★阿修羅♪ > 経世済民116 > 411.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか 警告から20年グリーンスパン債券市場を懸念 円安 ドル高ピーク18年 
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/411.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 05 日 19:08:29: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか

 11月28日、ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)が外交政策の詳細を詰めるのを、世界はまだ待っている状態だが、「トランプ時代」の勝ち組と負け組はどこになるのか。米コロラド州で10月撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

Josh Cohen

[28日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領が外交政策の詳細を詰めるのを、世界はまだ待っている状態だ。これまでに彼が発した言葉を考慮してみれば、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、トランプ時代における「負け組」となる可能性が高い。

ロシアについては、トランプ次期大統領がプーチン大統領を称賛しているからである。NATO諸国については、トランプ氏が、加盟国の「ただ乗り」によって、米国が応分以上に同盟維持コストを負担せざるを得なくなっている、と考えているためだ。

今回は1月20日に予定される大統領就任に先立ち、上記以外の意外な3つの「勝ち組」と「負け組」をご紹介しよう。

<負け組>

●メキシコ

メキシコの元外相は、トランプ氏の当選を自国にとって「純然たる災厄」であると嘆いた。彼は正しいかもしれない。トランプ氏は選挙期間中、メキシコを悪者扱いし、国境を隔てる新たな壁の建設費用を負担させ、メキシコ系移民による本国への電信送金を禁じ、数百万人を強制送還し、北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉もしくは終了させると約束した。

トランプ氏が当選した翌日、メキシコ・ペソの対ドル相場は史上最低の水準まで下落した。理由は簡単だ。トランプ氏が選挙期間中に約束した通り、メキシコから輸出される多くの商品に35%の関税をかければ、メキシコ経済はあっというまにリセッションに陥ってしまうだろう。メキシコ系移民の本国送金を禁止すれば貧困が拡大し、数百万規模の強制送還があればメキシコ国内での犯罪発生率、失業率の急上昇を招きかねない。

●日本

トランプ政権誕生により、日本は2つの側面で負け組となる可能性がある。まず、選挙期間中、トランプ氏が日米同盟にどれだけ肩入れするかという疑問が生じている。トランプ氏は、在日米軍の駐留コストを日本政府にもっと負担させるべきだと述べ、日本がそれに応じなければ米軍を撤退させる可能性があると示唆した。

また彼は日米同盟を不公平だと非難し、「日本が攻撃されれば米国はただちに支援に駆けつけなければならないが、米国が攻撃されても日本は助ける必要がない」と指摘した。

またトランプ氏は、就任初日に米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退すると約束している。安倍晋三首相が重点政策として掲げるTPPは、2月に米国を含む12カ国によって調印された。

安倍首相は輸出の追い風になることを期待して、TPPの国会承認を得ようとしているところだが、トランプ氏はTPPを「災厄」と呼んでいる。いくつかの問題についてはトランプ氏も意見を変える可能性が窺えるが、彼の選挙運動においては自由貿易に対する反対が重要な柱になっていただけに、TPPは「死んでしまう」可能性が高く、日本にとってはかなり大きな長期的損失をもたらしかねない。

●モルジブ諸島

インド洋に浮かぶ小さな列島であるモルジブ諸島では、最高地点が海抜2.4メートルしかなく、トランプ氏の勝利によって最大の打撃を受ける可能性がある。この諸島の一部はすでにインド洋に没しており、今世紀末までにモルジブという国全体が消滅してしまうものと予想されている。

モルジブ諸島がトランプ政権の期間中に消滅するわけではないが、トランプ氏は「地球温暖化は中国による捏造」と主張しており、政権移行チームの環境保護庁長官にも気候変動懐疑派を指名している。さらにトランプ氏は、昨年の画期的なパリ気候変動対策協定からの脱退をめぐっても矛盾する発言を重ねており、モルジブの長期的な命運にとっても幸先はよくない。

