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シニア世代「転職時代」の今こそ、50代で「さっさと」退職・転職を繰り返す生き方(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan113/msg/550.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 9 月 24 日 01:31:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

               デンマークのコペンハーゲン(筆者撮影) 


シニア世代「転職時代」の今こそ、50代で「さっさと」退職・転職を繰り返す生き方
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16721.html
2016.09.24 文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者 Business Journal


■シニアの転職が、働き方の改革を先導する

 日本経済の成長の鍵は、雇用の流動化にある。生産性の悪い衰退産業から、生産性の良い成長産業に労働力をすばやく移転して、良い新陳代謝を続けなければ、国全体の成長が滞る。

 その雇用の流動性を先導するのは、50代以上のシニアだと考える。シニアの転職の活発化を雇用者側と労働者側が協力、合意しながら進め、社会全体で人的資源の最適配分を図るべきである。私事ながら、54歳の筆者も今年、30年勤めた会社を円満に退職し、前職の会社とは関係のない会社に転職した。シニアの気持ちも踏まえた提案を行いたい。

■3割引きの終身雇用制

 今、多くの大企業の定年は、形式的には65歳だが、実質的には60歳で退職することが想定されている。60歳以降の再雇用のときは、給料も半分から4分の1へと大幅に減額される。また、会社が関係会社などの再就職先を社員の退職後に世話するのは、今どき官僚か金融機関くらいしかない。このように、会社は「のしをつけてでも社員を追い出したい」とも取れる姿勢なのに、60歳、さらに65歳以上まで居座る気にもなかなかならない。就職するときに謳われていた「終身雇用制」とはなんだったのかと考えさせられる。

 一方で、50歳時点での日本人の平均余命は、男性32.39歳、女性38.13歳(厚生労働省「平成27年簡易生命表」より)。平均寿命と健康寿命の差は、男性9.13年、女性12.68年だ(厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」より)。つまり、50歳の男性は、73歳まで健康で82歳まで生きる。50歳の女性は、75歳まで健康で88歳まで生きる。

 簡単にまとめると、典型的な現代の日本人サラリーマンは、20歳頃に働き始め、約40年働いた会社を60歳で辞め、75歳くらいまで健康に生き、85歳前後で死ぬ。新卒のときに就職した日本企業の「終身雇用制」とは名ばかりで、20歳以降の健康に働ける55年間の内の40年、つまり約7割だけの雇用を保証しているにすぎない。日本企業の「3割引きの終身雇用制」とでもいえよう。

 だからといって、75歳まで今の会社に勤めたいと思っているシニアは少数派だろう。そうなると、定年退職後は別の会社で働こうとする。定年以降の健康寿命、生命寿命がそう長くはなかった昔と違って、定年退職後の余生の長い年月を、仕事をせずに「悠々自適」に暮らせる人は、そう多くない。

■シニアの働き方は、流動的な雇用へ

 まず、経済的に60歳で辞めてから25年間も年金と蓄えた資産だけで暮らせる人は少ない。次に、夫がずっと家にいることを妻が耐えられないと断固拒否する。これは冗談ではなく、シニア世代の男女どちらの側でも真剣によく語られる話である。また、心身の健康のためにも、ゴルフやジムの運動より、適切な負荷のかかる仕事を続けるほうがいい。平日のゴルフ場や、スポーツジムにあふれている元気なシニアも、それなりの適当な仕事があれば、収入が少なくても働きたいと思っている。

 さらに、万一年金財政が破たんした場合、働くことのできない75歳以上の高齢者への年金を停止するよりも、健康で働ける70歳くらいまで年金支給開始年齢を遅らせる政策が採られるだろう。

 従って、これからのシニアは、60歳以降健康寿命までの15年程、できるだけ長く働き続けようとする。今の雇用情勢では、ひとつの仕事で15年過ごすというよりも、5年程度の仕事を、負荷と給与を減らしつつ繰り返し転職することになる。結局、職業人としての20歳からの55年の内、約3割の15年は、転職人生になる。

