図1.3は不動産株価の変動とその変動をもたらしたイベントのタイミングを示したものである(ここでの株価は「イベント・スタディー」という分析で用いられる「累積異常リターン」という数値に変換したものである)。この図から、次のことが分かる。今回の不動産株価の上昇は、安倍政権が誕生する3カ月前、つまり米国FRBの第三弾の量的緩和政策の導入が発表された2012年9月に始まった。
図1.3 日米のリフレ策と不動産株の累積異常リターン

FRBがQE3発表(2012年9月)。グラフはその前後22カ月(2010年11月〜2014年7月)の累積異常リターンのプロット(2001年3月〜2009年6月(100カ月)でマーケットモデルを推定)   出所:Quick Astra-managerを用いて筆者作成
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/317968/091300034/zu3.jpg?__scale=w:800,h:520&_sh=0fb01e0e50
 また、アベノミクスおよび日銀の異次元の金融政策が発表された時点で不動産株価は大きく上昇していたが、その後のFRBの量的緩和の縮小(テーパリング)という政策の転換によって、それまでの価格の上昇分が剥落した。さらに、東京オリンピック開催決定という「神風」が吹いたが、その後のFRBによる債券購入の停止のニュースによりこの効果も消し飛んだ。2014年以降、日銀は追加的な金融緩和・量的緩和、そして2016年にはマイナス金利政策を導入したが、不動産株価が2013年末のピークを越えることはなかった(前出の図1.1を参照)。
 結局、日本の不動産市場の中長期の大きなトレンドはアメリカの金融政策が決め、日本の金融政策はトレンド周りの短期的な変動に影響を及ぼす程度にすぎない。国際金融、円ドルの為替レートを決めるのはアメリカであると指摘されているが(高田創『これだけは知っておきたい国際金融』きんざい)、一般にはローカルと考えられている日本の不動産価格の大勢も「孫悟空とお釈迦さまの手の平」のごとく、アメリカの事情で決まっている。
 最後に、非伝統的な金融政策のもとで日本の不動産価格はインフレになったが、米国の金融政策の正常化の影響を受けてこのインフレは萎みつつある。これがニューノーマル・ブームの一つの側面である。
川口 有一郎(かわぐち・ゆういちろう)
早稲田大学ビジネススクール 教授

専門分野は、インベストメント、応用ファイナンス
防衛大学校卒業、日本大学工学修士、東京大学工学博士。計算幾何学や人工知能(機械学習)を不動産の価格評価や都市設計に応用する研究に従事。英国ケンブリッジ大学留学中に新しい実学「不動産金融工学」を創始する。2004年より現職。東京大学、京都大学、および慶應義塾大学で客員教授を歴任。2013年Asian Real Estate Academic Society会長。2007年より日本不動産金融工学学会会長。
主な著書:
『入門不動産金融工学』、『リアルオプションの思考と技術』(いずれもダイヤモンド社)、『不動産市場の再浮上の条件』、『不動産マーケットの明日を読む』(いずれも日経BP社)、『不動産金融工学』、『不動産エコノミクス』(いずれも清文社)、”International Real Estate; An Institutional Approach”(Oxford; Blackwell Publishers),翻訳書には『リアルエステート・ファイナンス』、『不動産投資ゲーム』(いずれも日経BP社)など多数。

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/317968/091300034/
 

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コメント
 
1. 2016年9月22日 15:08:44 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2706]

>金融緩和策は名目金利の上昇を抑制しつつ、予想インフレ率を引き下げるので、これらがあいまって企業が設備投資に積極的になる、というロジック

ここは「予想インフレ率を引き上げる」の間違いだな

それに貨幣数量説に基づく投資・消費増が十分機能しなかった理由は、

第一に国内要因、つまり劣化した人口構造、競争力を失った税制や労働規制、企業経営の高齢化による投資意欲の低下

第2に、欧州や新興国など海外危機に基づく、リスク回避

日銀の統括検証でも十分に検討されたかと言えば、疑問は残る


>米国の金融政策の正常化の影響を受けてこのインフレは萎みつつある

ただし、今後、米国金利上昇が期待ほどでないから急激な引き締めにはならないだろう

一方で、金融機関や年金運用に配慮し、マイナス金利深堀もなければ不動産投資もまた下向きになっていくだろう


課題先進国日本で、新しい金融実験が続く結果、政策コストとベネフィットが、より明確になり、世界に貢献していると言えるだろうw



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