<勝ち組>

●イスラエル

トランプ氏が選挙期間中に主張した立場は、イスラエルのネタニヤフ首相率いる連立与党と完全に一致している。トランプ氏は在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転することを約束しており、ある上級顧問は、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植は「和平のための障害ではない」と発言している。

またトランプ氏は、イスラエルが執拗に反対するイラン核開発合意を非難している。

これに加えて、選挙期間中のトランプ陣営の文書には、380億ドル(約4.3兆円)というイスラエル向けとして過去最大となる米国の軍事支援パッケージは、支援の「最低額であり、最高額ではない」と記されている。

●エジプトとトルコ

トランプ氏は明らかに独裁者を好み、国家建設を嫌う傾向を見せていることから、彼がエジプトの独裁的指導者であるシシ大統領に魅了されているとしても不思議はない。9月にシシ大統領と会談した後、トランプ陣営は声明のなかで、「エジプトの対テロ戦争への力強い支援」に感謝し、トランプ氏が勝利した場合にはワシントンを訪問するよう呼び掛け、トランプ政権がシシ大統領の忠実な同盟国となることを約束した。

民主主義に対するシシ氏の姿勢が決して誉められたものではないことにはまったく触れなかった。(ムスリム移民の米入国を制限するとの同陣営の声明にも触れなかったようだ)。大統領選での大勝利後、トランプ氏と最初に言葉を交わした海外首脳がシシ氏であったという事実からも、エジプトが、トランプ勝利による「勝ち組」なろうとしているように見受けられる。

トルコのエルドアン大統領も、やはりトランプ勝利から利益を得ようとしているように見える。7月にトルコで発生したクーデター未遂事件の後、エルドアン氏が政敵を弾圧したことをトランプ氏は称賛。市民の自由侵害を理由にエルドアン氏を批判する可能性を一蹴している。

トルコ側から見てさらにありがたいのは、トランプ氏の顧問を務める陸軍出身のマイケル・フリン氏が投票日に寄稿した論説において、クーデター計画を背後で操ったとしてトルコ政府が批判しているイスラム教指導者ギュレン師を、米国を安全な隠れ家として不当に利用しているイスラム教過激主義者として批判したことである。

●欧州の極右ポピュリスト

欧州は全般的にトランプ氏の当選に対して衝撃と落胆の反応を示しているが、例外もある。欧州の右派ポピュリストたちだ。

ハンガリーで独裁色を強めつつあるオルバン首相はトランプ氏の勝利を「素晴らしいニュース」と表現し、フランス国民戦線のルペン党首は「自由な米国民」を祝福し、英国独立党の党首で欧州連合(EU)脱退キャンペーンの先頭に立ったナイジェル・ファラージ氏(選挙期間中も積極的にトランプ氏を支持していた)は、トランプ氏の当選後、満面に笑みをたたえてトランプ・タワーを訪れて同氏と面会した。

欧州のポピュリストたちが興奮する理由は想像に難くない。1つには、オランダ、フランス、ドイツのポピュリスト政党はどこも、今年の自国での選挙において、トランプ氏の勝利が有権者にとって1つのモデルになることを期待している。さらに、トランプ政権で影響力の強い首席戦略官兼上級顧問となるスティーブ・バノン氏(トランプ氏の前選対本部長であり、いわゆる「オルタナ右翼」系メディアサイト「ブライトバート・ニュース」主宰者)、は、欧州の右派・反移民ナショナリストを尊敬していると伝えられている。

<結論は時期尚早か>

改めて確認しておくが、トランプ氏の外交政策が何をもたらすかという点について確固たる結論を出すには時期尚早であり、選挙運動と違い、実際の政権運営では制約を課せられることをトランプ氏が学ぶ可能性は高い。実際、トランプ氏の政権移行チームはすでに、イスラエルや国境の「壁」に関する外交政策上の公約をいくつか後退させつつある。その一方で、トランプ氏が計画しているロシアとの関係改善や、イスラム国との戦いにおけるシリアのアサド政権との協力については、議会幹部からの抵抗に直面している。