 そうと見定めるなら、多くの企業で採られている早期退職を奨励する制度を使って、定年前の55歳くらいに退職して転職してもそう変わらない。転職を繰り返す期間が職業人生の3割から4割に増えるだけだ。それに、子供も自立し始めるし、最初の会社を辞めることで失うものも少なくなってくる。意外とリスクをとれる状況だと気づく。天と地ほどもレベルの違う話だが、小池百合子東京都知事が、衆議院議員から都知事にリスクをとって「転職」したのも、なんとなく気持ちがわかるような気がする。

 つまり、現時点で50代以上のシニア世代が自分のライフプランを考えるときは、転職を繰り返すものというのが前提になる。シニアの働き方は、すでに労使共に暗黙の合意の上に、流動的な雇用に向かい始めているのが現実なのである。

■日米欧の雇用の流動性と経済・社会

 雇用の流動性を進めると、経済にとってどういいことがあるのだろうか。日米欧の雇用の流動性と経済・社会の関係をみてみよう(『失業なき雇用流動化』<慶應義塾大学出版会/山田久>p.142などによる)

 雇用の流動性の高い米国の賃金・雇用システムは、解雇が容易な「雇用調整容易」型だ。賃金カットは日本よりも受け入れられにくいが、ドイツよりも柔軟に受け入れられる「賃金やや柔軟」型である。

 そのため、既存部門が好況時に人員削減をして収益性をあげる。好況時であれば、会社を辞めた労働者も新しい仕事を見つけやすい。また、優秀な人材がベンチャー企業などに流れ出るので、新規部門の成長性も高くなる。つまり、既存ボリューム部門の収益性があがり、新規成長分野の成長性も高い。賃金が上昇して経済成長もするが、失業率の揺れ幅と経済格差は大きくなる、「ワイルドで元気な世界」になる。

 日本の雇用・賃金システムは、解雇が困難な「雇用調整困難」型で、賃金カットが受け入れられやすい「賃金柔軟」型である。雇用の流動性は、正規社員では低く、非正規社員や女性で高い。大企業が多い既存の部門は、米国のように好況時に人員削減による効率化を行い収益率を向上することができない。また、教育訓練を受けた人材が、既存部門からベンチャー企業などの新規の成長分野に流れ出ないので、成長率も確保できない。

 従って、既存部門の収益力が伸びず、新規分野の成長性も低く、賃金が下がりデフレになる。デフレが続くと、企業は経済危機に備え内部留保を増やし、解雇しにくい正規社員の採用を抑制し、非正規社員を増やす。結果として、失業率は米欧に比べて低いが、収益性も成長性も低く、「優しげだけどダメな世界」になっている。

 ドイツの場合は、解雇がやや困難で、賃金カットは受け入れられない、「雇用調整やや困難」「賃金硬直」型である。雇用の流動性は、職種主義なので同一職種の別会社への転職はよく行われている。この場合は、既存部門の収益率は高くなるが、新規部門の成長性は低い。賃金は上昇するが、失業率は高い。労働者が専門性を磨き、優れた経営の会社を渡り歩くことにより社会が成長し、本人も報われる「職人気質の世界」だ。

 ちなみに、同じヨーロッパでもデンマークなどの北欧は、ドイツと少し異なる。高成長と高福祉を両立させた成功例としてよく取り上げられるデンマークの「ゴールデントライアングル」は、次のような特徴だ(『北欧モデル』<翁百合・山田久他著/日本経済新聞出版社>p.56より)

(1)流動性の高い労働市場
(2)手厚い失業保険
(3)積極的労働市場政策:失業者に対する積極的な職業訓練

 ドイツ、米国との違いを言えば、流動性についてはドイツ以上で、米国と変わらないくらい高い。解雇が容易なところはドイツと異なり、解雇された人に対する手厚いセイフティーネットを用意しているところがアメリカとは異なる。失業者に対する職業訓練も、座学だけでなく、企業との協力を得て現場でのOJTも取り入れている。

 また、さまざまな職種の資格を多様なレベルで認定して、転職しやすくしている。それにより、新規事業の成長性も、国全体の経済成長も高い。その好調な経済が高福祉を支える経済的原資を産み出し、好循環になっている。