だが、トランプ次期大統領が必然的に妥協を余儀なくされる部分もあるとはいえ、1つだけ明白なことがある。トランプ氏は、よかれ悪しかれ、既存の地政学的な秩序を、予想もできない形で確実に揺さぶるだろう。

*筆者は米国際開発庁(USAID)の元プロジェクトオフィサーで、旧ソ連の経済改革プロジェクトに従事した経歴を持つ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

ロイターをフォローする

おすすめ記事


コラム:「中国危機」は本当に起きるか 2016年 11月 04日
アダルトサイトの会員情報、4億1200万件流出 今年最大か 2016年 11月 15日
コラム:米国で感じた「トランプ大統領」の確率=佐々木融氏 2016年 10月 11日

トランプ相場、世界で高まる米国株の存在感
世界の株式市場に占める米国株の割合は40%強に
ニューヨーク証券取引所(11月30日)

By BEN EISEN
2016 年 12 月 5 日 11:51 JST

 世界の株式市場に占める米国株の割合は、株価上昇と米ドル上昇という2重の後押しを受けて拡大している。

 調査会社ファクトセットの最新データに基づく計算によると、12月2日時点の米国株の時価総額は約25兆2000億ドルで、世界の株式市場の40.01%を占めている。この割合は先月23日には40.29%と、2006年以降で最高水準に達した。他の国々はいずれも10%に満たないなか、米国株の存在感は突出している。

 米国株は、11月8日にトランプ氏が米大統領選挙で勝利してからの数週間で主要株価指数が過去最高値を更新するなど、他国の株式に比べて相対的な価値が高まっている。

 投資家やトレーダーたちは次期大統領の政策優先課題、特に法人税を引き下げ、財政刺激策を拡大するという計画に関して、米国企業に恩恵をもたらす可能性が高いと解釈してきた。また、相対的に高い経済成長と金利上昇の見通しがドルを押し上げてきた。

 大統領選以降、S&P500種指数は2.4%上昇し、小型株の指標であるラッセル2000種指数は10%急騰した。そうした動きに比べると、欧州やアジアの株式市場は若干まだら模様だ。11月8日以来、ストックス欧州600指数は1.3%上昇、上海総合指数は約3%の上昇となった。

 ドルの16通貨に対する価値の変動を示すWSJドル指数は3.7%上昇。ドル高が進んだことで、ドル建ての株式の価値も他国の株式より上昇してきた

 世界の株式市場に占める米国株の割合は過去10年間の大半で拡大してきたが、成長しつつある中国の株式市場との競争もあった。ファクトセットによると、12月2日時点で世界の株式市場に占める中国株の時価総額の割合は9.1%。昨年6月には、この数値が一時的に12%を上回った。

関連記事

トランプ相場、政治的現実に直面するか
トランプ相場は絶好の投資機会
米株トランプ相場、強気は続くか
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjv97Gi5tzQAhXKq5QKHXspAkEQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582477644092250980&usg=AFQjCNFM84Wg59vVACKJ0QYfwOazeUWmEA



「根拠なき熱狂」警告から20年―グリーンスパン氏、今は債券市場を懸念
グリーンスパン氏はちょうど20年前、株式市場の「根拠なき熱狂」について警告を発した ENLARGE
グリーンスパン氏はちょうど20年前、株式市場の「根拠なき熱狂」について警告を発した PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By STEVEN RUSSOLILLO
2016 年 12 月 5 日 17:29 JST

 20年前、当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長アラン・グリーンスパン氏は株価について懸念していた。現在は債券市場についてはるかに大きな懸念を抱いている。

 5日はグリーンスパン氏がかの有名な「根拠なき熱狂」の警告を発してから20年目に当たる。この言葉はそれ以降、ウォール街だけでなく実体経済にも広がり、さらにはベストセラーにもなった。まさしく金融市場の象徴的な表現となったのである。

 この警鐘は、当初はものの見事に外れた。

 グリーンスパン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「根拠なき熱狂という予測に成績をもらうとすれば「C」だ。だが、それはわれわれが極めて懸念すべきと考えていたプロセスを表現したものだった」と語った。

 グリーンスパン氏は「根拠なき熱狂」という表現について、言葉が市場に衝撃を与えることを意識して使ったことを認めている。「こうした特定の表現を講演に使えば市場を動揺させるということは分かっていた」

 だが、そのもくろみはうまくいかなかった。株価は一時的に下落したものの、すぐに反発した。ニューヨークに本拠を置くシンクタンク、米外交問題評議会(CFR)のシニアフェロー、セバスチャン・マラビー氏によると、グリーンスパン氏の警告から1997年8月までにS&P500種株価指数は27%上昇し、1日に平均2回はニュースにこのフレーズが登場した。

 マラビー氏は最近発表したグリーンスパン氏の伝記で「あのフレーズが繰り返されるたびに株式相場は上昇するように見えた」と記し、「株価上昇ペースを抑えようとするグリーンスパン氏の試みがうまくいかなければ、株価上昇に歯止めをかけることができるものは何もなかった」と書いた。

 株価の上昇は、2000年にドットコムバブルが崩壊するまで3年以上にわたって続いた。その後、住宅市場がさらに大きく崩壊し、08年の金融危機につながった。

 「根拠なき熱狂」という言葉は、グリーンスパン氏がある日の朝、入浴中に講演原稿を練っていた時に思いついた。この言葉をグーグル検索すると39万件の検索結果が出てくる。イェール大学教授でノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏は2000年に「根拠なき熱狂」というタイトルの著書を出した。グリーンスパン氏がFRB議長を退いた時には、政治風刺テレビ番組「ザ・デイリー・ショー」がすべての時間を使い「アラン・グリーンスパン氏への根拠なき熱狂の賛辞」と題する番組を放送した。

 今、90歳になるグリーンスパン氏は、自ら設立したグリーンスパン・アソシエーツを率いて積極的に活動しているが、FRBや政策についての具体的なコメントは避けた。

 同氏は株価について1990年代半ばほどには心配していないが、債券市場とこのところの大幅な金利上昇については大いに懸念している。「重要なのはS&P500種株価指数ではない。10年物と30年物の米国債だ」と述べ、「行き過ぎているのは債券市場におけるPER、つまり利益に対する債券価格の比率だ。これは取るに足らない要素ではない」と指摘した。

 また米経済が、物価上昇と景気停滞が同時に起きるスタグフレーションに向かう恐れがあると懸念している。「この確率は50%を超えている」とし、「今のところ私が心配しているのはこのことだ」と述べた。

 ただグリーンスパン氏は、住宅市場崩壊後に示した傍観主義的な姿勢を維持している。「いったんバブルが生まれると、経済に大きな悪影響が及ばないようにバブルを食い止めるのは難しい。成り行きを見守り、結果を見てから対処するのが最善だ」との考えを示した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwig59vC5tzQAhUCkZQKHUUNCwYQFggbMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582478120772948042&usg=AFQjCNFvrAPMb-ydElinAq2DA_gTFnhHvQ&bvm=bv.139782543,d.dGo


コラム:トランプ円安は期待先行か現実回帰か

池田雄之輔野村証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 2日] - 2016年ほど「まさか」の3文字を金融関係者が口走った年はなかったのではないか。言うまでもなく、英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択、米大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利という結果は政治イベントの予想の難しさを知らしめた。

しかし、相場予想を生業とする我々ストラテジストにとって、最大の「まさか」は、米大統領選後の株高、金利急騰、大幅の円安という強気相場、「トランプラリー」である。

筆者を含め、ほとんどの市場参加者が「トランプ勝利=円高」と予想していた。真逆の展開を目の当たりにし、ストラテジストは「市場は楽観的過ぎる」と判断してしまう。筆者も当初はそのように考えた。しかし、市場の動き、ファンダメンタルズの変化を見ると、「ドル高=過大なトランプ期待」ではないことが分かってくる。