■シニアの転職による雇用流動性の向上

 人が働く期間は、おおよそ20歳から75歳までの約55年と長い。しかし、現代は産業の成長スピードが速く、どんな成長産業も10年もすれば、衰退産業になってしまう。

 そこで、企業が終身雇用制を実行して企業業績が悪化しないと解雇できないとすると、生産性の低い産業分野がいつまでも労働者を抱えて低収益にあえぐ。労働者も、リストラされるよりもましと、実質上の賃金カットを受け入れる。そうすると、消費も拡大せず、投資も増えず、ますます日本全体の成長が停滞する。そして、企業の生産性が低迷し、低賃金になり、高福祉を支える財源を確保できないという悪循環が続いてしまう。

 日本社会は、今の働き方を変えなければならない。日本の経済状況をよく観察して、受け入れやすい産業分野と労働者層から順次導入するのが現実的だ。

 いきなりアメリカのような「ワイルドな社会」をそのまま目指しても、ワイルド過ぎて摩擦のほうが大き過ぎ、日本社会には適合しないだろう。むしろ欧州、特にデンマークのモデルなどを参考にしながら、雇用の流動性を高めていくのが現実的だ。
 
 また、社会全体の制度すべてを同時に変えていくのも難しい。まずは、労働者の一部であるシニア世代から、その雇用の流動性を先導するのも一法だろう。というのは、先に見たように、シニア世代は、すでに定年の60歳頃をきっかけに10〜20年と続く転職人生に踏み出し始めているからだ。

 日本の強みとも思われたユニークな制度である終身雇用制の発想が、今は雇用の流動性を阻んでいる。ところが、皮肉なことに終身雇用制と並んで日本の特異な雇用慣行である定年制を背景にして、現代ではシニアの転職により雇用の流動性を活発化できる状況にある。

■「会社は出たけれど」

 シニアの雇用は、勤務時間、勤務地、職務内容について労働者の希望にあった限定をしながら、雇用期間はせいぜい5年程度を想定した「正規限定社員」や「有期契約社員」になる。そういうシニアの流動性の高い雇用市場が大きくなれば、好景気で労働者が他の就職先が見つけやすいときに、企業は人員削減による収益力の向上ができる。また、新規成長部門に、経験ある優秀なシニア人材を投入できる。

 たとえば今、ベンチャー企業が成功して上場準備段階になった頃に、大企業で豊富な経験を持つシニア人材が転入して活躍している。短期間に成長した若い企業は、どうしても内部統制や管理体制が弱いので、大きな組織の運営のノウハウを導入するのに役立っている。また、最近ではSOX法などにより組織運営も規格化されているので、転職しても以前の会社での経験を生かしやすい。

 ネットビジネスなどでは、若い創業メンバーが短期間でユーザー数とアクセス数を増やしたが、お金儲けに結びつけることに四苦八苦している企業もある。そういう企業に、ターゲットとなるクライアントの業界で長い経験と人脈のあるシニア人材が、クライアント企業が受け入れやすいビジネスモデルを構築して営業、活躍している例も増えている。

 そうしたシニアの転職を活発化できるように、デンマークの積極的労働市場政策に倣い、座学、OJT含めた職業的スキル向上のプログラムを充実させるべきだろう。

 映画『大学は出たけれど』は、1929年(小津安二郎監督)と1955年(野村芳太郎監督)に製作された。大学を出たけれども就職先がなくて右往左往する人をコメディタッチで描いた映画だ。今から振り返ると、この時代に右往左往した人たちが、日本社会の経済を支えていった。現代のシニアは、「会社は出たけれど」といった心境かもしれないが、そのシニア層が日本を良い方向に変えていくのではないかと期待している。

(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)
 

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コメント
 
1. 2016年9月25日 06:55:51 : jH8zACbjRg : G2yiGiy_8ag[53]
さっさと転職・退職しようと思えば、それまでにキャリアを積んで自分の商品価値を上げておかねばならない。
社畜は嫌だとか残業拒否だとか家庭優先だとか寝ぼけたこと言ってる奴は、定年までシガミ付くしかない。
尤も会社に切られなければ、の話だが。

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