以下では、1)「弱気ポジション」の調整、2)政治リスクに覆い隠されていた中国発のデフレ脱却シナリオの発現、3)円需給や金利と整合する水準への相場の回帰、という3つの観点から検証してみる。

そこで浮かび上がるのは、「過大なトランプ期待」ではなく、悲観的過ぎた市場が「現実回帰」するプロセスである。

<「弱気ポジション」の巻き戻し>

「トランプラリーは過熱気味」との仮説に反する事象は比較的容易に見つかる。例えば、米国市場が感謝祭で休場となる11月24日に向けて、「手じまい」的な動きはほとんど見られず、むしろドル高が継続した。その後週明けに若干の調整があったものの、ドルラリーはまだ比較的若い局面にあるように見受けられる。

シカゴ国際金融市場(IMM)の先物データを見ると、11月15日から22日にかけて投機的ポジションは「円ロング」から、ようやく「円ショート」に転じた。円ショートは今年1月2日以来である。相場水準としては1ドル=110円あたりが、ロング/ショートの転換点だろう。すなわち、101円から110円までが円ロングの巻き戻し、それ以上が円ショートの積み上げと見られる。

米大統領選後のラリーが、弱気ポジションの取り崩しに由来していることは、通貨横断的なデータでも確認できる。この間のドル全面高の中で、特に弱い通貨は円である。もちろん、金利に着目した説明も有力だ。米国を筆頭に、世界的に金利が急騰する中で、日銀の長期金利を抑え込む姿勢が、「金利差の面で最も売りやすい通貨は円」との認識を投機勢に植え付けている可能性がある。

しかし、米大統領選後にポンドがドル以上に強いことをどう説明すべきか。「トランプ政権誕生で英米の連携が強まる」との説明があるが、後付けの印象が拭えない。やはりポジション調整の影響と考えるべきだろう。

実際、シカゴIMMにおける米大統領選直前のポジションの傾き(過去の平均値で標準化)と、その後の対ドルリターンには、「ロングだった通貨が売られ、ショートだった通貨が買われる」という「巻き戻し」特有の相関関係がはっきりと表れている。「ポンドはショート、円はロング」という弱気ポジションが、一部は「トランプ勝利」の瞬間に利益確定で巻き戻され、残りはじわじわと損切りを迫られた、と推察される。

<中国発「脱デフレ」シナリオ>

「弱気ポジションの解消」を、グローバルマクロ情勢の文脈からはどう解釈できるか。ここでは、いったん「トランプ」を忘れて相場を見直してみたい。

そもそも、米大統領選前からグローバル経済、とりわけ米国・中国景気は安定感を強めていた。6月末の英国民投票での「EU離脱ショック」も早期に克服した。本来であれば米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月ないし9月に利上げが可能だったはずだが、一時的な雇用統計の下ぶれ、および米大統領選挙への配慮から行動を見送った。鉄鉱石、石炭を筆頭に、コモディティー価格は秋口にかけて軒並み強含んでくる。中国経済の回復を起点とし、グローバルなデフレ脱却の筋書きが見え始めていた。

しかし、英米政治リスクへの意識により、債券市場は弱気(金利上昇)シナリオの織り込みが遅れてしまった。結果的に、債券バブルが放置される。それが、「トランプショック」によって過激な水準調整を迫られた、というのが実態ではないか。

言い換えれば、6月、11月の政治イベントがなければ、米10年金利は春先の1.9%前後という水準から、ゆっくり時間をかけて現在の2.4%台まで上がっていてもおかしくなかったように思われる。この仮説にのっとれば、現在の米金利上昇、ドル高は「トランプ次期政権への期待先行」ではなく、「政治リスクへの意識によって、現実から引き離されてしまった相場のキャッチアップ、現実回帰」との評価になる。

この仮説をサポートする中国の景気指標として「李克強指数」の動きは注目に値する。この指数は李克強首相が注目しているとされる銀行融資残高、電力使用量、鉄道貨物輸送量の3指標(いずれも伸び率)から計算される月次データで、景気循環をよく捉えている。同指数は過去、米10年金利とほぼ一致して転換点を迎えるという驚くべき性質を持っており、いかに中国景気が世界の成長率、インフレ率に影響しているかを物語っている。

李克強指数は年初から上昇し始め、中国発のグローバルなデフレ脱却シナリオをすでに描き始めていた。しかし、英米政治リスクへの意識の高まりによって、世界の債券市場はそれを無視し続けていた。その矛盾が、いま一気に解消されている可能性がある。

<来年末1ドル=120円との試算も可能>

最後に、円需給と金利差を用いたシミュレーション結果を確認しておく。このシミュレーションは、経常収支および資本収支のうち為替インパクトのあるフロー(需給の偏り)および内外金利差という2つの為替ファンダメンタルズによって、ドル円相場の「適正値」を計算する試みである。現実のドル円相場がシミュレーションから乖(かい)離する部分はおおむね「投機的」と判断することができる。

2013年から15年にかけては、日本の貿易赤字、公的年金のシフト、空前の海外M&Aブームがバトンタッチしながら巨額の「円売り超過」を担い、米金利がほぼ横ばい圏で推移する中での円安ファンダメンタルズを築いた。もちろん、投機勢は日銀の強力緩和策を「円安政策」と見なし、投機的な円ショートを積み上げ、キープし続けた。

しかし、2016年に入ると、リスクオフの地合いの中、日銀限界論の台頭とともに投機ポジションは円ショートから円ロングに転じ、円急騰劇を招く。

現在、シミュレーションが示している「適正値」は113円台である。出来過ぎの感もあるが、現在のドル円相場とほぼ一致した水準にある。言い換えれば、1ドル=110円を大幅に下回っていたドル円相場は、英国民投票および米大統領選という政治リスクへの警戒によって歪められていた状態だったとの見方も可能かもしれない。2017年の利上げを2回と想定すると、来年末は1ドル=120円との計算になる。

もちろん、今後はトランプ次期政権で実行される政策への評価、欧州政治動向への目配りが欠かせない。しかし、少なくとも米大統領選という政治リスクを通過、「トランプショック」によって為替市場は悲観ムードを脱した。そして、ようやくグローバルマクロ経済の現状を正当に反映できるように、「現実回帰」したのである。「トランプ次期政権への期待は過大」とは見ない方が良いだろう。

*池田雄之輔氏は、野村証券チーフ為替ストラテジスト。1995年東京大学卒、同年野村総合研究所入社。一貫して日本経済・通貨分析を担当し、2011年より現職。「野村円需給インデックス」を用いた、円相場の新しい予測手法を切り拓いている。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。著書に「円安シナリオの落とし穴」(日本経済新聞出版社)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yunosuke-ikeda-idJPKBN13R0MR


コラム:トランプ政策期待のドル高、ピークは18年か

高島修シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 2日] - 先月8日の米大統領選挙前、筆者は次のような相場観を抱いていた。共和党のドナルド・トランプ候補が勝利した場合、「ドル円は瞬間的に100円方向へ反落。ただ、共和党が米議会を上下院とも押さえる場合は年内にも108円前後へ切り返す可能性がある」。

本音ベースでは112円前後への上ぶれもあると考えていたので、この間のドル高円安はあまり違和感なく受け入れている。

現在は今月13―14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の前後で115円程度まで続伸した後、今回の期待先行のドル高はいったん終了し、その後、来春にかけて10円程度反落した後、2018年に向けては改めて、より実体を伴った、中長期的なドル高円安が進行し始めるのではないかと考えている。

<異端視された「トランプ・ドル高」説>

そもそも筆者は大統領選挙前にコンセンサスだった「民主党ヒラリー・クリントン候補勝利=ドル高」説に懐疑的だった。注目していたのは議会選挙である。

今回、議会選挙ではポール・ライアン議長率いる共和党が下院を制することはほぼ確実だった。したがって、選挙戦中、民主党のクリントン候補も、共和党のトランプ候補も社会保障制度や減税などによる財政刺激策を訴えていたが、クリントン氏が勝利しても、これまでオバマ大統領(民主党)が苦しんだ政治的な「ねじれ」が解消しないことは明白だった。つまり、クリントン氏が主張する財政政策が実現する可能性は低かった。

結果的に米財政事情が健全な状態を保つことは長期的にはドル高要因となるが、短期的には財政刺激を欠く米経済は停滞を続ける。米連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策スタンスが継続するため、米金利上昇もドル高もおのずと限界が生じる。「クリントン勝利」が政治的には基本シナリオだったが、その際、年内のドル円は103―106円レンジで上値の重い商状となるというのが筆者の考えだった。

他方、まさかの「トランプ勝利」の場合はまずは100円前後へ急落。その後、民主党が上院を押さえるのであれば、議会との「ねじれ」が続き、トランプ氏が主張する減税政策は実現しない。FRBの金融緩和策への依存度が高まり、来年1―3月期にはそのまま100円を割り込むリスクがあっただろう。

だが、共和党が上下院をともに押さえた場合には「ねじれ」が解消。財政刺激策が実現する可能性が一躍高まり、米金利上昇にけん引されたドル高が発生する可能性が高いと思われた。しかも、トランプ氏の政策メニューの中には、米企業が海外に留保する利益を米国に還流させる措置(本国投資法)が含まれていたのでなおさらだ。

今となってみれば、読者にとってこの「トランプ・ドル高」説は特段驚きには値しないだろう。だが、「クリントン・ドル高、トランプ・ドル安」説が支配的だった選挙前はこのような見方は異端視された。ちょっと考えれば、意味不明な論拠の上に成り立っていることが分かるはずなのだが、いったん市場でコンセンサスとなってしまえば、それが独り歩きして、もっともらしく聞こえる典型例が「クリントン・ドル高、トランプ・ドル安」説だった。

<「米金利上昇でドル高」説の脆弱性>

一方、選挙後に進んだ株高・ドル高で、今は一転して市場では「トランプ・ドル高」説が支配的になってきた。だが、この説もさまざまな脆弱性を内包している。

今回、ドル高円安を発生させたのは上記の通り、米国が拡張財政に転じることを期待した米金利上昇である。9月に日銀が新しい金融政策の枠組みの中でイールドカーブ・コントロールを導入し、円金利上昇に歯止めがかかる構造となっているため、米金利上昇が日米金利差拡大に直結し、ドル高が対円でユーロなど他の通貨に対するよりも顕著に表れた。

実のところ、過去半年ほどの日米10年金利差とドル円の相関を確認すると、1%の金利差の変化でドル円が25円ほど動くという関係が成り立っており、現在の金利差を前提としたドル円の単純推計値は115円前後である。

だが、ここでは詳しくは述べないものの、筆者が定期的に更新している重回帰分析によるファンダメンタルズモデルに基づくと、長期的な観点では1%の金利差変化がドル円に与える影響は5円以下である。この関係が必ず正しいと主張するつもりはないが、1%で25円もドル円が変化するという関係が論理的にはとても正当化できるものではないことは明らかだ。極めて投機的な思惑によってその関係が短期的に成り立っているに過ぎない。

つまり、今は過去半年ほどの相関を用いて1ドル115円が正当化されても、突然その関係が変化し、現在の金利差が大きく変わらなくとも、ドル円が大きく値崩れする可能性は否定できない。今回の米金利上昇が財政やインフレのリスクプレミアム(本来は通貨安要因)を織り込むものであることを考えるとなおさらだ。現在、我々のファンダメンタルズモデルに基づく推計値は105円前後であり、その程度までのドル円反落は常に発生し得るというのが筆者の基本認識である。

<ドル高要因が逆行し始める2019年>

さて、来年1月のトランプ政権発足が近づくにつれ、選挙前に吹聴されたさまざまなメニューの中から実現可能なもの、実現困難なものが峻別され、選挙後に一気に高まった過度の期待が修正される局面を迎えよう。

FRBは今月のFOMCで1年ぶりの利上げに踏み切る公算が大きいものの、最近の急激な米金利上昇やドル高を警戒し、声明文は極めてハト派的なものになると思われる。その結果、ドル高をけん引してきた米金利上昇が止まってくれば、選挙前に市場が悪材料として注目していた保護主義など、トランプノミクスのダークサイドに改めてスポットライトが当たり、調整反落的なドル安が発生してもおかしくなかろう。

肝心の財政政策にしても、その景気刺激効果が表面化してくるのは2017年後半にずれ込む可能性が高く、その成長押し上げ効果が極大化するのは2018年になりそうだ。しかも、前述した本国投資法は実現する可能性が高いものの、恐らく実施は2018年になるとみられる。財政による景気刺激に加え、米企業による直接的なドル買い需要が膨らむのもその頃からだ。

逆に2018年の減税が確定的となってきた今、米企業はその実施を控えた2017年は例年よりも米国への利益送還を減らす可能性が高く、むしろドル安的に作用する。これも筆者が2017年の少なくとも前半のドル相場に強気になれない理由の1つだ。

一方、2018年には財政刺激効果と本国投資法による米企業の利益送還がピークを迎えることに加え、その海外収益の利益送還に絡んだ税収増が予想される。財政刺激効果が極大化するにもかかわらず、米国の財政事情はむしろ改善する。つまり、1)財政刺激、2)米企業のドル買い、3)財政健全化の三拍子がそろい、力強いドル高局面を迎える公算が大きい。そのときには120円を超えるドル高円安が発生しても特段驚くには値しないだろう。

このように整理すると、トランプ大統領の誕生によって2017年前半の停滞を経て、ドル相場が2018年にピークをつけにいくシナリオが非常にクリアになってきたと思う。

ただし、このことは同時に2019年には2018年のドル高をけん引したその3つの要素が全て逆行し始めることを意味する。特に注意すべきは、同じ減税策を実施しても、2年目以降はベース効果の剥落で、景気刺激効果が減退。その結果、景気減速局面に入ると、減税によって脆弱化しているがゆえに、財政事情は雪だるま式に悪化し、ドル安を加速させるようになることだ。

*高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-takashima-idJPKBN13R0BL



トランプ氏が雇用創出諮問委、委員に米主要企業のトップ

[ワシントン 2日 ロイター] - トランプ次期米大統領は2日、雇用創出に向けた政策を助言する諮問委員会を設立すると明らかにした。ブラックストーン・グループ(BX.N)のスティーブ・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)が委員長を務め、米主要企業のトップが委員として参加する。

トランプ氏は声明で「次期政権は民間部門のノウハウを活用し、米企業の雇用や改革などを抑制してきた官僚主義を打ち破ることにコミットしている」と指摘。同委員会は企業経営を阻害する規制の撤廃のほか、法人税率引き下げなどを主眼に置くとした。

同委員会に委員として参加するのは、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)のバーラ最高経営責任者(CEO)、JPモルガン・チェース(JPM.N)のダイモンCEO、資産運用大手ブラックロック(BLK.N)のフィンクCEO、ディズニー(DIS.N)のアイガーCEO、IBM(IBM.N)のロメッティCEO、ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)元CEOのジャック・ウェルチ氏、航空機大手ボーイング(BA.N)のCEOを務めたジム・マクナーニ氏ら。

このうちアイガー氏、マクナーニ氏、ロメッティ氏らはオバマ政権の諮問役も務めた。

アルファベット(GOOGL.O)傘下のインターネット検索大手グーグル、アップル(AAPL.O)、フェイスブック(FB.O)などのトップは含まれていないが、関係筋はハイテク業界のトップも今後加わる可能性があるとしている。
http://jp.reuters.com/article/trump-job-creation-group-idJPKBN13R2PB
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2016年12月06日 06:21:24 : yO7aYKfeUI : iFyWdF@3oFk[1]
工作長文
読むだけ
時間のブダじゃないか。



  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民116掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民116掲示板  
次へ